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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】再生樹脂造粒システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/385 20190101AFI20220912BHJP
   B29C 48/27 20190101ALI20220912BHJP
   B29C 48/285 20190101ALI20220912BHJP
   B29C 48/76 20190101ALI20220912BHJP
   B29C 48/80 20190101ALI20220912BHJP
   B29C 48/69 20190101ALI20220912BHJP
   B29C 48/345 20190101ALI20220912BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20220912BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20220912BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B29C48/385
B29C48/27
B29C48/285
B29C48/76
B29C48/80
B29C48/69
B29C48/345
B29C48/25
B29C48/92
B29B9/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021115624
(22)【出願日】2021-07-13
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】521309743
【氏名又は名称】株式会社和円商事
(73)【特許権者】
【識別番号】000136723
【氏名又は名称】株式会社プラコー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】本多 敏行
(72)【発明者】
【氏名】古野 孝志
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-141452(JP,A)
【文献】特開2001-018223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B29B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みの樹脂フィルムやシートを原料として再生ペレットを製造する再生樹脂造粒システムであって、
前記原料を水で洗浄する洗浄装置と、
水で洗浄したままの水分を含んだ状態の前記原料を投入する投入口、投入された原料を加熱混錬して溶融する第1溶融部、溶融した原料を解放吐出する第1吐出口、及び、前記第1溶融部において気化された前記原料の水分を含むガス状物質を排気するベント口を有する第1押出機と、
前記第1押出機の前記第1吐出口の下方に離間した第1受入口、この第1受入口を介して受け入れた溶融状態の原料を前記第1溶融部における加熱温度より低い温度で加熱混錬する第2溶融部、前記第2溶融部で加熱混錬した溶融状態の原料を通過させて異物を取り除く第1フィルタ装置、及び、前記第1フィルタ装置を通過した溶融状態の原料を解放吐出する第2吐出口を有する第2押出機と、
前記第2押出機の前記第2吐出口の下方に離間した第2受入口、この第2受入口を介して受け入れた溶融状態の原料を前記第1溶融部における加熱温度より低い温度で加熱混錬する第3溶融部、前記第3溶融部で加熱混錬した溶融状態の原料を通過させて異物を取り除く第2フィルタ装置、及び、前記第2フィルタ装置を通過した溶融状態の原料を押し出す複数の孔を備えたダイを有する第3押出機と、
前記ダイの前記複数の孔を通して前記第3押出機から押し出された溶融状態の原料を所定の長さに切断する切断装置と、
を具備する再生樹脂造粒システム。
【請求項2】
前記第3溶融部における加熱温度を前記第2溶融部における加熱温度より低くした、
