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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】構造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/70 20060101AFI20220912BHJP
   F24F 13/08 20060101ALI20220912BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
E04B1/70 D
F24F13/08 A
F24F13/02 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021193103
(22)【出願日】2021-11-29
【審査請求日】2021-12-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514115157
【氏名又は名称】岡本 恒之
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】岡本 恒之
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-045410(JP,A)
【文献】特開2020-070991(JP,A)
【文献】特開平10-077696(JP,A)
【文献】特開2006-002395(JP,A)
【文献】特公昭59-052260(JP,B2)
【文献】特開平08-233317(JP,A)
【文献】特開2020-026936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
F24F 7/00-7/10
F24F 13/00-13/068
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外部と前記建築物の内部における人の居住空間とを隔てる本体部と、
前記本体部に設けられ、かつ、前記建築物の外部の空気を前記居住空間へ送る通気装置と、
を有し、
前記本体部の厚さ方向における前記通気装置の配置範囲は、前記本体部の配置範囲内にあり、
前記通気装置は、
前記建築物の外部と前記建築物の内部とを隔てる板を備えた第1管部と、
前記第1管部に接続された第2管部と、
を有し、
前記第1管部の板により囲まれた空間に、前記建築物の外部へつながる第1通気路が形成され、
前記第2管部内に、前記第1通気路及び前記建築物の内部へつながる第2通気路が形成され、
前記第2通気路の中心を示す仮想線に対して垂直な平面内における前記第2通気路の断面積は、前記仮想線に沿った方向の何れの位置でも同じであり、
前記仮想線に対して垂直な平面内における前記第1通気路の断面積は、前記仮想線に沿って前記第2通気路に近づくことに伴い狭くなっている、構造物。
【請求項2】
請求項1記載の構造物において、
記仮想線に対して垂直な平面内で環状のフレームを有し、
前記第1通気路及び前記第2通気路は、前記フレームの内側に設けられている、構造物。
【請求項3】
請求項1記載の構造物において、
記第2通気路を塞ぐ密封装置が設けられており、
前記密封装置は、前記第2管部に取り付け及び取り外しが可能である、構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1空間から第2空間へ空気を送るための通気装置を備えた構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外部(第1空間)から内部(第2空間)へ空気を送る通気装置を備えた構造物の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されている構造物は、各階毎に複数の住戸が左右方向に配列されてなる多層階集合住宅における通風構造である。特許文献1に記載された通風構造は、所定階において互いに隣接する住戸を仕切る戸境壁の少なくとも1つが、所定間隔をおいて配置された2重壁を有する。また、各住戸の外にバルコニーが設けられており、2重壁はバルコニーの手摺壁と一体的に形成されている。さらに、2重壁は、住戸側から室外側に向けて延ばされ、かつ、途中位置までは平行のまま延長形成されており、途中位置から左右方向にラッパ状に広がるように延長形成されている。特許文献1には、戸境壁を構成する2重壁の間の空間を空気流通効率のよい通風路として機能させることができ、これにより多層階集合住宅における各住戸の居住空間の通風性を十分に高めることができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-115407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、特許文献1に記載されている構造物は、隣接する住戸を仕切るようにバルコニーに専用で設けられるため、建築物の構造が大型化する、という課題を認識した。
