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  • 特許-フィルム用途用ポリエチレン組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-08
(45)【発行日】2022-09-16
(54)【発明の名称】フィルム用途用ポリエチレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20220909BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20220909BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220909BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220909BHJP
【FI】
C08L23/06
C08F210/16
C08L23/08
C08J5/18 CES
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021523292
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2019082540
(87)【国際公開番号】W WO2020109289
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】18208908.6
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516071561
【氏名又は名称】アブ・ダビ・ポリマーズ・カンパニー・リミテッド・(ブルージュ)・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Abu Dhabi Polymers Co. Ltd (Borouge) L.L.C.
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ダス クマール スブラタ
(72)【発明者】
【氏名】クマール アシシュ
(72)【発明者】
【氏名】コー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】シング ラグヴェンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ディクシット ニラジ
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-186515(JP,A)
【文献】特開2014-208750(JP,A)
【文献】国際公開第2011/057924(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/06
C08F 210/16
C08L 23/08
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子量エチレンポリマー成分及び高分子量エチレンポリマー成分を含むベース樹脂を含むポリエチレン組成物であって、
前記高分子量エチレンポリマー成分は、前記低分子量エチレンポリマー成分よりも大きい重量平均分子量を有し、
前記ベース樹脂の中の前記低分子量エチレンポリマー成分と前記高分子量エチレンポリマー成分との重量比が40:60~48:52の範囲であり、
前記ベース樹脂は少なくとも958.0kg/mの密度を有し、
前記ポリエチレン組成物は、0.50~0.80g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)、及び10.0~15.0の、重量平均分子量と数平均分子量との比Mw/Mnである分子量分布を有するポリエチレン組成物。
【請求項2】
前記低分子量エチレンポリマー成分が低分子量エチレンホモポリマー成分であり、前記高分子量エチレンポリマー成分が、少なくとも1種の4~8個の炭素原子を有するα-オレフィンから選択されるコモノマー単位を含む高分子量エチレンコポリマー成分である請求項1に記載のポリエチレン組成物。
【請求項3】
前記コモノマー単位が1-ブテン及び1-ヘキセンから選択される請求項2に記載のポリエチレン組成物。
【請求項4】
以下の特性、2.0~3.5g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、5kg)、30~50g/10分のメルトフローレートMFR21(190℃、21.6kg)、及び10~25のMFR21/MFRの比であるフローレート比、のうちの少なくとも1つを有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項5】
以下の特性、90~130kg/molの重量平均分子量Mw、7~10kg/molの数平均分子量Mn、及び400~800kg/molのz平均分子量Mz、のうちの少なくとも1つを有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項6】
32~48g/10分のメルトフローレートMFR21(190℃、21.6kg)を有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項7】
7.5~9.5kg/molの数平均分子量Mnを有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項8】
95~125kg/molの重量平均分子量Mwを有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項9】
以下の特性、8~18の剪断減粘性指数SHI5/200、10~20の剪断減粘性指数SHI2.7/210、10000~25000Pa・sの動的粘度eta0.05、500~1000Pa・sの動的粘度eta300、及び10000~30000Pa・sの747Paの一定剪断応力における粘度eta747のうちの少なくとも1つを有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項10】
以下の特性、26~32MPaの引張降伏応力、7~10%の引張降伏ひずみ、及び1200~1800MPaの曲げ弾性率、のうちの少なくとも1つを有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項11】
少なくとも72時間の耐環境応力亀裂性(F50、10% Igepal)を有する請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のポリエチレン組成物。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のポリエチレン組成物の製造方法であって、
a)前記低分子量エチレンポリマー成分を含む第1中間材料を製造するために、第1重合反応器の中で重合触媒の存在下でエチレンを重合する工程と、
b)前記第1中間材料を第2重合反応器に移す工程と、
c)前記低分子量エチレンポリマー成分及び前記高分子量エチレンポリマー成分を含むベース樹脂を製造するために、前記第1中間材料の存在下で、エチレン及び4~8個の炭素原子を有するα-オレフィンから選択される少なくとも1種のコモノマーを重合する工程と、
d)前記ベース樹脂をコンパウンディングして、上記ポリエチレン組成物を得る工程と
を備える方法。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のポリエチレン組成物を含む物品。
【請求項14】
フィルム又はブロー成形品である請求項13に記載の物品。
【請求項15】
インフレーションフィルムであるか、キャストフィルムであるか、又は多層フィルムの少なくとも1つの層である請求項13又は請求項14に記載の物品。
【請求項16】
以下の特性:
共に少なくとも1000MPaである縦方向の引張弾性率(TM-MD)及び横方向の引張弾性率(TM-MD)、
少なくとも400%の縦方向の破断伸び(EB-MD)、
少なくとも6.5Nの横方向のエルメンドルフ引裂強度(ETS-TD)、
少なくとも0.50Jの耐穿刺性エネルギー
100cm/m/日以下の酸素透過率、並びに
直径301~600μmのゲルについて35ゲル/m以下、及び直径100~300μmのゲルについて140ゲル/m以下
のうちの少なくとも1つを有するフィルムである請求項13から請求項15のいずれか1項に記載の物品。
【請求項17】
フィルムの製造のための請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のポリエチレン組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも958kg/mの密度を有するベース樹脂を含む、0.50~0.80g/10分のメルトフローレートMFR及び10.0~15.0の分子量分布Mw/Mnを有するポリエチレン組成物、このポリエチレン組成物を製造するためのプロセス、上記ポリエチレン組成物を含む物品、並びにフィルムの製造のための上記ポリエチレン組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
包装の一般的な傾向は、より高い包装速度での包装の完全性に必要なバランスのとれた特性を得るために、優れた剛性と靭性を持つダウンゲージングである。剛性を向上させるためには、包装材の密度を高くする必要があり、そのためにより高密度の中・高密度ポリエチレン(MDPE及びHDPE)製品が包装用途にますます使用されるようになっている。最新の包装のもう一つの重要な側面は、優れたバリア性能であり、それゆえに、異なるポリマーを異なる層(複数可)と共押出しできる多層構造が、様々な包装のために一般的に使用されている。バリア性が高まると、梱包された商品の保存期間を延ばすことができ、水蒸気透過率(WVTR)や酸素透過率(OTR)が低いHDPEが包装構造体に使用されるようになる。
【0003】
包装用途における高い剛性、靭性、バリア性の要求の他に、もう一つの重要な要求は耐環境応力亀裂性(ESCR)であり、このESCRは、歯磨き粉、化粧品、その他のヘルスケア製品を含む様々な液体をラミチューブやスタンドパウチに包装する際に必要とされる。高剛性でESCRの高い(すなわち、ESCRと剛性のバランスに優れた)HDPE材料の必要性が高まっているが、この材料は市場では容易に入手できない。それゆえ、最近の発明と言える開発では、様々な包装用途に利用できる高剛性でバリア性の高いHDPEのESCRを向上させることに注力した。加えて、他のLLDPE、MDPE、m-LLDPE、LDPE等の材料との共押出しによる多層フィルムの加工要件を満たすためには、HDPEの良好な加工性と低ゲル化も非常に重要な基準となる。
【0004】
国際公開第2009/085922A1号パンフレットは、幅広い特性を持つインフレーションフィルム用途に好適なポリエチレン樹脂を開示する。この高密度ポリエチレン組成物は、良好なESCR-剛性バランスを示すが、多層包装材のインフレーションフィルム用の低いメルトフローレートに示されるように、加工性はかなり劣るはずである。
【0005】
米国特許出願公開第2015/0259444A1号明細書は、良好なESCR特性を有するブロー成形用途に好適なポリエチレン樹脂を開示する。この組成物は、かなり高いゼロ剪断粘度と高い分子量を示し、多層包装材におけるインフレーションフィルムの加工性がかなり悪いことを示している。
【0006】
