(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20220912BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220912BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20220912BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220912BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20220912BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/92
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019060136
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】村井 将紀
(72)【発明者】
【氏名】市川 晶子
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝治
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-026238(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221278(WO,A1)
【文献】特開2018-168123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)を45~95質量%、成分(B)を0.5~12質量%、成分(C)を0.5~12質量%、成分(D)を1~20質量%および成分(E)を1~30質量%含有することを特徴とする、油性化粧料。
(A)25℃で液状である油性成分
(B)下記の式(I)の非イオン性界面活性剤
R
1-O-(AO)
a-[(PO)
b/(EO)
c]-H ・・・(I)
(R
1は炭素数12~36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。
AOは炭素数3又は4のオキシアルキレンであり、POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、a、b及びcはそれぞれ前記オキシアルキレン基AO、前記オキシプロピレン基POおよび前記オキシエチレン基EOの1分子あたりの平均付加モル数であり、
4≦a≦
20、
4≦b≦
10、
10≦c≦
30、
60≧(a+b+c)≧20である。
[(PO)
b/(EO)
c]は前記オキシプロピレン基POと前記オキシエチレン基EOとがランダム状に結合してなるポリオキシアルキレン基を示し、ランダム率xが
0.5≦x≦
0.9である。)
(C)下記の式(II)の非イオン性界面活性剤
R
2-O-(PO)
d-(EO)
e-H ・・・(II)
(R
2は炭素数12~36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、
POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、d及びeはそれぞれ前記オキシプロピレン基POおよび前記オキシエチレン基EOの1分子あたり平均付加モル数であり、
5≦d≦
30、
3≦e≦
15である。
(PO)
d-(EO)
eは前記オキシプロピレン基POと前記オキシエチレン基がブロック状に結合してなるポリオキシアルキレン基を示す。)
(D)不飽和もしくは分岐状炭化水素基を有する炭素数16~18のアルコールおよび不飽和もしくは分岐状炭化水素基を有する炭素数16~18の脂肪酸からなる群より選ばれた一種または二種以上
(E)水
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量の界面活性剤で、油性成分に水性成分を可溶化した透明な含水油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性化粧料は油を高濃度で含有する化粧料であり、洗浄効果が高いメイクアップ除去料である油性クレンジング剤や、エモリエント効果や保湿性の高いバスオイルタイプの浴用化粧料、美容用オイルなど、多数の製品が上市されている。中でも含水油性化粧料は乾燥した人の肌に水分を供給できる点の他、クレンジング料を塗布した時や洗い流した時にさっぱりとした使用感を付与できる点、美容オイルへ水溶性の有効成分を溶解できる点など、多種の利点から様々な技術が提案されている。
【0003】
含水油性化粧料としては、例えばHLBが異なる2種類以上のポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、常温で液状の油、水を含有する含水油性化粧料が、特許文献1に記載されている。しかし特許文献1に記されている手法では、水に対して界面活性剤を等倍以上配合する必要があり、界面活性剤を多量に使用するため、感触がべたつくという問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、液状油、HLBが2~10の非イオン性界面活性剤を1種又は2種以上、水を含有するオイル含有組成物が提案されている。この文献の手法においては、さっぱりとした使用感かつ低温安定性に優れた組成物を達成しているが、塗布後の保湿感が不十分となる可能性があった。
