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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】切断方法及び切断装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/08 20060101AFI20220912BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20220912BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20220912BHJP
   B26D 1/46 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B28D1/08
B24B27/06 Q
B24B27/06 R
B24B27/06 S
E04G23/08 D
B26D1/46 501D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020150745
(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公開番号】P2022045191
(43)【公開日】2022-03-18
【審査請求日】2022-03-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520347915
【氏名又は名称】有限会社SHAVE
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】藤原 剛
(72)【発明者】
【氏名】谷本 明良
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-176071(JP,A)
【文献】特開2001-205618(JP,A)
【文献】特開2021-102283(JP,A)
【文献】特開2004-114562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/08
B24B 27/06
E04G 23/08
B26D 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が矩形の角柱である 支持ロッドに支持された案内プーリーによって走向が案内されるワイヤーソーを対象物に押し当てて前記対象物を切断する方法であって、
前記支持ロッドに設けられ前記対象物に接触する支持ガイドを用いて前記ワイヤーソーの張力に抗して前記支持ロッドを支持した状態で、前記ワイヤーソーを走行させて前記対象物を切断し、
前記支持ロッドを挿通可能に形成された角パイプ部と、前記対象物に設置されたベース部と、前記角パイプ部と前記ベース部とを連結する連結部と、を備える案内部材であって、前記支持ロッドの中心軸に沿ってスライド自在かつ回転不能に前記支持ロッドを支持する前記案内部材を用いて前記支持ロッドの軸方向の移動を案内する、
切断方法。
【請求項2】
前記案内プーリーの近傍で前記支持ロッドに支持された補助プーリーを用いて、前記案内プーリーから前記対象物に導かれる前記ワイヤーソーの走行方向を前記案内プーリーの手前で変更する、又は前記対象物から前記案内プーリーに導かれた前記ワイヤーソーの走行方向を前記案内プーリーの先で変更する、
請求項1に記載の切断方法。
【請求項3】
ワイヤーソーを対象物に押し当てて前記対象物を切断する切断装置であって、
前記ワイヤーソーの走行を案内する案内プーリーと、
前記案内プーリーを支持する支持ロッドと、
前記支持ロッドに設けられ、前記ワイヤーソーを前記対象物に押し当てた状態において前記対象物に接触し、前記ワイヤーソーの張力に抗して前記支持ロッドを支持する支持ガイドと、
前記支持ロッドの軸方向の移動を案内する案内部材と、を備え、
前記支持ロッドは、断面が矩形の角柱であり、
前記案内部材は、
前記支持ロッドを挿通可能に形成された角パイプ部と、
前記対象物に設置されるベース部と、
前記角パイプ部と前記ベース部とを連結する連結部と、を備え る、
切断装置。
【請求項4】
前記案内プーリーの近傍で前記支持ロッドに支持され、前記案内プーリーから前記対象物に導かれる前記ワイヤーソーの走行方向を前記案内プーリーの手前で変更する、又は前記対象物から前記案内プーリーに導かれた前記ワイヤーソーの走行方向を前記案内プーリーの先で変更する補助プーリーを更に備える、
