(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】排液処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/66 20060101AFI20220912BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20220912BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20220912BHJP
A61L 101/32 20060101ALN20220912BHJP
【FI】
C02F1/66 530P
A61M1/16
C02F1/66 510L
C02F1/66 540D
C02F1/66 530B
C02F1/66 530C
C02F1/66 530D
C02F1/66 530L
C02F1/66 530G
A61L2/18 102
A61L101:32
(21)【出願番号】P 2020083635
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2022-02-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522043208
【氏名又は名称】株式会社CFEM
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 操
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-269670(JP,A)
【文献】特開2005-219041(JP,A)
【文献】特開2008-302057(JP,A)
【文献】特開2010-088759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/66- 1/68
A61M 1/00- 1/38
60/00-60/90
A61L 2/00- 2/28
11/00-12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工透析装置から排出される排液を処理する排液処理装置であって、
上下に延びる仕切板により内部が排液流入室と攪拌中和室との2つの領域に仕切られた貯留空間を有し、上記排液流入室に排液を流入させる流入管が下部外周壁に取り付けられた貯留槽と、
上記排液流入室に溜まる排液が酸性である場合には、当該排液を上記攪拌中和室へと移送する一方、上記排液流入室に溜まる排液が酸性でない場合には、移送動作を停止させるポンプユニットと、
上記攪拌中和室に中和剤を添加する中和剤添加ユニットと、
上記ポンプユニット及び上記中和剤添加ユニットに接続された制御部とを備え、
上記攪拌中和室には、一端から他端へと斜め下方に延びるとともに、一端が上記仕切板における上記流入管よりも上方の位置に接続される一方、他端側が上記貯留槽の外周壁の外側に臨む
とともに上記排液流入室から排液を排出する第1排出管と、上下に延びるとともに、
上記仕切版の上端よりも下方に位置する上端が開口する一方、下端が上記第1排出管の中途部に接続される
とともに前記撹拌中和室から排液を排出する第2排出管とが設けられていることを特徴とする排液処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排液処理装置において、
羽根部の回転動作により上記攪拌中和室に貯留する排液を攪拌する撹拌機を備え、
上記ポンプユニットは、排液を汲み上げるポンプ本体と、該ポンプ本体で汲み上げる排液を上記攪拌中和室へと案内する移送配管とを備え、該移送配管の吐出口は、上記攪拌中和室の下部に位置していることを特徴とする排液処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排液処理装置において、
上記中和剤添加ユニットは、中和剤の添加部が上記移送配管の中途部に接続されていることを特徴とする排液処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排液処理装置において、
上記移送配管における上記添加部の上流側に開閉弁を有するボールタップを備え、該ボールタップは、上記排液流入室に溜まる排液に浮かぶフロートの高さ位置により上記開閉弁の開閉量が調整されるよう構成されていることを特徴とする排液処理装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1つに記載の排液処理装置において、
上記攪拌中和室の水素イオン指数を測定する第1pH測定センサを備え、
