(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04228 20160101AFI20220909BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20220909BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20220909BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20220909BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20220909BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20220909BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20220909BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20220909BHJP
【FI】
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/2475
H01M8/04014
H01M8/0432
H01M8/04664
H01M8/04746
H01M8/04313
(21)【出願番号】P 2021511306
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009820
(87)【国際公開番号】W WO2020203059
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2019068634
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】嶌田 光隆
(72)【発明者】
【氏名】重久 高志
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-10050(JP,A)
【文献】特開2013-218811(JP,A)
【文献】特開2015-185507(JP,A)
【文献】特開2009-193936(JP,A)
【文献】特開2018-125099(JP,A)
【文献】特開2010-10029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、
燃料電池と、
該燃料電池の運転に必要な複数の補機と、
制御装置と、を備え
、
前記複数の補機が、
前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガスポンプと、
前記燃料電池に水を供給する水ポンプと、
前記燃料電池に空気を供給するブロワと、
前記燃料電池からの排ガスと熱交換するための熱交換器に、熱媒を循環させる熱媒ポンプと、
前記筐体内を換気する換気ファンと、を備え、
前記制御装置は、前記燃料電池のシャットダウンを実行する際に、シャットダウンの種類に応じて、前記補機のうち、稼動させる補機と稼動停止する補機とを設定してシャットダウンを実行
し、
前記燃料電池に関連する温度が第1の所定温度以下を満たさない場合に、前記シャットダウンにおいて、上記燃料ガスポンプ、前記水ポンプ、前記ブロワ、前記熱媒ポンプおよび前記換気ファンに異常が生じていない場合には、すべてを稼動させつつシャットダウンを実行するとともに、
前記燃料電池に関連する温度が第2の所定温度以下を満たした場合に、前記燃料ガスポンプ、前記ブロワ、前記熱媒ポンプおよび前記換気ファンを第2の所定時間稼動させて、前記シャットダウンを継続する燃料電池装置。
【請求項2】
前記シャットダウンを実行して第1所定時間経過後に、前記燃料電池に関連する温度が第1の所定温度以下を満たさない場合に、前記燃料ガスポンプ、前記水ポンプおよび前記ブロワを停止して、シャットダウンを継続する請求項
1記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記第2の所定時間経過後に、前記燃料ガスポンプを停止させる請求項
1または請求項2記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記第2の所定時間経過後に、前記ブロワの稼動を増大させる請求項
1~3のいずれか1項に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記シャットダウンにおいて、第1異常判定基準を満たし、かつ前記燃料電池に関連する温度が第1の所定温度以下を満たさない場合に、前記熱媒ポンプを稼動させつつシャットダウンを実行する請求項
1記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記シャットダウンにおいて、前記第1異常判定基準とは異なる第2異常判定基準を満たし、かつ前記燃料電池に関連する温度が第1の所定温度以下を満たさない場合に、前記補機をすべて停止してシャットダウンを実行する請求項
5記載の燃料電池装置。
【請求項7】
