IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コトヒラ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電解水生成装置 図1
  • 特許-電解水生成装置 図2
  • 特許-電解水生成装置 図3
  • 特許-電解水生成装置 図4
  • 特許-電解水生成装置 図5
  • 特許-電解水生成装置 図6
  • 特許-電解水生成装置 図7
  • 特許-電解水生成装置 図8
  • 特許-電解水生成装置 図9
  • 特許-電解水生成装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】電解水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20220912BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20220912BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20220912BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
C25B1/26 C
C25B9/00 D
C25B15/08 302
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018145291
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2019030873
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2017151271
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391049150
【氏名又は名称】コトヒラ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 航
(72)【発明者】
【氏名】赤羽根 崇
(72)【発明者】
【氏名】大日方 利光
(72)【発明者】
【氏名】寺島 直道
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-007632(JP,A)
【文献】特開平06-099174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれも導電性材料からなり液体を通流させる相対的に小径の第1筒および相対的に大径の第2筒と、第1電極および第2電極を有して前記液体に所定電圧を印加する電源とを備えて前記液体から電解水を生成する電解水生成装置であって、
前記第2筒内に前記第1筒が収容された二重構造部が設けられ、
前記二重構造部における前記第1筒の外周面と前記第2筒の内周面との間が前記液体の流路として用いられると共に、前記流路のシールを行うシール部材が設けられており、 前記第1筒は、第1開口端部に径方向の内側に向かって延設された第1フランジと、第2開口端部に径方向の外側に向かって延設された第2フランジと、を有し、
前記第2筒は、第1開口端部に径方向の外側に向かって延設された第3フランジと、第2開口端部に径方向の外側に向かって延設された第4フランジと、を有し、
前記第1フランジの外方面に筒状の第1ブロックが固定されており、
前記第3フランジの外方面に筒状の第2ブロックが固定されており、
前記第2フランジの内方面と前記第4フランジの外方面とで挟持された位置に筒状の第3ブロックが固定されており、
前記シール部材として、
前記第1フランジの外方面と、前記第1ブロックとの間に、前記第1筒の軸方向に圧縮されるように配設されて前記流路のシールを行う第1シールと、
前記第3フランジの外方面と、前記第2ブロックとの間に、前記第2筒の軸方向に圧縮されるように配設されて前記流路のシールを行う第2シールと、
前記第2フランジの内方面と、前記第3ブロックとの間に、前記第1筒の軸方向に圧縮されるように配設されて前記流路のシールを行う第3シールと、
前記第4フランジの外方面と、前記第3ブロックとの間に、前記第2筒の軸方向に圧縮されるように配設されて前記流路のシールを行う第4シールと、
前記第1ブロックの外周面と、前記第2ブロックの内周面との間に、前記第1筒および前記第2筒の径方向に圧縮されるように配設されて前記流路のシールを行う第5シールと、を備え、
前記第1電極と、前記第2筒とが、電気的に接続され、
前記第2電極と、前記第1筒とが、電気的に接続されていること
を特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
前記第1フランジと、前記第1ブロックとの固定には、第1ボルトが用いられており、
前記第3フランジと、前記第2ブロックとの固定には、第2ボルトが用いられており、
前記第2フランジおよび前記第4フランジと、前記第3ブロックとの固定には、第3ボルトが用いられており、
前記第1筒、前記第2筒、前記第1ボルト、前記第2ボルト、および、前記第3ボルトは、チタンもしくはチタン合金を用いて形成されていること
を特徴とする請求項記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記第2ブロックには、前記流路と連通して前記液体を流入させる流入口となる貫通孔が設けられており、
前記第3ブロックには、前記流路と連通して前記液体を流出させる流出口となる貫通孔が設けられており、
前記第2ブロックおよび前記第3ブロックは、絶縁性樹脂材料を用いて同一形状に形成されていること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記第1ブロックにおける前記第1フランジと対向する面と逆側の面に導電性材料からなる第1側板が固定されており、