【0005】
更に、特許文献3には、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルを含む非イオン界面活性剤、液状油、水を含有する含水油性化粧料が提案されている。この文献の手法によって、界面活性剤量を減量することができ、化粧料の刺激発現性およびべたつきを低減することに成功している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-002059
【文献】特開平1-238518
【文献】特開2005-187355
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、近年、高級感の観点から、使用感のみではなく外観の透明性が強く求められている。しかし、特許文献3の油性化粧料では、外観が乳濁してしまい、美容液など基礎化粧品へ技術を応用する際に高級感を損なうという問題があった。
【0008】
油性成分に水を可溶化した含水油性化粧料は、クレンジング時の使用感の向上や、油中への水溶性有効成分の溶解を達成することができる。しかしながら、従来技術では、界面活性剤の配合量が増加する場合、塗布後の保湿感が不十分な場合、外観が乳濁する場合が生じるといった問題があった。
【0009】
このように、従来知られる方法では、界面活性剤の配合量、塗布後の保湿感、外観の透明性を同時に満たす含水油性化粧料は提案されていなかった。
【0010】
本発明の課題は、少量の界面活性剤で油中に水を含有させ、優れた保湿感を有する透明な油性化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記事項に鑑みて鋭意検討した結果、(A)25℃で液状である油性成分、(B)及び(C)の特定の非イオン性界面活性剤、(D)アルコールまたは脂肪酸、及び(E)水を特定の比率で組み合わせた組成物によって、上記の課題を解決するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は下記の成分(A)を45~95質量%、成分(B)を0.5~12質量%、成分(C)を0.5~12質量%、成分(D)を1~20質量%および成分(E)を1~30質量%含有することを特徴とする、油性化粧料である。
(A)25℃で液状である油性成分
(B)下記の式(I)の非イオン性界面活性剤
R1-O-(AO)a-[(PO)b/(EO)c]-H ・・・(I)
(R1は炭素数12~36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。
AOは炭素数3又は4のオキシアルキレンであり、POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、a、b及びcはそれぞれ前記オキシアルキレン基AO、前記オキシプロピレン基POおよび前記オキシエチレン基EOの1分子あたりの平均付加モル数であり、4≦a≦20、4≦b≦10、10≦c≦30、60≧(a+b+c)≧20である。
[(PO)b/(EO)c]は前記オキシプロピレン基POと前記オキシエチレン基EOとがランダム状に結合してなるポリオキシアルキレン基を示し、ランダム率xが0.5≦x≦0.9である。)
(C)下記の式(II)の非イオン性界面活性剤
R2-O-(PO)d-(EO)e-H ・・・(II)
(R2は炭素数12~36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、
POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、d及びeはそれぞれ前記オキシプロピレン基POおよび前記オキシエチレン基EOの1分子あたり平均付加モル数であり、5≦d≦30、3≦e≦15である。
(PO)d-(EO)eは前記オキシプロピレン基POと前記オキシエチレン基がブロック状に結合してなるポリオキシアルキレン基を示す。)
(D)不飽和もしくは分岐状炭化水素基を有する炭素数16~18のアルコールおよび不飽和もしくは分岐状炭化水素基を有する炭素数16~18の脂肪酸からなる群より選ばれた一種または二種以上
(E)水
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、油性成分に水を可溶化した含水油性化粧料において、少量の界面活性剤で油中に水を含有させ、優れた保湿感を有する透明な油性化粧料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の油性化粧料は、以下の特定の成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)および成分(E)で構成される。
【0015】
<成分(A)25℃で液状である油性成分>
本発明は、成分(A)として25℃で液状である油性成分を使用することを特徴の一つとする。
【0016】
25℃で液状の油剤としては、エステル油やトリグリセリド等の極性油、炭化水素油やシリコーン油等の非極性油が挙げられ、中でもエステル油やトリグリセリド等の極性油を含有することが好ましく、エステル油がより好ましい。
【0017】
