(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】積層鋼板製造装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20220912BHJP
【FI】
H02K15/02 F
(21)【出願番号】P 2021026931
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】393023950
【氏名又は名称】大垣精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】鄭 日権
(72)【発明者】
【氏名】日比 庸之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】中川 伸和
(72)【発明者】
【氏名】森 幸泰
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-202355(JP,A)
【文献】特開2003-033711(JP,A)
【文献】特開2007-324455(JP,A)
【文献】特開2018-129981(JP,A)
【文献】特開2010-238817(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2266485(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0214300(US,A1)
【文献】国際公開第2019/167803(WO,A1)
【文献】特開2001-45717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板素材から所定の形状に打抜き形成する鋼板を積層して、積層鋼板を製造する製造装置において、
前記鋼板素材から前記鋼板を打ち抜くため、対となる上金型と下金型からなる金型を備え、
前記上金型と前記下金型とは、鉛直方向に沿って相対的に移動可能であり、
前記上金型及び前記下金型のうちの少なくとも一方に、前記鋼板素材を含めた前記鋼板に接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、
前記接着剤塗布装置を作動させる作動部材を備え、
前記接着剤塗布装置は、
前記接着剤を吐出するノズルユニットと、
前記接着剤を貯留する接着剤貯留部と、
前記接着剤貯留部から前記ノズルユニットへ前記接着剤を供給する供給管を備え、
前記ノズルユニットは、
前記接着剤を前記鋼板に吐出するノズル吐出部を形成するノズルと、
前記接着剤貯留部の側を上流側とし、前記ノズルユニットの側を下流側とするとき、前記ノズルの内部にあって、前記接着剤を前記上流側から前記下流側へ選択的に供給するためのノズル開閉弁と、
前記ノズルを鉛直方向に沿う方向に移動可能に支持するノズルホルダを備え、
前記ノズルユニットは、前記作動部材によって、
前記ノズルが前記ノズルホルダに対して相対的に前記下流側に位置する第一状態と、
前記ノズルが前記ノズルホルダに対して相対的に前記上流側に位置する第二状態とを形成可能であり、
前記ノズルは、
前記作動部材が一方に作動すると、前記ノズルが前記ノズルホルダに対して相対的に前記下流側に位置する前記第一状態で、前記ノズル吐出部が前記鋼板素材を含む前記鋼板に接触し、
さらに前記作動部材が一方に作動すると、前記ノズルは、前記ノズルホルダに対して相対的に前記上流側へ移動して前記第二状態を形成し、前記ノズル開閉弁が開いて、前記ノズルユニットの内部に前記接着剤の流路を形成し、
前記作動部材が他方に作動すると、前記ノズルホルダに対して相対的に前記下流側へ移動して前記第一状態を形成し、前記ノズル開閉弁が閉じて、前記ノズルユニットの内部において前記接着剤の流路を遮断する積層鋼板製造装置。
【請求項2】
前記接着剤塗布装置が前記上金型にあるとき、
前記作動部材は、前記上金型か、又は前記上金型に備える水平方向に沿う方向に移動可能な作動スライドカムであり、
前記接着剤塗布装置が前記下金型にあるとき、
前記作動部材は、前記下金型に備える水平方向に沿う方向に移動可能な前記作動スライドカムであり、
前記接着剤塗布装置が前記上金型にあって、
前記作動部材が前記上金型のとき、前記接着剤塗布装置は前記上金型が鉛直方向に沿う方向へ移動することに伴って、前記第一状態と前記第二状態とを形成し、
前記作動部材が前記作動スライドカムのとき、前記作動スライドカムを水平方向に沿う方向へ移動させることによって、前記第一状態と前記第二状態とを形成する請求項1に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項3】
前記ノズル開閉弁は、第一ノズル開閉弁と、第一ノズル弁弾性部材と、第二ノズル開閉弁と、第二ノズル弁弾性部材と、第三ノズル開閉弁からなり、
前記ノズルホルダは、内部に鉛直方向に沿う方向に延びる第一接着剤流路を形成し、
前記ノズルは、内部に鉛直方向に沿う方向に延びる第二接着剤流路と、前記ノズル吐出部に繋がる第三接着剤流路を形成し、
前記第一状態において、
前記第一ノズル開閉弁は、前記第一ノズル弁弾性部材の弾性力によって、前記ノズルホルダに接触して前記第一接着剤流路を塞ぎ、
前記第二ノズル開閉弁は、前記第二ノズル弁弾性部材の弾性力によって、前記第二接着剤流路を塞ぎ、
前記第三ノズル開閉弁は閉じた状態で前記第三接着剤流路を塞ぎ、
前記第二状態において、
前記ノズルは、前記第一ノズル弁弾性部材の弾性力に反して前記第一ノズル開閉弁に対して相対的に前記上流側に移動し、前記第一ノズル開閉弁との間に隙間を生じて前記第一接着剤流路を開くことによって、前記接着剤が前記第二接着剤流路に流入し、
前記第二ノズル開閉弁は、前記接着剤の圧力によって前記ノズルに対して相対的に前記下流側へ移動して前記第二接着剤流路を開け、
さらに、前記接着剤の圧力によって前記第三ノズル開閉弁を押し広げることにより前記第三接着剤流路を開き、前記接着剤を前記ノズル吐出部へ供給する請求項1又は2に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項4】
前記第三ノズル開閉弁は、弾性力を有する薄膜の部材からなり、
前記第三接着剤流路の中心の位置に対応する部分にあって、開いたときに該第三接着剤流路における水平方向の幅よりも小さい開閉弁穴を備え、
前記開閉弁穴は、
前記接着剤による圧力を受けない状態である前記第一状態では、閉じた状態となって、前記第二接着剤流路から前記第三接着剤流路へ前記接着剤が流れることを停止し、
前記接着剤による圧力を受ける状態である前記第二状態では、開いた状態となって、前記第二接着剤流路から前記第三接着剤流路へ前記接着剤が流れる請求項3に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項5】
前記接着剤塗布装置は、鉛直方向において前記金型のうち該接着剤塗布装置を設置する前記上金型又は前記下金型と、前記ノズルユニットとの間にノズル弾性部材を備え、
前記接着剤塗布装置を設置する前記上金型又は前記下金型は、水平方向に沿う方向に移動可能であって鉛直方向の下側にノズルカム凹部を有するノズル用スライドカムを備え、
前記ノズル用スライドカムは、一部に前記ノズルカム凹部を形成するノズルカム係合面を有し、
前記ノズルユニットは、前記ノズル用スライドカムと係合するノズル係合部を備え、
前記上金型が鉛直方向に沿う方向の下側へ移動するとき、
前記ノズル係合部と前記ノズルカム凹部以外の前記ノズルカム係合面とが係合し、前記ノズル吐出部が前記鋼板素材を含む前記鋼板と近接する状態と、
前記ノズル係合部と前記ノズルカム凹部とが係合し、前記ノズル吐出部が前記鋼板素材を含む前記鋼板と離間する状態とを選択可能である請求項1から4のいずれかに記載の積層鋼板製造装置。
【請求項6】
前記金型は、前記鋼板の外形を打ち抜く外形上金型と外形下金型とからなる外形金型を含み、
前記接着剤は、熱硬化性であり、
前記外形下金型は、第一中心軸を中心とし、鉛直方向に沿う方向の下側に延びる鋼板案内路を備え、
前記鋼板案内路は、前記外形上金型と前記外形下金型とによって打抜いた前記鋼板を鉛直方向に沿う方向の下側へ案内し、
前記鋼板案内路の一部を形成し、前記外形下金型よりも鉛直方向の下側に、前記鋼板を加熱する鋼板整列加熱装置を備え、
前記鋼板整列加熱装置の少なくとも一部は、前記鋼板に接触して加熱すると共に、前記鋼板案内路において前記鋼板を積層方向に整列し、
前記接着剤塗布装置によって前記鋼板に塗布した前記接着剤は、前記鋼板整列加熱装置の加熱によって硬化し、鉛直方向の上下方向の少なくとも一方に隣接する前記鋼板と互いに接着して積層鋼板を形成する請求項1から5のいずれかに記載の積層鋼板製造装置。
【請求項7】
前記鋼板整列加熱装置は、前記積層鋼板を加熱する加熱ユニットを備え、
前記加熱ユニットは、
前記鋼板案内路に対して交差する方向において、該鋼板案内路を囲うよう配置し、かつ前記第一中心軸へ向かって移動可能な複数の加熱可動部と、
前記加熱可動部を加熱する加熱部と、
前記加熱可動部を前記第一中心軸と交差する方向に移動させる可動弾性部材と、
前記加熱可動部の移動を案内する加熱可動部ホルダを備え、
前記加熱可動部ホルダは、前記外形下金型とは鉛直方向において離間し、
前記加熱可動部は、前記鋼板の外周部に対して複数の方向から接触することによって加熱し、さらに前記鋼板案内路に対する前記鋼板の位置を調整する請求項6に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項8】
前記鋼板整列加熱装置は、さらに、前記加熱ユニットの鉛直方向の下側に、前記鋼板の位置を調整する第一鋼板保持ユニットを備え、
前記加熱可動部ホルダは、前記第一鋼板保持ユニットと係合する連結穴を備え、
前記第一鋼板保持ユニットは、
前記鋼板案内路の一部を形成する鋼板保持ブロックと、
前記鋼板保持ブロックに対して、前記第一中心軸と交差する方向に移動可能な鋼板保持可動部と、
前記鋼板保持可動部に対して、前記第一中心軸への方向へ弾性力を与える鋼板保持弾性部材と、
前記連結穴に係合する連結ピンを備え、
前記鋼板保持可動部は、前記鋼板保持弾性部材の圧力によって前記積層鋼板の外周部を押圧して保持する請求項7に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項9】
前記鋼板整列加熱装置は、さらに、前記加熱ユニットの鉛直方向の下側に、前記鋼板を保持して落下を規制する第二鋼板保持ユニットを備え、
前記加熱可動部ホルダは、前記第二鋼板保持ユニットと係合する連結穴を備え、
前記第二鋼板保持ユニットは、
前記鋼板案内路の一部を形成する鋼板保持ブロックと、
前記鋼板保持ブロックにあって、前記鋼板又は前記積層鋼板に接触する接触凸部と、
前記連結穴に係合する連結ピンを備え、
前記接触凸部は、前記積層鋼板の外周部に接触して保持する請求項7に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項10】
前記外形下金型の鉛直方向における下端部の一部と、前記鋼板整列加熱装置の前記加熱可動部ホルダの上端部の一部は、前記外形下金型に第一凸形状部を形成し、前記加熱可動部ホルダに前記第一凸形状部に対応する第一凹形状部を形成し、
前記加熱可動部ホルダの鉛直方向における下端部の一部と、前記鋼板保持ブロックの上端部の一部は、前記鋼板保持ブロックに第二凸形状部を形成し、前記加熱可動部ホルダに前記第二凸形状部に対応する第二凹形状部を形成し、
前記外形下金型と前記加熱可動部ホルダとは、前記第一凸形状部と前記第一凹形状部とが、前記第一中心軸と交差する方向にのみ接触して係合し、かつ、鉛直方向において前記外形下金型の下端を形成する下側面と前記加熱可動部ホルダの上端を形成する上側面とは離間し、前記鋼板案内路のうち前記外形下金型が形成する部分と前記加熱可動部ホルダが形成する部分との中心位置が、前記第一中心軸と一致し、
前記加熱可動部ホルダと前記鋼板保持ブロックとは、前記第二凸形状部と前記第二凹形状部とが接触して係合し、前記鋼板案内路のうち前記加熱可動部ホルダが形成する部分と前記鋼板保持ブロックが形成する部分との中心位置が、前記第一中心軸と一致する請求項8又は9に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項11】
前記連結ピンは、前記第一中心軸を中心とする同一の円周上に複数あり、
前記連結穴は、
前記連結ピンの位置に対応して形成し、
前記第一中心軸と交差する方向における長さは、前記連結ピンの直径以上であり、
前記第一中心軸を中心とする円周方向の幅と前記連結ピンの直径との関係は、円周方向の幅が前記連結ピンの直径以上であって、かつ、互いの間の隙間は、隙間嵌めのうちの精転合程度の関係であり、
前記加熱部が前記加熱可動部を加熱することで、前記加熱可動部ホルダが熱膨張すると、
前記連結穴は、前記第一中心軸と交差する方向において、前記第一中心軸の側の端部と、前記第一中心軸を中心とする円周方向とにおいて、前記連結ピンと係合し、
前記鋼板保持ブロックと前記加熱可動部ホルダとは、前記第一中心軸を中心として、前記第一中心軸と交差する方向と、前記第一中心軸を中心とする円周方向とにおいて互いの動きを防止する請求項8から10のいずれかに記載の積層鋼板製造装置。
【請求項12】
前記連結穴は、
前記第一中心軸と交差する方向において、
前記第一中心軸の側の端部が、前記連結ピンの半径以上の半径で形成した円弧形状であり、前記第一中心軸から遠ざかるにつれて円周方向の幅が広くなる開口である請求項8から11のいずれかに記載の積層鋼板製造装置。
【請求項13】
前記下金型は、鉛直方向において、前記鋼板整列加熱装置よりも上側に冷却装置を備え、
前記冷却装置は、
前記鋼板案内路の一部を形成する冷却案内路と、
前記冷却案内路の外周側に固定する内側冷却部と、
前記内側冷却部の外周側にあって、前記下金型に直接的又は間接的に固定する外側冷却部と、
前記内側冷却部と前記外側冷却部との間に形成する冷却剤循環部と、
前記冷却剤循環部へ冷却剤を供給する冷却剤供給部を備え、
前記冷却剤は、前記内側冷却部の外周上を循環可能な請求項6から12のいずれかに記載の積層鋼板製造装置。
【請求項14】
前記冷却装置は、さらに、
前記外側冷却部に第一開口部と、ドレン樋を備え、
前記下金型に直接的又は間接的に固定する外側冷却部固定台を備え、
前記外側冷却部は、前記外側冷却部固定台に固定し、
前記外側冷却部固定台は、第二開口部を形成し、
前記冷却剤循環部は、前記第一開口部及び前記ドレン樋を除いて閉じた空間を形成し、
前記冷却剤供給部は、冷却剤冷却部と、該冷却剤冷却部に繋がって前記冷却剤を供給する少なくとも二つの冷却管を備え、
少なくとも一つの前記冷却管は、前記第一開口部に通して前記冷却剤循環部に連結し、他の前記冷却管は、前記第二開口部に通して前記冷却剤循環部に連結し、
前記冷却案内路に接触する前記内側冷却部を冷却して温度上昇した前記冷却剤は、前記ドレン樋から前記第二開口部を通って前記冷却剤冷却部にて温度を低下させ、さらに前記冷却管を介して前記冷却剤循環部へ供給することによって循環可能であり、
前記冷却剤は、前記内側冷却部の外周上を循環可能な請求項13に記載の積層鋼板製造装置。
【請求項15】
前記下金型は、
前記内側冷却部における鉛直方向の上端部において前記冷却剤循環部に接続し、円周方向に、前記冷却剤循環部における前記内側冷却部と前記外側冷却部との間の隙間よりも大きな隙間を有する溝状の第一冷却剤溜と、
前記外側冷却部固定台において、前記内側冷却部の鉛直方向の下側にあって、前記冷却剤循環部と連続し、前記内側冷却部と前記外側冷却部との間の隙間よりも大きな隙間を有する溝状の第二冷却剤溜を備える請求項14に記載の積層鋼板製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等に用いる積層鋼板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機装置の電機子を構成する積層鋼板(鉄心)を製造する装置において、接着剤塗布装置について種々の提案があった。例えば、特許文献1による概要を説明すると以下のようである。積層鋼板の製造装置が、上金型と下金型により、間欠移送するフープ材から鋼板を打ち抜く順送り金型装置を備える。下金型内に設けられ、フープ材下面の対応部位に接着剤を塗布する接着剤塗布装置を備える。接着剤塗布装置は、接着剤塗布面に向けて接着剤を吐出する吐出孔を有する接着剤吐出部と、接着剤吐出部に対して常時所定圧力で接着剤を供給する接着剤供給部とを有する。上金型が降下してストリッパプレートでフープ材を下型上面へ当接させたときに接着剤をフープ材に転写させる構成である。
【0003】
これによれば、接着剤塗布装置は、常時所定圧力で接着剤を供給する接着剤供給部を有し、上金型が降下するときに接着剤をフープ材に転写させるので、接着剤によって鋼板を接着した積層鋼板を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の接着剤塗布装置は、接着剤吐出部から常時所定圧力で接着剤が供給される。接着剤塗布装置が、フープ材或いは鋼板に接触すると接着剤が塗布される。すなわち、上金型が降下してフープ材或いは鋼板に接触すると接着剤が塗布されてしまう。よって、従来の接着剤塗布装置は、定量の接着剤を塗布する制御ができず、接着剤吐出部、或いはフープ材、鋼板に接着剤があふれ続け、接着剤による汚染が広がるという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、従来の課題を解消するために、接着剤が吐出する状態と吐出しない状態とを形成可能な、接着剤塗布装置を備えた積層鋼板製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る積層鋼板製造装置は、鋼板素材から所定の形状に打抜き形成する鋼板(17)を積層して、積層鋼板(14)を製造する製造装置において、前記鋼板素材から前記鋼板を打ち抜くため、対となる上金型(2)と下金型(3)からなる金型(10)を備え、前記上金型と前記下金型とは、鉛直方向に沿って相対的に移動可能であり、前記上金型及び前記下金型のうちの少なくとも一方に、前記鋼板素材を含めた前記鋼板に接着剤(45)を塗布する接着剤塗布装置(4)と、前記接着剤塗布装置を作動させる作動部材(210、2、513)を備え、前記接着剤塗布装置は、前記接着剤を吐出するノズルユニット(40)と、前記接着剤を貯留する接着剤貯留部(46)と、前記接着剤貯留部から前記ノズルユニットへ前記接着剤を供給する供給管(47)を備え、前記ノズルユニットは、前記接着剤を前記鋼板に吐出するノズル吐出部(140)を形成するノズル(41)と、前記接着剤貯留部の側を上流側とし、前記ノズルユニットの側を下流側とするとき、前記ノズルの内部にあって、前記接着剤を前記上流側から前記下流側へ選択的に供給するためのノズル開閉弁(42)と、前記ノズルを鉛直方向に沿う方向に移動可能に支持するノズルホルダ(43)を備え、前記ノズルユニットは、前記作動部材によって、前記ノズルが前記ノズルホルダに対して相対的に前記下流側に位置する第一状態と、前記ノズルが前記ノズルホルダに対して相対的に前記上流側に位置する第二状態とを形成可能であり、前記ノズルは、前記作動部材が一方に作動すると、前記ノズルが前記ノズルホルダに対して相対的に前記下流側に位置する前記第一状態で、前記ノズル吐出部が前記鋼板素材を含む前記鋼板に接触し、さらに前記作動部材が一方に作動すると、前記ノズルは、前記ノズルホルダに対して相対的に前記上流側へ移動して前記第二状態を形成し、前記ノズル開閉弁が開いて、前記ノズルユニットの内部に前記接着剤の流路を形成し、前記作動部材が他方に作動すると、前記ノズルホルダに対して相対的に前記下流側へ移動して前記第一状態を形成し、前記ノズル開閉弁が閉じて、前記ノズルユニットの内部において前記接着剤の流路を遮断する。
【0008】
これによれば、積層鋼板製造装置に備える接着剤塗布装置は、作動部材の作動によって、ノズルがノズルホルダに対して相対的に下流側に位置する第一状態と、ノズルホルダに対して相対的に上流側に位置する第二状態とを形成する。ノズル開閉弁は、第一状態において閉じた状態となって接着剤の流路を遮断し、第二状態において開いた状態となって接着剤の流路を形成する。接着剤塗布装置は、ノズル吐出部から接着剤を吐出する状態と吐出しない状態とを形成可能である。よって、接着剤を塗布するタイミングと塗布量とを制御可能であり、定量塗布することができる。
