(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】コイル部品およびコイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20220912BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
H01F37/00 C
H01F27/28 147
H01F37/00 M
(21)【出願番号】P 2018039132
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 浩
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-112611(JP,A)
【文献】特開2014-112612(JP,A)
【文献】特開2009-129961(JP,A)
【文献】特開2005-057113(JP,A)
【文献】特開2014-039008(JP,A)
【文献】特開2013-247241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28、30/10、37/00、41/061
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の平角線材をエッジワイズ巻きで矩形状に積層形成してなるコイル巻回体が、所定の位置で2つに分割して折り返されてなり、対向する側面同士が互いに平行に沿うように配された第1のコイル要素および第2のコイル要素と、これら両コイル要素を連結する連結部とを備え、
前記連結部は、前記第1のコイル要素および前記第2のコイル要素の連結がなされる端面側において、
該各コイル要素の端面を構成する矩形部の各辺のうち該第1のコイル要素および該第2のコイル要素の互いに近接する辺と、これらの辺に平行となる辺とを第1辺と称したときに、
前記連結部は、前記2つのコイル要素の一方のうち、いずれかの前記第1辺の一方側の端部近傍または当該第1辺の延長上に位置するコイル要素巻き終り部と、前記2つのコイル要素の他方のうち、いずれかの前記第1辺の前記一方側の端部近傍または当該第1辺の延長上に位置するコイル要素巻き始め部と、を連結するものであり、
さらに、該連結部は、前記平角線材を、該コイル要素巻き始め部および該コイル要素巻き終り部において、互いに同一方向に直角に捩じりながら起立させるように構成されたコイル要素巻き始め部側起立部とコイル要素巻き終り部側起立部、およびこれら2つの起立部間に延びる中間部とを備え
、
前記コイル要素巻き終り部側起立部において、前記平角線材を捩じりながら起立させた部位に、エッジワイズ巻きの要領でRを持たせたR部を形成するとともに、前記コイル要素巻き始め部側起立部において、前記平角線材を捩じりながら起立させた部位に、エッジワイズ巻きの要領でRを持たせたR部を形成し、
前記中間部が、前記コイル要素各々の該中間部側の前記端面を構成する前記矩形部の各辺のうち該中間部に沿った辺よりも、該矩形部の外方に位置するように設定されていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記連結部が、前記第1のコイル要素および前記第2のコイル要素の、内側に位置する前記第1辺を内側第1辺、外側に位置する前記第1辺を外側第1辺と称したときに、
前記連結部は、前記2つのコイル要素の一方の内側第1辺の一方側の端部近傍または当該内側第1辺の延長上に位置する、コイル要素巻き始め部およびコイル要素巻き終り部のいずれか一方と、前記2つのコイル要素の他方の外側第1辺の前記一方側の端部近傍または当該外側第1辺の延長上に位置する、該コイル要素巻き始め部および該コイル要素巻き終り部のいずれか他方とを連結するものであることを特徴とする請求項
1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記中間部が湾曲形状とされていることを特徴とする請求項1
または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記中間部が平面形状とされていることを特徴とする請求項1