請求項1 の再生樹脂造粒システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、使用済みの合成樹脂フィルムやシートから再生ペレットを製造する再生樹脂造粒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の造粒装置は、使用済の樹脂ボトルを粉砕した乾燥状態にないフレークを、乾燥、溶融、押出し、切断して、再生ペレットを製造する。特許文献1の造粒装置では、フレークの乾燥、溶融、押出しを、1台の押出機で行っている。
【0003】
特許文献2の造粒装置は、使用済みの合成樹脂フィルムやシートを押出機で溶融し、溶融した樹脂をダイの孔から押し出してストランドを形成し、ストランドを細かく切断して再生ペレットを製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-167012号公報
【文献】特開平7-214548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の造粒装置は、溶融した原料を押し出す際に、異物を除去するフィルタ装置を備えている。しかし、特許文献1の造粒装置では、1台の押出機で原料の乾燥、溶融、押出しを行うため、1台のフィルタ装置しか設けることができず、再生ペレットの品質を十分に高めることができない。
【0006】
特許文献2の造粒装置の押出機に投入する原料が、例えば土などで汚れた農業用フィルムやブルーシートである場合、押出機に投入する前の原料を粉砕して水で洗浄する必要がある。粉砕及び洗浄した原料は、押出機に投入する前に、絞り機によって脱水するとともに、水を絞った原料を乾燥機により乾燥する必要がある。
【0007】
粉砕して洗浄したフィルムやシートは、水を通さないため、布などと違って、洗浄した後に水を絞るのが技術的に難しい。また、水を絞ったフィルムやシートを乾燥機で乾燥させる場合、原料に吹き付ける温風の温度管理が難しい。温度を高くし過ぎると原料が溶けたり焦げたりしてしまい、温度を低くし過ぎると原料の乾燥に多くの時間がかかってしまう。さらに、粉砕、洗浄、絞り、乾燥したフラフは、比較的軽く嵩が多い(嵩比重が小さい)ため、自重では押出機へ投入することができず、取り扱いが難しい。
【0008】
また、上述した乾燥機を用いる場合、乾燥させた原料を貯留するための比較的大きな設備が必要であり、一旦貯留した原料を押出機に投入する手間もかかる。このため、再生ペレットの製造設備が大型化していまい、スループットを多くすることが難しい。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、品質の高い再生ペレットを容易に製造することができ、スループットを多くすることができる再生樹脂造粒システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の再生樹脂造粒システムの一態様は、使用済みの樹脂フィルムやシートを原料として再生ペレットを製造する再生樹脂造粒システムであって、原料を水で洗浄する洗浄装置と、水で洗浄したままの水分を含んだ状態の原料を投入する投入口、投入された原料を加熱混錬して溶融する第1溶融部、溶融した原料を解放吐出する第1吐出口、及び、第1溶融部において気化された原料の水分を含むガス状物質を排気するベント口を有する第1押出機と、第1押出機の第1吐出口の下方に離間した第1受入口、この第1受入口を介して受け入れた溶融状態の原料を第1溶融部における加熱温度より低い温度で加熱混錬する第2溶融部、第2溶融部で加熱混錬した溶融状態の原料を通過させて異物を取り除く第1フィルタ装置、及び、第1フィルタ装置を通過した溶融状態の原料を解放吐出する第2吐出口を有する第2押出機と、第2押出機の第2吐出口の下方に離間した第2受入口、この第2受入口を介して受け入れた溶融状態の原料を第1溶融部における加熱温度より低い温度で加熱混錬する第3溶融部、第3溶融部で加熱混錬した溶融状態の原料を通過させて異物を取り除く第2フィルタ装置、及び、第2フィルタ装置を通過した溶融状態の原料を押し出す複数の孔を備えたダイを有する第3押出機と、ダイの複数の孔を通して第3押出機から押し出された溶融状態の原料を所定の長さに切断する切断装置と、を具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、品質の高い再生ペレットを容易に製造することができ、スループットを多くすることができる再生樹脂造粒システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る再生樹脂造粒システムを示す平面図である。