【0009】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記接着剤塗布装置が前記上金型にあるとき、前記作動部材は、前記上金型か、又は前記上金型に備える水平方向に沿う方向に移動可能な作動スライドカム(513)であり、前記接着剤塗布装置が前記下金型にあるとき、前記作動部材は、前記下金型に備える水平方向に沿う方向に移動可能な前記作動スライドカムであり、前記接着剤塗布装置が前記上金型にあって、前記作動部材が前記上金型のとき、前記接着剤塗布装置は前記上金型が鉛直方向に沿う方向へ移動することに伴って、前記第一状態と前記第二状態とを形成し、前記作動部材が前記作動スライドカムのとき、前記作動スライドカムを水平方向に沿う方向へ移動させることによって、前記第一状態と前記第二状態とを形成してもよい。
【0010】
この場合、接着剤塗布装置が上金型にあるときと下金型にあるときとで、それぞれに対応する作動部材を備えるので、いずれに備える場合でも第一状態と第二状態とを形成可能である。よって、接着剤塗布装置は、上金型及び下金型のいずれに設置する場合でも鋼板素材を含めた鋼板に接着剤を塗布して積層鋼板を製造することができる。
【0011】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記ノズル開閉弁が、第一ノズル開閉弁(142)と、第一ノズル弁弾性部材(143)と、第二ノズル開閉弁(144)と、第二ノズル弁弾性部材(145)と、第三ノズル開閉弁(146)からなり、前記ノズルホルダは、内部に鉛直方向に沿う方向に延びる第一接着剤流路(148)を形成し、前記ノズルは、内部に鉛直方向に沿う方向に延びる第二接着剤流路(147)と、前記ノズル吐出部に繋がる第三接着剤流路(150)を形成し、前記第一状態において、前記第一ノズル開閉弁は、前記第一ノズル弁弾性部材の弾性力によって、前記ノズルホルダに接触して前記第一接着剤流路を塞ぎ、前記第二ノズル開閉弁は、前記第二ノズル弁弾性部材の弾性力によって、前記第二接着剤流路を塞ぎ、前記第三ノズル開閉弁は閉じた状態で前記第三接着剤流路を塞ぎ、前記第二状態において、前記ノズルは、前記第一ノズル弁弾性部材の弾性力に反して前記第一ノズル開閉弁に対して相対的に前記上流側に移動し、前記第一ノズル開閉弁との間に隙間を生じて前記第一接着剤流路を開くことによって、前記接着剤が前記第二接着剤流路に流入し、前記第二ノズル開閉弁は、前記接着剤の圧力によって前記ノズルに対して相対的に前記下流側へ移動して前記第二接着剤流路を開け、さらに、前記接着剤の圧力によって前記第三ノズル開閉弁を押し広げることにより前記第三接着剤流路を開き、前記接着剤を前記ノズル吐出部へ供給してもよい。
【0012】
この場合、ノズルホルダは、第一接着剤流路を形成し、ノズルは、第二接着剤流路と、ノズル吐出部に繋がる第三接着剤流路を形成する。ノズル開閉弁は、第一ノズル開閉弁と、第一ノズル弁弾性部材と、第二ノズル開閉弁と、第二ノズル弁弾性部材と、第三ノズル開閉弁からなる。以上の構成による作用によって、第一状態と第二状態とを形成するので、接着剤を塗布する状態と、接着剤の吐出を停止する状態とをより確実に形成することができる。
【0013】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記第三ノズル開閉弁が、弾性力を有する薄膜の部材からなり、前記第三接着剤流路の中心の位置に対応する部分にあって、開いたときに該第三接着剤流路における水平方向の幅よりも小さい開閉弁穴(346)を備え、前記開閉弁穴は、前記接着剤による圧力を受けない状態である前記第一状態では、閉じた状態となって、前記第二接着剤流路から前記第三接着剤流路へ前記接着剤が流れることを停止し、前記接着剤による圧力を受ける状態である前記第二状態では、開いた状態となって、前記第二接着剤流路から前記第三接着剤流路へ前記接着剤が流れてもよい。
【0014】
この場合、第三ノズル開閉弁は、薄膜の伸縮性を有する材質なので、接着剤による圧力によって開閉が可能となる。よって、接着剤を塗布する状態と、接着剤の吐出を停止する状態とをさらにより確実に形成することができる。
【0015】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記接着剤塗布装置が、鉛直方向において前記金型のうち該接着剤塗布装置を設置する前記上金型又は前記下金型と、前記ノズルユニットとの間にノズル弾性部材(44)を備え、前記接着剤塗布装置を設置する前記上金型又は前記下金型は、水平方向に沿う方向に移動可能であって鉛直方向の下側にノズルカム凹部(245)を有するノズル用スライドカム(49)を備え、前記ノズル用スライドカムは、一部に前記ノズルカム凹部を形成するノズルカム係合面(244)を有し、前記ノズルユニットは、前記ノズル用スライドカムと係合するノズル係合部(241)を備え、前記上金型が鉛直方向に沿う方向の下側へ移動するとき、前記ノズル係合部と前記ノズルカム凹部以外の前記ノズルカム係合面とが係合し、前記ノズル吐出部が前記鋼板素材を含む前記鋼板と近接する状態と、前記ノズル係合部と前記ノズルカム凹部とが係合し、前記ノズル吐出部が前記鋼板素材を含む前記鋼板と離間する状態とを選択可能でもよい。
【0016】
この場合、上金型が鉛直方向の下側へ移動して外形上金型と外形下金型とによって鋼板を打ち抜くとき、ノズル係合部が、ノズルカム係合面と係合するか或いはノズルカム凹部と係合するかによってノズル吐出部の位置を選択可能である。よって、上金型が鉛直方向の下側に移動して鋼板の外形を打ち抜くときに、鋼板に接着剤を塗布するか或いは塗布を停止するかを選択することができる。
【0017】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記金型が、前記鋼板の外形を打ち抜く外形上金型(20)と外形下金型(30)とからなる外形金型(11)を含み、前記接着剤は、熱硬化性であり、前記外形下金型は、第一中心軸(C1)を中心とし、鉛直方向に沿う方向の下側に延びる鋼板案内路(36)を備え、前記鋼板案内路は、前記外形上金型と前記外形下金型とによって打抜いた前記鋼板を鉛直方向に沿う方向の下側へ案内し、前記鋼板案内路の一部を形成し、前記外形下金型よりも鉛直方向の下側に、前記鋼板を加熱する鋼板整列加熱装置(9)を備え、前記鋼板整列加熱装置の少なくとも一部は、前記鋼板に接触して加熱すると共に、前記鋼板案内路において前記鋼板を積層方向に整列し、前記接着剤塗布装置によって前記鋼板に塗布した前記接着剤は、前記鋼板整列加熱装置の加熱によって硬化し、鉛直方向の上下方向の少なくとも一方に隣接する前記鋼板と互いに接着して積層鋼板(14)を形成してもよい。
【0018】
この場合、鋼板整列加熱装置は鋼板に接触することで、鋼板を加熱して接着剤を硬化して接着する機能と、鋼板案内路において鋼板を積層方向に整列する機能とを兼ね備えることができる。よって、鋼板整列加熱装置は、鋼板を積層方向に整列した状態で接着して積層鋼板を形成できる。
【0019】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記鋼板整列加熱装置が、前記積層鋼板を加熱する加熱ユニット(7)を備え、前記加熱ユニットは、前記鋼板案内路に対して交差する方向において、該鋼板案内路を囲うよう配置し、かつ前記第一中心軸へ向かって移動可能な複数の加熱可動部(72)と、前記加熱可動部を加熱する加熱部(74)と、前記加熱可動部を前記第一中心軸と交差する方向に移動させる可動弾性部材(73)と、前記加熱可動部の移動を案内する加熱可動部ホルダ(71)を備え、前記加熱可動部ホルダは、前記外形下金型とは鉛直方向において離間し、前記加熱可動部は、前記鋼板の外周部に対して複数の方向から接触することによって加熱し、さらに前記鋼板案内路に対する前記鋼板の位置を調整してもよい。
【0020】
この場合、鋼板整列加熱装置は、加熱可動部が鋼板案内路を囲うよう複数配置するので、鋼板を均等に加熱することができる。よって、積層鋼板における接着剤を均等に硬化させ、接着力を強固にできる。また、加熱可動部ホルダは外形下金型とは鉛直方向において離間するので、外形下金型への伝熱を低減できる。
【0021】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記鋼板整列加熱装置が、さらに、前記加熱ユニットの鉛直方向の下側に、前記鋼板の位置を調整する第一鋼板保持ユニット(8)を備え、前記加熱可動部ホルダは、前記第一鋼板保持ユニットと係合する連結穴(76)を備え、前記第一鋼板保持ユニットは、前記鋼板案内路の一部を形成する鋼板保持ブロック(81)と、前記鋼板保持ブロックに対して、前記第一中心軸と交差する方向に移動可能な鋼板保持可動部(82)と、前記鋼板保持可動部に対して、前記第一中心軸への方向へ弾性力を与える鋼板保持弾性部材(83)と、前記連結穴に係合する連結ピン(85)を備え、前記鋼板保持可動部は、前記鋼板保持弾性部材の圧力によって前記積層鋼板の外周部を押圧して保持してもよい。
【0022】
この場合、第一鋼板保持ユニットの鋼板保持可動部が積層鋼板の外周部に接触して保持するので、鋼板に比べて重量が増す積層鋼板が落下することを防止できる。また、鋼板保持ブロックに形成する加熱装置プーリが、連結ピンと連結穴を介して加熱可動部ホルダを回転させるので、鋼板保持可動部と加熱可動部ホルダとを同期して回転させることができる。
【0023】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記鋼板整列加熱装置が、さらに、前記加熱ユニットの鉛直方向の下側に、前記鋼板を保持して落下を規制する第二鋼板保持ユニット(108)を備え、前記加熱可動部ホルダは、前記第二鋼板保持ユニットと係合する連結穴(76)を備え、前記第二鋼板保持ユニットは、前記鋼板案内路の一部を形成する鋼板保持ブロック(88)と、前記鋼板保持ブロックにあって、前記鋼板又は前記積層鋼板に接触する接触凸部(89)と、前記連結穴に係合する連結ピン(85)を備え、前記接触凸部は、前記積層鋼板の外周部に接触して保持してもよい。
【0024】
この場合、第二鋼板保持ユニットの鋼板保持ブロックにおける接触凸部が、積層鋼板の外周部に接触して保持するので、鋼板に比べて重量が増す積層鋼板が落下することを防止できる。また、鋼板保持ブロックに形成する加熱装置プーリが、連結ピンと連結穴を介して加熱可動部ホルダを回転させるので、鋼板保持可動部と加熱可動部ホルダとを同期して回転させることができる。
【0025】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記外形下金型の鉛直方向における下端部の一部と、前記鋼板整列加熱装置の前記加熱可動部ホルダの上端部の一部は、前記外形下金型に第一凸形状部(248)を形成し、前記加熱可動部ホルダに前記第一凸形状部に対応する第一凹形状部(249)を形成し、前記加熱可動部ホルダの鉛直方向における下端部の一部と、前記鋼板保持ブロックの上端部の一部は、前記鋼板保持ブロックに第二凸形状部(258)を形成し、前記加熱可動部ホルダに前記第二凸形状部に対応する第二凹形状部(259)を形成し、前記外形下金型と前記加熱可動部ホルダとは、前記第一凸形状部と前記第一凹形状部とが、前記第一中心軸と交差する方向にのみ接触して係合し、かつ、鉛直方向において前記外形下金型の下端を形成する下側面(266)と前記加熱可動部ホルダの上端を形成する上側面(267)とは離間し、前記鋼板案内路のうち前記外形下金型が形成する部分と前記加熱可動部ホルダが形成する部分との中心位置が、前記第一中心軸と一致し、前記加熱可動部ホルダと前記鋼板保持ブロックとは、前記第二凸形状部と前記第二凹形状部とが接触して係合し、前記鋼板案内路のうち前記加熱可動部ホルダが形成する部分と前記鋼板保持ブロックが形成する部分との中心位置が、前記第一中心軸と一致してもよい。
【0026】
この場合、外形下金型と加熱可動部ホルダとは、第一凸形状部と第一凹形状部のみが接触して係合し、かつ、鉛直方向において外形下金型の下端を形成する下側面と加熱可動部ホルダの上端を形成する上側面とは離間する。鋼板案内路のうち外形下金型が形成する部分と加熱可動部ホルダが形成する部分との中心位置が、第一中心軸と一致する。よって、外形下金型と加熱可動部ホルダとの鋼板案内路の中心位置を一致させることができる。外形下金型と加熱可動部ホルダとは、第一凸形状部と第一凹形状部のみが接触して係合するので、加熱可動部ホルダから外形下金型への伝熱を限定することができる。
【0027】
また、加熱可動部ホルダと鋼板保持ブロックとは、第二凸形状部と第二凹形状部とが接触して係合し、鋼板案内路のうち加熱可動部ホルダが形成する部分と鋼板保持ブロックが形成する部分との中心位置が、第一中心軸と一致する。よって、鉛直方向において外形下金型から鋼板保持ブロックに繋がる鋼板案内路の中心位置を一致させることができる。
【0028】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記連結ピンが、前記第一中心軸を中心とする同一の円周上に複数あり、前記連結穴は、前記連結ピンの位置に対応して形成し、前記第一中心軸と交差する方向における長さ(77)は、前記連結ピンの直径以上であり、前記第一中心軸を中心とする円周方向の幅(78)と前記連結ピンの直径との関係は、前記円周方向の幅が前記連結ピンの直径以上であって、かつ、互いの間の隙間は、隙間嵌めのうちの精転合程度の関係であり、前記加熱部が前記加熱可動部を加熱することで、前記加熱可動部ホルダが熱膨張すると、前記連結穴は、前記第一中心軸と交差する方向において、前記第一中心軸の側の端部(86)と、前記第一中心軸を中心とする円周方向とにおいて、前記連結ピンと係合し、前記鋼板保持ブロックと前記加熱可動部ホルダとは、前記第一中心軸を中心として、前記第一中心軸と交差する方向と、前記第一中心軸を中心とする円周方向とにおいて互いの動きを防止してもよい。
【0029】
この場合、加熱可動部ホルダが熱膨張すると、連結ピンと連結穴とが係合し、第一中心軸を中心として、前記第一中心軸と交差する方向と、前記第一中心軸を中心とする円周方向において互いの動きを防止する。よって、加熱可動部ホルダと鋼板保持ブロックとが第一中心軸を中心として互いの中心位置がより確実に一致した状態で一体化するので、熱膨張するときに互いの中心位置が一致した状態を維持する。
【0030】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記連結穴が、前記第一中心軸と交差する方向において、前記第一中心軸の側の端部が、前記連結ピンの半径(79)以上の半径で形成した円弧形状であり、前記第一中心軸から遠ざかるにつれて円周方向の幅が広くなる開口でもよい。
この場合、加熱可動部ホルダが熱膨張すると、連結ピンは連結穴の円弧形状の部分においてより確実に係合するので、加熱可動部ホルダと鋼板保持ブロックとの中心位置が一致した状態を維持する。
【0031】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記下金型が、鉛直方向において、前記鋼板整列加熱装置よりも上側に冷却装置(6)を備え、前記冷却装置は、前記鋼板案内路の一部を形成する冷却案内路(35)と、前記冷却案内路の外周側に固定する内側冷却部(61)と、前記内側冷却部の外周側にあって、前記下金型に直接的又は間接的に固定する外側冷却部(62)と、前記内側冷却部と前記外側冷却部との間に形成する冷却剤循環部(64)と、前記冷却剤循環部へ冷却剤(260)を供給する冷却剤供給部(65)を備え、前記冷却剤は、前記内側冷却部の外周上を循環可能でもよい。
【0032】
この場合、冷却装置は、外形下金型と同期回転する内側冷却部と、外側冷却部固定台に固定する外側冷却部との間に冷却剤循環部を形成する。よって、冷却剤は、冷却剤循環部を円周方向に循環するので、円周方向の全体に対して内側冷却部を冷却することができる。さらに、内側冷却部と接触する外形下金型を冷却することができる。
【0033】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記冷却装置が、さらに、前記外側冷却部に第一開口部(66)と、ドレン樋(96、97)を備え、前記下金型に直接的又は間接的に固定する外側冷却部固定台(63)を備え、前記外側冷却部は、前記外側冷却部固定台に固定し、前記外側冷却部固定台は、第二開口部(67)を形成し、前記冷却剤循環部は、前記第一開口部及び前記ドレン樋を除いて閉じた空間を形成し、前記冷却剤供給部は、冷却剤冷却部(69)と、該冷却剤冷却部に繋がって前記冷却剤を供給する少なくとも二つの冷却管(68)を備え、少なくとも一つの前記冷却管は、前記第一開口部に通して前記冷却剤循環部に連結し、他の前記冷却管は、前記第二開口部に通して前記冷却剤循環部に連結し、前記冷却案内路に接触する前記内側冷却部を冷却して温度上昇した前記冷却剤は、前記ドレン樋から前記第二開口部を通って前記冷却剤冷却部にて温度を低下させ、さらに前記冷却管を介して前記冷却剤循環部へ供給することによって循環可能であり、前記冷却剤は、前記内側冷却部の外周上を循環可能でもよい。
【0034】
この場合、冷却装置は冷却剤冷却部を備え、温度上昇した冷却剤を冷却し、冷却管を通じて冷却剤循環部へ循環させることができる。よって、冷却装置は、継続的に冷却案内路を冷却する効果を奏することができる。
【0035】
また、前記積層鋼板製造装置は、前記下金型が、前記内側冷却部における鉛直方向の上端部において前記冷却剤循環部に接続し、円周方向に、前記冷却剤循環部における前記内側冷却部と前記外側冷却部との間の隙間よりも大きな隙間を有する溝状の第一冷却剤溜(263)と、前記外側冷却部固定台において、前記内側冷却部の鉛直方向の下側にあって、前記冷却剤循環部と連続し、前記内側冷却部と前記外側冷却部との間の隙間よりも大きな隙間を有する溝状の第二冷却剤溜(264)を備えてもよい。
【0036】
この場合、冷却装置は、冷却剤循環部に流入する冷却剤が冷却剤循環部の鉛直方向における上側及び下側へ広がるとき、冷却剤は第一冷却剤溜と第二冷却剤溜とに溜まる。よって、冷却剤が冷却装置の外部へ流出することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】積層鋼板製造装置100において、帯状鋼板を含む鋼板素材16の移送方向に沿って切断した断面図である。
【
図2】積層鋼板製造装置100において、
図1の断面I-Iを示す断面図であり、上金型が上死点にある状態を示す。
【
図3】積層鋼板製造装置100において、
図1の断面I-Iを示す断面図であり、上金型が下死点にある状態を示す。
【
図4】積層鋼板製造装置100において、
図2における上金型2(上死点)の詳細図である。
【
図5】積層鋼板製造装置100において、
図3における上金型2(下死点)の詳細図である。
【
図6】積層鋼板製造装置100において、
図2及び
図3における外形下金型30の詳細図である。
【
図7】積層鋼板製造装置100において、
図2における回転駆動装置5(上死点)の詳細図である。
【
図8】積層鋼板製造装置100において、
図3における回転駆動装置5(下死点)の詳細図である。
【
図9】積層鋼板製造装置100において、
図7、
図8における回転駆動装置5の要部を比較した詳細図であり、(a)は上金型2が上死点にある状態を示し、(b)は上金型2が下死点にある状態を示す。
【
図10】積層鋼板製造装置200を示す図であり、積層鋼板製造装置100における
図3に相当する図である。
【
図11】
図10における回転駆動装置5の駆動軸弾性部材256の周辺を説明する詳細図である。
【
図12】積層鋼板製造装置300を示す図であり、積層鋼板製造装置100における
図3に相当する図である。
【
図13】
図12における上金型駆動装置15の要部を示した図であり、(a)上金型2が上死点にある状態と、(b)上金型2が下死点にある状態とを比較した図である。
【
図14】積層鋼板製造装置400を示す図であり、積層鋼板製造装置100における
図3に相当する図である。
【
図15】
図14における回転駆動装置5の駆動軸弾性部材256の周辺を説明する詳細図である。
【
図16】積層鋼板製造装置500を示す図であり、積層鋼板製造装置100における
