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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】金属溶解剤及び金属を溶解する方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/10 20060101AFI20220912BHJP
【FI】
C23F1/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021190725
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2021-11-26
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504137554
【氏名又は名称】株式会社イオックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中辻 達也
(72)【発明者】
【氏名】中澤 悠人
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0046501(US,A1)
【文献】国際公開第2007/049750(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00-1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶解剤であって、
ヨウ素、イミダゾール化合物、及びアルキルエーテルからなり
前記ヨウ素を1質量%~10質量%含み、
前記イミダゾール化合物を5質量%~25質量%含む、
金属溶解剤。
【請求項2】
前記イミダゾール化合物は、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-プロビルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,2,4-トリメチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-ブチルイミダゾール、2-ウンデシル-4-メチルイミダゾール、1-フエニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-メチルベンゾイミダゾール、2-ウンデシルベンゾイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール、及び2-メルカプトベンゾイミダゾールから成る群から選ばれる少なくとも一種のイミダゾール化合物である、請求項1に記載の金属溶解剤。
【請求項3】
前記アルキルエーテルは、エチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルから成る群から選ばれる少なくとも一種のアルキルエーテルである、請求項1又は2に記載の金属溶解剤。
【請求項4】
前記溶解される金属は、周期表の第9族元素~第11族元素から成る群から選ばれる少なくとも一種の貴金属元素である、請求項1~3の何れか1項に記載の金属溶解剤。
【請求項5】
前記溶解される金属は、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)から成る群から選ばれる少なくとも一種の貴金属元素である、請求項1~4の何れか1項に記載の金属溶解剤。
【請求項6】
金属を溶解する方法であって、
(1)ヨウ素、イミダゾール化合物、及びアルキルエーテルからなる混合液に、金属を浸漬する工程、を含み、
前記混合液は、
前記ヨウ素を1質量%~10質量%含み、
前記イミダゾール化合物を5質量%~25質量%含む、
金属を溶解する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶解剤及び金属を溶解する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、有機溶媒及び水から選ばれた相互の溶解度が低い少なくとも2種類の溶媒から成る混合液に、ハロゲン単体と可溶性ハロゲン化合物を溶解し、該混合液の撹拌下で金属材料を浸漬するという金属の溶解方法を開示している。
【0003】
特許文献2は、銅のエッチング液であって、酸と、第二銅イオンと、アゾール化合物と、脂環式アミン化合物とを含む水溶液というエッチング液を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】公開特許公報(A)特開平7-11353
【文献】公開特許公報(A)特開2013-104104
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たに、金属溶解剤を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、ハロゲン単体、アゾール化合物、及び極性溶媒を含有する混合液に、金属を浸漬する事に依り、良好に、金属を溶解する事が出来るという技術を開発した。
【0007】
即ち、本発明は、次の金属溶解剤及び金属を溶解する方法を包含する。
【0008】
項1.
金属溶解剤であって、
ハロゲン単体、アゾール化合物、及び極性溶媒を含有する、金属溶解剤。
【0009】
項2.
前記ハロゲン単体は、ヨウ素である、前記項1に記載の金属溶解剤。
【0010】
項3.
前記アゾール化合物は、イミダゾール化合物である、前記項1又は2に記載の金属溶解剤。
【0011】
項4.
前記極性溶媒は、水、及びアルコール類から成る群から選ばれる少なくとも一種の極性溶媒である、前記項1~3の何れか1項に記載の金属溶解剤。
【0012】
項5.
前記溶解される金属は、周期表の第9族元素~第11族元素から成る群から選ばれる少なくとも一種の貴金属元素である、前記項1~4の何れか1項に記載の金属溶解剤。
【0013】
項6.
前記溶解される金属は、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)から成る群から選ばれる少なくとも一種の貴金属元素である、前記項1~5の何れか1項に記載の金属溶解剤。
【0014】
項7.