図2図2は、図1の再生樹脂造粒システムを矢印F2方向から見た側面図である。
図3図3は、図1の再生樹脂造粒システムを矢印F3方向から見た側面図である。
図4図4は、図1の再生樹脂造粒システムを矢印F4方向から見た側面図である。
図5図5は、図1の再生樹脂造粒システムを矢印F5方向から見た側面図である。
図6図6は、図1の再生樹脂造粒システムを矢印F6方向から見た側面図である。
図7図7は、図1の再生樹脂造粒システムの第1押出機から溶融状態の樹脂を解放吐出する状態を示す概略図である。
図8図8は、図1の再生樹脂造粒システムのコンベヤの制御系を示すブロック図である。
図9図9は、本発明の第2の実施形態に係る再生樹脂造粒システムの要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施形態に係る再生樹脂造粒システム100(以下、単にシステム100と称する)について、図面を参照して説明する。本実施形態のシステム100は、例えば、合成樹脂製のフィルムやシートを、粉砕、洗浄、溶融、押出、切断して、再生ペレットを製造するための設備である。
【0015】
図1及び図2に示すように、システム100は、原料を投入する原料ホッパ1を備える。本実施形態のシステム100で処理する原料は、例えば、土などで汚れた使用済みの農業用フィルムやブルーシートなどであり、ポリエチレンを主体とした廃棄物などである。
【0016】
システム100は、原料ホッパ1を介して投入された原料を粉砕機3に向けて斜め上方に搬送するコンベヤ2を備える。粉砕機3は、その上端に原料の受入口を有し、受入口を介して投入されて自重により落下する原料を下方で待ち受けている図示しない回転刃により細かく粉砕する。受入口の近くには、注水口3aが設けられており、粉砕する原料に水が加えられる。粉砕する原料に水を加えることにより、原料を洗浄することができ、且つ粉砕により発生する粉塵等を抑えることができる。
【0017】
システム100は、粉砕機3にて注水及び粉砕された原料を第1洗浄水槽5へ送り込むスクリューコンベヤ4を備える。スクリューコンベヤ4は、粉砕機3の下端から第1洗浄水槽5の一端上方に向けて斜め上に延設されており、回転により原料を搬送する螺旋状の羽根を有する図示しないスクリューを備える。スクリューコンベヤ4は、水を含む原料を撹拌しながら搬送するため、原料を洗浄することができる。粉砕機3及びスクリューコンベヤ4は、原料を水と一緒に撹拌して洗浄する洗浄装置の一部として機能する。
【0018】
第1洗浄水槽5は、原料を洗浄するための水を蓄えている。第1洗浄水槽5の水は、定期的にきれいな水に交換してもよい。図1及び図3に示すように、第1洗浄水槽5は、スクリューコンベヤ4と略直交する方向に延設されており、その長手方向に離間した複数位置に撹拌羽根5aを備える。各撹拌羽根5aは、第1洗浄水槽5の長手方向と交差する略水平方向に設けた回転軸を有し、この回転軸の周りに複数枚の羽根を有する。複数の撹拌羽根5aは、第1洗浄水槽5の上端近くで、回転の途中で羽根の一部が水没する高さ位置に取り付けられている。
【0019】
複数の撹拌羽根5aを所定方向に回転させることにより、原料を含む水が撹拌され、スクリューコンベヤ4を介して第1洗浄水槽5の一端に投入された原料が、第1洗浄水槽5の他端に向けて移動される。このとき、複数の撹拌羽根5aによって原料が水とともに撹拌され、原料に付着している土などの異物が分離される。原料と分離された異物は、そのほとんどが第1洗浄水槽5の底に沈む。つまり、この第1洗浄水槽5も、洗浄装置の一部として機能する。
【0020】
図1図3、及び図4に示すように、システム100は、第1洗浄水槽5の他端に、第1縦型分離機6を備える。第1縦型分離機6の下端は、第1洗浄水槽5の他端に接続している。第1縦型分離機6は、鉛直方向に延びた回転軸を有する図示しないスクリュー羽根を有する。スクリュー羽根は、毎分970乃至1470回程度の比較的高速で回転し、第1洗浄水槽5の他端まで運ばれた原料を一部の水とともに撹拌しながら脱水し、第1縦型分離機6の上端まで上昇させる。これにより、例えば、原料に貼着していたラベルなどが分離される。この第1縦型分離機6も、洗浄装置の一部として機能する。
【0021】
図1及び図4に示すように、システム100は、第1縦型分離機6の上端から排出された原料を横型分離機8の一端へ送り込むシュータ7を備える。シュータ7は、第1縦型分離機6の上端から横型分離機8の一端に向けて下方に傾斜している。横型分離機8の一端上部には、原料を受け入れるホッパ9が取り付けられている。
