(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】コーヒー液抽出システム、コーヒー液抽出方法、焙煎したコーヒー豆の製造方法、焙煎したコーヒー豆
(51)【国際特許分類】
A47J 31/42 20060101AFI20220912BHJP
A23F 5/04 20060101ALI20220912BHJP
A23F 5/24 20060101ALI20220912BHJP
C10B 53/02 20060101ALI20220912BHJP
C10L 5/44 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A47J31/42
A23F5/04
A23F5/24
C10B53/02
C10L5/44
(21)【出願番号】P 2020082386
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2020-10-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年8月5日に開催された第38回エネルギー・資源学会研究発表会にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】594203830
【氏名又は名称】石光商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 尊
(72)【発明者】
【氏名】井田 民男
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-005452(JP,A)
【文献】特開平07-258666(JP,A)
【文献】特開2010-100807(JP,A)
【文献】特開2014-005432(JP,A)
【文献】実開平04-106997(JP,U)
【文献】特開昭48-096762(JP,A)
【文献】特許第4088933(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/42
C10L 5/44
C10B 53/02
A23F 5/24
A23F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー生豆を焙煎し、焙煎されたコーヒー豆を粉砕してコーヒー豆粉末とする豆加工セクションと、前記コーヒー豆粉末を用いて、コーヒー液を抽出するコーヒー液抽出セクションとを備えるコーヒー液抽出システムであって、
前記コーヒー液抽出セクションに、コーヒー液を抽出した後のコーヒー液抽出カスを用いて、バイオコークスを製造するバイオコークス製造ラインが設けられ、
前記バイオコークス製造ラインは、前記コーヒー液抽出カスを乾燥する乾燥セクションと、乾燥後のコーヒー液抽出カスを加熱圧縮してバイオコークスとする圧縮セクションとを備え、
前記豆加工セクションでの焙煎及び前記バイオコークス製造ラインでのコーヒー液抽出カスの乾燥は、前記バイオコークス製造ラインで製造されたバイオコークスを燃料として用いることを特徴とする、コーヒー液抽出システム。
【請求項2】
前記豆加工セクションは、さらに、コーヒー豆粉末を梱包する梱包部を有し、
前記コーヒー液抽出セクションは、前記梱包されたコーヒー豆粉末の梱包を解除する梱包解除部を有する、
請求項1記載のコーヒー液抽出システム。
【請求項3】
コーヒー生豆を焙煎し、焙煎されたコーヒー豆を粉砕してコーヒー豆粉末とし、前記コーヒー豆粉末を用いて、コーヒー液を抽出し、コーヒー液抽出カスを排出するコーヒー液抽出方法であって、
前記コーヒー液抽出カスを乾燥し、乾燥後のコーヒー液抽出カスをバイオコークスに加工し、
前記コーヒー生豆の焙煎
及び前記コーヒー液抽出カスの乾燥に、前記乾燥後のコーヒー液抽出カスを加工してなるバイオコークスを燃料として用いることを特徴とする、コーヒー液抽出方法。
