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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】地盤改良装置および地盤改良工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20220912BHJP
【FI】
E02D3/10 104
E02D3/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018210041
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020076245
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】000230700
【氏名又は名称】日本海工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】森 利弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 敦
(72)【発明者】
【氏名】坪内 理
(72)【発明者】
【氏名】近本 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】菊川 智巳
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-308839(JP,A)
【文献】特開2017-137619(JP,A)
【文献】特開2016-145514(JP,A)
【文献】特開2004-183310(JP,A)
【文献】特開2012-237141(JP,A)
【文献】特開2006-312866(JP,A)
【文献】特開平08-311854(JP,A)
【文献】特開2003-239269(JP,A)
【文献】特開2003-041566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を締固める地盤改良体を地盤中に造成する地盤改良工法として用いる装置であって、
地盤に貫入させた状態で先端から地盤改良材を排出可能なケーシングパイプと、
前記ケーシングパイプの先端に一体回転可能に設けられ、前記ケーシングパイプの先端から排出された地盤改良材を下方へ押し出すための先端スクリューと、を有し、
前記先端スクリューは、上から下に向かって径が大きくなるように形成されている、ことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
前記先端スクリューは、
上部が、前記ケーシングパイプの径とほぼ同じ径を有し、
下部が、前記ケーシングパイプの径を超える径を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
【請求項3】
前記ケーシングパイプの内側の先端寄りに設けられ、前記ケーシングパイプの先端からの地盤改良材の排出を促すエアーを間欠的に噴射するためのエアー噴射部を、
更に有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤改良装置。
【請求項4】
前記ケーシングパイプ内の地盤改良材の天端位置を計測するための計測手段を、
更に有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の地盤改良装置。
【請求項5】
前記ケーシングパイプの側面に設けられ、該ケーシングパイプの側面又はその近傍に沿って生じ得る排土を抑制するための側面スクリューを、
更に有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の地盤改良装置。
【請求項6】
請求項3に記載の地盤改良装置を用いた地盤改良工法であって、
地盤改良材を排出可能なケーシングパイプを用いて、地盤を締固める地盤改良体を地盤中に造成する方法において、
