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特許7138879人流可視化システム、人流可視化装置、人流可視化方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】人流可視化システム、人流可視化装置、人流可視化方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20220912BHJP
   G06F 16/28 20190101ALI20220912BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20220912BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20220912BHJP
   G16Y 10/75 20200101ALI20220912BHJP
   G16Y 20/40 20200101ALI20220912BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20220912BHJP
【FI】
H04M11/00 301
G06F16/28
G08G1/005
G09B29/00 F
G09B29/00 Z
G16Y10/75
G16Y20/40
G16Y40/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021127602
(22)【出願日】2021-08-03
【審査請求日】2022-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399105715
【氏名又は名称】株式会社インフォマティクス
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】関 慶宏
(72)【発明者】
【氏名】廣場 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝三
(72)【発明者】
【氏名】戸屋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】相原 健郎
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152044(JP,A)
【文献】国際公開第2012/111138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 11/00
G06F 16/28
G09B 29/00
G16Y 10/75
G16Y 20/40
G16Y 40/20
G08G 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人によって保持される携帯端末装置の位置、固有識別子及び時刻を含むデータを取得するデータ取得部と、
前記データに基づいて前記人の移動を示す人流データであって、所定の可視化条件を満たす前記人流データを、可視化対象として地図上に軌跡として表示する解析部と、
前記地図の縮尺が変更されたとき、前記可視化条件を変更する可視化条件設定部と、を有し、
前記解析部は、前記可視化条件設定部により前記可視化条件が変更されたとき、変更された前記可視化条件を満たす前記人流データを表示する
人流可視化装置。
【請求項2】
前記データ取得部は、所定のデータ取得条件にしたがって前記データを取得し、
前記可視化条件設定部により前記可視化条件が変更されたとき、前記データ取得条件変更する
請求項1記載の人流可視化装置。
【請求項3】
前記可視化条件は、前記携帯端末装置の移動速度を含む
請求項1記載の人流可視化装置。
【請求項4】
前記可視化条件は、前記携帯端末装置の属性を含み、
前記属性は前記携帯端末装置の利用者の年齢、性別、居住地、国籍、最近滞在したスポット、又は前記携帯端末装置のオペレーティングシステムのいずれかを含む
請求項1記載の人流可視化装置。
【請求項5】
前記データ取得条件は、前記データの取得頻度を含む
請求項2記載の人流可視化装置。
【請求項6】
前記データ取得条件は、前記携帯端末装置の属性を含み、
前記属性は前記携帯端末装置の利用者の年齢、性別、居住地、国籍、最近滞在したスポット、又は前記携帯端末装置のオペレーティングシステムのいずれかを含む
請求項2記載の人流可視化装置。
【請求項7】
前記解析部は、前記人流データを構成する区間のうち、移動距離、移動速度又は前記データの取得間隔が所定の閾値を超える区間を非表示とする
請求項1記載の人流可視化装置。
【請求項8】
人によって保持される携帯端末装置と、
前記携帯端末装置の位置を取得及び解析するデータ解析装置と、を含み、
前記データ解析装置は、
人によって保持される携帯端末装置の位置、固有識別子及び時刻を含むデータを取得するデータ取得部と、
前記データに基づいて、前記人の移動を示す人流データであって、所定の可視化条件を満たす前記人流データを、可視化対象として地図上に軌跡として表示する解析部と、
前記地図の縮尺が変更されたとき、前記可視化条件を変更する可視化条件設定部と、を有し、
前記解析部は、前記可視化条件設定部により前記可視化条件が変更されたとき、変更された前記可視化条件を満たす前記人流データを表示する
人流可視化システム。
【請求項9】
人によって保持される携帯端末装置の位置、固有識別子及び時刻を含むデータを取得するデータ取得ステップと、
前記データに基づいて、前記人の移動を示す人流データであって、所定の可視化条件を満たす前記人流データを、可視化対象として地図上に軌跡として表示する解析ステップと、
前記地図の縮尺が変更されたとき、前記可視化条件を変更する可視化条件設定ステップと、
変更された前記可視化条件を満たす前記人流データを表示するステップと、を含む