上記制御部は、上記第1pH測定センサにて得られる測定値が予め決められた第1閾値を超えない場合には、上記ポンプユニット及び上記中和剤添加ユニットに作動信号を出力する一方、上記第1pH測定センサにて得られる測定値が上記第1閾値を超えた場合には、上記ポンプユニット及び上記中和剤添加ユニットに停止信号を出力することを特徴とする排液処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の排液処理装置において、
上記第1排出管内部の水素イオン指数を測定する第2pH測定センサを備え、
上記制御部は、上記第2pH測定センサにて得られる測定値が予め決められた第2閾値を下回った際、上記ポンプユニット及び上記中和剤添加ユニットに作動信号を出力することを特徴とする排液処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の排液処理装置において、
上記排液流入室の液面高さを検出可能なレベルセンサを備え、
上記制御部は、上記レベルセンサにて予め決められた液面高さを検出した場合には、上記ポンプユニットに停止信号を出力することを特徴とする排液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析装置から排出される酸洗浄排液を中和する排液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、透析治療時に用いられる人工透析装置は、透析治療中において透析排液が排出されるだけでなく、透析治療後においては、人工透析装置の内部の洗浄のために過酢酸等の酸液を循環させることにより酸洗浄排液が排出される。これら酸洗浄排液は、予め決められた水素イオン指数の範囲を超えると、そのままの状態で下水に放流できないので、排液処理装置を用いて中和処理を施した後、下水に放流することが一般的に知られている。
【0003】
ところで、上述の如き排液処理装置は、大きな病院等では、多くの酸洗浄排液を処理可能な大型のものを地下に配置するとともに、各病室の人工透析装置から排出される酸洗浄排液を排出管を介して自然流下させて上方に開口する貯留槽で下方から受け止めた後、当該貯留槽の内部で中和処理を行うようにしている。
【0004】
しかし、例えば、マンションの一室等で開業している小さな病院では、建物の制約等から下層の階に大型の排液処理装置を設置することが困難であるとともに、もし仮に設置できたとしても、費用が嵩むという問題があった。
【0005】
これに対応するために、例えば、特許文献1の如き貯留槽に下部から排液を流入させて中和処理を行う構造の排液処理装置をコンパクトな形状にして人工透析装置が設置されている各病室に配置することが考えられる。特許文献1の排液処理装置は、内部に貯留空間を有する貯留槽を備え、貯留空間は、貯留槽の上壁から下方に直線状に延びる第1仕切板と底壁から上方に直線状に延びる第2仕切板とにより、第1貯留部、第2貯留部及び排液排出部の3つの領域に水平方向に仕切られている。第1仕切板の下部には、第1貯留部と第2貯留部とを連通させる連通部が設けられる一方、第2仕切板の上端は、上壁から所定の間隔をあけた位置となっていて、第2貯留部の中途部には、多数の寒水石が配設されている。そして、人工透析装置から排出される酸洗浄排液は、第1貯留部の下部に流入されるとともに連通部を介して第2貯留部に移動した後、多数の寒水石に浸されて中和され、その後、中和された排液は、第2仕切板の上端から排液排出部に溢流して当該排液排出部を通過した後、貯留槽の外側に排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の如き排液処理装置の場合、貯留槽の貯留空間に溜まる排液の液面を人工透析装置から排出される排液の自然流下が開始される位置よりも下方に設定する必要があり、貯留空間に貯留可能な排液の量が少ない中和処理能力の低い装置になってしまうおそれがある。また、透析治療中において排出される中和処理の必要の無い透析排液においても、第1貯留部、第2貯留部及び排液排出部の順に透析排液を上下に蛇行させながら通過させて装置の下流側へと排出させる必要があるので、排出効率が悪いという問題もある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、透析排液を効率良く装置下流側へと排出することができるとともに、酸洗浄排液を中和する処理能力が高くて、しかも、コンパクトな人工透析装置用の排液処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、貯留槽の貯留空間を2つの領域に仕切るとともに、酸洗浄排液及び透析排液それぞれの装置内の通過のさせ方に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、