ケーシングパイプ先端からの地盤改良材の排出を促すためのエアーを間欠的に噴射する、ことを特徴とする地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良材を地盤内で排出して砂杭などの地盤改良体を造成するための地盤改良装置と、これを用いた地盤改良工法に関するものであり、特に、低振動・低騒音で地盤改良体を造成する静的締固め工法の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本願出願人によって提案された従来技術であって、地盤中に地盤改良材(砂、リサイクル砂、再生砕石などの砂杭材料)を充填して土中杭を造成する地盤改良装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された地盤改良装置は、図12に示すとおり、
・円筒鋼管からなり地盤中の所定深度まで貫入されるケーシングパイプ3と、
・ケーシングパイプ3の先端の下に設けられたスクリュータイプの底面爪91と、
・ケーシングパイプ3の先端側外周面に設けられた回動可能な可動式掘削爪93を
有している。
【0004】
ケーシングパイプ3は、その内側に砂杭材料を投入することが可能であるとともに、地盤に貫入させた状態で砂杭材料を排出可能に構成されている。
【0005】
底面爪91は、ケーシングパイプ3と一体回転するスクリューで構成されている。底面爪91をなすスクリューのフィンによって、ケーシングパイプ先端開口部から排出された砂杭材料に対して下向きの応力を加える。また、排出済みの砂杭材料に対してこのように下向きの応力を加えることで、地盤内の砂杭材料を締固める。
【0006】
可動式掘削爪93は、縦向きの「縮径位置」と横向きの「拡径位置」との間で回動可能(拡縮可能)に設けられている。特許文献1の記載によれば、可動式掘削爪93は、その機能の一つとして、拡径位置にあるときに地盤に側圧を与えて移動させる役割を担っている。また、他の機能として、ケーシングパイプ3の先端開口部から排出された砂杭材料を、側方へ逃がすことなく底面爪91の方へ誘導する役割を担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-145514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術には、以下のような課題があった。
【0009】
特許文献1の地盤改良装置について、その能力を検証するために本願出願人が実験を行ったところ、材料排出能力が想定よりも大幅に劣っており、目標施工能力に到達していないことが明らかとなった。
【0010】
また、実験では、可動式掘削爪とケーシングパイプとの間に原地盤が詰まることが明らかとなり、この詰まりが原因で本来の機能を果たさない場合が発生した。したがって、特許文献1の地盤改良装置の機能を維持させるには、こまめに土砂除去等の清掃および作動確認が必要であり、機能維持のための作業が著しく煩雑であった。
【0011】
さらに、可動式の掘削爪を採用しているため、掘削爪とケーシングパイプとの連結部の金具の強度や耐久性によっては、施工途中で掘削爪が脱落するおそれがあった。
【0012】
そこで、上述した課題に鑑み、本発明の目的は、従来よりも材料排出能力が優れており、また、簡易な構造でメンテナンス性に優れた、新たな地盤改良装置および地盤改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、
地盤を締固める地盤改良体を地盤中に造成する地盤改良工法として用いる装置であって、
地盤に貫入させた状態で先端から砂杭材料を排出可能なケーシングパイプと、
前記ケーシングパイプの先端に一体回転可能に設けられ、前記ケーシングパイプの先端から排出された砂杭材料を下方へ押し出すための先端スクリューと、を有し、
前記先端スクリューが上から下に向かって径が大きくなるように形成された地盤改良装置によって達成される。
【0014】
上記地盤改良装置において先端スクリューは、上部が、前記ケーシングパイプの径とほぼ同じ径を有し、下部が、前記ケーシングパイプの径を超える径を有している。
【0015】