人流可視化方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人流可視化システム、人流可視化装置、人流可視化方法及びプログラムに関し、例えば人流に関する情報をユーザの意図に応じ的確に提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人の移動の軌跡(以下、人流という)を解析する技術が提案されている。特許文献1には、複数の地点に設置されたセンサからのセンサデータを解析し、地点間の人流の大きさ、すなわち当該地点間を移動した人数の規模を可視化するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-175240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のシステムでは、センサデータの取得条件(日時、エリア、送信頻度等)や人流の可視化条件(軌跡の生成方法、表示方法等)は固定的である。人流可視化を行う目的やユーザの時々の意図に応じてこれらの条件を変更したい場合でも、従来のシステムではかかる要望に的確に応えることができなかった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、人流に関する情報をユーザの意図に応じ的確に提供できる人流可視化システム、人流可視化装置、人流可視化方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、人流可視化装置は、人によって保持される携帯端末装置の位置、固有識別子及び時刻を含むデータを取得するデータ取得部と、前記データに基づいて、前記人の移動を示す人流データであって、所定の可視化条件を満たす前記人流データを、可視化対象として地図上に軌跡として表示する解析部と、前記地図の縮尺が変更されたとき、前記可視化条件を変更する可視化条件設定部と、を有し、前記解析部は、前記可視化条件設定部により前記可視化条件が変更されたとき、変更された前記可視化条件を満たす前記人流データを表示する。
一実施の形態によれば、前記データ取得部は、所定のデータ取得条件にしたがって前記データを取得し、前記可視化条件設定部により前記可視化条件が変更されたとき、前記データ取得条件を変更する。
一実施の形態によれば、前記可視化条件は、前記携帯端末装置の移動速度を含む。
一実施の形態によれば、前記可視化条件は、前記携帯端末装置の属性を含み、前記属性は前記携帯端末装置の利用者の年齢、性別、居住地、国籍、最近滞在したスポット、又は前記携帯端末装置のオペレーティングシステムのいずれかを含む。
一実施の形態によれば、前記データ取得条件は、前記データの取得頻度を含む。
一実施の形態によれば、前記データ取得条件は、前記携帯端末装置の属性を含み、前記属性は前記携帯端末装置の利用者の年齢、性別、居住地、国籍、最近滞在したスポット、又は前記携帯端末装置のオペレーティングシステムのいずれかを含む。
一実施の形態によれば、前記解析部は、前記人流データを構成する区間のうち、移動距離、移動速度又は前記データの取得間隔が所定の閾値を超える区間を非表示とする。
一実施の形態によれば、人流可視化システムは、人によって保持される携帯端末装置と、前記携帯端末装置の位置を取得及び解析するデータ解析装置と、を含み、前記データ解析装置は、人によって保持される携帯端末装置の位置、固有識別子及び時刻を含むデータを取得するデータ取得部と、前記データに基づいて、前記人の移動を示す人流データであって、所定の可視化条件を満たす前記人流データを、可視化対象として地図上に軌跡として表示する解析部と、前記地図の縮尺が変更されたとき、前記可視化条件を変更する可視化条件設定部と、を有し、前記解析部は、前記可視化条件設定部により前記可視化条件が変更されたとき、変更された前記可視化条件を満たす前記人流データを表示する。
一実施の形態によれば、人流可視化方法は、人によって保持される携帯端末装置の位置、固有識別子及び時刻を含むデータを取得するデータ取得ステップと、前記データに基づいて、前記人の移動を示す人流データであって、所定の可視化条件を満たす前記人流データを、可視化対象として地図上に軌跡として表示する解析ステップと、前記地図の縮尺が変更されたとき、前記可視化条件を変更する可視化条件設定ステップと、変更された前記可視化条件を満たす前記人流データを表示するステップと、を含む。
一実施の形態によれば、プログラムは、上記方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、人流に関する情報をユーザの意図に応じ的確に提供できる人流可視化システム、人流可視化装置、人流可視化方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる人流可視化システム1の全体像を示す図である。
図2】実施の形態1にかかる人流可視化システム1の全体像を示す図である。
図3】実施の形態1にかかる人流可視化システム1の全体像を示す図である。
図4】実施の形態1にかかる人流可視化システム1の全体像を示す図である。
図5】実施の形態1にかかる人流可視化システム1の全体像を示す図である。
図6】実施の形態1にかかる人流可視化システム1のハードウェア構成を示す図である。
図7】データ解析装置30の機能構成を示す図である。
図8】人流データの表示例である。
図9】軌跡切断条件を反映した場合の人流データの表示例である。
図10】人流データの表示例である。
図11】軌跡の表示形態を調整した場合の人流データの表示例である。
図12】ユーザニーズに応じて可視化対象を選択した場合の人流データの表示例である。
図13】ユーザニーズに応じて可視化対象を選択した場合の人流データの表示例である。
図14】ユーザニーズに応じて可視化対象を選択した場合の人流データの表示例である。
図15】実施の形態2にかかる人流可視化システム1の全体像を示す図である。
図16】実施の形態2にかかる人流可視化システム1の全体像を示す図である。
図17】実施の形態2にかかる人流可視化システム1の全体像を示す図である。
図18】実施の形態2にかかる人流可視化システム1の全体像を示す図である。
図19】実施の形態2にかかる人流可視化システム1の全体像を示す図である。
図20】実施の形態2にかかる人流可視化システム1のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<実施の形態1>
図1乃至図5を用いて、本発明の実施の形態1にかかる人流可視化システム1の全体像について説明する。
【0012】
人流可視化システム1は、複数の携帯端末装置10と、データ解析装置30を含んでいる(図1)。データ解析装置30は、人流可視化装置30とも称される。携帯端末装置10とデータ解析装置30とは通信ネットワークを介して通信可能である。
【0013】
人流可視化システム1のユーザが直接操作するのはデータ解析装置30である。データ解析装置30の主要な機能は、人が移動した軌跡(人流)を可視化された情報として表示することである。典型的には、人流を表す線分を地図上に描画する。
【0014】