または2に記載のコイル部品。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項記載のコイル部品と、該コイル部品の中空部に各々脚部を挿入して閉磁路を形成する磁性体コア部とを備えたことを特徴とするコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ回路や自動車用等の各種モーター等に用いられるコイル部品およびこのコイル装置に関し、詳しくは、1本の平角線材により形成された、近接して配される角筒形状の2つの積層コイルからなるコイル部品およびこれを用いたコイル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リアクトル等のコイル部品は、磁性体コアに巻線コイルが巻回された構成とすることによりインダクタンスを発生させることができる。
リアクトルとしては、送電系統用の大容量のものから、通信器部品にいたるまで、使用目的に応じて種々のタイプのものが知られている。
【0003】
ところで、車載用の昇圧回路に用いられるリアクトル等において、高電流が流された場合には高インダクタンス値となるように、積層されたコイル要素を2つ並列して形成した構成のものが知られている。
【0004】
このようなリアクトルの従来例としては、並列して配された2つのコイル要素を1本の平角線材のエッジワイズ巻きによって形成したものが知られている(例えば、下記特許文献1、2を参照)。
特許文献1においては、平角線材をエッジワイズ巻きにより円形状に成形しながら巻回された、第1のコイル要素と第2のコイル要素が並列形成される。これらの2つのコイル要素間で渡される平角線材は、これら2つのコイル要素間で180度捩じられて、一方から
他方に引き渡される。
【0005】
また、特許文献2においては、閉ループを構成する磁性体コアの対向する位置に、平角線材をエッジワイズ巻きにより四隅は曲げ部としつつ、全体としては矩形状に巻回された、第1のコイル要素28aと第2のコイル要素28bが並列形成され、さらに、これら2
つのコイル要素28a、bの連結部29cにおいて、平角線材が、一方のコイル要素の巻き終り端から、端面の前方に少し浮き上がるようにして他方のコイル要素の巻き始め端に渡されるように形成されている。
さらに、特許文献2に記載の従来技術は、
図16に示すように、コイル28を構成する導線のうち、コイル部28aの導線端部29aの基端部と、コイル部28bの導線端部29bの基端部と、各コイル部28a、28bを接続する渡り導線部29cの両端部(コイル巻終り部とコイル巻き始め部)が、コイルボビン22に設けられたコイル支持部60のスリットによって挟持されており、これによりコイル28がリアクトルコア14およびコイルボビン22に対して位置決めされた状態に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3398855号公報
【文献】特許第5949137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載の技術においては、これら2つのコイル要素間の隙間に捩じれた平角線が入り込み、これら2つのコイル要素間の距離が拡大して、コイル装置のコンパクト化が難しくなる。
【0008】
2つのコイル要素間の隙間が、例えば数ミリでも大きくなれば、磁気特性の大幅な劣化を招来してしまうので、このような平角線材の捩れが生じないような構成とすることが望まれる。
【0009】
一方、上記特許文献2に記載の技術においては、以下のような問題が指摘されている。
すなわち、特許文献2の従来技術においては、コイル28を構成する導線をコイル支持部60のスリットによって挟持し位置決め固定する構造となっているので、コイル支持部60を設けることによる製造工程数の増加、および製造コストの増加を招来する。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、コイル要素間の隙間を小さい距離とすることができ、コイルを構成する平角線を引き出した際に、この平角線を別途の部材で位置決め固定することを要しないコイル部品およびコイル装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係るコイル部品およびコイル装置は、以下の特徴を備えている。
すなわち、本発明に係るコイル部品は、
1本の平角線材をエッジワイズ巻きで矩形状に積層形成してなるコイル巻回体が、所定の位置で2つに分割して折り返されてなり、対向する側面同士が互いに平行に沿うように配された第1のコイル要素および第2のコイル要素と、これら両コイル要素を連結する連結部とを備え、
前記連結部は、前記第1のコイル要素および前記第2のコイル要素の連結がなされる端面側において、