【0005】
本開示の目的は、第1空間から第2空間への通気性を向上でき、かつ、建築物の構造が大型化することを抑制可能な構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の構造物は、第1空間と第2空間とを隔てる本体部と、前記本体部に設けられた通気装置と、前記通気装置に設けられ、かつ、前記第1空間の空気を前記第2空間へ送る通気路と、を有し、前記本体部の厚さ方向における前記通気装置の配置範囲は、前記本体部の配置範囲内にあり、前記通気路の中心を示す仮想線に対して垂直な平面内における前記通気路の断面積は、前記仮想線に沿って前記第2空間に近づくことに伴い狭くなっている、構造物である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の構造物によれば、第1空間から第2空間への通気性を向上でき、かつ、建築物の構造が大型化することを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)は、建築物の一例を示す外観図、(B)建築物に設けた壁の断面図である。
図2】壁を建築物の外部から見た正面図である。
図3】壁を建築物の内部から見た背面図である。
図4図2のII-II線における側面断面図である。
図5図3のV-V線における平面断面図である。
図6】(A)は、通気路の他の形状例を示す正面図、(B)は、通気路の他の形状例を示す背面図である。
図7】通気路を塞ぐ密封装置を設けた例を示す側面断面図である。
図8】壁の外部側及び内部側にシャッタを設ける例を示す側面断面図である。
図9】(A),(B)は、壁の模式的な側面断面図、(C),(D)は、壁の模式的な側平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(概要)
本開示の構造物は、第1空間から第2空間への通気性、換気性を向上させるためのものであり、通気装置は構造物自体に設けられる。以下、図面に基づいて、本開示の実施形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の内容に限定されない。
【0010】
(実施例)
図1(A)に示される建築物10は、一例として戸建て住居(家屋)であり、建築物10は、図1(B)、図2図3図4及び図5に示されるような壁11を有する。壁11は、建築物10の外部A1と居住空間B1とを隔てる構造物である。壁11は、鉛直方向、つまり、重力の作用方向に沿って延ばされている。図4のように、壁11は、側面断面視で一例として直線状に延ばされ、かつ、図5のように、壁11は、平面断面視で一例として直線状に延ばされている。壁11は、本体部35及び通気装置30を有する。本体部35は、壁11の強度を確保する構造体であり、本体部35は、縦フレーム12及び横フレーム13を有する。
【0011】
縦フレーム12は、鉛直方向C1に沿って延ばされ、かつ、外部A1から居住空間B1に向かう第1方向D1の幅を有するプレート形状の構造要素である。壁11を側面断面視した図4において、本体部35の厚さ方向、つまり、第1方向D1の中心を示し、かつ、鉛直方向C1に延ばされた仮想線E3は直線である。壁11の平面断面視した図5において、本体部35の第1方向D1の中心を示し、かつ、水平方向に延ばされた仮想線E4は直線である。
【0012】
図4のように、第1方向D1は、水平方向であり、かつ、鉛直方向C1と交差する方向である。建築物10の外部A1から、図2のように壁11を正面視すると、縦フレーム12は、鉛直方向C1に沿って直線状に配置されている。縦フレーム12は、図4に示す第1側縁15及び第2側縁16を有する。第1側縁15は、縦フレーム12のうち、最も外部A1に近い箇所に位置する。第2側縁16は、縦フレーム12のうち、最も居住空間B1に近い箇所に位置する。第1側縁15と第2側縁16とは平行である。また、縦フレーム12が複数設けられ、複数の縦フレーム12は、互いに平行に配置されている。さらに、図2及び図3のように、複数の縦フレーム12同士は、第2方向D2の間隔が同じである。第2方向D2は、水平方向であり、かつ、第1方向D1と交差する方向である。