人流を表示するための基礎となる情報(人流データ)は、街中を移動する人々が保持している携帯端末装置10によって生成される(図2)。携帯端末装置10は、それぞれGPS(Global Positioning System)等によって自機の位置情報を取得し、所定の頻度でデータ解析装置30に送信する。送信には無線LANやインターネット等の通信ネットワークが利用される。これらの処理は、典型的には携帯端末装置10がバックグラウンドで自動的に実行する。
【0015】
送信された位置情報は、データ解析装置30の一部である記憶領域(ストレージ)に蓄積されていく。ストレージは、いわゆるクラウドストレージや、通信キャリア等が運用するシステム内に設けられたものであっても良い。データ解析装置30は、ユーザから人流の表示要求があるとストレージにアクセスし、蓄積された人流データから必要なものを抽出して加工処理を行う(図3)。これにより、地図上への人流の表示が実現する。
【0016】
ユーザは、地図の表示範囲をコマンドボタンやドラッグ操作等により変更したり、縮尺をコマンドボタンやピンチ操作等により変更したりすることが可能である。このとき、データ解析装置30は、地図を操作したユーザの意図を推測して、地図上に表示する情報を動的に変化させる(図4)。例えば、徒歩で移動している人の流れのみを表示したり、交通機関で移動している人の流れのみを表示したりするなどして、人流の見せ方を変えることができる。また、ユーザの意図を推測して、人流データの取得方法をそもそも変更してしまうこともできる(図5)。例えば、データ解析装置30は携帯端末装置10に指示を出して、人流データの取得頻度を変更すること等が可能である。
【0017】
図6は、本発明の実施の形態1にかかる人流可視化システム1のハードウェア構成を模式的に描いたブロック図である。人流可視化システム1は、携帯端末装置10、データ解析装置30を含む。
【0018】
携帯端末装置10は、人が保持する情報処理装置であって、典型的にはスマートフォンやウェアラブル端末等である。携帯端末装置10は、携帯端末装置10の位置情報(典型的には緯度及び経度により表されるがこれに限定されない)を所定の時間おきに計測する機能を有する。典型的には、GPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)をはじめとする衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用することにより位置情報を計測できる。複数の無線基地局(例えばフェムトセル基地局、屋内小型基地局など)又はWi-Fi基地局からの距離に基づいて位置情報を計測することもできる。他の任意の公知の手法により位置情報を算出しても構わない。
【0019】
携帯端末装置10は、計測した位置情報を、携帯端末装置10を一意に識別可能な固有識別子とともにデータ解析装置30のデータ取得部301(後述)に送信する。この際、計測日時、属性情報(後述)等を含めて送信しても良い。また、携帯端末装置10は、データ解析装置30のデータ取得条件設定部303(後述)の要求に応じ、位置情報の送信を開始又は停止すること、及び位置情報の計測間隔を変更することができる。
【0020】
また、携帯端末装置10は、携帯端末装置10を使用している人の年齢、性別、居住地(都道府県等)、国籍など個人的属性を示す情報、オペレーティングシステムのバージョンなど携帯端末装置10の属性を示す情報、携帯端末装置10が最近滞在したスポットなど行動を示す情報等を、属性情報として保持しておくことができる。
【0021】
データ解析装置30は、複数の携帯端末装置10と通信可能な情報処理装置であって、典型的にはPC(Personal Computer)、サーバコンピュータ又はクラウドサーバ等である。データ解析装置30は、典型的には携帯電話の無線基地局(例えばフェムトセル基地局、屋内小型基地局など)、Wi-Fi基地局、ゲートウェイ及び中継サーバ等を介して携帯端末装置10と通信を行う。データ解析装置30は、携帯端末装置10の固有識別子及び位置情報を、これらの携帯端末装置10から収集する。また、収集した固有識別子及び位置情報を解析して人流データを生成する。
【0022】
図7は、データ解析装置30の機能構成を示す図である。データ解析装置30は、データ取得部301、データ取得条件設定部303、解析部305、可視化条件設定部307、表示部309、記憶部311を有する。これらの処理部は必ずしも同一の情報処理装置に実装される必要はなく、必要に応じ複数の情報処理装置に分散して実装されても良い。また、一部又は全部の処理部を、第三者が提供するサービス(クラウドコンピューティング環境等)を利用して構築しても良い。
【0023】
記憶部311は、データ取得部301取得するデータ、解析部305が生成する人流データ、データ取得条件設定部303が設定するデータ取得条件、可視化条件設定部307が設定する可視化条件、地図データ等を格納する記憶領域(ストレージ)である。記憶部311は、データ解析装置30の運営者が設置するほか、クラウドサービスとして第三者により提供されるもの、通信キャリアや他のインフラ事業者が運用するシステム内に設けられるもの等であっても構わない。すなわち、データ解析装置30の他の処理部によりアクセス可能な記憶領域であれば良い。
【0024】
データ取得部301は、携帯電話の無線基地局(例えばフェムトセル基地局、屋内小型基地局など)、Wi-Fi基地局、ゲートウェイ及び中継サーバ等を介して複数の携帯端末装置10と通信を行い、各携帯端末装置10の位置情報及び固有識別子を取得する。データ取得部301は、データ取得条件設定部303が設定するデータ取得条件に従ってデータ取得を行う。
【0025】
データ取得条件設定部303は、データ取得条件を設定する。データ取得条件には、例えばデータ取得エリア、取得日時、取得頻度等が含まれる。データ取得条件設定部303は、例えばユーザに住所を入力させたり、地図上で範囲指定等を行わせたりすることによりデータ取得エリアを指定させる。また、ユーザによる取得開始日時、取得終了日時、取得間隔(例えば何分ごとに位置情報を計測するか)の入力を受け付ける。データ取得条件設定部303は、取得開始時刻が到来したとき、データ取得エリア内に存在する携帯端末装置10に対し、指定の取得頻度で位置情報を計測し、取得終了時刻までのあいだ送信しつづけることを要求する。
【0026】
また、データ取得条件設定部303は、属性情報をユーザに指定させても良い。例えばデータ取得条件設定部303は、年齢、性別、居住地(都道府県等)、国籍、オペレーティングシステムのバージョン、最近滞在したスポットなどの指定を受け付ける。この場合、データ取得条件設定部303は、指定された属性情報を保持している携帯端末装置10に対してのみ位置情報の送信を要求する。