前記シャットダウンが、メンテナンスの指示によるシャットダウンの場合、シャットダウン完了後の時間を計測し、第3の所定時間以内であれば、再起動を可能とする請求項
1記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の燃料電池装置は、筐体内に、燃料電池と、該燃料電池の運転に必要な複数の補機と、制御装置と、を備え、前記複数の補機が、前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガスポンプと、前記燃料電池に水を供給する水ポンプと、前記燃料電池に空気を供給するブロワと、前記燃料電池からの排ガスと熱交換するための熱交換器に、熱媒を循環させる熱媒ポンプと、前記筐体内を換気する換気ファンと、を備え、前記制御装置は、前記燃料電池のシャットダウンを実行する際に、シャットダウンの種類に応じて、前記補機のうち、稼動させる補機と稼動停止する補機とを設定してシャットダウンを実行し、前記燃料電池に関連する温度が第1の所定温度以下を満たさない場合に、前記シャットダウンにおいて、上記燃料ガスポンプ、前記水ポンプ、前記ブロワ、前記熱媒ポンプおよび前記換気ファンに異常が生じていない場合には、すべてを稼動させつつシャットダウンを実行するとともに、前記燃料電池に関連する温度が第2の所定温度以下を満たした場合に、前記燃料ガスポンプ、前記ブロワ、前記熱媒ポンプおよび前記換気ファンを第2の所定時間稼動させて、前記シャットダウンを継続する構成である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【0006】
【
図1】本開示の実施形態の燃料電池装置のブロック図である。
【
図3】実施形態のシャットダウンの過程を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態のシャットダウンの過程を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態のシャットダウンの過程を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態のシャットダウンの過程を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態のシャットダウンの過程を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態のシャットダウンの過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
まず、本開示の燃料電池装置が基礎とする構成の燃料電池装置について説明する。
【0008】
近年、次世代エネルギーとして、燃料ガス(水素含有ガス)と空気(酸素含有ガス)とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルを複数積層したセルスタックを収納容器内に収納してなる燃料電池モジュールや燃料電池モジュールを外装ケース内に収納してなる燃料電池装置が種々提案されている。
【0009】
燃料電池装置の動作中に何らかの不具合が生じた場合、あるいは、燃料電池装置のメンテナンス等で燃料電池装置を短時間停止させたい場合には、半強制的に装置の作動を停止させるシャットダウンを実行することがある。
【0010】
しかしながら、シャットダウン動作をする場合に、燃料電池装置の状態はさまざまであり、燃料電池装置の状態に関わらず一律のシャットダウン動作を行うと、スタックの破損、燃料電池装置の降温の遅延および熱媒の沸騰などの不具合が起こるおそれがある。
【0011】
以下、図面を用いて本開示の実施形態の燃料電池装置について説明する。
図1は、実施形態の燃料電池装置のブロック図である。また、
図2は、実施形態の燃料電池装置の斜視図である。
【0012】
実施形態の燃料電池装置100は、天然ガス等の原燃料ガスと空気とを使用して発電を行う燃料電池モジュール1と、第1熱交換器2、蓄熱タンク3、熱媒ポンプP2およびこれらをつなぐ循環流路等を有する排熱回収システムを備える。排熱回収システムである第1の熱循環系(ヒートサイクル)は、
図1中に符号HC1で表記されている。
【0013】
また、燃料電池装置100は、符号HC2で示すように、前述の蓄熱タンク3に貯留された高温の熱媒を用いて、外部から供給された水道水等の水を加温し、加温された水を外部の給湯器(図示せず)等の再加熱装置に向けて送給する、第2の熱循環系HC2を備える。第2の熱循環系HC2は、第2熱交換器4(上水熱交換器ともいう)と、前述の蓄熱タンク3から熱媒を循環させる循環ポンプP3およびこれらをつなぐ流路配管とを備える。
【0014】
燃料電池モジュール1は、収納容器10に収容されたセルスタック11と改質器12とを含む。燃料電池モジュール1から排出された排ガスは、第1熱交換器2で、排ガスと第1熱交換器2内を流れる水等の熱媒または冷媒との間で熱交換が行われる。この際、排ガスに含まれる水分が結露して凝縮水が生じる。生じた凝縮水は、凝縮水流路Cを経由して回収され、改質水タンク6に貯留される。
【0015】