図1に相当する図であり、外形上金型20が回転せず、外形下金型30のみが回転する例を示す。
【
図18】接着剤塗布装置4におけるノズルユニット40の要部詳細図であり、接着剤45を吐出しない第一状態を示す。
【
図19】接着剤塗布装置4におけるノズルユニット40の要部詳細図であり、接着剤45を吐出する第二状態を示す。
【
図20】
図19におけるノズル吐出部140周辺の詳細図である。
【
図21】積層鋼板製造装置100において、
図5の状態に対して外形金型11が回転不良のときの状態を示す詳細図である。
【
図22】
図21におけるノズル吐出部140周辺の詳細図である。
【
図23】接着剤塗布装置4において、上金型2を下金型3に向かって押下するときに、接着剤45を吐出しないようにする構成の説明図である。
【
図24】積層鋼板製造装置100において、加熱ユニット7の第一の例を示す平面図である。
【
図25】積層鋼板製造装置100において、加熱ユニット7の第二の例を示す平面図である。
【
図26】積層鋼板製造装置100において、第一鋼板保持ユニット8を示す平面図である。
【
図27】
図24から
図26までにおける断面II―IIと断面III-IIIとを合わせて示した断面図である。
【
図28】
図24及び
図25における、連結穴76と連結ピン85との関係の一例を、加熱可動部ホルダ71が熱膨張する前後について比較した図であり、(a)は熱膨張する前の状態で、(b)は熱膨張したときの状態を示す。
【
図29】積層鋼板製造装置100において、第二鋼板保持ユニット108を示す平面図である。
【
図31】冷却装置6の第一の例を示す断面図である。
【
図32】冷却装置6の第二の例を示す平面方向の断面図であり、鉛直方向の略中心位置の断面図である(
図33の平面方向の中心軸C3における断面)。
【
図33】
図32における、冷却装置6の第二の例を示す断面図である。
【
図34】鋼板17を制作する工程を説明した図であり、鋼板17が所定角度θ回転すると、回転前に比べて相対的に外形形状が異なる場合を示し、鋼板17を一枚打ち抜く毎に外形上金型20と外形下金型30とを所定角度θ同期回転して次の鋼板17を打ち抜く場合を示す。
【
図35】鋼板17を制作する工程を説明した図であり、鋼板17が所定角度θ回転する回転前後において相対的に外形形状が同一となる点対称の場合を示し、鋼板17を打ち抜く毎に外形下金型のみを所定角度θ回転させた後に次の鋼板17を打ち抜く場合を示す。
【
図36】積層鋼板製造装置100等の制御装置90を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照し、本発明を具現化した積層鋼板製造装置、及び積層鋼板製造方法を説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いるものである。図面に記載する装置の構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0039】
<積層鋼板製造装置100から積層鋼板製造装置400までに共通の金型構成>
まず、本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置のうち、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第四実施形態の積層鋼板製造装置400までに共通の構成を説明する。
図1から
図3までに示すように、積層鋼板製造装置100等は、鋼板素材16から所定の形状に打抜き形成する鋼板17を積層して、積層鋼板14を製造する製造装置である。鋼板素材16から鋼板17を打ち抜くため、対となる上金型2と下金型3からなる金型10を備える。上金型2及び下金型3は、鉛直方向に沿って相対的に移動可能である。
【0040】
金型10は、鋼板17の外形を打ち抜く外形上金型20と外形下金型30とからなる外形金型11を含む。
図2は、上金型2が下金型3に対して鉛直方向に沿う方向の上側に待機した状態(上死点)を示し、
図3は上金型2が下金型3に対して押下し鋼板17の外形を打ち抜く状態(下死点)を示す。
【0041】
外形上金型20は、上金型2に対して鉛直方向に延びる第一中心軸C1の周りに回転可能であり、外形下金型30は、下金型3に対して第一中心軸C1の周りに回転可能である。鋼板17を打ち抜き形成するとき、鋼板17を一枚打ち抜く度に、或いは、鋼板17を所定枚数打ち抜く毎に、外形上金型20と外形下金型30とをそれぞれ所定角度θの回転をさせて互いに相対的な位置を一致させた状態とし、鋼板素材16から鋼板17を打抜き、鋼板17を積層して積層鋼板14にする。
【0042】
図1に示す例では、積層鋼板製造装置100等は、いわゆる順送型のプレス金型である。鋼板素材16は帯状鋼板であり、移送装置12によって鋼板素材16を移送しながら、複数の打抜き工程によって、鋼板17を形成する。鋼板17は、複数の打抜き工程によって形成する。鋼板17のうち、外形を除く部分は補助上金型320と補助下金型330によって形成し、鋼板17の外形形状は、外形上金型20と外形下金型30によって形成する。なお、積層鋼板製造装置100等は、順送型のプレス金型ではなく、単発のプレス金型でもよい。
【0043】
詳細は後述するが、
図34及び
図35に示すように、補助金型13は第一補助金型311から第三補助金型313、又は第四補助金型314までの複数の補助金型13と、外形金型11とによって鋼板17を形成する。
【0044】
<回転可能な外形上金型20と外形下金型30の構成>
次に、
図4から
図6までを参照して、回転可能な外形上金型20と外形下金型30の構成を説明する。外形上金型20を構成する部材は、外周の少なくとも一部が第一中心軸C1を中心とする略円筒形状の外形上金型外周面29を形成する。上金型2は、外形上金型20を収容する部分が円筒状の上金型開口部127を形成する。外形上金型外周面29と上金型開口部127との間を含む、外形上金型20と上金型2とが対向する部分は、ベアリング部材28を備える。
【0045】
外形上金型20は、ベアリング部材28を介して上金型2に対して摺動回転可能である。外形下金型30を構成する部材は、外周の少なくとも一部が第一中心軸C1を中心とする略円筒形状の外形下金型外周面38を形成する。下金型3は、外形下金型30を収容する部分が円筒状の下金型開口部136を形成する。外形下金型外周面38と下金型開口部136との間を含む、外形下金型30と下金型3とが対向する部分は、ベアリング部材28を備える。外形下金型30は、ベアリング部材28を介して下金型3に対して摺動回転可能である。
【0046】
ベアリング部材28は、例としてボールリテーナーベアリングである。ボールリテーナーベアリングは、ボールベアリングを保持具によって保持する構成であり、本発明における外形上金型20と上金型2との間、及び外形下金型30と下金型3との間を摺動回転させるのに適している。
【0047】
<外形上金型20の詳細説明>
次に、
図4から
図6までを参照して、外形上金型20の構成を詳細に説明する。外形上金型20における外形パンチ21と、外形下金型30における外形抜きダイ31は、各打抜き工程の間の期間内で、同期して回転させる構成である。すなわち、外形上金型20は、外形パンチ21及び連結する全ての部材が同期して回転する構成である。外形下金型30は、外形抜きダイ31及び連結する全ての部材が同期して回転する構成である。
【0048】
外形上金型20において、外形パンチ21をスムーズに回転させるため以下の構成である。鉛直方向の上側から見て、外形上金型20の外形回転パンチヘッド23は、外形上金型外周面29として円筒状のシリンダー形状であり、上金型2の上型サブプレート122の内周は、外形回転パンチヘッド23に対応した円筒形状の上金型開口部127を形成する。外形回転パンチヘッド23と上型サブプレート122との間はベアリング部材28としてのボールリテーナーベアリングを備え、外形回転パンチヘッド23がスムーズに回転する。ボールリテーナーベアリングの組み立て公差はマイナス圧入公差で組み立てる。以下に記載するボールリテーナーベアリングも同様である。
【0049】
外形上金型20において、外形回転パンチヘッド23の下側は外形上型プーリ24が接続して、外形上型プーリ24が回転すると外形回転パンチヘッド23が回転する。外形上型プーリ24の下側は回転パンチプレート27を結合し、回転パンチプレート27の内周側に外形パンチ21を結合する。回転パンチプレート27の外周は、外形回転パンチヘッド23と同様に、外形上金型外周面29として円筒状のシリンダー形状である。上金型2の第一固定パンチプレート121の内周は、回転パンチプレート27に対応した円筒形状の上金型開口部127を形成する。回転パンチプレート27の下側は、上金型2に形成する第二固定パンチプレート129によって支持する。回転パンチプレート27と第一固定パンチプレート121及び第二固定パンチプレート129との間は、ベアリング部材28としてボールリテーナーベアリングを備える。
【0050】
外形上金型20は、回転パンチプレート27の下側に回転ストリッパ22を形成する。回転ストリッパ22は、回転ストリッパホルダ226と回転ストリッパプレート227からなる。回転ストリッパプレート227は回転ストリッパホルダ226に結合して一体的に回転する。回転ストリッパ22と外形パンチ21とは鉛直方向に沿う方向に互いに移動可能である。回転ストリッパ22は、回転パンチプレート27との間にストリッパ弾性部材220を備える。
【0051】
回転ストリッパプレート227は、ストリッパ弾性部材220によって鋼板17を打ち抜く前に鋼板素材16の面上に圧縮力を加え、鋼板素材16を拘束する。さらに、外形パンチ21が鋼板17を打ち抜いて貫通した後、外形パンチ21が鋼板17から鉛直方向の上側に抜け出るまで鋼板17に圧力をかけて保持する状態を維持する。回転ストリッパプレート227は、外形パンチ21が、鋼板17から鉛直方向の上側に抜け出てから順次鋼板17の表面から離れる。回転ストリッパ22は、固定ストリッパホルダ128との間にベアリング部材28としてボールリテーナーベアリングを備え、回転可能である。
【0052】
なお、
図4に示すように、回転ストリッパ22は、補助プレート130とボルトによって固定ストリッパホルダ128に固定している。
図2に示すように、ストリッパボルト111が、第一固定パンチプレート121を貫通して固定ストリッパホルダ128を締結する。ストリッパボルト111は、ストリッパボルト弾性部材112を介して上金型2に接続する。第一固定パンチプレート121は、ストリッパボルト111に対して鉛直方向に沿う方向に相対的に移動可能である。ストリッパボルト111及びストリッパボルト弾性部材112は複数箇所に備え、上金型2に対して固定ストリッパホルダ128の鉛直方向の位置を弾性的に支持する。
【0053】
<外形下金型30の詳細説明>
次に、
図6を参照して、外形下金型30の構成を詳細に説明する。外形下金型30は、鉛直方向に沿う方向の上側から下側に向かって以下の構成要素からなる。最も上側が、外形抜きダイ31、次に第一スクイズリング34を形成し、ダイホルダ32が外形抜きダイ31と第一スクイズリング34との外周を覆う。ダイホルダ32の下側は、ボルトによって冷却案内路35を締結する。冷却案内路35の上側の外周に、外形下型プーリ33を形成する。第一スクイズリング34と冷却案内路35は、鋼板案内路36の一部を形成する。また、冷却案内路35は、後述する冷却装置6の一部を形成する。
【0054】
後述するように、接着剤塗布装置4によって鋼板17又は鋼板素材16に接着剤45を塗布する。第一スクイズリング34と冷却案内路35は、鋼板17の外周に対して側圧を加える。さらに、鋼板17は、外形を打ち抜く際に発生する鉛直方向に沿う方向の下側へ向かう圧力を受けて積層する。積層する鋼板17の間の接着剤45は膜が薄くなり、マイクロメートルレベルの厚みになる。
【0055】
下金型3において、ダイホルダハウジング132がベアリング部材28としてのボールリテーナーベアリングを介してダイホルダ32の外周を覆う。また、冷却案内路ハウジング131がベアリング部材28としてのボールリテーナーベアリングを介して冷却案内路35の外周の一部を覆う。ダイホルダハウジング132と冷却案内路ハウジング131の内周は、円筒形状の下金型開口部136を形成する。ダイホルダ32と冷却案内路35の外周は、円筒状のシリンダー形状である外形下金型外周面38である。この構成により、外形下金型30は、下金型3に対して第一中心軸C1を中心に回転可能である。
【0056】
<外形上金型20及び外形下金型30の回転駆動装置5の概要説明>
次に、
図7から
図9までを参照して、外形上金型20及び外形下金型30を回転駆動する回転駆動装置5を説明する。回転駆動装置5は、外形上金型20を回転させる上金型駆動装置15と、外形下金型30を回転させる下金型駆動装置19と、上金型駆動装置15と下金型駆動装置19とを回転駆動する回転駆動源51を備える。さらに、回転駆動源51の駆動を制御する回転駆動制御装置54を備える。
【0057】
回転駆動制御装置54は、上金型2と下金型3とが鉛直方向において離間した状態で回転駆動源51を駆動させる。さらに、鋼板17を一枚打ち抜く度に、或いは、鋼板17を所定枚数打ち抜く毎に、外形上金型20と外形下金型30とを所定角度θの回転させるよう、回転駆動源51を回転制御する。詳細には、鋼板17を打ち抜く度に毎回駆動して回転させてもよいし、所定の枚数を設定し、例えば設定枚数が5枚の場合は、鋼板17を5枚打ち抜く毎に駆動して回転させてもよい。
【0058】
<各実施形態共通の金型構成と回転駆動装置が解決する課題とその効果>
以上説明したように、積層鋼板製造装置100等における各実施形態共通の金型10の構成は種々の課題を解決し、効果を奏する。
【0059】
従来の積層鋼板製造装置は、転積を行うための構成として、下型におけるダイを回転させて転積を行うものであり、上型におけるパンチは固定である。そのため、製造する鋼板単板及び積層鋼板が点対称の形状であることが条件となり、非点対称の形状は対応できないという課題がある。電機子の鉄心を構成する積層鋼板は種々の形状があり、点対称の形状であることを条件とすると、適用可能な範囲が狭くなるという課題がある。以上が金型構成の第一の課題である。
【0060】
本発明の積層鋼板製造装置100等の構成は、この課題を解決するものである。積層鋼板製造装置100等は、
図2、
図3等に示す構成によって、鋼板17を形成するとき、外形上金型20と外形下金型30は、それぞれ所定角度θ回転をさせて互いに相対的な位置を一致させた状態で鋼板素材16を打抜き、鋼板17を積層することができる。よって、鋼板17は外形形状の限定なく所定角度θ回転させた後に積層して積層鋼板14を製造することができるので、鋼板17を積層した後の厚み方向における偏差を少なくすることができる。
【0061】
例として、従来は
図35に示すように、鋼板17が中心(第一中心軸C1)に対して点対称の外形形状である場合のみ対応可能であった。外形下金型30が回転可能の場合、
図34に示すように所定角度θの回転前後の外形形状を重ね合わせたときに、異なる外形形状の場合は対応できなかった。例えば、外形形状がT字状の場合である。これに対し、本発明では外形上金型20と外形下金型30とが同期して回転するので、外形形状が点対称のものに限定せず、種々の外形形状に対応可能である。また、所定角度θは任意に設定可能なので、外形形状を設定するときの自由度が高い。
【0062】
次に、積層鋼板製造装置100等の金型構成は、第二の課題として、外形上金型20と外形下金型30を回転させるため、安定して回転させることと、回転の前後において中心位置がずれることを防止するという課題がある。本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置100等の構成はこの課題を解決するものである。
【0063】
図2から
図6までに示すように、積層鋼板製造装置100等は、外形上金型外周面29と上金型開口部127との間を含む、外形上金型20と上金型2とが対向する部分がベアリング部材28を備える。外形下金型外周面38と下金型開口部136との間を含む、外形下金型30と下金型3とが対向する部分は、ベアリング部材28を備える。よって、外形上金型20は上金型2に対し、また外形下金型30は下金型3に対して回転振れすることなく安定して摺動回転することができる。
【0064】
すでに説明したように、外形上金型外周面29は、外形回転パンチヘッド23、回転パンチプレート27、及び回転ストリッパ22のそれぞれの外周面が該当する。上金型開口部127は、上型サブプレート122、第一固定パンチプレート121、及び固定ストリッパホルダ128のそれぞれの内周面が該当する。外形上金型外周面29は円筒形状であり、上金型開口部127は外形上金型外周面29に対応した円筒形状の開口部である。よって、上金型2と外形上金型20とは、間に介在するベアリング部材28としてのボールリテーナーベアリングによって、回転振れすることなくスムーズに回転する。
【0065】
次に、積層鋼板製造装置100等の金型構成は、第三の課題として、外形上金型20と外形下金型30とを同期して回転させるために適切な駆動装置を備える必要がある。外形上金型20と外形下金型30とが連係せずに独立して回転すると、同期がうまく行かず積層鋼板製造装置100等に破損が発生する可能性があり、解決すべき課題である。本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置100等は、この課題を解決するものである。
【0066】
図7、
図8等に示すように、積層鋼板製造装置100等は、外形上金型20と外形下金型30とを一つの回転駆動源51で回転させることができる。よって、回転駆動装置5を小型化でき、装置の費用を安くすることができる。また、回転駆動制御装置54は、鋼板17を打ち抜く際、一枚を含む所定枚数毎に所定角度θ回転させる制御を行うので、鋼板17を積層した後の厚み方向における偏差を少なくする工程を正確に行うことができる。
【0067】
なお、外形上金型20と外形下金型30とを所定角度θ回転させるときの所定枚数は任意に設定可能である。例えば、外形上金型20と外形下金型30とは、鋼板17を一枚打ち抜く度に回転させてもよいし、例えば5枚に設定して鋼板17を5枚打ち抜く毎に回転させてもよい。鋼板素材16の厚みにおける偏差の程度によって設定できるという効果もある。
【0068】
<回転駆動装置5の共通する構成の概要説明>
次に、
図7から
図9までを参照して、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第四実施形態の積層鋼板製造装置400までに共通する回転駆動装置5の構成を説明する。回転駆動装置5は、回転駆動源51の回転を外形上金型20と外形下金型30に伝達する回転駆動軸55と、回転駆動軸55を支持する駆動軸支持台53を備える。さらに、駆動軸支持台53又は上金型2のいずれか一方から回転駆動軸55に対し、鉛直方向の下側に向かって弾性力を与える駆動軸弾性部材156を備える。回転駆動軸55は、第二中心軸C2の周りに回転可能である。
【0069】
回転駆動軸55は、鉛直方向の上側にあって上金型駆動装置15と係合する上型駆動軸56と、鉛直方向の下側にあって下金型駆動装置19と係合する下型駆動軸58からなり、上型駆動軸56と下型駆動軸58とは、回転方向において互いに係合する。上金型駆動装置15は、上金型2と連結し、上金型2が鉛直方向に沿って移動することに伴って同方向に移動する。
【0070】
例として、上型駆動軸56と下型駆動軸58とが係合する部分は、一方が十字形状の断面形状を有する凸部であり、他方が十字形状の断面形状を有する凹部である。凸部と凹部とが上下方向に摺動可能であり、かつ回転方向において極力隙間が生じない程度に精密仕上げしたものである。
【0071】
上金型駆動装置15と上型駆動軸56とは、鉛直方向に沿う方向において相対的に移動可能である。上金型2と下金型3とが、鉛直方向において離間する状態において、駆動軸弾性部材156は、鉛直方向に沿う方向において上型駆動軸56を上金型駆動装置15に押圧して接合状態とする。回転駆動源51が駆動すると、下型駆動軸58が回転して下金型駆動装置19を回転させ、外形下金型30に回転を伝達する。
【0072】