【0013】
横フレーム13は、第1方向D1に沿って延ばされ、かつ、第2方向D2の幅を有するプレート形状の構造要素である。図2のように、壁11を正面視すると、横フレーム13は、第2方向D2に沿って直線状に配置されている。横フレーム13は、図5のように、第1側縁17及び第2側縁18を有する。第1側縁17は、横フレーム13のうち、最も外部A1に近い箇所に位置する。第2側縁18は、横フレーム13のうち、最も居住空間B1に近い箇所に位置する。第1側縁17と第2側縁18とは平行である。横フレーム13は、図2及び図3のように複数設けられ、複数の横フレーム13は、互いに平行に配置されている。また、複数の横フレーム13同士の鉛直方向C1の間隔は、同じである。
【0014】
そして、縦フレーム12と横フレーム13とが交差する箇所では、縦フレーム12と横フレーム13とが接続されている。このため、外部A1から壁11を図2のように正面視した場合、及び、居住空間B1から壁11を図3のように背面視した場合の何れにおいても、複数の縦フレーム12及び複数の横フレーム13が、格子状に配置されている。
【0015】
通気装置30は、外部A1の空気を居住空間B1へ送る機構であり、通気装置30は、第1管部14及び第2管部23を有する。第1管部14は複数設けられ、各第1管部14は、2つの縦フレーム12の間であり、かつ、2つの横フレーム13の間に、それぞれ配置されている。複数の第1管部14は、それぞれ縦フレーム12及び横フレーム13に接続されている。第1管部14は、上板19、下板20、側板21,22、及び第2管部23を有する。
【0016】
図4のように、鉛直方向C1において、上板19は下板20より上に配置されている。上板19のうち、外部A1に最も近い箇所は、横フレーム13の第1側縁17に接続されている。上板19のうち、居住空間B1に最も近い箇所は、第2管部23に接続されている。下板20のうち、外部A1に最も近い箇所は、横フレーム13の第1側縁17に接続されている。下板20のうち、居住空間B1に最も近い箇所は、第2管部23に接続されている。
【0017】
図4及び図5のように、側板21は、縦フレーム12の第1側縁15、第2管部23、上板19及び下板20にそれぞれ接続されている。側板22は、縦フレーム12の第1側縁15、第2管部23、上板19及び下板20にそれぞれ接続されている。図3のように、壁11を背面視すると、第2管部23の形状は、四角形、具体的には、長方形、または正方形である。上板19、下板20、側板21,22により囲まれた空間に、第1通気路24が形成されている。図2のように壁11を正面視すると、第1通気路24の開口形状は、四角形、例えば、正方形または長方形である。また、第2管部23は第2通気路25を有する。
【0018】
図3のように壁11を背面視すると、第2通気路25の開口形状は、四角形、例えば、正方形または長方形である。第1通気路24は、外部A1及び第2通気路25につながり、第2通気路25は居住空間B1につながっている。つまり、第1通気路24及び第2通気路25は、見掛け上、壁11を貫通している。このため、外部A1の空気は、第1通気路24及び第2通気路25を通って居住空間B1へ流れ込むことができる。図4のように、第2管部23の中心、つまり、第2通気路25の中心を示す仮想線E1は直線である。仮想線E1は水平であり、かつ、第1方向D1に沿った方向に配置される。
【0019】
図4のように、仮想線E1に沿った方向において、第1通気路24の配置範囲L1は、第2通気路25の配置範囲L2を超えている。また、配置範囲L1と配置範囲L2とは重なっていない。さらに、配置範囲L1及び配置範囲L2の全部は、本体部35の配置範囲L3内に位置する。図2のように、隣り合う2つの縦フレーム12と、隣り合う2つの横フレーム13とが接続されて環状のフレームが構成され、環状のフレームの内側、つまり、フレームにより囲まれた領域もしくは空間に、第1通気路24及び第2通気路25がそれぞれ設けられている。
【0020】
また、上板19のうち、第1通気路24を形成する平坦面26は、仮想線E1に対して傾斜した勾配を有する。下板20のうち、第1通気路24を形成する平坦面27は、仮想線E1に対して傾斜した勾配を有する。鉛直方向C1において、隣接する横フレーム13同士の間に形成される第2通気路25の仮想線E1は、隣接する横フレーム13同士の中心を示す仮想線E2より上に位置する。仮想線E2は、第1通気路24の入り口の中心線と定義することもできる。平坦面26が仮想線E1に対して傾斜した鋭角側の勾配角度は、平坦面27が仮想線E1に対して傾斜した鋭角側の勾配角度より小さい。