25℃で液状のエステル油としては、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸イソセチル、2-エチルへキサン酸ステアリル、2-エチルへキサン酸イソステアリル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ピバリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、エルカ酸オクチルドデシル、ジデカン酸ネオペンチルグリコール、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、アジピン酸ジデシル、イソステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸バチル、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、ラノリン脂肪酸イソステアリル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、リシノレイン酸セチル、ロピレングリコール、ジノナン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコールなどが例示できる。かかるエステル油として、これらの1種または2種以上を用いることができる。好ましいエステル油としては、例えば、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシルが挙げられる。これらの中でも、パルミチン酸エステルがより好ましい。
【0018】
25℃で液状のトリグリセリドとしては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、2-エチルヘキサン酸、イソトリデカン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、エイコサン酸、オレイン酸など炭素数6以上の高級脂肪酸とグリセリンとのトリグリセリド;オリーブ油、ヒマワリ油、サフラワー油、ヒマシ油、ツバキ油などの動植物油脂類;などが例示できる。かかるトリグリセリドとして、これらの1種または2種以上を用いることができる。好ましいトリグリセリドとしては、例えば、イソトリデカン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、エイコサン酸、オレイン酸などの炭素数12~18の高級脂肪酸とグリセリンとのトリグリセリド、又はこれら高級脂肪酸の混合物とグリセリンのトリグリセリドが挙げられ、これらを主成分として含有するオリーブ油がより好ましい。
【0019】
25℃で液状の炭化水素油としては、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン、スクワレン、プリスタン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、テトラデセン、イソヘキサデカン、イソドデカン、α-オレフィンオリゴマーなどが例示できる。好ましい炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、スクワランである。かかる炭化水素油として、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0020】
25℃で液状のシリコーン油としては、ジメチコン、シクロメチコン、フェニルジメチコンなどが例示できる。好ましいシリコーン油としては、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのシクロメチコンである。かかるシリコーン油として、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
このとき、本発明の観点からは、成分(A)の質量を45~95質量%とするが、60~85質量%とすることが保湿感の観点から更に好ましい。
【0022】
<(成分(B))非イオン性界面活性剤>
成分(B)は、下記の式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体である。成分(B)は1種類のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
R1-O-(AO)a-[(PO)b/(EO)c]-H ・・・(I)
【0023】
式(I)中のR1は、炭素数12~36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。この炭素数の下限は、18が好ましく、20が特に好ましい。炭素数の上限は、32が好ましく、26が特に好ましい。R1の炭素数が小さすぎると透明性が低下することがあり、R1の炭素数が大きすぎると、塗布時のべたつきが生じる可能性がある。
【0024】
式(I)のアルキレンオキシド誘導体は、通常、アルコールを用いて製造され、式(I)中のR1は、式(I)のアルキレンオキシド誘導体の製造時に用いられるアルコール(R1OH)に由来する。かかるアルコールは、炭素数12~36の直鎖又は分岐鎖のアルコールである。
【0025】