さらに、下型駆動軸58が上型駆動軸56に回転を伝達し、上金型駆動装置15によって外形上金型20に回転を伝達する。上金型2が下金型3に対して鉛直方向に沿う方向に押下するとき、上型駆動軸56と上金型駆動装置15とは、鉛直方向に沿う方向において離間して接合状態を解除する。
【0073】
<回転駆動装置5の共通する構成の詳細説明>
次に、
図2から
図9までを参照して、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第四実施形態の積層鋼板製造装置400までに共通する回転駆動装置5の構成を詳細に説明する。
図7、
図8に示すように、下金型駆動装置19は、回転駆動源51の回転を下金型駆動装置19に伝達する駆動ベルト52と、駆動ベルト52の回転を受動し、下型駆動軸58と同期回転する回転駆動プーリ50と、下型駆動軸58と同期回転する下型駆動プーリ91を備える。さらに、下型駆動プーリ91の回転を外形下金型30に伝達する下型駆動ベルト92を備える。
【0074】
図7、
図8に示すように、上金型駆動装置15は、上型駆動軸56と係合することによって同期回転する上型駆動プーリ151と、上型駆動プーリ151を保持する上型駆動プーリ保持部154を備える。さらに、上型駆動プーリ151の回転を外形上金型20に伝達する上型駆動ベルト152を備える。
【0075】
図6に示すように、外形下金型30は、下型駆動ベルト92の駆動を従動する外形下型プーリ33を備え、外形下型プーリ33の回転に伴って一体的に回転する。
図4、
図5に示すように、外形上金型20は、上型駆動ベルト152の駆動を従動する外形上型プーリ24を備え、外形上型プーリ24の回転に伴って一体的に回転する。
【0076】
図2、
図3に示すように、上型駆動プーリ保持部154は、上金型2と直接的又は間接的に連結し、上金型2が鉛直方向に沿って移動することに伴って移動する。
図7から
図9まで(
図13)に示すように、上型駆動プーリ151と上型駆動軸56とは、鉛直方向に沿う方向において相対的に移動可能である。
図7、
図9(a)(
図12、
図13(a))に示すように、上金型2と下金型3とが、鉛直方向において離間する状態において、駆動軸弾性部材156は、鉛直方向に沿う方向において上型駆動軸56を上型駆動プーリ151に押圧して接合状態とする。
【0077】
図7、
図8に示すように、回転駆動源51が回転すると、駆動ベルト52を駆動して回転駆動プーリ50を回転させて下型駆動軸58を回転させ、下型駆動プーリ91を回転させる。下型駆動プーリ91は、下型駆動ベルト92を介して外形下金型30に回転を伝達する。下型駆動軸58は、上型駆動軸56に回転を伝達し、上型駆動ベルト152を介して外形上金型20に回転を伝達する。
【0078】
図8、
図9(b)(
図12、
図13(b))に示すように上金型2が下金型3に対して鉛直方向に沿う方向に押下するとき、上型駆動軸56と上型駆動プーリ151(252)とは、鉛直方向に沿う方向において離間して接合状態を解除する。
【0079】
駆動ベルト52、上型駆動ベルト152、及び下型駆動ベルト92はタイミングベルトの使用が適する。回転駆動プーリ50、上型駆動プーリ151、及び下型駆動プーリ91は、いずれも使用するタイミングベルトに対応したタイミングプーリが適する。合わせて、外形上金型20の外形上型プーリ24と、外形下金型30の外形下型プーリ33も、使用するタイミングベルトに対応したタイミングプーリが適する。各実施形態によって異なる構成は後述する。
【0080】
<バランス補正部160の説明>
次に、
図2、
図3を例として参照し、バランス補正部160の構成を説明する。外形上金型20と外形下金型30は、第一中心軸C1に対して回転駆動装置5と対称の位置にバランス補正部160を備える。バランス補正部160は、下金型3にバランス補正台161を備え、バランス補正台161と上金型2との間にバランス弾性部材164等を備える。バランス弾性部材164等は、回転駆動装置5においていて、上金型2に傾斜が発生することを防止する。
【0081】
回転駆動装置5は、駆動軸弾性部材156によって、上型駆動軸56に鉛直方向に沿う方向の下側への圧力が加わり始めるとき、或いは上型駆動軸56と下型駆動軸58とが接触し始めるとき、偏芯荷重が発生する。その結果、上金型2が傾くことがある。バランス補正部160は、偏心荷重による傾きを防止するために、第一中心軸C1に対して回転駆動装置5の反対側にも同じ偏心荷重を発生されるバランス弾性部材164を備え、傾きを防止するものである。なお、バランス弾性部材164は複数備えてもよい。
図2、
図3は第一実施形態の積層鋼板製造装置100を例に示したものであるが、他の実施形態を含めた詳細な説明は後述する。
【0082】
<各実施形態共通の回転駆動装置が解決する課題とその効果>
以上説明したように、積層鋼板製造装置100等における回転駆動装置5は種々の課題を解決し、効果を奏する。
【0083】
第一の課題は以下である。積層鋼板製造装置100等は、鋼板17の外形を打ち抜くために、鉛直方向に沿う方向において外形上金型20が外形下金型30に対して移動するため、回転駆動装置5は外形上金型20の移動に対応する構成とする必要があり、解決すべき課題である。さらに、鋼板17の外形を打抜き、所定角度θ回転する毎に回転量の誤差が蓄積すると、外形上金型20と外形下金型30との位置ずれが増加し、装置の破損に繋がるという課題がある。本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置100等は、これらの課題を解決するものである。
【0084】
例として、
図7から
図9までに示すように、積層鋼板製造装置100等は、上金型2と下金型3とが、鉛直方向において離間する状態において、回転駆動源51が駆動すると下金型駆動装置19を回転させて外形下金型30に回転を伝達する。同時に、下型駆動軸58が上型駆動軸56に回転を伝達し、上金型駆動装置15によって外形上金型20に回転を伝達する。よって、外形上金型20と外形下金型30とを同期して回転させることができる。
【0085】
さらに、上金型2が下金型3に対して鉛直方向に沿う方向に押下するとき、上型駆動軸56と上金型駆動装置15とは、鉛直方向に沿う方向において離間して接合状態を解除する。よって、上金型2が押下する度に上金型駆動装置15と下金型駆動装置19との位相差を解除するので、誤差が蓄積することを解消できる。
【0086】
次に、第二の課題は、積層鋼板製造装置100等の回転駆動装置5は、装置全体が大型化すること無く設置し、配置位置等の自由度が高い構成にすることである。また、構成部品が可動する部分が多い回転駆動装置5は、構成部品の劣化、或いは故障の頻度が高くなる可能性があるため、メンテナンス性を高める必要がある。本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置100等は、これらの課題を解決するものである。
【0087】
例として、
図7から
図9までに示すように、積層鋼板製造装置100等は、駆動ベルト52と回転駆動プーリ50との組合せによって外形上金型20と外形下金型30とを回転させる構成である。よって、回転駆動制御装置54と外形上金型20及び外形下金型30との位置関係を容易に設定することができる。
【0088】
また、回転駆動装置5は、外形上金型20とは上型駆動ベルト152によって連結し、外形下金型30とは下型駆動ベルト92によって連結する。回転駆動装置5は、上型駆動ベルト152及び下型駆動ベルト92を取り外すことにより、上金型2及び下金型3との分離が容易となる。よって、積層鋼板製造装置100等の回転駆動装置5は、故障等におけるメンテナンスが容易である。
【0089】
また、回転駆動装置5が外形上金型20と外形下金型30とを回転駆動するときは、上型駆動軸56と上型駆動プーリ151が鉛直方向において接合状態となる。外形上金型20が外形下金型30に対して押下するときは、鉛直方向において接合状態を解除して離間状態となる。よって、外形上金型20と外形下金型30とを同期して回転させることができる。さらに、上金型2が押下する度に上金型駆動装置15と下金型駆動装置19との位相差を解除するので、誤差が蓄積することを解消できる。
【0090】
次に、第三の課題は、積層鋼板製造装置100等の回転駆動装置5は、以下の場合に偏芯荷重が発生して上金型2が傾くことがあるという課題である。駆動軸弾性部材156によって、上型駆動軸56に鉛直方向に沿う方向の下側への圧力が加わり始めるとき、或いは上型駆動軸56と下型駆動軸58とが接触し始めるときである。上金型2が傾くと、外形パンチ21と外形抜きダイ31との中心がずれて互いに緩衝して破損するという課題がある。本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置100等は、これらの課題を解決するものである。
【0091】
図2、
図3の例に示すように、バランス補正部160は、第一中心軸C1を挟んで回転駆動装置5の反対側に備える。バランス弾性部材164は、回転駆動装置5における傾きの発生を防止するので、上金型2は下金型3に対して傾き或いはズレが無く安定して移動することができる。さらに、積層鋼板製造装置100等の装置寿命を長くすることができる。
【0092】
<各実施形態に固有の構成説明>
次に、本発明のうち、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第四実施形態の積層鋼板製造装置400までに固有の構成を説明する。各実施形態で構成が異なるのは、回転駆動装置5とバランス補正部160であり、他の構成は共通である。なお、ここで説明する部分以外の構成は、すでに説明した共通の構成による。
【0093】
<第一実施形態の積層鋼板製造装置100固有の構成説明>
本発明の第一の態様に係る、第一実施形態の積層鋼板製造装置100に固有の構成を説明する。すでに説明した、共通の構成に対して固有の部分を説明する。共通の構成は説明を省略する。以下、第二実施形態の積層鋼板製造装置200から第四実施形態の積層鋼板製造装置400も同様である。
【0094】
まず、
図2、
図3、及び
図7から
図9までを参照して、回転駆動装置5の構成を説明する。駆動軸支持台53は、下金型3の下型ホルダ120に固定し、上金型2とは離間している。駆動軸支持台53は、上型駆動軸56の上部と下部、及び下型駆動軸58の上部と下部との間において、ベアリング部材28としてのボールリテーナーベアリングを備え、上型駆動軸56及び下型駆動軸58が回転可能である。
【0095】
図7に示すように、上型駆動軸56は、一部に鍔部60を備え、鍔部60の上側にスラストニードルベアリング155を介してプレート159を備え、駆動軸支持台53とプレート159との間に駆動軸弾性部材156としての圧縮コイルバネを備える。駆動軸弾性部材156は、常時上型駆動軸56を鉛直方向の下側へ押圧する。
【0096】
図9に示すように、上型駆動軸56は、鍔部60の下側に円錐状のテーパ部57を形成する。上型駆動プーリ151は、内周部にスリーブリングコレット153を備え、上型駆動軸56のテーパ部57に対して締め付け力を有する。
図9(a)に示すように、上金型2が上死点に位置する状態では、スリーブリングコレット153による弾性力が上型駆動軸56をくわえ込んで締め付ける状態となり、上型駆動軸56が回転すると上型駆動プーリ151に回転を伝える。スリーブリングコレット153による弾性力は、上金型2が上死点に向かうに従って高まり、より上型駆動軸56を締め付ける状態となる。スリーブリングコレット153の弾性力は、上型駆動軸56が回転するとき、テーパ部57との間に滑りが生じないように十分な締め付け力が発生する程度の強度である。
【0097】
図9(b)に示すように、上金型2が下死点にある状態では、上型駆動軸56が鉛直方向に沿う方向の下側へ移動する移動量以上に、上型駆動プーリ保持部154が上型駆動プーリ151と共に下側へ移動する。上金型2が下死点にある状態では、テーパ部57とスリーブリングコレット153とは離間して隙間257がある状態となり、上型駆動軸56が回転しても上型駆動プーリ151に回転を伝えない。上型駆動軸56において、テーパ部57以外の部分は、上型駆動プーリ151の内周との間にベアリング部材28としてのボールリテーナーベアリングを備える。テーパ部57とスリーブリングコレット153とは、離間した状態で、上型駆動軸56と上型駆動プーリ151とは相対的に回転可能である。
【0098】
図9(b)に示す、テーパ部57とスリーブリングコレット153との離間が開始するのは、上金型2が鉛直方向に沿う方向の下側へ移動し、位置決めパイロットピン25を位置決めパイロット穴37に挿入する直前である(
図4参照)。外形上金型20は、上型駆動プーリ151と下型駆動プーリ91との連結を解除した状態で、位置決めパイロットピン25を外形下金型30の位置決めパイロット穴37に挿入する。よって、上型駆動プーリ151と下型駆動プーリ91との間に生じる回転誤差は、外形上金型20と外形下金型30とによる鋼板17の外形打抜き動作毎に解消するので、回転誤差を蓄積しない。この原理は、後述する第二実施形態の積層鋼板製造装置200から第四実施形態の積層鋼板製造装置400も同様である。
【0099】
図9に示すように、上型駆動プーリ保持部154は、上型駆動軸56を貫通し、上型駆動プーリ151を保持する。鉛直方向において上型駆動プーリ151は、下側にプレート159を備え、プレート159と上型駆動プーリ保持部154との間にスラストニードルベアリング155を備える。上型駆動プーリ151は、上型駆動プーリ保持部154に対して回転可能である。
【0100】
図9(a)、(b)に示すように、上型駆動軸56における鉛直方向の下側は凸部を有し、下型駆動軸58における上側は凹部を有し、凹部に対して凸部が鉛直方向に沿う方向において可動空間59の間で移動可能である。
【0101】
図2及び
図3に示すように、上型駆動プーリ保持部154は、上金型2における第一固定パンチプレート121及び上型サブプレート122と接続し、上金型2が鉛直方向に沿う方向に移動すると同時に移動する。
【0102】
次に、
図2、
図3を参照して積層鋼板製造装置100におけるバランス補正部160を説明する。バランス補正部160は、下型ホルダ120に固定したバランス補正台161を備える。
図2等に示すように、バランス補正台161は一部に凹部を形成する。上金型2と結合する荷重バランス台163は、バランス補正台161の凹部において、バランス弾性部材164から鉛直方向の下側へ向く圧力を受ける。積層鋼板製造装置100におけるバランス弾性部材164は、例として圧縮コイルバネである。すでに説明したように、偏芯荷重が発生して上金型2が傾くと、バランス弾性部材164の弾性力が傾きを補正する。
【0103】
<第二実施形態の積層鋼板製造装置200固有の構成説明>
次に、
図10、
図11を参照して、本発明の第一の態様に係る第二実施形態の積層鋼板製造装置200の構成を説明する。積層鋼板製造装置100と異なるのは、回転駆動装置5における駆動軸弾性部材256と、バランス補正部160におけるバランス補正台161及びバランス弾性部材164の構成である。
【0104】
図11に示すように、駆動軸弾性部材256は、積層鋼板製造装置100における駆動軸弾性部材156と異なって、駆動軸支持台53に固定するガススプリング166である。ガススプリング166は、密閉されたシリンダー内に高圧ガス(窒素ガス:不燃性)を封入してあり、このガスの反力を弾性力として使用する。ガススプリング166は小型でありながら大きな初期荷重で小さなバネ定数が得られるので、ストローク量によらず安定した弾性力を与える特性を有する。従って、駆動軸弾性部材256として採用するガススプリング166は、第一実施形態の積層鋼板製造装置100に採用する圧縮コイルバネに比べて圧力が安定する。すなわち、上金型2が上死点にあるときと下死点にあるときとの圧力差が小さい。
【0105】
駆動軸弾性部材256としてのガススプリング166は、鉛直方向の下側にプレート159をはさみ、スラストニードルベアリング155を介して上型駆動軸56を下側へ押圧する。上型駆動軸56は、ガススプリング166に対してスラストニードルベアリング155によって回転可能である。上型駆動軸56の上側端部と駆動軸支持台53とは、間にベアリング部材28としてのボールリテーナーベアリングを備えるので、上型駆動軸56は駆動軸支持台53に対しても回転可能である。
【0106】
次に、
図10を参照してバランス補正部160の構成を説明する。バランス補正台161は積層鋼板製造装置100と同様であり、バランス弾性部材164は、圧縮コイルバネに代えてガススプリング166を使用する。ガススプリング166の特性はすでに説明したとおりである。なお、以上説明したガススプリング166の他に、空圧開閉シリンダー又は油圧開閉シリンダーを用いてもよい。
【0107】
<第三実施形態の積層鋼板製造装置300固有の構成説明>
次に、
図12、
図13を参照して、本発明の第一の態様に係る第三実施形態の積層鋼板製造装置300に固有の構成を説明する。駆動軸支持台53は、上型駆動軸支持台253と下側駆動軸支持台254からなる。下側駆動軸支持台254は下型ホルダ120に固定し、下型駆動軸58と、上型駆動軸56の内の鉛直方向の下側の一部を支持する。上型駆動軸支持台253は、鉛直方向の上側を上金型2に固定し、下側は上型駆動プーリ保持部154と一体的に結合している。上金型2が鉛直方向に沿う方向に移動するとき、上型駆動軸支持台253と上型駆動プーリ保持部154は同時に移動する。
【0108】
図13に示すように、回転駆動装置5は、上型駆動軸56の外周にスリーブリングコレット153を取付け、上型駆動プーリ252の内周部との間で接合及び離間する。スリーブリングコレット153の下側にリリースブッシング158を備える。
図13(a)に示すように、上金型2が上死点にある状態では、駆動軸弾性部材156としての圧縮コイルバネの弾性力によってコレットホルダ157を押し下げ、スリーブリングコレット153が弾性力によって上型駆動プーリ252との間で接合する。これにより、スリーブリングコレット153が、上型駆動軸56と上型駆動プーリ151とを一体的に回転可能にする。スリーブリングコレット153の弾性力は、上型駆動軸56が回転するとき、上型駆動プーリ252との間に滑りが生じないように十分な締め付け力が発生する程度の強度である。
【0109】
図13(b)に示すように、上金型2が下死点にある状態では、上型駆動軸56が鉛直方向に沿う方向の下側へ移動する移動量以上に、上型駆動プーリ保持部154が上型駆動プーリ151と共に下側へ移動する。このとき、上型駆動プーリ252の内周部とスリーブリングコレット153とは離間した状態となって隙間257が生じ、上型駆動軸56は上型駆動プーリ151に回転を伝達しない。積層鋼板製造装置100及び200と同様に、上型駆動プーリ151と下型駆動プーリ91との間に生じる回転誤差は、外形上金型20と外形下金型30とによる鋼板17の外形打抜き動作毎に解消するので、回転誤差を蓄積しない。
【0110】
次に、バランス補正部160の構成を説明する。
図12に示すように、バランス補正部160は、下金型3に固定するバランス補正台168(161)と、バランス弾性部材164としての圧縮コイルバネ165を備える。さらに、バランス弾性部材164とバランス支持棒162を内部に収納し、上金型2に固定する上側バランス支持台167を備える。バランス補正部160は、以上の構成により、偏芯荷重が発生して上金型2が傾くと、バランス弾性部材164の弾性力が傾きを補正する。
【0111】
<第四実施形態の積層鋼板製造装置400固有の構成説明>
次に、
図14、
図15を参照して、本発明の第一の態様に係る第四実施形態の積層鋼板製造装置400の構成を説明する。積層鋼板製造装置400は、積層鋼板製造装置300に対して、回転駆動装置5における駆動軸弾性部材256と、バランス補正部160におけるバランス弾性部材164が異なる。
【0112】
駆動軸弾性部材256は、積層鋼板製造装置200と同様に例としてガススプリング166を使用する。
図15に示すように、駆動軸弾性部材256としてのガススプリング166は、上金型2に固定した状態である。上型駆動軸支持台253は、上金型2の鉛直方向の下側に固定した状態であり、上型駆動プーリ保持部154は上型駆動軸支持台253の下側に固定した状態である。