米国特許出願公開第2015/0259455A1号明細書は、良好なESCR特性を有するブロー成形用途に好適なポリエチレン樹脂を開示する。この組成物は、かなり低いメルトフローレートと高い分子量を示し、多層包装材におけるインフレーションフィルムの加工性がかなり悪いことを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2009/085922A1号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2015/0259444A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0259455A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、当該技術分野では、包装用途に好適な高密度ベース樹脂を有するポリエチレン組成物であって、高剛性、高ESCR、良好な加工性、低ゲル含有量、特にWVTRとOTRとにおける強化されたバリア特性に関する特性の改善されたバランスを示すポリエチレン組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、低分子量エチレンポリマー成分及び高分子量エチレンポリマー成分を含むベース樹脂を含むポリエチレン組成物であって、
上記高分子量エチレンポリマー成分は、上記低分子量エチレンポリマー成分よりも大きい重量平均分子量を有し、
上記ベース樹脂は少なくとも958.0kg/mの密度を有し、
当該ポリエチレン組成物は、0.50~0.80g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)、及び10.0~15.0の、重量平均分子量と数平均分子量との比、Mw/Mn、である分子量分布を有するポリエチレン組成物に関する。
【0010】
さらに、本発明は、これまでに又は以降に定義されるとおりポリエチレン組成物を製造するための方法であって、
a)上記低分子量エチレンポリマー成分を含む第1中間材料を製造するために、第1重合反応器の中で重合触媒の存在下でエチレンを重合する工程と、
b)上記第1中間材料を第2重合反応器に移す工程と、
c)上記低分子量エチレンポリマー成分及び上記高分子量エチレンポリマー成分を含むベース樹脂を製造するために、上記第1中間材料の存在下で、エチレン及び4~8個の炭素原子を有するα-オレフィンから選択される少なくとも1種のコモノマーを重合する工程と、
d)上記ベース樹脂をコンパウンディングして、上記ポリエチレン組成物を得る工程と
を備える方法に関する。
【0011】
なおさらに、本発明は、これまでに又は以降に定義されるとおりポリエチレン組成物を含む物品に関する。
【0012】
最後に、本発明は、フィルムの製造のための、これまでに又は以降に定義されるとおりポリエチレン組成物の使用に関する。
【0013】
定義
本発明に係るポリエチレン組成物は、1種以上のポリマーを含む組成物であって、そのポリマー組成物の成分のモル量が合計量で少なくとも50mol%のエチレンモノマー単位となる組成物を表す。
【0014】
用語「ベース樹脂」は、ポリエチレン組成物に存在してもよい、ポリオレフィンと共に利用するための通常の添加剤、例えば安定剤(例えば酸化防止剤)、制酸剤及び/又は抗UV剤、を含まない、上記ポリエチレン組成物のポリマー部分を表す。好ましくは、これらの添加剤の全量は、組成物の1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0.25重量%以下である。
【0015】
「エチレンホモポリマー」は、実質的にエチレンモノマー単位からなるポリマーを表す。大スケールの重合の要請に起因して、エチレンホモポリマーが少量のコモノマー単位を含むことが可能であってもよく、その量は、通常、エチレンホモポリマーの0.1mol%未満、好ましくは0.05mol%未満、最も好ましくは0.01mol%未満である。
【0016】
ポリマーがエチレンモノマー単位及び少なくとも1種のα-オレフィンコモノマーに由来する場合、そのポリマーは「エチレンコポリマー」と表される。α-オレフィンコモノマーは、好ましくは、4~8個の炭素原子、より好ましくは4~6個の炭素原子を有するα-オレフィンコモノマーから選択される。好適なα-オレフィンコモノマー種は、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン又はこれらの混合物である。1-ブテン及び1-ヘキセンが好ましい。
【0017】
重量平均分子量やコモノマー含有量等、少なくとも1つの特性が互いに異なる2種以上のフラクションを含むポリエチレン組成物又はベース樹脂は、「マルチモーダル(多峰性)」と呼ばれる。マルチモーダルのポリエチレン組成物又はベース樹脂が2種の異なるフラクションを含む場合、そのポリエチレン組成物は「バイモーダル(二峰性)」と呼ばれ、これに対応して、マルチモーダルのポリエチレン組成物又はベース樹脂が3種の異なるフラクションを含む場合、そのポリエチレン組成物は「トリモーダル(三峰性)」と呼ばれる。このようなマルチモーダルのポリエチレン組成物又はベース樹脂の分子量分布曲線、すなわち、その分子量の関数としてのポリマー重量分率のグラフの外観、の形態は、モダリティー(様相)に応じて2つ以上の極大を示すか、又は少なくとも個々のフラクションの曲線と比較して明確に幅広になる。
【0018】
すべてのレオロジー測定は、ベース樹脂を用いて、及びポリエチレン組成物を用いて実施することができる。定義の問題として、すべてのレオロジー特性は、好ましくはポリエチレン組成物にも当てはまるものとする。
【0019】
本明細書中に開示される量は、異なる記載がないかぎり、重量%又はwt%で、重量による量に関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、例IE1、CE1及びCE2の、角周波数に対する複素粘度として示されたレオロジー周波数掃引曲線を両対数グラフで表す。
【0021】
図2図2は、例IE1、CE1及びCE2の、logMwに対する分子量分布として示されたGPC曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ベース樹脂
本発明に係るベース樹脂は、重量平均分子量Mw及び/又はコモノマー含有量が異なる少なくとも2種のエチレンホモポリマー又はコポリマー成分を含み、好ましくはそれらからなる。
【0023】
その際、低分子量エチレンポリマー成分は、高分子量エチレンポリマー成分よりも低い重量平均分子量を有する。
【0024】
ベース樹脂は、上記低分子量エチレンポリマー成分及び高分子量エチレンポリマー成分とは異なる他のポリマーを含んでもよい。しかしながら、ベース樹脂が上記低分子量エチレンポリマー成分及び高分子量エチレンポリマー成分からなることが好ましい。
【0025】
いくつかの実施形態では、低分子量エチレンポリマー成分は、エチレンと、4~8個の炭素原子を有するα-オレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン及び1-オクテンから選択される少なくとも1種の、好ましくは1種のコモノマーとのコポリマー成分であってもよい。これらの実施形態では、1-ブテン及び1-ヘキセンがとりわけ好ましい。
【0026】
しかしながら、低分子量エチレンポリマー成分がエチレンホモポリマー成分であることが好ましい。
【0027】
低分子量エチレンポリマー成分は、好ましくは968~975kg/m、より好ましくは969~973kg/mの密度を有する。
【0028】
低分子量エチレンポリマー成分は、好ましくは20~40kg/mol、より好ましくは22~35kg/molの重量平均分子量Mwを有する。
【0029】
さらに、低分子量エチレンポリマー成分は、好ましくは4000~8000g/mol、より好ましくは4500~7500g/molの数平均分子量Mnを有する。
【0030】
なおさらに、低分子量エチレンポリマー成分は、好ましくは75~240kg/mol、より好ましくは85~220kg/molのz平均分子量Mzを有する。
【0031】
好ましくは、低分子量エチレンポリマー成分は、3~8、より好ましくは4~7の比Mw/Mnを有する。
【0032】
低分子量エチレンポリマー成分が、4~12、より好ましくは5~10の比Mz/Mwを有することが好ましい。
【0033】
低分子量エチレンポリマー成分は、好ましくは180~360g/10分、より好ましくは240~320g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16)を有する。
【0034】
低分子量エチレンポリマー成分は、ベース樹脂の総重量に基づき、好ましくは40重量%~48重量%、より好ましくは42~46重量%の量でベース樹脂の中に存在する。
【0035】
好ましくは、高分子量エチレンポリマー成分は、エチレンと少なくとも1種のαオレフィンコモノマーとのコポリマー成分である。
【0036】
好ましくは、上記αオレフィンコモノマーは、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン及び1-オクテン等の4~8個の炭素原子を有するαオレフィンから選択される。1-ブテン及び1-ヘキセンがとりわけ好ましい。
【0037】
上記エチレンコポリマーは、αオレフィンコモノマーとは異なるさらなるコモノマー単位、例えばジエン、極性コモノマー又はケイ素含有コモノマーをさらに含んでもよい。しかしながら、エチレンコポリマーがコモノマー単位としてαオレフィンモノマーのみを含有することが好ましい。
【0038】
エチレンコポリマーが1-ブテン及び/又は1-ヘキセンをコモノマー単位として含有することがとりわけ好ましい。
【0039】
1つのとりわけ好ましい実施形態実施形態では、エチレンコポリマーは、1種のα-オレフィンコモノマーを含む。この実施形態では、α-オレフィンコモノマーは、好ましくは1-ヘキセン又は1-ブテンである。従って、このエチレンコポリマーは、好ましくはエチレン/1-ヘキセンコポリマー又はエチレン/1-ブテンコポリマーのいずれかである。
【0040】
高分子量エチレンポリマー成分は、好ましくは940~955kg/m、より好ましくは942~952kg/mの密度を有する。
【0041】
低分子量エチレンポリマー成分は、好ましくは0.001~0.020g/10分、より好ましくは0.003~0.012g/10分の計算によるメルトフローレートMFR(190℃、2.16)を有する。
【0042】
高分子量エチレンポリマー成分は、ベース樹脂の総重量に基づき、好ましくは52重量%~60重量%、より好ましくは54~58重量%の量でベース樹脂の中に存在する。
【0043】
好ましくは、ベース樹脂の中の低分子量エチレンコポリマーと高分子量エチレンコポリマーとの重量比は、40:60~48:52、より好ましくは44:56~46:54である。
【0044】
密度(ベース樹脂)
本発明に係るベース樹脂は少なくとも958.0kg/mの密度を有する。
【0045】
ベース樹脂の密度は、好ましくは958.0kg/m以上965.0kg/m以下、より好ましくは958.5kg/m以上964.0kg/m以下、さらにより好ましくは959.0kg/m以上963.0kg/m以下、最も好ましくは959.5kg/m以上962.0kg/m以下である。
【0046】
ポリエチレン組成物
上記ベース樹脂に加えて、当該ポリエチレン組成物は、ポリオレフィンと共に利用するための通常の添加剤、例えば安定剤(例えば酸化防止剤)、酸スカベンジャー及び/又はUV安定剤を含んでもよく、好ましくはそのような添加剤を含む。これらの添加剤の量は、好ましくは当該ポリエチレン組成物の1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.25重量%以下である。
【0047】