【0021】
図5のように、側板21のうち、第1通気路24を形成する平坦面28は、仮想線E1に対して傾斜した勾配を有する。側板22のうち、第1通気路24を形成する平坦面29は、仮想線E1に対して傾斜した勾配を有する。平坦面28が仮想線E1に対して傾斜した鋭角側の勾配角度と、平坦面29が仮想線E1に対して傾斜した鋭角側の勾配角度とが、同一である。
【0022】
さらに、図4のように、仮想線E1に対して垂直な平面内における第2通気路25の断面積は、仮想線E1に沿った方向で同じである。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24の断面積は、第2通気路25に近づくことに伴い、狭くなっている。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24の断面積の最小値は、仮想線E1に対して垂直な平面内における第2通気路25の断面積と同じである。上記した第1管部14及び第2管部23により、通気装置30が構成されている。第1管部14及び第2管部23は、漏斗形状となるように接続されている。
【0023】
縦フレーム12、横フレーム13、第1管部14及び第2管部23の材質は限定されず、例えば、金属製、ガラス製、合成樹脂製、コンクリート製等のうちの何れでもよい。また、縦フレーム12、横フレーム13、第1管部14及び第2管部23の材質が、全て異なっていてもよいし、複数の要素の材質が同じであってもよい。なお、図4及び図5において、縦フレーム12、横フレーム13、第1管部14及び第2管部23の断面に付与したハッチングを、便宜上、共通にしてある。共通のハッチングは、縦フレーム12、横フレーム13、第1管部14及び第2管部23の材質が、同じであることを意味する訳ではない。また、通気装置30は、第1管部14及び第2管部23を予め一体化したユニットであってもよい。その通気装置30が、2つの縦フレーム12と2つの横フレーム13とにより囲まれた空間に配置され、第1管部14が縦フレーム12及び横フレーム13に接続される。
【0024】
次に、本開示の通気装置30の作用を説明する。外部A1の空気は、第1通気路24及び第2通気路25を通って居住空間B1へ流れ込む。仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24の断面積は、第2通気路25に近づくことに伴い狭くなっている。ここで、第1通気路24における空気の流速は、
空気の流量[m3]/第1通気路24の断面積[m2
で求められる。このため、空気の流量が一定であれば、第1通気路24を流れる空気の流速は、第2通気路25に近づくほど速くなる。したがって、建築物10の居住空間B1における換気を促進できる。したがって、居住空間B1を取り囲む構造物の結露等を抑制でき、建築物10の老朽化を抑制できる。また、通気装置30は、本体部35の一部を構成している。さらに、本体部35の厚さ方向、つまり、第1方向D1に沿った方向における配置範囲L1,L2は、本体部35の配置範囲L3内にある。したがって、壁11の構造が、第1方向D1で大型化することを抑制できる。また、居住空間B1及び外部A1において、通気装置30が、人等の移動を妨げることもない。
【0025】
また、居住空間B1の空調をおこなう空調装置の使用頻度、使用時間等を低減できる。さらに、居住空間B1に新鮮な空気が取り込まれることで、内部A2における空気中の二酸化炭素の濃度を低減できる。さらに、通気装置30は、電力を消費しない。さらに、図4のように、鉛直方向C1において、第2通気路25の仮想線E1は、第1通気路24の入り口の仮想線E2より上に位置する。したがって、外部A1で雨が降った場合に、雨が第2通気路25へ侵入することを防止できる。なお、図4において、仮想線E1と仮想線E2とが同じ高さに位置していてもよいし、仮想線E1が仮想線E2より下に位置していてもよい。また、図5において、仮想線E1,E2は、横フレーム13と横フレーム13との中央に配置されていてもよいし、仮想線E1,E2が、何れか一方の横フレーム13に近い位置に配置されていてもよい。
【0026】
(他の例)