該各コイル要素の端面を構成する矩形部の各辺のうち該第1のコイル要素および該第2のコイル要素の互いに近接する辺と、これらの辺に平行となる辺とを第1辺と称したときに、
前記連結部は、前記2つのコイル要素の一方のうち、いずれかの前記第1辺の一方側の端部近傍または当該第1辺の延長上に位置するコイル要素巻き終り部と、前記2つのコイル要素の他方のうち、いずれかの前記第1辺の前記一方側の端部近傍または当該第1辺の延長上に位置するコイル要素巻き始め部と、を連結するものであり、
さらに、該連結部は、前記平角線材を、該コイル要素巻き始め部および該コイル要素巻き終り部において、互いに同一方向に直角に捩じりながら起立させるように構成されたコイル要素巻き始め部側起立部とコイル要素巻き終り部側起立部、およびこれら2つの起立部間に延びる中間部とを備え、
前記コイル要素巻き終り部側起立部において、前記平角線材を捩じりながら起立させた部位に、エッジワイズ巻きの要領でRを持たせたR部を形成するとともに、前記コイル要素巻き始め部側起立部において、前記平角線材を捩じりながら起立させた部位に、エッジワイズ巻きの要領でRを持たせたR部を形成し、
前記中間部が、前記コイル要素各々の該中間部側の前記端面を構成する前記矩形部の各辺のうち該中間部に沿った辺よりも、該矩形部の外方に位置するように設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
前記連結部が、前記第1のコイル要素および前記第2のコイル要素の、内側に位置する前記第1辺を内側第1辺、外側に位置する前記第1辺を外側第1辺と称したときに、
前記連結部は、前記2つのコイル要素の一方の内側第1辺の一方側の端部近傍または当該内側第1辺の延長上に位置する、コイル要素巻き始め部およびコイル要素巻き終り部のいずれか一方と、前記2つのコイル要素の他方の外側第1辺の前記一方側の端部近傍または当該外側第1辺の延長上に位置する、該コイル要素巻き始め部および該コイル要素巻き終り部のいずれか他方とを連結するものであることが好ましい。
前記中間部は湾曲形状とされていてもよいし、平面形状とされていてもよい。
また、本発明のコイル装置は、上述したいずれかのコイル部品と、該コイル部品の中空部に各々脚部を挿入して閉磁路を形成する磁性体コア部とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
ここで、上述した「エッジワイズ巻き」とは、平角線材の一方の側縁である短辺を内径面として縦に巻いて板状に積層する巻回法を称するものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコイル部品によれば、2つのコイル要素を連結する連結部において、前記2つのコイル要素の一方の第1辺の一方の端部近傍または該一方の第1辺の延長上に位置するコイル要素巻き始め部およびコイル要素巻き終り部のいずれか一方と、前記2つのコイル要素の他方の第1辺の前記一方の端部近傍または該他方の第1辺の延長上に位置する該コイル要素巻き始め部および該コイル要素巻き終り部のいずれか他方とを連結するように構成されている。
また、この連結部は、前記平角線材を、該コイル要素巻き始め部および該コイル要素巻き終り部において、互いに同一方向に直角に捩じりながら起立させるように構成されたコイル要素巻き始め部側起立部とコイル要素巻き終り部側起立部、およびこれら2つの起立部間に延びる中間部とを備えている。
【0016】
これにより、連結部は、両コイル要素の一方の端面側から、互いに同一方向に直角に捩じりながら起立するようにした両起立部を設けていることから、この端面側に張り出すように形成されることになり、この連結部が両コイル要素間の隙間に捩じれた平角線が入り込み、これら2つのコイル要素間の距離が拡大することを回避することができ、コアの小型化を図ることができるとともに磁気特性の劣化を回避することができる。
【0017】
また、第1辺に直交する第2辺ではなく、第1辺の端部近傍または該第1辺の延長上に、各々起立部を設けており、しかもこの両起立部に互いに同一方向への直角な捩じりを与えるようにしているので、両起立部間の中間部においては捩じれを生じることのない状態とすることができる。また、両起立部は、捩じれによって、その位置に自立保持される作用が与えられるため、
図16に示す従来技術のように、コイル支持部60を設ける必要がなくなり、製造工程数の増加、および製造コストの増加を抑制することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の