当該ポリエチレン組成物は、以下の特性を特徴とする。
【0048】
MFR
当該ポリエチレン組成物は、ISO 1133に従って求められる、0.50g/10分~0.80g/10分、より好ましくは0.55g/10分~0.76g/10分、最も好ましくは0.60g/10分~0.74g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0049】
MFR
当該ポリエチレン組成物は、ISO 1133に従って求められる、好ましくは2.0g/10分~3.5g/10分、より好ましくは2.2g/10分~3.2g/10分、最も好ましくは2.3g/10分~2.9g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、5kg)を有する。
【0050】
MFR21
当該ポリエチレン組成物は、ISO 1133に従って求められる、好ましくは30~50g/10分、好ましくは32~48g/10分、最も好ましくは35~45g/10分のメルトフローレートMFR21(190℃、21.6kg)を有する。
【0051】
FRR21/5
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは10~25、より好ましくは12~23、最も好ましくは15~20の、MFRに対するMFR21の比であるフローレート比FRR21/5を有する。
【0052】
FRR21/2
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは50~75、より好ましくは53~73、最も好ましくは55~70の、MFRに対するMFR21の比であるフローレート比FRR21/2を有する。
【0053】
重量平均分子量Mw
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは90~130kg/molの範囲、より好ましくは95~125kg/mol、最も好ましくは100~120kg/molの範囲の重量平均分子量Mwを有する。
【0054】
数平均分子量Mn
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは7.0~10.0kg/molの範囲、より好ましくは7.5~9.5kg/mol、最も好ましくは8.0~9.0kg/molの範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0055】
z平均分子量Mz
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは400~800kg/molの範囲、より好ましくは425~700kg/mol、最も好ましくは450~600kg/molの範囲のz平均分子量Mzを有する。
【0056】
分子量分布Mw/Mn
当該ポリエチレン組成物は、10.0~15.0の範囲、より好ましくは11.0~14.5の範囲、最も好ましくは12.0~14.0の範囲の分子量分布Mw/Mnを有する。
【0057】
密度
当該組成物は、ISO 1183-1:2004に従って求められる、好ましくは958.0kg/m~965.0kg/m、より好ましくは958.5kg/m~964.0kg/m、最も好ましくは959.0kg/m~962.0kg/mの密度を有する。
【0058】
ベース樹脂の密度は、主にコモノマーの量と種類によって影響を受ける。それに加えて、主に使用される触媒に由来するポリマーの性質やメルトフローレートも影響を及ぼす。それに加えて、コモノマーは単一のコモノマーである必要はないことも強調しておきたい。コモノマーの混合物も可能である。
【0059】
当該組成物は、特定のレオロジー特性をさらに特徴とする。
【0060】
eta0.05
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは10000Pa・s~25000Pa・s、好ましくは12500Pa・s~23000Pa・s、より好ましくは14000Pa・s~21000Pa・s、最も好ましくは16000Pa・s~20000Pa・sの0.05rad/sにおける複素粘度eta0.05を有する。
【0061】
粘度eta0.05は、低周波数、つまり低剪断応力で測定され、組成物の分子量に比例する。従って、eta0.05は、当該ポリエチレン組成物の分子量を表す指標と見ることができる。
【0062】
eta300
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは500Pa・s~1000Pa・s、より好ましくは600Pa・s~900Pa・s、最も好ましくは700Pa・s~800Pa・sの300rad/sにおける複素粘度eta300を有する。
【0063】
粘度eta300は、高周波数、つまり高剪断応力で測定され、組成物の流動性に反比例する。従って、eta300は、当該ポリエチレン組成物の加工性を表す指標と見ることができる。
【0064】
747Paの一定剪断応力における粘度eta747
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは10000Pa・s~30000Pa・s、より好ましくは12500Pa・s~27500Pa・s、最も好ましくは15000Pa・s~25000Pa・sの747Paの一定剪断応力における粘度eta747を有する。
【0065】
747Paの一定剪断応力における粘度eta747は重量平均分子量によって影響を受ける。
【0066】
剪断減粘性指数SHI2.7/210
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは10~20、より好ましくは11~19、最も好ましくは12~18の、210kPaの複素剪断弾性率に対する2.7kPaの複素剪断弾性率の比である剪断減粘性指数(剪断減粘度指数)SHI2.7/210を有する。
【0067】
剪断減粘性指数SHI5/200
当該ポリエチレン組成物は、好ましくは8~18、より好ましくは9~17、最も好ましくは10~16の、200kPaの複素剪断弾性率に対する5kPaの複素剪断弾性率の比である剪断減粘性指数SHI5/200を有する。
【0068】
剪断減粘性指数は、レオロジー周波数曲線の上下の複素剪断弾性率の比であり、多分散性のレオロジー的指標と見なすことができる。
【0069】
上述のSHI2.7/210、SHI5/200、eta0.05、eta300及びeta747等のレオロジー特性は、添加剤等の追加成分を含むことによりベース樹脂とは異なるポリエチレン組成物に対して決定されてきている。しかしながら、これらの特性は安定剤パッケージで安定化されたベース樹脂についても決定することができる。ベース樹脂に対して測定されたレオロジー特性は、ポリエチレン組成物で測定された場合と同じ範囲であることが好ましい。
【0070】
引張弾性率
当該ポリエチレン組成物は、ISO 527-1に従って求められる、好ましくは1200MPa以上、より好ましくは1250MPa以上、最も好ましくは1300MPa以上の引張弾性率を有する。引張弾性率の上限は、通常、1600MPa以下、好ましくは1500MPa以下である。
【0071】
引張降伏ひずみ
当該ポリエチレン組成物は、ISO 527-1に従って求められる、好ましくは少なくとも7.0%、より好ましくは少なくとも7.5%、最も好ましくは少なくとも8.0%の引張降伏ひずみを有する。引張降伏ひずみの上限は、通常、10%以下、より好ましくは9.5%以下である。
【0072】
引張降伏応力
当該ポリエチレン組成物は、ISO 527-1に従って求められる、好ましくは少なくとも26MPa、より好ましくは少なくとも27MPa、さらにより好ましくは少なくとも28MPa、最も好ましくは少なくとも29MPaの引張降伏応力を有する。引張破断応力の上限は、通常、32MPa以下、より好ましくは31MPa以下である。
【0073】
曲げ弾性率
当該ポリエチレン組成物は、ISO 178に従って求められる、好ましくは1200MPa以上、より好ましくは1300MPa以上、最も好ましくは1400MPa以上の曲げ弾性率を有する。引張弾性率の上限は、通常、1800MPa以下、好ましくは1600MPa以下である。
【0074】
耐環境応力亀裂性ESCR
当該ポリエチレン組成物は、10% IgepalにおいてASTM D 1693-Bに従って求められる、好ましくは少なくとも72h、より好ましくは少なくとも80h、さらにより好ましくは少なくとも90h、最も好ましくは少なくとも100hの耐環境応力亀裂性ESCR(F50)を有する。耐環境応力亀裂性ESCRの上限は、通常、150h以下、好ましくは140h以下である。
【0075】
物品
なおさらなる態様では、本発明は、これまでに又は以降に記載される方法によって得ることができるこれまでに又は以降に記載されるポリエチレン組成物を含む物品、及び物品の製造のためのそのようなポリエチレン組成物の使用に関する。
【0076】
当該物品は、好ましくはフィルム、又はブロー成形品である。
【0077】
当該物品がインフレーションフィルム又はキャストフィルム又は多層フィルム等のフィルムであることがとりわけ好ましい。多層フィルムでは、当該ポリエチレン組成物は、その多層フィルムの1以上の層に含まれることが好ましい。
【0078】
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、好ましくは、以下の特性を特徴とする。
【0079】
縦方向の引張弾性率(TM-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも1000MPa、より好ましくは少なくとも1050MPaの縦方向の引張弾性率(TM-MD)を有する。縦方向の引張弾性率の上限は、通常、1500MPa以下、好ましくは1400MPa以下である。
【0080】
横方向の引張弾性率(TM-TD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも1000MPa、より好ましくは少なくとも1250MPa、最も好ましくは少なくとも1500MPaの横方向の引張弾性率(TM-TD)を有する。横方向の引張弾性率の上限は、通常、2000MPa以下、好ましくは1800MPa以下である。
【0081】
縦方向の引張破断強度(TSB-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも50MPa、より好ましくは少なくとも60MPa、最も好ましくは少なくとも70MPaの縦方向の引張破断強度(TSB-MD)を有する。縦方向の引張破断強度の上限は、通常、100MPa以下、好ましくは90MPa以下である。
【0082】
横方向の引張破断強度(TSB-TD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも25MPa、より好ましくは少なくとも27MPa、最も好ましくは少なくとも30MPaの横方向の引張破断強度(TSB-TD)を有する。横方向の引張破断強度の上限は、通常、60MPa以下、好ましくは50MPa以下である。
【0083】
縦方向の引張降伏強度(TSY-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも25MPa、より好ましくは少なくとも28MPa、最も好ましくは少なくとも30MPaの縦方向の引張降伏強度(TSY-MDを有する。縦方向の引張降伏強度の上限は、通常、50MPa以下、好ましくは45MPa以下である。
【0084】
横方向の引張降伏強度(TSY-TD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも27MPa、より好ましくは少なくとも28MPa、最も好ましくは少なくとも30MPaの横方向の引張降伏強度(TSY-TD)を有する。横方向の引張降伏強度の上限は、通常、60MPa以下、好ましくは55MPa以下である。