請求項に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断方法及び切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の改修及び解体等において、構造物の床及び壁等に凹部を形成するように床及び壁の一部をブロック状に切断撤去することがある。特許文献1,2には、ワイヤーソーを用いて構造物の床の一部をブロック状に切除する方法が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された方法では、まず、構造物の床にプーリー挿入孔を複数形成する。次に、ロッドの先端に取り付けられたプーリーにワイヤーソーを巻回し、ロッドをプーリー挿入孔に挿入してワイヤーソーを構造物の床に押し当てる。次に、ワイヤーソーを走行させて構造物の床を切断し、プーリー挿入孔の間に渡ってスリットを形成する。次に、ロッドを別のプーリー挿入孔に挿入すると共に構造物の床を切断し、スリットをコ字状に形成する。次に、コ字状に形成されたスリットの両端に位置しているプーリー挿入孔にロッドを挿入すると共にワイヤーソーをコ字状に形成されたスリットに挿入し、コ字状に形成されたスリットの内側を切断する。次に、コ字状に形成されたスリットの両端に位置しているプーリー挿入孔の間を切断する。これにより、構造物の床の一部がブロック状に切断される。その後、ブロック状に切断された部分が構造物の床の残部から抜取られる。
【0004】
また、特許文献2には、一対の両側支持アームの間に中間支持アームを設け、中間支持アームの先端に設けられたプーリーを用いて、一対の両側支持アームのプーリーの間に掛け渡されているワイヤーソーを押し進める方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-240990号公報
【文献】特開2010-234653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された方法において、切断面における平面度の精度、及び抜取り方向に対する切断面の角度の精度が低いと、切断によって形成されたブロックを対象物から抜取ることができない。このような理由から、切断面における平面度及び角度の精度を向上させることが求められている。切断面における平面度及び角度の精度を向上させるためには、ワイヤーソーを安定して走行させると共に、ワイヤーソーの張力を高めてワイヤーソーの押付け圧を保持することが有効である。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、ワイヤーソーの張力を高めてワイヤーソーの押付け圧を保持した場合に、プーリーが取り付けられたロッドに多大な力が作用し、ロッドが振れるおそれがある。ロッドが振れるとワイヤーソーの走行安定性が低下するため、切断面における平面度及び角度の精度を向上させることができない。
【0008】
特許文献2に開示された方法では、中間支持アームの先端に設けられたプーリーによってワイヤーソーの走行を安定させると共にワイヤーソーの押付け圧を保持することが可能であるが、切断長さが長くなるほど中間支持アームの数を増加させる必要があり、準備や作業が煩雑になる。
【0009】
本発明は、切断面における平面度及び角度の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、断面が矩形の角柱である支持ロッドに支持された案内プーリーによって走向が案内されるワイヤーソーを対象物に押し当てて対象物を切断する方法であって、支持ロッドに設けられ対象物に接触する支持ガイドを用いてワイヤーソーの張力に抗して支持ロッドを支持した状態で、ワイヤーソーを走行させて対象物を切断し、支持ロッドを挿通可能に形成された角パイプ部と、対象物に設置されたベース部と、角パイプ部とベース部とを連結する連結部と、を備える案内部材であって、支持ロッドの中心軸に沿ってスライド自在かつ回転不能に支持ロッドを支持する案内部材を用いて支持ロッドの軸方向の移動を案内する。
【0011】