【0113】
コレットホルダ157の上側はスラストニードルベアリング155を備え、さらに上側はプレート159を介してガイドピン271に接触する。ガイドピン271は複数本からなり、プレート270を介して駆動軸弾性部材256としてのガススプリング166の接触端部と接触する。コレットホルダ157よりも下側は、積層鋼板製造装置200における回転駆動装置5と同様の構成である。ガススプリング166は、鉛直方向に沿う方向の下側へ圧力を加え、上金型駆動装置15を下側へ押圧する。
【0114】
<第五実施形態の積層鋼板製造装置500固有の構成説明>
次に、
図16、
図17を参照して、本発明の第一の態様に係る第五実施形態の積層鋼板製造装置500の構成を説明する。積層鋼板製造装置500は、すでに説明した積層鋼板製造装置100等とは異なって、外形上金型20は第一中心軸C1の周りに回転する構造ではなく、外形下金型30のみが下金型3に対して回転可能な構成である。
【0115】
上金型2は、一部に外形上金型20を構成し、上金型2が鉛直方向に沿う方向に移動すると外形上金型20も同時に移動する。下金型3及び外形下金型30は、積層鋼板製造装置100等と同様の構成なので、説明は省略する。後述するが、積層鋼板製造装置500は積層鋼板製造装置100等と同様に、下金型3に冷却装置6及び鋼板整列加熱装置9を備える。また、接着剤塗布装置4は、積層鋼板製造装置100等と同様に外形上金型20に構成してもよい。或いは、接着剤塗布装置520(4)は、
図16に示すように、上金型2のうち外形上金型20以外の位置に構成してもよいし、下金型3のうち外形下金型30以外の位置に構成しても良い。接着剤塗布装置4、鋼板整列加熱装置9、及び冷却装置6の詳細な構成はそれぞれ後述する。
【0116】
図17を参照して、積層鋼板製造装置100等における回転駆動装置5に対応する、回転駆動装置510の構成を説明する。回転駆動装置510は、回転駆動装置5のうち下金型駆動装置19と同様の構成である。異なるのは、駆動支持台511は、下型ホルダ120に固定して回転駆動軸512を支持する点である。
【0117】
<第六実施形態の積層鋼板製造装置600固有の構成説明>
次に、図示しないが、本発明の第一の態様に係る第六実施形態の積層鋼板製造装置600の構成を説明する。積層鋼板製造装置600は、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500とは異なり、外形上金型20及び外形下金型30は、第一中心軸C1の周りに回転可能な構成を有さない。積層鋼板製造装置600は、後述する冷却装置6を備え、さらに接着剤塗布装置4を備えてもよい。接着剤塗布装置4を備える場合、後述する鋼板整列加熱装置9を備えてもよい。また、後述する接着剤塗布装置4は、ノズル吐出部140から接着剤45を塗布する構成であるが、接着剤45を使用せず、カシメによって鋼板17を積層して積層鋼板14を製造する形態でもよい。
【0118】
<接着剤塗布装置4の構成の概要説明>
次に、
図4、
図5、
図16、及び
図18から
図23までを参照して、特記がある場合を除き、全ての実施形態に共通する接着剤塗布装置4の構成を説明する。
図4、
図5、及び
図16に示すように、積層鋼板製造装置100等は、上金型2及び下金型3のうちの少なくとも一方に、鋼板素材16を含めた鋼板17に接着剤45を塗布する接着剤塗布装置4(520)と、接着剤塗布装置4を作動させる作動部材210(2、513)を備える。
【0119】
図4、
図5、
図18、及び
図19に示すように、接着剤塗布装置4は、接着剤45を吐出するノズルユニット40と、接着剤45を貯留する接着剤貯留部46と、接着剤貯留部46からノズルユニット40へ接着剤45を供給する供給管47を備える。接着剤貯留部46の側を上流側とし、ノズルユニット40の側を下流側とする。ノズルユニット40は、接着剤45を鋼板17に吐出するノズル吐出部140を形成するノズル41と、ノズル41の内部にあって、接着剤45を上流側から下流側へ選択的に供給するためのノズル開閉弁42を備える。さらに、ノズル41を鉛直方向に沿う方向に移動可能に支持するノズルホルダ43を備える。
【0120】
ノズルユニット40は、作動部材210(2)等によって、ノズル41がノズルホルダ43に対して相対的に下流側に位置する第一状態を形成可能である。さらに、ノズル41がノズルホルダ43に対して相対的に上流側に位置する第二状態を形成可能である。
【0121】
ノズル41は、作動部材210(2)が一方に作動すると、ノズル41がノズルホルダ43に対して相対的に下流側に位置する第一状態で、ノズル吐出部140が鋼板素材16を含む鋼板17に接触する。さらに、作動部材210(2)が一方に作動すると、ノズル41は、ノズルホルダ43に対して相対的に鉛直方向に沿う方向に移動して第二状態を形成し、ノズル開閉弁42が開いて、ノズルユニット40の内部に接着剤45の流路を形成する。
【0122】
作動部材210が他方に作動すると、ノズル41がノズルホルダ43に対して相対的に下流側へ移動して第一状態を形成する。すると、ノズル開閉弁42が閉じて、ノズルユニット40の内部において接着剤45の流路を遮断する。
【0123】
次に、接着剤塗布装置4の構成のうち、実施形態によって異なる点を説明する。第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第四実施形態の積層鋼板製造装置400までの場合、作動部材210は上金型2が相当する。ノズルユニット40は、上金型2が鉛直方向に沿う方向への移動に伴って同方向に移動することにより、ノズル41がノズルホルダ43に対して相対的に下流側に位置する第一状態を形成可能である。さらに、ノズル41がノズルホルダ43に対して相対的に上流側に位置する第二状態を形成可能である。
【0124】
ノズル41は、上金型2が鉛直方向に沿う方向の下側に移動すると、ノズル吐出部140が鋼板素材16を含む鋼板17に接触する。この状態までが第一状態である。さらに上金型2が、相対的に鉛直方向に沿う方向の下側へ移動すると、ノズル41は、ノズルホルダ43に対して相対的に上流側へ移動して第二状態を形成する。
【0125】
また、第五実施形態の積層鋼板製造装置500の場合、
図16に示すように作動部材210は作動スライドカム513である。作動スライドカム513は、一部に鉛直方向に対して上下方向の傾斜を有し、水平方向に沿う方向(紙面では手前側と後方側との間)に移動することにより、ノズル41を上下方向に移動する。
【0126】
次に、作動部材210について説明する。
図16等に示すように、接着剤塗布装置520(4)が上金型2にあるとき、作動部材210は、上金型2か、又は上金型2に備える水平方向に沿う方向に移動可能な作動スライドカム513である。
図16に示すように、接着剤塗布装置520(4)が下金型3にあるとき、作動部材210は、下金型3に備える水平方向に沿う方向に移動可能な作動スライドカム513である。
【0127】
接着剤塗布装置4が上金型2にあって、作動部材210が上金型2のとき、接着剤塗布装置4は上金型2が鉛直方向に沿う方向へ移動することに伴って、第一状態と第二状態とを形成する。作動部材210が作動スライドカム513のとき、作動スライドカム513を水平方向に沿う方向へ移動させることによって、第一状態と第二状態とを形成する。
【0128】
<ノズル開閉弁42の構成説明>
次に、
図18、
図19を参照してノズル開閉弁42の構成を詳細に説明する。ノズル開閉弁42は、第一ノズル開閉弁142と、第一ノズル弁弾性部材143と、第二ノズル開閉弁144と、第二ノズル弁弾性部材145と、第三ノズル開閉弁146からなる。ノズルホルダ43は、内部に鉛直方向に沿う方向に延びる第一接着剤流路148を形成する。ノズル41は、内部に鉛直方向に沿う方向に延びる第二接着剤流路147と、ノズル吐出部140に繋がる第三接着剤流路150を形成する。
【0129】
図18に示すように、第一状態において、第一ノズル開閉弁142は、第一ノズル弁弾性部材143の弾性力によって、ノズルホルダ43に接触して第一接着剤流路148を塞ぐ。第二ノズル開閉弁144は、第二ノズル弁弾性部材145の弾性力によって、第二接着剤流路147を塞ぐ。第三ノズル開閉弁146は、閉じた状態で第三接着剤流路150を塞ぐ。
【0130】
図19に示すように、第二状態では、ノズル41は、第一ノズル弁弾性部材143の弾性力に反して第一ノズル開閉弁142に対して相対的に上流側に移動した状態である。ノズルホルダ43は、第一ノズル開閉弁142との間に隙間を生じて第一接着剤流路148を開く。接着剤45は、第一ノズル流路281から第二ノズル流路282に流れ、さらに第二接着剤流路147に流入する。第二ノズル開閉弁144は、第二接着剤流路147に流入した接着剤45の圧力によってノズル41に対して相対的に下流側へ移動して第二接着剤流路147を開ける。さらに、接着剤45の圧力が第三ノズル開閉弁146を押し広げることにより第三接着剤流路150を開き、接着剤45をノズル吐出部140へ供給する。
【0131】
<ノズル開閉弁42及び関連要素の詳細説明>
次に、
図18、
図19を参照して、ノズル開閉弁42及び関連要素をさらに詳細に説明する。ノズルホルダ43は、上流側から第一ノズルホルダ240、第二ノズルホルダ242が順に並び、ボルトの締結によって一体的に作動する。
図5等に示すように、第一ノズルホルダ240の端部は、ノズル係合部241である。接着剤塗布装置4が上金型2にあるときは、上金型2のノズル用スライドカム49のノズルカム係合面244、或いはノズルカム凹部245と接触する。
図16に示すように、接着剤塗布装置4が下金型3にあるときは、図示しない下金型3の一部の部材と接触する。
【0132】
図5に示すように、接着剤塗布装置4は、接着剤貯留部46から供給管47を通じて接着剤45を供給する。供給管47は、第一ノズルホルダ240と接続する。なお、接着剤塗布装置4が、外形上金型20の内部にあるときは、供給管47は、ロータリージョイント48に接続し、さらに第一ノズルホルダ240と接続する。
図18、
図19に示すように、第一ノズルホルダ240は、内部に鉛直方向に延びる第一ノズル流路281を形成し、第二ノズルホルダ242は、第一ノズル流路281に繋がる第二ノズル流路282を形成する。例として、
図18等に示す例では、ノズル41等が二つの場合を示し、第二ノズル流路282は二方向に分岐する。さらに多くのノズル41等を備えてもよく、その場合、第二ノズル流路282はさらに多くの方向へ分岐する。
【0133】
図18、
図19に示すように、第二ノズルホルダ242は、第二ノズル流路282に繋がるノズルガイド部283を備える。第二ノズル流路282とノズルガイド部283は、段部175によって繋がり、ノズルガイド部283は、第二ノズル流路282よりも流路が狭い。ノズル41は、第二ノズル流路282とノズルガイド部283に挿入した状態であり、鉛直方向に沿う方向に移動可能である。ノズル41は、外周部の一部にOリング243を複数箇所に備え、第二ノズルホルダ242とノズル41との隙間から接着剤45が漏れ出すことを防止する。
【0134】
図18、
図19に示すように、第二ノズル流路282の側におけるノズル41の端部は、第一ノズル開閉弁142を備える。第一ノズル開閉弁142は、一方の端部が例として圧縮コイルバネからなる第一ノズル弁弾性部材143の受け部171を形成し、一部にテーパ状の鍔部172を有し、他方の端部はノズルホルダ43の段部175に嵌まり込む円筒部173である。
図18に示すように、第一状態ではノズルホルダ43の段部175の一部に鍔部172が接触し、円筒部173が段部175に嵌まり込んで第一接着剤流路148を閉じる。
図19に示すように、第二状態では鍔部172が段部175から離間し、円筒部173と段部175との間に隙間が発生して第一接着剤流路148が開く。
【0135】
図20に示すように、第二ノズル開閉弁144は球状の部材であり、第二ノズル弁弾性部材145は圧縮コイルバネである。第二ノズル弁弾性部材145の一方は、第二ノズル開閉弁144を弾性的に支持する。
【0136】
次に、
図18から
図20までを参照して、第三ノズル開閉弁146の構成をさらに詳細に説明する。第三ノズル開閉弁146は、弾性力を有する薄膜の部材からなり、第三接着剤流路150の中心の位置に対応する部分にあって、開いたときに第三接着剤流路150における水平方向の幅よりも小さい開閉弁穴135を備える。
【0137】
図18に示すように、開閉弁穴135は、接着剤45による圧力を受けない状態である第一状態では、閉じた状態となって、第二接着剤流路147から第三接着剤流路150へ接着剤45が流れることを停止する。
図19に示すように、開閉弁穴135は、接着剤45による圧力を受ける状態である第二状態では、開いた状態となって、第二接着剤流路147から第三接着剤流路150へ接着剤45が流れる。
【0138】
第三ノズル開閉弁146は、例として非常に薄いフッ素ゴム、シリコンゴム等の弾性力を有する材質である。フッ素ゴムは、卓越した耐熱性・耐油性・耐薬品性を有したゴムである。より好ましくは、開閉弁穴135は、第三ノズル開閉弁146の中央にある極微細の穴であり、伸縮性を有する。極微細な穴とは、直径10~30μmの穴を示す。開閉弁穴135は、接着剤45の圧力がかからないときはフッ素ゴムが縮んだ状態となって穴が閉まる。逆に、第三ノズル開閉弁146に接着剤45の圧力がかかると、フッ素ゴムが伸びて開閉弁穴135が開き、ノズル吐出部140から接着剤45が吐出する。すなわち、第三ノズル開閉弁146は、薄膜の伸縮性を有する材質なので、接着剤45による圧力によって開閉が可能となる構成である。
【0139】
以上説明した第一ノズルホルダ240、第二ノズルホルダ242、ノズル41、及び第二ノズル開閉弁144は、接着剤45が固まることを防止するため、POM、PE、PP等の樹脂、さらにはフッ素樹脂コーティングを施したものでもよい。
【0140】
<接着剤塗布装置4が外形上金型20の内部にある場合の構成説明>
次に、
図4等を参照して、接着剤塗布装置4が外形上金型20の内部にある場合の構成を説明する。接着剤塗布装置4のノズルユニット40は、外形上金型20の内部にあって、外形上金型20と同期して第一中心軸C1の周りに回転可能である。かつ外形上金型20との間にノズル弾性部材44を介して鉛直方向に沿う方向に移動可能である。
【0141】
接着剤塗布装置4は、鉛直方向に沿う方向において外形上金型20が移動すると連動して移動する。
図19に示すように、外形上金型20が鉛直方向に沿う方向の下側へ移動して、下端面225が鋼板素材16を含む鋼板17に接触するとき、外形上金型20とノズルユニット40の間には鉛直方向においてノズル隙間255を有する。ノズルユニット40は、直接的又は間接的にロータリージョイント48を介して供給管47に回転可能に接続する。なお、この構成は、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第四実施形態の積層鋼板製造装置400までに適用する構成である。
【0142】
<外形金型11の回転不良を検出する装置の構成説明>
次に、
図21及び
図22を参照して、外形上金型20と外形下金型30との間の回転不良を検出する構成、及びその際の接着剤45におけるノズルユニット40の挙動を説明する。以下説明する構成は、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第四実施形態の積層鋼板製造装置400までに適用する構成である。
【0143】
図21に示すように、積層鋼板製造装置100等は、上金型2が外形上金型20を回転可能に支持する第一固定パンチプレート121と、第一固定パンチプレート121に対して鉛直方向に沿う方向に移動可能であって、カム部221を有する回転不良検出ピン123を備える。さらに、回転不良検出ピン123を鉛直方向に沿う方向に押圧する検出ピン弾性部材125と、回転不良検出ピン123が相対的に上側へ移動するとき、カム部221に接触し、水平方向に沿う方向に移動可能なパンチ用スライドカム124を備える。検出ピン弾性部材125は、上金型2を支持する上型ホルダ126に備える。
【0144】
また、すでに説明した位置決めパイロットピン25は、通常は外形下金型30の位置決めパイロット穴37に挿入する。しかしながら、外形上金型20と外形下金型30との間で回転不良があったときは、位置決めパイロットピン25の先端が外形下金型30の上端面247に接触する。このとき、パイロットピン弾性部材26である圧縮コイルバネが圧縮変形して位置決めパイロットピン25を上側に逃がす働きをする。
【0145】
パンチ用スライドカム124は、鉛直方向の下側にパンチカム凹部223を有し、外形上金型20は、鉛直方向の上側に突出する外形パンチ凸部228を有する。外形下金型30は、回転不良検出ピン123を挿入可能な回転不良検出穴39を備える。外形上金型20と外形下金型30との間で回転不良が発生すると以下のようになる。上金型2が鉛直方向に沿う方向の下側へ移動し、回転不良検出ピン123の先端部222が、回転不良検出穴39の位置と異なる位置で上金型2が鉛直方向に沿って下側に移動する。
【0146】
上金型2が鉛直方向に沿う方向の下側へ移動するとき、回転不良検出ピン123の先端部222が外形下金型30の上端面247に接触するまでの間に、パンチ用スライドカム124が回転不良検出ピン123のカム部221に係合して水平方向に沿って移動する。外形上金型20の外形パンチ凸部228がパンチカム凹部223に侵入して鉛直方向の上側に移動する。外形上金型20は、外形上金型20の下端面225と外形下金型30の上端面247とが離間した状態で移動を停止する。そしてかつ、ノズルユニット40のノズル吐出部140は、鋼板素材16を含む鋼板17に接触した状態である。
【0147】
さらに、上金型2が鉛直方向に沿う方向の上側へ移動方向を転じると、外形上金型20が上側へ移動する。
図22に示すように、ノズルユニット40は、外形上金型20とノズルユニット40の間のノズル隙間255(
図19参照)が無くなるまでの間、ノズル吐出部140が鋼板素材16を含む鋼板17に接触した状態を維持する。
【0148】
<接着剤45の塗布を停止する構成説明>
次に、
図23を参照して、接着剤塗布装置4が接着剤45の塗布を停止するための構成を説明する。接着剤塗布装置4は、鉛直方向において金型10のうち接着剤塗布装置4を設置する上金型2又は下金型3と、ノズルユニット40との間にノズル弾性部材44を備える。接着剤塗布装置4を設置する上金型2又は下金型3は、水平方向に沿う方向に移動可能であって鉛直方向の下側にノズルカム凹部245を有するノズル用スライドカム49を備える。
【0149】
ノズル用スライドカム49は、一部にノズルカム凹部245を形成するノズルカム係合面244を有し、ノズルユニット40は、ノズル用スライドカム49と係合するノズル係合部241を備える。上金型2が鉛直方向に沿う方向の下側へ移動するとき、ノズル係合部241とノズルカム凹部245以外のノズルカム係合面244とが係合し、ノズル吐出部140が鋼板素材16を含む鋼板17と近接する状態。及び、ノズル係合部241とノズルカム凹部245とが係合し、ノズル吐出部140が鋼板素材16を含む鋼板17と離間する状態とを選択可能である。ノズル吐出部140が鋼板素材16を含む鋼板17と離間する状態では、鋼板17等と近接する場合に比べて、ノズルユニット40がノズルカム凹部245のだけ鉛直方向の上側にある。ノズル吐出部140と外形パンチ21の下端面225との間には隙間149が生じる。
【0150】
<接着剤塗布装置4における解決課題と効果>
以上説明したように、積層鋼板製造装置100等における接着剤塗布装置4は種々の課題を解決し、効果を奏する。従来の接着剤塗布装置は、接着剤吐出部から常時所定圧力で接着剤が供給される。接着剤塗布装置が、鋼板等に接触すると接着剤が塗布される。すなわち、上金型が降下して鋼板等に接触すると接着剤が塗布されてしまう。よって、従来の接着剤塗布装置は、定量の接着剤を塗布する制御ができず、接着剤吐出部、或いは鋼板等に接着剤があふれ続け、接着剤による汚染が広がるという課題があった。これに対して、解決すべき第一の課題は、接着剤塗布装置4が、上金型2が下金型3に対して移動する動作に合わせて接着剤45を塗布することである。さらに、鋼板17等に対して定量の接着剤45を塗布するよう制御することである。上金型2の動作に合わせて、接着剤45を塗布する状態と塗布しない状態とを切り分けるタイミングを制御し、接着剤45の塗布量を制御することが求められる。