前記第1側板には、前記第1ブロックの内部空間および前記第1筒の内部空間と連通する通風孔が設けられていること
を特徴とする請求項1~いずれか一項に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記通風孔から、前記第1ブロックの内部空間および前記第1筒の内部空間へ空気を送入するファンを備えること
を特徴とする請求項記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記第1側板の径方向中心位置に、前記第2電極と電気的に接続される電源ケーブルの接続部が設けられていること
を特徴とする請求項または請求項記載の電解水生成装置。
【請求項7】
少なくとも前記第3フランジおよび前記第4フランジは、径方向の外周部における同一位置に、同一形状で直線状に切断された水平カット部を有すること
を特徴とする請求項1~いずれか一項に記載の電解水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置に関し、液体に所定電圧を印加して電解水を生成する電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の研究により、液体の例として塩化ナトリウム水溶液を用い、生成装置として一室型電解槽(無隔膜式電解槽)を用いて電気分解を行うことにより弱アルカリ性の電解水(電解次亜水)が生成され、二室型電解槽(有隔膜式電解槽)を用いて電気分解を行うことにより弱酸性の電解水が生成される等の知見が得られている。
【0003】
例えば、上記の電解次亜水は、低濃度でも優れた除菌効果が得られることが知られており、また、食品添加物認定水として直接食材にも使用できるため、使用者・食材・機器へのダメージが少ないという利点を備えている。ここで、電解水生成装置の例として、特許文献1(特許第3986820号公報)に記載の技術、あるいは、特許文献2(特許第4594357号公報)に記載の技術等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3986820号公報
【文献】特許第4594357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、電解水生成装置においては、液体に通電する電流を大きくすれば、電解水の生成量が増えることが知られている。しかしながら、大電流にすると発熱量が大きくなり、装置構成部材の劣化や破損が生じる危険性が高まるため、思うように大電流化を図ることができないという課題があった。
【0006】
そのため、電解水生成装置においては、冷却を如何に行うかが重要となる。上記の特許文献1に例示される装置では、電解槽を冷却用ジャケットで覆って冷却を行う構造となっている。一方、特許文献2に例示される装置では、電解槽を主配管内部に格納して冷却を行う構造となっている。ここで、これらの装置で使用する冷却水には、主配管を流れる希釈水を利用しているため、冷却能力は希釈水の流量に依存することとなる。したがって、主配管を閉塞して電解液のみを生成(貯蔵)する動作をなす電解水生成装置においては、その動作中に冷却能力が失われてしまう課題が生じる。また、電解槽の外殻の冷却が可能な一方、内部の電極には冷却水が接液しないため、電極を直接冷却することができずに、局所的な温度上昇が生じてしまう課題が生じる。さらに、構造が複雑であるため、装置コストが高くなってしまう課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、電解水生成装置においては、簡素な構造であると共に、放熱性を向上させて、より大きな電流による電気分解を行って電解水の生成量を増加させることが重要となる。併せて、電気分解に用いられる塩化ナトリウム水溶液等の液体は漏出が生じると金属材料の腐食等の原因となるため、如何に漏出を防止するかということも重要となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、放熱性を向上させて、より大きな電流による電気分解が可能で、電解水の生成量を増加させることができる共に、電気分解に用いられる液体の漏出を防止することができる簡素な構造の電解水生成装置を提供することを目的とする。
【0009】
一実施形態として、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0010】
一実施形態に係る電解水生成装置は、いずれも導電性材料からなり液体を通流させる相対的に小径の第1筒および相対的に大径の第2筒と、第1電極および第2電極を有して前記液体に所定電圧を印加する電源とを備えて前記液体から電解水を生成する電解水生成装置であって、前記第2筒内に前記第1筒が収容された二重構造部が設けられ、前記二重構造部における前記第1筒の外周面と前記第2筒の内周面との間が前記液体の流路として用いられると共に、前記流路のシールを行うシール部材が設けられており、前記第1筒は、第1開口端部に径方向の内側に向かって延設された第1フランジと、第2開口端部に径方向の外側に向かって延設された第2フランジと、を有し、前記第2筒は、第1開口端部に径方向の外側に向かって延設された第3フランジと、第2開口端部に径方向の外側に向かって延設された第4フランジと、を有し、前記第1フランジの外方面に筒状の第1ブロックが固定されており、前記第3フランジの外方面に筒状の第2ブロックが固定されており、前記第2フランジの内方面と前記第4フランジの外方面とで挟持された位置に筒状の第3ブロックが固定されており、前記シール部材として、前記第1フランジの外方面と、前記第1ブロックとの間に、前記第1筒の軸方向に圧縮されるように配設されて前記流路のシールを行う第1シールと、前記第3フランジの外方面と、前記第2ブロックとの間に、前記第2筒の軸方向に圧縮されるように配設されて前記流路のシールを行う第2シールと、前記第2フランジの内方面と、前記第3ブロックとの間に、前記第1筒の軸方向に圧縮されるように配設されて前記流路のシールを行う第3シールと、前記第4フランジの外方面と、前記第3ブロックとの間に、前記第2筒の軸方向に圧縮されるように配設されて前記流路のシールを行う第4シールと、前記第1ブロックの外周面と、前記第2ブロックの内周面との間に、前記第1筒および前記第2筒の径方向に圧縮されるように配設されて前記流路のシールを行う第5シールと、を備え、前記第1電極と、前記第2筒とが、電気的に接続され、前記第2電極と、前記第1筒とが、電気的に接続されていることを要件とする。
