(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】位相制御光導波路アンテナアレイ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/295 20060101AFI20220912BHJP
G02B 6/124 20060101ALI20220912BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
G02F1/295
G02B6/124
G01S7/481 A
(21)【出願番号】P 2020209365
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2020-12-17
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】503416331
【氏名又は名称】國立臺灣科技大學
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】李三良
(72)【発明者】
【氏名】楊家亘
(72)【発明者】
【氏名】李宗翰
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101859002(CN,A)
【文献】特開2019-184649(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110275364(CN,A)
【文献】特開2019-144390(JP,A)
【文献】米国特許第10983273(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0259256(US,A1)
【文献】Yu Zhang, et al.,"Sub-wavelength-pitch silicon-photonic optical phased array for large field-of-regard coherent optical beam steering.",Optics Express,米国,OSA,2019年01月22日,Vol.27, No.3,pp.1929-1940
【文献】Qiancheng Zhao, et al.,"Experimental demonstration of directive Si3N4 optical leaky wave antennas with semiconductor perturbations.",Journal of Lightwave Technology,米国,IEEE,2016年09月12日,Vol.34, No.21,pp.4864-4871
【文献】Tsung-Han Lee, et al.,"Silicon photonic optical phase arrays with apodized subwavelength gratings.",26th Microoptics Conference (MOC 2021),米国,IEEE,2021年09月26日
【文献】Jiaxin Chen, et al.,"Subwavelength structure enabled ultra-long waveguide grating antenna.",Optics Express,米国,OSA,2021年05月03日,Vol.29, No.10,pp.15133-15144
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00- 1/125
1/21- 7/00
G02B 6/12- 6/14
G01S 7/48- 7/51
17/00-17/95
IEEE Xplore
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された光信号を複数の光導波路に割り当てる光分岐部材と、
複数の移相部材を有し、各移相部材が前記光分岐部材の出力光導波路に接続される移相部材アレイと、
複数の光導波路アンテナを有し、各光導波路アンテナが、前記移相部材アレイの前記移相部材の1つに接続される光導波路アンテナアレイとを含み、
各光導波路アンテナ間には、光を回折させるとともに前記光導波路アンテナ間の光結合を低減する周期性のブロック状構造が備わっており、前記周期性のブロック状構造は、互いに接続される複数のブロック状構造及び複数の幅狭の導波路を含み、任意の隣接する2つのブロック状構造の間
のいずれに
も前記幅狭の導波路の1つがある位相制御光導波路アンテナアレイ。
【請求項2】
前記光分岐部材は、1対複数の多モード干渉導波路である請求項1に記載の位相制御光導波路アンテナアレイ。
【請求項3】
前記光分岐部材は、カスケード接続されてツリー状のカスケード接続型多段構造をなしている請求項2に記載の位相制御光導波路アンテナアレイ。
【請求項4】
前記光分岐部材は、段ごとに光信号を2つの経路に分岐し、且つ、前記2つの経路の分岐比は略等しい請求項3に記載の位相制御光導波路アンテナアレイ。
【請求項5】
前記周期性のブロック状構造は、連続的な矩形の導波路構造をなしている請求項1に記載の位相制御光導波路アンテナアレイ。
【請求項6】
前記周期性のブロック状構造の幅は、アンテナ方向に沿って漸次的に変化しており、前記周期性のブロック状構造の幅は、前記複数の光導波路アンテナが並ぶ方向に平行な方向のブロック状構造の長さを示し、前記アンテナ方向は、前記各光導波路アンテナが光を伝搬する方向に平行な方向を示す請求項1に記載の位相制御光導波路アンテナアレイ。