上記アルコール(R1OH)としては、例えば、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコサノール、ヘキサトリアコサノール等の直鎖アルコール;イソトリデカノール、1-メチルヘプタデカノール、2-オクチルデカノール、2-デシルテトラデカノール、2-テトラデシルオクタデカノール、2-ヘキサデシルエイコサノール等の分岐アルコール;ヘキサデセノール、オクタデセノール、ドコセノール等の直鎖アルケノール;1-メチルヘプタデセノール、イソトリデセノール等の分岐アルケノール等が挙げられる。式(I)のアルキレンオキシド誘導体の製造時に、これらのアルコールの1種又は2種以上を用いることができる。これらのアルコールの中で塗布時のべたつき及び透明性の観点から、分岐アルコールが好ましく、イソトリデカノール、1-メチルヘプタデカノール、2-オクチルデカノール、2-デシルテトラデカノールが特に好ましい。
【0026】
式(I)中のAOは炭素数3又は4のオキシアルキレン基であり、オキシプロピレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1-エチルエチレン基、オキシ2-ブチレン基、オキシテトラメチレン基が例示できる。これらのうち、好ましくはオキシプロピレン基である。AOの平均付加モル数aが2以上の場合、2以上のAOは同種の基であっても、異種の基であってもよい。AOが2種以上の異種の基である場合は、ランダム状付加でもブロック状付加のいずれでもよい。
【0027】
式(I)中のPOはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基である。式(I)中のa、b、cは、それぞれ、AO、PO、EOの1分子あたりの平均付加モル数である。
【0028】
aは4~20の数である。aの上限は、20が特に好ましく、9がさらに好ましい。aの下限は、4が好ましい。aが小さすぎたり、大きすぎたりすると、外観の透明性が低下することがある。
【0029】
bは4~10の数である。bの上限は、10が好ましい。bの下限は、4が好ましい。bが小さすぎたり、大きすぎたりすると、保湿感が低下することがある。
【0030】
cは10~30の数である。cの上限は、30が好ましい。cの下限は、10が好ましく、20が特に好ましい。cが小さすぎたり、大きすぎたりすると、塗布時のべたつきが生じる可能性がある。
【0031】
上記a、b及びcの総和(a+b+c)は20以上であり、好ましくは30以上、特に好ましくは35以上である。(a+b+c)が小さすぎると、保湿感及び外観の透明性が低下することがある。また、取り扱い易さの点から、(a+b+c)は60以下であり、50以下がさらに好ましく、40以下がより好ましい。
【0032】
式(I)におけるEOおよびPOの結合部分は[(PO) b/(EO) c] と記載され、この記載は本発明においてbモルのPOとcモルのEOが、ブロック状ではなく、ランダム状に結合していることを示す。EO及びPOがブロック状に結合していると可溶化力が低下することがある。
【0033】
また、R1の炭素数をnとしたとき、y=(2n+a)で表されるy値は30≦y≦100であることが好ましく、特に好ましくは35≦y≦80、さらに好ましくは40≦y≦60である。
【0034】
式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、ランダム率をxとすると、0.5≦x≦0.9であり、さらに好ましくは0.7≦x≦0.9である。ランダム率xが小さすぎると、外観の透明性が低下することがある。
【0035】
式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体中のランダム率は、式(I)中のAO、EO、POの1分子あたりの各平均付加モル数a、b、cから下記の式(III)により求めることができる。
x=(b+c)/(a+b+c)・・・(III)
【0036】
式(I)で示されるアルキレンオシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、炭素数が12~36個である直鎖又は分岐鎖のアルキルアルコールに、アルカリ触媒下、50~160℃、0.5MPa(ゲージ圧)以下にてアルキレンオキシドを付加重合した後に、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物を付加重合し、塩酸、リン酸、酢酸などの酸にて中和し、さらに水分及び中和塩を除去することで式(I)のアルキレンオキシド誘導体を得ることができる。
【0037】
成分(B)の比率は0.5~12質量%とするが、1~7質量%とすることが外観の透明性及び塗布時のべたつきの観点から、更に好ましい。
【0038】
<(成分(C))非イオン性界面活性剤>
成分(C)は下記の式(II)で示されるアルキレンオキシド誘導体である。成分(C)は1種類のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
R2-O-(PO)d-(EO)e-H ・・・(II)
【0039】
式(II)中のR2は炭素数12~36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。炭素数の下限は、18が好ましく、20が特に好ましい。炭素数の上限は、32が好ましく、26が特に好ましい。R2の炭素数が小さすぎると透明性が低下することがあり、R2の炭素数が大きすぎると塗布時のべたつきが生じる可能性がある。
【0040】