金属を溶解する方法であって、
(1)ハロゲン単体、アゾール化合物、及び極性溶媒を含有する混合液に、金属を浸漬する工程、
を含む、金属を溶解する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、新たに、金属溶解剤を提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の金属溶解剤の使用態様(実施例1)を説明する図である。
図2】本発明の金属溶解剤の使用態様(実施例2)を説明する図である。
図3】本発明の金属溶解剤の使用態様(実施例3)を説明する図である。
図4】本発明の金属溶解剤の使用態様(実施例4)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明を表す実施の形態は、発明の趣旨がより良く理解できる説明であり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
【0019】
本明細書において、「含む」及び「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0020】
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0021】
[1]金属溶解剤
従来技術の、例えば、王水を用いる貴金属の溶解方法は、用いる溶液が強酸性で危険性が高い上、夾雑する卑金属まで溶解してしまい、回収工程で貴金属と卑金属(鉄、ニッケル、アルミニウム、鉛、亜鉛、すず等)の分離操作が煩雑である。
【0022】
本発明の金属溶解剤は、ハロゲン単体、アゾール化合物、及び極性溶媒を含有する。
【0023】
本発明の貴金属等に用いる金属溶解剤を用いる事に依り、従来技術の王水等の強酸性物質、シアン化合物等の猛毒性物質を使用する事が無い。
【0024】
本発明の金属溶解剤を用いる事に依り、良好に、金属(特に貴金属)を、液体中に溶解する事が出来る。本発明の金属溶解剤を用いる事に依り、特に、有価貴金属等を含有する材料から、これを抽出、回収する目的で、高価で有用な貴金属、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)等の白金族等の回収技術として、資源の有効利用を図る為に産業上、有用である。
【0025】
本発明の金属溶解剤は、特に、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)の溶解性に優れる。
【0026】
パッケージ基板の微細配線形成には、絶縁基板上へのCuめっき処理として、セミアディティブ法が行われる。このセミアディティブ法では、配線間にパラジウム残渣が残り、絶縁信頼性が低下するという問題が有る。従来、この問題を解決る為に、パラジウム残渣を除去する方法として、酸に依る溶解方法が用いられている。しかし、この酸に依る溶解方法では、酸は、銅も溶解してしまう為、銅配線を残しつつ、パラジウムを除去する能力が十分でないという問題が有る。
【0027】
本発明の金属溶解剤は、特に、Pd及びPtの溶解性に優れる事から、銅配線を残しつつ、良好にパラジウム残渣を除去する事が出来るという選択エッチング性(選択除去性)に優れている。
【0028】
[1-1]ハロゲン単体
本発明の金属溶解剤は、ハロゲン単体を含有する。本発明の金属溶解剤は、ハロゲン単体を含有する事に依り、良好に、金属(特に貴金属)を、液体中に溶解する事が出来、回収する事が出来る。
【0029】
前記ハロゲン単体は、好ましくは、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等である。
【0030】
前記ハロゲン単体は、より好ましくは、ヨウ素(I)である。
【0031】
前記ハロゲン単体は、これらのハロゲン単体を1種単独で用いても良く、或は2種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0032】
本発明の金属溶解剤では、前記ハロゲン単体は、好ましくは、溶解すべき金属(貴金属等)に対して、100質量%以上で使用する。本発明の金属溶解剤では、前記ハロゲン単体は、好ましくは、0.1質量%~20質量%で使用し、より好ましくは1質量%~10質量%で使用する。本発明の金属溶解剤では、前記ハロゲン単体を前記濃度範囲に調整する事に依り、良好に、金属(特に貴金属)を、液体中に溶解する事が出来、回収する事が出来る。
【0033】
[1-2]アゾール化合物