図6(A)は、壁11の一部を示す正面図であり、図6(A)には、第1通気路24A及び第2通気路25Aの他の形状例が包括して示されている。図6(A)には、仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24A及び第2通気路25Aの形状が示されている。図6(B)は、壁11の一部を示す正面図であり、図6(B)には第1管部14及び第2管部23の他の形状例が包括して示されている。第1管部14の第1通気路24A及び第2管部23の第2通気路25Aの形状は円形である。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第2通気路25Aの断面積は、仮想線E1に沿った方向で同じである。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24Aの断面積は、第2通気路25Aに近づくことに伴い、狭くなっている。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24Aの断面積の最小値は、仮想線E1に対して垂直な平面内における第2通気路25Aの断面積と同じである。
【0027】
第1管部14の第1通気路24B及び第2管部23の第2通気路25Bの正面形状は、六角形である。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第2通気路25Bの断面積は、仮想線E1に沿った方向で同じである。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24Bの断面積は、第2通気路25Bに近づくことに伴い、狭くなっている。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24Bの断面積の最小値は、仮想線E1に対して垂直な平面内における第2通気路25Bの断面積と同じである。
【0028】
第1管部14の第1通気路24C及び第2管部23の第2通気路25Cの正面形状は、楕円形である。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第2通気路25Cの断面積は、仮想線E1に沿った方向で同じである。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24Cの断面積は、第2通気路25Cに近づくことに伴い、狭くなっている。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24Cの断面積の最小値は、仮想線E1に対して垂直な平面内における第2通気路25Cの断面積と同じである。
【0029】
第1管部14の第1通気路24D及び第2管部23の第2通気路25Dの正面形状は、三角形である。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第2通気路25Dの断面積は、仮想線E1に沿った方向で同じである。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24Dの断面積は、第2通気路25Dに近づくことに伴い、狭くなっている。さらに、仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24Dの断面積の最小値は、仮想線E1に対して垂直な平面内における第2通気路25Dの断面積と同じである。
【0030】
図6(A),(B)に示す4種類の通気装置30においても、図2乃至図5に示す通気装置30と同様の効果を得ることができる。また、図2及び図3に示される第1通気路24及び第2通気路25、図6(A),(B)に示される第1通気路24A及び第2通気路25A、第1通気路24B及び第2通気路25B、第1通気路24C及び第2通気路25C、第1通気路24D及び第2通気路25Dのうち、壁11を正面視した形状が異なる通気路を複数組み合わせて設けることもできる。
【0031】
図7は、第2通気路25を塞ぐ密封装置36,37の一例を示す断面図である。密封装置36は、第2管部23の外周に取り付けられるものである。密封装置36は、図2乃至図6の何れの第2管部23にも適用可能である。利用者は、密封装置36を掴んで第2管部23に取り付け及び取り外しが可能である。密封装置36と第2管部23とは、ねじ結合により固定されてもよいし、嵌合して固定されてもよい。密封装置36が第2管部23から取り外されていると、図2乃至図6の通気装置30と同様の効果を得ることができる。密封装置36が第2管部23に取り付けられていると、空気が外部A1から居住空間B1へ送り込まれない他、雨、虫等の異物が、外部A1から居住空間B1へ侵入することを確実に防止できる。