また、上記地盤改良装置は、ケーシングパイプの先端からの砂杭材料の排出を促すエアーを間欠的に噴射するためのエアー噴射部を更に有しており、これはケーシングパイプの内側の先端寄りに設けられている。
【0016】
また、上記地盤改良装置は、ケーシングパイプ内の砂杭材料の天端位置を計測するための計測手段を更に有している。
【0017】
また、上記地盤改良装置は、ケーシングパイプの側面又はその近傍に沿って生じ得る排土を抑制するための側面スクリューを更に有しており、これはケーシングパイプの側面に設けられている。
【0018】
また、前述した目的は、砂杭材料を排出可能なケーシングパイプを用いて、地盤を締固める地盤改良体を地盤中に造成する方法において、ケーシングパイプ先端からの砂杭材料の排出を促すためのエアーを間欠的に噴射することによって達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る地盤改良装置は、ケーシングパイプの先端に一体回転可能に設けられた先端スクリューを有している。この先端スクリューは、上から下に向かって径が徐々に大きくなるように形成されたテーパー形状を有しており、ケーシングパイプ先端から排出された砂杭材料(この出願では必要に応じて単に「材料」とも言う)を下方へ押し出す役割を担っている。
このような特徴を具備する先端スクリュー(テーパー型スクリュー)をケーシングパイプの真下に設けることで、地盤改良体の造成工程では、ケーシングパイプ先端から排出された材料をより多く下方向へ押し出す機能が向上し、地盤改良体の造成時間を短縮することができ、工期の短縮を図ることができる。さらに、地盤改良体の締固め効果(締固めの範囲)が拡大することで確実な地盤改良体を造成できる。
【0020】
また、本発明に係る地盤改良装置は、特許文献1の技術に見られるような可動式掘削爪が無く、それゆえ当該従来技術に比べてシンプルな構造となり、その結果、メンテナンス作業を低減できる。
また、特許文献1の場合では、可動式掘削爪の位置(造成時は水平方向)によって材料排出能力が影響を受けていたが、本発明の場合ではそのような可動式掘削爪が無いため、その位置に左右されることなく、安定した材料排出能力を維持できる。
【0021】
また、本発明において、テーパー型の先端スクリューは、上部がケーシングパイプの径とほぼ同じ径を有し、下部がケーシングパイプの径を超える径を有している。
このような特徴を具備する先端スクリューを設けることで、地盤改良装置の貫入工程では、ケーシングパイプの回転貫入に伴って、当該スクリューによる“ねじ込み効果”を発揮する。また、この先端スクリューが、ケーシングパイプの径以上の原地盤をほぐしながら土砂を上方に移動させ、ケーシングパイプ側面の摩擦を低減させることで貫入力が向上する。
また、先端スクリューは、下に向かうほどスクリュー径が拡大しており、最下部においてケーシングパイプの径を超える最大径を有している。したがって、モータのトルク(力)をスクリュー底面によって地盤改良体に対し直接伝達できる範囲が拡大し、締固め効果が向上する。
【0022】
また、本発明では、ケーシングパイプの内側の先端寄りにエアー噴射部を設けていて、このエアー噴射部から、ケーシングパイプの先端からの材料排出を促すエアーを間欠的に噴射する。
なお、特許文献1の図2(b)には、ケーシングパイプ内側に設けられたエアー噴射部(内ジェット31)が開示されており、このエアー噴射部からはエアーが単に連続噴射されるようになっている。しかしながら、低振動・低騒音で地盤改良体を造成する「静的締固め工法」では、バイブロハンマーによる振動が無く、ケーシングパイプを回転させたときに該ケーシングパイプ内の材料に水平方向の遠心力が作用して、材料とケーシングパイプとの摩擦抵抗が大きくなり、ケーシングパイプと材料が一体化してしまう。そのような状況下でエアーを単に連続噴射(絶え間なく噴射)しても、ケーシングパイプ先端内部の圧力が安定してしまい、材料の排出速度が低下する。
そこで本発明では、ケーシングパイプ内側の先端寄りに設けたエアー噴射部から、エアーを間欠的に噴射する。この間欠エアーの作用によって、ケーシングパイプ内側の先端寄りの材料(すなわちケーシングパイプの先端開口部手前の材料)に作用する圧力に脈動が生じ、この脈動による圧力変化によって材料の排出が促され、ケーシングパイプ内の材料を滞りなく連続排出できるようになる。すなわち、地盤改良体の造成工程において安定した材料排出が達成される。
