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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】ニラ収穫装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 45/00 20180101AFI20220912BHJP
【FI】
A01D45/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021193289
(22)【出願日】2021-11-29
【審査請求日】2021-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521521851
【氏名又は名称】株式会社サンユー技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 博之
(72)【発明者】
【氏名】五十峯 正弘
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-251927(JP,A)
【文献】特開平11-225542(JP,A)
【文献】特開2017-209067(JP,A)
【文献】特開2004-283139(JP,A)
【文献】特開平11-137050(JP,A)
【文献】実開昭58-143513(JP,U)
【文献】特開平04-356121(JP,A)
【文献】特開2000-270656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列栽培されたニラの列に沿って走行する走行体と、前記ニラを所定の高さ位置で切断する切断機構と、前記切断機構によって切断されたニラを起立状態で搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送されたニラを収容する収容部とを備えるニラ収穫装置であって、
前記走行体は、その後部位置に走行を操作するための操作部を備え、
前記収容部は、前記操作部の一側方に設けられ、
前記切断機構は、鉛直方向に延びる回転軸周りに水平回転する円盤状のカッター部材と、該カッター部材を回転駆動するカッター駆動手段と、前記カッター部材を地表から所定の高さ位置に調整し保持する調整手段とを備え、
前記搬送機構は、往路を搬送面として、該搬送面を互いに対向当接させて無端回動する一対の搬送ベルトと、両搬送ベルトの回動を同期して駆動するベルト駆動手段とを備え、
両搬送ベルトは、搬送面を互いに離反自在に当接させて、両搬送面間に前記切断されたニラを挟持して回動方向に搬送し、
前記搬送機構は、前記一対の搬送ベルトの搬送方向の下流に、前記一対の搬送ベルトと同期して回動される他の一対の搬送ベルトを備え、
前記他の一対の搬送ベルトの搬送方向の上流端部は、前記一対の搬送ベルトの搬送方向の下流端部の直上に位置しており、
前記他の一対の搬送ベルトは、前記一対の搬送ベルトよりも上方で前記一対の搬送ベルトからニラを受け取って搬送し、
前記一対の搬送ベルト及び前記他の一対の搬送ベルトは、夫々、複数のプーリに掛け渡されるベルト本体と、該ベルト本体の外周面全周に設けられたスポンジ部材とを備え
前記他の一対の搬送ベルトは、前記走行体の走行方向から前記収容部へ向かう方向に屈曲する屈曲部を備え、
前記屈曲部には、該屈曲部を通過するニラに対する両搬送ベルトの圧接力を緩和するためのベルト圧接量調整手段が設けられ、
前記圧接量調整手段は、前記屈曲部の外側を通過する一方の搬送ベルトのベルト本体に摺接して前記屈曲部の外側方向へ当該一方の搬送ベルトを引っ張ることにより圧接力を緩和するように構成されていることを特徴とするニラ収穫装置。
【請求項2】
前記搬送機構は、ニラの搬送経路に沿ってニラを案内する案内部材を備えることを特徴とする請求項1記載のニラ収穫装置。
【請求項3】
前記ベルト駆動手段は、前記一対の搬送ベルトのうち、一方の搬送ベルトの回動を駆動する第1駆動モータと、該第1駆動モータに同期して他方の搬送ベルトの回動を駆動する第2駆動モータとを備えることを特徴とする請求項1又は2記載のニラ収穫装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、ニラの搬送経路に沿ってニラを案内する案内部材を備え、
前記搬送ベルトの前記ベルト本体は、前記スポンジ部材より上方に所定寸法拡張させた拡張部を全長にわたって備え、