水分が取り除かれた排ガスは、排ガス流路Eを介して、燃料電池装置100の外に排気される。また、改質水タンク6に貯水された改質水は、改質水流路Rおよび水ポンプである改質水ポンプP1を介して、燃料電池モジュール1内の改質器12に供給され、原燃料ガスの水蒸気改質に利用される。
【0016】
燃料電池モジュール1での発電に用いられる空気は、ブロワB2を含む空気流路である配管Fを介してセルスタック11に導入される。原燃料ガスは、燃料ガスポンプB1を含む原燃料ガス流路である配管Gを介して、改質水流路Rを経由した改質水とともに、改質器12に導入される。
【0017】
燃料電池装置100は、前述の燃料電池モジュール1等の他、その発電運転を補助する補機として、第1熱交換器2、蓄熱タンク3、第2熱交換器4、改質水タンク6、燃料ガスポンプB1、ブロワB2、改質水ポンプP1、熱媒ポンプP2、循環ポンプP3、換気ファン60、パワーコンディショナ20、制御装置30、表示装置や操作パネルを含む操作基板40等を備える。そして、燃料電池装置100は、
図2に示すような、各フレーム51と各外装パネル52とからなるケース50の中に配設されている。このケース50の中の、燃料電池モジュール1および各補機の周りや流路、配管等に、複数の計測機器やセンサ等が設けられている。
【0018】
改質器12内は、原燃料と改質水とを混合して加熱する気化部と、原燃料と改質水を気化させて生成した水蒸気とを反応させて原燃料を改質する改質部とに分かれており、気化部の改質部に接続する部分の温度である改質入口温度T1を計測するための温度計TC1が取り付けられている。また、セルスタック11上部に燃料電池モジュール1の中心温度T2を計測するための温度計TC2が取り付けられている。制御装置30は温度計TC1およびTC2から改質入口温度T1および燃料電池モジュール1の中心温度T2を取得することが可能である。
【0019】
そして、燃料電池装置100は、以下に詳細に述べるように、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサおよび記憶装置等を含む制御装置30を備える。
【0020】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路として、または、複数の通信可能に接続された集積回路および/もしくはディスクリート回路として、実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術にしたがって実行されることが可能である。
【0021】
1つの実施形態において、プロセッサは、たとえば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された、1以上の回路またはユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された、ファームウェア、たとえばディスクリートロジックコンポーネントであってもよい。
【0022】
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタル信号処理部、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、または、これらのデバイスもしくは構成の任意の組合わせ、または、他の既知のデバイスおよび構成の組合わせ、を含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
【0023】
制御装置30は、記憶装置および表示装置(ともに図示省略)と、燃料電池装置100を構成する各種構成部品および各種センサと接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池装置100の全体を制御および管理する。制御装置30は、それに付属する記憶装置に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することによって、燃料電池装置100の各部にかかる、種々の機能を実現する。
【0024】
制御装置30から、他の機能部または装置に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御装置30と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。制御装置30が行う本実施形態に特徴的な制御については、後記で説明する。なお、本実施形態において、制御装置30は特に、燃料電池装置100につながる外部装置の指示、指令や、先に述べた各種センサの指示や計測値に基づいて、燃料ガスポンプB1等の原燃料供給装置を制御する。
図1では、制御装置30と、燃料電池を構成する各装置および各センサとを結ぶ接続線の図示を、省略している場合がある。
【0025】
図示しない記憶装置は、プログラムおよびデータを記憶できる。記憶装置は、処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用してもよい。記憶装置は、記録媒体を含む。記録媒体は、半導体記憶媒体、および磁気記憶媒体等の任意の非一時的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。また、記憶装置は、複数の種類の記憶媒体を含んでいてもよい。記憶装置は、メモリカード、光ディスク、または光磁気ディスク等の可搬の記録媒体と、記憶の読み取り装置との組合せを含んでいてもよい。記憶装置は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでいてもよい。