【0027】
データ取得条件設定部303は、年齢、性別、居住地(都道府県等)、国籍、オペレーティングシステムのバージョン、最近滞在したスポット等の属性情報のプリセット値をペルソナとして保持していても良い。例えば、A層、B層、C層・・・といった区分ごとに、年齢、性別、居住地(都道府県等)、国籍、オペレーティングシステムのバージョン、最近滞在したスポット等の設定値の組み合わせをあらかじめ定義しておく。データ取得条件設定部303は、ユーザが区分を指定したなら、当該区分に対応する年齢、性別、居住地(都道府県等)、国籍、オペレーティングシステムのバージョン、最近滞在したスポット等の設定値を属性情報として指定する。
【0028】
また、データ取得条件設定部303は、人の移動又は滞在の別を判定するための閾値S(後述)をユーザに指定させても良い。
【0029】
データ取得条件設定部303は、データ取得エリア、取得日時、取得頻度、閾値S、属性情報等のプリセット値を保持していても良い。例えば、交通量調査、イベントの人出調査、商業店舗出店のための売上予測といったプロジェクトごとに、データ取得エリア、取得日時、取得頻度、閾値S、属性情報等の設定値の組み合わせをあらかじめ定義しておく。データ取得条件設定部303は、ユーザがプロジェクトを指定したなら、当該プロジェクトに対応するデータ取得エリア、取得日時、取得頻度、閾値S、属性情報等の設定値をデータ取得条件として指定する。
【0030】
また、データ取得条件設定部303は、定期的なデータ取得スケジュールを設定できるよう構成されていても良い。例えば、ユーザが定期スケジュールとして曜日及び時間帯を入力すると、データ取得条件設定部303は、当該曜日及び時間帯が到来するたびに、ユーザによりあらかじめ指定されたデータ取得エリア、取得頻度、閾値S等の組み合わせをデータ取得条件として設定する。
【0031】
また、データ取得条件設定部303は、可視化条件設定部307(後述)の要求に応じ、データ取得条件を動的に変更する機能を有しても良い。
【0032】
解析部305は、データ取得部301が取得したデータを解析して、人流データを生成する。人流データとは、人がどの地点からどの地点に移動したかを示すデータである。例えば、時刻T1において基地局20a(所在地をAとする)で取得された固有識別子Xが、時刻T2においては基地局20b(所在地をBとする)で取得された場合、解析部305は、Xは時刻T1からT2の間に地点AからBへ移動したと判定する。又は、時刻T1において基地局20a(地点A)で取得された固有識別子Xが、時刻T2においても基地局20a(地点A)で取得された場合、解析部305は、Xは地点Aに滞留していると判定する。所定の閾値Sを超えた時間にわたる滞留は、滞在と判定することもできる。例えば、解析部305は、Xが地点Aに5分以上滞留している場合、Xは地点Aに滞在していると判定する。滞在と判定された時間帯のデータは、人流データの生成に利用しないことにより、ノイズの少ない人流データを生成できる。なお、滞在判定の閾値Sは、データ取得条件設定部303を利用して任意に設定できる。
【0033】
解析部305は、人流データを可視化して表示部309に表示する。図8は、ある時間帯における人流データを地図上にマッピングした例である。複数の地点間を結ぶ直線は、人の移動の軌跡すなわち人流を示している。
【0034】
解析部305による人流データの解析及び可視化処理の一例を示す。解析部305は、複数の基地局20から次のようなデータを取得する。
{uid,lat,lng,t1},{uid,lat,lng,t2},...,{uid,lat,lng,tn}
ここでuidは携帯端末装置10の固有識別子、lat,lngは基地局20の所在地(緯度、経度)、tはデータ取得時刻を示す。つまり個々のデータはある時刻における携帯端末装置10の概ねの座標を表している。解析部305はこれをuidごとにまとめ、座標を時系列順に整序し、座標間に線分を形成していくことにより軌跡を生成する。
{uid,[{lat,lng,t1},{lat,lng,t2},...,{lat,lng,tn}]}
【0035】
また、解析部305は、可視化条件設定部307により可視化条件が設定されている場合、可視化条件に従って人流データを可視化する。
【0036】
可視化条件設定部307は、可視化条件を設定する。可視化条件には、例えば軌跡切断条件が含まれる。軌跡切断条件とは、軌跡に含まれる任意の区間を非表示とする場合の条件である。まず、任意の区間を非表示とする必要性について説明する。図8の例では、一部の軌跡が、移動路の存在しない海上等に表示されている。このような事象は、例えば時刻t1において地点Aで取得された固有識別子が、次に時刻t2において地点B(地点Aの対岸等)で取得された場合に発生する。この間、携帯端末装置10は実際には湾沿いの陸上ルートを移動しているものの、その移動速度が高速であったり、基地局20によるデータ取得頻度が低かったりする場合、実際の移動ルートとは異なり海上をまたぐような区間が発生してしまう。軌跡切断条件は、このような現実的でない区間を表示しないようにするために使用できる。
【0037】
そこで可視化条件設定部307は、軌跡切断条件として、例えば区間の長さ(座標[lat,lng]間の距離)、時間(時刻tの間隔)、速度等の入力を受け付ける。軌跡がこれらの条件に当てはまる区間を含む場合、可視化条件設定部307は、当該区間は非表示とし、他の区間のみを表示する。これにより、軌跡はその一部が切断されたような形で表示されることになる。図9は、軌跡切断条件を反映した場合の人流データの表示例である。「データの取得間隔が1時間以上であって、その間に500m以上移動していた場合」及び「連続する2点間の距離が5000m以上である場合」を軌跡切断条件とした。これにより、移動路の存在しない海上など不適切な区間が削除されていることがわかる。
【0038】
なお、本実施の形態では可視化条件設定部307は軌跡に含まれる任意の区間を非表示とする場合の条件(軌跡切断条件)を指定させた。しかし、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば軌跡に含まれる任意の区間を表示する場合の条件(軌跡表示条件)を指定させても良い。この場合、可視化条件設定部307は、軌跡表示条件として、例えば区間の長さ(座標[lat,lng]間の距離)、時間(時刻tの間隔)、速度等の入力を受け付ける。軌跡がこれらの条件に当てはまる区間を含む場合、可視化条件設定部307は、当該区間を表示し、他の区間を非表示とする。