人工透析装置から排出される排液を処理する排液処理装置において、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明では、上下に延びる仕切板により内部が排液流入室と攪拌中和室との2つの領域に仕切られた貯留空間を有し、上記排液流入室に排液を流入させる流入管が下部外周壁に取り付けられた貯留槽と、上記排液流入室に溜まる排液が酸性である場合には、当該排液を上記攪拌中和室へと移送する一方、上記排液流入室に溜まる排液が酸性でない場合には、移送動作を停止させるポンプユニットと、上記攪拌中和室に中和剤を添加する中和剤添加ユニットと、上記ポンプユニット及び上記中和剤添加ユニットに接続された制御部とを備え、上記攪拌中和室には、一端から他端へと斜め下方に延びるとともに、一端が上記仕切板における上記流入管よりも上方の位置に接続される一方、他端側が上記貯留槽の外周壁の外側に臨む第1排出管と、上下に延びるとともに、上端が開口する一方、下端が上記第1排出管の中途部に接続される第2排出管とが設けられていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、羽根部の回転動作により上記攪拌中和室に貯留する排液を攪拌する撹拌機を備え、上記ポンプユニットは、排液を汲み上げるポンプ本体と、該ポンプ本体で汲み上げる排液を上記攪拌中和室へと案内する移送配管とを備え、該移送配管の吐出口は、上記攪拌中和室の下部に位置していることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、上記中和剤添加ユニットは、中和剤の添加部が上記移送配管の中途部に接続されていることを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、第3の発明において、上記移送配管における上記添加部の上流側に開閉弁を有するボールタップを備え、該ボールタップは、上記排液流入室に溜まる排液に浮かぶフロートの高さ位置により上記開閉弁の開閉量が調整されるよう構成されていることを特徴とする。
【0015】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、上記攪拌中和室の水素イオン指数を測定する第1pH測定センサを備え、上記制御部は、上記第1pH測定センサにて得られる測定値が予め決められた第1閾値を超えない場合には、上記ポンプユニット及び上記中和剤添加ユニットに作動信号を出力する一方、上記第1pH測定センサにて得られる測定値が上記第1閾値を超えた場合には、上記ポンプユニット及び上記中和剤添加ユニットに停止信号を出力することを特徴とする。
【0016】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、上記第1排出管内部の水素イオン指数を測定する第2pH測定センサを備え、上記制御部は、上記第2pH測定センサにて得られる測定値が予め決められた第2閾値を下回った際、上記ポンプユニット及び上記中和剤添加ユニットに作動信号を出力することを特徴とする。
【0017】
第7の発明では、第1から第6のいずれか1つの発明において、上記排液流入室の液面高さを検出可能なレベルセンサを備え、上記制御部は、上記レベルセンサにて予め決められた液面高さを検出した場合には、上記ポンプユニットに停止信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明では、酸洗浄排液が流入管を介して排液流入室に流入する際、排液流入室に溜まる酸洗浄排液をポンプユニットが順次攪拌中和室へと移送するので、排液流入室に溜まる酸洗浄排液の液面は上昇せずに、攪拌中和室に酸洗浄排液が順次溜まって攪拌中和室の液面が上昇していくようになる。ポンプユニットにより移送される酸洗浄排液は、中和剤添加ユニットにより添加される中和剤により中和されながら次第に攪拌中和室に溜まっていき、その液面が第2排出管の上端に到達すると、中和処理済みの酸洗浄排液が第2排出管に溢流するとともに、第2排出管に連続する第1排出管を介して装置の下流側へと順次排出される。一方、排液流入室に流入する酸洗浄排液は、順次ポンプユニットにより攪拌中和室へと移送させるので、排液流入室に溜まる酸洗浄排液の液面は上昇しない。したがって、排液流入室の酸洗浄排液は、仕切板における第1排出管の一端の位置まで到達しないので、中和処理されないままの状態で第1排出管を介して装置の下流側に排出されない。このように、人工透析装置から酸洗浄排液が流入する排液流入室ではなく、当該排液流入室とは仕切板で仕切られた攪拌中和室にポンプユニットを用いて酸洗浄排液を移送した後で中和処理を施すので、人工透析装置から排出される酸洗浄排液の自然流下が開始される位置を考慮すること無く攪拌中和室に溜める酸洗浄排液の液面の位置を設定可能になり、攪拌中和室に多くの排液を溜めながら中和処理を行うことができ、酸洗浄排液を中和する処理能力の高い装置にすることができる。