【請求項4】
前記コーヒー生豆の焙煎は、熱風焙煎、半熱風焙煎または直火焙煎である、請求項3記載のコーヒー液抽出方法。
【請求項5】
前記直火焙煎は、バイオコークス燃焼初期の有炎燃焼で炉体予熱を実施し、前記有炎燃焼の終期で生豆を投入し、チャー燃焼で焙煎を実施するものである、請求項4記載のコーヒー液抽出方法。
【請求項6】
前記コーヒー液抽出カスの乾燥に、水分10wt%以下に乾燥されたコーヒー液抽出カスまたは前記バイオコークスを燃料として用いる、
請求項3乃至5のいずれか1項に記載のコーヒー液抽出方法。
【請求項7】
前記バイオコークスを、コーヒー液を抽出する際の湯沸かし
の燃料に用いる、請求項3乃至6のいずれか1項に記載のコーヒー液抽出方法。
【請求項8】
前記バイオコークスの加工において、コーヒー液抽出カスに対し木くずなどのバイオマス原料を混合する工程をさらに有する、
請求項3乃至
7のいずれか1項記載のコーヒー液抽出方法。
【請求項9】
前記コーヒー液抽出カスに対し木くずなどのバイオマス原料を混合する工程は、前記コーヒー液抽出カスを乾燥する工程に先立って行う、
請求項8記載のコーヒー液抽出方法。
【請求項10】
前記バイオコークスは、その原料を、前記コーヒー液抽出カスに加えて、抽出前のコーヒー豆、コーヒーの実のシルバースキン、コーヒーの実の果皮、コーヒーの実の果肉、コーヒーの実のミューシレージ、コーヒーの実のパーチメントとする、
請求項3乃至9のいずれか1項に記載のコーヒー液抽出方法。
【請求項11】
コーヒー生豆を焙煎し、焙煎したコーヒー豆を製造する製造方法であって、
コーヒー液が抽出された後のコーヒー液抽出カスを乾燥し、乾燥後のコーヒー液抽出カスを加熱圧縮してバイオコークスを加工し、
前記コーヒー生豆の焙煎
及び前記コーヒー液抽出カスの乾燥に、前記乾燥後のコーヒー液抽出カスを加工してなるバイオコークスを燃料として用いることを特徴とする、焙煎したコーヒー豆の製造方法。
【請求項12】
前記バイオコークスを、コーヒー液を抽出する際の湯沸かし
の燃料に用いる、請求項
11に記載の、焙煎したコーヒー豆の製造方法。
【請求項13】
前記バイオコークスは、その原料を、前記コーヒー液抽出カスに加えて、抽出前のコーヒー豆、コーヒーの実のシルバースキン、コーヒーの実の果皮、コーヒーの実の果肉、コーヒーの実のミューシレージ、コーヒーの実のパーチメントとする、
請求項11又は12に記載の、焙煎したコーヒー豆の製造方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか1項記載の製造方法により製造された、焙煎したコーヒー豆。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオコークス技術を用いたコーヒー液抽出システム、コーヒー液抽出方法、焙煎したコーヒー豆の製造方法、焙煎したコーヒー豆に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コーヒー飲料が嗜好飲料として消費量が大きく増え、それに伴いコーヒー豆の消費量も増加している。そのため、大量のコーヒー液抽出カスが発生している。
【0003】
これらのコーヒー液抽出カスについては利活用技術が研究されている。その例としては家畜飼料や作物の堆肥として利用する方法、メタンや水素の発生源、また、炭化処理することで活性炭としてダイオキシン吸着材、脱臭や脱色用の吸着剤として有効利用されている。
【0004】
しかし、有効利用されているのはほんの一部で、そのほとんどは一般廃棄物や産業廃棄物として廃棄され、焼却処理されているのが現状である。
【0005】