【0011】
また、他の実施形態として、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0012】
他の実施形態に係る電解水生成装置は、いずれも導電性材料からなり液体を通流させる相対的に小径の第1筒および相対的に大径の第2筒と、第1電極および第2電極を有して前記液体に所定電圧を印加する電源とを備えて前記液体から電解水を生成する電解水生成装置であって、前記第2筒内に前記第1筒が収容された二重構造部が設けられ、前記二重構造部における前記第1筒の外周面と前記第2筒の内周面との間が前記液体の流路として構成され、いずれも導電性材料からなり前記第1筒の第1開口端部に当接する第1側板、および前記第1筒の第2開口端部に当接する第2側板と、導電性材料からなり前記第1筒の内部空間に配設される一つのシャフトと、をさらに備え、前記第1側板および前記第2側板は、前記シャフトによって前記第1筒を間に保持した状態で相互に固定されると共に、いずれも前記シャフトを当接させて固定する固定部と、前記固定部の周囲に開口する通風孔と、を有し、前記第1電極と、前記第1筒、前記第1側板、前記第2側板、および前記シャフトとが、電気的に接続され、前記第2電極と、前記第2筒とが、電気的に接続されていることを要件とする。
【0013】
なお、上記の装置においては、一方の前記通風孔から前記第1筒の前記内部空間に空気を送入させて、他方の前記通風孔から前記空気を送出させるファンをさらに備える構成とすることが考えられる。また、前記二重構造部は、第1開口部において前記第1側板と第1押え板とで挟持されて固定される第4ブロックと、第2開口部において前記第2側板と第2押え板とで挟持されて固定される第5ブロックと、を有し、前記第4ブロックは、前記流路と連通して前記液体を流入させる流入口を有し、前記第5ブロックは、前記流路と連通して前記液体を流出させる流出口を有し、前記ファンは、前記第1側板に配設されており、前記液体の通流方向と前記空気の送流する方向とが一致する構成とすることが考えられる。また、前記第4ブロックは、前記第1側板との当接面に第1パッキンを入れ込む第1溝と、前記第1押え板との当接面に第2パッキンを入れ込む第2溝と、を有し、前記第1パッキンは、前記第1側板と前記第1押え板とで前記第4ブロックが挟持されたときに圧縮されて前記第1側板、前記第4ブロック、および前記第1筒の全てと密着する寸法に形成されており、前記第2パッキンは、前記第1側板と前記第1押え板とで前記第4ブロックが挟持されたときに圧縮されて前記第1押え板、前記第4ブロック、および前記第2筒の全てと密着する寸法に形成されており、前記第4ブロックは、内径が前記第1筒の外径よりも大きく形成されて、前記第1筒と非接触状態で配設され、且つ、前記第2筒の端部との間に空隙部が設けられて、前記第2筒と非接触状態で配設されており、前記第5ブロックは、前記第2側板との当接面に第3パッキンを入れ込む第3溝と、前記第2押え板との当接面に第4パッキンを入れ込む第4溝と、を有し、前記第3パッキンは、前記第2側板と前記第2押え板とで前記第5ブロックが挟持されたときに圧縮されて前記第2側板、前記第5ブロック、および前記第1筒の全てと密着する寸法に形成されており、前記第4パッキンは、前記第2側板と前記第2押え板とで前記第5ブロックが挟持されたときに圧縮されて前記第2押え板、前記第5ブロック、および前記第2筒の全てと密着する寸法に形成されており、前記第5ブロックは、内径が前記第1筒の外径よりも大きく形成されて、前記第1筒と非接触状態で配設され、且つ、前記第2筒の端部との間に空隙部が設けられて、前記第2筒と非接触状態で配設されている構成とすることが考えられる。
【発明の効果】
【0014】
開示の電解水生成装置によれば、放熱性を向上させて、より大きな電流による電気分解を行って電解水の生成量を増加させることができる。また、電気分解に用いられる液体の漏出を防止することができる。さらに、簡素な構造が実現できるため、装置コストをより一層、低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一の実施形態に係る電解水生成装置の例を示す概略図(正面断面図)である。
図2図1に示す電解水生成装置のII部拡大図である。
図3図1に示す電解水生成装置のIII部拡大図である。
図4】本発明の第二の実施形態に係る電解水生成装置の例を示す概略図(斜視図)である。
図5図4に示す電解水生成装置の概略図(正面視上半断面図)である。
図6図4に示す電解水生成装置の概略図(一部切欠き斜視断面図)である。
図7図6におけるVII部矢視拡大図である。
図8図6におけるVIII部矢視拡大図である。
図9図4に示す電解水生成装置の第1筒の例を示す概略図(図9(a)は左側面図、図9(b)は正面図、図9(c)は右側面図)である。
図10図4に示す電解水生成装置の第2筒の例を示す概略図(図10(a)は左側面図、図10(b)は正面図、図10(c)は右側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第一の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る電解水生成装置1の例を示す正面断面図(概略図)である(なお、ファンの部分は非断面表示)。また、図2は、図1におけるII部拡大図、図3は、図1におけるIII部拡大図である(なお、図の簡素化のため、ボルト類、電気配線は不図示)。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0017】