【0032】
また、密封装置37は、第2管部23の第2通気路25に嵌め込まれるものである。密封装置37は、図2乃至図6の何れの第2管部23にも適用可能である。利用者は、密封装置37を掴んで第2管部23に取り付け及び取り外しが可能である。密封装置37が第2管部23から取り外されていると、図2乃至図6の通気装置30と同様の効果を得ることができる。密封装置37が第2管部23に取り付けられていると、空気が外部A1から居住空間B1へ送り込まれない他、雨、虫等の異物が、外部A1から居住空間B1へ侵入することを確実に防止できる。密封装置36,37の材質は、金属製、合成樹脂製、合成ゴム製の何れでもよい。
【0033】
図8には、壁11より外部A1側にシャッタ38を設け、壁11より居住空間B1側にシャッタ39を設けた例が示されている。シャッタ38を図2に示す第2方向D2に移動できるようにするか、または、鉛直方向C1に移動できるようにするガイド部材が設けられている。そして、利用者の手動操作、または、電動モータの動力等により、シャッタ38が移動及び停止される。シャッタ38が壁11の外部A1側に設けられると、外部A1と第1通気路24とがシャッタ38により遮断される。したがって、空気が外部A1から居住空間B1へ送り込まれない他、雨、虫等の異物が、外部A1から居住空間B1へ侵入することを確実に防止できる。
【0034】
シャッタ39を図2に示す第2方向D2に沿って移動できるようにするか、または、鉛直方向C1に移動できるようにするガイド部材が設けられている。そして、利用者の手動操作、または、電動モータの動力等により、シャッタ38が移動及び停止される。シャッタ39が壁11の居住空間B2側に設けられると、空気が外部A1から居住空間B1へ送り込まれない。なお、シャッタ39は、壁11に接触して配置されてもよい。このようにすると、シャッタ39が移動されることで、シャッタ39が第2通気路25を開閉できる。さらに、シャッタ38,39は、何れか一方を設けてもよいし、両方を設けてもよい。シャッタ38,39は、それぞれ一例として金属製である。また、密封装置36,37を用いたり、シャッタ38,39があると、外部A1から、第1通気路24及び第2通気路25を介して居住空間B1を見ることができず、居住空間B1のプライバシーを確保できる。
【0035】
図9(A),(B),(C),(D)は、壁11の本体部35の他の形状を示す模式的な断面図である。図9(A),(B)は、壁11の側面断面を示している。図9(A)に示す本体部35の仮想線E3は、円弧線または湾曲線である。つまり、本体部35は、鉛直方向C1の略中央が、鉛直方向C1の上端及び下端よりも、外部A1に近くなるように湾曲されている。図9(B)に示す本体部35の仮想線E3は、円弧線または湾曲線である。つまり、本体部35は、鉛直方向C1の略中央が、鉛直方向C1の上端及び下端よりも、居住空間B1に近くなるように湾曲されている。
【0036】
図9(C),(D)は、壁11の平面断面を示している。図9(C)に示す本体部35の仮想線E4は、円弧線または湾曲線である。つまり、本体部35は、第2方向D2の略中央が、第2方向D2の両端よりも、外部A1に近くなるように湾曲されている。図9(D)に示す本体部35の仮想線E4は、円弧線または湾曲線である。つまり、本体部35は、第2方向D2の略中央が、第2方向D2の両端よりも、居住空間B1に近くなるように湾曲されている。なお、図9(A),(B),(C),(D)の何れにおいても、通気装置30は、便宜上、単数示されているが、通気装置30が複数設けられていてもよい。
【0037】
また、図9(A),(B),(C),(D)にそれぞれ示される本体部35は、図2乃至図8に示された縦フレーム12及び横フレーム13を有していてもよいし、中実構造であってもよい。さらに、図9(A),(B),(C),(D)にそれぞれ示される通気装置30は、図2乃至図8に示された通気装置30の少なくとも1つの構成を有していればよい。そして、図9(A),(B),(C),(D)にそれぞれ示された通気装置30は、図2乃至図8にそれぞれ示された通気装置30と同様の効果を得ることができる。さらに、図2乃至図8において、通気装置30がユニット化されていると、既存の壁11の本体部に通気装置30を取り付ける穴、または、空間を設け、その穴または空間へ通気装置30を配置して、通気装置30と本体部とを固定することができる。
【0038】
(補足説明)
