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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】不織布用接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20220912BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J175/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020198154
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086248
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2021-10-27
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】星野 勇門
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見澤 大介
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506519(JP,A)
【文献】特開昭62-062878(JP,A)
【文献】特開平10-324851(JP,A)
【文献】特開2012-111073(JP,A)
【文献】特開2007-169510(JP,A)
【文献】特許第3191610(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第104610901(CN,A)
【文献】特開2019-172771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒマシ油系ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とを含み、
硬化前の接着剤の粘度が、23℃で測定したときに、200mPa・s以上1200mPa・s以下であり、かつ、硬化後の硬化物の硬さが、23℃で測定したときに、A50~A80である、不織布用接着剤。
【請求項2】
前記イソシアネート化合物が、芳香族ポリイソシアネート化合物である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記接着剤の使用形態が、二液硬化型である、請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
成分(A)ヒマシ油系ポリエステルポリオールを含む主剤と成分(B)イソシアネート化合物を含む硬化剤とから構成され、
使用時に前記主剤と前記硬化剤とを混合して、硬化前の接着剤の粘度が、23℃で測定したときに、200mPa・s以上1200mPa・s以下であり、かつ、硬化後の硬化物の硬さが、23℃で測定したときに、A50~A80である不織布用接着剤に調製するために用いる、
不織布用の二液型接着剤キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、不織布用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布は、例えば、土木資材、建築資材、農業資材、自動車材料、航空機材料、電子機器材料、電気機器材料等といった各種用途に幅広く用いられている。
例えば、堤防や盛土等の土構造物又は建築構造物を被覆するために、透湿防水性不織布が土木資材又は建築資材として用いられている。特許文献1では、風圧に耐えうる高強度を備え、長期にわたって良好に防水性能を保つことのできる、優れた防水シートと、それを用いたシート防水工法を提供することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-241118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、不織布に施与する接着剤について、硬化前の作業性が良好で、硬化後に不織布に対する硬化物の追従性及び接着性が良好な接着剤について検討を行った。
すなわち、本発明は、不織布に施与するときの作業性に優れるとともに、硬化後の硬化物が不織布に対して優れた追従性及び接着性を有する接着剤を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の接着剤が、不織布に施与するときの作業性に優れるとともに、不織布に対して優れた追従性及び接着性を有する硬化物を形成できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、ヒマシ油系ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とを含み、硬化前の接着剤の粘度が、23℃で測定したときに、200mPa・s以上1200mPa・s以下であり、かつ、硬化後の硬化物の硬さが、23℃で測定したときに、A50~A80である、不織布用接着剤を提供することができる。
前記イソシアネート化合物が、芳香族ポリイソシアネート化合物であってもよい
前記接着剤の使用形態が、二液硬化型であってもよい。
また、本発明は、成分(A)ヒマシ油系ポリエステルポリオールを含む主剤と成分(B)イソシアネート化合物を含む硬化剤とから構成され、使用時に前記主剤と前記硬化剤とを混合して、硬化前の接着剤の粘度が、23℃で測定したときに、200mPa・s以上1200mPa・s以下であり、かつ、硬化後の硬化物の硬さが、23℃で測定したときに、A50~A80である不織布用接着剤に調製するために用いる、不織布用の二液型接着剤キットを提供することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不織布に施与するときの作業性に優れるとともに、硬化後の硬化物が不織布に対して優れた追従性及び接着性を有する接着剤を提供することができる。なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の接着剤にて接着したときに形成されるシートの接合に関する一例を示すものであり、図1Aは、重合わせ接手による接合、図1Bは、片面側への接手による接合を示すものである。
図2図2は、簡易止水試験用の平面状の接合試験片10の製造例を示す図である。
図3図3は、略四角錐台形状の接合試験片20を用いた簡易止水試験の側方図である。
図4図4は、略四角錐台形状の接合試験片20を用いた簡易止水試験の上方図である。
図5図5は、略四角錐台形状の折った接合試験片20を用いた簡易止水試験の上方向からの斜視図である。
図6図6は、略四角錐台形状の接合試験片20を用いた簡易止水試験の上方観察の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものでない。また、各数値範囲の上限値と下限値は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0010】
1.本発明の接着剤の説明
【0011】
本発明の接着剤は、硬化前の接着剤の粘度が、23℃で測定したときに、1200mPa・s以下であり、かつ、硬化後の硬化物の硬さが、23℃で測定したときに、A50~A80であってもよい。本発明の接着剤は、不織布用であってもよく、不織布を接着するために用いるものであってもよい。
また、本発明の接着剤は、ポリオールとイソシアネート化合物とを含んでもよい。
本発明の接着剤は、不織布に塗布等で施与するときの作業性に優れるとともに、硬化後の硬化物は基材に対して優れた追従性及び接着性を有する。
【0012】
2.接着剤の性質
【0013】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の硬化前の接着剤の粘度は、23℃で測定したときに、上限値として、好ましくは1200mPa・s以下、より好ましくは1000mPa・s以下、さらに好ましくは900mPa・s以下であり、また、下限値として、特に限定されないが、好ましくは300mPa・s以上、より好ましくは400mPa・s以上、さらに好ましくは500mPa・s以上、さらにより好ましくは600mPa・s以上、さらにより好ましくは700mPa・s以上である。当該好適な数値範囲として、より好ましくは300~1200mPa・s、さらに好ましくは500~1000mPa・s、さらに好ましくは600~900mPa・sである。
硬化前の接着剤を特定の適度な粘度にすることによって、不織布に施与するときの接着剤の含浸性を適度にすることができ、硬化後にこの硬化物の接着性を良好にすることができ、さらに不織布に施与し硬化後の不織布接合部分の水密性もより良好にすることができる。さらに、接着剤を特定の粘度にすることによって、不織布に対する塗布作業を容易に行うことができ、さらに、基材を接着するときの作業時間の確保と硬化時間の短縮との両立もでき、接着剤を不織布に施与するときの作業性を良好にすることができる。
【0014】
<硬化前の接着剤の粘度の測定方法>