【請求項7】
前記各移相部材は、加熱部材に隣接する導波路の一部である請求項1に記載の位相制御光導波路アンテナアレイ。
【請求項8】
前記各移相部材は、電極により制御される位相変調器である請求項1に記載の位相制御光導波路アンテナアレイ。
【請求項9】
前記連続的な矩形の導波路構造の材料は、シリコンである請求項5に記載の位相制御光導波路アンテナアレイ。
【請求項10】
前記各光導波路アンテナを取り囲む2つの矩形のブロック状をなし、前記アンテナ方向に沿って漸次的に幅を変化させた勾配幅の前記周期性のブロック状構造は、前記アンテナ方向に沿って位相差又は位置差を有する請求項6に記載の位相制御光導波路アンテナアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相制御光導波路アンテナアレイについて開示するものであり、特に、特殊な側方散乱構造を利用する位相制御光導波路アンテナアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転車(self-driving car)や無人航空機(unmanned aerial vehicle,UVA)及びマシンビジョンの技術が発展を続ける中で、ライダーシステム(LiDAR)に使用される光学位相制御ビーム走査ユニット(optical phase controlled beam scanning unit)のニーズも年々増加している。このビーム走査ユニットは、位相制御光導波路アンテナアレイ(phase controlled optical waveguide antenna array)で構成可能である。
【0003】
位相制御光導波路アンテナアレイと比較して、従来のライダー(LiDAR)は、機械的な回転ミラーによってビームを走査する。しかし、通常、機械的な光の偏向による走査は速度が遅く、且つ振動や物理的磨損によって操作に支障をきたしやすい。また、機械的なビーム偏向システムは体積が嵩むため、動作運転時に大量のエネルギー消費を要するとともに、偏向能力にも限界がある。このほか、これらの機械的手法では光線のビームを制御するにとどまり、ニーズの違いに応じて遠距離場のビーム形状を変更することはできない。
【0004】
従来のライダーと比較して、位相制御光導波路アンテナアレイは、移相器アレイと、一定サイズの空間に分布するアレイ式の光導波路アンテナから構成される。各光導波路アンテナは信号を制御することで位相を制御可能であり、位相を変化させることで光導波路アンテナアレイからのビームの発射角度及びパターンを制御可能である。よって、光導波路アンテナアレイの設計が、ビームの発射角度とパターンを決定付けるポイントとなる。このほか、移相器アレイの位相を制御して任意の波面(wave front)を形成することで、より高度な通信及びセンシングへの応用が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、光分岐部材、アレイ式移相部材及び光導波路アンテナアレイを含む位相制御光導波路アンテナアレイを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光分岐部材は入力された光信号を複数の光導波路に割り当てる。移相部材は光分岐部材に接続され、光導波路アンテナアレイはアレイ式移相部材に接続される。光導波路アンテナアレイは、特殊な側方構造設計を利用して均一に分布する光を出力するよう設計される。また、移相部材の近傍には加熱部材が設置されており、各光導波路アンテナの出力位相を調整・制御することで、光導波路アンテナアレイからの出力光の角度を変化させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイを示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施例における移相器を除いた光導波路アンテナアレイを示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイの光分岐部材と移相器を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイの光導波路アンテナの第1の部分を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイの光分岐部材と導波路アンテナアレイの拡大図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイの光導波路アンテナの第2の部分を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施例における光導波路アンテナアレイの近接場強度分布のシミュレーション図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施例における光導波路アンテナアレイの遠距離場強度分布のシミュレーション図である。
【
図9】
図9は、本開示の別の実施例における位相制御光導波路アンテナアレイの導波路アンテナの部分の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、関連の図面を参照して本開示の実施例について説明する。なお、理解しやすいよう、下記の実施例では同じ部材に同じ符号を付して説明する。
【0009】
一般的に、位相制御光導波路アンテナアレイは、設計上、光分岐器、移相器(又はフェーズシフタ)及び光導波路アンテナアレイの3つの部分に分解可能である。
【0010】