ところで、近年、石炭コークスの代替として、バイオコークスが研究されている(例えば、特許文献1参照)。バイオコークスは、バイオマス原料を加圧、加熱した状態で一定時間保持した後に、加圧を維持した状態で冷却することにより製造されるものである。バイオコークスは様々なバイオマス原料から成型できるバイオマス固形燃料であり、見かけ比重1.3以上、相対重量収率約100%で石炭コークスを超える高圧縮強度を備えていることから、減容化、長期保管が可能で、新しい固形燃料として製造技術開発が進められている。加えて、製造工程が単純で小規模分散型利用にも適している。
【0006】
なお、バイオコークスの応用用途としては、キュポラによる鋳造工程での石炭コークス代替、高温ガス化溶融炉による一般廃棄物処理工程での石炭コークス代替、農業用暖房熱源として利用する方法などが検討されている。
【0007】
そのようなバイオコークスの製造方法として、有底筒状の反応容器にバイオマス細粒体を充填し、該バイオマス細粒体を略密状態にて半炭化或いは半炭化前固形物を得る温度範囲及び圧力範囲で加熱しながら加圧成形した後、冷却してバイオコークスを製造することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4088933号公報
【文献】特許第5078938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、発明者らは、コーヒー液抽出カスを有効利用するために、バイオコークス技術を利用して、コーヒー液抽出後のコーヒー液抽出カスをバイオコークス化し、それを熱源として利用するコーヒー液抽出システムを開発した。
【0010】
本発明は、コーヒー液抽出カスを原料とするバイオコークスを熱源として利用し、コーヒー液抽出カスを有効利用できるコーヒー液抽出システム及びその抽出方法、焙煎したコーヒー豆の製造方法及び焙煎したコーヒー豆を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る一の態様のコーヒー液抽出システムは、コーヒー生豆を焙煎し、焙煎されたコーヒー豆を粉砕してコーヒー豆粉末とする豆加工セクションと、前記コーヒー豆粉末を用いて、コーヒー液を抽出するコーヒー液抽出セクションとを備えるコーヒー液抽出システムであって、前記コーヒー液抽出セクションに、コーヒー液を抽出した後のコーヒー液抽出カスを用いて、バイオコークスを製造するバイオコークス製造ラインが設けられ、前記バイオコークス製造ラインは、前記コーヒー液抽出カスを乾燥する乾燥セクションと、乾燥後のコーヒー液抽出カスを加熱圧縮してバイオコークスとする圧縮セクションとを備え、前記豆加工セクションでの焙煎及び前記バイオコークス製造ラインでのコーヒー液抽出カスの乾燥は、前記バイオコークス製造ラインで製造されたバイオコークスを燃料として用いることを特徴とする。
【0012】
このようにすれば、コーヒー液の抽出の際に生じるコーヒー液抽出カスを原料としてバイオコークスが製造され、それが焙煎の際の燃料(熱源)として利用されるので、コーヒー液抽出カスが一般廃棄物や産業廃棄物として廃棄されることなく有効利用される。
【0013】
また、前記豆加工セクションは、さらに、コーヒー豆粉末を梱包する梱包部を有し、前記コーヒー液抽出セクションは、前記梱包されたコーヒー豆粉末の梱包を解除する梱包解除部を有することが望ましい。
【0014】
本発明に係る一の態様のコーヒー液抽出方法は、コーヒー生豆を焙煎し、焙煎されたコーヒー豆を粉砕してコーヒー豆粉末とし、前記コーヒー豆粉末を用いて、コーヒー液を抽出し、コーヒー液抽出カスを排出するコーヒー液抽出方法であって、前記コーヒー液抽出カスを乾燥し、乾燥後のコーヒー液抽出カスをバイオコークスに加工し、前記コーヒー生豆の焙煎及び前記コーヒー液抽出カスの乾燥に、前記乾燥後のコーヒー液抽出カスを加工してなるバイオコークスを燃料として用いることを特徴とする。
【0015】
この場合、前記コーヒー生豆の焙煎は、熱風焙煎、半熱風焙煎または直火焙煎とすることができ、前記直火焙煎とする場合には、バイオコークス燃焼初期の有炎燃焼で炉体予熱を実施し、前記有炎燃焼の終期で生豆を投入し、チャー燃焼で焙煎を実施するものである。