一方、中和処理の必要の無い透析治療中において排出される透析排液が流入管を介して排液流入室に流入する際、ポンプユニットは停止しており、排液流入室に溜まる透析排液の液面が次第に上昇して行くので、その液面が仕切板における第1排出管の一端の位置まで到達すると、透析排液が第1排出管に溢流して第1排出管内部の傾斜面に沿って順次装置の下流側へと排出される。このように、中和処理の必要の無い透析治療中において排出される透析排液は、攪拌中和室を経由することなく装置の下流側へと排出されるようになり、特許文献1の如き透析排液を酸洗浄排液と同じ経路を通過させる必要が無いので、透析排液を効率良く装置の下流側に排出することができる。
【0019】
第2の発明では、ポンプユニットにより排液流入室から攪拌中和室へと移送される酸洗浄排液が攪拌中和室における第2排出管の上端から一番離れた位置に吐出されるので、攪拌中和室に移送されて来た酸洗浄排液が第2排出管の上端開口に溢流するまでの間において、撹拌機により十分に中和剤と攪拌されるようになる。したがって、酸洗浄排液を十分に中和処理した状態で装置下流側に排出することができる。
【0020】
第3の発明では、ポンプユニットにより排液流入室から攪拌中和室へと移送される途中の状態の酸洗浄排液に中和剤が添加されるので、中和剤が添加された状態の酸洗浄排液が攪拌中和室に吐出されるようになる。したがって、酸洗浄排液が第2排出管の上端開口に溢流するまでの間において酸洗浄排液と中和剤とがしっかりと混合されるので、酸洗浄排液と中和剤との間における中和処理が十分に行われた状態で酸洗浄排液を装置下流側に排出することができる。
【0021】
第4の発明では、酸洗浄排液が流入管を介して排液流入室に流入する際、排液流入室に溜まる酸洗浄排液の液面高さを一定にして排液流入室から攪拌中和室への排液の移送を安定させる一方、中和処理停止時においてポンプユニット及び中和剤添加ユニットを停止させた際、移送配管に設けられた開閉弁がゆっくり閉じるので、移送配管における開閉弁の下流側部分に残留する中和剤を含む酸洗浄排液の水素イオン指数を極力低くすることができ、中和剤を含む酸洗浄排液が移送配管から攪拌中和室に流れ出たときに当該攪拌中和室の水素イオン指数を急激に上昇させないようにすることができる。
【0022】
第5の発明では、攪拌中和室に溜まる排液の水素イオン指数が予め決められた第1閾値を下回るときだけポンプユニットにより酸洗浄排液が攪拌中和室に移送されるとともに中和剤添加ユニットから中和剤が添加されるようになるので、酸洗浄排液を中和処理するための中和剤の添加量が適量になり、中和剤を無駄に消費しないようにすることができる。
【0023】
第6の発明では、排液流入室に流入する酸洗浄排液が第1排出管の内部を流れると、酸洗浄排液が流れていることを第2pH測定センサが検知して、排液流入室に流入する酸洗浄排液が自動的に攪拌中和室へと移送されるようになる。したがって、中和処理されていない酸洗浄排液が誤って第1排出管を介して装置の下流側に排出され続けてしまうのを防ぐことができる。
【0024】
第7の発明では、人工透析装置から送られてくる酸洗浄排液が少なくなったときにおいて、ポンプユニットが空引きをしなくなるので、ポンプユニットの故障を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態1に係る排水処理装置の概略正面図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係る
図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0027】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る排液処理装置1を示す。該排液処理装置1は、人工透析装置10の内部を洗浄するために透析治療後において過酢酸等の酸液を循環させることにより排出される酸洗浄排液L1を中和処理して装置下流側へと排出するものであり、透析治療が行われる病室の床面に設置されている。
【0028】
人工透析装置10は、透析治療中においては、透析排液X1が排出され、該透析排液X1は、所定の高さの位置(例えば、病院の床面から約40cmの位置)から樹脂製のチューブ管を介して自然流下をさせて排液処理装置1に流れ込むようになっている。
【0029】
排液処理装置1は、直方体形状をなす貯留槽2を備え、該貯留槽2は、上方に開口する貯留凹部20(貯留空間)を有している。
【0030】