また、本発明は、ワイヤーソーを対象物に押し当てて対象物を切断する切断装置であって、ワイヤーソーの走行を案内する案内プーリーと、案内プーリーを支持する支持ロッドと、支持ロッドに設けられ、ワイヤーソーを対象物に押し当てた状態において対象物に接触し、ワイヤーソーの張力に抗して支持ロッドを支持する支持ガイドと、支持ロッドの軸方向の移動を案内する案内部材と、を備え、支持ロッドは、断面が矩形の角柱であり、案内部材は、支持ロッドを挿通可能に形成された角パイプ部と、対象物に設置されるベース部と、角パイプ部とベース部とを連結する連結部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、切断面における平面度及び角度の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る切断装置を用いて対象物を切断している状態を示す断面図である。
図2】(a)~(c)は、本発明の実施形態に係る切断方法の手順を説明するための図であり、(d)は、図2(c)に示すIID-IID線に沿う断面図である。
図3】(a)及び(c)は、ブロック体の抜取りが不能である状態を示す断面図であり、(b)、(d)~(f)は、ブロック体の抜取りが可能である状態を示す断面図である。
図4図1に示すIV-IV線に沿う断面図である。
図5図1に示すV-V線に沿う断面図である。
図6】(a)及び(b)は、比較例に係る切断方法により対象物を切断している状態を図1に対応して示す図である。
図7】(a)は、本発明における本実施形態の変形例に係る切断方法を説明するための断面図であり、(b)は、図7(a)に示すVIIB-VIIB線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る切断装置及び切断方法について、図面を参照して説明する。
【0015】
まず、図1及び図2を参照して、コンクリート構造物(対象物)1を切断する切断装置100及び切断方法の概略を説明する。切断装置100及び切断方法は、コンクリート構造物1の改修及び解体等に用いられる。ここでは、コンクリート構造物1に凹部を形成するようにコンクリート構造物1の一部をブロック状に切断撤去する場合について説明する。
【0016】
図1は、切断装置100を用いてコンクリート構造物1を切断している状態を示す断面図である。図2(a)~(c)は、切断方法の手順を説明するための図であり、図1に示す矢印IIAの方向にコンクリート構造物1を見た図に対応する。図2(d)は、図2(c)に示すIID-IID線に沿う断面図である。なお、図2(a)~(d)では、切断装置100の図示を省略している。
【0017】
図1に示すように、切断装置100は、環状のワイヤーソー10の走行を案内する案内プーリー21,22と、案内プーリー21,22をそれぞれ支持する支持ロッド31,32と、を備えている。ワイヤーソー10は、ゴム等で被覆されたワイヤーにダイヤモンド製の複数のビーズを付けることによって形成される。ワイヤーソー10を案内プーリー21,22の間でコンクリート構造物1に押し当てた状態で走行させることによって、コンクリート構造物1が切断される。
【0018】
切断装置100は、移動台車41と、移動台車41に回転自在に支持された駆動プーリー42と、ワイヤーソー10の走行方向を変更する補助プーリー51~57と、を備えている。補助プーリー51~53,56は、不図示の架台に回転自在に支持されている。補助プーリー54,55は、支持ロッド31,32に回転自在に支持されている。補助プーリー57は、移動台車41に回転自在に支持されている。案内プーリー21,22、駆動プーリー42、及び補助プーリー51~57は、外径が同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0019】
ワイヤーソー10は、案内プーリー21,22と、駆動プーリー42と、補助プーリー51~57と、に掛けられている。駆動プーリー42は、不図示のモータの出力軸に連結されており、モータの駆動により回転してワイヤーソー10を所定の方向(図1に示す黒矢印の方向)に走行させる。
【0020】