【0022】
横型分離機8は、略水平方向に延びた回転軸を有する図示しないスクリュー羽根を有し、スクリュー羽根の周りに略円筒状の図示しないメッシュ部材を有する。メッシュ部材は、例えば、パンチングメタルを筒状にしたものである。このスクリュー羽根を毎分1470乃至1760回程度で高速回転させると、ホッパ9を介して横型分離機8に投入された原料が他端に向けて搬送され、水で柔らかくなったラベルがメッシュ部材を通過する。ラベルが分離されたメッシュ部材の内側にある原料は、スクリュー羽根の回転によって横型分離機8の他端へ搬送される。この横型分離機8も、洗浄装置の一部として機能する。
【0023】
システム100は、横型分離機8の他端に搬送された原料を第2洗浄水槽11へ送り込むコンベヤ10を備える。コンベヤ10は、横型分離機8の他端から第2洗浄水槽11の一端上方に向けてわずかに上向きに傾斜している。第2洗浄水槽11は、上述した第1洗浄水槽5と略同じ構造及び機能を有し、複数の撹拌羽根11aを備えている。第2洗浄水槽11も、洗浄装置の一部として機能する。
【0024】
システム100は、第2洗浄水槽11の他端に、第2縦型分離機12を備える。第2縦型分離機12の下端は、第2洗浄水槽11の他端に接続されている。第2縦型分離機12は、上述した第1縦型分離機6と略同じ構造及び機能を有し、鉛直方向に延びた回転軸を有する図示しないスクリュー羽根を備える。この第2縦型分離機12も、洗浄装置の一部として機能する。
【0025】
システム100は、第2縦型分離機12の上端から排出された原料をタンク14の一端に投入するシュータ13を備える。タンク14は、その下端側の略全面を塞ぐように配置した、原料を搬送するためのコンベヤ15を備える。コンベヤ15は、タンク14の一端から他端に向けて上方にわずかに傾斜している。コンベヤ15は、シュータ13を介して投入された原料をタンク14の他端に向けて毎分1メートル程度のゆっくりとした一定速度で搬送する。コンベヤ15によって原料を搬送している間に、原料に含まれる水の一部が流れ落ちる。
【0026】
図1図4、及び図5に示すように、システム100は、コンベヤ15によってタンク14の他端から排出された原料を受けるコンベヤ16を備える。コンベヤ15によって搬送された原料は、タンク14の他端に上下に離間して配置した3つのコンベヤロール15aの回転によって、タンク14の他端からコンベヤ16上にこぼれ落ちる。3つのコンベヤロール15aは、コンベヤ16の鉛直上方に配置されている。
【0027】
タンク14の他端からコンベヤ16上に供給される原料の供給量は、コンベヤロール15aの回転速度を制御することによって、第1押出機18へ原料を供給する供給量に合わせてコントロールされる。コンベヤ16は、タンク14の他端近くから撹拌機17の投入口に向けて上方に傾斜している。タンク14からコンベヤ16上に落下した原料は、一定速度で搬送されて撹拌機17へ投入される。
【0028】
撹拌機17は、鉛直方向に延びた回転軸の周りに螺旋状の羽根を備えた図示しないスクリュー羽根を備える。スクリュー羽根を所定方向に回転させると、コンベヤ16を介して投入された原料が撹拌されて、撹拌機17の下方に配置された第1押出機18の投入口18aへ押し込まれる。このとき、撹拌機17のスクリュー羽根の回転力が、原料を投入口18aに押し込む押込み力となる。
【0029】
図8に示すように、システム100は、上述したコンベア15、及びコンベヤロール15aの動作を制御する制御部101を有する。制御部101は、プロセッサ及び記憶媒体を備え、プロセッサによって、以下の処理が実施される。制御部101には、センサ102から検知結果を示す信号が送信される。センサ102は、コンベヤ16上に落下した原料が積載許容量に達したことを検知する。センサ102は、例えば、発光部と受光部を有する光電センサなどである。また、制御部101は、コンベヤ15を駆動するモータ103、及びコンベヤロール15aを駆動するモータ104の駆動を制御する。
【0030】
制御部101は、センサ102を介してコンベヤ16上の原料が満杯になったことを検知すると、モータ103、104を停止する。そして、制御部101は、センサ102を介して、コンベヤ16上の原料が積載許容量を下回ったことを検知すると、モータ103、104を駆動して原料の供給を再開する。このようなコンベヤ15、及びコンベヤロール15aの動作制御により、撹拌機17へ投入する原料の投入量を一定にすることができ、第1押出機18に対する原料の投入量を一定に制御することができる。