【0023】
また、本発明では、利用する材料の種類(地盤改良体として例えば砂杭を造成する場合には、砂、リサイクル砂、再生砕石など)によっては、ケーシングパイプ内への圧縮空気の充填やその排気に伴う粉塵がケーシングパイプ内に発生する。そのため、ケーシングパイプ内圧に耐えうる機能や、ケーシングパイプ内の粉塵を透過して材料天端をリアルタイムに計測する機能を備えた計測手段が必要となる。そこで本発明の地盤改良装置は、ケーシングパイプ内の状況(圧縮空気の充填や粉塵の発生など)にかかわらず、ケーシングパイプ内の材料天端位置を確実にかつ安定的に計測可能な計測手段を備えている。
【0024】
また、本発明の地盤改良装置では、前述したとおり、ケーシングパイプ内への圧縮空気の充填を行ない、ケーシングパイプ内側の先端寄りではエアー噴射部から間欠エアーを噴射して、ケーシングパイプ先端部から材料を排出する。ところが、この材料排出と共にケーシングパイプ先端から余剰なエアーが漏れ、ケーシングパイプ側面に沿って地上に排気される。そして、地上に排気されるエアーに伴って排土が発生する。
そこで本発明の地盤改良装置は、地盤改良体造成時の排土抑制を目的として、ケーシングパイプの側面に側面スクリューを設けている。具体的には、ケーシングパイプ先端部よりも上方の位置に造成工程時に下に押し込む方向(先端スクリューと同じ巻き方向)にスクリューを装備する。この側面スクリューによる効果は、ケーシングパイプ側面に沿って出来たエアーの通り道(地上へのエアーの逃げ道)を攪拌して、排土しようとする土砂を下方向へ移動させ、排土を抑制できるといったことにある。
また、上述した排土抑制に伴って、地盤中に造成する地盤改良体による密度増大効果を高めることができる、といった優れた効果も併せて達成される。
【0025】
また、本発明に係る地盤改良工法は、砂杭材料を排出可能なケーシングパイプを用いて、地盤を締固める地盤改良体を地盤中に造成する方法に関するものであって、ケーシングパイプ先端からの砂杭材料の排出を促すエアーを間欠的に噴射するようになっている。
これにより、ケーシングパイプ内側の先端寄りの材料(すなわちケーシングパイプの先端開口部手前の材料)に作用する圧力に脈動が生じ、この脈動による圧力変化によって、地盤改良体の造成工程においてケーシングパイプ内の材料を滞りなく連続して排出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】地盤改良装置を具備する施工機の一例を示す側面図と概略正面図である。
図2】地盤改良装置が具備するケーシングパイプの先端側の構造を概略的に示す図であって、(a)は側面図、(b)は(a)の平面図である。
図3】地盤改良装置が具備するケーシングパイプの先端側の構造を概略的に示す図であって、(a)は側面図、(b)は(a)の平面図である。
図4】地盤改良装置が具備するケーシングパイプの先端側の内部構造を概略的に示す透視図であって、地盤改良装置を側面から見た透視図である。
図5】地盤改良装置が具備するケーシングパイプの先端側の内部構造を概略的に示す透視図であって、地盤改良装置を側面から見た透視図である。
図6】地盤改良装置が具備する計測手段を利用して、ケーシングパイプ内の砂杭材料の天端位置を計測している様子を示す透視図であって、地盤改良装置を側面から見た透視図である。(a)はマイクロウェーブ式レベル計による計測を例示しており、(b)はレーザーレーダー距離計による計測を例示しており、(c)は重錘式砂面計測計による計測を例示している。
図7】地盤改良装置が具備する側面スクリューの構造を概略的に示す図あって、(a)は側面図、(b)は(a)の平面図である。
図8】地盤改良工法を示す工程図である。
図9図8に示す工程d~fの過程での内ジェットによる作用効果を示す模式図である。
図10】実施例における実験結果を示すグラフである。
図11】実施例における実験結果を示すグラフである。