【0085】
縦方向の破断伸び(EB-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも400%、より好ましくは少なくとも450%、最も好ましくは少なくとも475%の縦方向の破断伸び(EB-MD)を有する。縦方向の破断伸びの上限は、通常、750%以下、好ましくは700%以下である。
【0086】
縦方向の降伏伸び(EY-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも3.5%、より好ましくは少なくとも4.0%、最も好ましくは少なくとも4.5%の縦方向の降伏伸び(EY-MD)を有する。縦方向の降伏伸びの上限は、通常、7.5%以下、好ましくは7.0%以下である。
【0087】
横方向の降伏伸び(EY-TD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも1.5%、より好ましくは少なくとも2.0%、最も好ましくは少なくとも2.5%の横方向の降伏伸び(EY-TD)を有する。横方向の降伏伸びの上限は、通常、7.0%以下、好ましくは6.5%以下である。
【0088】
縦方向のエルメンドルフ引裂強度(TS-MD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも0.05N、より好ましくは少なくとも0.09N、最も好ましくは少なくとも0.11Nの縦方向のエルメンドルフ引裂強度(TS-MD)を有する。縦方向のエルメンドルフ引裂強度の上限は、通常、0.50N以下、好ましくは0.45N以下である。
【0089】
横方向のエルメンドルフ引裂強度(TS-TD)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも6.5N、より好ましくは少なくとも7.5N、最も好ましくは少なくとも8.0Nの横方向のエルメンドルフ引裂強度(TS-TD)を有する。横方向のエルメンドルフ引裂強度の上限は、通常、20.0N以下、好ましくは15.0N以下である。
【0090】
耐穿刺性-力(PRF)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも25N、より好ましくは少なくとも28N、最も好ましくは少なくとも30Nの耐穿刺性-力(PRF)を有する。耐穿刺性-力(PRF)の上限は、通常、60N以下、好ましくは55N以下である。
【0091】
耐穿刺性-エネルギー(PRE)
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは少なくとも0.50J、より好ましくは少なくとも0.55J、最も好ましくは少なくとも0.60Jの耐穿刺性-エネルギー(PRE)を有する。耐穿刺性-エネルギー(PRE)の上限は、通常、2.0J以下、好ましくは1.5J以下である。
【0092】
100%相対湿度における水蒸気透過率
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは10.0g/m/日以下、より好ましくは9.5g/m/日以下、最も好ましくは9.0g/m/日以下の23℃、100%相対湿度における水蒸気透過率(WVTR-100%RH)を有する。23℃、100%相対湿度における水蒸気透過率(WVTR-100%RH)の下限は、通常、4.0g/m/日以上、好ましくは5.0g/m/日以上である。
【0093】
90%相対湿度における水蒸気透過率
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは9.0g/m/日以下、より好ましくは8.5g/m/日以下、最も好ましくは8.0g/m/日以下の23℃、90%相対湿度における水蒸気透過率(WVTR-90%RH)を有する。23℃、90%相対湿度における水蒸気透過率(WVTR-90%RH)の下限は、通常、3.0g/m/日以上、好ましくは4.0g/m/日以上である。
【0094】
酸素透過率
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムは、25μmのインフレーションフィルムに対して測定したとき、好ましくは3100cm/m/日以下、より好ましくは3000cm/m/日以下、最も好ましくは2900cm/m/日以下の酸素透過率(OTR)を有する。酸素透過率(OTR)の下限は、通常、1500cm/m/日以上、好ましくは1600cm/m/日以上である。
【0095】
ゲル含有量
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムでは、70μmのキャストフィルムに対して測定したとき、直径1000μm超のゲルについて、好ましくは0.5ゲル/m以下、より好ましくは0.1ゲル/m、最も好ましくはゲルなし/mである。
【0096】
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムでは、70μmのキャストフィルムに対して測定したとき、直径601~1000μmのゲルについて、好ましくは2.0ゲル/m以下、より好ましくは1.5ゲル/m以下、最も好ましくは1.0ゲル/m以下である。直径601~1000μmのゲルの含有量の下限は、通常、0.01ゲル/m以上、より好ましくは0.1ゲル/m以上である。
【0097】
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムでは、70μmのキャストフィルムに対して測定したとき、直径301~600μmのゲルについて、好ましくは35ゲル/m以下、より好ましくは20ゲル/m以下、最も好ましくは17ゲル/m以下である。直径301~600μmのゲルの含有量の下限は、通常、5ゲル/m以上、より好ましくは7ゲル/m以上である。
【0098】
本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムでは、70μmのキャストフィルムに対して測定したとき、直径100~300μmのゲルについて、好ましくは140ゲル/m以下、より好ましくは120ゲル/m以下、最も好ましくは80ゲル/m以下である。直径100~300μmのゲルの含有量の下限は、通常、10ゲル/m以上、より好ましくは20ゲル/m以上である。
【0099】
プロセス
当該ポリエチレン組成物は、ベース樹脂が、重合触媒の存在下で任意の順序で少なくとも2つの連続する反応器段階の多段階プロセスにおいて製造されるプロセスで製造される。
【0100】
重合触媒
好ましい重合触媒は、好ましくはマグネシウム化合物、アルミニウム化合物、及び微粒子担体に担持されたチタン化合物型を含むZiegler-Natta重合触媒である。
【0101】
微粒子担体は、無機酸化物担体、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、シリカ-アルミナ及びシリカ-チタニアであることができる。好ましくは、担体はシリカである。
【0102】
シリカ担体の平均粒子サイズは、通常10~100μmであってよい。しかしながら、担体の平均粒子サイズが15~30μm、好ましくは18~25μmであれば、特別な利点が得られることが判明した。とりわけ、本発明のプロセスで製造されたポリマーの平均粒子サイズは、触媒が20μmの担体上で調製されるか、又は40μmの担体上で調製されるかによらずに、同じであることが判明した。実際、平均粒子サイズが20μmの担体を使用すると、微細なポリマー粒子の割合が低くなることがわかっている。微細なポリマーが減ることは、目詰まりのリスクを低下させ、従って、安定したプロセス操作に貢献する。これは、他方で、良好な均質性を有するポリマーフィルムの製造にも役立つ。好適な担体材料の例は、例えば、Ineos Silicas(イネオスシリカス)(旧Crossfield(クロスフィールド))が製造販売しているES747JR、及びGrace(グレース)が製造販売しているSP9-491である。
【0103】
上記マグネシウム化合物は、マグネシウムジアルキルとアルコールとの反応生成物である。このアルコールは、直鎖状又は分枝状の脂肪族モノアルコールである。好ましくは、このアルコールは、6~16個の炭素原子を有する。分枝状のアルコールがとりわけ好ましく、2-エチル-1-ヘキサノールは、好ましいアルコールの一例である。上記マグネシウムジアルキルは、同じであってもよいし異なっていてもよい2つのアルキル基に結合するマグネシウムの任意の化合物であってよい。ブチル-オクチルマグネシウムは、好ましいマグネシウムジアルキルの一例である。
【0104】
上記アルミニウム化合物は塩素含有アルミニウムアルキルである。とりわけ好ましい化合物は、アルミニウムアルキルジクロリド及びアルミニウムアルキルセスキクロリドである。
【0105】
上記チタン化合物は、ハロゲン含有チタン化合物、好ましくは塩素含有チタン化合物である。とりわけ好ましいチタン化合物は四塩化チタンである。
【0106】
上記触媒は、欧州特許出願公開第688794号明細書に記載されているように、上記担体を上述の化合物と連続的に接触させることにより調製することができる。あるいは、上記触媒は、国際公開第01/55230号パンフレットに記載されているように、まず上記成分から溶液を調製し、次いでその溶液を担体と接触させることにより調製することができる。さらに好適な触媒は欧州特許出願公開第2 799 456号明細書に記載されている。
【0107】
上述の固体触媒成分は、好ましくはアルミニウムトリアルキル化合物であるアルミニウムアルキル共触媒と接触させられ、その後、この固体触媒成分は重合ですることができる。固体触媒成分とアルミニウムアルキル共触媒との接触は、触媒を重合反応器に導入する前に行うことができるし、又は上記2つの成分を別々に重合反応器に導入することにより行うこともできる。
【0108】
プロセスの詳細
本発明に係るポリエチレン組成物を製造するためのプロセスは、以下の
a)上記低分子量エチレンポリマー成分を含む第1中間材料を製造するために、第1重合反応器の中で重合触媒の存在下でエチレンを重合する工程と、
b)上記第1中間材料を第2重合反応器に移す工程と、
c)上記低分子量エチレンポリマー成分及び上記高分子量エチレンポリマー成分を含むベース樹脂を製造するために、上記第1中間材料の存在下で、エチレン及び4~8個の炭素原子を有するα-オレフィンから選択される少なくとも1種のコモノマーを重合する工程と、
d)上記ベース樹脂をコンパウンディングして、上記ポリエチレン組成物を得る工程と
を備える。
【0109】
第1中間材料は、好ましくは、これまでに又は以降に定義されたとおりの低分子量エチレンポリマー成分を含む。
【0110】
ベース樹脂は、これまでに又は以降に定義されたとおりの低分子量エチレンポリマー成分及び高分子量エチレンポリマー成分を含むことが好ましい。
【0111】
このベース樹脂及びポリエチレン組成物は、好ましくは、これまでに又は請求項に記載されたベース樹脂及びポリエチレン組成物の特性によって規定される。
【0112】
第1反応器、好ましくは第1スラリー相反応器、より好ましくは第1ループ反応器の中の温度は、通常、50~115℃、好ましくは60~110℃、特に70~100℃である。圧力は、通常、1~150bar、好ましくは1~100barである。
【0113】