本発明の金属溶解剤は、アゾール化合物を含有する。本発明の金属溶解剤は、アゾール化合物を含有する事に依り、良好に、金属(特に貴金属)を、液体中に溶解する事が出来、回収する事が出来る。
【0034】
前記アゾール化合物は、好ましくは、環内に有る異原子として窒素原子のみを有するアゾール化合物である。前記環内に有る異原子として窒素原子のみを有するアゾール化合物は、好ましくは、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物等である。
【0035】
前記イミダゾール化合物は、好ましくは、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-プロビルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,2,4-トリメチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-ブチルイミダゾール、2-ウンデシル-4-メチルイミダゾール、1-フエニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物である。
【0036】
前記イミダゾール化合物は、好ましくは、ベンゾイミダゾール、2-メチルベンゾイミダゾール、2-ウンデシルベンゾイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール化合物である。
【0037】
前記トリアゾール化合物は、好ましくは、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、5-アミノ-1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1-メチルベンゾトリアゾール、1-アミノベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール等である。
【0038】
前記テトラゾール化合物は、好ましくは、1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-シクロヘキシル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、5,5'-ビス-1H-テトラゾール・ジアンモニウム塩等である。
【0039】
前記アゾール化合物は、好ましくは、イミダゾール化合物である。
【0040】
前記アゾール化合物は、これらのアゾール化合物を1種単独で用いても良く、或は2種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0041】
本発明の金属溶解剤では、前記アゾール化合物の濃度は、好ましくは、0.1質量%~50質量%であり、よりが好ましくは、1質量%~35質量%であり、更に好ましくは、5質量%~25質量%である。本発明の金属溶解剤では、前記アゾール化合物を前記濃度範囲に調整する事に依り、良好に、金属(特に貴金属)を、液体中に溶解する事が出来、回収する事が出来る。
【0042】
[1-3]極性溶媒
本発明の金属溶解剤は、極性溶媒を含有する。本発明の金属溶解剤は、極性溶媒を含有する事に依り、良好に、金属(特に貴金属)を、液体中に溶解する事が出来、回収する事が出来る。
【0043】
前記極性溶媒は、好ましくは、水、及びアルコール類から成る群から選ばれる少なくとも一種の極性溶媒である。
【0044】
前記極性溶媒は、好ましくは、水である。
【0045】
前記極性溶媒は、好ましくは、アルコール類である。
【0046】
前記アルコール類は、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の低級アルコールである。
【0047】
前記アルコール類は、好ましくは、エチレングリコールモノエチルエーテル(別名:エチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(別名:エチルカルビトール)等のアルキルエーテルである。
【0048】
前記極性溶媒は、これらの極性溶媒を1種単独で用いても良く、或は2種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0049】
[1-4]溶解される金属
本発明の金属溶解剤では、前記溶解される金属の種類は、好ましくは、典型金属、遷移金属等を対象とする。
【0050】
