(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】大麦若葉加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20220912BHJP
A23L 2/39 20060101ALI20220912BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20220912BHJP
【FI】
A23L7/10 H
A23L2/00 Q
A23L2/38 L
(21)【出願番号】P 2018188645
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】北村 整一
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-029041(JP,A)
【文献】特開2007-252340(JP,A)
【文献】特開2005-204598(JP,A)
【文献】特開2018-042489(JP,A)
【文献】特開2005-124589(JP,A)
【文献】特開2016-010391(JP,A)
【文献】特開2005-167017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫した大麦若葉を保存する保存工程と、
保存後の大麦若葉を加工する加工工程とを有し、
前記保存工程における平均保存温度が2~18℃であり、
前記保存工程における保存処理が、下記条件式の条件で行われることを特徴とする大麦若葉加工物の製造方法。
(条件式)
2(日℃)≦ 保存日数(日)×平均保存温度(℃) ≦
180(日℃)
【請求項2】
製造された大麦若葉加工物が、粉末であることを特徴とする請求項
1記載の大麦若葉加工物の製造方法。
【請求項3】
製造された大麦若葉加工物が、保存工程を経ていない大麦若葉加工物に比して、セリン、チロシンをそれぞれ多く含有していることを特徴とする請求項
1又は2記載の大麦若葉加工物の製造方法。
【請求項4】
100gあたり、セリンを30mg以上
、チロシンを10mg以上
及びグルタミン酸を100mg以上含み、アラニンに対するグルタミン酸の割合(グルタミン酸/アラニン)が4.0以上であることを特徴とする大麦若葉加工物。
【請求項5】
請求項
4記載の大麦若葉加工物を含むことを特徴とする粉末飲料。
【請求項6】
請求項
4記載の大麦若葉加工物を抽出用パックに収容したことを特徴とする抽出パック飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末飲料等に用いる大麦若葉加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大麦若葉は、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維などに富み、有害物質の吸着、腸内環境の改善、コレステロールの吸収抑制、食後血糖値の急上昇防止、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の活性化などの効果を有する健康食品の素材として注目を浴びている。
【0003】
この大麦若葉が健康食品の素材として用いられる場合、大麦若葉は、収穫後直ちに加工処理されるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-148213号の段落[0029]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来の一般的な加工法とは異なる方法を採用することにより、従来とは異なる特性を有する大麦若葉加工物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、大麦若葉を用いた青汁等の健康食品の機能について研究する中で、通常は収穫後すぐに加工処理を施していた大麦若葉を、あえて保存(放置)し、その成分や特性を調査した結果、収穫した大麦若葉を所定条件下で保存することにより、特定のアミノ酸が増加することを見いだし、本発明を完成するに至った。また、本発明の製法によると、粉末飲料の製造等に有利な分散性の低い大麦若葉加工物が得られることも見いだした。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]収穫した大麦若葉を保存する保存工程と、
保存後の大麦若葉を加工する加工工程とを有し、
前記保存工程における保存処理が、下記条件式の条件で行われることを特徴とする大麦若葉加工物の製造方法。
(条件式)