このスラリー相重合は、スラリー相重合に使用されるいずれかの公知の反応器で行われてもよい。このような反応器としては、連続撹拌槽反応器及びループ反応器が挙げられる。重合をループ反応器で行うことがとりわけ好ましい。このような反応器では、スラリーは、循環ポンプを使用して閉じたパイプに沿って高速度で循環される。ループ反応器は一般に当該技術分野で公知であり、例は、例えば、米国特許第4,582,816号明細書、米国特許第3,405,109号明細書、米国特許第3,324,093号明細書、欧州特許出願公開第479186号明細書及び米国特許第5,391,654号明細書に与えられている。
【0114】
スラリー相重合を、流体混合物の臨界温度と臨界圧力以上で行うことが有利な場合がある。そのような操作は、米国特許第5,391,654号明細書に記載されている。このような操作では、温度は、通常、少なくとも85℃、好ましくは少なくとも90℃である。さらには、温度は、通常、110℃以下、好ましくは105℃以下である。これらの条件下での圧力は、通常、少なくとも40bar、好ましくは少なくとも50barである。さらには、圧力は、通常、150bar以下、好ましくは100bar以下である。好ましい実施形態では、スラリー相重合工程は、反応温度及び反応圧力が炭化水素媒体とモノマーと水素と任意のコモノマーとによって形成される混合物の等価臨界点以上である超臨界条件で実施され、重合温度は形成されるポリマーの融解温度よりも低い。
【0115】
スラリーは、連続的又は間欠的にスラリー相反応器から取り出される。間欠的な取り出しの好ましい方法は、反応器から濃縮スラリーのバッチを取り出す前にスラリーを濃縮させる沈降脚の使用である。沈降脚の使用は、とりわけ、米国特許第3,374,211号明細書、米国特許第3,242,150号明細書及び欧州特許出願公開第1 310 295号明細書に開示されている。連続的な取り出しは、とりわけ、欧州特許出願公開第891 990号明細書、欧州特許出願公開第1 415 999号明細書、欧州特許出願公開第1 591 460号明細書及び国際公開第2007/025640号パンフレットに開示されている。連続的な取り出しは、有利には、欧州特許出願公開第1 415 999号明細書及び欧州特許出願公開第1 591 460号明細書に開示されている好適な濃縮方法と組み合わされる。
【0116】
反応器から取り出されるスラリーを濃縮するために、沈降脚が使用される。このようにして取り出されるストリームは、平均して反応器内のスラリーよりも体積あたり多くのポリマーを含む。これにより、反応器に戻す必要のある液体の量が減り、これにより設備のコストが下がるという恩恵がある。商業規模のプラントでは、ポリマーと共に取り出された流体は、フラッシュタンクで蒸発し、そこからコンプレッサで圧縮され、スラリー相反応器へとリサイクルされる。
【0117】
しかしながら、沈降脚はポリマーを間欠的に取り出す。これは、反応器内の圧力やその他の変数が取り出しの周期に応じて変動することを生じさせる。また、ポリマーの取り出し量は限られており、沈降脚のサイズと数に依存する。これらの欠点を克服するためには、連続的な取り出しが好ましいことが多い。
【0118】
他方、連続的な取り出しには、通常は、ポリマーが反応器内に存在するのと同じ濃度でポリマーを取り出すという問題がある。圧縮されるべき炭化水素の量を減らすために、連続取出口は、欧州特許出願公開第1 415 999号明細書及び欧州特許出願公開第1 591 460号明細書に開示されているように、ハイドロサイクロン又は篩等の好適な濃縮装置と有利に組み合わされる。ポリマーに富むストリームは次いでフラッシュに導かれ、ポリマーが少ないストリームは直接反応器に戻される。
【0119】
スラリー相反応器で重合されたポリエチレンフラクションのメルトフローレートを調整するために、好ましくは水素が反応器に導入される。
【0120】
第1反応段階の水素供給量は、第1スラリー相反応器における水素対エチレン比が300~750mol/kmol、より好ましくは350~700mol/kmolを満たすように、エチレン供給量に対して調整することが好ましい。
【0121】
第1スラリー相反応器で生成されるポリエチレンフラクションは、エチレンホモポリマーフラクション又はエチレンコポリマーフラクションであることができる。
【0122】
第1スラリー相反応器にはコモノマーを導入しないことが好ましい。
【0123】
第1スラリー相反応器における滞留時間及び重合温度は、典型的には、全ベース樹脂の40~48重量%、好ましくは42~46重量%の量のエチレンホモポリマーフラクションを重合するように調整される。
【0124】
ポリマースラリーを第2重合反応器に向ける前に、ポリマースラリーを、ポリマースラリーから炭化水素を実質的に除去するためのパージ工程に供することができる。パージ工程は、好ましくは、2~10bar(バール)の圧力と50~100℃の温度で運転されるフラッシュ容器内で行われる。パージ工程を適用した後、第1スラリー反応器で製造された第1中間材料は、第2反応器に、好ましくは気相反応器に、より好ましくは流動床気相反応器に移される。
【0125】
流動床気相反応器では、オレフィンが、上方に移動するガス流中で重合触媒の存在下で重合される。この反応器は、典型的には、流動化グリッドの上に配置された、活性触媒を含む成長ポリマー粒子を含む流動床を含む。
【0126】
ポリマー床は、オレフィンモノマー、最終的にはコモノマー(1種又は複数種)、最終的には水素等の連鎖成長制御剤又は連鎖移動剤、及び最終的には不活性ガスを含む流動化ガスの助けを借りて流動化される。これにより、不活性ガスは、スラリー相反応器で使用される不活性ガスと同じものでもよいし異なっていてもよい。流動化ガスは、反応器の底部にある入口チャンバに導入される。ガス流が入口チャンバの横断面に均一に分配されるようにするために、入口パイプは、例えば米国特許第4,933,149号明細書及び欧州特許出願公開第684 871号明細書の当該技術分野で公知の流れの分割要素を備えてもよい。
【0127】
入口チャンバから、ガス流は、流動化グリッドを通って流動床へと上方に通される。流動化グリッドの目的は、ガス流を床の断面積に沿って均等に分割することである。流動化グリッドは、国際公開第2005/087261号パンフレットに開示されているように、反応器の壁に沿って掃引するガス流を確立するように配置されることもある。他のタイプの流動化グリッドは、とりわけ、米国特許第4,578,879号明細書、欧州特許出願公開第600 414号明細書及び欧州特許出願公開第721 798号明細書に開示されている。概要はGeldart及びBayens:The Design of Distributors for Gas-fluidised Beds、Powder Technology、第42巻、1985に記載されている。
【0128】
流動化ガスは流動床を通過する。流動化ガスの表面速度(空塔速度)は、流動床に含まれる粒子の最小流動化速度よりも高くなければならず、というのも、そうでなければ流動化が起こらないからである。他方、ガスの速度は気流輸送の開始速度よりも低くなければならず、というのも、そうしなければ床全体が流動化ガスに巻き込まれてしまうからである。最小流動化速度と気流輸送の開始速度は、粒子の特性がわかっている場合、一般的な工学的手法を用いて計算することができる。その概要は、とりわけGeldart:Gas Fluidisation Technology、J. Wiley & Sons、1996に記載されている。
【0129】
流動化ガスが活性触媒を含む床と接触すると、モノマーや連鎖移動剤などのガス中の反応性成分が触媒の存在下で反応し、ポリマー生成物が生成される。同時に、ガスは反応熱で加熱される。
【0130】
その後、未反応の流動化ガスは反応器の上部から取り除かれ、圧縮されて反応器の入口チャンバにリサイクルされる。反応器に入る前に、新鮮な反応物を流動化ガス流に導入して、反応と生成物の取り出しによる損失を補う。一般的には、流動化ガスの組成を分析し、組成を一定に保つためにガス成分を導入することが知られている。実際の組成は、生成物の所望の特性と、重合に使用する触媒によって決定される。
【0131】
その後、ガスは熱交換器で冷却され、反応熱が除去される。ガスを床の温度よりも低い温度まで冷却することで、反応によって床が加熱されるのを防がれる。ガスの一部が凝縮する温度までガスを冷却することが可能である。液滴が反応ゾーンに入ると、液滴は気化する。そのとき、この気化熱が反応熱の除去に寄与する。この種の動作は凝縮モードと呼ばれ、そのバリエーションは、とりわけ、国際公開第2007/025640号パンフレット、米国特許第4,543,399号明細書、欧州特許出願公開第699 213号明細書、及び国際公開第94/25495号パンフレットに開示されている。また、欧州特許出願公開第696 293号明細書に開示されているように、リサイクルガス流に凝縮剤を添加することも可能である。凝縮剤は、プロパン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ブタン、イソブタンなどの非重合性成分であり、冷却器内で少なくとも部分的に凝縮される。
【0132】
ポリマー生成物は、連続的又は間欠的に気相反応器から取り出されてもよい。また、これらの方法の組み合わせが使用されてもよい。連続的な取り出しは、とりわけ、国際公開第00/29452号パンフレットに開示されている。間欠的な取り出しは、とりわけ米国特許第4,621,952号明細書、欧州特許出願公開第188 125号明細書、欧州特許出願公開第250 169号明細書及び欧州特許出願公開第579 426号明細書に開示されている。
【0133】
上記少なくとも1つの気相反応器の頂部は、いわゆる離脱ゾーンを含んでもよい。そのようなゾーンでは、反応器の直径を大きくしてガス速度を低下させ、流動化ガスとともに床から運ばれた粒子が床に戻って沈むようにする。
【0134】
床レベルは、当該技術分野で公知の様々な技術によって観察されてもよい。例えば、反応器の底部と床の特定の高さとの間の圧力差を反応器の全長にわたって記録されてもよく、その圧力差の値に基づいて床レベルを計算してもよい。このような計算により、時間平均されたレベルが得られる。超音波センサや放射性センサを使用することも可能である。これらの方法によって、瞬間的なレベルを得てよく、当然、それを経時的に平均化して時間平均の床レベルを得てもよい。
【0135】
また、必要に応じて、少なくとも1つの気相反応器に帯電防止剤(1種又は複数種)が導入されてもよい。適切な帯電防止剤及びその使用方法は、とりわけ、米国特許第5,026,795号明細書、米国特許第4,803,251号明細書、米国特許第4,532,311号明細書、米国特許第4,855,370号明細書及び欧州特許出願公開第560 035号明細書に開示されている。これらは通常、極性化合物であり、その例としては、とりわけ水、ケトン、アルデヒド、アルコールが挙げられる。
【0136】
反応器は、流動床内での混合をさらに促進するために、機械的な撹拌器を含んでもよい。適切な撹拌機のデザインの例は、欧州特許出願公開第707 513号明細書に与えられている。
【0137】
気相反応器での気相重合における温度は、典型的には、少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80℃である。この温度は、典型的には、105℃以下、好ましくは95℃以下である。圧力は、典型的には、少なくとも10bar、好ましくは少なくとも15barであるが、典型的には30bar以下、好ましくは25bar以下である。
【0138】
第1の気相反応器で重合されるポリエチレンフラクションのメルトフローレートを調整するために、水素が反応器に導入される。
【0139】
気相反応器内の水素対エチレン比が50~200mol/kmol、より好ましくは70~170mol/kmol、最も好ましくは90~150mol/kmolを満たすように、水素供給量をエチレン供給量に対して調整することが好ましい。
【0140】