【0151】
この課題に対し、接着剤塗布装置4は、ノズルユニット40が接着剤45の流路を遮断する第一状態と、接着剤45の流路を開く第二状態とを形成することができる。接着剤塗布装置4は、鋼板17等に接着剤45を塗布する状態と、接着剤45の吐出を停止する状態とを形成することができるので、接着剤45を塗布するタイミングと塗布量とを制御可能であり、定量塗布することができる。
【0152】
図18に示すように、第一状態では、ノズル41がノズルホルダ43に対して相対的に下流側に位置することによってノズル開閉弁42が閉じた状態となり、接着剤45がノズル吐出部140から吐出しない。よって、鋼板17の接着を意図しない状態、或いは意図しないタイミングで接着剤45が吐出することを防止できる。
図19に示すように、第二状態では、ノズル41がノズルホルダ43に対して相対的に上流側に位置することによってノズル開閉弁42が開いた状態となる。接着剤塗布装置4は、塗布すべき接着剤45の量に応じた所定時間の間、第二状態を維持することによって鋼板17等に接着剤45を定量塗布することができる。鋼板17等を接着すべきタイミングで鋼板17等に接着剤45を塗布することで、積層鋼板14を形成することができる。
【0153】
また、接着剤塗布装置4は、積層鋼板製造装置100等の構成によって、備える位置が上金型2である場合と、下金型3である場合がある。第二の課題は、接着剤塗布装置4が備える位置によらず、接着剤45を塗布する機能を満たす構成が必要なことである。この課題に対し、接着剤塗布装置4は、上金型2にあるときと下金型3にあるときとで、それぞれに対応する作動部材210を備えるので、いずれに備える場合でも第一状態と第二状態とを形成可能である。よって、接着剤塗布装置4は、上金型2及び下金型3のいずれに設置する場合でも鋼板素材16を含めた鋼板17に接着剤45を塗布して積層鋼板14を製造することができる。
【0154】
また、接着剤塗布装置4は、上金型2が下金型3に対して移動する動作に追従して鋼板17等に接着剤45を塗布する必要がある。第三の課題は、その際に、ノズル開閉弁42が上金型2の移動に伴って開閉動作を行う必要なことである。接着剤塗布装置4のノズル開閉弁42の構成は、この課題を解決するものである。
【0155】
図18、
図19に示すように、ノズルホルダ43は、第一接着剤流路148を形成し、ノズル41は、第二接着剤流路147と、ノズル吐出部140に繋がる第三接着剤流路150を形成する。ノズル開閉弁42は、第一ノズル開閉弁142と、第一ノズル弁弾性部材143と、第二ノズル開閉弁144と、第二ノズル弁弾性部材145と、第三ノズル開閉弁146からなる。以上の構成による作用によって、第一状態と第二状態とを形成するので、接着剤45を塗布する状態と、接着剤45の吐出を停止する状態とをより確実に形成することができる。
【0156】
ノズル開閉弁42は、ノズル41とノズルホルダ43とが鉛直方向に沿う方向に相対的な移動をすることに伴い、三つの開閉弁が連鎖的に開閉する構成である。第一状態から第二状態に移行すると、第一ノズル開閉弁142が開き、接着剤45が第一接着剤流路148に流入して、ボール状の第二ノズル開閉弁144をノズル吐出部140の側へ押出す。すると、接着剤45の圧力によって、第三ノズル開閉弁146が開口して接着剤45がノズル吐出部140から吐出する。よって、接着剤45は上流側から下流側へ向かって段階的に流れるので、一度に流出して事故が発生することを防止する。さらに、第一状態では、三つの開閉弁が全て閉じた状態になるので、接着剤45が流出することを防止する。
【0157】
また、
図20等に示すように、第三ノズル開閉弁146は、弾性力を有する薄膜の部材からなり、第三接着剤流路150の中心の位置に対応する部分にあって、開いたときに第三接着剤流路150における水平方向の幅よりも小さい開閉弁穴135を備える。第三ノズル開閉弁146は、薄膜の伸縮性を有する材質なので、接着剤45による圧力によって開閉が可能となる。よって、接着剤45を塗布する状態と、接着剤45の吐出を停止する状態とをさらにより確実に形成することができる。なお、開閉弁穴135は極微細な穴であることが好ましい。その場合は、第三ノズル開閉弁146が、第一状態においてより確実に、第二接着剤流路147から第三接着剤流路150へ接着剤45が流れることを停止できる。さらに、第二状態において開閉弁穴135は極微細な穴となるので、接着剤45は開閉弁穴135の大きさに応じて安定的に第二接着剤流路147から第三接着剤流路150へ接着剤45を流すことができる。
【0158】
また、接着剤塗布装置4は、外形上金型20が鋼板17の外形を一枚打ち抜く度に、或いは、所定枚数打ち抜く毎に所定角度θ回転する。第四の課題は、その場合、鋼板17が回転することによって接着剤45の塗布位置が変化すると、接着性能が低下する可能性があることである。この課題に対し、ノズルユニット40が外形上金型20の内部にあって、外形上金型20と同期して第一中心軸C1の周りに回転可能である。よって、鋼板17の外形を打ち抜くときに鋼板17の外形形状に対する相対的な接着剤45の塗布位置を一定にすることができる。
【0159】
また、第五の課題は以下である。積層鋼板製造装置100から積層鋼板製造装置400までにおいて、外形上金型20と外形下金型30とが所定角度θ回転した状態で、互いの位置が一致しない状態、すなわち回転不良が発生すると外形金型11、さらには金型10全体が損傷する恐れがあることである。この回転不良を検出し、金型10等が破損を未然に防ぐという課題がある。さらに、接着剤塗布装置4が外形上金型20の内部にあるため、外形上金型20と外形下金型30との間で回転不良が発生したとき、連動した不具合の発生を防止するという課題がある。本発明の第一の態様に係る積層鋼板製造装置100等は、この課題を解決するものである。
【0160】
図21に示すように、回転不良検出ピン123の先端部222の位置が、回転不良検出穴39の位置と一致しない状態で上金型2が鉛直方向に沿って下側に移動するとき、外形パンチ凸部228がパンチカム凹部223に侵入する。外形上金型20は、パンチカム凹部223の凹み量だけが鉛直方向の上側へ移動した状態となるので、上金型2が下金型3に向かって移動しても、外形上金型20は鋼板素材16の位置まで到達しない。よって、外形上金型20は、外形下金型30に対して正しい位置にないときは鋼板17の打抜きを停止するので、外形上金型20及び外形下金型30の破損を防止することができる。
【0161】
さらに、上金型2は、外形金型11に回転不良が発生したとしても、鋼板17を打ち抜く動作として鉛直方向に沿う方向の下側へ移動した後、復帰動作として上側へ移動する動作を行う。
図22に示すように、上金型2が鉛直方向に沿う方向の上側へ移動すると、外形上金型20における外形パンチ21が同時に上側へ移動する。ノズルユニット40は、外形上金型20のうちの外形パンチ21が上昇するとき、ノズル隙間255(
図19参照)が存在する間はノズル吐出部140が鋼板17に接触した状態を維持する。すなわち、ノズルユニット40は、一定の間、上金型2及び外形上金型20の挙動とは独立した挙動をする。よって、外形金型11に回転不良が発生しても、接着剤塗布装置4におけるノズルユニット40は連動した不具合を発生しないという効果がある。
【0162】
また、第六の課題は、接着剤塗布装置4は、製造する積層鋼板14における鋼板17の積層枚数に応じて、接着剤45の塗布を停止することである。積層鋼板14は、鋼板17を一定枚数接着したものである。積層鋼板製造装置100等は、鋼板素材16から連続して鋼板17を打ち抜くため、鋼板17を打ち抜く度に毎回接着剤45を塗布すると、一定枚数積層したときに接着工程を停止できないからである。
【0163】
図5及び
図21に示すように、以下のようにこの課題を解決する。接着剤塗布装置4は、上金型2が鉛直方向の下側へ移動して外形上金型20と外形下金型30とによって鋼板17を打ち抜くとき、ノズル係合部241が、ノズルカム係合面244と係合するか或いはノズルカム凹部245と係合するかによってノズル吐出部140の位置を選択可能である。よって、上金型2が鉛直方向の下側に移動して鋼板17の外形を打ち抜くときに、鋼板17に接着剤45を塗布するか或いは塗布を停止するかを選択することができる。
【0164】
<鋼板整列加熱装置9の概略構成の説明>
次に、
図27を参照して、全ての実施形態に共通する鋼板整列加熱装置9の構成を説明する。接着剤45は、熱硬化性である。外形下金型30は、第一中心軸C1を中心とし、鉛直方向に沿う方向の下側に延びる鋼板案内路36を備える。鋼板案内路36は、外形上金型20と外形下金型30とによって打抜いた鋼板17を鉛直方向に沿う方向の下側へ案内する。さらに外形下金型30は、鋼板案内路36の一部を形成し、外形下金型30よりも鉛直方向の下側に、鋼板17を加熱する鋼板整列加熱装置9を備える。
【0165】
鋼板整列加熱装置9の少なくとも一部は、鋼板17に接触して加熱すると共に、鋼板案内路36において鋼板17を積層方向に整列する。接着剤塗布装置4によって鋼板17に塗布した接着剤45は、鋼板整列加熱装置9の加熱によって硬化し、鉛直方向の上下方向に隣接する鋼板17と互いに接着して積層鋼板14を形成する。
【0166】
<加熱ユニット7の構成説明>
次に、
図24、
図27を参照して、鋼板整列加熱装置9における加熱ユニット7の構成を説明する。鋼板整列加熱装置9は、鋼板17又は積層鋼板14を加熱する加熱ユニット7を備える。加熱ユニット7は、鋼板案内路36に対して交差する方向において、鋼板案内路36を囲うよう配置し、かつ第一中心軸C1へ向かって移動可能な複数の加熱可動部72と、加熱可動部72を加熱する加熱部74を備える。さらに、加熱ユニット7は、加熱可動部72を第一中心軸C1と交差する方向に移動させる可動弾性部材73と、加熱可動部72の移動を案内する加熱可動部ホルダ71を備える。第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500においては、加熱可動部ホルダ71は、加熱可動部72と共に第一中心軸C1の周りに回転可能である。
【0167】
加熱可動部ホルダ71は、外形下金型30とは鉛直方向において離間し、加熱可動部72は、可動弾性部材73の弾性力によって、鋼板17の外周部に対して複数の方向から加圧接触することによって加熱し、さらに鋼板案内路36に対する鋼板17を整列する。
【0168】
さらに詳細に説明すると、
図27に示すように、加熱部74は断熱材75を介して下金型3のサブダイプレート133に固定する。
図24に示す例では、加熱部74は加熱可動部ホルダ71の周りの四箇所に等間隔で配置するプレート状のヒーターである。なお、加熱可動部72は、圧縮コイルバネからなる可動弾性部材73によって、四方向から鋼板17の側面を押圧する例を示したが、これに限らず二方向以上の多方向から押圧してもよい。
図25に示す例では、加熱部74は、加熱可動部ホルダ71の外周を囲むリング状のヒーターである。
【0169】
加熱可動部72は、加熱部74の熱を受けて温度が上昇する。加熱可動部72が鋼板17の側面を押圧すると鋼板17に伝熱し、塗布した接着剤45が硬化して積層鋼板14を形成する。同時に、鋼板案内路36に対して鋼板17を積層方向に整列するので、積層鋼板14は鋼板17がずれることなく積層して形成することができる。
図24、
図25に示すように、例として、加熱可動部72は、四方向から鋼板17の側面を押圧するので、鋼板17を積層方向に整列する効果が高い。
【0170】
図6に示すように、鋼板案内路36は、外形下金型30の外形抜きダイ31から鉛直方向に沿う方向に下側へ延びる。外形上金型20の外形パンチ21と外形下金型30の外形抜きダイ31とによって打ち抜いた鋼板17は、順に鋼板17を打ち抜く毎に下側の鋼板17を押し下げ、鋼板整列加熱装置9に到達する。
図27に示すように、加熱部74によって加熱した加熱可動部72が鋼板17の側面を押圧すると、鋼板17が熱膨張する。このとき、圧縮コイルバネからなる可動弾性部材73が伸縮して鋼板17の側面を押圧する状態を維持する。加熱可動部ホルダ71の内側寸法は、自身が熱膨張することを考慮して、鋼板17の熱膨張を許容するように設定する。可動弾性部材73の反力は、加熱可動部ホルダ71が受け止める。
【0171】
また、鋼板整列加熱装置9に位置する鋼板17及び積層鋼板14は、鋼板17を打ち抜く際に外形パンチ21からの圧力を受ける。しかしながら、加熱可動部72が、可動弾性部材73の弾性力によって鋼板17又は積層鋼板14を側面から保持するので、積層鋼板14等の傾き或いは落下を防止する。可動弾性部材73に使用する圧縮コイルバネは、耐熱性を有するインコネルを材質とするものが好ましい。
【0172】
<鋼板整列加熱装置9の解決課題と効果>
以上説明したように、鋼板整列加熱装置9は種々の課題を解決し、効果を奏する。第一の課題は以下のとおりである。積層鋼板製造装置100等は、外形上金型20の外形パンチ21と外形下金型30の外形抜きダイ31とによって鋼板17を打抜き、鋼板案内路36へ鋼板17を鉛直方向の下側へ押し出す。鋼板17は、接着剤45を塗布した状態である。そこで、熱硬化型の接着剤45を硬化させるために鋼板17を加熱する構成が必要である。さらに、鋼板17は打抜きによって1枚ずつ鉛直方向の下側へ移動するが、鋼板案内路36に沿って積層方向に正しく整列して積層しないと積層鋼板14の側面が揃わない状態で接着してしまうという課題がある。
【0173】
鋼板整列加熱装置9は、これらの課題を解決するものである。
図27等に示すように、鋼板整列加熱装置9は、鋼板17に接触することで、鋼板17を側面から加熱して接着剤45を硬化して接着する機能と、鋼板案内路36において積層方向に整列する機能とを兼ね備えることができる。よって、鋼板整列加熱装置9は、鋼板17を積層方向に整列した状態で接着して積層鋼板14を形成できる。
【0174】
具体的には、加熱部74の加熱によって高温となった加熱可動部72が、可動弾性部材73の弾性力によって鋼板17の側面を押圧し、鋼板17に熱を与えることで接着剤45を硬化させることができる。合わせて、鋼板17を積層方向に整列し、側面が揃った状態で鋼板17を積層して積層鋼板14を形成することができる。
【0175】
また、第二の課題は以下のとおりである。鋼板整列加熱装置9は、鋼板17に対して接着剤45がムラ無く硬化するように、積層する際に鋼板17同士が接する面に対して均等に熱を与える必要がある。合わせて、第一中心軸C1に対して鋼板17の位置を積層方向に片寄り無く整列する必要がある。さらに、加熱部74の熱が外形下金型30に伝熱すると、外形抜きダイ31他の寸法が変化してしまい、鋼板17を打ち抜くときの寸法精度が低下するという課題がある。
【0176】
この課題に対して、
図24、
図25に示すように、鋼板整列加熱装置9は、加熱可動部72が鋼板案内路36を囲うよう複数配置するので、鋼板17を均等に加熱することができる。よって、鋼板整列加熱装置9は、積層鋼板14における接着剤45を均等に硬化させ、接着力を強固にできる。また、加熱可動部ホルダ71は外形下金型30とは鉛直方向において離間するので、外形下金型30への伝熱を低減できる。
【0177】
<鋼板整列加熱装置9の回転駆動に関する構成説明>
次に、鋼板整列加熱装置9の回転駆動に関する構成を説明する。以下に説明する鋼板整列加熱装置9の回転駆動に関する構成は、外形下金型30が第一中心軸C1の周りに回転可能な第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500における構成である。
図7等を参照してすでに説明したように、回転駆動装置5における下金型駆動装置19は、回転駆動源51によって回転駆動する加熱装置駆動部93を備える。加熱装置駆動部93(
図7参照)は、加熱装置駆動プーリ94と、加熱装置駆動プーリ94の回転を鋼板整列加熱装置9に伝達する加熱装置駆動ベルト95を備える。
【0178】
図27に示すように、鋼板整列加熱装置9は、第一中心軸C1の周りに回転可能であって、加熱装置駆動ベルト95の回転を受動する加熱装置プーリ84を備える。加熱装置駆動部93は、下金型駆動装置19と同期して駆動することにより、加熱可動部72を含む加熱可動部ホルダ71を外形下金型30と同期して回転させる。
【0179】
<鋼板整列加熱装置9の回転駆動に関する解決課題と効果>
以上説明したように、鋼板整列加熱装置9の回転駆動に関する構成は次の課題を解決し、効果を奏する。鋼板整列加熱装置9は、外形下金型30の冷却案内路35とは、第一凸形状部248と第一凹形状部249との間で接触するが、互いに結合した状態ではない。鋼板17及び積層鋼板14は、外形下金型30の回転に伴って回転するので、鋼板整列加熱装置9のうち、鋼板17及び積層鋼板14に接する部分は外形下金型30と同期回転する必要があり、課題である。
【0180】
この課題を解決するため、
図7等に示すように、下金型駆動装置19は回転駆動源51によって回転駆動する加熱装置駆動部93を備える。よって、加熱可動部72を含む加熱可動部ホルダ71は、外形下金型30とは独立して回転駆動でき、外形下金型30と同期して回転させることができる。
【0181】
<第一鋼板保持ユニット8の構成説明>
次に、
図24から
図28までを参照して、鋼板整列加熱装置9における第一鋼板保持ユニット8の構成を説明する。以下に説明する第一鋼板保持ユニット8の構成は、全ての実施形態において共通して適用可能な構成である。
図27に示すように、鋼板整列加熱装置9は、さらに、加熱ユニット7の鉛直方向の下側に、鋼板17を保持して落下を規制する第一鋼板保持ユニット8を備える。加熱可動部ホルダ71は、第一鋼板保持ユニット8と係合する連結穴76を備える(
図24、
図25、
図28参照)。
【0182】
図26、
図27に示すように、第一鋼板保持ユニット8は、鋼板案内路36の一部を形成する鋼板保持ブロック81と、鋼板保持ブロック81に対して、第一中心軸C1と交差する方向に移動可能な鋼板保持可動部82を備える。さらに第一鋼板保持ユニット8は、鋼板保持可動部82に対して、第一中心軸C1の方向へ弾性力を与える鋼板保持弾性部材83と、連結穴76に係合する連結ピン85を備える。鋼板保持可動部82は、鋼板保持弾性部材83の圧力によって積層鋼板14の外周部を押圧して保持する。鋼板保持可動部82は、鋼板17又は積層鋼板14の外周部に対して複数の方向から接触して保持し、鋼板案内路36に対する積層鋼板14の落下を規制する。
図26に示す例では、鋼板保持可動部82は鋼板保持弾性部材83によって、四方向から鋼板17又は積層鋼板14の側面に接触する。
【0183】
図26、
図27を参照して、第一鋼板保持ユニット8の構成をさらに詳細に説明する。
図26に示すように、鋼板保持可動部82は四方向から第一中心軸C1に向かって延び、鋼板17又は積層鋼板14を保持する。鋼板案内路36を形成する鋼板保持ブロック81の内周部は、鋼板17及び積層鋼板14の外形に対応した形状と寸法に設定する。
図26に示す例では、鋼板保持ブロック81の内周部は四角形状である。なお、鋼板保持可動部82は、四方向から鋼板17又は積層鋼板14を保持する例を示したが、これに限らず、二方向以上の多方向から保持してもよい。
【0184】
図27に示すように、鋼板保持ブロック81の内周部における水平方向の寸法のうち、鋼板保持可動部82が摺動する溝の上端部から上側は、第一内側寸法285である。第一内側寸法285は、通過する積層鋼板14が熱膨張した状態の寸法に対してわずかの隙間が生じるよう設定する。例として、第一内側寸法285は、積層鋼板14との片側の隙間を0.01~0.02mm程度に設定する。積層鋼板14が、熱膨張した場合においても鋼板案内路36を形成する鋼板保持ブロック81の内周部を通過可能にするためである。
【0185】
これに対し、
図27に示すように、鋼板保持ブロック81の内周部における水平方向の寸法のうち、鋼板保持可動部82が摺動する溝の上端部から下側は、第二内側寸法286である。第二内側寸法286は、第一内側寸法285よりも0.2mm程度(積層鋼板14に対する片側の隙間としては0.1mm程度)大きくなるよう設定する。
【0186】