硬化前の接着剤の粘度は、JIS K 7117-1、K 7117-2及びJIS K 1557-5に準拠して、測定することができる。JIS K 1557-5は、ポリウレタン原料ポリオールの試験方法(粘度等の求め方)に関する規格であり、この規格には、ブルックフィールド形回転粘度計を用いる方法 JIS K 7117-1、回転粘度計による定せん断速度での粘度の測定方法 JIS K 7117-2が引用されている。具体的には、接着剤を23℃に温調した後、BM型粘度計にて直ちに測定する。二液型接着剤の場合、A液、B液の各液を23℃に温調した後、この2液を混ぜ、直ちにBM型粘度計にて測定する。
測定条件:粘度計B型シリーズBM型粘度計 12回転 3号ロータ 測定時間1分間、測定温度23℃
【0015】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の接着剤における硬化後の硬化物の硬さは、23℃で測定したときに、上限値として、好ましくはA80以下、より好ましくはA75以下、さらに好ましくはA70以下であり、また、下限値として、好ましくはA50以上、より好ましくはA55以上、さらに好ましくはA60以上である。当該好適な数値範囲として、好ましくはA55~A80、より好ましくはA60~A70である。
硬化後の硬化物の硬さを特定の適度な硬さにすることによって、不織布の内部及び接着面上に存在する硬化物の追従性及び接着性をより良好にすることができるとともに、不織布に施与し硬化後の不織布接合部分の水密性もより良好にすることができる。
【0016】
<接着剤の硬化物の硬さの測定方法>
接着剤の硬化後の硬化物の硬さ(ショア硬度)は、JIS K 7215に準じて、測定することができる。具体的には、接着剤を、型(深さ・厚さ:8mm×直径:60mm)に入れて、23℃で養生し1日後に、硬化物を型から取り出し、取り出した硬化物を、ショア-A硬度計にて測定する。なお、ショア-A硬度計による硬化物の硬さの測定範囲は、A10~90とし、A90を超えるときは、ショア-D硬度計で測定する。
測定条件:ショア-A硬度計 瞬間値、測定温度23℃、硬化物の形状:厚み8mm×直径60mm。
【0017】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の接着剤における硬化後の硬化物の常態における引張強度は、特に限定されないが、下限値として、好ましくは2.0MPa以上、より好ましくは3.0MPa以上、さらに好ましくは3.5MPa以上、さらにより好ましくは4.0MPa以上、さらにより好ましくは4.5MPa以上、より好ましくは5.0MPa以上であり、上限値として、好ましくは15MPa以下、より好ましくは13MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下、さらにより好ましくは8.0MPa以下、より好ましくは7.5MPa以下、より好ましくは7.0MPa以下、さらに好ましくは6.5MPa以下、より好ましくは6.0MPa以下である。当該好適な数値範囲として、好ましくは2.0~15MPa、より好ましくは4.0~7.5MPa、さらに好ましくは5.0~6.5MPaである。
硬化後の硬化物を特定の適度な引張強度にすることによって、不織布の内部及び接着面上に存在する硬化物の追従性及び接着性をより良好にすることができるとともに、不織布に対する水密性もより良好にすることができる。
【0018】
<接着剤の硬化物の常態における引張強度の測定方法>
接着剤の硬化物の常態における引張強度試験は、JIS K7113に準じて、23℃にて、行うことができる。使用試験機として、オートグラフASG-X(島津製作所)を用い、試験速度200mm/min、N=2~5(これら値の平均値)にて行うことができる。
【0019】
本発明の好ましい実施態様において、本発明の接着剤のゲルタイムは、特に限定されないが、好ましくは30~120分、より好ましくは50~90分、さらに好ましくは60~80分であり、これにより、可使時間を確保することができ、さらに基材を接着するときの作業時間の確保と硬化時間の短縮の両立もでき、接着剤を不織布に施与するときの作業性を良好にすることができる。
このゲルタイムは、接着剤100gを円筒状のカップ(直径5cm×高さ9cm)にとり、23℃にて静置し、硬化の影響で流動性がなくなるまでの時間をゲルタイムとして測定し求めることができる。二液型接着剤のゲルタイムの測定の場合には、下記実施例の<ゲルタイムの測定方法>に従って行うことができる。
【0020】
本発明は、上述のような特定の粘度及び特定の硬度となるように接着剤成分を含有させることが好適であり、より好適な接着剤成分は、以下の「3.接着剤の組成」から適宜採用することができる。
【0021】
3.接着剤の組成
本発明の好ましい実施態様として、接着剤が、成分(A)ポリオールと成分(B)イソシアネート化合物を含む。本発明の接着剤は、ウレタン系接着剤であることが好ましく、当該ウレタン系は、例えば、ポリオールのヒドロキシ基(OH基)とイソシアネート化合物のイソシアネート基(NCO基)とを反応させることにより、硬化物であるウレタンポリマーの樹脂を形成することができる。
これにより、不織布に施与するときの作業性に優れるとともに、不織布に対する硬化後の硬化物の追従性及び接着性に優れる接着剤を提供することができる。以下で、本発明の接着剤の組成の例について説明する。
【0022】
<成分(A)ポリオール>
本発明に用いられる成分(A)のポリオールは、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられるが、これらに限定されない。これらから選択される1種又は2種以上を使用してもよい。これらポリオールは、市販品を用いてもよく、公知の製造方法によって得たものを用いてもよい。
また、ポリオールとして、例えば、植物油脂由来のポリオール等が挙げられ、当該ポリオールは、天然系又は合成系のいずれでもよく、天然系としてヒマシ油等の植物油脂等が挙げられ、合成系として植物油脂に含まれるカルボン酸(好適には脂肪酸)等と、多価アルコール等との縮合により得られるもの等が挙げられるが、これらに限定されない。このうち、好ましくは、ヒマシ油等を含むヒマシ油由来ポリオールである。
【0023】
ポリオールの粘度は、特に限定されないが、23℃で測定したときに、上限値として、好ましくは1200mPa・s以下、より好ましくは1000mPa・s以下、さらに好ましくは900mPa・s以下であり、また、下限値として、好ましくは200mPa・s以上、より好ましくは500mPa・s以上、さらに好ましくは600mPa・s以上である。
【0024】
<ポリオール等の粘度の測定方法>
本明細書における粘度は、上記<硬化前の接着剤の粘度の測定方法>と同様にJIS K 7117-1、K 7117-2及びJIS K 1557-5に準拠して、測定することができる。具体的には、試料を23℃に温調した後、BM型粘度計にて、23℃で測定する。
測定条件:粘度計B型シリーズBM型粘度計 12回転 3号ロータ 測定時間1分間、測定温度23℃
【0025】
ポリオールの水酸基価は、特に限定されないが、上限値として、好ましくは160mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、さらに好ましくは145mgKOH/g以下、さらにより好ましくは140mgKOH/g以下であり、下限値として、好ましくは100mgKOH/g以上、より好ましくは110mgKOH/g以上、さらに好ましくは120mgKOH/g以上である。
本明細書における水酸基価(mgKOH/g)は、JIS K 0070、JIS K 1557-5に準じて、測定することができる。
【0026】
ポリオールの官能基数(末端水酸基)は、特に限定されないが、上限値として、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下であり、下限値として、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上である。
本明細書における官能基数(末端水酸基)は、水酸基価及びGPCによる数平均分子量から式1により算出することができる。官能基数(末端水酸基)=水酸基価(mgKOH/g)×数平均分子量/(1000×56.1)・・・(式1)。
【0027】
接着剤中のポリオールの質量含有割合は、特に限定されないが、接着剤の質量に対して、下限値として、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、上限値として、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
接着剤中のポリオールの体積含有割合は、特に限定されないが、接着剤の体積に対して、下限値として、好ましくは65体積%以上、より好ましくは68体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上、さらにより好ましくは73体積%以上であり、上限値として、好ましくは90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、さらに好ましくは80体積%以下である。
【0028】