該貯留凹部20は、上下に延びる仕切板2aにより内部が排液流入室20aと攪拌中和室20bとの2つの領域に仕切られていて、貯留槽2における排液流入室20a側の下部外周壁2bには、人工透析装置10から排出される透析排液X1や酸洗浄排液L1を排液流入室20aに流入させる流入管2cが取り付けられている。尚、流入管2cは、床面から約10cmの高さに位置している。
【0031】
攪拌中和室20bの下部領域には、一端から他端へと斜め下方に緩やかに延びる第1排出管2dが配設されている。
【0032】
該第1排出管2dの一端は、仕切板2aにおける流入管2cよりも上方の位置に接続される一方、第1排出管2dの他端側は、外周壁2bの外側に臨んでいて、例えば、排液流入室20aに流入する透析排液X1の液面が第1排出管2dの一端の位置に到達すると、当該透析排液X1を第1排出管2d内部の傾斜面に沿って通過させて装置の下流側に導くようになっている。
【0033】
また、攪拌中和室20bには、上下に直線状に延びる第2排出管2eが配設され、該第2排出管2eは、上端が開口する一方、下端が第1排出管2dの中途部に接続されている。
【0034】
貯留凹部20には、排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1を攪拌中和室20bへと移送するポンプユニット3が配設されている。
【0035】
該ポンプユニット3は、排液流入室20aの底面に敷設され、酸洗浄排液L1を汲み上げるポンプ本体31と、該ポンプ本体31で汲み上げる酸洗浄排液L1を攪拌中和室20bへと案内する移送配管32とを備えている。
【0036】
移送配管32は、一端がポンプ本体31に接続される一方、他端が吐出口33aを構成する配管本体33を備え、吐出口33aは、攪拌中和室20bの下部に位置している。
【0037】
配管本体33の攪拌中和室20b側に位置する中途部には、第1流量調整弁34aが装着されたバイパス管34が取り付けられている。
【0038】
また、配管本体33のバイパス管34に対応する部分には、第2流量調整弁35aが装着された戻し管35が取り付けられ、該戻し管35は、ポンプ本体31で汲み上げられる酸洗浄排液L1の一部を排液流入室20aに戻すようになっている。
【0039】
攪拌中和室20bに溜まる酸洗浄排液L1には、中和剤添加ユニット4によって中和剤W1が添加されるようになっている。
【0040】
中和剤添加ユニット4は、中和剤W1を貯留する貯留タンク41と、該貯留タンク41の中和剤W1を供給する中和剤供給部42とを備えている。
【0041】
該中和剤供給部42における中和剤W1の添加部42aは、配管本体33の中途部、すなわち、バイパス管34の下流側で、且つ、吐出口33aの上流側の位置に接続されていて、中和剤供給部42は、電磁弁43を開閉させながら中和剤W1を配管本体33を介して攪拌中和室20bに順次供給するようになっている。
【0042】
貯留凹部20の上部には、排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1の液面の位置を一定にするボールタップ5が配設されている。
【0043】
該ボールタップ5は、配管本体33における添加部42aの上流側で、且つ、配管本体33のバイパス管34に対応する部分に取り付けられた開閉弁51と、該開閉弁51に対して排液流入室20aから離れる方向に延びる第1レバー52と、該第1レバー52から上方に延びる連結棒53と、該連結棒53の上端から排液流入室20a側に略水平に延びる第2レバー54と、該第2レバー54の延出端から下方に延びる吊下げ棒55と、該吊下げ棒55の下端に取り付けられ、排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1に浮かぶフロート56とを備えている。
【0044】
ボールタップ5は、排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1の液面が上がると、フロート56が上昇することにより、吊下げ棒55、第2レバー54、連結棒53及び第1レバー52を介して開閉弁51がゆっくりと開く一方、排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1の液面が下がると、フロート56が下降することにより、吊下げ棒55、第2レバー54、連結棒53及び第1レバー52を介して開閉弁51がゆっくりと閉じるようになっている。
【0045】
すなわち、ボールタップ5は、排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1に浮かぶフロート56の高さ位置により開閉弁51の開閉量が調整されるよう構成されている。
【0046】
攪拌中和室20bには、羽根部6aの回転動作により攪拌中和室20bに貯留する酸洗浄排液L1を攪拌する撹拌機6が配設されている。