参考例1に係るコイル部品の斜視図である。
【
図2】本発明の
図1の
参考例に係るコイル部品を側方から見た状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の
参考例1に係るコイル部品とコアを組み合わせてなるコイル装置を示す斜視図である。
【
図4】図
3に示すコイル装置を上方から見たときの平面図である。
【
図5】
図1に示す
参考例1に係るコイル部品の製造方法の工程1(
図5(A))および工程2(
図5(B))を示す斜視図である。
【
図6】
図1に示す
参考例1に係るコイル部品の製造方法の工程3(
図6(A))および工程4(
図6(B))を示す斜視図である。
【
図7】本発明の
参考例2に係るコイル部品の斜視図である。
【
図8】本発明の
参考例2に係るコイル部品とコアを組み合わせてなるコイル装置を示す斜視図である。
【
図9】
図7に示す
参考例2に係るコイル部品の製造方法の工程1(
図9(A))および工程2(
図9(B))を示す斜視図である。
【
図10】
図7に示す
参考例2に係るコイル部品の製造方法の工程3(
図10(A))(A)および工程4(
図10(B))を示す斜視図である。
【
図11】本発明の
実施例1に係るコイル部品の斜視図である。
【
図12】本発明の
実施例1に係るコイル部品を側方から見た状態を示す斜視図である。
【
図13】本発明の
実施例1に係るコイル部品とコアを組み合わせてなるコイル装置を示す斜視図である。
【
図14】
図11に示す
実施例1に係るコイル部品の製造方法の工程1(
図14(A))および工程2(
図14(B))を示す斜視図である。
【
図15】
図11に示す
実施例1に係るコイル部品の製造方法の工程3(
図15(A))および工程4(
図15(B))を示す斜視図である。
【
図16】従来技術に係るコイル装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るコイル部品およびコイル装置について図面を参照しつつ説明する。本実施形態のコイル部品は、例えば、リアクトルに適用したものである。
【0020】
リアクトルは、例えば、自動車に搭載される各種機器の電気回路要素として使用され、磁性コアと、このコアに巻回されるリアクトルコイルを備えており、通常は、リアクトルコイル内にリアクトルコアが挿入されてなるリアクトル本体に、脚部が取り付けられ、リアクトル本体とケース間の絶縁性を確保しつつ、リアクトル本体をケース内に収容することができるようになっている。
【0021】
<
参考例1>
図1は
参考例1のコイル部品100の斜め上方から見た斜視図、
図2は、
参考例1に係るコイル部品を側方から見た状態を示す斜視図である。
参考例1のコイル部品100は、図示するように、1本の平角線材101を用い、接続端子となる一端部101Aと他端部101Bの間で、エッジワイズ巻きで一方向に巻回積層し、巻回積層されたコイルの所定位置(通常は略中間位置)で2つに折り曲げることによって、それぞれ角筒形状に並列形成された第1のコイル要素111と第2のコイル要素112を設けるとともに、両コイル要素111、112を連結する連結部113を設けて構成される。
この巻回積層されたコイルの上記所定位置に、連結部113に使用するための平角線材101の余裕分が生じるように巻回される。
平角線材101は断面矩形とされ、例えば銅線の表面に絶縁被覆が施されてなる。
【0022】
第1のコイル要素111と第2のコイル要素112は、対向する1つの側面111F、112F同士が互いに平行で所定の間隔を空けて沿うように並列配置されている。
連結部113は、平角線材101を、コイル要素巻き始め部112Dおよびコイル要素巻き終り部111Dにおいて、互いに同一方向に直角に捩じりながら起立させるように構成されたコイル要素巻き終り部側起立部123Aとコイル要素巻き始め部側起立部123B、およびこれら2つの起立部123A、123B間に延びる中間部123Cとを備えている。
【0023】
ここで、以下の説明においては、各コイル要素111、112の端面を構成する矩形部の各辺のうち第1のコイル要素111および第2のコイル要素112の互いに対向する辺と、これらの辺に平行となる辺とを縦辺(第1辺)111C、112Cと称し、これら縦辺に隣接(直交)する、第1のコイル要素111および第2のコイル要素112の各辺を横辺(第2辺)111G、112Gと称し、さらに、第1のコイル要素111および第2のコイル要素112の、内側に位置する縦辺111C、112Cを内側縦辺111H、112H、および外側に位置する縦辺111C、112Cを外側縦辺111I、112Iと称することとする。