<成分(A)ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールとして、特に限定されないが、天然系であっても合成系であってもよい。ポリエステルポリオールは、市販品を用いてもよく、公知の製造方法によって得たものを用いてもよい。
【0029】
天然系のポリエステルポリオールとして、特に限定されないが、例えば、植物油脂ポリオール等が挙げられ、当該植物油脂ポリオールとして、特に限定されないが、例えば、ヒマワリ油、菜種油、亜麻仁油、綿実油、キリ油、ヤシ油、ケシ油、トウモロコシ油、ヒマシ油及びピーナッツ油等の植物油脂が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。これら植物油脂には、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリエステルポリオール等が含まれうる。
【0030】
合成系のポリエステルポリオールとして、これら植物油脂に含まれるカルボン酸(好適には脂肪酸)と、多価アルコールとの縮合により得られるもの等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、水添植物油脂、植物油脂又は水添植物油脂と多価アルコールとの反応物、植物油脂由来又は水添植物油脂由来の脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、及びこれらにアルキレンオキシドを付加重合したポリオール等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0031】
ポリエステルポリオールの粘度は、特に限定されないが、23℃で測定したときに、上限値として、好ましくは1200mPa・s以下、より好ましくは1000mPa・s以下、さらに好ましくは900mPa・s以下であり、また、下限値として、好ましくは200mPa・s以上、より好ましくは500mPa・s以上、さらに好ましくは600mPa・s以上である。
【0032】
ポリエステルポリオールの水酸基価は、特に限定されないが、上限値として、好ましくは160mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、さらに好ましくは145mgKOH/g以下、さらにより好ましくは140mgKOH/g以下であり、下限値として、好ましくは100mgKOH/g以上、より好ましくは110mgKOH/g以上、さらに好ましくは120mgKOH/g以上である。
【0033】
ポリエステルポリオールの官能基数(末端水酸基)は、特に限定されないが、上限値として、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下であり、下限値として、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上である。
【0034】
接着剤中のポリエステルポリオールの質量含有割合は、特に限定されないが、接着剤の質量に対して、下限値として、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、上限値として、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下であり、より好適な数値範囲として、好ましくは60~80質量%、より好ましくは65~75質量%である。
【0035】
接着剤中のポリエステルポリオールの体積含有割合は、特に限定されないが、接着剤の体積に対して、下限値として、好ましくは65体積%以上、より好ましくは68体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上、さらにより好ましくは73体積%以上であり、上限値として、好ましくは90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、さらに好ましくは80体積%以下であり、より好適な数値範囲として、好ましくは68~85体積%、より好ましくは70~80体積%である。
【0036】
ポリエステルポリオールのうち、ヒマシ油系ポリエステルポリオールが好ましい。ヒマシ油系ポリエステルポリオールは、市販品を用いてもよく、公知の製造方法によって得たものを用いてもよい。
ヒマシ油系ポリエステルポリオールとして、特に限定されないが、例えば、ヒマシ油の天然系ポリエステルポリオール、ヒマシ油脂肪酸、水添ヒマシ油、水添ヒマシ油脂肪酸など及びこれらを用いて製造されたもの等の合成系ポリエステルポリオール、並びにこれらの混合物が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0037】
ヒマシ油系ポリエステルポリオールとして、市販品を使用してもよく、例えば、ヒマシ油(水酸基価160mgKOH/g、官能基数2.7)、H-81(水酸基価330~350mgKOH/g、官能基数3、1000~1400mPa.s(25℃)、伊藤精油社製)、H-1824(水酸基価55~77mgKOH/g、官能基数2.3、700~1600mPa.s(25℃)、伊藤精油社製)、HF-2009(水酸基価44mgKOH/g、官能基数2.2、1500mPa.s(25℃)、伊藤精油社製)、HF-1300(水酸基価75~105mgKOH/g、官能基数2、170~250mPa.s(25℃)、伊藤精油社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0038】
ヒマシ油系ポリエステルポリオールは、性質の異なる2種以上を組み合わせた混合物であることが好ましい。ヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物は、上記「ポリオールの粘度」に記載の特定の粘度の範囲内になるように、2種以上を組み合わせたものが好ましく、23℃で測定したときの好適な上限値として、好ましくは1200mPa・s以下である。また、当該混合物は、本発明の効果が損なわれない範囲内で、ヒマシ油系ポリエステルポリオール以外のポリエステルポリオール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール等から選択される1種又は2種以上を含んでもよい。
また、ヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物は、水酸基価の異なる2種以上のポリエステルポリオールを組み合わせたものでもよい。このとき、高水酸基価のヒマシ油系ポリエステルポリオールと、低水酸基価のヒマシ油系ポリエステルポリオールとの混合物であってもよく、この「低」は、或るポリオールの水酸基価が、当該或るポリオールの水酸基価よりも低いという相対的な関係を示すことを意図するものである。この「高」も、或るポリオールの水酸基価が、当該或るポリオールの水酸基価よりも高いという相対的な関係を示すことを意図するものである。当該「低」は水酸基価10~150mgKOH/gのものが好ましく、より好ましくは水酸基価50~100mgKOH/gのものであり、これは水酸基価の異なる2種以上のポリエステルポリオールを組み合わせたものでもよい。当該「高」は水酸基価170~380mgKOH/gのものが好ましく、より好ましくは水酸基価250~350mgKOH/gのものであり、これは水酸基価の異なる2種以上のポリエステルポリオールを組み合わせたものでもよい。
【0039】
ヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物の水酸基価は、上記「ポリオールの水酸基価」に記載の特定の水酸基価の範囲内になるように、2種以上を組み合わせることが好ましく、この好適な上限値として好ましくは160mgKOH/g以下である。また、当該混合物の官能基数は2~3であることが好ましい。
【0040】
ヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物として、例えば、ヒマシ油と水酸基価330~350mgKOH/gのヒマシ油系ポリエステルポリオールとの混合物、水酸基価330~350mgKOH/gのヒマシ油系ポリエステルポリオールと水酸基価55~77mgKOH/gのヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物が好ましく、より好ましくは、水酸基価330~350mgKOH/gのヒマシ油系ポリエステルポリオールと水酸基価55~77mgKOH/gのヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物である。混合物に使用するヒマシ油系ポリエステルポリオールの官能基数は、2~3であることが好ましい。なお、当該混合物は、本発明の効果が損なわれない範囲内で、ヒマシ油系ポリエステルポリオール以外のポリオールを含んでもよい。
【0041】
ヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物における、低水酸基価のヒマシ油系ポリエステルポリオールと、高水酸基価のヒマシ油系ポリエステルポリオールとの質量含有割合は、特に限定されないが、接着剤中、それぞれ、好ましくは30~80:70~20、より好ましくは65~75:35~25である。
ヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物中の低水酸基価のヒマシ油系ポリエステルポリオールの質量含有割合は、ヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物100質量部に対して、特に限定されないが、好ましくは10~80質量部、より好ましくは20~70質量部、さらに好ましくは20~50質量部、さらにより好ましくは20~30質量部である。
ヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物中の高水酸基価のヒマシ油系ポリエステルポリオールの質量含有割合は、ヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物100質量部に対して、特に限定されないが、好ましくは20~90質量部、より好ましくは30~80質量部、さらに好ましくは50~80質量部、さらにより好ましくは70~80質量部である。
【0042】
ヒマシ油系ポリエステルポリオールの粘度は、特に限定されないが、23℃で測定したときに、上限値として、好ましくは1200mPa・s以下、より好ましくは1000mPa・s以下、さらに好ましくは900mPa・s以下であり、また、下限値として、好ましくは200mPa・s以上、より好ましくは500mPa・s以上、さらに好ましくは600mPa・s以上である。
【0043】
ヒマシ油系ポリエステルポリオールの水酸基価は、特に限定されないが、上限値として、好ましくは160mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、さらに好ましくは145mgKOH/g以下、さらにより好ましくは140mgKOH/g以下であり、下限値として、好ましくは100mgKOH/g以上、より好ましくは110mgKOH/g以上、さらに好ましくは120mgKOH/g以上である。
【0044】
ヒマシ油系ポリエステルポリオールの官能基数(末端水酸基)は、特に限定されないが、上限値として、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下であり、下限値として、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上である。
【0045】
接着剤中のヒマシ油系ポリエステルポリオールの質量含有割合は、特に限定されないが、接着剤の質量に対して、下限値として、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、上限値として、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下であり、より好適な数値範囲として、好ましくは60~80質量%、より好ましくは65~75質量%である。
【0046】
接着剤中のヒマシ油系ポリエステルポリオールの体積含有割合は、特に限定されないが、接着剤の体積に対して、下限値として、好ましくは65体積%以上、より好ましくは68体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上、さらにより好ましくは73体積%以上であり、上限値として、好ましくは90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、さらに好ましくは80体積%以下であり、より好適な数値範囲として、好ましくは68~85体積%、より好ましくは70~80体積%である。
【0047】
<成分(A)ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールとして、特に限定されないが、例えば、モノオール、ジオール、ポリオール、これら以外の活性水素含有化合物から選択される単独又は2種以上の混合物に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等のアルキレンオキシドから選択される1種又は2種以上を使用し、公知の方法で付加重合して得られるものが挙げられる。これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
ポリエーテルポリオールのモノオールとして、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールのジオールとして、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールのポリオールとして、特に限定されないが、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
これら以外の活性水素含有化合物として、特に限定されないが、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ソルビトール、蔗糖等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとして、市販品を用いてもよく、公知の製造方法によって得たものを用いてもよい。市販品として、例えば、P-2000(水酸基価56mgKOH/g、官能基数2、アデカ社製)等のポリプロピレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されない。これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0048】
接着剤中のポリエーテルポリオールの質量含有割合は、特に限定されないが、接着剤の質量に対して、好ましくは60~80質量%、より好ましくは65~75質量%である。
接着剤中のポリエーテルポリオールの体積含有割合は、特に限定されないが、接着剤の体積に対して、好ましくは68~85体積%、より好ましくは70~80体積%である。
【0049】
<成分(B)イソシアネート化合物>
本発明に用いられる成分(B)イソシアネート化合物として、特に限定されないが、例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び脂環式イソシアネート等を挙げることができ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。イソシアネート化合物は、市販品を用いてもよく、公知の製造方法によって得たものを用いてもよい。
イソシアネート化合物として、分子内にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物が好ましい。ポリイソシアネート化合物として、有機ポリイソシアネート、変性ポリイソシアネート、イソシアネート系プレポリマー、又はこれらの混合物を用いてもよい。
【0050】
芳香族ポリイソシアネート化合物として、特に限定されないが、例えば、MDI(例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート(別名 4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI))、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′-MDI)及びこれらの混合物等のジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレン=ポリフェニレンポリイソシアネート(PMDI))、TDI(例えば、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)及びこれらの混合物等のトルエンジイソシアネート)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(1,5-NDI)、ジフェニルエーテルジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート(PDI)等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
この芳香族ポリイソシアネート化合物のうち、MDIが好ましく、さらにMDIのなかで、ポリメチレン=ポリフェニレンポリイソシアネート(PMDI)が好ましい。
【0051】
なお、「MDI」は、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリメチレン=ポリフェニレンポリイソシアネートの総称語として、一般的に使用されうる。当該「ジフェニルメタンジイソシアネート」の語は、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2′-MDI)、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′-MDI)及び4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)の異性体を含みうる。これらの異性体は、集合的に、「単量体のMDI」又は「MMDI」を意味する。また、「ポリメチレン=ポリフェニレンポリイソシアネート(PMDI)」という語は、「重合体のMDI」又は「PMDI」を意味する。これらは、単量体のMDIのより高次の同族体及びさらに任意に単量体のMDIを含みうる。