【0031】
システム100は、撹拌機17の下方に、第1押出機18を備える。第1押出機18は、原料を溶融して脱水する溶融脱水装置として機能する。図1図5、及び図6に示すように、第1押出機18は、その一端近くに、撹拌機17の下端を接続した投入口18aを備える。第1押出機18は、原料を溶融して脱水するとともに、原料から出るガス状物質を脱気することができる装置であればよく、押出機に限定されるものではない。
【0032】
撹拌機17に投入される原料は、水による洗浄がなされた濡れたままの状態(水が滴り落ちる状態)であり、絞り工程及び乾燥工程を経ていない比較的多量の水分を含むものである。このように、水分を多く含む原料は、その自重によって固まって、原料のフィルム片もしくはシート片同士がくっ付き合うため、乾燥したフラフと比べて嵩比重が大きい。このため、撹拌機17への原料の投入を容易にでき、撹拌機17に投入された原料を第1押出機18の投入口18aへ容易且つ確実に押し込むことができる。
【0033】
第1押出機18は、投入口18aを介して投入された原料を加熱混錬して溶融する溶融部19(第1溶融部)、溶融した原料を解放吐出する吐出口20(吐出口、第1吐出口)、及び溶融部19において気化された原料の水分を原料の溶融過程で気化したガス状物質とともに排気するベント口21を備える。溶融部19は、投入された原料を加熱するヒータを備えた図示しないシリンダ、及び溶融した原料を押し出す図示しないスクリューを備える。ベント口21は、溶融部19に対して溶融状態の原料を押し出す側、すなわち、溶融部19の下流側に配置されている。ベント口21は、第1押出機18の上部に設けられている。
【0034】
図7には、第1押出機18の吐出口20から原料Wを解放吐出する状態の概略図を示す。第1押出機18の吐出口20から吐出される溶融状態の原料は、金属片などの異物を含む可能性があるとともに、気化された水蒸気を含むガス状物質の気泡を含む。解放吐出とは、密閉空間に向けての吐出ではなく、図7に示すように大気中に原料Wを吐出する状態をいう。吐出口20を介して溶融状態の原料を解放吐出することにより、吐出口20から原料とともに水蒸気を吐出させることができ、原料に含まれる水分をさらに減らすことができる。つまり、ここでも、解放吐出による原料の脱水効果を期待できる。
【0035】
システム100は、第1押出機18の吐出口20の下方に離間した位置に受入口22(受入口、第1受入口)を有する第2押出機23(押出機)を備える。第2押出機23は、第1押出機18より低い位置に配置されている。第2押出機23の受入口22に投入される溶融状態の原料は、上述した第1押出機18の溶融部19における加熱混錬による脱水、及び吐出口20からの解放吐出による脱水によって、水分を殆ど含まない状態まで脱水されたものとなっている。
【0036】
第2押出機23は、受入口22の他に、受入口22を介して受け入れた溶融状態の原料を加熱混錬する溶融部24(第2溶融部)、溶融部24で加熱混錬した溶融状態の原料を通過させて異物を取り除くスクリーンチェンジャ25(第1フィルタ装置)、及びスクリーンチェンジャ25を通過した溶融状態の原料を解放吐出する2つの吐出口26(第2吐出口)を備える。本実施形態では、第2押出機23がベント口を備えていないが、第2押出機23にもベント口を設けてもよい。
【0037】
第2押出機23の溶融部24における加熱温度は、第1押出機18の溶融部19における加熱温度より低い。本実施形態のように原料がポリエステルを主体としたものである場合、第1押出機18の溶融部19における加熱温度は、脱水及び脱気を目的とした220℃~270℃の範囲に設定することができ、例えば約250℃に設定することができる。これに対し、第2押出機23の溶融部24における加熱温度は、例えば、再生ペレットの製造に適した約210℃に設定する。第1押出機18の溶融部19における加熱温度、及び第2押出機23の溶融部24における加熱温度は、原料に応じて適切な値に設定すればよい。
【0038】
スクリーンチェンジャ25は、第2押出機23から溶融状態の原料を排出する排出口に対して選択的に接続可能に設けた図示しない2本の流路を備え、各流路の途中にそれぞれ交換可能な図示しないメッシュフィルタを備える。スクリーンチェンジャ25は、2本の流路を所定時間(例えば20分)毎に交互に第2押出機23の排出口に接続し、メッシュフィルタを交換する。メッシュフィルタは、金網などであり、溶融状態の原料を通過させて、金属片などの異物をトラップする。
