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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】地質探査装置及び地質探査方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/08 20060101AFI20220912BHJP
【FI】
G01V3/08 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018235162
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020098103
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】593093858
【氏名又は名称】西日本高速道路エンジニアリング関西株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100143373
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】中村 真
(72)【発明者】
【氏名】三好 忠和
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194454(JP,A)
【文献】特開平07-134183(JP,A)
【文献】特開2005-114485(JP,A)
【文献】特開2004-101230(JP,A)
【文献】特許第6277535(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0001622(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00~99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地質を非接触で探査する地質センサと、
前記地質センサを空中に浮揚させる気球と、
前記地質センサに一端側が接続される第一ロープと、
前記地質センサに一端が接続される第二ロープとを備える地質探査装置。
【請求項2】
前記地質センサは、一方向に長尺な形状を有し、
前記第一ロープの前記一端側は二股に分岐し、当該分岐の一端が前記地質センサの前記一方向における一端部近傍に接続され、当該分岐の他端が前記地質センサの前記一方向における他端部近傍に接続される請求項1記載の地質探査装置。
【請求項3】
前記地質センサは、一方向に長尺な形状を有し、
前記第二ロープの一端は、前記地質センサの前記一方向における一端部近傍に接続され、
前記地質センサの前記一方向における他端部近傍に接続される第三ロープをさらに備える請求項1又は2に記載の地質探査装置。
【請求項4】
地表面に設置され、前記第二ロープを下方向に引っ張るための第一滑車をさらに備える請求項1又は2に記載の地質探査装置。
【請求項5】
地表面に設置され、前記第二ロープを下方向に引っ張るための第一滑車と、
地表面に設置され、前記第三ロープを下方向に引っ張るための第二滑車とをさらに備える請求項3記載の地質探査装置。
【請求項6】
前記地質センサは、一方向に長尺な略板状の形状を有するとともに、当該板状の一方の面を地表面に向けることにより前記探査が可能であり、
前記地質センサの前記一方の面には、予め設定された長さを有し、当該一方の面から垂直に延びる棒状部材が取り付けられている請求項1~5のいずれか1項に記載の地質探査装置。
【請求項7】
前記棒状部材として、
前記地質センサの前記一方向における一端部近傍に取り付けられる第一棒状部材と、
前記地質センサの前記一方向における他端部近傍に取り付けられる第二棒状部材とを備える請求項6に記載の地質探査装置。
【請求項8】
前記地質センサは、一方向に長尺な形状を有し、
前記気球は、前記地質センサの前記一方向における一端部近傍と他端部近傍とで前記地質センサと連結されている請求項1~7のいずれか1項に記載の地質探査装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の地質探査装置を用いて土地の地質を探査する地質探査方法であって、
前記地質センサを前記土地の地表面に対向配置し、
前記地質センサの両側から前記第一ロープの他端側と前記第二ロープの他端側とを引っ張りつつ前記地質センサを移動させることにより、地質を探査する地質探査方法。
【請求項10】
請求項5に記載の地質探査装置を用いて土地の地質を探査する地質探査方法であって、
前記地質センサを前記土地の地表面に対向配置し、
前記第一及び第二滑車を前記地質センサの一方の側に設置し、
前記第一及び第二滑車の各索輪の軸を、地表面と平行かつ前記地質センサと当該各索輪とを結ぶ直線に対して略垂直方向に向け、