まず、光分岐器は、設計上、多モード干渉導波路(multimode interference)とカスケード方向性結合器(cascaded directional coupler)の2種類に大別される。このうち、多モード干渉導波路は比較的正確な分岐比を有し、且つ、ツリー状に多段カスケード接続されたあとも各経路の分岐比を維持可能である。しかし、多モード干渉導波路は波長幅が大きい。一方で、カスケード方向性結合器は、分岐比を調節可能であり、且つ光学伝送損失が低いとの利点を有するが、製造工程の精度に敏感なことから、分岐比を正確に制御することが難しい。
【0011】
移相器とは、近傍に加熱部材が設置された導波路の一部であり、加熱部材による加熱でこの部分の導波路の屈折率と位相を変化させる。或いは、当該部分の導波路にP型及びN型材料を混合することで位相変調器を形成し、電極から電流又は逆方向バイアスを加えることでこの部分の導波路の屈折率と位相を変化させる。このように、移相は熱抵抗式移相器と位相変調器という2つの方法で達成可能である。熱抵抗式移相器の場合には、調整可能な位相が大きく、且つ設計が比較的容易との利点を有するものの、調整速度が遅く、熱分布が均一になるとの問題を有する。一方、位相変調器の場合には位相変調速度が極めて高速ではあるが、調整可能な移相が小さく、且つ光損失が大きくなり得るとの欠点を有する。このほか、移相器を光導波路アンテナアレイ全体に配置することで、制御回路の複雑さに影響を及ぼすことになる。
【0012】
光導波路アンテナ部分は多様性を有する。光導波路アンテナは、光回折(optical diffraction)の違いによっておよそ3種類に大別される。1つ目はシャローエッチング側方回折格子シリコン導波路(Shallow etched sidewall-grating waveguide)である。この種の導波路は既存のCMOS半導体製造工程との相性がよく、リソグラフィ(lithography)工程でドライエッチングにより鋸歯状の導波路を製造する。通常、この種の導波路アンテナは回折率が大きく、長導波路アンテナを製造する場合に均一な光出射を達成しにくい。且つ、回折率を制御するために、エッチングを微調整して鋸歯状の凹溝を漸次的に変化させるには限界がある。
【0013】
2つ目は、多結晶シリコン回折格子導波路(waveguide grating with polysilicon overlay and oxide etch stop layer)である。この種の導波路の回折格子は導波路上方の多結晶シリコン層に形成される。回折格子の周期、幅、厚さ及び材料等のパラメータはリソグラフィにより変更可能なため、アンテナからの出射光量や均一度をより柔軟に調整可能である。しかし、材料のレイヤーを別途定義せねばならず、且つ製造工程の複雑さが増すことが欠点である。
【0014】
3つ目は、2次元バルクフォトニック結晶導波路(two-dimensional bulk photonic crystal waveguide)である。この種の導波路は、フォトニック結晶の複数経路の位相干渉を利用して光を出射する。複数の2次元バルクフォトニック結晶導波路によって2次元バルクアレイを形成可能であり、光分岐器の設計を省略可能なことから、アンテナの設計が大幅に簡略化される。しかし、この方法ではフォトニック結晶の原理を利用するため、正確なシミュレーションと精密な製造工程技術が必要となり、実際に製造する際の難度が高い。また、この構造では移相器を利用できないため、レーザ波長を変化させることでしかアンテナからの光出射角度を制御できない。
【0015】
続いて、
図1を参照する。
図1は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイを示す図である。本開示では、標準的なCMOS製造工程の構成を利用して位相制御光導波路アンテナアレイを実現するが、これに限らない。本開示の位相制御光導波路アンテナアレイは、その他の製造工程の方式で実現してもよい。
図1に示すように、本開示の位相制御光導波路アンテナアレイ10の構造は、光分岐器101、移相器102及び光導波路アンテナアレイ103を含む。
【0016】
図1及び
図2を合わせて参照する。
図2は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイの光分岐器を示す図である。
図2に示すように、本実施例において、光分岐器101は多段カスケード接続される小型の1:2多モード干渉導波路であり、各1:2多モード干渉導波路の分岐比は50%:50%である。光分岐器101の多段多モード干渉導波路は、導入された光信号を複数の経路に分岐可能である。更に、
図2に示すように、光分岐器101は多段構造をなすようツリー状にカスケード接続され、ツリー状のカスケード接続構造を有する多モード干渉導波路を形成している。これにより、本開示における複数の経路から出力される光の強度を均一にするとの効果を達成可能である。なお、本実施例の1:2多モード干渉導波路は一例にすぎず、光分岐器101は1:2多モード干渉導波路に限らない。
【0017】
図1及び
図3を合わせて参照する。
図3は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイの光分岐器と移相器を示す図である。