前記案内部材は、搬送中のニラと前記拡張部との接触を阻止すべくニラの搬送経路と拡張部との間に垂下する垂下部を備えることを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のニラ収穫装置。
【請求項5】
前記一対の搬送ベルトは夫々複数のプーリに掛けわたされ、
一方の搬送ベルトを掛けわたすプーリと一方の搬送ベルトを掛けわたすプーリとは、掛けわたし方向に沿って互いに位置をずらして設けられていることを特徴とする請請求項1~4の何れか1項記載のニラ収穫装置。
【請求項6】
前記一対の搬送ベルトの往路に、夫々の搬送ベルトを所定位置で支持して搬送方向への回動を案内するベルト支持部材を設けたことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載のニラ収穫装置。
【請求項7】
前記搬送機構の搬送速度と前記走行体の走行速度とを同期させる制御手段を備えることを特徴とする請求項1~6の何れか1項記載のニラ収穫装置。
【請求項8】
前記搬送機構による搬送路の終端と前記収容部との間に、前記搬送機構により搬送されたニラを起立状態で一時貯留する貯留部を備え、
前記貯留部は、ニラの起立状態を載置する載置台と、該載置台上のニラに当接して当該ニラの起立状態を維持する当接部材とを備え、
前記当接部材は、ニラの貯留量に応じて前記載置台上を移動自在に設けられていることを特徴とする請求項1~7の何れか1項記載のニラ収穫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に植えられたニラを刈り取り収穫するニラ収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場で栽培されたほうれん草や小松菜等の所謂葉物野菜を自動的に収穫する野菜収穫装置が知られている。このものは、走行しながら切断刃を地中に挿入することにより野菜の根を切断し、切り取った野菜をコンベアに乗せて収穫するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-92号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ニラを収穫する場合、根ではなく、地表に出ている茎葉部位を切断することが求められる。これによって、土壌に残った部分から再成長し、複数回の収穫が可能となる。
【0005】
しかし、上記従来の収穫装置は、切断刃を地中に挿入し、地中の根を切断する構造であるため、ニラの再収穫を行うことができない不都合がある。
【0006】
また、ニラの栽培においては土壌の表面をマルチシートで覆いながら育成させる場合があるが、上記従来の収穫装置は、切断刃を地中に挿入する構造であるため、切断刃によってマルチシートが切断され、マルチシートの再利用が望めなくなる不都合がある。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、ニラに好適な収穫作業を自動化することができるニラ収穫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、配列栽培されたニラの列に沿って走行する走行体と、前記ニラを所定の高さ位置で切断する切断機構と、前記切断機構によって切断されたニラを起立状態で搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送されたニラを収容する収容部とを備えるニラ収穫装置であって、前記走行体は、その後部位置に走行を操作するための操作部を備え、前記収容部は、前記操作部の一側方に設けられ、前記切断機構は、鉛直方向に延びる回転軸周りに水平回転する円盤状のカッター部材と、該カッター部材を回転駆動するカッター駆動手段と、前記カッター部材を地表から所定の高さ位置に調整し保持する調整手段とを備え、前記搬送機構は、往路を搬送面として、該搬送面を互いに対向当接させて無端回動する一対の搬送ベルトと、両搬送ベルトの回動を同期して駆動するベルト駆動手段とを備え、両搬送ベルトは、搬送面を互いに離反自在に当接させて、両搬送面間に前記切断されたニラを挟持して回動方向に搬送し、前記搬送機構は、前記一対の搬送ベルトの搬送方向の下流に、前記一対の搬送ベルトと同期して回動される他の一対の搬送ベルトを備え、前記他の一対の搬送ベルトの搬送方向の上流端部は、前記一対の搬送ベルトの搬送方向の下流端部の直上に位置しており、前記他の一対の搬送ベルトは、前記一対の搬送ベルトよりも上方で前記一対の搬送ベルトからニラを受け取って搬送し、前記一対の搬送ベルト及び前記他の一対の搬送ベルトは、夫々、複数のプーリに掛け渡されるベルト本体と、該ベルト本体の外周