【0047】
また、攪拌中和室20bには、当該攪拌中和室20bに溜まる酸洗浄排液L1の水素イオン指数(pH)を測定する第1pH測定センサ7が配設されている。
【0048】
排液流入室20aには、当該排液流入室20aの液面高さを検知可能なレベルセンサ9が配設されている。
【0049】
該レベルセンサ9は、排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1の液面が第1排出管2dの一端の位置よりも若干下方の位置である第1レベルH1と、排液流入室20aの底面に近い位置である第2レベルH2とであることをそれぞれ検知可能になっている。
【0050】
ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4、撹拌機6、第1pH測定センサ7、レベルセンサ9及び人工透析装置10には、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6を制御する制御部11が接続されている。
【0051】
該制御部11は、人工透析装置10から酸洗浄開始信号を受け取った際、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6に作動信号を出力するようになっている。
【0052】
すなわち、ポンプユニット3は、排液流入室20aに溜まる排液が酸性である酸洗浄排液L1である場合には、当該酸洗浄排液L1を攪拌中和室20bへと移送する一方、排液流入室20aに溜まる排液が酸性でない透析排液X1である場合には、移送動作を停止させるようになっている。
【0053】
また、制御部11は、第1pH測定センサ7にて得られる測定値が予め決められた閾値T1(第1閾値:例えば、pH8.5)を超えない場合には、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6に作動信号を出力する一方、第1pH測定センサ7にて得られる測定値が上記閾値T1を超えた場合には、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6に停止信号を出力するようになっている。
【0054】
さらに、制御部11は、第1pH測定センサ7にて得られる測定値が中和状態である範囲内であるとともに、レベルセンサ9にて予め決められた上記第1レベルH1を検出した際には、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6に停止信号を出力するようになっている。
【0055】
また、制御部11は、レベルセンサ9にて予め決められた上記第2レベルH2を検出した際においても、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6に停止信号を出力するようになっている。
【0056】
次に、人工透析装置10において中和処理の必要の無い透析治療中に排出される透析排液X1が流入管2cを介して排液処理装置1の排液流入室20aに流入する際の排液処理装置1内の透析排液X1の流れについて詳述する。
【0057】
透析排液X1が排液流入室20aに流入する際、ポンプユニット3は停止しているので、排液流入室20aに溜まる透析排液X1の液面が次第に上昇して行く。そして、透析排液X1の液面が仕切板2aにおける第1排出管2dの一端の位置に到達すると、透析排液X1が第1排出管2dに溢流して第1排出管2d内部の傾斜面に沿って順次排液処理装置1の下流側へと排出される。このように、透析排液X1は、攪拌中和室20bを経由することなく排液処理装置1の下流側へと排出されるようになり、特許文献1の如き透析排液X1を酸洗浄排液L1と同じ経路を通過させる必要が無いので、透析排液X1を効率良く排液処理装置1の下流側に排出することができる。
【0058】
次に、人工透析装置10において酸洗浄処理を行う際に排出される酸洗浄排液L1が流入管2cを介して排液処理装置1の排液流入室20aに流入する際の排液処理装置1の動作について詳述する。
【0059】
まず、人工透析装置10において酸洗浄処理が開始されると、制御部11が酸洗浄開始信号を人工透析装置10から受け取るので、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6が作動する。
【0060】
人工透析装置10から酸洗浄排液L1が排液流入室20aに流入すると、当該排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1をポンプ本体31が汲み上げて移送配管32を介して攪拌中和室20bに順次移送する。このとき、移送配管32の配管本体33を通過する酸洗浄排液L1の一部は、通過する流量の調整を第1流量調整弁34aにより行われながらバイパス管34を通過する。また、移送配管32の配管本体33を通過する酸洗浄排液L1の一部は、通過する流量の調整を第2流量調整弁35aにより行われながら戻し管35によって排液流入室20aに戻される。