気相反応器では、好ましくはエチレンコポリマーフラクションが生成される。従って、流動化ガス流は、好ましくは、4~8個の炭素原子を有するα-オレフィンコモノマーからなる群から選択されるコモノマーを含む。好適なα-オレフィンコモノマー種は、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンである。1-ブテン又は1-ヘキセンが最も好ましい。第1気相反応器で使用されるコモノマーは、スラリー相反応器で使用されるコモノマーと同じであってもよいし異なっていてもよい。コモノマー供給量は、少なくとも1.0~50mol/kmol、より好ましくは2.5~30mol/kmol、最も好ましくは5.0~25mol/kmolのコモノマー対エチレン比を満たすように、エチレン供給量に対して調整されることが好ましい。
【0141】
気相反応器内の滞留時間と重合温度は、ベース樹脂全体に対して、典型的には52~60重量%、最も好ましくは54~58重量%の量のエチレンコポリマーフラクションを重合するように調整される。
【0142】
さらに、好ましくは低分子量エチレンポリマー成分と高分子量エチレンポリマー成分とからなる気相反応器から出てくる最終的なベース樹脂は、好ましくは少なくとも958.0kg/mの密度を有する。好ましくは、ベース樹脂の密度は、958.0kg/m以上965.0kg/m以下、より好ましくは958.5kg/m以上964.0kg/m以下、さらにより好ましくは959.0kg/m以上963.0kg/m以下、最も好ましくは959.5kg/m以上962.0kg/m以下である。
【0143】
第1重合ゾーン及び第2重合ゾーンにおける低分子量エチレンポリマー成分及び高分子量エチレンポリマー成分の重合は、プレポリマー化(予備重合)工程が先行して行われてもよい。プレポリマー化の目的は、低温及び/又は低モノマー濃度で触媒上に少量のポリマーを重合することである。プレポリマー化により、スラリー中の触媒の性能を向上させること、及び/又は最終的なポリマーの特性を変更することが可能である。プレポリマー化工程は、スラリー中で行っても、気相中で行ってもよい。好ましくは、プレポリマー化はスラリー中で、好ましくはループ反応器中で行われる。次に、好ましくは、プレポリマー化は不活性な希釈剤中で行われ、好ましくは、この希釈剤は、1~4個の炭素原子を有する低沸点炭化水素又はそのような炭化水素の混合物である。
【0144】
プレポリマー化工程における温度は、典型的には0~90℃、好ましくは20~80℃、より好ましくは40~70℃である。
【0145】
圧力は臨界ではなく、典型的には1~150bar、好ましくは10~100barである。
【0146】
重合触媒は、任意の重合段階に供給することができるが、好ましくは、第1重合段階、又は存在する場合にはプレポリマー化段階に供給される。触媒成分は、好ましくは全てプレポリマー化工程に導入される。好ましくは、プレポリマー化工程の反応生成物は、次に第1重合反応器に導入される。プレポリマー成分は、プレポリマー化工程の後に第1の実際の重合工程で生成される成分の量に、好ましくは低分子量エチレンポリマー成分の量に算入される。
【0147】
コンパウンディング
本発明のポリエチレン組成物は、好ましくは、反応器から典型的にはベース樹脂粉末として得られるベース樹脂を押出機で押し出し、次いで当該技術分野で公知の方法でポリマーペレットにペレット化して本発明のポリオレフィン組成物を形成する、コンパウンディング工程をさらに含む多段階プロセスで製造される。
【0148】
任意に、添加剤又は他のポリマー成分を、上述したような量でコンパウンディング工程中に当該組成物に加えることができる。好ましくは、反応器から得られた本発明の組成物は、当該技術分野で公知の方法で添加剤と共に押出機でコンパウンディングされる。
【0149】
押出機は、例えば任意の従来から使用される押出機であってもよい。本コンパウンディング工程のための押出機の一例は、日本製鋼所、神戸製鋼所又はFarrel-Pomini(ファレル・ポミニ)によって供給される押出機、例えばJSW 460P又はJSW CIM90Pであってもよい。
【0150】
フィルム製造
ポリマーフィルムは、通常、インフレーションフィルム押出により、又はキャストフィルム押出により製造される。
【0151】
多層フィルムの場合には、インフレーションフィルム押出又はキャストフィルム押出の際にフィルムのいくつかの層を共押出又は積層することができる。
【0152】
これらのプロセスは当該技術分野で周知であり、本発明に係るポリエチレン組成物を含むフィルムを製造するために容易に適合させることができる。
【0153】
使用
本発明は、さらに、これまでに又は以降に記載されるフィルム等の物品の製造のための、これまでに又は以降に規定されるとおりポリエチレン組成物の使用に関する。
【実施例
【0154】
1. 測定方法
a)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)はISO 1133に従って測定され、g/10分で表される。MFRは、ポリマーの流動性、従って加工性の指標である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度は低い。ポリエチレンのMFRは190℃の温度及び5kgの荷重で測定され、ポリエチレンのMFRは190℃の温度及び2.16kgの荷重で測定され、ポリエチレンのMFR21は、190℃の温度及び21.6kgの荷重で測定される。量FRR(フローレート比)は、異なる荷重におけるフローレートの比を表す。従って、FRR21/5はMFR21/MFRの値を表し、従って、FRR21/2はMFR21/MFRの値を表す。
【0155】
第2重合反応器で重合された高分子量エチレンポリマー成分のMFRは、第1重合反応器で重合された低分子量エチレンポリマー成分のMFR及びベース樹脂のMFRから以下のとおり算出される。
LogMFRfinal=重量%1st×LogMFR1st+重量%2nd×LogMFR2nd
上記式中、
「final」は、「ポリエチレン樹脂の」を意味し、
「1st」は、「第1反応器で生成されたポリマー成分の」を意味し、
「2nd」は、「第2反応器で生成されたポリマー成分の」を意味する。
【0156】
b)密度
ポリマーの密度は、EN ISO 1872-2(2007年2月)に従って調製した圧縮成形試験片に対して、ISO 1183-1:2004 方法Aに従って測定し、kg/mで与えられる。
【0157】
c)コモノマー含有量
13C-NMRスペクトルは、Bruker 400MHz分光計で、1,2,4-トリクロロベンゼン/ベンゼン-d6(90/10w/w)に溶解した試料から130℃で記録した。%重量と%molとの変換は、計算により実施することができる。
【0158】
d)レオロジーパラメータ
ポリマーの融液の動的剪断測定による特性解析は、ISO規格6721-1及び6721-10に従う。測定は、25mm平行平板の配置を備えるAnton Paar MCR501応力制御型回転レオメータで実施した。測定は、窒素雰囲気を使用し、歪みを線形粘弾性領域内に設定して圧縮成形平板で行った。振動剪断試験は、0.01~600rad/sの周波数範囲を適用し、ギャップを1.3mmに設定して190℃で行った
【0159】
動的剪断実験では、正弦波的に変化する剪断歪み又は剪断応力(それぞれ歪み及び応力を制御したモード)でプローブを均一な変形に供する。制御歪み実験では、下記式で表すことができる正弦波歪みにプローブを供する。
γ(t)=γsin(ωt) (1)
【0160】
加えた歪みが線形粘弾性領域の範囲内にあれば、得られる正弦波応力応答は下記式で与えられうる。
σ(t)=σsin(ωt+δ) (2)
上記式中、σ、及びγはそれぞれ応力振幅及び歪み振幅であり、ωは角周波数であり、δは位相差(加えた歪みと応力応答との間の損失角)であり、tは時間である。
【0161】
動的試験結果は、典型的にはいくつかの異なるレオロジー関数、つまり剪断貯蔵弾性率G’、剪断損失弾性率G”、複素剪断弾性率G、複素剪断粘度η、動的剪断粘度η’、複素剪断粘度の異相成分η”及び損失正接tanηによって表され、上記レオロジー関数は以下のとおりに表すことができる。
【数1】
【0162】
MWDと相関しMwに依存しない、いわゆる剪断減粘性指数(剪断減粘度指数、shear thinning index)の決定は、式9に記載されるように行われる。
【数2】
【0163】
例えば、SHI(2.7/210)は、2.7kPaに等しいGの値について決定されるPa・s単位の複素粘度の値を、210kPaに等しいGの値について決定されるPa・s単位の複素粘度の値で除算することにより定義され、SHI(5/200)は、5kPaに等しいGの値について決定されるPa・s単位の複素粘度の値を、200kPaに等しいGの値について決定されるPa・s単位の複素粘度の値で除算することにより定義される。
【0164】
貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、複素弾性率(G)及び複素粘度(η)の値は、周波数(ω)の関数として得た。
【0165】
これにより、例えばη 300rad/s(eta 300rad/s)は、300rad/sの周波数における複素粘度に対する略号として使用され、η 0.05rad/s(eta 0.05rad/s)は、0.05rad/sの周波数における複素粘度に対する略号として使用される。
【0166】
損失正接tan(δ)は、与えられた周波数における損失弾性率(G”)及び貯蔵弾性率(G’)の比として定義される。これにより、例えばtan0.05は、0.05rad/sにおける損失弾性率(G”)及び貯蔵弾性率(G’)の比に対する略号として使用され、tan300は、300rad/sにおける損失弾性率(G”)及び貯蔵弾性率(G’)の比に対する略号として使用される。
【0167】
弾性バランスtan0.05/tan300は、損失正接tan0.05及び損失正接tan300の比として定義される。
【0168】
上述のレオロジー関数に加えて、いわゆる弾性指数EI(x)等の他のレオロジーパラメータを決定することもできる。弾性指数Ei(x)はxkPaの損失弾性率G”の値に対して決定された貯蔵弾性率G’の値であり、式10によって記述することができる。
EI(x)=(G”=xkPa)に対するG’[Pa] (10)
【0169】
例えば、EI(5kPa)は、5kPaに等しいG”の値に対して決定される貯蔵弾性率G’の値によって定義される。
【0170】
多分散指数PIは式11によって定義される。
【数3】
上記式中、ωCOPは、貯蔵弾性率G’が損失弾性率G”に等しいときの角周波数として決定される交差(クロスオーバー)角周波数である。
【0171】
値は、Rheoplusソフトウェアによって定義されるような、一点内挿手順によって決定される。与えられたG値が実験的に到達されない状況では、値は、以前と同じ手順を使用して、外挿によって決定される。両方のケース(内挿又は外挿)において、Rheoplusからのオプション「Interpolate y-values to x-values from parameter(パラメータからy値をx値に内挿(補間)する)」及び「logarithmic interpolation type(対数的な内挿型)」を適用した。
【0172】
参考文献
[1]「Rheological characterization of polyethylene fractions」、Heino,E.L.、Lehtinen,A.、Tanner J.、Seppala,J.、Neste Oy、Porvoo、Finland、Theor.Appl.Rheol.,Proc.Int.Congr.Rheol、11th(1992)、1、360-362.