2(日℃)≦ 保存日数(日)×平均保存温度(℃) ≦250(日℃)
[2]保存工程における平均保存温度が2~25℃であることを特徴とする[1]記載の大麦若葉加工物の製造方法。
[3]製造された大麦若葉加工物が、粉末であることを特徴とする[1]又は[2]記載の大麦若葉加工物の製造方法。
[4]製造された大麦若葉加工物が、保存工程を経ていない大麦若葉加工物に比して、セリン、チロシンをそれぞれ多く含有していることを特徴とする[1]~[3]のいずれか記載の大麦若葉加工物の製造方法。
【0008】
[5]100gあたり、セリンを30mg以上、チロシンを10mg以上含むことを特徴とする大麦若葉加工物。
[6]グリシンに対するセリンの割合(セリン/グリシン)が、10.0以上であることを特徴とする大麦若葉加工物。
[7][5]又は[6]記載の大麦若葉加工物を含むことを特徴とする粉末飲料。
[8][5]又は[6]記載の大麦若葉加工物を抽出用パックに収容したことを特徴とする抽出パック飲料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の大麦若葉加工物の製造方法によれば、従来とは異なる特性を有する大麦若葉加工物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の大麦若葉加工物の製造方法は、収穫した大麦若葉を保存する保存工程と、保存後の大麦若葉を加工する加工工程とを有し、保存工程における保存処理が下記条件式の条件で行われることを特徴とする。
【0011】
(条件式)
2(日℃)≦ 保存日数(日)×平均保存温度(℃) ≦250(日℃)
【0012】
上記条件式の下限値は、上記のように2(日℃)であるが、8(日℃)であることが好ましく、10(日℃)であることがより好ましい。また、上限値は、上記のように250(日℃)であるが、80(日℃)であることが好ましく、50(日℃)であることがより好ましい。
【0013】
また、保存工程における平均保存温度としては、2~25℃であることが好ましく、4~18℃であることがより好ましく、5~10℃であることがさらに好ましい。この平均保存温度は、保存期間中連続的に温度を測定し平均して算出してもよいし、1時間毎、3時間毎、6時間毎といった所定時間毎に温度を測定し平均して算出してもよいが、測定回数が多い測定方法による平均保存温度がより好ましい。
【0014】
保存工程においては、大麦若葉が温度管理された恒温環境で保存されることが好ましい。また、保存中、常時30℃以下、好ましくは常時25℃以下の環境下で保存することが好ましい。
【0015】
保存工程における保存日数としては、大麦若葉加工物の製造に要する日数を短くしつつ、かつ、アミノ酸量を十分に増加させる観点から、1~10日であることが好ましく、1~7日であることがより好ましく、2~5日であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明の原料として用いられる大麦(Hordeum vulgare L.)は、中央アジア原産とされ、イネ科に属する一年生又は越年生草本であり、穂形により、二条大麦や六条大麦などに大別される。本発明の原料として用いられる大麦若葉としては、通常入手可能なものであれば特に限定されず、二条大麦や六条大麦などのいずれの大麦の若葉を用いてもよい。また、いずれの品種を用いてもよい。大麦若葉は、大麦の若葉が含まれていればよく、茎等の他の部位が含まれていてもよい。
【0017】
本発明においては、収穫された大麦若葉をすぐに加工処理するのではなく、上記条件式の条件にて保存処理をした後に加工処理を施す。
【0018】
加工処理としては、例えば、加熱処理(ブランチング)、乾燥処理、粉砕処理、搾汁処理、抽出処理、造粒処理等の各種処理を挙げることができ、加工工程においては、通常、これらの各処理を組み合わせた処理を行う。
【0019】
加工工程において加工処理を施された大麦若葉加工物としては、具体的に、粉砕物、搾汁、抽出物、造粒物等を挙げることができる。大麦若葉加工物としては、粉砕物が特に好ましい。なお、本発明においては、大麦若葉の粉砕物、搾汁物を乾燥して粉末化したもの(大麦若葉の搾汁末)、抽出物を乾燥して粉末化したもの(大麦若葉のエキス末)など、粉末化した大麦若葉を総称して大麦若葉末ともいう。また、本発明の大麦若葉加工物は、大麦若葉以外の成分を適宜含むこともできる。
【0020】