【0061】
移送配管32によって移送される酸洗浄排液L1は、中和剤添加ユニット4によって攪拌中和室20bへと移送される途中において中和剤W1が添加され、その後、吐出口33aから攪拌中和室20bの下部領域に順次流れ出るので、排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1の液面は上昇せずに攪拌中和室20bに酸洗浄排液L1が順次溜まって攪拌中和室20bの液面が上昇していくようになる。このとき、ボールタップ5が作動して開閉弁51が開閉することにより、配管本体33を通過する酸洗浄排液L1の量が調整されて排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1の液面高さを一定にするとともに、排液流入室20aから攪拌中和室20bへの酸洗浄排液L1の移送を安定させることができる。
【0062】
攪拌中和室20bに順次移送される酸洗浄排液L1は、中和剤W1により中和されながら次第に攪拌中和室20bに溜まっていき、その液面が第2排出管2eの上端に到達すると、中和処理済みの酸洗浄排液L1が第2排出管2eに溢流するとともに、第2排出管2eに連続する第1排出管2dを介して順次排液処理装置1の下流側へと排出される。
【0063】
一方、排液流入室20aに流入する酸洗浄排液L1は、順次ポンプユニット3により攪拌中和室20bへと移送されるので、排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1の液面は上昇しない。したがって、排液流入室20aの酸洗浄排液L1は、仕切板2aにおける第1排出管2dの一端の位置まで到達しないので、中和処理されないままの状態で第1排出管2dを介して排液処理装置1の下流側に排出されない。
【0064】
このように、人工透析装置10から酸洗浄排液L1が流入する排液流入室20aではなく、当該排液流入室20aとは仕切板2aで仕切られた攪拌中和室20bにポンプユニット3を用いて酸洗浄排液L1を移送した後で中和処理を施すので、人工透析装置10から排出される酸洗浄排液L1の自然流下が開始される位置を考慮すること無く攪拌中和室20bに溜める酸洗浄排液L1の液面の位置を設定可能になり、攪拌中和室20bに多くの酸洗浄排液L1を溜めながら中和処理を行うことができ、酸洗浄排液L1を中和する処理能力の高い排液処理装置1にすることができる。
【0065】
また、移送配管32の吐出口33aは、攪拌中和室20bの下部領域に位置しているので、ポンプユニット3により排液流入室20aから攪拌中和室20bへと移送される酸洗浄排液L1が当該攪拌中和室20bにおける第2排出管2eの上端から一番離れた位置に吐出されるようになる。したがって、攪拌中和室20bに移送されて来た酸洗浄排液L1が第2排出管2eの上端開口に溢流するまでの間において、撹拌機6により十分に中和剤W1と攪拌されるようになり、酸洗浄排液L1を十分に中和処理した状態で排液処理装置1の下流側に排出することができる。
【0066】
さらに、ポンプユニット3により排液流入室20aから攪拌中和室20bへと移送される途中の状態の酸洗浄排液L1に中和剤W1が添加されるので、中和剤W1が添加された状態の酸洗浄排液L1が攪拌中和室20bに吐出されるようになる。したがって、酸洗浄排液L1が第2排出管2eの上端開口に溢流するまでの間において酸洗浄排液L1と中和剤W1とがしっかりと混合されるので、酸洗浄排液L1と中和剤W1との間における中和処理が十分に行われた状態で酸洗浄排液L1を排液処理装置1の下流側に排出することができる。
【0067】
攪拌中和室20bにおいて中和処理を行う際、第1pH測定センサ7により得られた測定値が予め決められた閾値T1を超えない場合には、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6が作動して攪拌中和室20bにおける中和処理が続けて行われる。一方、第1pH測定センサ7により得られた測定値が予め決められた閾値T1を超えると、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6が停止して攪拌中和室20bにおける中和処理作業が停止される。このように、攪拌中和室20bに溜まる酸洗浄排液L1の水素イオン指数が予め決められた閾値T1を下回るときだけポンプユニット3により酸洗浄排液L1が攪拌中和室20bに移送されるとともに中和剤添加ユニット4から中和剤W1が添加されるようになるので、酸洗浄排液L1を中和処理するための中和剤W1の添加量が適量になり、中和剤W1を無駄に消費しないようにすることができる。