切断装置100を用いた切断方法では、まず、図2(a)に示すように、コンクリート構造物1に、案内プーリー21,22及び支持ロッド31,32が挿入可能な孔2a,2b,2c,2dを形成する。次に、図1に示すように、孔2a,2bに支持ロッド31,32を挿入し、案内プーリー21,22を孔2a,2bの内部に移動させる。次に、移動台車41を移動させ、支持ロッド31,32から離れる方向(例えば、図1における白抜き矢印の方向)に駆動プーリー42を移動させる。これにより、ワイヤーソー10が案内プーリー21,22の間で張り、孔2a,2bの間のコンクリート構造物1に押し当てられる。この状態でワイヤーソー10を走行させると、ワイヤーソー10によってコンクリート構造物1が切断され、図2(b)に示すように、孔2a,2bの間に渡ってスリット3aがワイヤーソー10の直径と略等しい幅Wで形成される。
【0021】
同様に、図2(c)に示すように、孔2b,2cの間に渡ってスリット3bを形成し、孔2c,2dの間に渡ってスリット3cを形成し、孔2d,2aの間に渡ってスリット3dを形成する。次に、スリット3aの底部からスリット3b,3dの底部に沿ってスリット3cまでコンクリート構造物1を切断し、スリット3a,3b,3c,3dによって囲まれた部分をブロック体1aとしてコンクリート構造物1の残部1bから切り離す。その後、スリット3a,3b,3c,3dの底部から開口に向かう方向(図2(d)における白抜き矢印の方向)にブロック体1aを抜取って撤去する。
【0022】
以上により、コンクリート構造物1の一部がブロック状に切断撤去される。
【0023】
ブロック体1aをコンクリート構造物1の残部1bから抜取るためには、孔2a,2b,2c,2dの間に渡って延びるブロック体1aにおける切断面1cの平面度、及び抜取り方向に対する切断面1cの角度が重要となる。切断面1cの平面度及び角度の重要性について、図3を参照して説明する。図3(a)~(f)は、ブロック体1aの抜取りが可能か否かを説明するための断面図であり、図2(c)に示すIII-III線に沿う断面に対応する。なお、「平面度」とは、JIS0621-1984において定義されており、「平面形体の幾何学的に正しい平面からの狂いの大きさ」を意味する。
【0024】
図3(a)は、ブロック体1aにおける切断面1cの平面度Fがスリット3b,3dの幅Wを超えている状態を示す図である。図3(a)に示される状態は、例えば、直径が10mmのワイヤーソー10を用いてスリット3b,3dを形成する場合において切断面1cの平面度Fが10mmを超える状態である。残部1bの切断面1dは、平面度Fがブロック体1aの切断面1cと同等になるため、ブロック体1aをコンクリート構造物1の残部1bから抜取ろうとすると、ブロック体1aの切断面1cと残部1bの切断面1dとが干渉し、ブロック体1aを残部1bから抜取ることはできない。ブロック体1aを残部1bから抜取るためには、図3(b)に示すように、ブロック体1aにおける切断面1cの平面度Fをスリット3b,3dの幅W以下にする必要がある。
【0025】
図3(c)は、ブロック体1aが抜取り方向に向かって先細となるように切断面1cが抜取り方向に対して傾斜し、且つスリット3b,3dの底部側におけるブロック体1aの寸法S1が残部1bの開口寸法S2を超えている状態を示す図である。図3(c)に示される状態は、例えば、直径が10mmのワイヤーソー10を用いて深さが1mのスリット3b,3dを形成する場合において、抜取り方向に対する切断面1cの角度θが0.5°を超える状態である。この状態においてブロック体1aを残部1bから抜取ろうとすると、ブロック体1aの切断面1cと残部1bの切断面1dとが干渉し、ブロック体1aを残部1bから抜取ることはできない。ブロック体1aを残部1bから抜取るためには、図3(d)に示すように、ブロック体1aの寸法S1を残部1bの開口寸法S2以下にする必要がある。
【0026】
なお、図3(e)に示すように切断面1cが抜取り方向に平行である状態、及び図3(f)に示すように、ブロック体1aが抜取り方向に向かって先太となるように切断面1cが抜取り方向に対して傾斜している状態においても、ブロック体1aの寸法S1が残部1bの開口寸法S2未満になる。そのため、ブロック体1aを残部1bから抜取り可能である。
【0027】
このように、ブロック体1aを残部1bから抜取るためには、ブロック体1aにおける切断面1cの平面度F、及び抜取り方向に対する切断面1cの角度θが重要となる。そのため、切断面1cの平面度F及び角度θの精度を向上させることが求められている。切断面1cの平面度F及び角度θの精度を向上させるためには、ワイヤーソー10を安定して走行させると共に、ワイヤーソー10の張力を高めてワイヤーソー10の押付け圧を保持することが有効である。