【0039】
2つの吐出口26は、それぞれスクリーンチェンジャ25の2本の流路の端部に設けられており、溶融状態の原料を解放吐出する。解放吐出により、原料とともに水蒸気が吐出口26から吐出され、原料がさらに脱水される。
【0040】
システム100は、第2押出機23の吐出口26の下方に離間した位置に受入口27(第2受入口)を有する第3押出機28を備える。第3押出機28は、第2押出機23よりさらに低い位置に配置されている。第3押出機28は、受入口27の他に、受入口27を介して受け入れた溶融状態の原料を加熱混錬する溶融部29(第3溶融部)、溶融部29で加熱混錬した溶融状態の原料を通過させて異物を取り除くフィルタ装置30(第2フィルタ装置)、及びフィルタ装置30を通過した溶融状態の原料を押し出す図示しない複数の孔を備えたダイ31を備える。本実施形態では、第3押出機28がベント口を備えていないが、第3押出機28にもベント口を設けてもよい。
【0041】
第3押出機28の溶融部29における加熱温度は、第2押出機23の溶融部24における加熱温度より低い。本実施形態のように原料がポリエステルである場合、第3押出機28の溶融部29における加熱温度は、例えば、再生ペレットの製造に適した約200℃に設定する。第3押出機28の溶融部29における加熱温度は、原料に応じて適切な値に設定すればよい。
【0042】
フィルタ装置30は、第3押出機28から押し出された溶融状態の原料を通過させる図示しないメッシュフィルタを備える。フィルタ装置30は、原料の通過方向に関してメッシュフィルタの手前側に、メッシュフィルタによってトラップした異物を削ぎ落す図示しない回転羽根を備えるとともに、削ぎ落した異物を排出する図示しない排出口を備える。異物とともにフィルタ装置30から排出された原料は、第2押出機23の受入口22へ再投入してもよい。
【0043】
システム100は、ダイ31の複数の孔を通して第3押出機28から押し出された溶融状態の細長い紐状の樹脂(ストランド)を冷却する冷却水槽32、及び冷却水槽32を通過したストランドを切断装置34へ送り込むコンベヤ33を備える。コンベヤ33は、冷却水槽32の下流端から切断装置34に向けて上方にわずかに傾斜しており、図示しない水切りローラを備えている。ストランドに付着した水は、コンベヤ33を通過中に流れ落ちるとともに、水切りローラによって取り除かれる。切断装置34は、ストランドを所定の長さに切断して、再生ペレットを形成する。
【0044】
システム100は、切断装置34で所定の長さに切断した再生ペレットを振動させて、再生ペレットに付着した水を落とす振動装置35、振動装置35から排出された再生ペレットをパイプを通して吹き上げるブロア36、及びブロア36によって吹き上げた再生ペレットを貯留する製品タンク37を備える。振動装置35で水を切られた再生ペレットは、ブロア36による吹き上げによって乾燥される。
【0045】
以上のように、第1の実施形態によると、粉砕機3、スクリューコンベヤ4、第1洗浄水槽5、第1縦型分離機6、横型分離機8、第2洗浄水槽11、及び第2縦型分離機12などの洗浄装置により洗浄された濡れたままの原料を、絞り工程及び乾燥工程を経ずにそのまま撹拌機17を用いて第1押出機18に押し込むようにした。このため、絞り工程及び乾燥工程を経た嵩比重の小さいフラフと比較して、原料を第1押出機18へ容易且つ確実に投入することができる。
【0046】
また、本実施形態によると、第1押出機18のスクリューを第2、第3押出機23、28より長くして、第1押出機18にベント口21を設けた。このため、第1押出機18の溶融部19における加熱温度を第2、第3押出機23、28より高くしたことに加え、第1押出機18の溶融部19における加熱時間を長くすることができ、ベント口21を介して原料の水分をガス状物質とともに効果的に排気させることができる。
【0047】
言い換えると、本実施形態によると、第2、第3押出機23、28の上流側に原料の脱水を目的とした第1押出機18を配置したため、従来必要であった絞り機及び乾燥機を省略することができ、乾燥した原料を貯留するための設備も省略することができる。従って、システム100をコンパクトにして省スペース化ができ、スループットを向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態によると、3台の押出機18、23、28を連設して、第1押出機18の吐出口20から溶融状態の原料を解放吐出し、且つ第2押出機23の吐出口26から溶融状態の原料を解放吐出するようにしたため、押出機の間で原料を受け渡すときに脱水することができる。