【0068】
また、中和処理停止時においてポンプユニット3及び中和剤添加ユニット4を停止させた際、ボールタップ5によって移送配管32に設けられた開閉弁51がゆっくり閉じるので、移送配管32における開閉弁51の下流側部分に残留する中和剤W1を含む酸洗浄排液L1の水素イオン指数を極力低くすることができる。したがって、中和剤W1を含む酸洗浄排液L1が移送配管32から攪拌中和室20bに流れ出たときに当該攪拌中和室20bの水素イオン指数を急激に上昇させないようにすることができる。
【0069】
一方、第1pH測定センサ7により得られる測定値が予め決められた中和状態の範囲であるとともに、排液流入室20aの液面が第1レベルH1であるのをレベルセンサ9にて検知すると、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6が停止して排液処理装置1における中和処理が停止する。
【0070】
また、ポンプユニット3が作動し続ける状態で人工透析装置10から送られてくる酸洗浄排液L1が少なくなると、排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1の液面が次第に下降していく。そして、排液流入室20aの液面が第2レベルH2であるのをレベルセンサ9にて検知すると、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6が停止して排液処理装置1における中和処理が停止する。このように、人工透析装置10から送られてくる酸洗浄排液L1が少なくなったときにおいて、ポンプユニット3が空引きをしなくなるので、ポンプユニット3の故障を確実に防ぐことができる。
【0071】
《発明の実施形態2》
図2は、本発明の実施形態2の排液処理装置1を示す。この実施形態2では、排液処理装置1の始動時の時期を決定する構造が実施形態1と異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0072】
実施形態2の第1排出管2dの下流側内部には、当該第1排出管2dの内部の水素イオン指数(pH)を測定する第2pH測定センサ8が配設されている。
【0073】
実施形態2の制御部11は、第2pH測定センサ8にて得られる測定値が予め決められた閾値V1(第2閾値:例えば、pH5.8)を下回った際、ポンプユニット3、中和剤添加ユニット4及び撹拌機6に作動信号を出力するようになっている。
【0074】
尚、実施形態2に係る酸洗浄排液L1を中和処理する際の排液処理装置1の動作は実施形態1と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0075】
以上より、本発明の実施形態2によると、排液流入室20aに流入する酸洗浄排液L1が第1排出管2dの内部を流れると、酸洗浄排液L1が流れていることを第2pH測定センサ8が検知して、排液流入室20aに流入する酸洗浄排液L1が自動的に攪拌中和室20bへと移送されるようになる。したがって、中和処理されていない酸洗浄排液L1が誤って第1排出管2dを介して排液処理装置1の下流側に排出され続けてしまうのを確実に防ぐことができる。
【0076】
尚、本発明の実施形態2において第1排出管2dの内部に配設した第2pH測定センサ8は、実施形態1の第1排出管2dの内部に配設することもできる。
【0077】
また、本発明の実施形態1,2では、ボールタップ5のフロート56を排液流入室20aに溜まる酸洗浄排液L1に浮かせて開閉弁51の開閉動作を制御しているが、フロート56を攪拌中和室20bに溜まる酸洗浄排液L1に受けせて開閉弁51の開閉動作を制御するようにしてもよい。
【0078】
さらに、本発明の実施形態1,2では、貯留凹部20が上方に開口しているが、開口部分を蓋部材で覆って内部に貯留空間が形成されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、人工透析装置から排出される酸洗浄排液を中和する排液処理装置に適している。
【符号の説明】
【0080】
1 排液処理装置
2 貯留槽
2a 仕切板
2b 外周壁
2c 流入管
2d 第1排出管
2e 第2排出管
3 ポンプユニット
4 中和剤添加ユニット
5 ボールタップ
6 撹拌機
6a 羽根部
7 第1pH測定センサ
8 第2pH測定センサ
9 レベルセンサ
10 人工透析装置
11 制御部
20 貯留凹部(貯留空間)
20a 排液流入室
20b 攪拌中和室
31 ポンプ本体
32 移送配管
33a 吐出口
42a 添加部
51 開閉弁
56 フロート