【0052】
脂肪族ポリイソシアネート化合物として、1,6-ヘキサエチレンジイソシアネート(HDI)、Lーロイシン ジイソシアネート(LDI)、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0053】
脂環式ポリイソシアネート化合物として、例えば、4-4′-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0054】
ポリイソシアネート化合物のうち、2官能芳香族ポリイソシアネート化合物が好ましい。さらに、このポリイソシアネート化合物のうち、PMDIが、不織布に対する追従性、接着性、作業性及び環境基準の観点から、好ましい。
【0055】
イソシアネート化合物のNCO量(%)は、特に限定されないが、例えば20~30%、好ましくは25~30%、より好ましくは26~29%、さらに好ましくは27~28%である。なお、本明細書におけるNCO量の測定は、「JIS K 1603-2007 プラスチック-ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法」に準じて測定することができる。
また、イソシアネート化合物の粘度は、特に限定されないが、23℃で測定したときに、好ましくは10~500mPa・s、より好ましくは50~300mPa・s、さらに好ましくは100~200mPa・sである。なお、イソシアネート化合物の粘度は、上記<ポリオール等の粘度の測定方法>に従って測定することができる。
【0056】
接着剤中のイソシアネート化合物の質量含有割合は、特に限定されないが、接着剤の質量に対して、下限値として、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、上限値として、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
接着剤中のイソシアネート化合物の体積含有割合は、特に限定されないが、接着剤の体積に対して、下限値として、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上であり、上限値として、好ましくは35体積%以下、より好ましくは32体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下、さらにより好ましくは25体積%以下である。
【0057】
2官能芳香族ポリイソシアネート化合物のNCO量(%)は、特に限定されないが、例えば20~30%、好ましくは25~30%、より好ましくは26~29%、さらに好ましくは27~28%である。
また、2官能芳香族ポリイソシアネート化合物の粘度は、特に限定されないが、好ましくは10~500mPa・s、より好ましくは50~300mPa・s、さらに好ましくは100~200mPa・sである。
【0058】
接着剤中の2官能芳香族ポリイソシアネート化合物の質量含有割合は、特に限定されないが、接着剤の質量に対して、下限値として、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、上限値として、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下であり、より好適な数値範囲として、好ましくは20~40質量%、より好ましくは25~35質量%である。
接着剤中の2官能芳香族ポリイソシアネート化合物の体積含有割合は、特に限定されないが、接着剤の体積に対して、下限値として、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上であり、上限値として、好ましくは35体積%以下、より好ましくは32体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下、さらにより好ましくは25体積%以下であり、より好適な数値範囲として、好ましくは15~32体積%、より好ましくは20~30体積%である。
【0059】
<成分(A)と成分(B)との質量含有割合及び体積含有割合>
接着剤中の成分(A)ポリオールと、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)との質量含有割合は、特に限定されないが、成分(A)ポリオール100質量部に対して、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)は、好ましくは10~60質量部、より好ましくは20~50質量部、さらに好ましくは30~40質量部である。
接着剤中の成分(A)ポリエステルポリオールと、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)との質量含有割合は、特に限定されないが、成分(A)ポリエステルポリオール100質量部に対して、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)は、好ましくは10~60質量部、より好ましくは20~50質量部、さらに好ましくは30~40質量部である。
接着剤中の成分(A)ヒマシ油系ポリエステルポリオールと、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)との質量含有割合は、特に限定されないが、成分(A)ヒマシ油系ポリエステルポリオール100質量部に対して、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)は、好ましくは10~60質量部、より好ましくは20~50質量部、さらに好ましくは30~40質量部である。
【0060】
また、接着剤中の成分(A)ポリオールと、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)との体積含有割合は、特に限定されないが、成分(A)ポリオール100体積部に対して、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)は、好ましくは10~50体積部、より好ましくは15~40体積部、さらに好ましくは25~35体積部である。
また、接着剤中の成分(A)ポリエステルポリオールと、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)との体積含有割合は、特に限定されないが、成分(A)ポリエステルポリオール100体積部に対して、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)は、好ましくは10~50体積部、より好ましくは15~40体積部、さらに好ましくは25~35体積部である。
また、接着剤中の成分(A)ヒマシ油系ポリエステルポリオールと、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)との体積含有割合は、特に限定されないが、成分(A)ヒマシ油系ポリエステルポリオール100体積部に対して、成分(B)イソシアネート化合物(好適には2官能芳香族ポリイソシアネート化合物)は、好ましくは10~50体積部、より好ましくは15~40体積部、さらに好ましくは25~35体積部である。
【0061】
<任意成分>
本発明の接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外の各種添加剤等を任意成分として適宜含有させることができる。当該任意成分として、例えば、溶剤、硬化性成分、硬化促進剤、光硬化剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0062】
本発明の接着剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、接着剤に含有させる単数又は複数の接着剤成分を、同時に又は別々に混合することにより調製することができる。
【0063】
また、本発明において、主剤となる成分(A)と硬化剤となる成分(B)から構成される二液型接着剤の場合、成分(A)と成分(B)とをそれぞれ別々の容器に充填し保存してもよく、いずれか又は両方の容器内は、窒素ガス等不活性ガスで置換されていてもよい。なお、成分(A)と成分(B)との質量使用割合及び体積使用割合は、上記<成分(A)と成分(B)との質量含有割合及び体積含有割合>で説明した質量含有割合及び体積含有割合を適宜採用することができる。使用時に主剤と硬化剤とを十分に混合して二液型接着剤を調製することもでき、例えば、カートリッジガン等の接着剤工具を用い、このカートリッジの先端で、成分(A)と成分(B)の二成分を混合させながら、基材に塗布してもよい。
【0064】
本発明は、上述のように、ポリオールとイソシアネート化合物とを含む接着剤が特定の性質を有することが好適であり、より好適な接着剤の性質は、上記「2.接着剤の性質」から適宜採用することができる。
【0065】
