(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】自動潅水機能付き植物陳列棚
(51)【国際特許分類】
A01G 27/00 20060101AFI20220912BHJP
A01G 9/00 20180101ALI20220912BHJP
【FI】
A01G27/00 502S
A01G27/00 504C
A01G9/00 B
(21)【出願番号】P 2019179482
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-04-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501239882
【氏名又は名称】株式会社プロトリーフ
(74)【代理人】
【識別番号】100167715
【氏名又は名称】古岩 信嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100084445
【氏名又は名称】古岩 信幸
(72)【発明者】
【氏名】加能 裕一郎
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-68758(JP,U)
【文献】特公昭46-23010(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 27/00
A01G 9/00
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段の陳列棚と、
潅水用水を貯溜する貯水容器と、
前記陳列棚の少なくとも1つの段に設置された潅水用容器と、
前記潅水用容器に対してその内側にほぼ水平に突出するように設置された水吐出口と、
前記貯水容器の潅水用水を
一定流量で吸い上げ、前記水吐出口から前記潅水用容器
の内方に放流させて当該潅水用容器内を回流させるポンプと、
前記ポンプを所定時間、所定時刻に稼働させるコントローラと、
前記潅水用容器の底部に設けた排水口から前記貯水容器に排水するように
接続された排水ホースと、
前記排水ホースに設置した排水流量を調整する流量調整弁であって、前記ポンプの稼働中に前記潅水用容器内を回流している潅水用水が所定水位2~3cmに保たれるように当該潅水用容器からの排水流量を調整する流量調整弁とを備えたことを特徴とする自動潅水機能付き植物陳列棚。
【請求項2】
前記潅水用容器は複数段に設置し、
前記ポンプ、コントローラも各潅水用容器ごとに複数台設置し、
前記
複数台のコントローラそれぞれによって前記複数台のポンプを個別に稼働制御することを特徴とする請求項1に記載の自動潅水機能付き植物陳列棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動潅水機能付の植物陳列棚に関する。
【背景技術】
【0002】
園芸店の店舗で緑葉植物を陳列販売するために陳列棚に鉢植えした幾種類もの緑葉植物を陳列、展示している。このような陳列棚の多くの鉢に店員が潅水することは手間暇がかかるだけでなく、時として忘れることも起こる。それで、陳列棚に陳列している植物類に植物栄養を含ませた水分を自動潅水できればとの要望は大きい。
【0003】
そこで従来から、展示している植物に自動潅水する装置は知られている。その中には、実用新案登録第3097215号公報(特許文献1)、実用新案登録第3111985号公報(特許文献2)、特開2017-063662号公報(特許文献3)に開示されたものがある。
【0004】
特許文献1は、鉢植え植物の陳列棚の実用新案であり、段落0018~0021の説明によると、3段に陳列トレイ11を設置し、貯水タンク20の水をポンプ25で上段の陳列トレイ11にまで揚水し、上段の陳列トレイ11に給水し、3分ほどすればバルブ16を開いて中段の陳列トレイ11に上段の陳列トレイ11内の水を落下させてそこに貯め、同様にして中段の陳列トレイ11から下段の陳列トレイ11に水を落下させて貯め、最後に貯水タンク20に戻す操作により、各段の陳列トレイ11に置いた各鉢の植物に給水を行う技術が開示されている。そして段落0023によると開閉バルブ16の開閉制御を液面検出センサの検知信号により自動制御するようにしても良いと提案されている。しかしながらこの特許文献1には、タイマー制御によって潅水する技術は開示されていない。
【0005】
また、特許文献2には、棚部1,2,3それぞれに自動的に給水し、
図8、段落0026~0029の記載によれば、仕切り板23,33をオーバーフローする水を下段の棚部に落下させ、最下段の棚部3の水はポンプ43で循環させる機構が開示されている。そして各棚部1,2,3には植木鉢10を載置し給水することが
図9、段落0029に説明されている。しかしながら、特許文献2には、潅水の後に水位を下げて根腐れを予防するような技術は開示されていない。
【0006】