面全周に設けられたスポンジ部材とを備え、前記他の一対の搬送ベルトは、前記走行体の走行方向から前記収容部へ向かう方向に屈曲する屈曲部を備え、前記屈曲部には、該屈曲部を通過するニラに対する両搬送ベルトの圧接力を緩和するためのベルト圧接量調整手段が設けられ、前記圧接量調整手段は、前記屈曲部の外側を通過する一方の搬送ベルトのベルト本体に摺接して前記屈曲部の外側方向へ当該一方の搬送ベルトを引っ張ることにより圧接力を緩和するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のニラ収穫装置によれば、ニラの列に沿って走行体が走行しつつ、切断機構によってニラが切断され、その切断されたニラが搬送機構によって収容部に搬送される。このとき、切断機構が水平回転する円盤状のカッター部材を備えるので、ニラの切口面が傾斜することなく円滑に切断することができる。そして、カッター部材は調整手段によってニラの切断位置が好適位置に設定されているので、ニラの再収穫を阻害することなく切断することができる。
【0010】
また、切断されたニラは、両搬送ベルトの搬送面によって挟持された状態で搬送される。これにより、切断したときの姿勢である起立姿勢を維持して搬送することができる。
【0011】
更に、前記一対の搬送ベルトよりも上方でニラを受け取って搬送する他の一対の搬送ベルトを設けたことにより、長さの短いニラや雑草が他の一対の搬送ベルトに挟持されずに落下する。よって、搬送されるニラの長さの不揃いや雑草の混入を防止することができる。
【0012】
また、搬送ベルトがスポンジ部材を備えることにより、両搬送ベルトの搬送面同士の圧接力を比較的高く設定してニラの脱落が防止でき、しかもニラの損傷を防止した挟持状態を形成することができる。
【0013】
また、収容部が操作部の一側方に設けられており、収容部へ向かう方向に屈曲する屈曲部が設けられているので、収容部が操作部を操作する作業者に邪魔にならず、円滑な操作を行うことができる。また、搬送ベルトの屈曲部においては、両搬送ベルトの搬送面同士の圧接力が増加するが、ベルト圧接量調整手段を設けて屈曲部を通過するニラに対する両搬送ベルトの圧接力を緩和することができるので、ニラの損傷を防止することができる。
【0014】
また、本発明において、前記搬送機構は、ニラの搬送経路に沿ってニラを案内する案内部材を備えることを特徴とする。案内部材によって搬送中のニラは倒れが防止され、安定した起立姿勢でニラを搬送することができる。
【0015】
このとき、前記ベルト駆動手段は、前記一対の搬送ベルトのうち、一方の搬送ベルトの回動を駆動する第1駆動モータと、該第1駆動モータに同期して他方の搬送ベルトの回動を駆動する第2駆動モータとを備えることが好ましい。
【0016】
一対の搬送ベルトを同期して駆動する場合には、例えば、単一の駆動モータの駆動力を2つの搬送ベルトへ同時に伝達する伝達機構が必要となり、この伝達機構がニラの搬送路を横切るために起立姿勢で搬送中のニラに干渉するおそれがある。それに対して、本発明においては、一方の搬送ベルトを第1駆動モータで駆動し、他方の搬送ベルトを第2駆動モータで駆動するので、搬送中のニラへの干渉を防止することができる。
【0017】
また、前記搬送機構は、ニラの搬送経路に沿ってニラを案内する案内部材を備え、前記搬送ベルトの前記ベルト本体は、前記スポンジ部材より上方に所定寸法拡張させた拡張部を全長にわたって備え、前記案内部材は、搬送中のニラと前記拡張部との接触を阻止すべくニラの搬送経路と拡張部との間に垂下する垂下部を備えることを特徴とする。
【0018】
これによれば、案内部材の垂下部がベルト本体の拡張部へのニラの接触が防止されるので、搬送ベルトや各プーリへのニラの巻き込みが防止でき、ニラを円滑に搬送することができる。
【0019】
更に、前記一対の搬送ベルトは夫々複数のプーリに掛けわたされ、一方の搬送ベルトを掛けわたすプーリと一方の搬送ベルトを掛けわたすプーリとは、掛けわたし方向に沿って互いに位置をずらして設けられていることを特徴とする。
【0020】
搬送ベルトがスポンジ部材を備える場合に、プーリの掛けわたし部分に張力の影響で窪みが生じる場合があるが、プーリ位置をずらすことにより、各プーリの窪み位置をずらすことができ、窪みによる把持力の低下を防止することができる。
【0023】
更に、前記一対の搬送ベルトの往路に、夫々の搬送ベルトを所定位置で支持して搬送方向への回動を案内するベルト支持部材を設けたことを特徴とする。
【0024】