本発明の接着剤の使用形態は、特に限定されないが、例えば、ホットメルト系、溶剤系、水系のいずれでもよく、また、一液硬化型、二液硬化型、常温硬化型、熱硬化型、及びUV硬化型等が挙げられる。本発明の接着剤の使用形態は、非溶剤系が好ましい。また、本発明の接着剤の使用形態は、接着剤を基材に施与するときの作業が容易に行えることから、二液硬化型及び/又は常温硬化型が好ましい。
【0066】
本発明の接着剤又は接着剤成分は、土木、建築、農業、自動車、航空機、電子機器、電気機器等の用途に用いることができる不織布を接着するために用いることが好ましく、当該不織布として、より具体的には、例えば、土木資材用、建築資材用、農業資材用、自動車材料用、航空機材料用、電子機器材料用、電気機器材料用等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上がさらに好ましい。
本発明の接着剤又は接着剤成分は、このうち、土木資材、建築資材、又は農業資材に使用できる不織布を接着するために用いることが好ましく、堤防や盛土等の土構造物又は建築構造物を被覆するために使用できる不織布を接着するために用いることが好ましく、硬化後の硬化物が優れた追従性及び接着性を有しさらに水密性及び耐水性も有するため、堤防等に敷設する透湿防水性不織布を接着するために用いることがより好ましい。
【0067】
本発明は、接着剤が特定の粘度及びこの硬化物が特定の硬さになるように構成されている接着剤成分又はウレタン系接着剤成分を、接着剤を製造するために使用してもよい。当該接着剤は、一液型又は二液型であってもよく、主剤を含む容器及び硬化剤を含む容器から構成される接着剤キットであってもよい。
また、本発明は、接着剤又は接着剤成分を基材に対して使用する、基材を接着させるための接着方法を提供することができる。
【0068】
本発明の接着剤は、硬化後に硬化物の硬さが特定の範囲内にあることで、基材に対して優れた追従性及び接着性を有する硬化物を形成することができる。
さらに、本発明の接着剤は、硬化前の接着剤の粘度が適度であるので、不織布に良好に含浸しつつ、一方で不織布の接着面上にも存在した状態で、硬化しうる。このため、硬化後に、接着剤の硬化物が不織布の内部に良好に存在しつつ接着面上にも良好に存在するため、この硬化物は、不織布に対して優れた接着性を有する。そして、この硬化物は、優れた耐水性を有するとともに、不織布に対して優れた追従性及び接着性も有するため、優れた水密性も有する。
また、本発明の接着剤は、所定時間まで硬化しないことで適度な可使時間も確保するとともに、硬化時間が長時間にならないような適度な硬化時間であることから、接着剤を不織布に施与するときの作業効率を良好にすることができる。本発明の接着剤は、さらにこの接着剤は適度な粘度を有するため、不織布に対する塗布作業を容易に行うことができる。さらに本発明の接着剤であれば、熱融着の接合作業を行わなくともよく、常温硬化にて可使時間を確保して接着作業を行うことが可能であるので、不織布の接着作業を簡便に容易に行うことができる。このように、本発明の接着剤は、接着剤を不織布に施与するときの作業性に優れている。
【0069】
このように、本発明の接着剤は、不織布に塗布等で施与するときの作業性に優れるとともに、不織布に対して優れた追従性及び接着性を有する硬化物を形成することができる。さらに、本発明の接着剤を不織布に塗布し硬化させた硬化物は優れた水密性及び耐水性を有する。
【0070】
4.本発明の接着剤の使用方法
【0071】
本発明の接着剤を基材に施与する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、本発明の接着剤の使用方法は、基材に対して接着剤を塗布等で施与し、基材同士を接着面で接触させ、接着剤を硬化させることで複数の基材を接着させることができる。
【0072】
基材として、特に限定されないが、例えば、織布又は不織布等の基布、金属素材、合成樹脂素材等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができ、このうち、少なくとも基布を接着させるために接着剤を用いることが好ましく、より具体的には、基布同士、基布と基布以外の基材(例えば金属素材又は合成樹脂素材等)とを接着させることが好ましい。
【0073】
基材のうち、本発明の接着剤は、塗布したときに不織布の表面に一部残存しながら不織布の内部に十分に含浸できるため、硬化後に内部と表面上とにこの硬化物を形成でき良好な接着性を発揮できるので、不織布がより好ましく、本発明の接着剤は、不織布、より具体的には、不織布同士、又は、不織布と金属素材(例えば、不織布固定ピン等)を接着するために用いることが、より好ましい。
【0074】
不織布は、特に限定されないが、長繊維不織布であることが好ましい。また、不織布は、単層又は積層構造を有するものであってもよい。
不織布の厚みは特に限定されないが、土木資材、建築資材又は農業資材に使用できる程度の厚みが好ましく、例えば、0.1~20mm、より好ましくは0.5~10mm、さらに好ましくは1~6mm又は1~5mmである。
【0075】
不織布として、特に限定されないが、例えば、セルロース等の天然繊維や、ポリエステル等の合成繊維等が挙げられる。合成繊維の素材として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド系等の熱可塑性樹脂を用いることが可能である。
このうち、ポリエステル系不織布(例えばポリエチレンテレフタレート不織布)、ポリオレフィン系(ポリエチレン等)不織布が、好ましい。
さらに、不織布として、透湿防水という機能を付加した不織布である透湿防水性不織布が、より好ましく、当該透湿防水性不織布として、例えば、JIS A 6111に適合する透湿防水シート等が挙げられる。
【0076】
不織布におけるフリースの形成方法は、例えば、乾式法、湿式法、及びスパンボンド法、メルトブローン法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法(含浸法、スプレー法等)等が挙げられ、いずれの方法を使用してもよい。不織布の繊維の結合方法として、例えば、ニードルパンチ法、水流絡合法及び接着剤法等が挙げられ、いずれの方法を使用してもよい。このような乾式法等の製造方法にて製造された乾式不織布等を提供することができる。
【0077】
本発明の接着剤は、屋外又は屋内で使用することができ、常温硬化型であることが好適であり、例えば湿気等の水分によって硬化することができ、紫外線等の光を照射しなくとも硬化可能である。より具体的には、本発明の接着剤は、例えば、5~90℃、相対湿度(RH)5~95%の条件下で、本発明の接着剤を硬化させることができる。
本発明の接着剤の硬化温度は、例えば-20~+90℃、好ましくは5~90℃、より好ましくは4~50℃、さらに好ましくは10~40℃である。
本発明の接着剤の硬化時間は、特に限定されないが、作業性向上と作業時間確保の観点から、好ましくは0.1~3時間程度であり、より好ましくは0.5~2時間程度であり、さらに好ましくは1~2時間である。
本発明の接着剤の塗布量は、特に限定されないが、接着面積1000cmに対して、好ましくは250~550g、より好ましくは300~500g、さらに好ましくは350~450gである。
【実施例
【0078】
以下、試験例等に基づいて本技術をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する試験例等は、本技術の代表的な実施例等の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0079】
以下の表に示されるとおりの組成となるように、A液及びB液の体積(mL)を計量するとともにこのときの質量(g)も計量し、A液とB液とを混合して二液型接着剤を得た。A液の成分が複数の場合には、それぞれの成分の質量(g)を計量し、これら成分(ヒマシ油由来のポリオール1液及び2液)を混合し、この混合液をA液として使用した。二液型接着剤を試験片の接着面の表面に塗布し、この塗布された接着面に別の試験片を接着させて二液型接着剤を硬化させ、硬化後所定期間養生させた。作業は、ラボ内にて、室温(23℃)にて行った。これにより、接着剤を硬化させた硬化物にて複数の試験片を接着させた接合試験片を得ることができた。
【0080】
<各材料>
本試験例に示される試験片及び材料の化合物名は以下のとおりである。なお、これら試験片及び材料は、市販品を用いた。
〔試験片、接手〕
透湿防水性不織布(JIS A 6111に適合)(厚み6mm):素材として、保護用ポリエステル製不織布及び防水性ポリエチレン多孔質フィルムを含む。透湿防水性不織布は、スパンボンド製造方法により製造されたものである。
〔A液〕
ヒマシ油系ポリエステルポリオール(ヒマシ油由来ポリオール)
(1)ヒマシ油;水酸基価160mgKOH/g、官能基数2.7、粘度670mPa・s(測定温度23℃)
(2)ヒマシ油系ポリエステルポリオールU1;水酸基価55~77mgKOH/g、官能基数2.3、粘度700~1600mPa・s(測定温度23℃))
(3)ヒマシ油系ポリエステルポリオールU8;水酸基価330~350mgKOH/g、官能基数3、粘度1000~1400mPa・s(測定温度23℃)
〔B液〕
2官能芳香族イソシアネート化合物