図3に示すように、本開示における光導波路アンテナアレイの移相器102の設計は、光導波路105の上方にヒータ104を設置して光導波路105を部分的に加熱するよう実現される。このような実現方式により、本開示の移相器102は、抵抗式加熱効果を利用して光導波路105を加熱するよう設計される。また、このヒータは、金属製又は半導体製の抵抗で実現すればよい。詳述すると、金属製ヒータ104で加熱して光導波路105の温度が上昇すると、光導波路105の熱光学効果によって光導波路105の有効屈折率が変化する結果、光導波路105内を進む光に位相差が発生する。これにより、隣り合う各経路を進む光に位相差が発生するよう調整し、アレイ式の位相差をアレイ式の光導波路アンテナに提供する。こうして、光導波路アンテナの各段の位相差により干渉を形成することで、ビームの発射角度とパターンを制御する。
図3は、光導波路105が金属製ヒータ104で覆われる場合を例示している。
【0018】
図1及び
図4~5を参照する。
図4は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイの導波路アンテナアレイの第1の部分を示す図である。また、
図5は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイの光分岐器と導波路アンテナアレイの拡大図である。なお、これらの図には移相器を示していない。
図4~5に示すように、本開示では、幅を漸次的に変化させた周期性のブロック状構造106によって均一な散乱及び光出射を達成するとともに、隣り合う光導波路105同士の相互作用を遮断する。
図4に示すように、幅を漸次的に変化させたブロック状構造106の配列周期をP、幅を漸次的に変化させた周期性のブロック状構造106の幅をWg、且つ幅を漸次的に変化させた周期性のブロック状構造106と光導波路105との距離をDとする。また、
図4に示すWは光導波路105の幅である。これらのパラメータは、(1)光導波路105がシングルモードの光導波路となり、(2)光の進行方向に沿ってWgとDを調整することで均一な散乱及び光出射を実現するよう最適化せねばならない。この最適化は、使用する光導波路の構造及び材料と関連する。また、WgとDはアンテナ方向に沿って徐々に変化する。幅が徐々に変化する周期性のブロック状構造106のデューティー比(duty cycle)は、アンテナ方向に沿って徐々に変化することに注意すべきである。
【0019】
図1及び
図4~5を合わせて参照する。本開示の光導波路アンテナアレイ103は、導波路のビームを均一に出射するとの効果を達成可能であるとともに、放射角度がほぼ垂直となる。
図4~5に示すように、連続的な矩形のブロック状をなす漸次的に幅を変化させた勾配幅の周期性のブロック状構造106は、光導波路105間の位相の異なる光同士の相互作用を遮断可能なことから、光導波路105をより緊密に配列可能となる。本開示では、幅を漸次的に変化させた勾配幅の周期性のブロック状構造106の幅Wgを調整するとともに、光導波路105の間隔Dを調整することで周期構造に対するビームの結合を抑制し、且つ、放射ビームのサイドローブ(sidelobe)を減少させて、光出射の均一度を調整するよう導波路アンテナアレイ103を設計する。幅が徐々に変化する周期性のブロック状構造106のデューティー比(duty cycle)は、アンテナ方向に沿って徐々に変化することに注意すべきである。
【0020】
次に、
図6を参照する。
図6は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイの光導波路アンテナの第2の部分を示す図である。
図6に示す構造は
図4と類似しているため、
図4の部材の符号をそのまま使用する。
図6に示すように、当該第2の部分を示す図は、ブロック状の周期構造106が幅狭の導波路107を介して直列に接続されている点で上記の第1の部分を示す図とは異なる。この幅狭の導波路107により周期性のブロック状構造106を直列に接続することで、製造工程の均一性を強化するとの効果を達成可能となり、且つ、構造を最適化するための柔軟性が付与される。このほか、
図4及び
図6の連続的な矩形の導波路構造は、材料がシリコンの場合の実施例である。
【0021】
続いて、
図7を参照する。
図7は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイのアンテナ導波路の近接場強度の分布図である。
図7に示すように、本実施例の光導波路アンテナアレイを適切に最適化し、長さ500μmの光導波路アンテナ構造で出射光の現れ方を光学的にシミュレーションしたところ、光の出射強度は均一傾向を示した。また、本実施例のシミュレーション演算より、本開示の構造内で光を伝送した場合には、通常の導波路の場合よりも良好な光規制性を有すると推測された。且つ、導波路の中心と、幅を漸次的に変化させた周期構造の中心との間隔を1μmとした場合には、このような構造を持たない導波路よりも結合長が368μm長くなると推測された。なお、
図7のRe(E)は出力される光学場(Optical field)の電場の実体部を表している。
【0022】
次に、
図9を参照し、
図9は、本開示の別の実施例における位相制御光導波路アンテナアレイの導波路アンテナの部分の概略図である。
図9に示すように、光導波路105を取り囲む2つの矩形のブロック状をなす勾配幅の周期性のブロック状構造106は、アンテナ方向に沿って位相差又は位置差を有する。より詳細には、光導波路105の両側面を取り囲む2つの矩形のブロック状をなす勾配幅の周期性のブロック状構造106は、互い違いになっている(又は位相差を有している)。これにより、幅方向に徐々に変化する周期性のブロック状構造106の出力速度を低減することができ、光導波路105が均一な光出力効果を発揮する。
【0023】
図8を参照する。