【0026】
なお、燃料電池装置100の制御装置30および記憶装置は、燃料電池装置100の外部に有する構成として実現することもできる。さらに、本開示に係る制御装置30における特徴的な制御工程を含む制御方法として実現したり、上記工程をコンピュータに実行させるための制御プログラムとして実現したりすることも可能である。
【0027】
なお、以下のフローは、前述の給湯先での温水の利用開始により、水道水流路Lの一部を構成する上水配管Jを通ってケース50内に供給された比較的低温の水道水が、第2熱交換器4を経由して温められ、水温の上昇した加温水として、水道水流路Lの一部である給湯配管Kを経由して給湯器等の外部機器に送給および給湯される、排熱の間接的な利用を想定したものである。
【0028】
燃料電池装置100における、排ガスから回収した凝縮水(改質水)を用いた発電運転(いわゆる、水自立運転)について簡単に説明する。
【0029】
発電運転中の燃料電池装置100においては、燃料電池モジュール1に隣接して配置された第1熱交換器2で、モジュールから排出された排ガスと、第1熱交換器2内を流れる水等の熱媒との間で熱交換が行われ、排ガスに含まれる水分が結露して凝縮水が生じる。
【0030】
生じた凝縮水は、気液分離器等により分離され、イオン交換樹脂等の浄化装置を経由して浄化された後、凝縮水流路Cを通じて、改質水タンク6に貯留される。一方、水分が取り除かれた排ガスは、排ガス流路Eを介して、燃料電池装置100の外に排気される。
【0031】
改質水タンク6に貯留された改質水は、改質水流路Rおよび改質水ポンプP1を介して、燃料電池モジュール1内の改質器12に供給され、改質水を用いた原燃料の水蒸気改質に利用される。
【0032】
燃料電池装置100を停止させるシャットダウンは、燃料電池装置100の動作中に不具合が生じて正常な運転が困難である場合、あるいは、燃料電池装置のメンテナンス等で燃料電池装置を停止させる必要がある場合などに実行される。
【0033】
燃料電池装置100のシャットダウンにおいてすべての補機を停止させると、燃料電池装置100の余熱によって、熱媒が沸騰したり、ファンが動作しないため降温に時間がかかったりして、シャットダウンによる燃料電池装置100への熱による悪影響が大きくなるおそれがある。そこで、以下の本実施形態においては、燃料ガスポンプB1、ブロワB2、改質水ポンプP1、熱媒ポンプP2、および換気ファン60に着目して、シャットダウン時におけるこれらの補機の稼動について説明する。
【0034】
シャットダウンの基本制御である、第1シャットダウン制御では、燃料ガスポンプB1、ブロワB2、改質水ポンプP1、熱媒ポンプP2、および換気ファン60をすべて稼動させてシャットダウンを行う。それによりシステム内の冷却を速やかに行うことができる。
【0035】
一方、燃料電池装置100の稼動に必要である流体に関する異常である、第1異常判定基準を満たした場合は、第2シャットダウン制御を実行する。第2シャットダウン制御では、補機である燃料ガスポンプB1、ブロワB2、改質水ポンプP1および換気ファン60を動作させずにシャットダウンを行う。
【0036】
また、第1の熱循環系HC1や第2の熱循環系HC2の熱媒体に関する異常である、第2異常判定基準を満たした場合は、第3のシャットダウン制御を実行する。第3のシャットダウン制御では、燃料ガスポンプB1、ブロワB2、改質水ポンプP1、熱媒ポンプP2および換気ファン60を動作させずにシャットダウンを行う。
【0037】
また、燃料電池装置100のメンテナンスの場合に行う第4シャットダウン制御では、燃料電池装置100の停止時間をできるだけ短くして燃料電池装置100の稼動効率を高めるような方法が求められる。そこで、最低限の燃料電池モジュール1保護のため燃料ガスポンプB1を動作させずにシャットダウンを行う。
【0038】
このように制御装置30は、シャットダウンの種類に応じて、稼動させる補機と稼動停止する補機とを設定してシャットダウンを実行することによって、最適なシャットダウン工程を選択できる。それにより、燃料電池装置100のシャットダウン時の燃料電池装置100および周辺環境への悪影響を軽減することが可能になる。また、燃料電池装置100を保護することができるので燃料電池装置100の信頼性を高めることができる。また、燃料電池装置100の稼動効率を高めることができる。
【0039】
以下、
図3~
図5を用いて第1シャットダウン制御の動作について説明する。これらの
図3~
図5では、「ステップ」を「S」と略称するとともに、チャート内においては、判断制御における「正」(フラグ=1)を[Yes]で、「否」(フラグ=0)を[No]で表している。
【0040】
運転中にシャットダウンが発生した場合、シャットダウン制御を開始する(ステップS0)。なお、燃料電池装置100においては、改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2が、温度計TC1と温度計TC2により連続して測定されている。