図12】従来の地盤改良装置が具備するケーシングパイプの先端側の構造を概略的に示す図であって、(a)は側面図、(b)は(a)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(地盤改良装置)
はじめに地盤改良装置の構成について説明する。
本実施形態の地盤改良装置は、低振動・低騒音で締固め杭を造成して地盤の密度増大を図る静的締固め工法(地盤改良工法)の実施に用いる装置である。また、本実施形態では、地盤改良材として、砂、リサイクル砂、再生砕石などの砂杭材料を用いる。
【0028】
図1に示すとおり、静的締固め工法に用いる施工機1は、主として、
・地盤上を移動自在なクローラ式のベースマシン2と、
・円筒鋼管からなるケーシングパイプ3を具備する地盤改良装置4と、
・地盤改良装置4を上下方向で昇降可能に支持する柱状のリーダ5と、
・リーダ5に沿って昇降しケーシングパイプ3を軸周りに回動させる回転駆動装置6と、
・ケーシングパイプ3の内側空間に砂杭材料を送り込むためのホッパー7と、
・開閉自在に構成され、ケーシングパイプ3の管内圧力を高める際に閉弁するエアー弁8を有している。
【0029】
そして、本実施形態に係る地盤改良装置4は、主として図1図2に示すように、
・先端開口部から砂杭材料を排出可能なケーシングパイプ3と、
・ケーシングパイプ3の先端の下方に設けられた先端スクリュー10と、
・ケーシングパイプ3の外側の先端寄りに設けられた外ジェット21と、
・ケーシングパイプ3の内側の先端寄りに設けられた内ジェット31と(図4参照)、
・ケーシングパイプ内の砂杭材料の天端位置を計測するための計測手段と(図6参照)、
・ケーシングパイプ3の側面に設けられた側面スクリュー40を(図7参照)
備えている。
【0030】
ケーシングパイプ3は、その内側に砂杭材料を投入することが可能であるとともに、地盤に貫入させた状態でその先端開口部から砂杭材料を排出可能に構成されている。ケーシングパイプ3内に投入された砂杭材料は、後述するとおり、ケーシングパイプ3内の圧力調整と、内ジェット31からの間欠エアーによる排出促進作用によって、ケーシングパイプ3の先端開口部から排出される。
【0031】
なお、本実施形態では、ケーシングパイプ3の内側には、特許文献1の図9に開示されたようなインナースクリューは無い。
【0032】
先端スクリュー10は、ケーシングパイプ3の先端開口部の下方に位置し、該ケーシングパイプと一体回転可能に設けられている。また、先端スクリュー10は、ケーシングパイプ3の先端から下方へ突き出た状態で直立姿勢を保つように、ケーシングパイプ3に対し固定されている。
【0033】
この先端スクリュー10は、ケーシングパイプ3の先端から排出された砂杭材料を下方へ押し出す役割を担うほか、ケーシングパイプ3の先端から排出された砂杭材料の拡径や締固めなどの役割を担っている。先端スクリュー10の具体的構成については後述する。
【0034】
第1のエアー噴射部である外ジェット21は、図2に示すように、ケーシングパイプ3の先端寄りの外周面に沿って配設された流路と、この流路の先端に位置する噴射口を含んで構成されている。外ジェット21に繋がる流路の基端側は、図示しないエアーコンプレッサに接続されている。
この外ジェット21は、必要に応じてその先端の噴射口からエアージェットを噴射することが可能であり、ケーシングパイプ3の貫入を補助する役割(貫入抵抗を緩和する役割)を担っている。
【0035】
第2のエアー噴射部である内ジェット31は、ケーシングパイプ3の内周面に沿って配設された流路と、この流路の先端に位置する噴射口を含んで構成されている。この内ジェット31の先端にある噴射口は、ケーシングパイプ3の先端開口部の手前(開口部の上方)に位置しており、また、内ジェット31に繋がる流路の基端側は、図示しないエアーコンプレッサに接続されている。
この内ジェット31は、必要に応じてその先端開口部からエアージェットを間欠的に噴射することが可能である。そして、この間欠エアーによって、ケーシングパイプ内側の先端寄りの砂杭材料(すなわちケーシングパイプ3の先端開口部手前にある砂杭材料)に作用する圧力に脈動が生じ、この脈動による圧力変化によって、ケーシングパイプ3内の砂杭材料を滞りなく連続して排出できるようになる。