式(II)のアルキレンオキシド誘導体は、通常、アルコールを用いて製造され、式(II)中のR2は、式(II)のアルキレンオキシド誘導体の製造時に用いられるアルコール(R2OH)に由来する。かかるアルコールは、炭素数12~36の直鎖又は分岐鎖のアルコールである。
【0041】
上記アルコール(R2OH)としては、例えば、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコサノール、ヘキサトリアコサノール等の直鎖アルコール;イソトリデカノール、1-メチルヘプタデカノール、2-オクチルデカノール、2-デシルテトラデカノール、2-テトラデシルオクタデカノール、2-ヘキサデシルエイコサノール等の分岐アルコール;ヘキサデセノール、オクタデセノール、ドコセノール等の直鎖アルケノール;1-メチルヘプタデセノール、イソトリデセノール等の分岐アルケノール等が挙げられる。これらの中でも分岐アルコールが好ましく、2-デシルテトラデカノールがより好ましい。式(I)のアルキレンオキシド誘導体の製造時に、これらのアルコールの1種又は2種以上を用いることができる。
【0042】
POはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基である。式(II)中のd、eは、それぞれPO、EOの1分子あたりの平均付加モル数である。
【0043】
dは5~30の数である。dの上限は、30が好ましい。dの下限は、5が好ましく、8がさらに好ましい。dが小さすぎたり、大きすぎたりすると、外観の透明性が低下することがある。
【0044】
eは3~15の数である。eの上限は、15が好ましい。eの下限は、3が好ましく、5がさらに好ましい。eが小さすぎると、外観の透明性が低下し、大きすぎると、塗布時のべたつきが生じる可能性がある。
【0045】
式(II)におけるEOおよびPOの結合部分は(PO)d-(EO)eと記載され、この記載は本発明においてdモルのPOとeモルのEOが、ブロック状に結合していることを示す。
【0046】
式(II)で示される非イオン性界面活性剤のHLB(hydrophIle・lIpophIle・balance)は4~10が好ましく、5~8が特に好ましい。
HLBは有機概念図におけるIOB×10で示される。前記有機概念図におけるIOBとは、前記有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、即ち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。 前記有機概念図とは、藤田穆により提案されたものであり、その詳細は、“PharmaceutIcal BulletIn”, 1954, vol.2, 2, pp.163-173;「化学の領域」,
1957, vol.11, 10, pp.719-725などで説明されている。
【0047】
式(II)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、炭素数が12~36個である直鎖又は分岐鎖のアルキルアルコールに、アルカリ触媒下、50~160℃、0.5MPa(ゲージ圧) 以下にてプロピレンオキシドを付加重合した後に、エチレンオキシドを付加重合し、塩酸、リン酸、酢酸などの酸にて中和し、さらに水分及び中和塩を除去することで、式(II)のアルキレンオキシド誘導体を得ることができる。
【0048】
成分(C)の比率は0.5~12質量%とするが、1~7質量%とすることが外観の透明性及び塗布時のべたつきの観点から、更に好ましい。
【0049】
<(成分(D))アルコール及び脂肪酸>
成分(D)は、不飽和もしくは分岐状炭化水素基を有する炭素数16~18のアルコールおよび不飽和もしくは分岐状炭化水素基を有する炭素数16~18の脂肪酸からなる群より選ばれた一種または二種以上である。
【0050】
成分(D)は、例えば炭素数16のアルコールおよび脂肪酸としてはイソステアリン酸、イソステアリルアルコール、炭素数18のアルコールおよび脂肪酸としてはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコールが挙げられる。この中で好ましくは分岐鎖の有するイソステアリルアルコールやイソステアリン酸であり、イソステアリルアルコールがより好ましい。
【0051】
成分(D)の比率を1~20質量%とするが、5~15質量%とすることが外観の透明性の観点から、更に好ましい。
【0052】
<(成分(E))水)>
成分(E)は水であり、精製水、蒸留水、イオン交換水などが挙げられる。
【0053】
成分(E)の比率を1~30質量%とするが、2~15質量%とすることが外観の透明性の観点から、更に好ましい。
【0054】
(組成)
本発明の油性化粧料は、各成分の質量比率が下記条件を満たすものである。ただし、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)の質量の合計値を100質量%とする。
【0055】
成分(B) の質量と(C)の質量の合計値の成分(E)の質量に対する比率(((B)+(C))/(E))を0.3以上、2.0以下とすることによって、外観が透明性の高い化粧料を得られ易くなる。この観点からは、(((B)+(C))/(E))は、0.5以上とすることが更に好ましく、1.8以下とすることが更に好ましい。
【0056】
(他の添加剤)