【0041】
次に、ステップS1で、改質入口温度T1および燃料電池モジュール1の中心温度T2が第1の所定温度を超えているか判断する。第1の所定温度は、たとえば、シャットダウン制御における改質水ポンプP1、ブロワB2、燃料ガスポンプB1の稼動に伴って、改質器12やセルスタック11が破損することを抑制するための温度である。シャットダウン直前に発電を正常に行っている状態では、改質入口温度T1および燃料電池モジュール1の中心温度T2は第1の所定温度を超えている。この場合、ステップS2に移行する。また、起動直後にシャットダウンを行って改質入口温度T1および燃料電池モジュール1中心温度T2がともに第1の所定温度を超えていない場合には、ステップS5に移行する。なお、以降の説明において、燃料ガスポンプB1、ブロワB2、改質水ポンプP1、熱媒ポンプP2、および換気ファン60の稼動時間、稼動量は燃料電池装置の大きさ等や各補機の能力等に応じて適宜設定することができる。
【0042】
ステップS2において、燃料電池装置100を冷却するために、換気ファン60、熱媒ポンプP2を動作させるとともに、改質水ポンプP1、ブロワB2を動作させて、配管Fから空気を供給する。このとき、燃料ガスポンプB1を停止させ、配管Gからの原燃料ガスの供給を停止する。この状態を第1所定時間t1継続する。このように、第1シャットダウン制御では、換気ファン60が動作しているので燃料電池装置100内に可燃性ガスが滞留しないため安全性を高めることができる。また、熱媒ポンプP2を動作させているので、熱媒の沸騰を防止することができる。また、配管Fから空気を供給することによって、燃料電池装置100内の排ガスを外部に放出することができる。また、改質水ポンプP1を動作させて改質水を供給して、配管Fからの空気が改質水流路Rに逆流しないようにすることができる。ステップS2によって燃料電池モジュール1内のオフガスが外部に排出される。
【0043】
続いて、
図4に示すステップS3において、改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2が第1の所定温度以下となったかを判定する。改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2のどちらかが、第1の所定温度を超えている場合には、ステップS4に進み、さらに燃料電池装置100を冷却する。一方、改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2がともに第1の所定温度に以下になっている場合には、ステップS5に進む。
【0044】
ステップS4においては、換気ファン60および熱媒ポンプP2を動作させ、ブロワB2を停止して配管Fから空気の供給を停止し、燃料ガスポンプB1を停止して、配管Gからの原燃料ガスの供給を停止し、また、改質水ポンプP1を停止して改質水の供給を停止する。この状態を第2所定時間t2継続する。なお、ステップS4においては、補機は間欠運転を繰り返すこともできる。この場合、たとえば、換気ファン60は時間t3間の動作および時間t4間の待機を繰り返し、熱媒ポンプP2は、時間t5間の作動後、時間t6間の待機する動作を繰り返すことができる。なおt3、t4、t5、t6のそれぞれの時間は、適宜設定すればよい。
【0045】
第2所定時間t2経過後、ステップS3に戻り、改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2がともに第1の所定温度に以下になっているか判断する。第1の所定温度以下の場合は次のステップS5に移行する。改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2の少なくとも一方が、第1の所定温度を超えている場合は、ステップS4に再度移行する。
【0046】
続いて、
図5に示すステップS5において、改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2がともに第2の所定温度以下になったかを判定する。改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2がともに第2の所定温度以下になった時点で、次のステップS6に移行する。ステップS5では、燃料ガスポンプB1、ブロワB2、改質水ポンプP1、熱媒ポンプP2、および換気ファン60をすべてが停止している。第2の所定温度は、たとえば、次のステップにて、改質器12や燃料電池モジュール1内の水蒸気を排出すべく、燃料ガスポンプB1およびブロワB2を動作させた場合に、改質器12やセルスタック11に悪影響を及ぼさない温度で設定することができる。
【0047】
続いて、ステップS6において、換気ファン60および熱媒ポンプP2を動作させたまま、燃料ガスポンプB1を動作させて配管Gから原燃料ガスを供給し、ブロワB2を動作させて配管Fから空気を供給する。また、改質水ポンプP1は停止している。ステップS6は第3所定時間t7継続する。なお、ステップS6では、駆動時間が異なるように補機を動作させることもできる。たとえば、燃料ガスポンプを時間t8だけ稼動させ、その後、燃料ガスポンプB1を停止して原燃料ガスの供給を停止する。原燃料ガスを供給することで燃料電池セル内部に改質水が結露することを防止することができる。また、ブロワB2は、ステップS2よりも多くの空気量が供給されるように動作させることもできる。この場合、配管Fから多量の空気を供給して燃料ガスを薄めて燃料電池の外に流出させることができる。