【0036】
なお、内ジェット31を構成するエアー噴射部の具体的構成は特に限定されず、例えば、図4に例示するようなノズル型のエアー噴射部や、図5に例示するようなブロック型のエアー噴射部を採用することができる。また、内ジェット31を構成するエアー噴射部の制御方式は特に限定されず、例えば、一般的に知られた電磁弁やON/OFF制御装置などを利用した制御方式を採用することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る地盤改良装置4は、ケーシングパイプ3内の砂杭材料の天端位置(すなわち砂面)を計測するための計測手段を備えている。砂面の計測手段としては、たとえば、非接触式砂面計測装置や接触式砂面計測装置を用いることができる。
非接触式砂面計測装置を使った砂面計測の具体例としては、図6(a)に示すようなマイクロウェーブ式レベル計や、図6(b)に示すようなレーザーレーダー距離計による砂面計測による砂面計測を挙げることができる。
接触式砂面計測装置を使った砂面計測の具体例としては、図6(c)に示すような重錘式砂面計測計による砂面計測を挙げることができる。
【0038】
図6(a)に例示する砂面計測で用いるマイクロウェーブ式レベル計は、マイクロウェーブ信号を砂面に向けて送信する。この計測手段では、レーザーレーダー距離計と同様にオペレーターの操作が不要である。
【0039】
図6(b)に例示する砂面計測で用いるレーザーレーダー距離計は、レーザー光による計測であることから、オペレーターの操作が不要である。
【0040】
図6(c)に例示する砂面計測で用いる重錘式砂面計測計は、砂補給前の巻上げや補給後の巻下げにはオペレーターによるウインチ操作を必要とする計測であり、ケーシングパイプ内の粉塵や高圧の条件下でも問題なく計測可能である。
【0041】
また、本実施形態では、図7に示すとおり、ケーシングパイプ3の側面に側面スクリュー40が設けられており、これは砂杭造成時の排土抑制を担う部材である。
前述したとおり、本実施形態ではケーシングパイプ3内への圧縮空気の充填を行ない、ケーシングパイプ内側の先端寄りでは内ジェット31から間欠エアーを噴射して、ケーシングパイプ先端部から材料を排出する。ところが、この材料排出と共にケーシングパイプ先端から余剰なエアーが漏れ、ケーシングパイプ側面に沿って地上に排気される。そして、地上に排気されるエアーに伴って排土が発生する。
そこで本実施形態では、砂杭造成時の排土抑制を目的として、ケーシングパイプ3の側面に側面スクリュー40を設けている。この側面スクリュー40による効果は、ケーシングパイプ側面に沿って出来たエアーの通り道を攪拌して、排土しようとする土砂を下方向へ移動させ、排土を抑制できるといったことにある。
また、上述した排土抑制に伴って、地盤中に造成する締固め砂杭による密度増大効果を高めることができる、といった優れた効果も併せて達成される。
【0042】
側面スクリュー40の設置位置は、ケーシングパイプ3の側面(周面)であって排土抑制を発揮可能な位置であれば特に限定されない。図7に例示する実施形態では、ケーシングパイプ3の先端部から上方1m程度の位置に造成工程時に下に押し込む方向(先端スクリューと同じ巻き方向)に1/4巻を2枚程度のスクリューを装備している。
【0043】
(先端スクリュー)
次に、ケーシングパイプ3の先端開口部の真下に設けられた先端スクリュー10の具体的構成について、図2図3に基づいて説明する。
【0044】
図2に示すとおり、本実施形態において先端スクリュー10は、ケーシングパイプ3の中心と同軸の軸部材11を有しており、この軸部材11はケーシングパイプ3の内側空間に挿入されている。先端スクリュー10が具備する軸部材11は、その上端側がケーシングパイプ3の内周面に対して固定部材13を介して固定されている。すなわち、先端スクリュー10は、梁状の固定部材13を介してケーシングパイプ3の内周面に対して間接的に固定されており、その結果、ケーシングパイプ3が回転すると、先端スクリュー10は一体回転する。
【0045】