図6に示すように、下金型3は、鋼板案内路36の鉛直方向の下端部において、積層鋼板14を下側から支持する背圧支持台315を備える。背圧支持台315は、積層鋼板14を積層鋼板製造装置100等から外部に取り出すため、下金型3から下側へ移動する。その際、
図26、
図27に示すように、鋼板保持可動部82は、背圧支持台315が支持しない積層鋼板14が自重で下側へ落下しないように、鋼板保持弾性部材83による弾性力によって積層鋼板14を側面から保持する。
【0187】
さらに、背圧支持台315が積層鋼板14の下側の面を支持して下側へ移動すると共に、上側から鋼板17を打ち抜く際の下側への圧力が加わると、積層鋼板14は下側へすり抜ける。このため、上述したように、第二内側寸法286は第一内側寸法285よりもわずかに大きく設定する。
【0188】
次に、第一鋼板保持ユニット8のうち、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500に固有の構成を説明する。鋼板保持ブロック81は、第一中心軸C1の周りに回転可能である。
図26、
図27に示すように、加熱装置プーリ84は、鋼板保持ブロック81に形成する。回転駆動源51が駆動すると、加熱装置プーリ84が加熱装置駆動ベルト95の回転を受動して、鋼板保持ブロック81及び鋼板保持可動部82を回転させ、さらに連結ピン85と連結穴76を介して加熱可動部ホルダ71を回転させる。
【0189】
図27に示すように、鋼板保持ブロック81は、サブダイプレート133との間にベアリング部材28としてのボールリテーナーベアリングを備え、第一中心軸C1の周りにスムーズに回転する。積層鋼板14は、外形上金型20の外形パンチ21と外形下金型30の外形抜きダイ31とが鋼板17を一枚ずつ連続して打ち抜いて積層し、鋼板案内路36に沿って下側へ押し出すことによって、下金型3の鋼板案内路36から抜け出る。
【0190】
<第一鋼板保持ユニット8の解決課題と効果>
以上説明したように、第一鋼板保持ユニット8は以下の課題を解決し、効果を奏する。第一の課題は、鋼板整列加熱装置9が鋼板17を積層して積層鋼板14にすると、積層鋼板14は鋼板17に比べて重量が増すので、鉛直方向の下側へ落下してしまう可能性があることである。
【0191】
この課題を解決するため、
図26、
図27に示すように、第一鋼板保持ユニット8の鋼板保持可動部82が積層鋼板14の外周部に接触して保持するので、鋼板17に比べて重量が増す積層鋼板14が落下することを防止できる。
【0192】
また、第二の課題は、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500において、積層鋼板14を鋼板案内路36に沿って下側へ案内するため、第一鋼板保持ユニット8を加熱可動部ホルダ71と同期させて回転させる必要がある。この課題に対して、鋼板保持ブロック81に形成する加熱装置プーリ84は、連結ピン85と連結穴76を介して加熱可動部ホルダ71を回転させる。よって、加熱装置駆動部93は、鋼板保持可動部82と加熱可動部ホルダ71とを同期して回転させることができる。
【0193】
<第二鋼板保持ユニット108の構成説明>
次に、
図29、
図30を参照して、鋼板整列加熱装置9における第二鋼板保持ユニット108の構成を説明する。以下に説明する第二鋼板保持ユニット108の構成は、全ての実施形態において共通して適用可能な構成である。
図24から
図28までに示した、第一鋼板保持ユニット8と同様の構成は説明を省略する。
【0194】
図29、
図30に示すように、鋼板整列加熱装置9は、さらに、加熱ユニット7の鉛直方向の下側に、鋼板17を保持して落下を規制する第二鋼板保持ユニット108を備える。加熱可動部ホルダ71は、第二鋼板保持ユニット108と係合する連結穴76を備える。第二鋼板保持ユニット108は、鋼板案内路36の一部を形成する鋼板保持ブロック88と、鋼板保持ブロック88にあって、鋼板17又は積層鋼板14に接触する接触凸部89と、連結穴76に係合する連結ピン85を備える。接触凸部89は、積層鋼板14の外周部に接触して保持する。
【0195】
次に、第二鋼板保持ユニット108のうち、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500に固有の構成を説明する。加熱装置プーリ84は、鋼板保持ブロック88に形成する。回転駆動源51が駆動すると、加熱装置プーリ84が加熱装置駆動ベルト95の回転を受動して鋼板保持ブロック88を回転させ、さらに連結ピン85と連結穴76を介して加熱可動部ホルダ71を回転させる。
【0196】
以上説明したように、第二鋼板保持ユニット108が、第一鋼板保持ユニット8と異なるのは、第一鋼板保持ユニット8における鋼板保持可動部82と鋼板保持弾性部材83が無い代わりに、鋼板保持ブロック88における接触凸部89が積層鋼板14等を保持する点である。
【0197】
<第二鋼板保持ユニット108の解決課題と効果>
以上説明したように、第二鋼板保持ユニット108は、第一鋼板保持ユニット8にて説明した課題と同様の課題を解決し、効果を奏する。第一の課題は、鋼板整列加熱装置9が鋼板17を積層して積層鋼板14にすると、積層鋼板14は鋼板17に比べて重量が増すので、鉛直方向の下側へ落下してしまう可能性があることである。
【0198】
この課題を解決するため、
図29、
図30に示すように、第二鋼板保持ユニット108の鋼板保持ブロック88の接触凸部89が積層鋼板14の外周部に接触して保持するので、鋼板17に比べて重量が増す積層鋼板14が落下することを防止できる。
【0199】
また、第二の課題は、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500において、積層鋼板14を鋼板案内路36に沿って下側へ案内するため、第二鋼板保持ユニット108を加熱可動部ホルダ71と同期させて回転させる必要がある。この課題に対して、鋼板保持ブロック88に形成する加熱装置プーリ84は、連結ピン85と連結穴76を介して加熱可動部ホルダ71を回転させる。よって、加熱装置駆動部93は、鋼板保持可動部82と加熱可動部ホルダ71とを同期して回転させることができる。
【0200】
<第一鋼板保持ユニット8と外形下金型30との関係説明>
次に、
図24から
図28までを参照して、第一鋼板保持ユニット8と外形下金型30との関係について説明する。以下に説明する関係は、全ての実施形態に共通である。外形下金型30の鉛直方向における下端部の一部と、鋼板整列加熱装置9の加熱可動部ホルダ71の上端部の一部は、外形下金型30に第一凸形状部248を形成し、加熱可動部ホルダ71に第一凸形状部248に対応する第一凹形状部249を形成する。加熱可動部ホルダ71の鉛直方向における下端部の一部と、鋼板保持ブロック81の上端部の一部は、一方に第二凸形状部258を形成し、他方に第二凸形状部258に対応する第二凹形状部259を形成する。
【0201】
図27に示すように、外形下金型30と加熱可動部ホルダ71とは、第一凸形状部248と第一凹形状部249とが、第一中心軸C1と交差する方向にのみ接触して係合する。さらに、鉛直方向において外形下金型30の下端を形成する下側面266と、加熱可動部ホルダ71の上側を形成する上側面267とは離間する。鋼板案内路36のうち外形下金型30が形成する部分と加熱可動部ホルダ71が形成する部分との中心位置が、第一中心軸C1と一致する。加熱可動部ホルダ71と鋼板保持ブロック81とは、第二凸形状部258と第二凹形状部259とが接触して係合し、鋼板案内路36のうち加熱可動部ホルダ71が形成する部分と鋼板保持ブロック81が形成する部分との中心位置が、第一中心軸C1と一致する。
【0202】
図27に示すように、第一凸形状部248と第一凹形状部249とは、鉛直方向において隙間265を有する。よって、第一凸形状部248と第一凹形状部249との接触は一部のみであり、互いに結合した状態ではなく分離した構成である。また、隙間265は、加熱可動部ホルダ71が熱膨張して鉛直方向の寸法が変化したとき、冷却案内路35との干渉を防止する。加熱可動部ホルダ71が加熱部74の加熱によって温度が上昇した場合、冷却案内路35への伝熱を抑えることができる。
【0203】
図24、
図25に示すように、第一凹形状部249は例として四角形状であり、嵌合する第一凸形状部248も四角形状である。なお、第一凸形状部248と第一凹形状部249は、四角形状に限らず他の多角形状でもよいし、円形状或いは楕円形状でもよい。また、
図26に示すように、第二凸形状部258と第二凹形状部259も、同様に四角形状である。四角形状に限らず他の多角形状でもよいし、円形状或いは楕円形状でもよい。
【0204】
第一凸形状部248と第一凹形状部249、及び第二凸形状部258と第二凹形状部259は、いずれも常温の状態で締まり嵌めとなるよう形成する。常温の状態で、冷却案内路35と加熱可動部ホルダ71との間、及び加熱可動部ホルダ71と鋼板保持ブロック81との間に隙間が生じて、第一中心軸C1に対する位置ずれを防止するためである。これにより、鋼板17を積層する際に、積層鋼板14が積層方向にずれて重なることを防止する。
【0205】
次に、
図24、
図28を参照して、連結穴76と連結ピン85との関係を説明する。連結ピン85は、鋼板保持ブロック81において、第一中心軸C1を中心とする同一の円周上に複数ある。連結穴76は、加熱可動部ホルダ71において、連結ピン85の位置に対応して形成し、第一中心軸C1と交差する方向における長さ77は、連結ピン85の直径以上である。
【0206】
第一中心軸C1を中心とする円周方向の幅78と連結ピン85の直径との関係は、円周方向の幅が連結ピン85の直径以上であって、かつ、互いの間の隙間は、隙間嵌めのうちの精転合程度の関係である。隙間嵌めは、一般的に軸径が穴径より小さく隙間がある状態である。穴径の最小許容寸法よりも軸径の最大許容寸法が小さい場合を示す。そのうちの精転合とは、ほとんど互いの間にガタのない精密な運動を要求する場合の関係を示す。この場合、連結穴76の幅78は、連結ピン85の直径に合わせて加工し、第一中心軸C1と交差する方向に相対的に摺動可能な程度に隙間を無くした状態とする。
【0207】
加熱部74が加熱可動部72を加熱することで、加熱可動部ホルダ71が熱膨張すると、連結穴76は、第一中心軸C1と交差する方向において、第一中心軸C1の側の端部86と、第一中心軸C1を中心とする円周方向とにおいて、連結ピン85と係合する。鋼板保持ブロック81と加熱可動部ホルダ71とは、第一中心軸C1を中心として、第一中心軸C1と交差する方向と、第一中心軸C1を中心とする円周方向とにおいて互いの動きを防止する。
【0208】
図24に示す例として、連結穴76が長方形の穴の場合、積層鋼板14と加熱可動部ホルダ71とが熱膨張すると、第一中心軸C1を中心として水平方向へ放射状にほぼ均等に膨張する。それに対して、円周方向においては、膨張量が微少である。連結穴76を複数備える場合、円周方向において均等に配置することが望ましい。それぞれの連結穴76と連結ピン85との間に隙間があっても、複数箇所に備えれば加熱可動部ホルダ71と鋼板保持ブロック81との位置ずれが減少するからである。
【0209】
加熱可動部ホルダ71は、第一中心軸C1を中心として水平方向へ放射状にほぼ均等に熱膨張する。この場合、鋼板保持ブロック81における第二凸形状部258と、加熱可動部ホルダ71の第二凹形状部259との間には、均等に隙間が発生する。これに対し、第一中心軸C1と交差する方向において、連結穴76と連結ピン85とが係合し、互いの動きを防止する。よって、加熱可動部ホルダ71と鋼板保持ブロック81とは、第一中心軸C1と交差する方向において、第一中心軸C1を中心とする位置関係を維持する。また、円周方向においては、連結穴76が長方形の場合、円周方向における連結ピン85との間は加熱可動部ホルダ71が熱膨張しても隙間の変化は少ないので同様に位置関係を維持する。
【0210】
次に、
図28を参照して、連結穴76が特定の形態の場合の構成を説明する。連結穴76は、第一中心軸C1と交差する方向において、第一中心軸C1の側の端部86が、連結ピン85の半径以上の半径79で形成した円弧形状であり、第一中心軸C1から遠ざかるにつれて円周方向の幅が広くなる開口である。なお、好ましくは、第一中心軸C1の側の端部86の半径79が、連結ピン85に対して微細な隙間であって、連結ピン85の半径とほぼ同じ半径である。
【0211】
図28(a)に示すように、常温の状態では、連結ピン85と連結穴76の第一中心軸C1の側の端部86との間は、隙間87がある。これに対し、
図28(b)に示すように、加熱可動部ホルダ71が熱膨張すると矢印方向に膨張する。このとき、連結ピン85を備える鋼板保持ブロック81は熱膨張による膨張が少ないので、隙間87が無くなって連結ピン85と連結穴76の端部86とが係合する状態となる。鋼板保持ブロック81と加熱可動部ホルダ71とは、互いの中心位置が第一中心軸C1と一致した状態で位置関係を維持することになる。以上説明したように、加熱可動部ホルダ71と鋼板保持ブロック81との間は、相対的な位置関係が変化するため、連結穴76と連結ピン85とが係合して鉛直方向において互いに接触する状態であって、互いの間は固定しない。
【0212】
<第一鋼板保持ユニット8と外形下金型30との関係における解決課題と効果>
以上説明したように、第一鋼板保持ユニット8と外形下金型30との関係における構成は、種々の課題を解決し効果を奏する。第一の課題は以下である。鋼板整列加熱装置9は、鋼板17に塗布した接着剤45を加熱硬化するために鋼板17を加熱するが、外形下金型30のうちの特に外形抜きダイ31に伝熱すると寸法が変化して、鋼板17を打ち抜く際に寸法精度が低下する。
【0213】
この課題を解決するための構成を、
図24、
図25、及び
図27を参照して説明する。外形下金型30の冷却案内路35と鋼板整列加熱装置9の加熱可動部ホルダ71とは、それぞれの第一凸形状部248と第一凹形状部249とが、第一中心軸C1と交差する方向にのみ接触して係合する。さらに、鉛直方向において外形下金型30の下端を形成する下側面266と、加熱可動部ホルダ71の上端を形成する上側面267とは離間する。鋼板案内路36のうち外形下金型30が形成する部分と加熱可動部ホルダ71が形成する部分との中心位置が、第一中心軸C1と一致する。よって、外形下金型30と加熱可動部ホルダ71との鋼板案内路36の中心位置を一致させることができる。外形下金型30と加熱可動部ホルダ71とは、第一凸形状部248と第一凹形状部249のみが接触して係合し、鉛直方向において離間するので、加熱可動部ホルダ71から外形下金型30への伝熱を限定することができる。
【0214】
また、
図26、
図27に示すように、加熱可動部ホルダ71と鋼板保持ブロック81とは、第二凸形状部258と第二凹形状部259とが接触して係合する。鋼板案内路36のうち加熱可動部ホルダ71が形成する部分と鋼板保持ブロック81が形成する部分との中心位置が、第一中心軸C1と一致する。よって、鋼板整列加熱装置9は、鉛直方向において外形下金型30から鋼板保持ブロック81に繋がる鋼板案内路36の中心位置を一致させることができる。
【0215】
次に、第二の課題は以下である。加熱可動部ホルダ71は、加熱部74による加熱の影響で熱膨張する。加熱可動部ホルダ71に対して、鉛直方向の下側に接合する鋼板保持ブロック81は、加熱部74の加熱による影響を直接受けないので、熱膨張による寸法変化が異なる。このとき、加熱可動部ホルダ71と鋼板保持ブロック81との間で、第一中心軸C1に対して中心位置がずれる恐れがある。中心位置がずれると、加熱可動部ホルダ71によって形成する鋼板案内路36と鋼板保持ブロック81によって形成する鋼板案内路36との間で段差が生じてしまい、鋼板17及び積層鋼板14がスムーズに下側へ移動できない。
【0216】
特に、積層鋼板14のサイズが大きいと、外形下金型30の対応する部分のサイズが大きくなるので、熱膨張による変形量が大きくなる。すなわち鋼板整列加熱装置9のサイズが大きくなるので、冷却案内路35の第一凸形状部248と加熱可動部ホルダ71の第一凹形状部249との間の隙間が無視できない程度になりうる。その場合、加熱可動部ホルダ71は中心位置が第一中心軸C1から外れてしまう。特に、鋼板17を打ち抜く毎に外形下金型30を回転させると、回転慣性力の影響もあって、冷却案内路35と加熱可動部ホルダ71との間のガタが大きくなる。すると、鋼板17の位置が乱れて積層鋼板14の側面が乱れた状態となるという課題がある。
【0217】
この課題を解決するため、鋼板整列加熱装置9は以下の構成により効果を奏する。
図24、
図25、及び
図28に示すように、加熱可動部ホルダ71は、熱膨張すると、連結ピン85と連結穴76とが係合し、第一中心軸C1を中心として、第一中心軸C1を交差する方向と、第一中心軸C1を中心とする円周方向において互いの動きを防止する。よって、加熱可動部ホルダ71と鋼板保持ブロック81とが第一中心軸C1を中心として互いの中心位置がより確実に一致した状態で一体化するので、熱膨張するときに互いの中心位置が一致した状態を維持する。
【0218】
連結ピン85と連結穴76の構成は、加熱可動部ホルダ71と鋼板保持ブロック81との間に発生する変形によるズレを吸収するためである。加熱可動部72の加熱によって、鋼板17及び積層鋼板14と共に加熱可動部ホルダ71が熱膨張して変形するからである。よって、加熱可動部ホルダ71が熱膨張しても、鋼板17及び積層鋼板14を整列する機能を維持できる。
【0219】
次に、第三の課題は以下である。外形下金型30が第一中心軸C1を中心として回転するとき、加熱可動部ホルダ71が熱膨張していると、鋼板保持ブロック81との間で揺れが発生する場合があり課題である。すでに説明したように、冷却案内路35と加熱可動部ホルダ71とは、固定せず単にはめ込んだ状態である。仮に、冷却案内路35の第一凸形状部248と加熱可動部ホルダ71の第一凹形状部249との間に隙間があると、外形下金型30を回転させたとき、両者間に回転タイミングがずれて加熱可動部ホルダ71に揺れが発生する恐れがあり課題である。
【0220】
この課題を解決するため、
図28の例に示す連結穴76は以下の構成である。連結穴76は、第一中心軸C1の側の端部86が連結ピン85の半径以上の半径79で形成した円弧形状であり、第一中心軸C1から遠ざかるにつれて円周方向の幅が広くなる開口である。なお、好ましくは、第一中心軸C1の側の端部86の半径79が、連結ピン85に対して微細な隙間であって、連結ピン85の半径とほぼ同じ半径である。
図28(b)に示すように、加熱可動部ホルダ71が矢印方向に熱膨張すると、連結ピン85は連結穴76の円弧形状の部分においてより確実に係合し、加熱可動部ホルダ71と鋼板保持ブロック81との中心位置が一致した状態を維持する。連結穴76と連結ピン85とがより確実に係合するので、加熱可動部ホルダ71と鋼板保持ブロック81とが一体的に揺れを防止する効果がある。
【0221】
<冷却装置6の構成説明>
次に、
図31から
図33までを参照して、冷却装置6の構成を説明する。まず、全ての実施形態に共通の構成を説明する。下金型3は、鉛直方向において、鋼板整列加熱装置9よりも上側に冷却装置6を備える(
図6参照)。冷却装置6は、以下の要素を備える。鋼板案内路36の一部を形成する冷却案内路35。冷却案内路35の外周側に固定する内側冷却部61。内側冷却部61の外周側にあって、下金型3に直接的又は間接的に固定する外側冷却部62。内側冷却部61と外側冷却部62との間に形成する冷却剤循環部64。さらに、冷却剤循環部64へ冷却剤260を供給する冷却剤供給部65を備える。冷却剤260は、内側冷却部61の外周上を循環可能である。
【0222】
さらに、
図31から
図33までに示すように、冷却装置6は、外側冷却部62に第一開口部66とドレン樋96(97)を備え、下金型3に直接的又は間接的に固定する外側冷却部固定台63を備える。外側冷却部62は、外側冷却部固定台63に固定する。外側冷却部固定台63は、第二開口部67を形成する。冷却剤循環部64は、第一開口部66及びドレン樋96(97)を除いて閉じた空間を形成する。冷却剤供給部65は、冷却剤冷却部69と、冷却剤冷却部69に繋がって冷却剤260を供給する少なくとも二つの冷却管68を備える。
【0223】