図8は、本開示の一実施例における位相制御光導波路アンテナアレイのアンテナ導波路の遠距離場強度の分布図であって、シミュレーションデータを遠距離場の強度分布に変換したものである。
図8に示すように、光導波路アンテナの間隔が2.09μmの場合には、遠距離場の導波路の垂直方向にサイドローブが発生し、ビームサイズの半値幅が0.12度となる。また、2つのサイドローブのおよそ+/-50度の方向についてはその他の光学的方法で除去可能である。
【0024】
上述したように、集積光学が発展を続ける中で、ライダーシステムのチップは集積化された統合シリコンフォトニクスチップとしてCMOS半導体のOEM工場で製造可能となっている。回折格子型の光導波路アンテナは、光学位相制御アレイの重要部材の1つであり、光導波路アンテナアレイチップを通じて出力光を遠距離場に収束するとともに、発散角を小さくするものである。回折格子については集積光学の分野ですでに幅広く研究されている。しかし、導波路内外の屈折率の差が大きいことから、大部分の光は回折格子の先端寄りに集中して出力される。即ち、光の出力は光の前進方向に沿って急速に逓減する。そのため、出力光は発散角が大きくなり、空間分解能に支障をきたす。そこで、本開示における新型の回折格子構造(即ち、本開示の光導波路アンテナアレイ103)では、比較的長い回折格子に沿って光を均一に散乱させることでビームの発散角を縮小し、空間走査分解能を向上させている。従来技術では、導波路の幅、厚さ又は回折格子といった小さな構造を微調整するわずかな改良にすぎなかったのに対し、本願で提示する技術では、より大きな設計上の柔軟性や、リソグラフィ及びエッチング工程におけるより大きな製造許容度を有している。且つ、より小さなビーム発散角を実現可能である。
【0025】
上述したように、本開示では、レーザ光源を導波路に導入し、光分岐器で光を複数の導波路に分岐させる。そして、熱光学効果又は位相変調により各経路の導波路内の光の位相を調整してから、光を特殊設計の光回折型導波路に伝送することで、ビームを均一且つ垂直に出射する。隣り合う光導波路アンテナの相対的な位相の遅れを利用し、収束されたビームフォーミング(beamforming)を干渉により形成することでビームの発散角を縮小するとともに、位相を調整することでビームの角度を変更する。このほか、本発明では、側方遮断構造型の導波路を備えて光源を均一に発散させる設計とすることを要点の一つとしている。
【0026】
上述したように、本開示では、多モード干渉導波路の分岐設計を利用することで、量産の実行可能性を保証している。また、本発明では、移相器の設計として線状の抵抗を用いて加熱してもよい。
【0027】
また、熱分布をシミュレーションして移相器を適切に分散配置することで、部材間の余熱による位相調整への干渉を回避可能となる。このほか、位相変調のような別の移相器による方法を用いてもよい。
【0028】
上述したように、本開示における光導波路アンテナの設計手段では、構造形式として2つの光導波路の間にブロック状の周期構造型の導波路を挿入している。このような周期性のブロック状構造の導波路は、回折格子を提供することで光の進行方向を垂直な出力に変更するとともに、ビームの角度を制御する機能を有する。且つ、漸次的に幅を変化させることで、光導波路アンテナの導波路間の光学場の結合効率を調整し、回折光の比率を制御する。光導波路アンテナ方向に沿って光を均一に出射可能とするために、ブロック状構造の導波路の幅は漸次的に広げなければならない。また、本開示では、光導波路アンテナ間の光結合を遮断している。本開示における幅を漸次的に変化させた周期構造は、導波路アンテナ間の光結合を遮断する作用を兼ね備えているため、光導波路アンテナの配列をより密とでき、超高密度の光導波路アンテナアレイを実現可能である。
【0029】
上述したように、本開示では、ブロック状の周期構造の幅を漸次的に変化させる設計を採用しているため、近接場の光学場分布がより均一となり、ビームの発散角を小さくできる。本発明で使用するブロック状の導波路構造は製造工程の許容度が大きいため、精密な製造工程を要求する必要がない。そのため、本開示の構造はアンテナから出射される遠距離場ビームの縮小に有利となる。
【0030】
上述したように、本開示は特徴の1つとして、シャローエッチング側方回折格子シリコン導波路アンテナを改良し、幅を漸次的に変化させたブロック状の周期構造によって光の散乱を均一にするとともに、導波路間の光結合を遮断している。これにより、高密度の導波路アレイアンテナを設計し、アンテナのビーム純度を向上させている。即ち、サイドローブをメインローブ(Main lobe)から離間させている。
【0031】
上記から明らかなように、本開示は、従来技術を発展させることで所望の改良効果を確実に達成している。当業者は本発明を容易に想起し得ず、且つ、本発明が備える進歩性、実用性は明らかに特許出願要件を満たしている。よって、法に基づき出願する。本件発明特許出願をご許可いただき、創造をご支持くださるよう切にお願い申し上げる。
【0032】
上記は例示にすぎず、限定を意図しない。また、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく行われるその他の等価の修正又は変形は、いずれも添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0033】
10 位相制御光導波路アンテナアレイ
101 光分岐器
102 移相器
103 光導波路アンテナアレイ
104 金属製ヒータ
105 光導波路
106 幅を漸次的に変化させた周期性のブロック状構造
107 幅狭の導波路