[2]「The influence of molecular structure on some rheological properties of polyethylene」、Heino,E.L.、Borealis Polymers Oy、Porvoo、Finland、Annual Transactions of the Nordic Rheology Society、1995.
[3]「Definition of terms relating to the non-ultimate mechanical properties of polymers」、Pure & Appl.Chem.、第70巻、第3号、701-754頁、1998.
【0173】
e)粘度eta747
本発明に関連して使用される1つの方法は、ポリマーのレオロジーに関するもので、非常に低い一定の剪断応力におけるポリマーの粘度の決定に基づく。この方法では、747Paの剪断応力が選択される。この剪断応力におけるポリマーの粘度は、190℃の温度で測定され、ポリマーの重力方向の流れに反比例すること、すなわち粘度が高いほど重力方向の流れが低くなることがわかっている。
【0174】
747Paの剪断応力における粘度の測定は、回転式レオメータを使用して行う。このレオメータは、例えばAnton Paar(アントンパール)のMCRシリーズレオメータのような定応力式レオメータであることができる。レオメータとその機能については、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、第2版、第14巻、492-509頁に記載されている。測定は、2枚の直径25mmのプレートの間に一定の剪断応力をかけて行う(回転方向は一定)。プレート間の隙間は1.2mmである。厚さ1.2mmのポリマー試料をプレート間に挿入する。
【0175】
測定を開始する前に2分間、試料を温度調整する。測定は190℃で行う。温度調整後、所定の応力を加えて測定を開始する。応力を1800秒間維持し、システムを定常状態に近づける。この後、測定を開始し、粘度を算出する。
【0176】
測定原理は、精密モータによってプレート軸に一定のトルクをかけることである。次いで、このトルクは、試料中の剪断応力に変換される。この剪断応力は一定に保たれる。剪断応力によって生じる回転速度を記録し、試料の粘度の算出に使用する。
【0177】
f)分子量
分子量平均値(Mz、Mw、Mn)、分子量分布(MWD)、及び多分散性指数PDI=Mw/Mn(Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量である)で表される分子量分布の広さは、ISO 16014-1:2003、ISO 16014-2:2003、ISO 16014-4:2003、及びASTM D 6474-12に準拠したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、下記式を用いて測定した。
【数4】
【0178】
一定の溶出量間隔ΔVに対して、A及びMは、それぞれ、溶出量Vに関連するクロマトグラフィーのピークのスライス面積及びポリオレフィンの分子量(MW)であり、Nは積分限界間のクロマトグラムから得られたデータポイントの数に等しい。
【0179】
赤外(IR)検出器(PolymerChar(ポリマーチャ)(バレンシア、スペイン)製IR4若しくはIR5)又はAgilent Technologies(アジレント・テクノロジーズ)製示差屈折計(RI)のいずれかを備え、3本のAgilent-PLgel Olexis及び1本のAgilent-PLgel Olexis Guardカラムを装着した高温GPC装置を使用した。移動相として、250mg/Lの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノールで安定化した1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を使用した。クロマトグラフィーシステムは160℃で、1mL/分の一定流量で運転した。1回の分析につき200μLの試料溶液を注入した。データ収集は、Agilent Cirrusソフトウェアバージョン3.3又はPolymerChar GPC-IR制御ソフトウェアのいずれかを用いて行った。
【0180】
0.5kg/mol~11500kg/molの範囲の19種類の細幅MWDポリスチレン(PS)標準物質を用いて、ユニバーサルキャリブレーション(ISO 16014-2:2003に準拠)を用いてカラムセットを較正した。PS標準物質は、室温で数時間かけて溶解させた。ポリスチレンピーク分子量のポリオレフィン分子量への変換は、Mark Houwink方程式と以下のMark Houwink定数を使用して行う。
PS=19×10-3mL/g、αPS=0.655
PE=39×10-3mL/g、αPE=0.725
【0181】
3次多項式フィッティングを使用して、検量データを当てはめた。
【0182】
全てのサンプルは、0.1mg/ml程度の濃度範囲で調製し、PEについては、1000ppmのIrgafos168で安定化させた新たに蒸留したTCB中で、160℃で6時間、連続的に穏やかに振盪しながら溶解させた。
【0183】
g)DSC分析
融解温度Tm及び結晶化温度Tcは、TA Instrument Q2000示差走査熱量計(DSC)を用いて、5~7mgの試料に対して測定した。DSCは、ISO 11357/第3部/方法C2に従って、-30~+225℃の温度範囲でスキャン速度10℃/分の加熱/冷却/加熱サイクルで実行した。結晶化温度及び結晶化熱(Hc)は冷却工程から決定し、融解温度(Tm)及び融解熱(Hf)は第2の加熱工程から決定する。
【0184】
h)引張弾性率及び引張特性
引張特性は、ISO 527-1に従って、試験片タイプ1Aを用いて、クロスヘッド速度1mm/分で、23℃で測定する。試験片は、シートからタイプ1Aの寸法通りに切り出し、厚さ4.0mmの圧縮成形シートは、ISO 1872-2に準拠して、成形温度180℃で作成した。材料を、軽い接触圧を5分間加えることにより予熱した。その後、全圧を5分間加え、その後、材料を15℃/分の冷却速度で冷却し、脱型温度は40℃であった。
【0185】
i)曲げ弾性率
曲げ弾性率は、ISO 178に従って測定する。80×10×4.0mm(長さ×幅×厚さ)の寸法を有する試験片は、EN ISO 1872-2に従った圧縮成形によって調製したISO 527-1 タイプ1Aから切り出した。試験片は、23℃、相対湿度50%で調整した。支点間のスパンの長さは64mmであり、試験速度は2mm/分である。
【0186】
j)耐環境応力亀裂性(ESCR)
ESCRは、ASTM D 1693(50℃、10% Igepal CO630)に従って行った。
【0187】
ASTM D 1693 条件Bに従った試験片は、厚さ1.90±0.06mmのシートを圧縮成形して作成した。圧縮成形はISO 1872-2に従い、成形温度180℃で行った。材料を、軽い接触圧を5分間加えることにより予熱した。その後、全圧を5分間加え、その後、材料を15℃/分の冷却速度で冷却した。脱型温度は40℃であった。シートから試験片(38.0±2.5mm×13±0.8mm)を切り出し、ASTM D 1693の条件Bに従ってノッチを付けた。
【0188】
k)フィルムの引張特性
フィルムの引張特性は、ISO 527-3に従い、厚さ25μmのインフレーションフィルムを使用した試験片タイプ2を用いて、23℃で測定する。縦方向(機械方向)の引張弾性率(TM-MD)及び横方向(機械方向の直角方向)の引張弾性率(TM-TD)は、ASTM D882に準拠し、試験速度5mm/分、ゲージ長50mmを用いて、1%セカント弾性率として測定した。
【0189】
引張破断強度(TSB-MD及びTSB-TD)、引張降伏強度(TSY-MD及びTSY-TD)、破断伸び(EB-MD)、降伏伸び(EY-MD及びEY-TD)は、ISO 527-3の試験片タイプ2に準拠し、ゲージ長50mm、試験速度500mm/分で測定した。
【0190】
l)引裂き強さ
引裂き試験は、25μmのインフレーションフィルムに対してASTM 1922に従って行う。エルメンドルフ引裂強度は、フィルム試料に引き裂きを伝播させるのに必要な力(単位:ニュートン)である。エルメンドルフ引裂強度は、正確に較正した振り子装置を用いて測定する。重力を利用して振り子が弧を描くように動き、あらかじめ切られたスリットから試料を引き裂く。試験片は片側が振り子で、反対側が固定部材で保持されている。振り子によるエネルギーの損失は、ポインタで示される。目盛りの表示は、試験片を引き裂くのに必要な力の関数である。振り子の重さの選択は、試験片の吸収エネルギーに基づいており、振り子容量の20~80%の間が好ましい。引裂き力と試験片の厚さには直接的な線形関係はない。それゆえ、同じ厚さの範囲で得られたデータのみを比較する必要がある。