【0024】
このように、本
参考例においては、連結部113が
図1紙面上で前側に引き出されているため、連結部113を構成する平角線材101が2つのコイル要素111、112の間に介在することがなく、2つのコイル要素111、112間の距離が拡大することを回避することができ、コアの小型化を図ることができるとともに磁気特性の劣化を回避することができる。
【0025】
また、第1のコイル要素111のコイル要素巻き終り部111Dにおいて、平角線材101を90度捩じりながら起立させる(コイル要素巻き終り部側起立部123A)とともに、第2のコイル要素112のコイル要素巻き始め部112Dにおいて、平角線材101を、コイル要素巻き終り部111Dと同一方向に90度捩じりながら起立させている(コイル要素巻き始め部側起立部123B)。これにより、コイル要素巻き終り部側起立部123Aの捩じり角度と、コイル要素巻き始め部側起立部123Bの捩じり角度が相殺され、中間部123Cは捩じれのない状態となる。これにより磁気特性も安定する。
なお、本参考例によれば、上記連結部113において、各起立部123A、123Bを形成するのに捩じりを用い、折り曲げの程度を必要最小限としているので、折り曲げ加工によって剥がれ易い、平角線材101表面の絶縁コーティングの剥がれを抑制することができる。
【0026】
なお、本参考例の連結部113は後述する参考例2の連結部213に比べて、前側に湾曲した形状とされている。これにより、本参考例のコイル部品によれば、製造時において、コイル要素111、112の巻回長における誤差を、ある程度吸収することが可能となる。
【0027】
また、連結部113の位置において折り返される2つのコイル要素111、112の端面を向い合せるようにして製造すれば、エッジワイズ巻きの製造工程を、平角線材を同一方向に巻回していくことにより形成することができるので、工数の低減および巻線機の機構の簡素化を図ることができる。
【0028】
図1に示すコイル部品100については、
図3(斜視図)および
図4(平面図)に示すように、2つのコイル要素111、112の中空部111E、112Eに、1対のU字型
コア151、152の左右脚部を挿入し、この中空部の内部で、互いに突き合わせること
によりリアクトル装置(コイル装置)を構成する。
【0029】
図5および
図6は、
参考例1に係るコイル部品の製造方法を示す工程図である。
まず、
図5(A)に示すように、1本の平角線材101を用いて2つのコイル要素111、112を巻回形成し、2つのコイル要素111、112の間に、連結部113を形成するための所定長の平角線材101を直線状態のまま残しておく(製造工程1)。2つのコイル要素111、112の巻回方向は同一である。
次に、
図5(B)に示すように、第1のコイル要素111のコイル要素巻き終り部111Dにおいて、平角線材101を、フラットワイズ曲げの要領で90度、折り曲げる。また、第2のコイル要素112のコイル要素巻き始め部112Dにおいて、これもフラットワイズ曲げの要領で、上記コイル要素巻き終り部111Dにおける曲げ方向とは逆方向に90度、折り曲げる(製造工程2)。ここで「フラットワイズ曲げ」とは、平角線材の矩形断面における長辺側の一方の面を内径面とし他方の面を外径面として、平角線材を長辺側方向に曲げることをいう。
【0030】
次に、
図6(A)に示すように、コイル要素巻き終り部111Dの折り曲げ部において、この平角線材101を、この平角線材101の軸を中心として90度捩じる。また、第2のコイル要素112のコイル要素巻き始め部112Dにおいて、これもこの平角線材101を、コイル要素巻き終り部111Dの折り曲げ部の捩じり方向と同一方向に、この平角線材101の軸を中心として90度捩じる(製造工程3)。
最後に、
図6(B)に示すように、2つのコイル要素111、112を連結部113の位置(略中間位置)で2つに折り曲げることによって、第1のコイル要素111と第2のコイル要素112を並列配置するとともに、連結部113によって両コイル要素111、112を連結した状態とすることができる(製造工程4)。
【0031】
このように、コイル要素巻き終り部側起立部123Aの捩じり角度と、コイル要素巻き始め部側起立部123Bの捩じり角度が90度同士で相殺され、連結部113の中間部123Cは捩じれのない状態となる。