【0039】
このほか、可視化条件設定部307は、軌跡の表示形態を調整する機能を有しても良い。例えば図10に示すように、多くの人流が重複する区間では、軌跡が混み合って読み取りづらい状況が生じ得る。そこで可視化条件設定部307は、例えば図11に示すように、人流の多い区間(所定数以上の携帯端末装置10が同一区間を移動している場合)と、人流の少ない区間とで表示形態を分けることができる。この例では、人流の多い区間は線分の表示色の濃度を上げて強調表示を行い、人流の少ない区間は線分の表示色の濃度をより抑えている。これにより、人流の大局的な傾向をシンプルに捉えることが可能となる。
【0040】
また、可視化条件設定部307は、画面操作等から推測されるユーザの意図に応じ、軌跡の可視化条件を適切に変更する機能を有しても良い。いくつかの例を示す。
【0041】
<ユーザニーズに応じた可視化対象の選択>
解析部305は、人流データを可視化して表示部309に表示する際、地図の縮尺(ズームレベル、表示範囲と言い換えても良い)を指定する機能を提供する。電子的な地図において縮尺を指定する手段については、種々のものが公知であるのでここでは説明を省略する。解析部305は、ユーザにより指定された縮尺を可視化条件設定部307に通知する。
【0042】
可視化条件設定部307は、解析部305においてユーザが指定した縮尺に応じ、既に取得された人流データのうち、特定の条件を満足する人流データを可視化対象として抽出する機能を提供する。この機能を実現するための1つの手法は、可視化条件設定部307が縮尺SCと移動速度SPとの対応テーブル(表1)を保持しておくことである。
【表1】
【0043】
表1は、ユーザがある縮尺SCを指定した際に、可視化条件設定部307が可視化対象として抽出する人流データの移動速度SPの範囲を示している。すなわち、縮尺SC≦1/5000であれば、18km/h≦移動速度SPである人流データのみを抽出して地図上に軌跡を表示する。1/5000<縮尺SC≦1/2000であれば、4km/h<移動速度SP≦18km/hである人流データのみを抽出して地図上に軌跡を表示する。1/2000<縮尺SCであれば、移動速度SP≦4km/hである人流データのみを抽出して地図上に軌跡を表示する。
【0044】
ユーザが広域を表示させた(ズームアウトした)場合、そのユーザは、人が交通手段によって都市間又は拠点間を移動するようなケースにおける人流データを見たいという意図を有していると推測される。よって、可視化条件設定部307は、所定の閾値(表1の例では1/5000)以下の縮尺が指定された場合には、自転車や自動車、電車又は航空機等の交通手段の一般的な移動速度を含む速度範囲(表1の例では18km/hを超える)の人流データを抽出する。
【0045】
一方、ユーザがそれよりある程度狭い領域を拡大表示させた(ズームインした)場合、そのユーザは、人が街路やオープンスペースを徒歩で移動しているようなケースにおける人流データをみたいという意図を有していると推測される。この場合、可視化条件設定部307は、所定の縮尺範囲(表1の例では1/5000を超えかつ1/2000以下)が指定された場合には、人が交通手段等を用いないで移動する際の一般的な速度範囲(表1の例では4km/hを超えかつ18km/h)にあたる人流データを抽出する。
【0046】
そして、ユーザがさらに狭い領域を拡大表示させた(ズームインした)場合、そのユーザは、人が商業施設、オフィスビル、レジャー施設又はイベント会場等を極めてゆっくりと回遊しているようなケースにおける人流データを見たいという意図を有していると推測される。この場合、可視化条件設定部307は、所定の閾値(表1の例では1/2000)を超える縮尺が指定された場合には、徒歩移動の一般的な速度を下回る(表1の例では4km/h以下)人流データを抽出する。
【0047】
なお、上述の実施の形態では表1のような対応テーブルを用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものでなく、ユーザの指定した縮尺に応じ、ユーザの意図を反映した速度範囲の人流データを抽出できるものであれば、他の手法を採用することも可能である。例えば、可視化条件設定部307は、縮尺SCと速度SPの上限値及び下限値との関係を定義した数式(数1)を予め保持しておき、指定された縮尺SCをこの数式に投入することにより、いかなる速度SPの人流データを抽出すべきか特定することができる。
[数1]
SPmin = f1(SC)
SPmax = f2(SC)
SPmin:速度SPの下限値、SPMax:速度SPの上限値
【0048】
また、上述の実施の形態では縮尺SCと速度SPの対応テーブル(表1)や関係式(数1)の内容は固定であったが、これらは可変であっても良い。例えば、地図が複数の領域(例えば1km四方のメッシュ)に分割され、各領域に属性(例えば大都市であるか郊外であるか等を示すラベル)が付与されているものとする。この場合、可視化条件設定部307は、領域の属性毎に予め用意された対応テーブル(表1)や関係式(数1)を使用して、各領域の人流データを抽出することができる。又は、対応テーブル(表1)や関係式(数1)は1つであっても、着目する領域の属性に応じてその内容や係数等を都度書き換えて使用して、各領域の人流データを抽出することとしても良い。例えば、大都市の中心部と郊外とでは自動車や電車の平均速度が異なると考えられるから、対応テーブル(表1)や関係式(数1)の内容を大都市と郊外とで異なるものとすることで、ユーザの意図をより正確に反映した人流データを抽出することができる。同様に、人流データが取得された時間帯、携帯端末装置10を保持していた人の属性(例えば年齢)等、取得された人流データに関連する様々な条件に応じて、内容の異なる対応テーブル(表1)や関係式(数1)を使用することができる。
【0049】
あるいは、人流データの分析目的等に応じて、ユーザが複数の対応テーブル(表1)や関係式(数1)を任意に切り替えて使用できるよう可視化条件設定部307を構成しても良い。例えば、都市計画のための人流データの取得という目的と、商業施設における売上向上のための人流データの取得という目的とでは、ユーザが縮尺を操作する際の意図が異なると考えられる。よって、それぞれの目的に応じて調整された対応テーブル(表1)や関係式(数1)を選択可能とすることで、ユーザの意図をより正確に反映した可視化を行うことができる。