粉砕物としては、粉末、顆粒等を挙げることができる。粉砕物とする方法としては、例えば、大麦若葉を乾燥し粉砕して粉末化する方法を挙げることができる。より具体的には、大麦若葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、さらに微粉砕する方法(特開2003-033151号公報を参照)や、大麦若葉をブランチングした後、乾燥し、その後、粉砕する方法(特開2002-065204号公報を参照)等を挙げることができる。なお、本発明においては、乾燥、粉砕して粉末化した大麦若葉を大麦若葉乾燥粉末ともいう。
【0021】
ブランチング(加熱処理)は、緑葉の緑色の褪色や栄養成分の変質に関与する酵素を失活させるために行う処理である。ブランチングの処理方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱水処理、蒸熱処理などが挙げられる。ブランチング処理された大麦若葉は、緑色及び風味を維持する上で、直ちに冷却されることが好ましい。冷却処理としては、例えば、冷却水中への浸漬処理、冷風を当てた急冷処理などの当業者が通常用いる処理であればよい。冷却水としては、30℃以下の水が好ましく、20℃以下の水がより好ましい。冷却水の温度が低いほど、緑葉の緑色が映えるようになり、見た目が美しくなる。浸漬時間としては、緑葉の処理量に応じた任意の時間であればよい。
【0022】
搾汁や抽出物は、液状であってもよいが、ペースト状や粉末(搾汁末、エキス末)として用いることもできる。抽出物は、適当な溶媒を用いて抽出することで得ることができ、溶媒としては、例えば、水(温水、熱水)、エタノール、含水エタノールを用いることができる。
【0023】
本発明の製造方法によれば、特定のアミノ酸量が増加する。例えば、本発明の製造法により製造された大麦若葉加工物は、セリン、チロシンの量が、保存工程を経ていない大麦若葉加工物に比して増加している。したがって、本発明の製法により製造された大麦若葉加工物は、美容組成物として有用である。すなわち、セリンは、表皮にあってバリア機能をサポートする天然保湿因子(NMF)の構成成分の1つであり、保湿作用を有する。また、チロシンは、細胞の成長を促進する効果があり、肌の新陳代謝もサポートする。
【0024】
上記のように、本発明の製造方法により製造された大麦若葉加工物は、保存工程を経ていない大麦若葉加工物に比して、セリン、チロシンをそれぞれ多く含有することができる。例えば、保存工程を経ていない大麦若葉加工物に比して、セリン、チロシンの含有量がそれぞれ5%以上増加することが好ましく、20%以上増加することがより好ましく、30%以上増加することがさらに好ましい。
【0025】
また、本発明の製造法により製造された大麦若葉加工物は、アスパラギン酸、グルタミン酸の量が、保存工程を経ていない大麦若葉加工物に比して増加しており、これによっても美容組成物として有利となる。すなわち、アスパラギン酸は、肌の保湿や新陳代謝を促す働きがあり、グルタミン酸は、線維間物質に肌の潤いを保持する天然保湿成分(NMF)の1つである。
【0026】
また、本発明の製造方法によれば、トリプトファン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン(トレオニン)、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンといったいずれの必須アミノ酸の量も増加する。したがって、必須アミノ酸を効率的に摂取できる。さらに、バリン、ロイシン、イソロイシンといったいずれの分岐鎖アミノ酸も増加する。したがって、筋組織の修復作用による筋肉の増進効果などを期待できる。
【0027】
さらに、本発明の製造方法によれば、分散性が低い粉末状の大麦若葉末を製造することができ、製造の際、粉が舞い散りにくいことから、粉末飲料や粉末入り抽出用パック飲料の製造に有利である。
【0028】
以下、本発明の大麦若葉加工物について説明する。本発明の大麦若葉加工物は、例えば、上述した本発明の大麦若葉加工物の製造方法により製造することができる。本発明の大麦若葉加工物は、大麦若葉以外の成分を適宜含むこともできる。例えば、大麦若葉末にデキストリンを添加した場合、本発明の大麦若葉加工物とは、大麦若葉末及びデキストリンを混合した組成物全体を意味する。
【0029】
本発明の大麦若葉加工物は、大麦若葉加工物100gあたり(好ましくは大麦若葉100gあたり;以下同様)、セリンを30mg以上及び/又はチロシンを10mg以上含む。したがって、美容組成物として有用である。
【0030】
セリンは、大麦若葉加工物100gあたり、50mg以上であることが好ましく、60mg以上であることがより好ましく、80mg以上であることがさらに好ましい。チロシンは、大麦若葉加工物100gあたり、12mg以上であることが好ましく、15mg以上であることがより好ましく、19mg以上であることがさらに好ましい。