【0032】
<参考例2>
この参考例2は、上述した参考例1のものと共通(対応)する部材も多いので、そのような共通(対応)する部材については、参考例1における部材の付番に100を加えた付番を本参考例の部材の付番とし、その詳しい説明は省略する。
【0033】
すなわち、本
参考例のコイル部品200は、
図7に示すように、1本の平角線材201を用い、接続端子となる一端部201Aと他端部201Bの間で、エッジワイズ巻きで巻回積層し、巻回積層されたコイルの所定位置(通常は略中間位置)で2つに折り曲げることによって、それぞれ角筒形状に並列形成された第1のコイル要素211と第2のコイル要素212を設けるとともに、両コイル要素211、212を連結する連結部213を設けて構成される、という点において上記
参考例1のコイル部品100と同様である。
【0034】
また、連結部213の作用効果としても同様であるが、連結部213は、その中間部223Cが略平板上に構成されており、上記
参考例1における連結部113の中間部123Cのように湾曲した形状とはされていない。この
参考例2のコイル部品200によれば、中間部223Cの長さを正確に規定することが容易であるので、磁気特性の精度を向上させることができる。
また、
図8に示すように、2つのコイル要素211、212の中空部211E、212Eに、1対のU字型コア251(不図示)、252の左右脚部を挿入し、この中空部211E、212Eの内部で、互いに突き合わせることによりリアクトル装置(コイル装置)を構成することについても、上記
参考例1のものと同様である。
【0035】
また、
図9および
図10は、
参考例2に係るコイル部品の製造方法を示す工程図である。コイル部品の製造方法においても、
参考例1に係るコイル部品の製造方法と同様である。
すなわち、
図9(A)は
図5(A)と同様の製造工程1を示し、
図9(B)は
図5(B)と同様の製造工程2を示し、
図10(A)は
図6(A)と同様の製造工程3を示し、
図10(B)は
図6(B)と同様の製造工程4を示す。
【0036】
この参考例2に係るコイル部品の製造方法においても、コイル要素巻き終り部側起立部223Aの捩じり角度と、コイル要素巻き始め部側起立部223Bの捩じり角度が90度同士で相殺され、連結部213の中間部223Cは捩じれのない状態となる。
【0037】
<実施例1>
この実施例1は、上述した参考例1のものと共通(対応)する部材も多いので、そのような共通(対応)する部材については、参考例1における部材の付番に200を加えた付番を本実施例の部材の付番とし、その詳しい説明は省略する。
【0038】
すなわち、本実施例のコイル部品300は、
図11(斜視図)および
図12(側方からみた状態を示す斜視図)に示すように、1本の平角線材301を用い、接続端子となる一端部301Aと他端部301Bの間で、エッジワイズ巻きで巻回積層し、巻回積層されたコイルの所定位置(通常は略中間位置)で2つに折り曲げることによって、それぞれ角筒形状に並列形成された第1のコイル要素311と第2のコイル要素312を設けるとともに、両コイル要素311、312を連結する連結部313を設けて構成される、という点において上記
参考例1のコイル部品100と同様である。
【0039】
また、連結部313の作用効果としても同様であるが、連結部313の、コイル要素巻き終り部側起立部323Aと、コイル要素巻き始め部側起立部323Bの形状が若干異なっている。すなわち、コイル要素巻き終り部側起立部323Aにおいて、平角線材301を捩じりながら起立させた後、エッジワイズ巻きの要領でRを持たせたR部323
Eと、コイル要素巻き始め部側起立部323Bにおいて、平角線材301を捩じりながら起立させた後、エッジワイズ巻きの要領でRを持たせたR部323Dを設けており、これにより中間部
323Cが全体として、
図11の紙面上方に持ち上げられるようになっている。すなわち、中間部323Cは、
図12に示すように、第1のコイル要素311および第2のコイル要素312の上側面よりも上方に位置するように配設されている。
また、連結部313の中間部323Cは、上記
参考例2と同様に、平板状に形成されているが、上記
参考例1と同様に、湾曲した形状に形成されていてもよい。
【0040】
また、
図13に示すように、2つのコイル要素311、312の中空部311E、312Eに、1対のU字型コア351(不図示)、352の左右脚部を挿入し、この中空部311E、312Eの内部で、互いに突き合わせることによりリアクトル装置(コイル装置)を構成することについても、上記