前記溶解される金属は、好ましくは、周期表の第9族元素~第11族元素から成る群から選ばれる少なくとも一種の貴金属元素であり、より好ましくは、高価な貴金属、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金族(白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等)等である。前記溶解される金属は、更に好ましくは、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)から成る群から選ばれる少なくとも一種の貴金属元素である。
【0051】
本発明の金属溶解剤を用いる事に依り、前記金属(特に、貴金属)を、効率的に溶解する事が出来、更に、効率的に回収する事が出来る。本発明の金属溶解剤を用いる事に依り、特に、金(Au)、銀(Ag)、白金族(白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)等)等の貴金属を、容易な操作で、極めて高い効率で回収する事が出来る。
【0052】
本発明の金属溶解剤は、また、特に、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)の溶解性に優れる事から、銅配線を残しつつ、良好にパラジウム残渣を除去する事が出来るという選択エッチング性(選択除去性)に優れている。
【0053】
[2]金属を溶解する方法
本発明の金属を溶解する方法は、(1)ハロゲン単体、アゾール化合物、及び極性溶媒を含有する混合液(金属溶解剤)に、金属を浸漬する工程、を含む。
【0054】
前記ハロゲン単体、前記アゾール化合物、及び前記極性溶媒を含有する混合液は、本発明の金属溶解剤である。
【0055】
前記混合液(金属溶解剤)が含む(1)ハロゲン単体、アゾール化合物、及び極性溶媒は、前記[1]金属溶解剤で説明する通りである。
【0056】
前記金属溶解剤に、金属を浸漬する方法は、好ましくは、
金属溶解剤と金属(パラジウム粒子(Pd粒子)等)とを混合する事、
金属(Pd粒子等のコロイド溶液)に、金属溶解剤を滴下する事、
金属溶解剤に、金属(Pd粒子等)を、浸漬する事等である。
【0057】
本発明の金属を溶解する方法を採る事に依り、金属、特に貴金属を溶解する事が出来、更に必要に応じて、その回収を、良好に行なう事が出来、効率良く、貴金属を回収する事が出来る。
【0058】
前記金属溶解剤に対する金属の比率は、好ましくは、0.01質量%~10質量%であり、より好ましくは、0.1質量%~1質量%である。
【0059】
本発明の金属を溶解する方法では、前記混合液(金属溶解剤)を用いて、必要に応じて、加熱処理を行っても良い。
【実施例
【0060】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。
【0061】
本発明は、以下の具体的な実施例に限定されない。
【0062】
[1]実施例1
金属溶解剤の作製
ハロゲン単体:ヨウ素(I)(1g)
アゾール化合物:イミダゾール(3g)
極性溶媒:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
(エチルカルビトール)(15g)
定性分析
金属溶解剤10gに、Pd粉末0.1g、或はPt粉末0.1gを加え、混合液を調製し、常温で24時間攪拌した。前記混合液をろ過し、ろ過した上澄み液に対して、ICP発光分光分析法に依る定性分析を行った。
【0063】
夫々の混合液の上澄みから、Pd、或はPtが検出された。この事から、金属溶解剤は、Pd粉末、及びPt粉末を溶解する事が確認出来た。
【0064】
[2]実施例2
定量分析
金属溶解剤4gに、Pdコロイド(2重量%の水分散液)1g(Pd含有量:0.4重量%)を加え、混合液を調製し、1時間常温で攪拌した。
【0065】
Pdコロイドを含む混合液の色が、黒色から黄色に変化した。また、この黄色の溶液にレーザー光を当てると、コロイド溶液に特異的に見られるチンダル現象は確認されなかった。この事は、Pdコロイドが、金属溶解剤に依り、イオン化し、パラジウムが溶解したと事を示している。
【0066】
前記混合液に対して、ICP発光分光分析法に依る定量分析を行った。
【0067】
Pdコロイドを含む混合液中のPdイオン濃度は、0.4重量%であった。この事から、Pdコロイドは、金属溶解剤に対して完全に溶解する事が確認出来た。
【0068】
[3]実施例3(図1
図1の(1-A)