本発明の化粧料には、必要に応じて化粧料に常用されている添加剤を適宜配合することができる。前記添加剤としては、本発明の目的を妨げない限り特に限定されないが、例えば油分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、色材、アルコール類、紫外線防御剤、アミノ酸類、ビタミン類、美白剤、有機酸、無機塩類、酵素、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、殺菌剤、消炎剤、皮膚賦活剤、血行促進剤、抗脂漏剤、抗炎症剤等の薬剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、収斂剤、清涼剤、香料、色素等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例中の配合量は「質量%」単位である。
【0058】
<成分(A)>
成分(A-1):IPP-R(日油(株)製、パルミチン酸イソプロピル)
成分(A-2):オリーブ油(関東化学(株)製)
【0059】
<合成例1:成分(B-1)の合成>
イソトリデカノール100gと触媒としての水酸化カリウム2.0gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を溶解した。引続き、120℃、0.2~0.5MPa(ゲージ圧)にて、滴下装置によりプロピレンオキシド232gを滴下し、3時間攪拌した。続いて120℃、0.2~0.5MPa(ゲージ圧) にて滴下装置よりエチレンオキシド528g、プロピレンオキシド145gの混合物を滴下させ、2時間攪拌した。その後、オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するために減圧-0.095MPa(ゲージ圧)、100℃で1時間処理した。更に、処理後に生成した塩を除去するために濾過を行い、成分(B-1)を得た。
また、JIS K1557-1に準じた水酸基価測定によって得られる水酸基価からエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物の数平均分子量を求め、その数平均分子量から式(I)におけるa、b、cの値を特定し、更にランダム率xを算出した。
【0060】
<合成例2:成分(B-2)~(B-4)、(B’-1)~(B’-3)の合成>
出発原料ならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの各付加量を変更したこと以外は、合成例1と同様の合成方法にて、成分(B-2)~(B-4)、(B’-1)~(B’-3)を得た。
【0061】
成分(B-1)~(B-4)、(B’-1)~(B’-3)について、出発原料、アルキレンオキシドの種類、アルキレンオキシド、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの各平均付加モル数(a、b、c)、各平均付加モル数の合計(a+b+c)、y、b/cならびにランダム率xを表1に示す。
【0062】
【0063】
<合成例3:成分(C-1)の合成>
ラウリルアルコール250gと触媒としての水酸化カリウム2.0gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を溶解した。引続き、120℃、0.2~0.5MPa(ゲージ圧)にて、滴下装置によりプロピレンオキシド468gを滴下し、3時間攪拌した。続いて120℃、0.2~0.5MPa(ゲージ圧) にて滴下装置よりエチレンオキシド295gを滴下させ、2時間攪拌した。その後、オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するために減圧-0.095MPa(ゲージ圧)、100℃で1時間処理した。更に、処理後に生成した塩を除去するために濾過を行い、成分(C-1)を得た。
また、JIS K1557-1に準じた水酸基価測定によって得られる水酸基価からエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物の数平均分子量を求め、その数平均分子量から式(II)におけるd、eの値を特定した。
【0064】
<合成例4:成分(C-2)~(C-4)の合成>
出発原料ならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの各付加量を変更したこと以外は、合成例3と同様の合成方法にて、成分(C-2)~(C-4)を得た。
【0065】
成分(C-2)~(C-4)について、出発原料、アルキレンオキシドの種類、アルキレンオキシド、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの各平均付加モル数(d、e)を表2に示す。
【0066】
<合成例5:成分(C’-1)の合成>
ラウリルアルコール250gと触媒としての水酸化カリウム2.0gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を溶解した。引続き、120℃、0.2~0.5MPa(ゲージ圧)にて、滴下装置によりプロピレンオキシド468gを滴下し、3時間攪拌した。その後、オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するために減圧-0.095MPa(ゲージ圧)、100℃で1時間処理した。更に、処理後に生成した塩を除去するために濾過を行い、成分(C’-1)を得た。