この電解水生成装置1は、いわゆる一室型電解槽(無隔膜式電解槽)の電解水生成装置であって、被電解液となる液体に所定の電圧を印加して電気分解を行うことにより、生成物としての電解水を得る装置である。例えば、当該液体として塩化ナトリウム水溶液(食塩水)を用いれば、弱アルカリ性の電解水である電解次亜水が生成される。一例として、濃度3[%]程度の塩化ナトリウム水溶液に対して、3.5~4.5[V]程度の電圧を印加して電気分解を行うと、pH7.5~10程度の液性を示す電解次亜水が生成される。ただし、本装置に用いることが可能な被電解液は塩化ナトリウム水溶液に限定されるものではなく、水、塩酸等、種々の液体を用いることが可能である。なお、被電解液の種類に応じて、生成される電解水の液性は異なるものとなる。
【0018】
図1図3に示すように、電解水生成装置1は、相対的に小径の第1筒11と、相対的に大径の第2筒12とを備えると共に、第2筒12内に第1筒11が収容された二重構造部14が設けられている。この二重構造部14における第1筒11の外周面11aと第2筒12の内周面12bとの間が、液体を通流させる流路20として構成される。なお、本実施形態においては後述の第4ブロック31、第5ブロック32の構成に応じて、第1筒11を相対的に長く、第2筒12を相対的に短くしている。なお、変形例として、第4ブロック31、第5ブロック32の構成を変更する等によって、第1筒11と、第2筒12とを同じ長さに形成してもよい(不図示)。
【0019】
本実施形態においては、第1筒11および第2筒12は金属もしくは炭素等の導電性材料(一例としてチタン合金)を用いた筒状(一例として円筒状)であって、第1筒11の外径L1が第2筒12の内径L2よりも小さくなるように形成されている。前述の通り、第1筒11の外周面11aと第2筒12の内周面12bとの間が流路20となるため、一例として、第1筒11の外径L1が100[mm]程度、第2筒12の内径L2が110[mm]程度であって、第1筒11および第2筒12の肉厚は共に2[mm]程度の構成としている。ただし、上記構成は一例に過ぎず、これらの寸法に限定されるものではなく、また、形状も円筒状に限定されるものでもない。
【0020】
また、電解水生成装置1は、第1筒11の第1開口端部11Aに当接する第1側板21および第1筒11の第2開口端部11Bに当接する第2側板22と、第1筒11の内部空間(内周面11bよりも内側となる空間)11Cに配設されて両端が第1側板21および第2側板22にそれぞれ当接する一本のシャフト36とを備えている。一例として、第1側板21および第2側板22は導電性材料(一例としてステンレス合金)を用いて板状に形成されており、シャフト36は、導電性材料(一例としてステンレス合金)を用いて中実丸棒状に形成されている。ただし、材質、形状共に、これらに限定されるものではない。
【0021】
ここで、第1側板21および第2側板22は、それらの間に第1筒11を挟み込んで保持した状態で、シャフト36を用いて相互に連結されている。これによって、第1側板21、第2側板22、第1筒11、およびシャフト36が相互に固定されて導通可能な状態となる。固定方法の一例として、シャフト36の両端部にはネジ孔が形成されており、第1側板21および第2側板22のそれぞれの中心近傍位置の固定部26A、26Bにそれぞれ設けられた貫通孔を挿通するネジ(ボルト)38A、38Bを螺合させて固定する構成となっている。
【0022】
次に、液体に電圧を印加するための電極等の構成について説明する。本実施形態においては、極性の異なる2つの電極(第1電極60A、第2電極60B)を有し、直流の所定電圧(3.5~4.5[V]程度)を印加可能な電源60が設けられる。
【0023】
先ず、第1電極60Aと、第1筒11、第1側板21、第2側板22、およびシャフト36とが電気的に接続される。前述の通り、第1側板21、第2側板22、第1筒11、およびシャフト36が導通可能に連結されているため、いずれかの部材と結線すれば、全て同電位とすることができる。本実施形態においては、第1電極60Aと、第2側板22とが結線(電気的に接続)される構成としている。
【0024】
一方、第2電極60Bと、第2筒12とが、電気的に接続される。本実施形態においては、第2筒12の外周面12aに、当該第2筒12と電気的な導通を保つ状態で外部電極52が固定されており、第2電極60Bと、第2筒12とが、当該外部電極52を介して結線(電気的に接続)される構成としている。一例として、外部電極52は、金属材料を用いたフランジ付き環状形状に形成されており第2筒12の外周面12aに密着するように巻回された状態でボルト等により締結される構成を備えている。
【0025】
上記の構成によれば、第1筒11の外周面11aと第2筒12の内周面12bとの間の流路20内を流れる液体に対し、第1電極60Aに接続された第1筒11と、第2電極60Bに接続された第2筒12とによって所定電圧を印加することができるため、当該液体を被電解液として電解水を生成することができる。
【0026】
ここで、原理的には、電源60における第1電極60Aと第2電極60Bとに関して、いずれを陽極(すなわち他方を陰極)に設定しても、流路20内を流れる液体に所定電圧を印加することが可能であるため、被電解液から電解水が生成される作用が得られる。
【0027】