【0028】
切断装置100では、図1に示すように、支持ロッド31,32に支持ガイド61、62がそれぞれ設けられている。支持ガイド61,62は、ワイヤーソー10をコンクリート構造物1に押し当てた状態において孔2a,2bの内周面に接触し、ワイヤーソー10の張力に抗して支持ロッド31,32を支持する。そのため、ワイヤーソー10から案内プーリー21,22を介して支持ロッド31,32に加えられる内向きの力は、孔2a,2bの内周面に接触した支持ガイド61,62によって受け止められる。したがって、支持ロッド31,32の振れを軽減することができる。これにより、ワイヤーソー10の走行安定性とワイヤーソー10の押付け圧保持とを両立することができ、切断面1cにおける平面度F及び角度θの精度を向上させることができる。
【0029】
図4は、図1に示すIV-IV線に沿う断面図である。図4に示すように、支持ガイド61は、支持ロッド31に一対設けられている。一対の支持ガイド61は、案内プーリー21の回転軸A1に沿う方向に互いに間隔を空けて、かつ支持ロッド31の軸方向に見てワイヤーソー10を挟んで配置される。ワイヤーソー10は、支持ガイド61の間を通過可能である。そのため、支持ロッド31は、一対の支持ガイド61によって回転軸A1に沿う方向の両側から支持される。したがって、回転軸A1に沿う方向への支持ロッド31の振れを軽減することができる。これにより、ワイヤーソー10の走行の真直性を向上させることができ、切断面1cにおける平面度F及び角度θの精度をより向上させることができる。
【0030】
一対の支持ガイド61の各々は、支持ロッド31に取付けられた脚部61aと、脚部61aに回転自在に支持されたローラ61bと、を備えている。ワイヤーソー10をコンクリート構造物1に押し当てた状態では、ローラ61bが孔2aの内周面に接触する。そのため、支持ロッド31を孔2aに挿入すると、ローラ61bが孔2aの内周面上で転動する。したがって、支持ロッド31を孔2aに滑らかに挿入することができる。
【0031】
支持ガイド62は、支持ガイド61と同様に、支持ロッド32の軸方向に見てワイヤーソー10を挟んで一対設けられる。そのため、ワイヤーソー10の走行の真直性を向上させることができ、切断面1cにおける平面度F及び角度θの精度をより向上させることができる。支持ガイド62は、支持ロッド32に取付けられた脚部62aと、脚部62aに回転自在に支持されたローラ62bと、を備えている。そのため、支持ロッド32を孔2bに滑らかに挿入することができる。
【0032】
支持ガイド61,62によって、支持ロッド31,32が内向きに傾くのを防止することができるため、ワイヤーソー10の張力を増加させることができる。これにより、コンクリート構造物1の内部に設けられた配筋4(図1参照)の切断抵抗に対抗する張力をワイヤーソー10に付与することができる。
【0033】
図1に示すように、切断装置100は、支持ロッド31,32の移動を案内する案内部材71,72を更に備えている。図5は、図1に示すV-V線に沿う断面図である。
【0034】
図5に示すように、支持ロッド31は、断面が矩形の角柱である。案内部材71は、支持ロッド31を挿通可能に形成された角パイプ部71aと、コンクリート構造物1における孔2aの周縁に設置されるコ字状のベース部71bと、角パイプ部71aとベース部71bとを連結する連結部71cと、を備えている。ベース部71bは、不図示のアンカーを用いてコンクリート構造物1に設置される。
【0035】
角パイプ部71aの中空部断面形状は、支持ロッド31の断面形状と略同じであり、角パイプ部71aは、支持ロッド31の中心軸に沿ってスライド自在かつ支持ロッド31の中心軸回りに回転不能に支持する。角パイプ部71aが連結部71cを介してベース部71bに連結されベース部71bがコンクリート構造物1に設置されるため、支持ロッド31は、コンクリート構造物1に対して回転不能である。したがって、支持ロッド31の回転を防止しつつ支持ロッド31を孔2aに挿入することができる。これにより、ワイヤーソー10の走行の真直性をより向上させることができ、切断面1cにおける平面度F及び角度θの精度をより向上させることができる。
【0036】