【0049】
また、本実施形態によると、3台の押出機18、23、28を連設したため、第2押出機23の原料排出側にスクリーンチェンジャ25を設けることができ、且つ第3押出機28の原料排出側にフィルタ装置30を設けることができる。これにより、原料に含まれる不純物を効果的に除去することができ、品質の高い再生ペレットを製造することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、第2押出機23にスクリーンチェンジャ25を設けて、第3押出機28にフィルタ装置30を設けたが、第1押出機18の原料排出側にフィルタ装置を設けてもよい。この場合、第2押出機23にスクリーンチェンジャ25を設ける代わりに第1押出機18にスクリーンチェンジャ25を設けてもよく、3台全ての押出機18、23、28にフィルタ装置をそれぞれ設けてもよい。
【0051】
また、システム100で処理する原料が、土などで汚れていない原料であれば、原料を洗浄する必要がないため、第2押出機23に原料を直接投入してもよい。
【0052】
以下、本発明の第2の実施形態に係る再生樹脂造粒システム200(以下、単にシステム200と称する)について、図9を参照して説明する。第2の実施形態のシステム200は、第3押出機28を省略した以外、上述した第1の実施形態のシステム100と略同様の構成を備える。よって、ここでは、上述した第1の実施形態と同様に機能する構成要素に同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
システム200は、第1押出機18の原料排出側にスクリーンチェンジャ25(別のフィルタ装置)を備え、第2押出機23の原料排出側にフィルタ装置30を備える。第1押出機18は、溶融脱水装置として機能する。第2押出機23は、第1押出機18より低い位置に配置されている。よって、第1押出機18は、スクリーンチェンジャ25によって流路をつながれた吐出口20を介して溶融状態の原料を解放吐出することができる。
【0054】
以下、システム200の動作について説明する。なお、第1の実施形態のシステム100と同様の動作に関する説明は省略する。
コンベヤ16を介して撹拌機17へ原料が投入されると、撹拌機17によって第1押出機18の投入口18aに原料が押し込まれる。第1押出機18は、溶融部19において原料を加熱混錬し、ベント口21を介して原料の水分をガス状物質とともに排気する。第1押出機18から押し出された溶融状態の原料は、スクリーンチェンジャ25を介して吐出口20から解放吐出され、第2押出機23の受入口22に投入される。第2押出機23は、溶融部24において原料をさらに加熱混錬し、フィルタ装置30及びダイ31の複数の孔を介して溶融状態の原料を押し出す。
【0055】
以上のように、第2の実施形態によると、第1の実施形態と同様に、絞り工程及び乾燥工程を経ていない濡れたままの原料を処理することができ、スループットを向上させることができる。また、本実施形態によると、第3押出機28を省略することができ、システム200をよりコンパクトにすることができる。さらに、本実施形態によると、第1押出機18の原料排出側にスクリーンチェンジャ25を設けて、第2押出機23の原料排出側にフィルタ装置30を設けたため、原料に含まれる異物を効果的に除去することができ、品質の高い再生ペレットを製造することができる。
【0056】
なお、上述した第2の実施形態のシステム200において、第1押出機18の原料排出側にスクリーンチェンジャ25を設けたが、第2押出機23の原料排出側にフィルタ装置30の代わりにこのスクリーンチェンジャ25を設けてもよい。洗浄装置による洗浄が十分になされて、汚れや異物が殆ど除去された原料を処理することができるのであれば、第2押出機23の原料排出側にだけ1台のスクリーンチェンジャ25を設ければよい。
【0057】
また、上述した実施形態では、第3押出機28のダイ31の複数の孔から押し出したストランドを冷却水槽32を通過させた後で切断するストランドカット式について説明したが、ダイ31から押し出したストランドをペレット状に切断してから冷却するホットカット式を採用してもよい。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