しかしながら、その一方で、液体として塩化ナトリウム水溶液(食塩水)を用いて電気分解を行い、弱アルカリ性の電解次亜水を生成する場合等においては、接液する部材のうちの陽極となる方に高価な白金材料等を用いた表面処理を施さなければならないという技術的な必要性が生じる。この点に関して、電気分解を行う際の電流値が第1筒11と第2筒12とで同じ場合には、表面積(ここでは、電気分解で使用することのできる有効表面積)が大きい方が(電流密度が小さい方が)、表面処理への負荷が少なく、高寿命となるため、本実施形態においては、表面積(有効表面積)が大きい第2筒12に表面処理を施す構成としている。すなわち、第2筒12が陽極となるように(第1電極60Aが陰極、第2電極60Bが陽極となるように)設定している。
【0028】
また、本実施形態に係る電解水生成装置1は、二重構造部14の第1開口部14Aにおいて第1側板21と第1押え板23とで挟持されて固定部材(ボルト等)46を用いて固定される第4ブロック31と、二重構造部14の第2開口部14Bにおいて第2側板22と第2押え板24とで挟持されて固定部材(ボルト等)46を用いて固定される第5ブロック32とを備えている。一例として、第1押え板23および第2押え板24は導電性材料(一例としてステンレス合金)を用いて第2筒12が挿通可能な丸孔25A、25Bをそれぞれ備えた板状に形成されている。ただし、材質、形状共に、これらに限定されるものではない。
【0029】
ここで、第4ブロック31には、流路20の入口(すなわち二重構造部14の第1開口部14A)と連通して液体を装置内へ流入させる流入口33が設けられており、第5ブロックには、流路20の出口(すなわち二重構造部14の第2開口部14B)と連通して液体を装置外へ流出させる流出口34が設けられている。一例として、第4ブロック31および第5ブロック32は、酸性もしくはアルカリ性の液体に対して所定の耐性を有する必要があり、また、第1電極60Aと同電位となる部材(第1筒11等)と第2電極60Bと同電位となる部材(第2筒12等)との間に介在させるため電気的絶縁性を有する必要がある。本実施形態においては、後述する特徴的な構成を備えることによって、低コストの絶縁性樹脂材料(一例として、塩化ビニル樹脂等)を用いることが可能となっている。構成の例として、略円筒状に形成されていると共に、所定の箇所において外周面から内周面に至る貫通孔が設けられることによって流入口33および流出口34が形成されている。ただし、これらの構成に限定されるものではない。
【0030】
より具体的な構成として、第4ブロック31には、第1側板21との当接面(対向面)に第1パッキン41を入れ込む第1溝31Aと、第1押え板23との当接面(対向面)に第2パッキン42を入れ込む第2溝31Bとが設けられている。さらに、第4ブロック31は、内径L3が第1筒11の外径L1よりも大きく、且つ、第2筒12の端部(第1開口端部12A)との間に空隙部35Aを有する形状に形成されている。ここで、第1パッキン41は、第1側板21と第1押え板23とで第4ブロック31が挟持されて圧縮変形された状態において第1側板21、第4ブロック31、および第1筒11の全てと密着する寸法に形成されている。また、第2パッキン42は、第1側板21と第1押え板23とで第4ブロック31が挟持されて圧縮変形された状態において第1押え板23、第4ブロック31、および第2筒12の全てと密着する寸法に形成されている。上記の構成によれば、第4ブロック31は、第1筒11および第2筒12のいずれとも非接触の状態で、第1側板21と第1押え板23とで挟持して固定することが可能となる。
【0031】
同様に、第5ブロック32には、第2側板22との当接面(対向面)に第3パッキン43を入れ込む第3溝32Aと、第2押え板24との当接面(対向面)に第4パッキン44を入れ込む第4溝32Bとが設けられている。さらに、第5ブロック32は、内径L4が第1筒の外径L1よりも大きく、且つ、第2筒12の端部(第2開口端部12B)との間に空隙部35Bを有する形状に形成されている。ここで、第3パッキン43は、第2側板22と第2押え板24とで第5ブロック32が挟持されて圧縮変形された状態において第2側板22、第5ブロック32、および第1筒11の全てと密着する寸法に形成されている。また、第4パッキン44は、第2側板22と第2押え板24とで第5ブロック32が挟持されて圧縮変形された状態において第2押え板24、第5ブロック32、および第2筒12の全てと密着する寸法に形成されている。上記の構成によれば、第5ブロック32は、第1筒11および第2筒12のいずれとも非接触の状態で、第2側板22と第2押え板24とで挟持して固定することが可能となる。
【0032】
ここで、第1電極60Aと接続されて通電される第1筒11、および第2電極60Bと接続されて通電される第2筒12は、いずれも通電による発熱作用によって高温状態となる。仮に、第4ブロック31、第5ブロック32が、高温状態の第1筒11や第2筒12と接触すると、その熱で溶解や変形を生じてしまい、パッキン(第1~第4パッキン)による液体の封止が不十分となって液漏れが起こり得るという課題が生じる。しかし、本実施形態によれば、第4ブロック31および第5ブロック32は、第1筒11および第2筒12のいずれとも非接触の状態で固定する構成が実現できるため、当該課題の解決を図ることが可能となる。さらに、非接触構成が実現できることによって、耐熱温度の低い低コストの樹脂材料(一例として、塩化ビニル樹脂等)を採用することが可能となるため、装置コストの低減を図ることができる。
【0033】
なお、一例として、第1パッキン41、第2パッキン42、第3パッキン43、および第4パッキン44は、エラストマー(一例として、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等)を用いて形成されている。
【0034】
また、本実施形態に係る電解水生成装置1は、第1側板21の固定部26Aの周囲に開口形成された通風孔28Aから、第1筒11の内部空間11Cに空気を送入させて、第2側板22の固定部26Bの周囲に開口形成された通風孔28Bから当該空気を送出させる作用をなすファン50を備えている。
【0035】