支持ロッド32は、支持ロッド31と同様に、断面が矩形の角柱である。案内部材72は、案内部材71と同様に、角パイプ部72aと、ベース部72bと、連結部72cと、を備えている。したがって、支持ロッド31の回転を防止しつつ支持ロッド31を孔2aに挿入することができる。これにより、ワイヤーソー10の走行の真直性をより向上させることができ、切断面1cにおける平面度F及び角度θの精度をより向上させることができる。
【0037】
図1に示すように、補助プーリー54は、案内プーリー21からコンクリート構造物1に導かれるワイヤーソー10の走行方向を案内プーリー21の手前で変更する。補助プーリー55は、コンクリート構造物1から案内プーリー22に導かれたワイヤーソー10の走行方向を案内プーリー22の先で変更する。
【0038】
補助プーリー54は、案内プーリー21の近傍に配置されている。具体的には、補助プーリー54は、案内プーリー21と補助プーリー54との間隔が案内プーリー21の外径と補助プーリー54の外径のうち大きい方の外径の2倍を超えない範囲で配置されている。そのため、案内プーリー21からコンクリート構造物1に導かれるワイヤーソー10の走行方向が案内プーリー21の手前で短距離で変更され、ワイヤーソー10の張力が補助プーリー54によって保持される。したがって、ワイヤーソー10の押付け圧を保持することができ、切断面1c(図2参照)における平面度F及び角度θの精度を向上させることができる。
【0039】
同様に、補助プーリー55は、案内プーリー21の近傍(案内プーリー22と補助プーリー55との間隔が案内プーリー22の外径と補助プーリー55の外径のうち大きい方の外径の2倍を超えない範囲)に配置されている。そのため、コンクリート構造物1から案内プーリー22に導かれたワイヤーソー10の走行方向が案内プーリー22の先で短距離で変更され、ワイヤーソー10の張力が補助プーリー55によって保持される。したがって、ワイヤーソー10の押付け圧をより保持することができ、切断面1c(図2参照)における平面度F及び角度θの精度をより向上させることができる。
【0040】
また、ワイヤーソー10の張力が補助プーリー54,55によって保持されるので、案内プーリー21,22に渡るワイヤーソー10の長さが長くなる場合に、ワイヤーソー10がコンクリート構造物1に押付けられた状態で走行することに起因する張力の低下を防止することができる。また、ワイヤーソー10を水平方向にコンクリート構造物1に押付けて切断する場合に、ワイヤーソー10の弛みを防止することができる。したがって、切断面1c(図2参照)における平面度F及び角度θの精度をより向上させることができる。
【0041】
補助プーリー54は、案内プーリー21の外径と補助プーリー54の外径のうち大きい方の外径以上、案内プーリー21から離れていることが好ましい。この場合には、案内プーリー21に掛かるワイヤーソー10の屈曲率が過大となるのを防ぐことができ、ワイヤーソー10の耐久性の低下を防止することができる。同様に、補助プーリー55は、案内プーリー22の外径と補助プーリー55の外径のうち大きい方の外径以上、案内プーリー22から離れていることが好ましい。この場合には、案内プーリー22に掛かるワイヤーソー10の屈曲率が過大となるのを防ぐことができ、ワイヤーソー10の耐久性が低下するのを防止することができる。
【0042】
切断装置100を用いた切断方法では、切断初期において、案内プーリー21を、案内プーリー22の挿入深さと異なる挿入深さで孔2aに挿入し、コンクリート構造物1に接するワイヤーソー10の個々のビーズの押さえ圧を適正に保持する。図1では、案内プーリー21の挿入深さを案内プーリー22の挿入深さよりも浅くした状態が示されている。ワイヤーソー10の個々のビーズにおける押さえ圧の保持について、図6(a)及び(b)に示す比較例を参照して詳述する。
【0043】
図6(a)は、案内プーリー21,22の両方の挿入深さを、図1に示される案内プーリー22の挿入深さと同程度とした状態を示す図である。図6(b)は、案内プーリー21,22の両方の挿入深さを、図1に示される案内プーリー21の挿入深さと同程度とした状態を示す図である。図6(a)及び(b)において、コンクリート構造物1における配筋4の図示を省略している。
【0044】
図6(a)に示される状態では、コンクリート構造物1に接するワイヤーソー10の長さが、図1に示される状態よりも長くなる。そのため、コンクリート構造物1に接するワイヤーソー10のビーズの数が増加し、個々のビーズの押さえ圧が低下する。その結果、ワイヤーソー10の走行安定性が低下し、切断面1c(図2参照)における平面度F及び角度θの精度が低下する。