(1)コスモネート PM-35(三井化学ポリウレタン社製):ポリイソシアネート化合物(変性イソシアネート);ポリメチレンポリフェニル=ポリイソシアネート(PMDI)(メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート)、NCO%:27.0~28.0%、粘度100~200mPa・s(23℃)
【0081】
各種測定及び各種試験は、以下の方法に従って行った。これらの結果は、表1に示した。
【0082】
<水酸基価の算出方法>
A液が単独のポリオールの場合には、この水酸基価は、JIS K 0070、JIS K 1557-1に準じて、測定することができる。A液が複数のポリオールを含む場合の水酸基価には、(A1液の質量部×水酸基価+A2液の質量部×水酸基価+・・・Ax液の質量部×水酸基価)/A1液の質量部+A2液の質量部+・・・Ax液の質量部(質量部の総量))で、算出することができる。例えば、試験例1の場合、(U1:75×OHV 66+U8:25× OHV 340)÷100(総量)=OHV 134.5を求めることができる。
【0083】
<硬化前の各材料の粘度の測定方法>
ポリオール及びポリイソシアネート化合物のそれぞれの粘度測定は、上記<ポリオール等の粘度の測定方法>に従って、行うことができる。測定条件:JIS K 7117-1,K 7117-2及びJIS K 1557-5、粘度計B型シリーズBM型粘度計 12回転 3号ロータ 測定時間1分間、測定温度23℃。
ポリオール及びポリイソシアネート化合物を混合した後の混合物の粘度測定は、上記 <硬化前の接着剤の粘度の測定方法>に従って、行うことができる。具体的には、A液、B液の各液を23℃に温調した後、この2液を撹拌後、この混合液を直ちに、BM粘度計にて、23℃、測定時間1分間にて、測定することができる。測定条件:JIS K 7117-1,K 7117-2及びJIS K 1557-5、粘度計B型シリーズBM型粘度計 12回転 3号ロータ 測定時間1分間、測定温度23℃。
【0084】
<接着剤の硬化後の硬化物の硬度の測定方法>
接着剤の硬化後の硬度(ショア硬度)は、上記<接着剤の硬化物の硬さの測定方法>に従って、行うことができる。測定条件:JIS K 7215、ショア-A硬度計 瞬間値、測定温度23℃、硬化物の形状:厚み8mm×直径60mm。
【0085】
<接合試験片の接着強度試験>
重ね合わせ接合試験片の製造方法:短冊形試験片(幅2.5cm×長さ15cm×厚み 6mm)1,1の2つを用い、一方の短冊形の試験片1の端部にある接着面4(幅2.5cm×長さ5cm)に、室温23℃にて、接着剤5g/(2.5cm×5cm)で、塗布した。この接着剤を塗布した接着面4に、他方の短冊形の試験片1の接着面4(幅2.5cm×長さ5cm)を重ね合わせて接着させ、室温23℃で硬化させた。硬化後、1週間23℃で養生させて、「重ね合わせ接合試験片」10a(幅2.5cm×長さ25cm、接合部厚さ12mm)を得た(図1A参照)。
この重ね合わせ接合試験片の製造方法に従って、試験例1~5の接着剤を塗布して試験例1~5の重ね合わせ接合試験片を得、これらを接合試験片の接着強度試験に使用した。
【0086】
接着強度試験は、上記<接合試験片の接着強度試験>で製造された重ね合わせ接合試験片を用いて、JIS 7214に準じて、23℃にて行った。使用試験機として、オートグラフAGS-X(島津製作所)を用い、試験速度100mm/min、N=2(これら値の平均値)であった。
【0087】
伸び試験及び引張強度試験は、JIS K 7161-2に準じて作製された5B型試験片を用いて、JIS K7113に準じて、23℃にて、行うことができる。なお、5B型試験片は、接着剤のみで硬化させた硬化物の樹脂である。使用試験機として、オートグラフAGS-X(島津製作所)を用い、試験速度200mm/min、N=3(これら値の平均値)であった。
【0088】
伸び試験での単位は%であり、引張強度試験での単位はMPaであり、接着強度試験での単位は、N/5cmである。
常態では、23±2℃、50±5%RHの環境下で、試験を行う。
水浸漬では、23±2℃、50±5%RHの環境下で、接合試験片を水で30日間浸漬後に、試験を行う。
【0089】
<破断状態の評価>
上記<接着強度試験(常態)>後の接合試験片の破断状態を観察し、目視にて基材破壊(SF)、界面剥離(AF)、凝集破壊(CF)の評価を行った。基材である透湿防水性不織布が破壊されている場合には基材破壊、基材である透湿防水性不織布と接着剤が硬化した硬化層の接合界面で破壊されている場合には界面剥離、基材である不織布が破壊されずに接着剤が硬化した硬化物(樹脂)層内部が破壊されている場合には凝集破壊と評価した。
【0090】
<ゲルタイムの測定方法>
【0091】
【表1】
【0092】
<簡易止水試験>
簡易止水試験で使用する、接合試験片の製造方法を、図2を示し説明する。塗布する前にA液及びB液を混合して得られた試験例1~5の二液型接着剤を用いて、試験例1~5の接合試験片をそれぞれ製造した。以下に、より具体的に説明する。
2つの試験片(30cm×30cm×厚み6mm)を用い、これら試験片1,1の端部を突合せた(図2A)。2つの試験片1,1の突合せ端部から左右方向に5cmずつの10cm、縦方向に上端から下端までの30cmに接着剤を塗布するための接着面4(接着面積 30cm×10cm)を設け、この接着面4全面の上に、接着剤層が均一の厚さになるように、室温23℃にて、120g/(30cm×10cm)にて接着剤を塗布した。接着剤が塗布された接着面4に、接手となる試験片3(30×10cm×厚み6mm)を載せた(図2B)。
なお、このときに、二液型接着剤塗布用のカートリッジガンを用いて塗布してもよく、この二液型接着剤塗布用のカートリッジガンは、A液を含む容器とB液を含む容器とからA液及びB液を同時にそれぞれ特定量(mL)を押出し、押し出されたA液及びB液はノズル部分にて混合され、この混合液の接着剤を試験片に塗布できるものである。
【0093】
接着面4に接手3を載せて押さえた後に、室温23℃にて、接着剤を硬化させた。硬化後、接着剤の硬化物の養生を7日間行った。これにより、試験片1,1の接着面4と接手3の接着面とを接着剤の硬化物にて接着させた接合部21を有する接合試験片10(30cm×60cm、接合部厚み12mm)を製造した。これを簡易止水試験用の接合試験片10として用いた。
【0094】
図3~6に示すように、得られた平面状の接合試験片10(30cm×60cm、接合部厚み12mm)を接手3の短手方向(10cm)の両端付近から内側にひだの先端がくるように4箇所を折り込んで略四角錐台形状を形成し、略四角錐台形状の接合試験片20を得た。
【0095】
30cm×60cmの簡易止水試験用の接合試験片20を図3~6のように設置し、接合部分に1kgの水を流しこんだ後、室温23℃にて1時間放置し、浸水1時間後の接合試験片の接合部21からの漏水の有無を確認した。
さらに、試験後の接合試験片20を長手方向(60cm)に切断し、接合部21の断面の状態を観察した。
接合部21の断面観察において、不織布にある接着剤が硬化した硬化物(樹脂)の状態を接着剤が含浸した状態とし、接着剤を塗布した試験片の接着面4を起点(0mm)とし、接着面から含浸した硬化物の先端の距離(mm)を測定し、〔接着面から硬化物の先端の距離(mm)/試験片の厚み(mm)〕×100(%)で含浸率を求めることができる。試験片が複数の場合、これらの含浸率を求め、含浸率の平均値を求めることができる。
【0096】
<含浸性の評価>
試験片でどの層まで、含浸しているか目視で確認する。
×(不可):接着面に樹脂が残らず50%以上含浸している、又は、50%以上含浸していない
△(良~やや不良):接着面に部分的に樹脂があり、50%以上含浸している
〇(優良):接着面に樹脂がありつつ、50%以上含浸している
なお、接手3の接着面は、試験片1の接着面4の一部と少なくとも接着していれば△(良~やや不良)と合格とする。ただし、接合部21の断面において、接合した状態の部分が多いほど好ましく、例えば、〔接合した状態部分の長手方向の長さ(cm)/接合部21断面の長手方向の長さ(60cm)〕×100において接合割合を求めて評価することができ、接合割合50%以上が望ましい。
【0097】
図3~6は、略四角錐台形状になるように折った接合試験片20を用いた簡易止水試験の概略図及び観察写真である。具体的には、図3は、簡易止水試験の側方図であり、図4は、簡易止水試験の上方観察図であり、図5は簡易止水試験の上方向からの斜視図である。図6は、簡易止水試験の上方観察したときの写真である。
試験片設置用の支持容器30として、取手付きの5L容のプラスチック容器(高さ26cm×直径20cm)を用いた。
図3は、試験片設置用の支持容器30に、略四角錐台形状の接合試験片20を約12cmまで差し込み、差し込んだ接合試験片20のなかに水25を流し込んだ状態を側方から見たときの概略図である。
図4及び図6は、試験片1,1の突合せ部分が試験片設置用の支持容器30の中心(注口と取手の線上)を通過するように配置し、ひだを内側に折り込んだ略四角錐台形状の接合試験片20のなかに水25を流し込んだ状態を上方から見たときの概略図及び写真である。
【0098】
<試験例1~5の試験結果>
試験例1~5の各試験結果を表1に示した。