前記第一ロープの他端側を前記地質センサの他方の側から引っ張り、前記第二ロープを前記第一滑車の索輪の下側に掛けて引っ張り、前記第三ロープを前記第二滑車の索輪の下側に掛けて引っ張りつつ前記地質センサを移動させることにより、地質を探査する地質探査方法。
【請求項11】
前記土地は傾斜地であり、
前記第一ロープを前記地質センサよりも上方及び下方のうち一方の側から引っ張り、
前記第一ロープとは異なるロープを前記地質センサよりも上方及び下方のうち他方の側から引っ張る請求項9又は10に記載の地質探査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地質を探査する地質探査装置及び地質探査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地質を探査するための可搬型の地質センサが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。非特許文献1に記載の地質センサは、いわゆる電磁センサであり、地面に対して磁場を出力することによって、地中に誘導電流を誘起させる。そして、この誘導電流により生じた磁場を検出することによって、地質を探査可能にされている。
【0003】
非特許文献1に記載の地質センサには、肩紐が取り付けられており、作業者の肩から地質センサを吊り下げるようになっている。そして、作業者が地質センサを肩から提げて、地質構造を探査しようとする場所を歩くことによって、その場所の地質構造を探査するようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Geophex社Webページ(http://www.geophex.com/Product_GEM2_handheld.htm)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の地質センサを用いて地質を探査する場合、作業者が地質センサを肩から吊り下げて探査対象の地面を歩かなければならず、作業効率の低下を招いていた。特に傾斜が急な斜面では、安全を確保しつつ探査作業を行うことが困難であり、作業効率の低下を招いていた。
【0006】
本発明の目的は、地質探査の作業効率を向上させることが容易な地質探査装置及び地質探査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る地質探査装置は、地質を非接触で探査する地質センサと、前記地質センサを空中に浮揚させる気球と、前記地質センサに一端側が接続される第一ロープと、前記地質センサに一端が接続される第二ロープとを備える。
【0008】
この構成によれば、気球によって地質センサが空中に浮揚されるので、探査しようとする場所を間に挟んで一方から第一ロープを引っ張り、他方から第二ロープを引っ張りつつ一方のロープを緩めることで、探査しようとする場所の上に地質センサを浮揚させつつ移動させて地質探査を行うことができる。その結果、作業者が地質センサを肩から吊り下げて探査対象の地面を歩くことなく地質探査を行うことができるので、地質探査の作業効率を向上させることが容易となる。
【0009】
また、前記地質センサは、一方向に長尺な形状を有し、前記第一ロープの前記一端側は二股に分岐し、当該分岐の一端が前記地質センサの前記一方向における一端部近傍に接続され、当該分岐の他端が前記地質センサの前記一方向における他端部近傍に接続されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、作業者が一本の第一ロープを引っ張ると、その張力が分岐によって、地質センサの長尺方向両端付近に分配される。その結果、地質センサの長尺方向両端付近が略同じ力で引っ張られることになる。これにより、地質センサの姿勢を安定させて地質探査の探査精度を向上させることが容易となる。
【0011】
また、前記地質センサは、一方向に長尺な形状を有し、前記第二ロープの一端は、前記地質センサの前記一方向における一端部近傍に接続され、前記地質センサの前記一方向における他端部近傍に接続される第三ロープをさらに備えることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、作業者が第二ロープと第三ロープとを引っ張ることによって、地質センサの長尺方向両端付近を略同じ力で引っ張ることが可能になる。これにより、地質センサの姿勢を安定させて地質探査の探査精度を向上させることが容易となる。
【0013】
また、地表面に設置され、前記第二ロープを下方向に引っ張るための第一滑車をさらに備えることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、滑車によって、第二ロープが下方向に引っ張られる。これにより、地質センサの地表面からの高さを、気球による浮力に抗して適切な高さにすることが容易となる。