図32に示すように、冷却装置6は、外側冷却部62の内側に第一ドレン樋96を多数備える。第一ドレン樋96は、後述する第一冷却剤溜263と第二冷却剤溜264とをつなぐ鉛直方向に延びる樋である。少なくとも一つの冷却管68は、第一開口部66に通して冷却剤循環部64に連結し、他の冷却管68は、第二開口部67に通して冷却剤循環部64に連結する。冷却案内路35に接触する内側冷却部61を冷却して温度上昇した冷却剤260は、第二ドレン樋97から第二開口部67を通って冷却剤冷却部69にて温度を低下させる。冷却剤260は、さらに冷却管68を介して冷却剤循環部64へ供給することによって循環可能である。冷却剤260は、内側冷却部61の外周上を循環可能である。なお、ドレン樋は、第一ドレン樋96と第二ドレン樋97とを含めたものが相当する。
【0224】
図2等、及び
図31から
図33までは、積層鋼板製造装置100等が、接着剤塗布装置4及び鋼板整列加熱装置9の構成を含み、外形下金型30が下金型3の内部にあり、外形下金型30が第一中心軸C1の周りに回転可能である例を示す。しかしながら、以上説明した冷却装置6はこれに限定するものではなく、積層鋼板製造装置100等が、接着剤塗布装置4及び鋼板整列加熱装置9を含まない構成においても適用可能である。または、第六実施形態の積層鋼板製造装置600のように、下金型3に外形下金型30を含まない構成、或いは外形下金型30が第一中心軸C1の周りに回転しない構成においても適用可能である。図示しないが、積層鋼板14は接着剤45による接着ではなく、カシメによる積層も可能である。
【0225】
以上説明した冷却装置6において、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500までに適用する場合、すなわち、外形下金型30が第一中心軸C1の周りに回転可能な場合の構成を説明する。外形下金型30は、第一中心軸C1を中心とし、鉛直方向に沿う方向の下側に延びる鋼板案内路36を備える。外形下金型30は、第一中心軸C1を中心として回転可能であり、鋼板案内路36は、外形上金型20と外形下金型30とによって打抜いた鋼板17を鉛直方向に沿う方向の下側へ案内する。下金型3は、外形下金型30を冷却する冷却装置6を備える。
【0226】
冷却装置6は以下の構成要素を備える。鋼板案内路36の一部を形成し、外形下金型30と一体で形成するか、又は接続して外形下金型30と同期回転する冷却案内路35。冷却案内路35の外周側に固定し、外形下金型30と同期回転する内側冷却部61。内側冷却部61の外周側にあって、下金型3に直接的又は間接的に固定する外側冷却部62。内側冷却部61と外側冷却部62との間に形成する冷却剤循環部64。冷却剤循環部64へ冷却剤260を供給する冷却剤供給部65を備える。冷却剤260は、内側冷却部61の回転に伴って内側冷却部61の外周上を循環可能である。以上説明した以外の構成要素は、すでに説明した共通の構成と同様である。
【0227】
次に、
図31、
図33を参照して、全ての実施形態に共通する、内側冷却部61の上部の第一冷却剤溜263と下部の第二冷却剤溜264の構成を説明する。下金型3は、内側冷却部61における鉛直方向の上端部において冷却剤循環部64に接続し、円周方向に、冷却剤循環部64における内側冷却部61と外側冷却部62との間の隙間よりも大きな隙間を有する溝状の第一冷却剤溜263を備える。下金型3は、外側冷却部固定台63において、内側冷却部61の鉛直方向の下側にあって、冷却剤循環部64と連続し、内側冷却部61と外側冷却部62との間の隙間よりも大きな隙間を有する溝状の第二冷却剤溜264を備える。
【0228】
<冷却装置6の詳細な説明>
次に、
図31から
図33までを参照して、冷却装置6の構成をさらに詳細に説明する。ここでは、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500に適用する冷却装置6について説明する。冷却装置6は、冷却案内路35と、内側冷却部61と、外側冷却部62とによって構成し、内側冷却部61と外側冷却部62との間に冷却剤260を循環させる。
【0229】
内側冷却部61は、冷却案内路35の外周にリング状に嵌め込んで固定している。外側冷却部62は、内側冷却部61の外周に固定している。内側冷却部61は、冷却案内路35と共に第一中心軸C1の周りに回転可能である。内側冷却部61は、熱伝導性の良い銅、アルミニウム等の材質を使用する。外側冷却部62は、下金型3の冷却案内路ハウジング131(
図6参照)に固定している。
【0230】
外側冷却部62は、複数の冷却剤噴射穴である第一開口部66、第二開口部67を形成し、縦溝である冷却流路溝261と横溝である冷却流路溝262からなる冷却剤循環部64を形成する。冷却剤循環部64は、外側冷却部62の内周側に、円周方向において略均等に複数形成する。
図32に示す例では、円周方向に四箇所に形成するが、この例に限らず二箇所以上の複数箇所に形成可能である。冷却剤供給部65から供給する冷却剤260は、冷却管68を通り、第一開口部66を経由して冷却剤循環部64に流れる。
【0231】
冷却剤循環部64を循環して温度が上昇した冷却剤260は、第二開口部67を通り、冷却剤冷却部69で冷却し、再び冷却剤循環部64に流れる。よって、冷却剤260は継続的に鋼板案内路36及びその周辺を冷却する。冷却剤260は、第一開口部66から循環可能な程度の圧力によって噴射するので、内側冷却部61を通して冷却案内路35を急速に冷却する。冷却剤260は、水その他の液体でもよいし、或いはアルゴンガス、その他の気体でもよい。
【0232】
図6に示すように、冷却装置6は鉛直方向において、外形下金型30の外形抜きダイ31の下側にあって、鋼板整列加熱装置9よりも上側にある。鋼板整列加熱装置9による加熱によって鋼板17、積層鋼板14、及び鋼板案内路36の温度が上昇する。これに対して、冷却装置6は鋼板整列加熱装置9の上側にあるので、鋼板案内路36等の下側からの伝熱による温度上昇を低減する、或いは温度上昇をくい止める。
【0233】
冷却剤260は、第一開口部66から一定の圧力で噴射するため、内側冷却部61と外側冷却部62とから外部に噴出する恐れがある。その場合、冷却剤260が下金型3の内部に広がり、腐食その他の問題が発生する。すでに説明した、内側冷却部61の上部の第一冷却剤溜263と下部の第二冷却剤溜264は、冷却剤260が外部に噴出することを防止するための構成である。
【0234】
図31、
図33に示すように、第一冷却剤溜263は、内側冷却部61における鉛直方向の上端部において冷却剤循環部64に接続し、円周方向に形成する内側冷却部61と外側冷却部62との間の隙間よりも大きな隙間である。第一冷却剤溜263は、
図31等の断面図において、内側冷却部61が四方向のうちの三方向を囲い、他の一方向である下側は外側冷却部62が、縦溝である冷却流路溝261を除く部分を閉じた構成である。
【0235】
第二冷却剤溜264は、
図31等の断面図において、外側冷却部固定台63に形成する凹部に内側冷却部61の下端部を挿入した状態で四方向のうちの三方向を囲い、他の一方向である上側は外側冷却部62が、縦溝である冷却流路溝261を除く部分を閉じた構成である。
【0236】
<冷却装置6の解決課題と効果>
以上説明したように、冷却装置6は種々の課題を解決し、効果を奏する。第一の課題は以下である。積層鋼板製造装置100等は、外形上金型20の外形パンチ21及び外形下金型30の外形抜きダイ31が熱によって寸法が変化すると、鋼板17を打ち抜く際の寸法精度が低下し、正しい形状に形成できなくなるという課題がある。温度上昇の原因は幾つかあるが、一例として外形パンチ21と外形抜きダイ31とによって鋼板17を打ち抜くとき、打ち抜く際に摩擦熱が発生し、温度上昇を招く場合がある。
【0237】
また、積層鋼板14を形成するとき、カシメによって鋼板17を積層する場合に、積層時に摩擦熱が発生して温度上昇する場合がある。また、接着剤45が熱硬化性の場合、下金型3の内部で鋼板17を加熱する必要がある。この場合、下金型3が温度上昇し、外形抜きダイ31も温度上昇する場合がある。さらには、積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500の場合、外形下金型30が下金型3に対して第一中心軸C1の周りに回転する。このとき、外形下金型30と下金型3との間で、回転摺動による摩擦熱が発生して、外形抜きダイ31が温度上昇する場合がある。積層鋼板製造装置100等が備える冷却装置6はこれらの課題を解決するものである。
【0238】
図31から
図33までに示すように、冷却装置6は、鋼板案内路36の一部である冷却案内路35に固定する内側冷却部61と、下金型3に直接的又は間接的に固定する外側冷却部62との間に冷却剤循環部64を形成する。よって、冷却剤260は円周方向に冷却剤循環部64を循環し、内側冷却部61、及び冷却案内路35を冷却することができる。
【0239】
さらに、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500の場合、冷却剤260は、内側冷却部61が回転することによって冷却剤循環部64を円周方向に循環するので、円周方向の全体に対して内側冷却部61をより冷却することができる。さらに、内側冷却部61と接触する冷却案内路35を冷却することができる。また、
図17に示すように、積層鋼板製造装置500においては、回転駆動装置510によって外形下金型30と冷却案内路35及び内側冷却部61とを所定角度θ回転させる回転制御を行う。よって、冷却剤260が冷却剤循環部64において内側冷却部61の外周上をより循環可能なので、内側冷却部61をより冷却することができる。
【0240】
次に、第二の課題は以下である。積層鋼板製造装置100等は、連続して鋼板17の打抜き、積層鋼板14の積層を行う。すでに説明した温度上昇は継続的に発生するため、冷却装置6は、連続的に冷却することが必要であり課題である。
【0241】
この課題を解決するため、すでに説明した
図31から
図33までに示す構成のように、冷却装置6は冷却剤冷却部69を備え、温度上昇した冷却剤260を冷却し、冷却管68を通じて冷却剤循環部64へ循環させることができる。よって、冷却装置6は、継続的に冷却案内路35を冷却する効果を奏することができる。
【0242】
次に、第三の課題は以下である。冷却装置6は、冷却剤260が第一開口部66から一定の圧力で噴射するため、内側冷却部61と外側冷却部62とから外部に噴出する恐れがある。その場合、冷却剤260が下金型3に内部に広がり、腐食その他の問題が発生するという課題がある。
【0243】
特に、積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500までの場合、外形下金型30が第一中心軸C1の周りに回転するとき回転慣性力によってより冷却剤260が外部に噴出しやすい。
【0244】
この課題を解決するため、
図31から
図33までに示すように、冷却装置6は、冷却剤循環部64に流入する冷却剤260が、冷却剤循環部64の鉛直方向における上側及び下側へ広がるとき、冷却剤260は第一冷却剤溜263と第二冷却剤溜264とに溜まる。よって、冷却剤260が冷却装置6の外部へ流出することを防止できる。また、冷却剤260が、内側冷却部61の回転に伴って冷却剤循環部64の鉛直方向における上側及び下側へ広がるときも、冷却剤260は第一冷却剤溜263と第二冷却剤溜264とに溜まる。よって、冷却剤260が冷却装置6の外部へ流出することを防止できる。
【0245】
さらに、
図32に示すように、外側冷却部62の内側に第一ドレン樋96を多数備えるので、飛散した冷却剤260が第一冷却剤溜263に溜まったときに、冷却剤260を急速に第二冷却剤溜264へ排出することができる。また、
図33に示すように、第二ドレン樋97は、第二冷却剤溜264に溜まった冷却剤260を排出して、冷却剤供給部65へ循環させることができる。よって、冷却剤260は急速に循環して冷却効果を高めることができる。
【0246】
<製造方法>
次に本発明の第二の態様に係る、積層鋼板製造方法を説明する。なお、ここで説明する積層鋼板製造方法は、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500までを使用することを前提とする。まず、鋼板製造方法に係る構成を、
図36のブロック図を参照して説明する。積層鋼板製造装置100等は、全体の駆動等を制御する制御装置90を備える。入力装置18は、鋼板17の打抜き作業の開始と停止の入力はもとより、鋼板17の転積を行う際に鋼板17を何枚打ち抜く毎に外形金型11を回転させるかを決定する打抜き枚数を入力する装置でもある。
【0247】
入力装置18に入力した情報は、入出力インターフェース180が受取り、CPU181が各処理を行う。CPU181は、回転駆動制御装置54による回転駆動源駆動処理、鋼板素材16を移送する移送駆動処理、及び上金型2を昇降させる金型昇降駆動処理を行う。これらの処理に関し、ROM182及びRAM183は情報の記憶処理を行う。
【0248】
次に、CPU181は、処理した各駆動情報を入出力インターフェース180から各駆動回路に提供する。回転駆動装置5を駆動するときは、CPU181は回転駆動回路184に駆動情報を与え、回転駆動源51を駆動する。鋼板素材16を移送するときは、移送駆動回路185に駆動情報を与え、移送駆動源310を駆動する。また、下金型3に対して上金型2を昇降させることによって鋼板17を打ち抜く工程においては、CPU181は金型昇降駆動回路186に駆動情報を与え、金型昇降駆動源80が金型昇降駆動装置70を駆動する。
【0249】
次に、鋼板素材16から積層鋼板14を製造する工程を説明する。使用する積層鋼板製造装置100等の構成は、
図2等に示すように以下の構成である。鋼板素材16から鋼板17を打ち抜くため対となり、外形上金型20を含む上金型2と外形下金型30を含む下金型3からなる金型10。外形上金型20及び外形下金型30を回転駆動する回転駆動装置5。上金型2にあって、鋼板素材16を含めた鋼板17に接着剤45を塗布する接着剤塗布装置4。外形下金型30にあって、鉛直方向に沿う方向の下側に延びる鋼板案内路36。鋼板案内路36にあって、外形下金型30よりも鉛直方向の下側に、鋼板17を加熱する鋼板整列加熱装置9。下金型3にあって、鉛直方向において、鋼板整列加熱装置9よりも上側に備えた冷却装置6からなる。
【0250】
積層鋼板製造方法は、以下の第一工程から第四工程からなる。第一工程は、上金型2を鉛直方向に沿う方向の下側へ移動して、外形上金型20と外形下金型30とによって鋼板17を打ち抜く。第二工程は、第一工程に伴って、接着剤塗布装置4によって鋼板17に接着剤45を塗布する。第三工程は、鋼板整列加熱装置9によって、打ち抜いた鋼板17の外周側面に接触して加熱し、鋼板17に塗布した接着剤45を硬化するとともに、鋼板17を積層方向に整列する。第四工程は、回転駆動装置5によって外形上金型20、及び外形下金型30とを所定角度θ回転する。
【0251】
第一工程から第三工程までは、鋼板17を打ち抜く毎に行う。第二工程の接着剤45を塗布する工程は、
図23を参照して説明したように、積層鋼板14の積層枚数を調整するため、鋼板17を所定の枚数打ち抜く毎に停止して、接着剤45の塗布を停止する。ここで、所定の枚数とは、予め積層鋼板14を制作する上で鋼板17を積層する枚数である。所定の枚数打ち抜く毎に第二工程を停止することにより、一定の厚みの積層鋼板14を連続して制作するためである。第四工程は、回転駆動源51を駆動させるタイミングが、鋼板17を一枚打ち抜く度に、或いは、鋼板17を所定枚数打ち抜く毎に行う。例えば、鋼板17を一枚打ち抜く度に第四工程を行う場合は、第一工程から第四工程までを連続して行う。なお、積層鋼板製造装置100等において、第一工程から第四工程までを連続して行う場合は、外形金型11の回転のタイミングを指示するための打抜き枚数の入力は不要である。
【0252】
次に、
図34、
図35を参照して、鋼板17を打ち抜く工程の具体例を説明する。
図34に示す例は、鋼板17が点対称ではない外形形状である。この場合は、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第四実施形態の積層鋼板製造装置400までが該当する。鋼板17はT字状の外形形状に加えて、内部の三箇所に穴350を有する。金型10は、第一補助金型311、第二補助金型312、第三補助金型313、及び外形金型11からなる。第一補助金型311から第三補助金型313までは、鋼板17のうちの外形を除く穴350を形成する。穴350は、T字の外形に対して縦棒の位置に三つ並ぶ形状である。
【0253】
外形金型11は、鋼板17を一枚打ち抜く度に、或いは、鋼板17を所定枚数打ち抜く毎に、所定角度θ回転する。このとき、三つの穴350は、外形金型11が回転する度に位置が変化する。そのため、第一補助金型311から第三補助金型313までは、外形金型11が所定角度θ回転することを想定して穴350を形成する。
図34が示す例では、所定角度θは45度である。すなわち、穴350は本来形成する位置に加えて、45度周期で回転させた位置にも形成しておく。なお、
図34の例は、鋼板17は外形形状に加えて内部に穴350を有するが、外形形状のみの場合は第一補助金型311から第三補助金型313までによって行う工程は不要である。
【0254】
次に、
図35に示す例では、鋼板17の外形形状は円形状であり、点対称の形状である。すなわち、所定角度θ回転させたときの前後において、外形形状が一致する。この場合、外形金型11のうちの外形下金型30は第一中心軸C1の周りに回転可能な構成であるが、外形上金型20は第一中心軸C1の周りに回転可能な構成でなくてもよい。この例では、金型10は第一補助金型311から第四補助金型314までと外形金型11からなる。この場合は、第一実施形態の積層鋼板製造装置100から第五実施形態の積層鋼板製造装置500までが該当する。
【0255】
<製造方法の効果>
積層鋼板製造方法は、鋼板17の一枚を含む所定枚数において第一工程から第三工程を行い、鋼板17を一枚打ち抜く度に、或いは、鋼板17を所定枚数打ち抜く毎に第四工程を行う。積層鋼板製造方法は、鋼板17の一枚を含む所定枚数毎に鋼板素材16に外形上金型20と外形下金型30とを回転させて外形を打抜き、接着する。よって、鋼板17の外形形状に関わらず、鋼板素材16の厚みの偏差があっても積層鋼板14における厚みの偏差を低減することができる。
【符号の説明】
【0256】
2 上金型
3 下金型
4 接着剤塗布装置
6 冷却装置
7 加熱ユニット
8 第一鋼板保持ユニット
9 鋼板整列加熱装置
10 金型
11 外形金型
14 積層鋼板
16 鋼板素材
17 鋼板
20 外形上金型
30 外形下金型
35 冷却案内路
36 鋼板案内路
40 ノズルユニット
41 ノズル
42 ノズル開閉弁
43 ノズルホルダ
44 ノズル弾性部材
45 接着剤
46 接着剤貯留部
47 供給管
49 ノズル用スライドカム
61 内側冷却部
62 外側冷却部
63 外側冷却部固定台
64 冷却剤循環部
65 冷却剤供給部
66 第一開口部
67 第二開口部
68 冷却管
69 冷却剤冷却部
71 加熱可動部ホルダ
72 加熱可動部
73 可動弾性部材
74 加熱部
76 連結穴
78 幅
79 半径
81 鋼板保持ブロック
82 鋼板保持可動部
83 鋼板保持弾性部材
85 連結ピン
86 端部
87 隙間
88 鋼板保持ブロック
89 接触凸部
96 ドレン樋(第一ドレン樋)
100 積層鋼板製造装置
108 第二鋼板保持ユニット
135 開閉弁穴
140 ノズル吐出部
142 第一ノズル開閉弁
143 第一ノズル弁弾性部材
144 第二ノズル開閉弁
145 第二ノズル弁弾性部材
146 第三ノズル開閉弁
147 第二接着剤流路
148 第一接着剤流路
149 隙間
150 第三接着剤流路
200 積層鋼板製造装置
210 作動部材
241 ノズル係合部
244 ノズルカム係合面
245 ノズルカム凹部
248 第一凸形状部
249 第一凹形状部
257 隙間
258 第二凸形状部
259 第二凹形状部
260 冷却剤
263 第一冷却剤溜
264 第二冷却剤溜
265 隙間
266 下側面
267 上側面
300 積層鋼板製造装置
350 穴
400 積層鋼板製造装置
500 積層鋼板製造装置
513 作動スライドカム
520 接着剤塗布装置
600 積層鋼板製造装置
C1 第一中心軸
C3 中心軸