次に特許文献3は植物栽培装置であり、陳列棚ではないが、段落0021~0024によれば、多段に受け皿3が載置され、それぞれの受け皿3内に植物ポッド4が置かれ、各受け皿3に養液をノズル14にて給水し、植物ポッド4の植物を栽培することが記載されている。そして各受け皿3に対する給水はノズル14の弁14aの開閉を制御することによって潅水量を調整することも記載されている。しかしながら、この特許文献3は養液栽培の技術であり、陳列棚の植木鉢の土壌の乾燥を予防するためにタイマー制御により載置トレイに給水する技術については記載されていない。
【0007】
なお、植木鉢の土壌の水分不足を検知して自動的に潅水する装置として特開平8-140508号公報(特許文献4)に記載されたものが知られているが、この従来技術には、タイマー制御で給水ポンプを制御して各植木鉢内の土壌に水分を十分に含ませることができる時間だけ載置トレイに水を循環させて潅水し、潅水が完了すると載置トレイの水を排水して空にし、根腐れを防止する技術までは開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実登3097215号公報
【文献】実登3111985号公報
【文献】特開2017-063662号公報
【文献】特開平08-140508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような従来の技術的課題に鑑みてなされたもので、植物陳列棚の少なくとも1つの段に設置された潅水用容器に対して、所定時刻に所定の水深になるように所定時間だけ給水ポンプを稼働させ、潅水用容器に並べた各植木鉢内の土壌に水分を十分に含ませることができる時間だけ水を循環させて潅水し、潅水が完了すると潅水用容器の水を排水して空にし、根腐れを防止する機能も備えた自動潅水機能付き植物陳列棚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、多段の陳列棚と、潅水用水を貯溜する貯水容器と、前記陳列棚の少なくとも1つの段に設置された潅水用容器と、前記潅水用容器に対してその内側にほぼ水平に突出するように設置された水吐出口と、前記貯水容器の潅水用水を一定流量で吸い上げ、前記水吐出口から前記潅水用容器の内方に放流させて当該潅水用容器内を回流させるポンプと、前記ポンプを所定時間、所定時刻に稼働させるコントローラと、前記潅水用容器の底部に設けた排水口から前記貯水容器に排水するように接続された排水ホースと、前記排水ホースに設置した排水流量を調整する流量調整弁であって、前記ポンプの稼働中に前記潅水用容器内を回流している潅水用水が所定水位2~3cmに保たれるように当該潅水用容器からの排水流量を調整する流量調整弁とを備えた自動潅水機能付き植物陳列棚を特徴とする。
【0011】
上記発明の自動潅水機能付植物陳列棚においては、前記潅水用容器は複数段に設置し、前記ポンプ、コントローラも各潅水用容器ごとに複数台設置し、前記複数台のコントローラそれぞれによって前記複数台のポンプを個別に稼働制御するものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動潅水機能付き植物陳列棚によれば、自動潅水によって観葉植物の鉢内の土壌への給水ができ、しかも余剰な水分を各植木鉢の土壌中に留めておくことなく排水するので根腐れの恐れもない。そしてタイマー制御によって自動潅水できるので潅水忘れによって商品である植物を枯らしてしまう恐れもなく、一日中陳列棚に観葉植物を展示しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の1つの実施の形態の植物陳列棚の背面側から見た斜視図。
【
図2】上記実施の形態の植物陳列棚の正面側から見た斜視図。
【
図3】上記実施の形態の直物陳列棚の給排水機構のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0016】
図1~
図3に本発明の実施の形態の自動潅水機能付き植物陳列棚(以下、単に「植物陳列棚」と略称することもある。)を示している。実施の形態の植物陳列棚1は、棚フレーム2の上部の棚板31,32上に箱形の潅水用容器41,42を設置し、それらの下方には、機械収容棚33を設置している。機械収容棚33にはポンプ・タンク収容容器43を設定している。
【0017】
潅水用容器41,42それぞれには排水口10A,10Bを設けてあり、容器41,42内に通水された水をここから自然排水できるようにしてある。
【0018】
機械収容棚33上のポンプ・タンク収容容器43内には潅水用水を貯溜する貯水タンク6が設置してあり、この貯水タンク6内には給水のために水を汲み上げて循環させるポンプ5A,5Bも設置してある。このポンプ5A,5Bの運転、停止を時間制御するコントローラ11A,11Bも適切な場所に設置されている。なお、符号20はコントローラ11A,11Bやポンプ5A,5Bに必要な電力を供給する電源である。