【0015】
また、地表面に設置され、前記第二ロープを下方向に引っ張るための第一滑車と、地表面に設置され、前記第三ロープを下方向に引っ張るための第二滑車とをさらに備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第一及び第二滑車によって、第二及び第三ロープが下方向に引っ張られる。これにより、地質センサの長尺方向両端付近を略同じ力で下方向に引っ張ることが可能になる。これにより、地質センサの姿勢を安定させつつ、地質センサの地表面からの高さを、気球による浮力に抗して適切な高さにすることが容易となる。
【0017】
また、前記地質センサは、一方向に長尺な略板状の形状を有するとともに、当該板状の一方の面を地表面に向けることにより前記探査が可能であり、前記地質センサの前記一方の面には、予め設定された長さを有し、当該一方の面から垂直に延びる棒状部材が取り付けられていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第一ロープと第二ロープとが互いに反対方向に引っ張られ、地質センサが気球の浮力に抗して下降すると、棒状部材の先端が地表面に当接する。その結果、地質センサの地表面からの高さが、棒状部材の長さによって規定される。これにより、地質センサの地表面からの高さを適切な高さに設定することが可能となる。
【0019】
また、前記棒状部材として、前記地質センサの前記一方向における一端部近傍に取り付けられる第一棒状部材と、前記地質センサの前記一方向における他端部近傍に取り付けられる第二棒状部材とを備えることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、地質センサの長尺方向両端近傍の高さを、それぞれ第一棒状部材及び第二棒状部材によって規定することができる。その結果、地質センサの姿勢を水平に保つことが容易になる。
【0021】
また、前記地質センサは、一方向に長尺な形状を有し、前記気球は、前記地質センサの前記一方向における一端部近傍と他端部近傍とで前記地質センサと連結されていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、地質センサの一端部近傍と他端部近傍とで、気球が地質センサと連結される結果、地質センサの姿勢を水平に保つことが容易となる。
【0023】
また、本発明に係る地質探査方法は、上述の地質探査装置を用いて土地の地質を探査する地質探査方法であって、前記地質センサを前記土地の地表面に対向配置し、前記地質センサの両側から前記第一ロープの他端側と前記第二ロープの他端側とを引っ張りつつ前記地質センサを移動させることにより、地質を探査する。
【0024】
この方法によれば、探査しようとする土地の地表面に対向配置され、気球によって空中に浮揚された地質センサの両側から第一ロープの他端側と第二ロープの他端側とを引っ張りつつ当該地質センサを移動させることにより、地質を探査することができる。その結果、作業者が地質センサを肩から吊り下げて探査対象の地面を歩くことなく地質探査を行うことができるので、地質探査の作業効率を向上させることが容易となる。
【0025】
また、本発明に係る地質探査方法は、上述の地質探査装置を用いて土地の地質を探査する地質探査方法であって、前記地質センサを前記土地の地表面に対向配置し、前記第一及び第二滑車を前記地質センサの一方の側に設置し、前記第一及び第二滑車の各索輪の軸を、地表面と平行かつ前記地質センサと当該各索輪とを結ぶ直線に対して略垂直方向に向け、前記第一ロープの他端側を前記地質センサの他方の側から引っ張り、前記第二ロープを前記第一滑車の索輪の下側に掛けて引っ張り、前記第三ロープを前記第二滑車の索輪の下側に掛けて引っ張りつつ前記地質センサを移動させることにより、地質を探査する。
【0026】
この方法によれば、探査しようとする土地の地表面に対向配置され、気球によって空中に浮揚された地質センサの両側から第一ロープの他端側と、第二及び第三ロープの他端側とを引っ張りつつ当該地質センサを移動させることにより、地質を探査することができる。その結果、作業者が地質センサを肩から吊り下げて探査対象の地面を歩くことなく地質探査を行うことができるので、地質探査の作業効率を向上させることが容易となる。さらに第二及び第三ロープが、第一及び第二滑車の索輪の下側に掛けられて引っ張られることにより、地質センサを気球の浮力に抗して下降させるのが容易となる。
【0027】
また、前記土地は傾斜地であり、前記第一ロープを前記地質センサよりも上方及び下方のうち一方の側から引っ張り、前記第一ロープとは異なるロープを前記地質センサよりも上方及び下方のうち他方の側から引っ張ることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、傾斜地の上側と下側の作業者が立ちやすい場所からロープを操作することによって、作業者が地質センサを肩から吊り下げて歩き難い傾斜地の斜面を歩くことなく地質探査を行うことができるので、地質探査の作業効率を向上させることが容易となる。