【0191】
m)耐穿刺性
ASTM D5748に従い、25μmのインフレーションフィルムに対して突出耐穿刺性試験を行う。この試験方法は、直径19mmの梨地状のTFEフルオロカーボンをコーティングした特定サイズのプローブを、標準的な低速度、単一の試験速度(250mm/分)で貫入させたときのフィルム試料の抵抗を測定するものである。この試験方法は標準的な条件で行うと、二軸性の応力負荷を与える。150mm×150mmのフィルム試験片を治具に合わせてカットし、23±2℃、相対湿度50±5%で調整を行う。
【0192】
穿刺抵抗力(N)は試験中に観測された最大の力又は最高の力であり、穿刺抵抗エネルギー(J)はプローブが試験片を破るまでに使用されるエネルギーであり、いずれも高精度の500Nロードセル及びクロスヘッド位置センサを用いて測定する。
【0193】
n)水蒸気透過率(WVTR)
水分バリア性、すなわち水蒸気透過率は、厚さ25μmのインフレーションフィルムに対して測定する。試験片は、周囲の大気圧下で2つのチャンバの間に密閉された半バリアとして取り付けられる。試験セルの端は、外気がセル内に漏れ込むことを防ぐためにしっかりと密閉する。試験セルの上半分には、(加湿空気として)水蒸気が連続的に導入される。水蒸気は湿度発生器でHPLCグレードの水を用いて供給される。試験セルの下半分には、窒素が連続的に導入される。窒素は、モジュールに入る前に、インラインのモレキュラーシーブ型乾燥剤を通過する。これは、透過率データに影響を及ぼす可能性がある水蒸気を窒素ガスが含まないことを確実にすることに資する。水蒸気がフィルム試料を透過すると、水蒸気は窒素ガスに抱き込まれ、変調された赤外線センサを通って運ばれる。センサの電子回路は、センサを通過した水蒸気の量に正比例した電圧を発生する。水蒸気透過率試験は、ASTM F1249:2006及びISO15106-2:2003に準拠し、37.8℃、90%相対湿度(RH)及び37.8℃、100%相対湿度(RH)において、キャリアとして10sccmのNガスを使用し、フィルムの表面積を10cmとして行う。
【0194】
o)酸素透過率(OTR)
酸素バリア性、すなわち酸素透過率は、厚さ25μmのインフレーションフィルムに対して測定する。試験片は、周囲の大気圧下で2つのチャンバの間に密閉された半バリアとして取り付けられる。一方のチャンバには、所定の温度及び相対湿度で窒素と水素の混合ガス(N中に2%のH)の流れをゆっくりと流し、もう一方のチャンバには、このNの流れと同じ温度及び相対湿度で酸素の流れを流す。酸素ガスがフィルムを透過して窒素キャリアガスに入ると、クーロメトリー検出器に運ばれてそこで電流を生じ、その電流の大きさは単位時間当たりに検出器に流入する酸素の量に比例する。酸素透過率試験は、ASTM D 3985に準拠し、23℃及び相対湿度0%において、10sccmのN/Hガス及びO(99.999%)ガスを使用し、フィルムの表面積を1cmとして行う。
【0195】
p)ゲル含有量
ゲル含有量は、走行中のキャストフィルム押出ラインから作られた70ミクロン(70μm)のフィルムに対して、様々なサイズ群のゲルを含むフィルムの欠陥を検出して定量化する特殊なカメラとデータ処理装置を用いて測定する。ゲルのサイズ群は、100~300μm、301~600μm、601~1000μm、>1000μmである。1平方メートルあたりの個数で表されるゲルカウントは、フィルムの全スキャン領域から検出された各サイズ群のゲルの数から得られる。キャストフィルムのエッジ又はサイドビードは、フィルムウェブの中央部にあるゾーンよりも厚さが大きいため、測定のためには採用しない。ゲルテストの時間は、キャストフィルムラインのパージが完了した後、30分かかる。
【0196】
2. 例
a)触媒
発明例IE1を重合するための重合触媒は、欧州特許出願公開第1 378 528 A1号明細書の例1に従って調製した。
【0197】
b)発明例IE1の重合
プレポリマー化段階では、50dmの容積を有する第1ループ反応器を70℃及び64barの圧力で運転した。プレポリマー化フラクションを生成するために、2kg/hのエチレン、及び2g/hの水素を加えた。加えて、上記の説明に従って調製した重合触媒を11g/hの速度で反応器に導入し、トリエチルアルミニウム(TEA)共触媒を22g/hの速度で反応器に導入した。反応器内の条件を表1に示す。
【0198】
第1ループ反応器からポリマースラリーを取り出し、500dmの容積を有するループ反応器に移した。この第2ループ反応器は、95℃及び64barの圧力で運転した。この反応器にエチレンと水素を導入し、反応器内の水素対エチレンの比(H2/C2)が456mol/kmolになるようにした。追加の触媒供給やコモノマー供給は反応器に導入しなかった。この反応器内の条件を表1に示す。
【0199】
第2ループ反応器からポリマースラリーを取り出し、圧力3bar、温度70℃で運転するフラッシュ容器に移し、そこでポリマーから炭化水素を実質的に除去した。その後、ポリマーを、温度85℃、圧力20barで運転する気相反応器に導入した。加えて、エチレン、1-ブテン、及び水素をこの反応器に導入し、反応器内の水素対エチレンの比(H2/C2)が110mol/kmol、1-ブテン対エチレンの比(C4/C2)が18.8mol/kmolとなるようにした。その条件を表1に示す。
【0200】
得られたポリマーを窒素(約50kg/h)で1時間パージし、Irganox1010とIrgafos168を1000ppm、Ca-ステアリン酸塩を1000ppm用いて安定化させた後、逆回転二軸押出機CIM90P(日本製鋼所製)で処理量が223kg/h、スクリュー回転数が323rpmになるように押し出してペレット化した。
【0201】
【表1】
【0202】
c)比較例CE1及びCE2
CE1は、Exxon Mobil(エクソン・モービル)からHTA108として/SABICからHD04660として市販されている、Unipol気相重合プロセスで製造された、961kg/mの密度及び0.7g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有するモノモーダルのHDPE樹脂である。
【0203】
CE2は、Hanwha/TOTAL(ハンファ・トータル)からF920Aとして市販されている、気相重合プロセスで製造された、955kg/mの密度及び1.1g/10分のメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有するモノモーダルのHDPE樹脂である。
【0204】
d)IE1、CE1及びCE2のポリエチレン組成物の特性
例IE1、CE1及びCE2のポリエチレン組成物は下記表2に示す特性を有する。
【0205】
IE1、CE1及びCE2のレオロジー周波数掃引曲線は図1に示されており、IE1、CE1及びCE2のGPC曲線は図2に示されている。
【0206】
【表2】
【0207】
発明例IE1のポリエチレン組成物は、CE1及びCE2のポリエチレン組成物と比べて、同等の引張特性で改善されたESCRを有し、従ってより優れたESCR/剛性バランスを示す。
【0208】
e)IE1、CE1及びCE2のキャストフィルム及びインフレーションフィルムの特性
例IE1、CE1及びCE2の組成物を、OCSキャストフィルムラインを用いて70μmの厚さを有する単層のキャストフィルムへとキャストした。このキャストフィルムを、そのゲル含有量に関して調べた。
【0209】
加工条件及びゲル含有量を下記表3に示す。
【0210】
【表3】
【0211】
発明例IE1のキャストフィルムは、CE1及びCE2のキャストフィルムと比べて、有意に少ない量のゲルを示し、従って改善された均質性を示す。
【0212】
例IE1、CE1及びCE2の組成物を、大スケールのReifenhauserインフレーションフィルムラインを用いて25μmの厚さを有する単層のインフレーションフィルムへとブローした。このインフレーションフィルムを、その機械的特性及びバリア特性に関して調べた。
【0213】
加工条件及び特性を下記表4に示す。
【0214】
【表4】
【0215】
発明例IE1は、インフレーションフィルム押出の間の一致する溶融圧力及び気泡安定性において見ることができるように、キャストフィルム及びインフレーションフィルムを製造するときの良好な加工性を示す。
【0216】
さらに、発明例IE1は、良好な機械的特性及びバリア特性を示す。
【0217】
すべての特性を比較すると、発明例IE1は、剛性、ESCR、均質性、機械的特性及びバリア特性に関して向上した特性のバランスを示す。
図1
図2