【0045】
図6(b)に示される状態では、ワイヤーソー10がコンクリート構造物1に接する範囲において、ワイヤーソー10の押し当て方向に対するワイヤーソー10の角度αは、図1に示される状態よりも大きくなる。そのため、図6(b)に示される状態と図1に示される状態とにおいてワイヤーソー10の走行ベクトルVの大きさが同じであったとしても、図6(b)に示される状態では、ワイヤーソー10がコンクリート構造物1に押し当てられる力Pが小さくなり、個々のビーズの押さえ圧が低下する。その結果、ワイヤーソー10の走行安定性が低下し、切断面1c(図2参照)における平面度F及び角度θの精度が低下する。
【0046】
図1に示す状態では、コンクリート構造物1に接するワイヤーソー10の長さが、図6(a)に示される状態よりも短くなり、また、ワイヤーソー10の角度αは、図6(b)に示される状態よりも小さくなる。そのため、コンクリート構造物1に接するワイヤーソー10のビーズの数が減少すると共にワイヤーソー10がコンクリート構造物1に押し当てられる力Pが大きくなり、個々のビーズの押さえ圧が増大する。したがって、ワイヤーソー10の走行安定性を向上させることができ、切断面1c(図2参照)における平面度F及び角度θの精度を向上させることができる。
【0047】
図1に示す状態(案内プーリー21の挿入深さを案内プーリー22の挿入深さよりも浅くした状態)でコンクリート構造物1の切断が進行した後には、案内プーリー21の挿入深さを、案内プーリー22の挿入深さと同程度とし、再びワイヤーソー10を走行させてコンクリート構造物1を切断する。
【0048】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0049】
切断装置100及び切断装置100を用いた切断方法では、孔2a,2bの内周面に接触する支持ガイド61,62がワイヤーソー10の張力に抗して支持ロッド31,32を支持する。そのため、ワイヤーソー10から案内プーリー21,22を介して支持ロッド31,32に加えられる内向きの力は、孔2a,2bの内周面に接触した支持ガイド61,62によって受け止められる。したがって、支持ロッド31,32の振れを軽減することができる。これにより、ワイヤーソー10の走行安定性とワイヤーソー10の押付け圧保持とを両立することができ、切断面1cにおける平面度F及び角度θの精度を向上させることができる。
【0050】
また、支持ガイド61,62は、支持ロッド31,32に回転自在に支持されたローラ61b,62bを備え、ローラ61b,62bは、支持ロッド31,32の軸方向に見てワイヤーソー10を挟んでそれぞれ一対設けられる。そのため、支持ロッド31,32を孔2a,2bに挿入すると、ローラ61b,62bが孔2a,2bの内周面上で転動する。したがって、支持ロッド31、32を孔2a,2bに滑らかに挿入することができる。また、支持ロッド31,32は、一対のローラ61b、及び一対のローラ62bによって、案内プーリー21,22の回転軸A1,A2に沿う方向の両側からそれぞれ支持される。したがって、回転軸A1,A2に沿う方向への支持ロッド31,32の振れを軽減することができる。これにより、ワイヤーソー10の走行の真直性を向上させることができ、切断面1cにおける平面度F及び角度θの精度をより向上させることができる。
【0051】
また、支持ロッド31,32の中心軸に沿ってスライド自在かつ中心軸回りに回転不能に支持ロッド31,32を支持する案内部材71,72を用いて、支持ロッド31,32の軸方向の移動を案内する。そのため、支持ロッド31,32は、コンクリート構造物1に対して回転不能である。したがって、支持ロッド31,32の回転を防止しつつ支持ロッド31,32を孔2a,2bに挿入することができる。これにより、ワイヤーソー10の走行の真直性をより向上させることができ、切断面1cにおける平面度F及び角度θの精度をより向上させることができる。
【0052】