【0016】
バイオコークスの燃焼は燃焼初期に有炎燃焼が発生し、揮発分の燃焼が終わると、チャー燃焼に移行するが、バイオコークスの有炎燃焼は燃焼時間全体の1割程度までで終了するので、有炎燃焼の期間に生豆を投入すると煎豆表面だけが焼けてしまうからである。そして、煎豆のL値(焙煎度)の微妙な調整にはチャー燃焼が必要である。
【0017】
また、前記コーヒー液抽出カスの乾燥に、水分10wt%以下に乾燥されたコーヒー液抽出カスまたは前記バイオコークスを燃料として用いることもできる。
【0018】
また、この場合、前記コーヒー液抽出カスの乾燥において、含有水分を少なくとも10wt%以下で、できる限り0wt%に近い状態にすることが望ましい。
【0019】
そして、前記バイオコークスを、コーヒー液を抽出する際の湯沸かしの燃料に用いることができ、コストダウンが図れる。
【0020】
また、前記バイオコークスの加工において、コーヒー液抽出カスは油分(脂肪酸)が含まれており、油分が多くなるとバイオコークス成型の妨げとなるため、コーヒー液抽出カスに対し木くずなどの油分を吸収させるバイオマス原料を混合する工程をさらに有することとすることもできる。
【0021】
また、この場合、前記コーヒー液抽出カスに対し木くずなどのバイオマス原料を混合する工程は、乾燥物の比表面積を増やす効果で前記コーヒー液抽出カスの乾燥効率を高めるために前記コーヒー液抽出カスを乾燥する工程に先立って行うことが望ましい。
【0022】
また、前記バイオコークスは、その原料を、前記コーヒー液抽出カスに加えて、抽出前のコーヒー豆、コーヒーの実のシルバースキン、コーヒーの実の果皮、コーヒーの実の果肉、コーヒーの実のミューシレージ、コーヒーの実のパーチメントとしてもよいと考えられる。
【0023】
本発明に係る一の態様の焙煎したコーヒー豆の製造方法は、コーヒー生豆を焙煎し、焙煎したコーヒー豆を製造する製造方法であって、コーヒー液が抽出された後のコーヒー液抽出カスを乾燥し、乾燥後のコーヒー液抽出カスを加熱圧縮してバイオコークスを加工し、前記コーヒー生豆の焙煎及び前記コーヒー液抽出カスの乾燥に、前記乾燥後のコーヒー液抽出カスを加工してなるバイオコークスを燃料として用いる、ことを特徴とする。
【0024】
前記バイオコークスを、コーヒー液を抽出する際の湯沸かしの燃料に用いることができ、コストダウンが図れる。
【0025】
また、この場合、前記コーヒー液抽出カスの乾燥において、含有水分を少なくとも10wt%以下で、できる限り0wt%に近い状態にすることが望ましい。
【0026】
また、前記バイオコークスの生成において、コーヒー液抽出カスは油分(脂肪酸)が含まれており、油分が多くなるとバイオコークス成型の妨げとなるため、コーヒー液抽出カスに対し木くずなどの油分を吸収させるバイオマス原料を混合する工程をさらに有することとすることもできる。
【0027】
また、前記バイオコークスは、その原料を、前記コーヒー液抽出カスに加えて、抽出前のコーヒー豆、コーヒーの実のシルバースキン、コーヒーの実の果皮、コーヒーの実の果肉、コーヒーの実のミューシレージ、コーヒーの実のパーチメントとしてもよいと考えられる。
【0028】
本発明に係る一の態様の焙煎したコーヒー豆は、 請求項11乃至13のいずれか1項記載の製造方法により製造されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、コーヒー液の抽出の際に生じるコーヒー液抽出カスを原料とするバイオコークスを製造し、それをコーヒー豆の焙煎の際に燃料(熱源)として利用するようにしているので、コーヒー液抽出カスを廃棄することなく有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る一実施の形態である、バイオコークス技術を用いたコーヒー液抽出システムの全体構成を示す説明図である。