【発明の効果】
【0029】
このような構成の地質探査装置及び地質探査方法は、地質探査の作業効率を向上させることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る地質探査装置の構成及び地質探査方法の一例を説明するための説明図である。
図2図1に示す地質探査装置及び傾斜地Gを真横から見た説明図である。
図3図1に示す地質センサ2の構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明の一実施形態に係る地質探査装置の構成及び地質探査方法の一例を説明するための説明図である。図2は、図1に示す地質探査装置及び傾斜地Gを真横から見た説明図である。図3は、図1に示す地質センサ2の構成の一例を示す説明図である。
【0032】
図1に示す地質探査装置1は、地質センサ2、気球3、第一ロープ4、第二ロープ5、第三ロープ6、第一滑車7、第二滑車8、第一棒状部材21、第二棒状部材22、及び吊下ロープ31~34を備えている。
【0033】
気球3には、空気よりも軽い気体、例えばヘリウムガスが封入されている。これにより、気球3は、地質センサ2の重量以上の浮力を生じるようにされている。気球3には、吊下ロープ31~34の一端が取り付けられている。なお、気球3に封入される気体は、ヘリウムガスに限られず、空気よりも軽い気体であればよい。また、気球3は、ガス気球に限られず、熱気球であってもよい。
【0034】
地質センサ2は、地質を非接触で探査するセンサであり、例えば電磁探査センサである。地質センサ2は、例えば米国Geophex社製GEM-2 Skiを用いて構成することができる。
【0035】
なお、地質センサ2は、地質を非接触で探査するものであればよく、GEM-2 Skiに限らない。例えば、米国Geophysical Survey Systems社製EMP-400、カナダGeonics社製EM-31MK2、環境総合テクノス社製FDEM探査機、ネオサイエンス社製GREATEM探査機等、種々の探査装置を用いて地質センサ2を構成することができる。また、地質センサ2は、種々の物理探査法を用いることができ、例えば重力、磁力、放射能、地震波、電磁気、電気、超音波等を用いて地質を探査するものであってもよい。
【0036】
地質センサ2は、本体部23、制御部24、送信コイルT、受信コイルR、及び取付金具25~28を備えている。本体部23は、例えば一方向に長尺な略板状の形状、より具体的には扁平な直方体形状を有する。本体部23の長尺方向の長さLは、1m~4m程度とされている。地質センサ2は、本体部23の一方の面、図3の下面を地表面に向けることによって、地質を探査可能とされている。
【0037】
制御部24は、例えば略直方体形状の筐体に収容されて、本体部23の上面に配設されている。送信コイルTは、本体部23の一端部付近に内蔵されている。受信コイルRは、本体部23の他端部付近に内蔵されている。
【0038】
制御部24は、例えばマイクロコンピュータ、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置、及びこれらの周辺装置等を用いて構成されている。制御部24は、送信コイルTによって磁界を発生させ、その磁界によって、地中に誘導電流(渦電流)を生じさせる。この誘導電流により生じた二次磁場が受信コイルRによって検出され、二次磁場を示す情報が、地質の探査結果を示す情報として、制御部24によって逐次記憶装置に記憶される。
【0039】
二次磁場は、砂、岩石、粘土、水分含有量、埋設された金属物の存在等の地質に応じて変化する。従って、地質センサ2は、二次磁場を検出することによって、地質を非接触で探査可能とされている。
【0040】
取付金具25~28は、例えばリング状金具であり、ロープを結びつけて接続可能にされている。取付金具25~28は、例えば本体部23の上面に取り付けられている。取付金具25,26は本体部23の一端部近傍、具体的には、本体部23の一端から長さL/5以内の範囲内に取り付けられている。取付金具27,28は本体部23の他端部近傍、具体的には、本体部23の他端から長さL/5以内の範囲内に取り付けられている。
【0041】
取付金具25,26には吊下ロープ31,32の他端が接続され、取付金具27,28には吊下ロープ33,34の他端が接続されている。地質センサ2は、吊下ロープ31~34によって気球3と連結され、気球3の浮力によって、空中に浮揚される。
【0042】
この場合、気球3は、地質センサ2の一端部近傍及び他端部近傍、すなわち両端部近傍で地質センサ2と連結される結果、地質センサ2の姿勢を水平に保つことが容易となる。