【0048】
続いて、ステップS7において、換気ファン60および熱媒ポンプP2を動作させるとともに、ブロワB2を駆動させて、配管Fから空気を供給して燃料電池装置100を冷却する。また、改質水ポンプP1と燃料ガスポンプB1は停止している。ステップS7は第4所定時間t9継続する。
【0049】
第4所定時間t9が経過したらステップS8に移行し、改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2とがともに第3の所定温度以下になっているか判断する。ここで第3の所定温度は、例えば、熱媒ポンプP2が停止しても熱媒の沸騰が発生しない温度や、メンテナンスを実行できる程度に十分冷却された温度に設定することができる。改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2とがともに第3の所定温度以下の場合は、ステップS9に移行する。改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2の少なくとも一方が、第3の所定温度を超えている場合は、ステップS7に再度移行する。
【0050】
続いて、ステップS9において、換気ファン60、熱媒ポンプP2およびブロワB2を停止して配管Fから空気の供給を停止して、機器を停止させる。次に、ステップS10で、燃料電池装置100は、待機状態に移行する。
【0051】
次に、燃料電池装置100の稼動に必要である流体に関する異常である、第1異常判定基準を満たした場合は、第2シャットダウン制御を実行する。このような異常としては、たとえば、燃料ガスに関する異常、改質水に関する異常、空気に関する異常、換気に関する異常等が例示できる。なお、第2シャットダウン制御は、直接的に流体の異常を検知できる補機動作、流量、濃度、電圧に関する異常だけでなく、間接的に流体の異常を推察できる温度、圧力に関する異常を含むなど、異常判定基準は適宜設定してよい。第2シャットダウン制御の動作を
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0052】
ステップS20において、燃料電池装置100の稼動に必要である流体に異常が発生した場合は、燃料電池装置100はシャットダウン制御を開始する。続いて、ステップS21において、熱媒ポンプP2を動作させる。燃料ガスポンプB1を停止して燃料供給を停止し、また、ブロワB2を停止して空気の供給を停止する。また、改質水ポンプP1を停止して改質水の供給を停止する。さらに換気ファン60を停止する。
【0053】
ステップS22で示されるように、燃料電池装置100は改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2が第4の所定温度以下になるまで冷却を続ける。この場合の第4の所定温度は、たとえば、メンテナンスを実行できる程度に十分冷却された温度である。
【0054】
改質入口温度T1および燃料電池モジュール1の中心温度T2が第4の所定温度以下になると、ステップS23に移行して熱媒ポンプP2を停止する。次にステップS24で機器を停止させ、ステップS25にて燃料電池装置100は待機状態に移行する。このように、熱媒ポンプP2を循環させることで燃料電池装置100の冷却を促進する。さらに燃料ガスポンプB1、ブロワB2、改質水ポンプP1および換気ファン60を停止することにより、セルスタック11や改質器12の破損や、燃料電池モジュール1の排ガスや残留ガスの排出を抑制する。
【0055】
次に、燃料電池装置100は、第1異常判定基準と異なる第2判定基準を満たした場合、第3シャットダウン制御を実行する。このような異常としては、たとえば、第1の熱循環系HC1や第2の熱循環系HC2の熱媒体に関する異常が例示できる。たとえば、熱媒ポンプP2の回転異常が発生した場合は、第3シャットダウン制御を実行する。なお、第3シャットダウン制御は、直接的に熱媒体の異常を検知できる補機動作、流量、電圧に関する異常だけでなく、間接的に熱媒体の異常を推察できる温度、水位に関する異常を含むなど、異常判定基準は適宜設定してよい。第3シャットダウン制御の動作を
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
ステップS30において、第1の熱循環系HC1や第2の熱循環系HC2の熱媒体に異常が発生した場合は、燃料電池装置100はシャットダウン制御を開始する。続いて、ステップS31において、熱媒ポンプP2を停止する。また、換気ファン60を停止する。さらに、改質水ポンプP1を停止して、改質水の供給を停止し、また、燃料ガスポンプB1を停止して原燃料ガスの供給を停止し、ブロワB2を停止して空気の供給を停止する。
【0057】