また、案内プーリー21の近傍で支持ロッド31に支持された補助プーリー54を用いて、案内プーリー21からコンクリート構造物1に導かれるワイヤーソー10の走行方向を案内プーリー21の手前で変更し、案内プーリー22の近傍で支持ロッド32に支持された補助プーリー55を用いて、コンクリート構造物1から案内プーリー22に導かれたワイヤーソー10の走行方向を案内プーリー22の先で変更する。そのため、ワイヤーソー10の張力が補助プーリー54,55によって保持される。したがって、ワイヤーソー10の押付け圧を保持することができ、切断面1c(図2参照)における平面度F及び角度θの精度を向上させることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0054】
上記実施形態では、切断装置100によって切断される対象物がコンクリート構造物1である場合について説明した。本発明は、対象物が金属構造物である場合にも適用可能である。
【0055】
また、上記実施形態では、コンクリート構造物1に形成された孔2a,2b,2c,2dに支持ロッド31,32を挿入し、コンクリート構造物1に凹部を形成するようにコンクリート構造物1の一部をブロック状に切断撤去する場合について説明した。本発明は、この形態に限らず、図7に示すように切断装置100を用いてコンクリート構造物1を切断してもよい。
【0056】
図7(a)は、本実施形態の変形例に係る切断方法を説明するための断面図であり、図1に対応して示す。図7(b)は、図7(a)に示すVIIB-VIIB線に沿う断面図である。図7(a),(b)に示すように、変形例では、支持ロッド31,32をコンクリート構造物1の側面2e、2fに沿って設け、支持ガイド61,62を側面2e,2fに接触させている。この場合においても、ワイヤーソー10から案内プーリー21,22を介して支持ロッド31,32に加えられる内向きの力は、側面2e,2fに接触した支持ガイド61,62によって受け止められる。したがって、支持ロッド31,32の振れを軽減することができる。これにより、ワイヤーソー10の走行安定性とワイヤーソー10の押付け圧保持とを両立することができ、切断面1cにおける平面度F及び角度θの精度を向上させることができる。
【0057】
図7に示す変形例において、図1に示す案内部材71,72を用いる場合には、案内部材71,72を安定してコンクリート構造物1に設置できないおそれがあると共に案内部材71,72をコンクリート構造物1に設置するためのアンカーによりコンクリート構造物1の縁が欠けるおそれがある。そこで、案内部材71のベース部71bを図1に示されるものよりも支持ロッド32側に延ばした形状とすると共に、案内部材72のベース部72bを図1に示されるものよりも支持ロッド31側に延ばした形状とすることが好ましい。この場合には、案内部材71,72とコンクリート構造物1との接触範囲を拡大することができ、案内部材71,72を安定してコンクリート構造物1に設置できる。また、アンカーを側面2e,2fから離すことができ、コンクリート構造物1の縁が欠けるのを防止することができる。
【0058】
図7に示す変形例において、案内部材71,72を、連結部材80を用いて連結することがより好ましい。連結部材80としては、例えば角パイプを用いることができる。連結部材80を、入れ子構造とすると共にボルト締めにより長さを調整可能とすることがより好ましい。
【0059】
上記実施形態では、支持ガイド61は、脚部61aとローラ61bとを備えているが、脚部61aを備えていなくてもよい。つまり、支持ガイド61は、支持ロッド31に回転自在に支持されたローラ61bを備えていればよい。支持ガイド62も同様である。
【0060】
上記実施形態では、案内プーリー21から案内プーリー22に向かってワイヤーソー10を走行させているが、逆方向に走行させてもよい。
【0061】
上記実施形態では、支持ロッド31,32が角柱であり、案内部材71,72が角パイプ部71a,72aを備える場合について説明した。本発明は、この形態に限られず、案内部材71,72は、支持ロッド31,32の中心軸に沿ってスライド自在かつ中心軸回りに回転不能に支持ロッド31,32を支持するように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0062】
1・・・コンクリート構造物(対象物)
10・・・ワイヤーソー
21,22・・・案内プーリー
31,32・・・支持ロッド
61,62・・・支持ガイド
61b,62b・・・ローラ
71,72・・・案内部材
100・・・切断装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7