【
図2】バイオコークスの製造に用いる加熱圧縮装置の一例を示す図である。
【
図3】コーヒー液抽出カスからなるバイオコークスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施するための形態を説明する。
【0032】
図1は本発明に係る一実施の形態である、バイオコークス技術を用いたコーヒー液抽出システムの全体構成を示す説明図である。
【0033】
図1に示すように、コーヒー液抽出システム1は、バイオコークス技術を利用して、コーヒー液抽出カスをバイオコークス化し、コーヒー液抽出カスからバイオコークスとして有効利用するものである。つまり、コーヒー液抽出カスからなるバイオコークスを、コーヒー液抽出システム1において、コーヒー液抽出カスを乾燥する熱源、およびコーヒー豆焙煎の熱源として利用するものである。
【0034】
このコーヒー液抽出システム1は、大きく分けて、焙煎等を行う豆加工セクション2と、コーヒー液抽出セクション3とを備える。このコーヒー液抽出セクション3に、バイオコークス製造ライン4が設けられている。
【0035】
豆加工セクション2は、生豆を焙煎し、焙煎した豆を粉砕してコーヒー豆粉末とし、そのコーヒー豆粉末を袋Pにパケージングする。このコーヒー豆粉末がパッケージングされた袋Pは、コーヒー液抽出セクション3に搬送される。焙煎が施されたコーヒー豆はミルによって粉砕されるが、粒径は目的とする抽出方法の違いによって調整される。例えば、大まかではあるが、エスプレッソ(浸漬法)用は粒径が小さく、ドリップ(浸透法)用は粒径が大きくなる。豆加工セクション2の焙煎は、熱風焙煎、半熱風焙煎または直火焙煎である。
【0036】
コーヒー液抽出セクション3では、コーヒー液の抽出が行われ、抽出されたコーヒー液は、ペットボトル101や缶などの周知の容器にパッキングされる。そして、コーヒー液抽出後のコーヒー液抽出カスK1は、バイオコークス製造ライン4において、乾燥され、それに続いて加熱・圧縮が行われ、バイオコークスCとされる。このバイオコークスCの一部は、豆加工セクション2での焙煎ための燃料として用いられ、別の一部は、バイオコークス製造ライン4での乾燥のための燃料として用いられる。余ったバイオコークスは、固形燃料として、別途利用される。
(コーヒー豆の加工)
輸入されたコーヒー豆B1(生豆)は、豆加工セクション2に搬入され、まず、焙煎部2Aにおいて焙煎される。この焙煎の燃料として、コーヒー液抽出カスを利用して製造したバイオコークスCが利用される。
【0037】
そして、焙煎後のコーヒー豆B2は、粉砕部2Bにおいて、所望の粒度に粉砕され、散水、送風などによって冷却され、コーヒー豆粉末B3とされる。このコーヒー豆粉末3Bは、水分が4wt%以下で、梱包部2Cにおいて、包袋P内に梱包される。なお、焙煎に使用したロースターは、フジローヤル社製の炭・ガス兼用大型ロースター(生豆60kg/バッチ)で、燃料として、後述するコーヒー液抽出カスを利用して製造したバイオコークスCが用いられる。
(コーヒー液の抽出)
焙煎・粉砕および梱包された後のコーヒー豆粉末B3(袋P)は、コーヒー液抽出セクション3に搬送される。ここで、まず、抽出部3Aにおいて、様々な条件でコーヒー豆粉末B3からコーヒー液が抽出され、ペットボトル101や缶に充填されたコーヒー液(コーヒー飲料)、濃縮還元用のエキス、フリーズドライ製法によるインスタントコーヒーなどに加工される。加工の際には多量のコーヒー液抽出カスK1が発生し、その水分は約70wt%もある。
【0038】
発生したコーヒー液抽出カスK1は、バイオコークス製造ライン4に移送され、まず、乾燥セクション4Aにおいて、例えば105℃程度の温度にて乾燥処理される。これにより、水分が約70wt%から約2wt%とされる。この乾燥の燃料として、コーヒー液抽出カスを利用して製造したバイオコークスCが利用される。