これによれば、通電による発熱作用によって高温状態となる第1筒11を空冷することが可能となる。より具体的には、二重構造部14における外周側となる第2筒12は外気に対して露出しているため、放熱性が高く、温度上昇が抑えられる一方、内周側となる第1筒11は外気に対して露出しておらず、放熱性が低く、熱が内部空間11Cにこもってしまうため、温度が上昇してしまう課題が生じる。しかし、上記の構成を備えることによって、電気分解を行う際の電極となる第1筒11を内部空間11C側から直接、冷却することが可能となる。したがって、特に第1筒11の放熱性を高め、温度上昇を抑制することができるため、電気分解を行う際の電流値をより一層、大きくすることができ、電解水の生成量を増加させることが可能となる。
【0036】
さらに、本実施形態においては、第1筒11の内部空間11Cに一本のシャフト36を配設し、当該シャフト36によって第1側板21、第2側板22、第1筒11を固定する構成を備えている。このように、内部空間11Cにシャフト36を配設することによって、仮に第2筒12の外周面12aよりも外方となる位置に固定部材を設けようとする場合には複数本の設置が必要となるが、本実施形態のように内部空間11Cを利用することで一本の固定部材(すなわち、シャフト36)のみで足り、部品コストの低減を図ることが可能となる。この効果に加えて、シャフト36は、第1筒11と当接する第1側板21および第2側板22のそれぞれに対して当接する構成であるため、送風流路となる第1筒11の内部空間11Cに配設されてファン50の送風を受けることでヒートシンクの役割をなし、第1筒11のみならず、第1側板21および第2側板22の温度上昇をも抑制できる効果を得ることができる。
【0037】
なお、ファン50を設置する構成としては、次の(A)~(D)とすることが考えられる。(A)第1側板21に取付けて、第1筒11の内部空間11Cに空気を送入させる(送り込む)構成。(B)第1側板21に取付けて、第1筒11の内部空間11Cから空気を送出させる(吸い出す)構成。(C)第2側板22に取付けて、第1筒11の内部空間11Cに空気を送入させる(送り込む)構成。(D)第2側板22に取付けて、第1筒11の内部空間11Cから空気を送出させる(吸い出す)構成。
【0038】
ここで、本発明者らが鋭意研究した結果、上記(A)の構成とすることが最適であることを究明した。より詳しくは、装置各部における温度を外気温との差として表した表1に示すように、(A)の構成の場合に、装置各部の温度上昇をバランスよく抑制でき、局所的に温度上昇してしまうことの防止が可能となる効果が得られるためである(なお、表中の(E)はファンを設けない場合の比較データである)。すなわち、ファン50の設置に関しては、流路20内の液体の通流方向とファン50による空気の送流する方向とを一致させる構成が最適である。
【0039】
【表1】
【0040】
なお、上記のファン50に加えて、第2筒12の外周面12aよりも外方となる位置に、第2筒12の外周面12aに対して送風を行って、当該第2筒12の空冷を行うファンを追加的に設ける構成としてもよい(不図示)。
【0041】
(第二の実施形態)
続いて、本発明の第二の実施形態に係る電解水生成装置2について説明する。本実施形態に係る電解水生成装置2は、前述の第一の実施形態に係る電解水生成装置1と同様に、一室型電解槽(無隔膜式電解槽)の電解水生成装置であって、被電解液となる液体(例えば、濃度3[%]程度の塩化ナトリウム水溶液)に所定の電圧(例えば、3.5~4.5[V]程度)を印加して電気分解を行うことにより、生成物としての電解水(例えば、pH7.5~10程度の液性を示す電解次亜水)を得る装置である。なお、上記液体は塩化ナトリウム水溶液に限定されるものではなく、水、塩酸等を用いることも可能である。
【0042】
この電解水生成装置2は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同様であるが、幾つかの相違点を有している。以下、当該相違点を中心に本実施形態について説明する。ここで、本実施形態に係る電解水生成装置2の斜視図(概略図)を図4に、正面視上半断面図(概略図)を図5に、一部を切欠いた斜視断面図(概略図)を図6にそれぞれ示す。
【0043】
先ず、本実施形態に係る第1筒11は、第1開口端部11Aに径方向に延設された第1フランジ15と、第2開口端部に径方向に延設された第2フランジ16とを有している。一方、第2筒12は、第1開口端部12Aに径方向に延設された第3フランジ17と、第2開口端部12Bに径方向に延設された第4フランジ18とを有している。ここで、各フランジ15~18は、第1筒11、第2筒12と同じ材料(一例として、チタンもしくはチタン合金)からなる板材を用いて、中心に開口を有する円盤状に形成されており、それぞれ、第1筒11、第2筒12に対して、全周溶接により隙間なく連結されて設けられている。
【0044】
本実施形態においては、第1フランジ15は、第1筒11の径方向の内側に向かって延設された構成となっており、第2フランジ16は、第1筒11の径方向の外側に向かって延設された構成となっており、第3フランジ17は、第2筒12の径方向の外側に向かって延設された構成となっており、第4フランジ18は、第2筒12の径方向の外側に向かって延設された構成となっている。これによれば、第2筒12内に第1筒11を収容して組付けることが可能となる。すなわち、流路20として用いられる二重構造部14を、被電解液の電気分解に適切な寸法で構成すること可能となる。仮に、第1フランジ15を、第1筒11の径方向の外側に向かって延設された構成とした場合にも、第2筒12の内径を第1フランジ15の外径よりも大きく設定すれば、組付け自体は不可能ではない。しかし、そのような構成では、二重構造部14を適切な寸法に設定することは不可能もしくは困難となる。なお、少なくとも第3フランジ17および第4フランジ18は、径方向の外周部における同一位置に、同一形状で直線状に切断された水平カット部(いわゆる、Dカット部)17x、18xを有する構成としている。これにより、第3フランジ17および第4フランジ18の溶接を行う際の位相合わせが容易となる。