参考例1のものと同様である。ただし、本実施例においては連結部313の中間部323Cが、図中、より上方に位置するように配されているので、製造工程において、U字型コア351、352の左右脚部を、この中空部311E、312E内に容易に挿入することができる。
【0041】
また、
図14および
図15は、
実施例1に係るコイル部品の製造方法を示す工程図である。コイル部品の製造方法においても、
参考例1に係るコイル部品の製造方法と基本的には同様である。
すなわち、
図14(A)は
図5(A)と同様の製造工程1を示し、
図14(B)は
図5(B)と同様の製造工程2を示し、
図15(A)は
図6(A)と同様の製造工程3を示し、
図15(B)は
図6(B)と同様の製造工程4を示す。
【0042】
ただし、本実施例においては、コイル要素巻き終り部側起立部323AにおいてR部323Eを備え、コイル要素巻き始め部側起立部323BにおいてR部323Dを備えている。したがって、このR部323D、323Eを形成するために、製造工程1においては、
図14(A)に示すように、
参考例1の製造工程1に比べ、第1の
コイル要素311を第2の
コイル要素312に対し90度回転させて、第1のコイル要素311と連結部313の間、および第2のコイル要素312と連結部313の間に、エッジワイズ巻きにより45度だけ曲げたR部323D、323Eを形成するようにしている。
また、製造工程2においては、第1のコイル要素311と連結部313の間、および第2のコイル要素312と連結部313の間をフラットワイズ曲げの要領で45度ずつ折り曲げるようにしている。この場合にも、第1のコイル要素311と連結部313の間の曲げ方向、および第2のコイル要素312と連結部313の間の曲げ方向は互いに逆向きとされている。
製造工程3および製造工程4については、
参考例1のものと同様である。
【0043】
この実施例1に係るコイル部品の製造方法においても、コイル要素巻き終り部側起立部323Aの捩じり角度と、コイル要素巻き始め部側起立部323Bの捩じり角度が90度同士で相殺され、連結部313の中間部323Cは捩じれのない状態となる。
【0044】
なお、本発明のコイル部品およびコイル装置としては、上記実施例1のものに限られるものではなく、その他の種々の態様をとり得るものである。
また、上記実施例1においては、コイル部品を製造する方法について記載しているが、コイル部品の製造方法としてはこれに限られるものではないことは勿論であり、その他の種々の製造方法を採用することが可能である。
【0045】
また、上記実施例1においては、連結部313の接続点を縦辺の端部近傍に設けるようにしているが、平角線が、この縦辺の端部から延長されるように形成し、上記接続点を、この延長線上に設けるようにしてもよい。なお、縦辺の途中に上記接続点を設けた場合には、連結部がコアと干渉することになるので好ましくない。
また、上記実施形態に係るリアクトル(コイル部品)では、車載用のリアクトルに適用したものを示しているが、本発明に係るコイル部品およびコイル装置は車載用に限られず種々のものに適用が可能であり、例えば、太陽光発電パネルにおいて使用されるリアクトル等にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
100、200、300 コイル部品
101、201、301 平角線材
101A、B、201A、B、301A、B 端部
111、211、311 第1のコイル要素
111C、112C、211C、212C、311C、312C 縦辺(第1辺)
111D、211D、311D コイル要素巻き終り部
111E、112E、211E、212E、311E、312E 中空部
111F、112F、211F、212F、311F、312F 側面
111G、112G、211G、212G、311G、312G 横辺(第2辺)
111H、112H、211H、212H、311H、312H 外側縦辺
111I、112I、211I、212I、311I、312I 内側縦辺
112、212、312 第2のコイル要素
112D、212D、312D コイル要素巻き始め部
113、213、313 連結部
123A、223A、323A コイル要素巻き終り部側起立部
123B、223B、323B コイル要素巻き始め部側起立部
123C、223C、323C 中間部
323D、323E R部
151、152、252、352 コア
180、280、380 コイル装置