【0031】
また、本発明の大麦若葉加工物は、アスパラギン酸を、大麦若葉加工物100gあたり、100mg以上含むことが好ましく、150mg以上含むことがより好ましく、190mg以上含むことがさらに好ましい。また、グルタミン酸を、大麦若葉加工物100gあたり、100mg以上含むことが好ましく、120mg以上含むことがより好ましく、130mg以上含むことがさらに好ましい。
【0032】
また、本発明の大麦若葉加工物は、トリプトファンを、大麦若葉加工物100gあたり、10mg以上含むことが好ましく、13mg以上含むことがより好ましく、15mg以上含むことがさらに好ましい。また、本発明の大麦若葉加工物は、リシンを、大麦若葉加工物100gあたり、9mg以上含むことが好ましく、14mg以上含むことがより好ましく、18mg以上含むことがさらに好ましい。
【0033】
また、本発明の大麦若葉加工物は、メチオニンを、大麦若葉加工物100gあたり、1mg以上含むことが好ましく、2mg以上含むことがより好ましく、3mg以上含むことがさらに好ましい。また、本発明の大麦若葉加工物は、フェニルアラニンを、大麦若葉加工物100gあたり、14mg以上含むことが好ましく、16mg以上含むことがより好ましく、25mg以上含むことがさらに好ましい。
【0034】
また、本発明の大麦若葉加工物は、スレオニン(トレオニン)を、大麦若葉加工物100gあたり、25mg以上含むことが好ましく、30mg以上含むことがより好ましく、35mg以上含むことがさらに好ましい。また、本発明の大麦若葉加工物は、バリンを、大麦若葉加工物100gあたり、30mg以上含むことが好ましく、40mg以上含むことがより好ましく、45mg以上含むことがさらに好ましい。
【0035】
また、本発明の大麦若葉加工物は、ロイシンを、大麦若葉加工物100gあたり、19mg以上含むことが好ましく、20mg以上含むことがより好ましく、25mg以上含むことがさらに好ましい。また、本発明の大麦若葉加工物は、イソロイシンを、大麦若葉加工物100gあたり、20mg以上含むことが好ましく、24mg以上含むことがより好ましく、25mg以上含むことがさらに好ましい。また、本発明の大麦若葉加工物は、ヒスチジンを、大麦若葉加工物100gあたり、8mg以上含むことが好ましく、10mg以上含むことがより好ましく、15mg以上含むことがさらに好ましい。
【0036】
また、本発明の大麦若葉加工物は、美容作用をより効果的に発揮する観点から、グリシンに対するセリンの割合(セリン/グリシン)が、保存工程を経ていない大麦若葉加工物に比して大きいことが好ましい。例えば、グリシンに対するセリンの割合(セリン/グリシン)が、10.0以上であることが好ましく、12.0以上であることがより好ましく、15.0以上であることがさらに好ましい。その上限は、25.0であることが好ましく、20.0であることがより好ましい。
【0037】
また、美容作用をより効果的に発揮する観点から、アラニンに対するアスパラギン酸の割合(アスパラギン酸/アラニン)が、保存工程を経ていない大麦若葉加工物に比して大きいことが好ましい。例えば、アラニンに対するアスパラギン酸の割合(アスパラギン酸/アラニン)が、5.0以上であることが好ましく、10.0以上であることがより好ましく、12.0以上であることがさらに好ましい。その上限は、25.0であることが好ましい。
【0038】
また、美容作用をより効果的に発揮する観点から、アラニンに対するグルタミン酸の割合(グルタミン酸/アラニン)が、保存工程を経ていない大麦若葉加工物に比して大きいことが好ましい。例えば、アラニンに対するグルタミン酸の割合(グルタミン酸/アラニン)が、4.0以上であることが好ましく、5.0以上であることがより好ましく、6.0以上であることがさらに好ましい。その上限は、10.0であることが好ましい。
【0039】
本発明の大麦若葉加工物に含まれるアミノ酸は、大麦若葉に由来するアミノ酸でなくとも構わない。例えば、大麦若葉末に、アミノ酸を含む他の植物素材や精製されたアミノ酸を添加し、上記の含有量や配合比率になるように調整して本発明の大麦若葉加工物を得ることもできる。
【0040】
本発明の大麦若葉加工物は、例えば、医薬品(医薬部外品を含む)や、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の所定機関より効能の表示が認められた機能性食品などのいわゆる健康食品や、一般的な食品、食品添加剤、飼料等として用いることができる。その形態としては、例えば、錠状、カプセル状、粉末状、顆粒状、液状、粒状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、ペースト状、クリーム状、カプレット状、ゲル状、チュアブル状、スティック状等を挙げることができ、粉末状が好ましい。