使用済みの樹脂フィルムやシートを原料として再生ペレットを製造する再生樹脂造粒システムであって、
前記原料を水で洗浄する洗浄装置と、
水で洗浄したままの水分を含んだ状態の前記原料を投入する投入口、投入された原料を加熱混錬して溶融する第1溶融部、溶融した原料を解放吐出する吐出口、及び、前記第1溶融部において気化された前記原料の水分を含むガス状物質を排気するベント口を有する溶融脱水装置と、
前記溶融脱水装置の前記吐出口の下方に離間した受入口、この受入口を介して受け入れた溶融状態の原料を前記第1溶融部における加熱温度より低い温度で加熱混錬する第2溶融部、前記第2溶融部で加熱混錬した溶融状態の原料を通過させて異物を取り除くフィルタ装置、及び、前記フィルタ装置を通過した溶融状態の原料を押し出す複数の孔を備えたダイを有する押出機と、
前記ダイの前記複数の孔を通して前記押出機から押し出された溶融状態の原料を所定の長さに切断する切断装置と、
を具備する再生樹脂造粒システム。
[2]
前記溶融脱水装置は、前記吐出口の上流側に溶融状態の原料を通過させて異物を取り除く別のフィルタ装置を備える、
[1]の再生樹脂造粒システム。
[3]
使用済みの樹脂フィルムやシートを原料として再生ペレットを製造する再生樹脂造粒システムであって、
前記原料を水で洗浄する洗浄装置と、
水で洗浄したままの水分を含んだ状態の前記原料を投入する投入口、投入された原料を加熱混錬して溶融する第1溶融部、溶融した原料を解放吐出する第1吐出口、及び、前記第1溶融部において気化された前記原料の水分を含むガス状物質を排気するベント口を有する第1押出機と、
前記第1押出機の前記第1吐出口の下方に離間した第1受入口、この第1受入口を介して受け入れた溶融状態の原料を前記第1溶融部における加熱温度より低い温度で加熱混錬する第2溶融部、前記第2溶融部で加熱混錬した溶融状態の原料を通過させて異物を取り除く第1フィルタ装置、及び、前記第1フィルタ装置を通過した溶融状態の原料を解放吐出する第2吐出口を有する第2押出機と、
前記第2押出機の前記第2吐出口の下方に離間した第2受入口、この第2受入口を介して受け入れた溶融状態の原料を前記第1溶融部における加熱温度より低い温度で加熱混錬する第3溶融部、前記第3溶融部で加熱混錬した溶融状態の原料を通過させて異物を取り除く第2フィルタ装置、及び、前記第2フィルタ装置を通過した溶融状態の原料を押し出す複数の孔を備えたダイを有する第3押出機と、
前記ダイの前記複数の孔を通して前記第3押出機から押し出された溶融状態の原料を所定の長さに切断する切断装置と、
を具備する再生樹脂造粒システム。
[4]
前記第3溶融部における加熱温度を前記第2溶融部における加熱温度より低くした、
[3]の再生樹脂造粒システム。
【符号の説明】
【0059】
3…粉砕機、 4…スクリューコンベヤ、 5…第1洗浄水槽、 6…第1縦型分離機、 8…横型分離機、 11…第2洗浄水槽、 12…第2縦型分離機、 14…タンク、 15…コンベヤ、 15a…コンベヤロール、 16…コンベヤ、 17…撹拌機、 18…第1押出機、 19…溶融部、 20…吐出口、 21…ベント口、 22…受入口、 23…第2押出機、 24…溶融部、 25…スクリーンチェンジャ、 26…吐出口、 27…受入口、 28…第3押出機、 29…溶融部、 30…フィルタ装置、 31…ダイ、 34…切断装置、 35…振動装置、 36…ブロア、 37…製品タンク。
【要約】
【課題】品質の高い再生ペレットを容易に製造することができ、スループットを多くすることができる再生樹脂造粒システムを提供する。
【解決手段】再生樹脂造粒システム100は、原料を水で洗浄する洗浄装置3、4、5、6、8、11、12と、原料を投入する投入口18a、原料を加熱混錬して溶融する溶融部19、原料を解放吐出する吐出口20、及び水分を含むガス状物質を排気するベント口21を有する第1押出機18と、第1押出機18の吐出口20の下方に離間した受入口22、原料を加熱混錬する溶融部24、原料を通過させて異物を取り除くフィルタ装置30、及びフィルタ装置30を通過した原料を押し出す複数の孔を備えたダイ31を有する第2押出機23と、第2押出機23から押し出された原料を切断する切断装置34と、を具備する。
【選択図】 図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9