なお、先端スクリュー10の取付態様は、図2に示す実施形態に限定されず、例えば図3に示す様な態様を採用することも可能である。
図3に示す実施形態では、地盤改良装置4は、ケーシングパイプ3と平行な一対の固定部材15を有しており、この固定部材15の上側は、ケーシングパイプ先端の側面に溶接されており、また、固定部材15の下側は、先端スクリュー10のフィンに対して溶接されている。すなわち、図3に示す実施形態では、先端スクリュー10は、一対の固定部材15を介してケーシングパイプの外周面に対して間接的に固定されており、その結果、ケーシングパイプ3が回転すると、先端スクリュー10は一体回転する。
【0046】
また、先端スクリュー10は、そのフィンが上から下に向かって徐々に拡径するように形成されたテーパー形状を有している。
このような形状の先端スクリュー(テーパー型スクリュー)をケーシングパイプ3の先端の真下に設けることで、砂杭の造成工程では、ケーシングパイプ先端から排出された材料をより多く下方向へ押し出す機能が向上し、砂杭の造成時間を短縮することができ、工期の短縮を図ることができる。
さらに、ケーシングパイプ3と一体回転する先端スクリュー10のフィンによって、ケーシングパイプの先端開口部から排出された砂杭材料に対して下向きの応力を加えることができる。排出済みの砂杭材料に対してこのように下向きの応力を加えることで、造成する砂杭に対する締固め効果(締固めの範囲)が拡大し、その結果、設計どおりの品質の砂杭を確実に造成できる。
【0047】
また、本実施形態において、テーパー型の先端スクリュー10は、図2に示すとおり、当該スクリューの上部がケーシングパイプ3の径とほぼ同じ径を有し、下部がケーシングパイプ3の径を超える径を有している。
このような特徴を具備する先端スクリュー10を設けることで、地盤改良装置4の貫入工程では、ケーシングパイプ3の回転貫入に伴って、当該スクリューによる“ねじ込み効果”を発揮する。また、この先端スクリュー10が、ケーシングパイプ3の径以上の原地盤をほぐしながら土砂を上方に移動させ、ケーシングパイプ側面の摩擦を低減させることで貫入力が向上する。
【0048】
(地盤改良工法)
次に、図1図7に示す装置構成を参照しつつ図8図9に基づいて、上述した地盤改良装置を用いた地盤改良工法について説明する。
なお、以下説明する工程a~工程hは、それぞれ、図8に示す工程(a)~(h)に対応している。
【0049】
本実施形態の地盤改良工法は、貫入したケーシングパイプを打ち戻すことなく、連続したケーシングパイプの引抜きによって地盤内に砂杭を造成する施工方法である。以下、この地盤改良工法の主な工程について説明する。
【0050】
<工程a>
砂杭(地盤改良体)の造成予定位置の地盤上に、ケーシングパイプ3を誘導する。
続いて、原地盤土砂の進入防止のために、ケーシングパイプ3内に砂杭材料(ポイント砂)を投入する。
【0051】
<工程b>
次いで、回転駆動装置6によりケーシングパイプ3を正回転させて、該ケーシングパイプの貫入を開始する。
地盤への貫入の過程では、必要に応じて、貫入補助手段である外ジェット21などを併用しながら、ケーシングパイプ3をリーダ5に沿って規定深度まで貫入する。
なお、ケーシングパイプ3を貫入する過程では、ケーシングパイプ3の先端開口部を砂杭材料が閉塞しているため、ケーシングパイプ内への土砂の進入・混入が妨げられる。
【0052】
<工程c>
ケーシングパイプ3の下端が目標深度まで到達したら貫入を終える。また、外ジェット21を併用していた場合には、そのエアージェットの噴射を停止する。
次いで、ホッパー7を介してケーシングパイプ3内に砂杭材料を投入する。砂杭材料の具体例としては、砂、リサイクル砂、再生砕石などが挙げられる。
【0053】
<工程d>
続いて、ケーシングパイプ3の上方にあるエアー弁8を閉めた状態でケーシングパイプ内に圧縮空気を送り込み、ケーシングパイプ3の管内圧を上げる。そして、ケーシングパイプ内の砂杭材料の天端を、前述したマイクロウェーブ式レベル計などの計測手段(図6(a)参照)にて確認する。