また、JIS K1557-1に準じた水酸基価測定によって得られる水酸基価からプロピレンオキシド付加物の数平均分子量を求め、その数平均分子量からdの値を特定した。
【0067】
<合成例6:成分(C’-2)の合成>
2-デシルテトラデカノール300gと触媒としての水酸化カリウム2.0gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を溶解した。引続き、120℃、0.2~0.5MPa(ゲージ圧)にて、エチレンオキシド298g、プロピレンオキシド393gの混合物を滴下させ、2時間攪拌した。その後、オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6~7とし、含有する水分を除去するために減圧-0.095MPa(ゲージ圧)、100℃で1時間処理した。更に、処理後に生成した塩を除去するために濾過を行い、成分(C’-2)を得た。
また、JIS K1557-1に準じた水酸基価測定によって得られる水酸基価からエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物の数平均分子量を求め、その数平均分子量からd、eの値を特定した。
【0068】
【0069】
<成分(D)>
成分(D-1):イソステアリルアルコール EX(高級アルコール工業株式会社製、イソステアリルアルコール)
成分(D-2):PRISORINE3503(クローダジャパン株式会社製、イソステアリン酸)
【0070】
<実施例1~11>
表3、表4に記載した組成で、下記の製法によって油性化粧料を調整した。そして、各組成の油性化粧料の塗布時のべたつき、塗布後の保湿感、油性化粧料の外観を評価し、その結果を表3、表4に記載した。
【0071】
<比較例1~10>
表5、表6に記載した組成で、下記の製法によって油性化粧料を調整した。そして、各組成の油性化粧料の塗布時のべたつき、塗布後の保湿感、油性化粧料の外観を評価し、その結果を表5、表6に記載した。
【0072】
<製造法>
工程I:各表中の成分(A)、(B)、(C)および(D)をビーカーに投入し、常温でスターラーにより撹拌した。
工程II:工程IIで調製した組成物へ、撹拌しながら常温の(E)をゆっくりと加え、油性化粧料を得た。
【0073】
<塗布時のべたつき>
パネラー10名の前腕に試料を0.2mL塗布し、下記の基準で油性化粧料のべたつきの官能評価を行った。
3点: パネラーがべたつきを殆ど感じず、塗布後にさらさら感があった。
2点: パネラーがべたつきをやや感じた。
1点: パネラーがべたつきを強く感じた。
更に、パネラー10名の評価の合計点を、下記基準で判定した。
◎: 25点以上
○: 20点以上、25点未満
△: 20点未満
【0074】
<塗布後の保湿感>
パネラー10名の前腕に試料を0.2mL塗布し、洗い流さず、1日後の保湿感を下記の基準で官能評価を行った。
3点: 塗布部のしっとり感を強く感じた。
2点: 塗布部のしっとり感をやや感じた。
1点: 塗布部のしっとり感をほぼ感じなかった。
更に、パネラー10名の評価の合計点を、下記基準で判定した。
◎: 25点以上
○: 20点以上、25点未満
△: 20点未満
【0075】
<外観>
調製した各化粧料50gを100ccのガラス容器に充填し、調製直後の試料の外観を確認した。試料を入れたガラス容器を通して、5cm離れた距離にある文字(「あ」:大きさ1cm四方:MSゴシック体)の判読容易性で評価を行った。
◎: 透明性があり、はっきりと判読できる
○: 曇りがあるが、判読できる
△: 文字の存在が確認できず、乳濁している
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
本発明の組成に則った実施例1~11の油性化粧料では、油に対して水を可溶化した透明な溶液が得られた。
【0081】
本発明の組成と異なる組成である比較例1~10の油性化粧料では、塗布時のべたつき、塗布後の保湿感、外観の透明性のいずれかが、実施例1~11の油性化粧料に比べて劣っていた。
【0082】
すなわち、比較例1では、成分(B)の代わりに、a=0の成分(B’-1)を用いているが、塗布時のべたつきと外観が劣っていた。
比較例2では、成分(B)の代わりに、a+b+cが20未満の成分(B’-2)を用いているが、塗布時のべたつき、保湿感、外観ともに劣っていた。
比較例3では、成分(B)の代わりに、R1がメチル基である成分(B’-3)を用いているが、塗布時のべたつきと外観が劣っていた。
比較例4では、成分(C)の代わりに、e=0である成分(C’-1)を用いているが、塗布時のべたつきと保湿感覚が劣っていた。
比較例5では、成分(C)の代わりに、ランダム重合部分を含む成分(C’-2)を用いているが、保湿感が劣っていた。
【0083】
比較例6では、成分(A)の量が少すぎるため、塗布時のべつたき、保湿感、外観ともに劣っていた。
比較例7では、成分(B)の量が多すぎるため、塗布時のべたつきが劣っていた。
比較例8では、成分(C)の量が多すぎるため、塗布時のべたつきおよび保湿感が劣っていた。
比較例9では、成分(D)を含有していないため、塗布時のべたつきおよび外観が劣っていた。
比較例10では、成分(C)を含有していないため、保湿感および外観が劣っていた。