【0045】
次に、本実施形態に係る第1筒11、第2筒12は、第1フランジ15における軸方向の外方面(第2開口端部11B側の面と逆側の面)である第1フランジ外面15aに、所定寸法の軸方向厚みを有する筒状の第1ブロック61が固定されている。また、第3フランジ17における軸方向の外方面(第2開口端部12B側の面と逆側の面)である第3フランジ外面17aに、所定寸法の軸方向厚みを有する筒状の第2ブロック62が固定されている。さらに、第2フランジ16における軸方向の内方面(第1開口端部11A側の面)である第2フランジ内面16bと、第4フランジ18における軸方向の外方面(第1開口端部12A側の面と逆側の面)である第4フランジ外面18aとで挟持された位置に、所定寸法の軸方向厚みを有する筒状の第3ブロック63が固定されている。なお、流路20のシールを行うシール部材については後述する。
【0046】
ここで、第1~第3ブロック61~63は、前述の第4ブロック31、第5ブロック32と同じ理由から同様の材料(一例として、塩化ビニル樹脂等)で形成されている。より具体的な構成として、第1ブロック61には、第1フランジ外面15aとの対向面に後述のシール部材を入れ込む第1溝61Aと、第2ブロック62との対向面に後述のシール部材を入れ込む第2溝61Bとが設けられている。且つ、第1ブロック61の径方向寸法は、第1フランジ15に対して対向面が設けられるように設定されている。また、第2ブロック62には、第3フランジ外面17aとの対向面に後述のシール部材を入れ込む第1溝62Aが設けられている。且つ、第2ブロック62の径方向寸法は、第3フランジ17に対して対向面が設けられるように設定されている。また、第3ブロック63には、第2フランジ内面16bとの対向面に後述のシール部材を入れ込む第1溝63Aと、第4フランジ外面18aとの対向面に後述のシール部材を入れ込む第2溝63Bとが設けられている。且つ、第3ブロック63の径方向寸法は、第2フランジ16および第4フランジ18に対して対向面が設けられるように設定されている。
【0047】
さらに、第2ブロック62には、流路20の入口(すなわち二重構造部14の第1開口部14A)と連通して液体を装置内へ流入させる流入口33が設けられており、第3ブロック63には、流路20の出口(すなわち二重構造部14の第2開口部14B)と連通して液体を装置外へ流出させる流出口34が設けられている。一例として、第2ブロック62および第3ブロック63は、略円筒状に形成されていると共に、所定の箇所において外周面から内周面に至る貫通孔が設けられることによって流入口33および流出口34がそれぞれ形成されている。ただし、これらの構成に限定されるものではない。また、本実施形態に係る第2ブロック62および第3ブロック63は、同一形状に形成された共通部品として構成されている。部品の共通化を図ることで、装置コストの低減を可能としている。
【0048】
ここで、前述のシール部材として、第1フランジ外面15aと第1ブロック61との間に、第1筒11の軸方向に圧縮されるようにして流路20のシールを行う第1シール71が配設されて、第1フランジ15と第1ブロック61とが第1ボルト64によって締付け固定されている。また、第3フランジ外面17aと第2ブロック62との間に、第2筒12の軸方向に圧縮されるようにして流路20のシールを行う第2シール72が配設されて、第3フランジ17と第2ブロック62とが第2ボルト65によって締付け固定されている。また、第2フランジ内面16bと第3ブロック63との間に、第1筒11の軸方向に圧縮されるようにして流路20のシールを行う第3シール73が配設される共に、第4フランジ外面18aと第3ブロック63との間に、第2筒12の軸方向に圧縮されるようにして流路20のシールを行う第4シール74が配設されて、第2フランジ16および第4フランジ18と、第3ブロック63とが第3ボルト66によって締付け固定されている。なお、第1ブロック61の軸方向における外周面61xと、第2ブロック62の軸方向における内周面62yとの間に、第1筒11および第2筒12の径方向に圧縮されるようにして流路20のシールを行う第5シール75が配設されている。そのため、第1ブロック61の外径と第2ブロック62の内径とは、第5シール75の圧縮が可能な寸法に設定されている。
【0049】
上記の各シール部材による流路20のシール構造によれば、第1筒11および第2筒12の軸方向寸法、径方向寸法の精度、第1~第4フランジ15~18の径方向寸法、厚み寸法の精度、第1~第4フランジ15~18を第1筒11および第2筒12に溶接する位置の精度、第1~第3ブロック61~63の軸方向寸法、径方向寸法の精度、の全てにおいて相関なくそれぞれに製品(原材料品)公差および加工公差によるばらつきが生じている場合であっても、当該ばらつきに一切影響されることなく、安定的に各シール部材のシール作用を発揮させることができるため、流路20からの液体(被電解液)の漏出を確実に防止することができる。したがって、金属を用いた装置構成材料が液体(被電解液)の漏出によって腐食されてしまうことを防止することができる。なお、一例として、第1~第5シール71~75には、エラストマー(一例として、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等)を用いた市販のOリングを用いている。専用品ではなく市販品の利用が可能な構成とすることによって、装置コストの低減を可能としている。ただし、これに限定されるものではなく、他の形状のシール部材や、液状シール等を用いてもよい。
【0050】