実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。建築物10は、建築物の一例である。壁11は、構造物の一例である。通気装置30は、通気装置の一例である。外部A1は、第1空間の一例であり、居住空間B1は、第2空間の一例である。本体部35は、本体部の一例である。第1通気路24及び第2通気路25は、通気路の一例である。第1通気路24,24A,24B,24C,24Dは、それぞれ第1通気路の一例であり、第2通気路25,25A,25B,25C,25Dは、それぞれ第2通気路の一例である。仮想線E1は、“通気路の中心を示す仮想線”の一例である。第1管部14は、第1管部の一例であり、第2管部23は、第2管部の一例である。配置範囲L1は、第1通気路の配置範囲の一例であり、配置範囲L2は、第2通気路の配置範囲の一例である。隣り合う縦フレーム12及び隣り合う横フレーム13により、環状のフレームが構成されている。上板19、下板20、側板21,22は、第1管部が備える板の一例である。
【0039】
本実施形態で説明した通気装置は、図面を用いて説明したものに限定されない。例えば、壁本体の第1方向における厚さは、鉛直方向で一定でもよいし、鉛直方向で異なっていてもよい。壁本体の第1方向における厚さは、水平方向で一定でもよいし、水平方向で異なっていてもよい。また、壁本体を構成するフレームは、壁の正面視で格子状に設ける他、壁の正面視で湾曲した形状のフレーム、壁の正面視で環状のフレームを設けることもできる。湾曲した形状のフレームの数は、単数または複数の何れでもよい。環状のフレームの数は、単数または複数の何れでもよい。環状のフレームは、三角形のフレーム、円形のフレーム、四角形のフレーム、六角形のフレーム等を含む。環状のフレームを設ける場合、壁本体のうち、環状のフレームにより囲まれた領域に通気装置を設けることができる。さらに、建築物は、1戸建て住宅、倉庫、体育館、雑居ビル、高層建築物、集合住宅等の何れでもよい。さらに、本体部は、金属製、木材製、合成樹脂製、モルタル製等の何れでもよく、またこれらのうちの複数の組み合わせでもよい。
【0040】
本実施形態において、構造物としての壁11は、図1のように、建築物10の内部に設けられる居住空間B1と、建築物10の内部に設けられる居住空間B2とを隔てるように設けられてもよい。壁11も建築物10の内部に設けられる。この場合、居住空間B1が第1空間であり、居住空間B1が第2空間である。そして、居住空間B1の空気は、壁11に設けられた通気装置30を通って居住空間B2へ送られる。さらに、居住空間B2と外部A1とを隔てる壁11に通気装置30が設けられていてもよい。この場合、居住空間B2が第1空間であり、外部A1が第2空間である。そして、居住空間B2の空気は、壁11に設けられた通気装置30を通って外部A1へ送られる。したがって、居住空間B2の換気性が向上する。また、第1空間または第2空間の何れか一方が、トイレ、押し入れ、クローゼット等であってもよい。また、第1空間が、建築物の内部であり、第2空間が建築物の外部であってもよい。この場合、建築物の内部の空気が、構造物の通気装置によって、建築物の外部へ送られる。したがって、建築物の内部の換気性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示の構造物は、第1空間から第2空間へ空気を送るために、壁として設けて利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…建築物、11…壁、12…縦フレーム、13…横フレーム、14…第1管部、23…第2管部、24,24A,24B,24C,24D…第1通気路、25,25A,25B,25C,25D…第2通気路、30…通気装置、35…本体部、A1…外部、B1,B2…居住空間、E1…仮想線、L1,L2…配置範囲
【要約】
【課題】第1空間から第2空間への通気性を向上でき、かつ、建築物の構造が大型化することを抑制可能な構造物を提供する。
【解決手段】建築物の外部A1と居住空間B1とを隔てる本体部35と、本体部35に設けられた通気装置30と、通気装置30に設けられ、かつ、外部A1の空気を居住空間B1へ送る第1通気路24及び第2通気路25と、を有し、本体部35の厚さ方向における通気装置30の配置範囲L1,L2は、本体部35の配置範囲L3内にあり、第2通気路24の中心を示す仮想線E1に対して垂直な平面内における第1通気路24の断面積は、仮想線E1に沿って居住空間B1に近づくことに伴い狭くなっている、壁11を構成した。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9