<簡易止水試験>の結果から、試験例2~試験例4の接合試験片20は、漏水がなく、この断面を目視したところ、接着剤の硬化物である樹脂は、不織布の50%以上まで存在し、試験片1,1の接着面4と接手3の接着面とが接着しており、水漏れが生じない接合部21が形成されていた。これらの接着剤には適度なチキソトロピー性と粘度があったため、これら接着剤は不織布に含浸しつつも、硬化後、接手と接着していたことが確認できた。
試験例2~4の接合試験片の接合部付近を折り曲げたときでも水漏れの原因となる隙間が接合試験片には生じておらず、硬化後の樹脂の硬さが適度であると考えた。
一方で、試験例1の接合試験片10は、この接合部付近を折り曲げた際に、硬化後の樹脂が硬く、不織布に追従しきれず、接合試験片に隙間ができることが確認できた。
このことから試験例2~4の接着剤は、硬化後、不織布に対して優れた追従性及び接着性を有していることが確認できた。さらに、試験例2~4の接着剤は、硬化後の水密性に優れていることが確認できた。
【0099】
さらに、<ゲルタイムの測定方法>の結果から、試験例2~4の接着剤のゲルタイムが65~75分であったことから、基材同士の位置決めや基材への塗布、基材同士の接着等を行うときの適度な作業時間(可使時間)を確保することができることが確認できた。
【0100】
これら試験例2~4の接着剤は、硬化前の接着剤の粘度が、23℃で測定したときに、1000mPa・s以下であり、かつ、硬化後の硬化物である樹脂の硬さが、23℃で測定したときに、A50~A80であった。
【0101】
さらに、ヒマシ油以外のポリオールをA液とし、このA液と、B液(PMDI)を含有させた混合液の粘度が、23℃で測定したときに約1500mPa・sになるように接着剤を作製した。この接着剤を塗布し硬化させた平面状の接合試験片10を得、さらに略四角錐台形状の接合試験片20を作製した。この接合試験片20を用いて簡易止水試験を行った結果、接合部21から水漏れが生じ、硬化後の硬化物である樹脂の水密性が悪かったことが確認された。この接合部21の断面観察を行ったところ、不織布の厚みの50%未満までしか接着剤が含浸されていなかったことが確認でき、この理由として、この接着剤の粘度が1500mpa・sを超えて高かったため、接着剤の含浸が十分ではなかったと考えた。
【0102】
また、試験例5の溶剤品の場合、この溶剤品を用いて略四角錐台形状の接合試験片20を得、この接合部21の断面観察を行ったところ、接着剤は不織布の50%以上含浸したが、含浸し過ぎて不織布の表面に接着剤が残っていなかったため、硬化後に接合部の接着面上に硬化物である樹脂がなく間隙が生じ、水密性が悪かったことが確認された。
【0103】
さらに、表1に示した<引張強度試験>の結果、及び<破断状態の評価>の結果からも、試験例1~5の接着剤が硬化したときの樹脂強度について検討した。また、不織布に対する接着剤の硬化物の接着性について、上記<含浸性の評価>及び上記<破断状態の評価>を考慮して、以下のような評価にて、総合的に判断した。
<硬化物の接着性の評価>
接着性が非常に良好(◎):含浸性が優良(○)、かつ、破断状態がSFであるもの
接着性が良好(○):含浸性が優良(○)、かつ、破断状態がCF又はSFであるもの
接着性がやや不良(△):含浸性が良~やや不良(△)、かつ、破断状態が一部CFであるもの
接着性が不良(×):含浸性が不可(×)、又は、破断状態がAFであるもの
【0104】
試験例1の接着剤を不織布に塗布した場合、破断状態の評価はSFになっていたが、簡易止水試験結果よるこの硬化物の追従性に欠けていた。
試験例2の接着剤を不織布に塗布した場合、接着剤が不織布にやや含浸しすぎて破断状態の評価はやや好ましくないが、簡易止水試験結果よるこの硬化物の追従性及び接着性は良好であった。
試験例3の接着剤を不織布に塗布した場合、引張強度(常態)がやや弱いため破断状態の評価はSFとCFとがあり樹脂強度はやや弱いが、簡易止水試験結果よるこの硬化物の追従性及び接着性は良好であった。
試験例4の接着剤を不織布に塗布した場合、破断状態の評価はSFと良好であり、簡易止水試験結果よるこの硬化物の追従性及び接着性も良好であった。なお、<硬化物の接着性の評価>について、試験例2は△、試験例3は○、試験例4は◎であり、試験例4の接着剤を硬化させた硬化物の接着性が最も良好であった。さらに、試験例2~4を硬化させた硬化物は、水との接触によって硬化物が加水分解されにくく樹脂の性質を維持しやすい等の耐水性を有しており、これら試験例2~4のなかで、試験例4の硬化物の耐水性が最も良好であり、この耐水性に関してはポリオールの種類及び組み合わせが関与していると考えた。
また、接着剤を硬化させたときの硬化物である樹脂の引張強度(常態)が、4.0MPa以上であることで、より良好な樹脂強度を有する硬化物を形成できる接着剤を提供できることが確認できた。
【0105】
このようなことから、試験例1~試験例5の接着剤のうち、作業性、樹脂強度、追従性、接着性、水密性、耐水性の観点から、試験例2~4の接着剤が好ましく、さらに好ましくは試験例3及び試験例4の接着剤である。特に好ましいくは接着剤は、試験例4の接着剤であり、この接着剤は、作業性、樹脂強度、追従性、接着性、水密性、耐水性の全てに優れ、これらのバランスも非常によいものであることが確認できた。
この試験例4の接着剤は、A液に性質の異なる2種のヒマシ油系ポリエステルポリオールの混合物を含有させ、B液にPMDIの2官能芳香族イソシアネート化合物を含有させ、A液及びB液を混合させたものであったので、このような接着剤成分及び体積含有割合等が、作業性、樹脂強度、追従性、接着性、水密性、耐水性に優れる接着剤を得ることができることが確認できた。さらに、このような接着剤成分及び体積含有割合等が、特定の性質の接着剤を製造するために適切であることも確認できた。
【0106】
本実施例から、不織布に施与するときの作業性に優れるとともに、硬化後の硬化物が不織布に対して優れた追従性及び接着性を有する接着剤を提供するためには、硬化前の接着剤の粘度が、23℃で測定したときに、1200mPa・s以下であり、かつ、硬化後の硬化物の硬さが、23℃で測定したときに、A50~A80であるという特定の性質を有する接着剤がよいことが確認できた。
本実施例から、不織布に施与するときの作業性に優れるとともに、硬化後の硬化物が不織布に対して優れた追従性及び接着性を有する接着剤を提供するためには、ポリオールとイソシアネート化合物とを含む接着剤が好ましく、当該ポリオールが、ポリエステルポリオールであることがより好ましく、さらに好ましくはヒマシ油系ポリエステルポリオールであるという特定の組成を有する接着剤がよいことが確認できた。
さらに、作業性、追従性及び接着性の観点から、この性質及び組成の両方を有する特定の接着剤がより好ましいことが確認できた。
【0107】
すなわち、本実施例から、上記特定の接着剤にすることで、この特定の接着剤は、接着剤を基材に塗布等で施与するときの硬化前の作業性に優れるとともに、不織布に対して優れた追従性及び接着性を有する硬化物を形成することができることが確認できた。さらに、この特定の接着剤を不織布に塗布し、硬化させた硬化物は、適度な硬さで不織布の内部及び接着面上に良好に存在するとともに、優れた水密性及び耐水性を有することが確認できた。このように、本発明者らは、不織布用に適している接着剤を提供することができた。
【0108】
<接着剤に含まれる水質汚染物質の調査>
試験例2~4の接着剤を水浸漬させ、溶出させたものを、環境省_一律排水基準(www.env.go.jp/water/impure/haisui.html)の試験内容に従って、行った。
【0109】
試験例2~4の接着剤のいずれも、基準値以下の分析結果が得られ、これら接着剤又はその硬化物は、河川等で長期間使用してもその周辺の水質には影響が少なく安全性が高いことが確認できた。
【0110】
河川や湖沼等の堤防や盛土に透湿防水性不織布を敷設した場合には、堤防や盛土等の状態を維持するために、透湿防水性不織布の接合部分の隙間からの水漏れを抑制し、接合部分の強度を維持する必要があったため、専門的な作業員によって熱融着シート及び熱融着機を用いて接合面同士の熱融着による接合が行われていた。
【0111】
これに対し、本発明の特定の接着剤によって、一般的な作業員であっても不織布同士等の接着が簡便に容易にできるとともに、硬化後に水密性及び耐水性も優れた硬化物及び当該硬化物を含む透湿防水性不織布を得ることができる。このように、本発明の接着剤は、上述したような堤防に施設する透湿防水性不織布に接着剤を施与するとき及び基材を接着剤で硬化させるときの接着作業性に優れており、さらに水密性及び耐水性等が優れた硬化物及び当該硬化物を含む透湿防水性不織布を提供することができ、さらに接着剤成分の水質への影響も基準値以下であるため、堤防等の構造物に敷設する透湿防水性不織布を接着するために用いることも可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 不織布、3 接手、4 接着面、10 接合不織布、20 略円錐台形状の接合不織布、21 接合部、25 水、30 支持容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6