【0043】
第一ロープ4は、ロープ本体41と、ロープ本体41の一端に連結された分岐部42,43とを備えている。これにより、第一ロープ4の一端側が、分岐部42,43の二股に分岐するようになっている。分岐部42の一端は取付金具25と接続され、分岐部43の一端は取付金具27と接続されている。これにより、第一ロープ4の一端側が地質センサ2に接続されている。
【0044】
第一滑車7及び第二滑車8は、地質センサ2よりも下側、例えば探査対象となる傾斜地G(土地)の下端に設置される。第一滑車7及び第二滑車8は、各索輪の下端の地表面からの高さが、第一棒状部材21及び第二棒状部材22の長さよりも低くなるように、各索輪が保持されている。
【0045】
第二ロープ5の一端は取付金具26と接続され、第三ロープ6の一端は取付金具28と接続されている。第二ロープ5の他端側は第一滑車7の索輪の下側に掛けられ、第三ロープ6の他端側は第二滑車8の索輪の下側に掛けられる。
【0046】
第一棒状部材21及び第二棒状部材22は、地質センサ2による地質探査に適した、地表面と、本体部23の下面との距離に相当する長さとされている。第一棒状部材21及び第二棒状部材22の長さは、例えば50cm~1m程度とされている。第一棒状部材21は、本体部23の一端部近傍、具体的には、本体部23の一端から長さL/5以内の範囲内に取り付けられている。第二棒状部材22は、本体部23の他端部近傍、具体的には、本体部23の他端から長さL/5以内の範囲内に取り付けられている。
【0047】
次に、上述の地質探査装置1を用いた地質検査方法について説明する。図1図2を参照して、まず、作業者M1,M2は、地質センサ2を傾斜地Gの斜面F(地表面)の下端に対向配置する。作業者M1は、ロープ本体41を持って傾斜地Gの上に移動する。
【0048】
作業者M2は、第一滑車7及び第二滑車8を、地質センサ2よりも下側、例えば斜面Fの下に設置し、第一滑車7及び第二滑車8の各索輪の軸を、地表面と平行かつ地質センサ2と当該各索輪とを結ぶ直線に対して略垂直方向に向ける。
【0049】
この状態で、作業者M2は第一滑車7及び第二滑車8の下側に掛けられた第二ロープ5及び第三ロープ6を引っ張り、作業者M1は第一ロープ4を引っ張る。そうすると、第一ロープ4、第二ロープ5、及び第三ロープ6に張力が生じ、気球3の浮力とバランスした高さで地質センサ2が空中に浮揚する。このとき、第一棒状部材21及び第二棒状部材22の重量によって、地質センサ2は、第一棒状部材21及び第二棒状部材22が取り付けられた側が下を向く。これにより、地質センサ2は、地質探査可能な姿勢となる。
【0050】
さらに、第一滑車7及び第二滑車8は各索輪の下端の地表面からの高さが第一棒状部材21及び第二棒状部材22の長さよりも低いので、作業者M2が第二ロープ5及び第三ロープ6を引っ張ると、地質センサ2を下向きに押し下げる力が生じる。このとき、第二ロープ5が地質センサ2の一端近傍、第三ロープ6が地質センサ2の他端近傍に連結されているので、地質センサ2の姿勢を水平に保ちつつ、かつ地質センサ2の長尺方向が作業者M1と作業者M2とを結ぶ直線と垂直になる向きにされやすくなる。その結果、地質センサ2の姿勢が安定し、地質センサ2による地質の探査精度が向上しやすくなる。
【0051】
第一棒状部材21及び第二棒状部材22が下向きに延びているので、地質センサ2が押し下げられると、第一棒状部材21及び第二棒状部材22の先端が地表面に当接し、地表面から地質センサ2までの距離が、第一棒状部材21及び第二棒状部材22の長さ、すなわち地質探査に適した距離となる。これにより、地質センサ2は、探査に適した距離で地質探査を行うことができるので、地質探査の探査精度を向上させることが容易となる。
【0052】
さらに、第一棒状部材21は本体部23の一端部近傍、第二棒状部材22は本体部23の他端部近傍に取り付けられているので、第一棒状部材21及び第二棒状部材22の先端が地表面に当接すると、本体部23の長尺方向両端付近の地表面からの高さが同一高さになる。これにより、地質センサ2を水平に保つことが容易となる結果、地質センサ2による地質探査の探査精度を向上させることが容易となる。
【0053】
一方、作業者M1が第一ロープ4を引っ張ると、その張力は分岐部42と分岐部43とに分配され、本体部23の長尺方向両端付近が略同じ力で引っ張られることになる。これにより、本体部23の長尺方向を、地質センサ2と当該各索輪とを結ぶ直線に対して略垂直方向に向けることができるので、地質センサ2の姿勢を安定させて地質探査の探査精度を向上させることが容易となる。また、作業者M1は、一本の第一ロープ4を引っ張るだけでよいので、作業が容易である。
【0054】
このようにして、地質センサ2の姿勢を安定させた状態で、作業者M2が第二ロープ5及び第三ロープ6を少しずつ緩め、作業者M1が第一ロープ4を引っ張り続けることで、地質センサ2は、斜面Fを下から上に向かって移動する。