ここで、前述の第一の実施形態と同様に、第1筒11および第2筒12は、一例として、チタンもしくはチタン合金を用いて形成されているため、液体(被電解液)に対する耐腐食性を有している。これに加えて、第1ボルト、第2ボルト、および、第3ボルトについても、第1筒11、第2筒12と同じ材料(ここでは、チタンもしくはチタン合金)を用いて形成されている。したがって、万一、各シール部材を超えて微量の液体(被電解液)が漏出した場合であっても、到達し得る金属構成部材である第1ボルト、第2ボルト、および、第3ボルトが耐腐食性材料で構成されていることにより、確実な腐食防止対策が実現されている。なお、図中の符号67は、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の絶縁性樹脂材料を用いて形成された絶縁ブッシュである。したがって、第3ボルト66によって相互に固定される第1筒11と第2筒12との間での絶縁の確保が可能となる。
【0051】
なお、前述の第一の実施形態と同様に、第1筒11および第2筒12のうちの陽極となる方に白金材料等を用いた表面処理を施す必要があるが、本実施形態においては、第一の実施形態とは相違して、第1筒11が陽極に設定されている。すなわち、第1筒11における接液部(具体的には、第1筒11の外周面、第1フランジ外面15a、第2フランジ内面16b)に、当該表面処理が施されている。したがって、電源接続に関しても、本実施形態においては、第1筒11が陽極、第2筒12が陰極となるように、それぞれ、電源60の第2電極60B(陽極)、第1電極60A(陰極)に対して、電源ケーブル53B、53Aを用いて電気的に接続されている。
【0052】
ここで、第2筒12への電源ケーブル53Aの接続は、前述の第一の実施形態と同様に、第2筒12に設けられた外部電極52によって行われる。一方、第1筒11への電源ケーブル53Bの接続は、前述の第一の実施形態と異なり、以下のように行われる。具体的には、第1ブロック61における第1フランジ15と対向する面と逆側の面に導電性材料からなる第1側板21が固定されている(なお、固定には第1ボルト64が共用される)。さらに、第1側板21の径方向中心位置に接続部54(一例として、ボルトが使用される)が設けられており、この接続部54に電源ケーブル53Bが接続される構成となっている。したがって、陽極側の通電回路としては、電源ケーブル53Bから、接続部54、第1側板21、第1ボルト64を順に経由して、第1筒11へ通電される構成となっている。一例として、第1ボルト64を複数本(ここでは、M5サイズのボルト六本)設けることで、点接触による温度上昇を防止して、第1ブロック61に樹脂材料の使用を可能とし、且つ、劣化防止を図っている。なお、前述のシール構造によって確実なシールが実現されるため、第1側板21には、チタン合金よりも安価なステンレス合金を使用することができ、装置コストの低減を可能としている。
【0053】
また、前述の第一の実施形態と同様に、第1側板21には、第1ブロック61の内部空間および第1筒11の内部空間11Cと連通する通風孔28Aが設けられている。したがって、当該通風孔28Aから、第1ブロック61の内部空間および第1筒11の内部空間11Cへ空気を送入するファン(不図示)を備える構成とすれば、第1筒11および第2筒12(特に、第1筒11)の放熱性を高め、温度上昇を抑制することができるため、電気分解を行う際の電流値をより一層、大きくすることができ、電解水の生成量を増加させることが可能となる。ここで、当該ファンは、前述の第一の実施形態と同様に第1側板21に固定する構成としてもよく、あるいは、第1筒11および第2筒12に対して所定距離離れた位置に設置する構成としてもよい(いずれも不図示)。
【0054】
以上、説明した通り、本発明に係る電解水生成装置によれば、放熱性を高めることができる二重構造部を備えた構成によって、電気分解の際に通電する電流値をより一層、大きくすることができるため、電解水の生成量を増加させる(生成濃度を高める)ことができる。
【0055】
また、製品公差および加工公差によるばらつきが生じている場合であっても、当該ばらつきに一切影響されることなく、安定的に各シール部材のシール作用を発揮させることができるため、金属材料の腐食等の原因となる流路からの液体(被電解液)の漏出を確実に防止することができる。さらに、万一、微量の漏出が生じた場合に対しても、金属材料の腐食を生じさせない構造が実現される。
【0056】
また、装置構造自体も簡素であることに加えて、放熱性を高める構造、および通電回路における点接触による温度上昇の発生を防止できる構造の実現によって、塩化ビニル樹脂等に例示される常用耐熱温度が低い低コストの材料(絶縁性樹脂材料)を採用することが可能となり、装置コストをより一層、低減することができる。
【0057】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1、2 電解水生成装置
11 第1筒
12 第2筒
14 二重構造部
15 第1フランジ
15a 第1フランジ外面
15b 第1フランジ内面
16 第2フランジ
16a 第2フランジ外面
16b 第2フランジ内面
17 第3フランジ
17a 第3フランジ外面
17b 第3フランジ内面
18 第4フランジ
18a 第4フランジ外面
18b 第4フランジ内面
20 流路
21 第1側板
22 第2側板
31 第4ブロック
32 第5ブロック
33 流入口
34 流出口
36 シャフト
41 第1パッキン
42 第2パッキン
43 第3パッキン
44 第4パッキン
50 ファン
52 外部電極
54 接続部
60 電源
60A 第1電極
60B 第2電極
61 第1ブロック
62 第2ブロック
63 第3ブロック
64 第1ボルト
65 第2ボルト
66 第3ボルト
67 絶縁ブッシュ
71 第1シール
72 第2シール
73 第3シール
74 第4シール
75 第5シール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10