【0041】
具体的に、例えば、本発明の大麦若葉加工物は、大麦若葉単独で、又は他の青汁素材と混合して、粉末飲料として用いることができる。すなわち、本発明の大麦若葉加工物は、粉末飲料(青汁)として用いることができる。他の青汁素材としては、例えば、ケール、明日葉、クマザサ、長命草、ヨモギ等を挙げることできる。
【0042】
また、本発明の大麦若葉加工物は、大麦若葉単独で、又は他の青汁素材と混合して、抽出用パック(ティーパック)に収容して、抽出パック飲料として用いることができる。すなわち、本発明の大麦若葉加工物は、抽出パック飲料として用いることができる。
【0043】
本発明の大麦若葉加工物は、例えば、タンパク質、水溶性食物繊維や不溶性食物繊維等の食物繊維、ミネラル類、植物又は植物加工品、藻類、乳酸菌等の微生物等を配合することができる。更に必要に応じて通常食品分野で用いられる、デキストリン、でんぷん等の糖類、オリゴ糖類、甘味料、酸味料、着色料、増粘剤、光沢剤、賦形剤、ビタミン類、栄養補助剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、乳化剤、食品添加物、調味料等を配合することができる。
【0044】
本発明の粉末状の大麦若葉加工物は、分散性が低く、製造の際、粉が舞い散りにくいことから、粉末飲料や粉末入り抽出用パック飲料の製造に有利である。
【0045】
また、本発明の大麦若葉加工物は、美容効果を有するものであり、美容のために用いられる美容用組成物として用いることができる。
【0046】
本発明の美容用組成物は、本発明の大麦若葉加工物を含有し、美容に用いられる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物のいずれかに美容効果の機能がある旨を表示したものが本発明の範囲に含まれる。例えば、「肌をバリアする」、「肌を守る」、「肌のバリア機能を高める」、「肌の保湿力を高める」、「美容にうれしい」、「肌にうれしい」、「美容をサポート」、「美しさを応援」、「美しくなりたいと願う女性を応援」、「美を追求」、「美しさを」、「体の中からの美しさを」、「健康的な美しさを」、「美しさを引き出す」、「美しさを保つ」等を表示したものを例示することができる。
【0047】
上記本発明の美容用組成物には、必要に応じて、上記以外の他の成分を添加することができる。他の成分としては、例えば、水溶性ビタミン(ビタミンB1、B2、B3、B5、B6、B12、B13、B15、B17、ビオチン、コリン、葉酸、イノシトール、PABA、ビタミンC、ビタミンP)、油溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)等のビタミン類;カルシウム、マグネシウム、リン等のミネラル類;タウリン、ニンニク等に含まれる含硫化合物;ヘスペリジン、ケルセチン等のフラバノイド或いはフラボノイド類;コラーゲン等のタンパク質;ペプチド;アミノ酸;動物性油脂;植物性油脂;動物・植物の粉砕物又は抽出物等を挙げることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例に基づき、本発明を説明する。
[大麦若葉加工物(乾燥粉末)の調製]
収穫した六条大麦の若葉を、平均保存温度4℃(保存期間2日、4日)、平均保存温度7.5℃(保存期間2日、4日)、平均保存温度18℃(保存期間2日、4日)で保存した後、熱水にてブランチング処理を施し、その後、乾燥し、粉砕して乾燥粉末を得た。
また、比較(コントロール)として、保存処理を省略する以外は上記と同様にして乾燥粉末を得た。すなわち、収穫後すぐにブランチング処理を施した。
【0049】
(アミノ酸量の測定)
製造した乾燥粉末について、アミノ酸量を測定した。Agilent製HPLCシステムを用いて、プレカラム誘導体化法により測定した。
【0050】
その結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
表1に示すように、美肌作用を有するアスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、チロシンの量が増加しており、本発明の製法により製造された乾燥粉末(大麦若葉加工物)は優れた美容効果を期待することができる。また、トリプトファン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン(トレオニン)、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンといった必須アミノ酸がいずれも増加しており、必須アミノ酸を効率的に摂取できる。また、バリン、ロイシン、イソロイシンといったいずれの分岐鎖アミノ酸も増加しており、筋組織の修復作用による筋肉の増進効果などが期待できる。