【0050】
図12乃至図14に本手法による実験例を示す。図12は、縮尺SC≦1/5000を指定した場合の人流データの可視化結果である。18km/h≦移動速度SPである人流データのみが抽出された結果、利用者数の多かった鉄道や幹線道路等の主要交通網が濃い軌跡として描かれている。図13は、1/5000<縮尺SC≦1/2000を指定した場合の人流データの可視化結果である。4km/h<移動速度SP≦18km/hである人流データのみが抽出された結果、人通りの多かった街路等が濃い軌跡として描かれている。図14は、1/2000<縮尺SCを指定した場合の人流データの可視化結果である。移動速度SP≦4km/hである人流データのみが抽出された結果、人の密集していた施設等が濃い軌跡として描かれている。
【0051】
このように、本実施の形態によれば、取得されている人流データから、ユーザの意図に即した人流データを余分な情報を排した形で抽出し、可視化することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、ユーザの意図を反映するパラメータとして縮尺を、人流データの抽出条件を示すパラメータとして移動速度を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、縮尺操作に変えて、ユーザの意図が反映されている任意の操作に応じて、人流データの抽出条件を変更することができる。また、移動速度に変えて、任意の条件で人流データを抽出することができる。例えば、所定の属性情報を有する携帯端末装置10の人流データのみを抽出することとしても良い。
【0053】
<ユーザニーズに応じたデータ取得条件の選択>
解析部305は、人流データを可視化して表示部309に表示する際、地図の縮尺(ズームレベル、表示範囲と言い換えても良い)を指定する機能を提供する。解析部305は、ユーザにより指定された縮尺を可視化条件設定部307に通知する。
【0054】
可視化条件設定部307は、解析部305においてユーザが指定した縮尺に応じ、人流データを新たに取得する際の条件(データ取得条件)を生成する機能を提供する。可視化条件設定部307は、データ取得条件が新たに生成されたなら、これをデータ取得条件設定部303に通知する。データ取得条件設定部303は、新たなデータ取得条件を受け取ったなら、その時以降は新たなデータ取得条件に従って、データ取得部301に人流データを取得させる。これにより、ユーザが地図上で縮尺を変更すると、データ取得頻度がリアルタイムに変更される。
【0055】
データ取得条件として典型的なものは、データ取得頻度である。本実施の形態では、ユーザが地図上で縮尺を変更したときに、データ取得頻度をリアルタイムに変更する例について主に説明する。この機能を実現するための1つの手法は、可視化条件設定部307が縮尺SCとデータ取得頻度FRとの対応テーブル(表2)を保持しておくことである。
【表2】
【0056】
表2は、ユーザがある縮尺SCを指定した際に、可視化条件設定部307が生成するデータ取得頻度FRを示している。すなわち、縮尺SC≦1/5000であれば、新たなデータ取得頻度を1回/minとする。1/5000<縮尺SC≦1/2000であれば、新たなデータ取得頻度を2回/minとする。1/2000<縮尺SCであれば、新たなデータ取得頻度を3回/minとする。
【0057】
ユーザが広域を表示させた(ズームアウトした)場合、そのユーザは、人が交通手段によって都市間又は拠点間を移動するようなケースにおける人流データを見たいという意図を有していると推測される。このような場合は、データ取得頻度FRが小さく(取得間隔が長く)ても大まかな傾向を掴むには支障がなく、むしろデータ取得頻度FRを大きく(取得間隔を短く)したときのデータ量の増大や処理負荷の増大といったデメリットが目立ちやすい。よって、可視化条件設定部307は、所定の閾値(表2の例では1/5000)以下の縮尺SCが指定された場合には、データ取得頻度FRを比較的小さな値である1回/minに設定する。
【0058】
一方、ユーザがそれよりある程度狭い領域を拡大表示させた(ズームインした)場合、そのユーザは、人が街路やオープンスペースを徒歩で移動しているようなケースにおける人流データをみたいという意図を有していると推測される。このような場合におけるデータ取得頻度FRは、広域移動の場合よりも幾らか大きく(取得間隔を短く)した方が、人の動きを捉えやすい。よって、可視化条件設定部307は、所定の縮尺SCの範囲(表2の例では1/5000を超えかつ1/2000以下)が指定された場合には、データ取得頻度FRをより大きな値である2回/minに設定する。
【0059】
そして、ユーザがさらに狭い領域を拡大表示させた(ズームインした)場合、そのユーザは、人が商業施設、オフィスビル、レジャー施設又はイベント会場等の内部を極めてゆっくりと回遊しているようなケースにおける人流データを見たいという意図を有していると推測される。このよう場合のデータ取得頻度FRは、人のわずかな移動も捕捉できるよう、できるだけ大きく(取得間隔を短く)することが好ましい。よって、可視化条件設定部307は、所定の閾値(表2の例では1/2000)を超える縮尺SCが指定された場合には、データ取得頻度を最大の3回/minに設定する。
【0060】
なお、上述の実施の形態では表2のような対応テーブルを用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものでなく、ユーザの指定した縮尺に応じ、ユーザの意図を反映したデータ取得頻度を設定できるものであれば、他の手法を採用することも可能である。例えば、可視化条件設定部307は、縮尺SCとデータ取得頻度FRとの関係を定義した数式(数2)を予め保持しておき、指定された縮尺SCをこの数式に投入することにより、データ取得頻度FRの設定値を特定することができる。
[数2]
FR = f3(SC)
【0061】