【0019】
ポンプ5A,5Bを起動させることによって、それぞれのポンプ5A,5Bは貯水タンク6の水を吸い込み、給水ホース8A,8Bを通じて上段の潅水用容器41、中段の潅水用容器42それぞれまで汲み上げてこれらの潅水用容器41,42それぞれの後方部の水吐出口12A,12Bから内部に放流させる。そして放流される水は潅水用容器41,42内に滞留しつつその一部が排水口10A,10Bから排水ホース9A,9Bを通して下方の貯水タンク6まで環流する。
【0020】
最上段の潅水用容器41の後方部の水吐出口12Aから放流される水はこの容器41内を回流することで水位を一定程度、例えば2,3cm程度まで上昇させ、この潅水用容器41内に収容される多数の植木鉢の底部をぬらす働きをする。そしてコントローラ11Aのタイマーが切れれば、潅水用容器41内の水は排水口10Aに自然に集まり、排水ホース9Aを通じて流下し、貯水タンク6に戻される。
【0021】
中段の潅水用容器42の後方部の水吐出口12Bから放流される水もこの容器42内を回流しながら水位を一定程度、例えば2,3cmまで上昇させ、この潅水用容器42内に収容される多数の植木鉢の底部をぬらす働きをする。そしてコントローラ11Bのタイマが切れれば、潅水用容器42内の水は排水口10Bに集まり、排水ホース9Bを通じて流下し、貯水タンク6に戻される。
【0022】
ポンプ5A,5Bはコントローラ11A,11Bのタイマー制御によってあらかじめ設定されている運転時間の間だけ、例えば2,3分だけ稼働し、その間に上記のように貯水タンク6の水を上段の潅水用容器41、中段の潅水用容器42それぞれまでホース8A,8Bを通じて汲み上げ続け、それぞれの容器41,42内に給水して内部を巡回させる。そしてこの間に、潅水用容器41,42それぞれに収容される多数の植木鉢それぞれの底部の穴から植木鉢内の土壌が吸水し、過乾燥を防ぐことができる。
【0023】
タイマー制御が完了すれば水の循環給水は停止され、潅水用容器41,42内の水はすべて排水口10A,10Bから排水ホース9A,9Bを通じて貯水タンク6に戻され、潅水用容器41,42内は乾いた状態に戻る。
【0024】
なお、排水ホース9A,9Bそれぞれには排水流量を調整するための流量調整弁13A,13Bが設けてある。この流量調整弁13A,13を絞ったり開いたりすることにより瞬間排水流量を調整することができる。そのため、ポンプ5A,5Bそれぞれにより貯水タンク6から給水ホース8A,8Bを通じて潅水用容器41,42それぞれに給水される水の瞬間流量はポンプ定格によって一定であっても、この流量調整弁13A,13Bの開度を大小調整することによって瞬間排水流量を調整し、結果的にその差量によって潅水用容器41,42に溜まる水の水位を高低し、また一定水位に調整、設定することもできる。このためにポンプ5A,5Bとして吐出量が調整できる高性能、それ故に高価なものを採用しなくても、流量調整弁13A,13Bそれぞれの開度を大小調整するだけの簡単な操作だけで潅水用容器41,42の水位を所望の高さに調整、設定できる利点がある。
【0025】
このようにして本実施の形態の自動潅水機能付き植物陳列棚1では、潅水用容器41,42それぞれの上に並べた多数の植木鉢に対してあらかじめ設定された適切なタイミングで必要な時間だけ潅水することによって植木鉢内の土壌が乾ききらないように適度に湿らせて植物が枯れないように保護しつつその植物の陳列することができる。加えて、複数台のコントローラ5A,5Bで複数の潅水用容器41,42それぞれへの給水時間を制御することができるので、それぞれの潅水用容器41,42内に陳列する植木鉢の植物の種類に応じて個別に給水タイミングを変えたり給水時間を変えたりすることができ、多種類の植物の植木鉢を長期間陳列する場合にも容易に、かつ柔軟に対応できる。
【0026】
そして本実施の形態の場合、潅水用容器41,42内に収容する植木鉢それぞれにその底部の穴から土壌に吸水させるようにしているので、植木鉢に植えられている植物に直接に水がかかることがなく、葉枯れ、葉腐れなどの悪影響を植物に与えることがなく、手間をかけずに長期の展示が可能である。
【0027】
なお、コントローラ11A,11Bによるタイマー設定は夏期には頻繁に、冬期には回数を少なくする設定など、展示する植物の種類、季節に応じて柔軟に設定することができる。同時に、各潅水用容器41,42の水位は流量調整弁13A,13Bの開度調整によって高低調整できるので、潅水用容器41,42内に陳列する植物の種類や植物鉢の数の多少や鉢径の大小等、実施環境に応じて水位高低、給水時間、給水時間帯を個別に調整できる。
【符号の説明】
【0028】
1 植物陳列棚
2 フレーム
31,32 棚板
41,42 潅水用容器
5A,5B ポンプ
6 貯水タンク
8A,8B 給水ホース
9A,9B 排水ホース
10A,10B 排水口
11A,11B コントローラ
12A,12B 水吐出口
13A,13B 流量調整弁