【0039】
そして、乾燥後のコーヒー液抽出カスK2は、圧縮セクション4Bにおいて、加熱圧縮され、コーヒー豆バイオコークスCとされる。
【0040】
圧縮セクション4Bには、加熱圧縮装置が設けられている。加熱加圧装置は、例えば
図2に示すように、原料(コーヒ液抽出カス)が充填され、加圧される充填層と、加圧後に加熱される加熱層と、加熱後に冷却される冷却層とが順に配置されてなり、冷却後、コーヒー豆バイオコークスとして排出される。
【0041】
バイオコークスは、コーヒー液抽出カスを加熱・圧縮して製造するが、その加熱温度は揮発分が発生する温度より低い温度で圧縮するため原料が持つ総発熱量は変化しない。
【0042】
前述したようなシステム、つまりコーヒー液抽出カスを利用して製造したバイオコークスCを、コーヒー液抽出カスK1を乾燥する熱源およびコーヒー豆焙煎の熱源として利用するシステムについて、エネルギーループの検討を行い、焙煎後のコーヒー豆B2およびバイオコークスCは水分濃度が平均2.0wt%、コーヒー液抽出後のコーヒー液抽出カスK1の水分濃度は平均70wt%であると仮定して、収支計算を実施したところ、エネルギーループが成り立つことが確認されている。
【0043】
なお、原料の水分は少ないほどバイオコークスの圧縮強度が高くなることが知られていることから、バイオコークスの水分の目標値をコーヒー液抽出前のコーヒー豆水分値と同じ4.0wt%以下としている。また、余剰エネルギーも発生し、外部へのエネルギー供給として使用できることも確認されている。
【0044】
また、コーヒー豆バイオコークスで焙煎したコーヒー豆にてコーヒーを抽出して試飲した結果、商品として十分な味覚を有していることも確認されている。
【0045】
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更が可能である。
【0046】
(i)豆加工セクション2、コーヒー液抽出セクション3は、直線状のラインとして配置してもよいし、距離を開けて離れた位置に配置することも可能である。離れて配置する場合は、コーヒー豆粉末2C(袋P)やバイオコークスCの搬送は、トラックなどの輸送手段を利用して、セクション2,3の間で搬送することになる。
【0047】
(ii)コーヒー豆バイオコークスCは、コーヒー豆に多く含まれる油分(脂肪酸)が残っており、バイオコークスに成型できない場合があるので(
図3参照)、それを回避するために、コーヒー液抽出カスK1に対し木くずなどのバイオマス原料を混合する混合部を、乾燥効率を高めるために乾燥セクション4Aでの乾燥に先立って、つまり抽出部3Aと乾燥セクション4Aとの間に備えるようにすることも可能である。
【0048】
(iii)コーヒー豆バイオコークスCは、燃焼の初期に揮発分による蒸発燃焼あるいは分解燃焼(総じて有炎燃焼)が発生し、揮発分がなくなると固体の表面燃焼(無炎燃焼)へと移行するので、このような燃焼状態の変化を抑制するために、コーヒー豆バイオコークスCの燃焼状態に合わせて、コーヒー豆バイオコークスCの投入量(充填量)の調整や燃焼(加熱)用空気量の調整を行うことができる。
【0049】
(iv)前記バイオコークスは、その原料を、前記コーヒー液抽出カスに加えて、抽出前のコーヒー豆、コーヒーの実のシルバースキン、コーヒーの実の果皮、コーヒーの実の果肉、コーヒーの実のミューシレージ、コーヒーの実のパーチメントとする、こともできる。
【符号の説明】
【0050】
1 コーヒー液抽出システム
2 豆加工セクション
2A 焙煎部
2B 粉砕部
2C 梱包部
3 コーヒー液抽出セクション
3A 抽出部
4 バイオコークス製造ライン
4A 乾燥セクション
4B 圧縮セクション
B1 コーヒー豆(生豆)
B2 焙煎後のコーヒー豆
B3 コーヒー豆粉末
K1 コーヒー液抽出後のコーヒー液抽出カス
K2 乾燥後のコーヒー液抽出カス
C コーヒー豆バイオコークス