金属溶解剤とパラジウム粒子(Pd粒子)を含む溶液(以下「Pdコロイド溶液」とも記す、メタロイドグレードML-240SLV、株式会社イオックス)とを1:1で混合すると、Pdコロイド溶液の色が黒色から黄色に変化した。また、この黄色の溶液にレーザー光を当ててもコロイド溶液に特異的に見られるチンダル現象は確認されなかった。Pdコロイドがイオン化し、パラジウムが溶解したことを示している。
【0069】
図1の(1-B)
易接着PETフィルム上に形成したPdコロイド溶液(メタロイドML-240SLV)から成る黒色の塗膜上に、金属溶解剤を滴下すると、Pdコロイド塗膜が溶解し、透明になった。
Pdコロイド溶液を用いた成膜条件:バーコートwet4μm、120℃×10分
易接着PETフィルム:ルミラーU48、東レ株式会社製
【0070】
[4]実施例4(図2
【0071】
【表1】
【0072】
図2の(2-A)
金属溶解剤(No.3)とPdコロイド溶液(メタロイドML-240SLV)とを1:1で混合し、常温で1分攪拌すると、Pdコロイドがイオン化し、パラジウム(Pd)が溶解した。
【0073】
図2の(2-B)
Pdコロイド溶液(メタロイドML-240SLV)から成る塗膜上に、金属溶解剤(No.3)を滴下し、1分間放置すると、Pdコロイド塗膜が溶解した。
【0074】
Pdコロイド溶液を用いた成膜条件:バーコートwet4μm、120℃×10分
一方、比較例のPdコロイド溶液(No.1及びNo.2)を用いて成膜した塗膜は、共に溶解しなかった。
【0075】
[5]実施例5(図3
易接着PETフィルム全面に、Pdコロイド溶液を塗布するか、或はキャタリストに依るめっき前処理を行った。
【0076】
易接着PETフィルム:ルミラーU48、東レ株式会社製、
Pdコロイド溶液:メタロイドML-240SLV、株式会社イオックス
成膜条件:バーコートwet4μm、120℃×10分
キャタリスト:キャタリストC-7、奥野製薬工業株式会社
めっき前処理条件:32℃×3分
アクセラレータ(還元剤):アクセラレータX、奥野製薬工業株式会社
めっき前処理条件:35℃×3分
金属溶解剤に、前記調製したPETフィルム(Pdコロイド溶液の塗布処理、或はキャタリストに依るめっき前処理)の下半分を、浸漬した。
【0077】
前記調製したPETフィルムに対して、無電解Niめっき液処理すると、実施例4の金属溶解剤に浸漬した部分はめっきが析出しなかった。
【0078】
この結果から、金属溶解剤に浸漬した部分では、Pd粒子(Pdコロイド)は、イオン化され、Pdイオンに成った事で、めっきが形成されなかったと判る。
【0079】
[6]実施例6(図4
実施例4の金属溶解剤を用いて、Cu配線(Cuめっき部分)を溶解せずに、Pdコロイド溶液(メタロイド)から成る塗膜(Cuめっき以外の部分)の除去を行った。
【0080】
Pdコロイド溶液(メタロイド)から成る塗膜(Pdコロイド溶液に依るめっき前処理、メタロイド塗膜)上の一部に、マスキングと無電解Cuめっき処理によりCuパターンを施した(Cu-0.5μm)。
【0081】
Cuパターン及びPdコロイド溶液(メタロイド)から成る塗膜に対して、実施例4の金属溶解剤の溶液を塗布した。
【0082】
この結果から、実施例4の金属溶解剤を塗布すると、Pd粒子(Pdコロイド、メタロイド塗膜)は、イオン化され、Pdイオンに成った事で、溶解されたが、Cu配線(Cuめっき)は残ったと判る。
【0083】
本発明の金属溶解剤(例えば、実施例4の金属溶解剤(No.3)を用いると、Pdのエッチングレートに比べて、Cuのエッチングレートは遅く、Pdの選択エッチングに有用であると評価出来る。
【0084】
[7]産業上の利用可能性
本発明の金属溶解剤を用いると、金属溶解剤は、ハロゲン単体、アゾール化合物、及び極性溶媒を含有する混合液であり、此れに金属を浸漬する事に依り、良好に、金属を溶解する事が出来、金属を回収する事が出来る。
【0085】
本発明の金属溶解剤を用いると、目的貴金属を溶解する事及び回収する事に際し、排水を大幅に削減する事、大型排水処理設備を廃止する事、排水処理設備を小型化する事に繋がる。本発明の金属溶解剤を用いると、使用薬剤量を大幅に低減する事、貴金属の溶解及び回収の低コスト化を行う事、そして、工業的規模での貴金属の溶解し、回収する事に繋がる。
【0086】
本発明の金属溶解剤を用いると、Cu配線間のパラジウム残渣を選択的に除去することが可能になる。
【要約】
【課題】本発明は、新たに、金属溶解剤及び金属を溶解する方法を提供する事を目的とする。
【解決手段】金属溶解剤及び金属を溶解する方法。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4