また、内ジェット31によりエアージェットを間欠的に噴射して、ケーシングパイプ3内側の先端寄りの砂杭材料に脈動を生じさせて、ケーシングパイプ3の先端開口部からの砂杭材料の排出を促す。これにより、ケーシングパイプ3の先端開口部での砂杭材料の停滞を防いで、速やかに排出させることが可能となる。
また、回転駆動装置6によりケーシングパイプ3を逆回転(図8(b)(c)の回転方向と逆方向で回転)させつつ、巻上げウインチによりケーシングパイプ3の引抜きを開始する。
【0054】
<工程e>
そして、ケーシングパイプ3を、内ジェット31、回転駆動装置6を作動させつつ、リーダ5に沿って引抜く過程で、ケーシングパイプ下端から砂杭材料が排出される。また、ケーシングパイプ3内の砂杭材料の天端を計測手段にて追従する。
【0055】
<工程f>
そして、ケーシングパイプ3が規定深度に到達したら、該ケーシングパイプの引抜きを停止する。
引き続き、内ジェット31、回転駆動装置6を作動させ、砂杭材料を排出し、更なる締固めを行う。
なお、図9に示すとおり、工程d~fの過程で内ジェットによる圧縮エアーが砂杭材料と共に排出されることで、間隙水圧を上昇させ、有効応力の低減に伴い、締固めの進行を高める効果が得られる。
【0056】
<工程g>
ケーシングパイプ3内の砂杭材料の天端を計測手段にて計測し、規定量の砂杭材料がケーシングパイプ3から排出されたかを確認する。
【0057】
<工程h>
そして、砂杭材料の補給と工程d~gを繰り返してケーシングパイプ3を改良天端高まで引抜いたら、締固められた砂杭(規定長の地盤改良体)の造成が完了する。
【実施例
【0058】
次に、前述した先端スクリューを具備する本発明の具体的実施例について説明する。
【0059】
貫入工程における地盤改良装置の貫入能力と、造成工程における材料排出能力を検証することを目的として実機実験を行った。
【0060】
(実験で使用した地盤改良装置)
図2に示す特徴を具備する地盤改良装置を実施例とした。
図12に示す特徴を具備する地盤改良装置を比較例とした。
【0061】
実施例に係る地盤改良装置と、比較例に係る地盤改良装置は、次の点で相違し、ケーシングパイプの径などその他の点は共通していた。
【0062】
実施例の地盤改良装置は、図2に示すとおり、ケーシングパイプの先端から排出された砂杭材料を下方へ押し出すための先端スクリューを備えていた。この先端スクリューは、ケーシングパイプの先端に一体回転可能に設けられていた。
【0063】
比較例の地盤改良装置は、図12に示すとおり、
・ケーシングパイプ3の先端の下に設けられたスクリュータイプの底面爪91と、
・ケーシングパイプ3の先端側外周面に設けられた回動可能な可動式掘削爪93を
備えていた。
【0064】
(実験方法)
貫入能力を検証する実験では、実施例と比較例でモータ出力を同じ値に設定し、同じモータ出力に対する貫入力を比較した。
【0065】
材料排出能力を検証する実験では、実施例と比較例で深度を複数設定し、深度ごとに材料排出速度を比較した。
【0066】
(実験結果)
【0067】
貫入能力の検証実験の結果は図10に示すとおりであった。
すなわち、ケーシングパイプ先端の真下にテーパー型スクリューを具備する実施例では、(比較例に比べて)同じモータ出力に対する貫入力が増加し、1.5~1.7倍程度の貫入速度の向上に繋がることが分かった。
【0068】
材料排出能力の検証実験の結果は図11に示すとおりであった。
すなわち、ケーシングパイプ先端の真下にテーパー型スクリューを具備する実施例では、(比較例に比べて)1.5~2.5倍程度の材料排出能力が向上することが分かった。また、排出能力の向上に伴い、施工速度が向上することが分かった。
【符号の説明】
【0069】
1 施工機
2 ベースマシン
3 ケーシングパイプ
4 地盤改良装置
5 リーダ
6 回転駆動装置
7 ホッパー
8 エアー弁
10 先端スクリュー(テーパー型スクリュー)
11 軸部材
13 固定部材
15 固定部材
21 外ジェット(エアー噴射部)
31 内ジェット(エアー噴射部)
40 側面スクリュー
91 底面爪
93 可動式掘削爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12