【0055】
ここで、気球3によって地質センサ2が浮揚されているので、地質センサ2の重量を第一ロープ4、第二ロープ5、及び第三ロープ6の張力で支える必要がなく、かつ第一棒状部材21及び第二棒状部材22の先端と斜面Fとの摩擦が低減される。その結果、第一ロープ4、第二ロープ5、及び第三ロープ6の操作により地質センサ2を移動させることが容易となる。
【0056】
また、本体部23の一端部近傍に連結された吊下ロープ31,32と、本体部23の他端部近傍に連結された吊下ロープ33,34とによって、気球3から地質センサ2が吊り下げられているので、地質センサ2の長尺方向両端部がバランスよく気球3から吊り下げられる。これにより、地質センサ2の姿勢を水平に保つことが容易となる結果、地質センサ2による地質探査の探査精度を向上させることが容易となる。
【0057】
地質センサ2は、斜面Fを移動しつつ、傾斜地Gの地質探査を実行し、その探査結果を示す情報を、逐次図略の記憶装置に記憶させる。なお、探査結果は記憶装置に記憶される例に限らない。例えば制御部24に、無線又は有線の通信回路を備え、探査結果を示す情報を、無線又は有線通信によって送信してもよい。
【0058】
そして、地質センサ2が作業者M1に届いたとき、作業者M2から作業者M1に至る経路上で、傾斜地Gの地質探査が終了する。
【0059】
以上、地質探査装置1及び地質探査装置1を用いた地質検査方法によれば、背景技術のように、作業者が地質センサを肩から吊り下げて傾斜した斜面を歩く必要がなく、ロープを操作するだけで傾斜地Gの地質を探査することができるので、地質探査の作業効率を向上させることが容易である。
【0060】
なお、地質探査装置1によって傾斜地Gの地質探査を行う例を示したが、傾斜のない平坦な土地の地質探査を行ってもよい。また、傾斜地Gの下から上へ向かって地質センサ2を移動させる例を示したが、傾斜地Gの上から下へ向かって地質センサ2を移動させてもよい。また、第一滑車7及び第二滑車8を、傾斜地Gの上に配置し、作業者M1が下から第一ロープ4を引っ張り、作業者M2が第二ロープ5及び第三ロープ6を上から引っ張ってもよい。
【0061】
また、作業者M1,M2が第一ロープ4、第二ロープ5、及び第三ロープ6を引っ張って地質センサ2を移動させる例を示したが、例えば巻き上げ機を用いて第一ロープ4、第二ロープ5、及び第三ロープ6を巻き上げることによって、第一ロープ4、第二ロープ5、及び第三ロープ6に張力を生じさせつつ地質センサ2を移動させてもよい。
【0062】
また、地質探査装置1は、第一滑車7及び第二滑車8を備えていなくてもよい。
【0063】
また、気球3は、地質センサ2の長尺方向における一端部近傍と他端部近傍とで地質センサ2と連結される例に限らない。例えば、地質センサ2の中央付近と気球3とが一本又は複数本のロープで連結されていてもよい。また、取付金具26,28を備えず、取付金具25,27が本体部23の幅方向略中央に設けられ、取付金具25に第一ロープ4、第二ロープ5、吊下ロープ31,32が連結され、取付金具27に第一ロープ4、第三ロープ6、吊下ロープ33,34が連結されていてもよい。また、吊下ロープは4本に限られず、3本以下であってもよく、6本以上、例えば8本であってもよい。また、取付金具25~28は、必ずしも本体部23の長尺方向両端付近に設けられる例に限らない。例えば、本体部23の長尺方向略中央を間に挟んで一方の側に取付金具25,26が、他方の側に取付金具27,28が設けられていてもよい。
【0064】
また、地質探査装置1は、第一棒状部材21と、第二棒状部材22とを備える例を示したが、棒状部材は一つであってもよく、一つの棒状部材が地質センサ2の中央付近に取り付けられていてもよく、棒状部材は三つ以上であってもよい。また、地質探査装置1は、第一棒状部材21及び第二棒状部材22を備えていなくてもよい。
【0065】
また、地質探査装置1は、第二ロープ5、第三ロープ6、第一滑車7、及び第二滑車8を備える例を示したが、第二ロープ5を地質センサ2の中央付近に接続し、第三ロープ6及び第二滑車8を備えない構成としてもよい。
【0066】
また、第一ロープ4の一端側が分岐部42,43に分岐する例を示したが、第一ロープ4の一端側は分岐せず、地質センサ2の中央付近に接続される構成としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 地質探査装置
2 地質センサ
3 気球
4 第一ロープ
5 第二ロープ
6 第三ロープ
7 第一滑車
8 第二滑車
21 第一棒状部材
22 第二棒状部材
23 本体部
24 制御部
25~28 取付金具
31~34 吊下ロープ
41 ロープ本体
42,43 分岐部
F 斜面(地表面)
G 傾斜地(土地)
M1,M2 作業者
R 受信コイル
T 送信コイル
図1
図2
図3