また、上述の実施の形態では縮尺SCとデータ取得頻度FRの対応テーブル(表2)や関係式(数2)の内容は固定であったが、これらは可変であっても良い。例えば、地図が複数の領域(例えば1km四方のメッシュ)に分割され、各領域に属性(例えば大都市であるか郊外であるか等を示すラベル)が付与されているものとする。この場合、可視化条件設定部307は、領域の属性毎に予め用意された対応テーブル(表2)や関係式(数2)を使用して、各領域の人流データを抽出することができる。又は、対応テーブル(表2)や関係式(数2)は1つであっても、着目する領域の属性に応じてその内容や係数等を都度書き換えて使用して、各領域の人流データを抽出することとしても良い。例えば、大都市の中心部と郊外とでは人が単位時間あたりに移動する平均的な距離が異なると考えられるから、対応テーブル(表2)や関係式(数2)の内容を大都市と郊外とで異なるものとすることで、ユーザの意図をより正確に反映した人流データを抽出することができる。同様に、人流データが取得された時間帯、携帯端末装置10を保持していた人の属性(例えば年齢)等、取得された人流データに関連する様々な条件に応じて、内容の異なる対応テーブル(表2)や関係式(数2)を使用することができる。
【0062】
あるいは、人流データの分析目的等に応じて、ユーザが複数の対応テーブル(表2)や関係式(数2)を任意に切り替えて使用できるよう可視化条件設定部307を構成しても良い。例えば、都市計画のための人流データの取得という目的と、商業施設における売上向上のための人流データの取得という目的とでは、ユーザが縮尺を操作する際の意図が異なると考えられる。よって、それぞれの目的に応じて調整された対応テーブル(表2)や関係式(数2)を選択可能とすることで、ユーザの意図をより正確に反映した可視化を行うことができる。
【0063】
このように、本実施の形態によれば、人流データの取得条件を、ユーザの意図に即してリアルタイムに変動させることができる。
【0064】
なお、本実施の形態では、ユーザの意図を反映するパラメータとして縮尺を、データ取得条件を示すパラメータとして取得頻度を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、縮尺操作に変えて、ユーザの意図が反映されている任意の操作に応じて、データ取得条件を変更することができる。また、取得頻度に変えて、任意のデータ取得条件を指定することができる。例えば、所定の属性情報をデータ取得条件として指定しても良い。
【0065】
<実施の形態2>
図15乃至図19を用いて、本発明の実施の形態2にかかる人流可視化システム1の全体像について説明する。
【0066】
人流可視化システム1は、携帯端末装置10、複数の携帯端末装置10と通信可能な基地局20、複数の基地局20と通信可能なデータ解析装置30を含んでいる(図15)。基地局20とデータ解析装置30間は通信ネットワーク等で結ばれているものとする。
【0067】
人流可視化システム1のユーザが直接操作するのはデータ解析装置30である。データ解析装置30の主要な機能は、人が移動した軌跡(人流)を可視化された情報として表示することである。典型的には、人流を表す線分を地図上に描画する。
【0068】
人流を表示するための基礎となる情報(人流データ)は、基地局20及びデータ解析装置30によって生成される(図16)。基地局20は、自機の通信可能範囲内に存在する携帯端末装置10のリストを常時更新しており、これを所定の頻度でデータ解析装置30に送信する。送信には専用線やインターネット等の通信ネットワークが利用される。
【0069】
基地局20から送信された携帯端末装置10のリストは、データ解析装置30の一部である記憶領域(ストレージ)に蓄積されていく。ストレージは、いわゆるクラウドストレージや、通信キャリア等が運用するシステム内に設けられたものであっても良い。データ解析装置30は、ユーザから人流の表示要求があるとストレージにアクセスして蓄積された情報を取得する。
【0070】
データ解析装置30は、予め基地局20の設置地点の座標を把握している。それで、データ解析装置30は、簡便に、基地局20の設置位置を、その基地局20から送信されたリストに含まれる携帯端末装置10の位置とみなすことができる。複数の基地局20から送信された携帯端末装置10のリストに同一の携帯端末装置10が含まれていれば、それらの基地局20の中間地点を携帯端末装置10の位置と推定しても良い。
【0071】
なお、基地局20が携帯端末装置10までの距離を把握できる場合は、上記リストとともに距離情報(距離と相関関係のある電波強度等の指標でも良い)を送信することが好ましい。データ解析装置30は、複数の基地局20から送信された携帯端末装置10のリストに同一の携帯端末装置10が含まれていれば、距離情報を用いることで、その携帯端末装置10の位置を精密に推定できる。
【0072】
こうして、ある時点における携帯端末装置10の位置情報が生成される。この人流データはストレージに格納される。データ解析装置30は、ユーザから人流の表示要求があるとストレージにアクセスし、蓄積された人流データから必要なものを抽出して加工処理を行う(図17)。これにより、地図上への人流の表示が実現する。
【0073】
ユーザは、地図の表示範囲をコマンドボタンやドラッグ操作等により変更したり、縮尺をコマンドボタンやピンチ操作等により変更したりすることが可能である。このとき、データ解析装置30は、地図を操作したユーザの意図を推測して、地図上に表示する情報を動的に変化させる(図18)。例えば、徒歩で移動している人の流れのみを表示したり、交通機関で移動している人の流れのみを表示したりするなどして、人流の見せ方を変えることができる。また、ユーザの意図を推測して、人流データの取得方法をそもそも変更してしまうこともできる(図19)。例えば、データ解析装置30は基地局20に指示を出して、リストの送信頻度を変更すること等が可能である。
【0074】
図20は、本発明の実施の形態2にかかる人流可視化システム1のハードウェア構成を説明する図である。人流可視化システム1は、携帯端末装置10、基地局20、データ解析装置30を含む。データ解析装置30の機能構成については図7のとおりである。
【0075】
実施の形態1との本実施の形態との主な相違点は、基地局20を含むことである。これに伴い、携帯端末装置10及びデータ解析装置30の一部の動作が変更されている。以下、実施の形態1と相違する点について主に説明を行い、実施の形態1と重複する事項については説明を省略する。
【0076】
携帯端末装置10は、人が保持する情報処理装置であって、典型的にはスマートフォンやウェアラブル端末等である。
【0077】
基地局20は、所定の地理的範囲内に存在する複数の携帯端末装置10と通信を行うことが可能な無線通信設備であって、典型的には携帯電話の無線基地局(例えばフェムトセル基地局、屋内小型基地局等を含むがこれらに限定されない)やWi-Fi基地局等である。携帯端末装置10は、携帯端末装置10を一意に識別可能な固有識別子を基地局20に対して定期的に送信する。これにより、基地局20は、自局の通信可能範囲内に存在する携帯端末装置10の固有識別子を常時把握することができる。