なお、コントロールに係る乾燥粉末を調製後に4℃又は7℃で4日間保存したものについてもアミノ酸量を測定したが、アミノ酸量にほぼ変化はなかった。
【0053】
(分散度試験)
実施例に係る大麦若葉乾燥粉末(平均保存温度4℃、7.5℃、18℃,保存期間4日間))を篩(呼び寸法:710)にかけた。サンプル10gを計りとり、ホソカワミクロン社製の粉体特定評価装置「パウダテスタPT-X」を用いて分散度を測定した。分散度の測定は当該機器のマニュアルに従って行った。
なお、コントロールに係る大麦若葉乾燥粉末についても同様に行った。
【0054】
分散度は以下のような方法によって測定される。
規定重量(W)の試料を規定の高さから受け皿に落下させて、受け皿に乗った試料の重量(W1)を測定する。さらに、次の式によって、分散度を算出する。
【0055】
分散度(%)=(W-W1)/W×100
【0056】
分散度試験の結果を表2に示す。
【0057】
【0058】
分散度に関しては、数値が低いほど分散性が低い。すなわち、表2に示すように、実施例の大麦若葉加工物は、分散性が低く、青汁などの粉末飲料等を製造する際に舞い散りにくいため、粉末飲料や粉末入り抽出用パック飲料の製造に適している。
【0059】
(Brix試験(糖度試験))
ファルコンチューブ内で、水道水9.5mLを用いて各サンプル0.5gを溶解した。サンプル液300μLをピペットでBrix計の測定部に載せ、測定ボタンを押し、Brixを測定した。
【0060】
Brix試験の結果を表3に示す。
【0061】
【0062】
表3に示すように、実施例の大麦若葉加工物は、Brix値が高く、比較例に比して強い甘みを有している。
【0063】
[大麦若葉乾燥粉末のティーパックの製造]
上記調製した実施例に係る大麦若葉乾燥粉末(平均保存温度7.5℃、保存期間4日間)3gをティーパックに詰めて、大麦若葉乾燥粉末のティーパックを製造した。コントロールに係る大麦若葉乾燥粉末についても、同様に3gをティーパックに詰めて、大麦若葉乾燥粉末のティーパックを製造した。
【0064】
また、上記実施例及びコントロールに係る大麦若葉乾燥粉末をそれぞれIHヒーター用鍋に入れて、撹拌しながらIHヒーター(中火設定)にて15分間加熱し、大麦若葉乾燥粉末を焙煎した。焙煎した大麦若葉乾燥粉末3gをそれぞれティーパックに詰めて、焙煎大麦若葉乾燥粉末のティーパックを製造した。
【0065】
(官能試験)
製造した大麦若葉乾燥粉末のティーパック(大麦若葉乾燥粉末3gを含む)に、お湯(90℃)200mLを注ぎ、2分間放置した。その後、ティーパックを取り除き、官能試験を実施した。
【0066】
官能試験は、下記表4に示すように、製造したティーパックをサンプルA~Dとし、サンプルAとサンプルB、サンプルCとサンプルDをそれぞれ比較することにより行った。
【0067】
【0068】
評価基準(点数)は、以下のとおりである。5名の被験者の平均値を算出した。
〈Aに対するBの評価〉
Aと比べて、非常に良い 3
Aと比べて、良い 2
Aと比べて、やや良い 1
Aと変わらない 0
Aと比べて、やや悪い -1
Aと比べて、悪い -2
Aと比べて、非常に悪い -3
【0069】
〈Cに対するDの評価〉
Cと比べて、非常に良い 3
Cと比べて、良い 2
Cと比べて、やや良い 1
Cと変わらない 0
Cと比べて、やや悪い -1
Cと比べて、悪い -2
Cと比べて、非常に悪い -3
【0070】
Aに対するBの評価の結果を表5に示す。
【0071】
【0072】
Cに対するDの評価の結果を表6に示す。
【0073】
【0074】
表5及び6に示すように、実施例に係る大麦若葉乾燥粉末を用いたティーパック飲料は、コントロールに係る大麦若葉乾燥粉末を用いたティーパック飲料に比べて、いずれの評価項目においても優れていた。特に大麦若葉を焙煎した場合(表6)においては、コントロールとの差が顕著であった。
【0075】
下記処方例に記載の配合比に従って原料を混合し、粉末飲料の大麦若葉加工物を製造した。いずれの粉末飲料についても、味が良く、飲みやすいものであった。
【0076】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の大麦若葉加工物は、粉末飲料等の食品として用いることができることから、産業上の有用である。