ステップS32で示されるように、改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2が第5の所定温度以下になるまで、補機である、燃料ガスポンプB1、ブロワB2、改質水ポンプP1、熱媒ポンプP2、および換気ファン60を停止する。この場合の第5の所定温度は、たとえば、メンテナンスを実行できる程度に十分冷却された温度である。
【0058】
改質入口温度T1および燃料電池モジュール1の中心温度T2が第5の所定温度以下になると、ステップS33に移行して機器を停止させ、ステップ34にて燃料電池装置100は待機状態に移行する。このように、燃料ガスポンプB1、ブロワB2、改質水ポンプP1を停止させることで、燃料電池モジュール1の高温排ガスや残留ガスが第1熱交換器2に流入することにより発生する熱媒体の過熱や沸騰を防止する。さらに、熱媒ポンプP2を停止させることで、熱媒体漏出時には漏れの拡大を防止するとともに、換気ファン60を停止させることで、漏れた水の飛散を防止する。
【0059】
次にメンテナンスにより燃料電池装置100を短時間停止させたい場合に実行する第4シャットダウン制御の動作を
図8のフローチャートを用いて説明する。
【0060】
メンテナンスを行う操作者は、燃料電池装置100が動作中に、操作基板40より燃料電池装置100をメンテナンスモードに移行させることができる。また、メンテナンスモードにおいて、操作基板40の操作より、燃料電池装置100は第4シャットダウン制御を開始することができる。
【0061】
ステップ40において、メンテナンスを行う操作者は、操作基板40よりシャットダウン制御を開始する。次にステップS41において、改質入口温度T1および燃料電池モジュール1の中心温度T2が第6の所定温度を超えているか判断する。この場合の第6の所定温度は、たとえば、改質器12やセルスタック11に悪影響を及ぼさない温度で設定することができる。
【0062】
第6の所定温度以下の場合は、機器を停止するステップS43に移行し、改質入口温度T1と燃料電池モジュール1の中心温度T2の少なくとも一方が、第6の所定温度を超えている場合は、ステップS42に移行する。
【0063】
ステップS42において、燃料電池装置100を冷却するために、換気ファン60、改質水ポンプP1、熱媒ポンプP2を動作させるとともに、ブロワB2を動作させて、配管Fから空気を供給する。このとき、燃料ガスポンプB1を停止させ、配管Gからの原燃料ガスの供給を停止する。ステップS42は第5所定時間t10継続する。
【0064】
第5所定時間t10を経過後、ステップS43において、ブロワB2、改質水ポンプP1、熱媒ポンプP2、および換気ファン60を停止して機器を停止させる。
【0065】
次にステップS44において、燃料電池装置100は待機状態に移行し、待機状態に移行した時刻Taを記憶する。
【0066】
ステップS45において、メンテナンス終了後等に再起動指示を受け付けると、ステップS46に移行して、再起動指示を受け付けた時刻Tbを取得する
【0067】
次にステップS47において、再起動指示を受け付けた時刻Tbと待機状態に移行した時刻Taより、再起動指示が第6所定時間t11以内に行われたか判定する。所定時間以内の場合は、ステップS48に移行して再起動し、所定時間を超えている場合は、ステップS49に移行して燃料電池装置100が十分に冷却されるまで待機する。
【0068】
このように、シャットダウン動作をする場合に、燃料ガスポンプB1、ブロワB2、改質水ポンプP1、熱媒ポンプP2、および換気ファン60の駆動、及び停止を適宜選択することで、燃料電池装置100を保護することができ燃料電池装置100の信頼性を高めることができる。さらに、メンテナンスの指示によるシャットダウンの場合、シャットダウン完了後の時間を計測し、第6所定時間t11以内であれば再起動を可能とすることによって、メンテナンスによる燃料電池装置100の発電停止時間を短縮することができる。
【0069】
本開示は次の実施の形態が可能である。
【0070】
本開示の燃料電池装置は、筐体内に、燃料電池と、該燃料電池の運転に必要な複数の補機と、制御装置と、を備え前記制御装置は、前記燃料電池のシャットダウンを実行する際に、シャットダウンの種類に応じて、前記補機のうち、稼動させる補機と稼動停止する補機とを設定してシャットダウンを実行する構成ある。
【0071】
本開示の燃料電池装置によると、燃料電池装置のシャットダウン時に燃料電池装置を保護することができ、燃料電池装置の信頼性を高めることができる。
【0072】
本開示は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本開示の範囲は特許請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本開示の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0073】
1 燃料電池モジュール
2 第1熱交換器
3 蓄熱タンク
4 第2熱交換器
6 改質水タンク
10 収納容器
11 セルスタック
12 改質器
20 パワーコンディショナ
30 制御装置
40 操作基板
50 ケース
51 フレーム
52 外装パネル
60 換気ファン
100 燃料電池装置
B1 燃料ガスポンプ
B2 ブロワ