【0078】
基地局20は、取得した携帯端末装置10の固有識別子のリストをデータ解析装置30のデータ取得部301に送信する。この際、計測日時等を含めて送信しても良い。また、基地局20は、データ解析装置30のデータ取得条件設定部303の要求に応じ、固有識別子の送信を開始又は停止すること、及び固有識別子の取得間隔を変更することができる。
【0079】
データ解析装置30は、複数の基地局20と直接又はゲートウェイや中継サーバ等を介して通信可能な情報処理装置であって、典型的にはPC(Personal Computer)、サーバコンピュータ又はクラウドサーバ等である。データ解析装置30は、基地局20と通信を行った携帯端末装置10の固有識別子を、これらの基地局20から収集する。また、収集した固有識別子を解析して人流データを生成する。
【0080】
具体的には、データ解析装置30のデータ取得部301が、複数の基地局20と直接又はゲートウェイや中継サーバ等を介して通信を行い、基地局20と通信を行った携帯端末装置10の固有識別子を取得及び蓄積する。データ取得部301は、データ取得条件設定部303が設定するデータ取得条件に従って、基地局20から固有識別子を収集する。そして、収集した固有識別子に基づいて人流データを生成する。人流データの生成方法の一例を以下に示す。
【0081】
データ取得部301は、予め基地局20の設置地点の座標を把握しているものとする。データ取得部301は、簡便に、ある基地局20から送信された固有識別子を有する携帯端末装置10は、基地局20の設置位置に存在しているとみなすことができる。又は、複数の基地局20から受信した情報に同一の固有識別子が含まれていれば、その携帯端末装置10はそれらの基地局20の中間地点に存在しているとみなしても良い。
【0082】
なお、基地局20が携帯端末装置10までの距離(距離と相関関係のある電波強度等の指標でも良い)を把握できる場合、基地局20は、固有識別子とともに、その携帯端末装置10までの距離を送信することが好ましい。データ解析装置30は、複数の基地局20から受信した情報に同一の固有識別子が含まれていれば、基地局20の設置位置と、基地局20からの距離情報とを用いることで、その携帯端末装置10の位置を精密に推定できる。
【0083】
データ取得部301は、このようにして推定した、ある時点における携帯端末装置10の位置情報を、人流データとして記憶部311に格納する。
【0084】
データ取得条件設定部303は、データ取得条件を設定する。データ取得条件には、例えばデータ取得エリア、取得日時、取得頻度等が含まれる。データ取得条件設定部303は、例えばユーザに住所を入力させたり、地図上で範囲指定等を行わせたりすることによりデータ取得エリアを指定させる。また、ユーザによる取得開始日時、取得終了日時、取得間隔(例えば何分ごとに位置情報を計測するか)の入力を受け付ける。データ取得条件設定部303は、取得開始時刻が到来したとき、データ取得エリアをカバーする基地局20に対し、自局の通信可能範囲内に存在する携帯端末装置10の固有識別子を指定の取得頻度で収集し、取得終了時刻までのあいだ送信しつづけることを要求する。
【0085】
また、データ取得条件設定部303は、属性情報をユーザに指定させても良い。この場合、データ取得条件設定部303は、携帯端末装置10の固有識別子と紐づけて、属性情報(携帯端末装置10を使用している人の年齢、性別、居住地(都道府県等)、国籍など個人的属性を示す情報、オペレーティングシステムのバージョンなど携帯端末装置10の属性を示す情報、携帯端末装置10が最近滞在したスポットなど行動を示す情報等を含む)を予め保持しているものとする。データ取得条件設定部303は、ユーザによる属性情報の指定を受け付けると、指定された属性情報に対応する固有識別子を保持している基地局20は当該固有識別子を送信するよう、要求をブロードキャストする。
【0086】
データ取得条件設定部303のその他の機能や、解析部305、可視化条件設定部307、表示部309、記憶部311の機能は実施の形態1と同様である。
【0087】
実施の形態2によれば、基地局20が携帯端末装置10の固有識別子を収集し、データ解析装置30は基地局20から固有識別子を取得することにより携帯端末装置10の位置を追跡する。これにより、携帯端末装置10に特別な機能を追加することなく人流データの収集及び解析を行うことができる。
【0088】
<その他の実施の形態>
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態1では、携帯端末装置10が属性情報を保持する例をもっぱら示したが、実施の形態2と同様に、データ解析装置30が固有識別子と属性情報とを紐づけて保持するよう構成しても良い。
【0089】
また、上述の実施の形態では、携帯端末装置10は人により保持されることを想定しているが、これに限定されるものでなく、動物や物品(車両、航空機、ロボット等)に付けられていても良い。
【0090】
また、上述の実施の形態で開示した各種処理は、ハードウェアによって実行されても良く、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することとしても良い。この場合、コンピュータプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0091】
1 人流可視化システム
10 携帯端末装置
20 基地局
30 データ解析装置(人流可視化装置)
301 データ取得部
303 データ取得条件設定部
305 解析部
307 可視化条件設定部
309 表示部
311 記憶部
【要約】
【課題】人流に関する情報をユーザの意図に応じ的確に提供できる人流可視化システム、人流可視化装置、人流可視化方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】人流可視化装置30は、人によって保持される携帯端末装置10の位置、固有識別子及び時刻を含むデータを取得するデータ取得部301と、前記データに基づいて前記人の移動を示す人流データを生成し、地図上に軌跡として表示する解析部305と、を有し、前記解析部305は、ユーザにより指定された前記地図の縮尺に応じ、移動速度、移動距離又は移動時間が所定の条件を満たす前記人流データを表示する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20