両搬送ベルトは、ベルト本体の外周面全周にスポンジ部材を備えるために、スポンジ部材自体に変形が生じやすく、搬送中のニラの荷重が加わって、下方に弛みが生じるおそれがある。そこで、ベルト支持部材を設けて夫々の搬送ベルトを所定位置で支持することで、弛みの発生を抑制し、ニラの搬送を確実に行うことができる。
【0027】
また、本発明において、前記搬送機構の搬送速度と前記走行体の走行速度とを同期させる制御手段を備えることを特徴とする。
【0028】
これによれば、走行しつつニラを切り取る際に、ニラの倒れが確実に防止できるだけでなく、切断時のニラに、不要な引き抜き方向の力や押し倒し方向の力が付与されず、ニラの損傷を防止して円滑な切断及び搬送を行うことができる。
【0029】
また、本発明において、前記搬送機構による搬送路の終端と前記収容部との間に、前記搬送機構により搬送されたニラを起立状態で一時貯留する貯留部を備え、前記貯留部は、ニラの起立状態を載置する載置台と、該載置台上のニラに当接して当該ニラの起立状態を維持する当接部材とを備え、前記当接部材は、ニラの貯留量に応じて前記載置台上を移動自在に設けられていることを特徴とする。
【0030】
ニラの起立状態を維持する当接部材が載置台上を移動自在に設けられていることにより、収容部へ向かって搬送されるニラの載置台での貯留量を変更することができる。これにより、ニラの量が比較的少ない場合であっても、載置台上のニラに当接部材を当接させて起立状態とすることができ、収容部へ投入される直前のニラの姿勢を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態のニラ収穫装置の概略構成を示す説明的側面図。
図2】本実施形態のニラ収穫装置の概略構成を示す説明的平面図。
図3】切断機構の要部を示す説明的平面図。
図4】搬送ベルトの構造を示す説明的断面図。
図5】搬送機構の一部を示す説明的平面図。
図6】ベルト駆動手段を示す説明図。
図7】搬送機構の他部を示す説明的平面図。
図8図8Aは比較例として挙げた搬送ベルト間の隙間を示す説明図、図8Bは本実施形態の搬送ベルト間の隙間を示す説明図。
図9図9Aは比較例として挙げる搬送ベルトの搬送状態を示す説明図、図9Bは本実施形態の搬送ベルトの搬送状態を示す説明図。
図10】貯留部及び収容部を示す説明的背面図。
図11】搬送機構の変形例を示す説明的平面図。
図12図11の搬送機構の構成を模式的に示す説明図。
図13】案内部材とそれに対応する搬送ベルトとプーリの形状を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のニラ収穫装置は、図1及び図2に示すように、走行体1と、切断機構2と、搬送機構3と、収容部4とを備えている。
【0033】
走行体1は、複数の車輪5と、車輪5を軸支するフレーム6とを備えている。車輪5は、図示しない走行駆動モータによって駆動される。走行駆動モータは、フレーム6の後端部に備える操作部7を介して作業者により操作される。走行体1は、操作部7の操作により、前進、後退、停止が行われる。
【0034】
切断機構2は、フレーム6の前側に設けられており、図3に示すように、円盤状のカッター部材8を備えている。
【0035】
カッター部材8は、図1に示すように、鉛直方向に延びる回転軸9により水平に支持され、図3に示すように、回転軸9及び駆動シャフト10を介して図示しないカッター駆動モータ(カッター駆動手段)により回転が駆動される。
【0036】
カッター部材8の周縁には、鋭利に連続する切刃11が形成されている。カッター部材8は、図1に示すように、水平に支持されているため、ニラWの切断面が傾斜することがない。しかも、カッター部材8の鋭利に連続する切刃11によって、例えば鋸刃に比べて、ニラWの切断面が平滑となり、高品質を維持してニラWを切断することができる。
【0037】
また、カッター部材8は、昇降自在に設けられており、図示しない調整手段によって所定の高さ位置に保持されている。これにより、ニラWの切断位置が好適位置に設定されているので、ニラWの再収穫を阻害することなく切断することができる。
【0038】
なお、調整手段として、カッター部材8を斜め方向前後に進退させて実質的な上下位置調整を行う構成でもよく、或いは、前側の車輪5を昇降させることによりカッター部材8の位置を調整する構成としてもよい。
【0039】
搬送機構3は、図2に示すように、後述する複数の搬送ベルトと、複数のプーリと、2つの駆動モータとを備えている。
【0040】
搬送ベルトは、第1前部搬送ベルト12、第2前部搬送ベルト13、第1後部搬送ベルト14、及び、第2後部搬送ベルト15からなる。
【0041】
第1前部搬送ベルト12は、図4に示すように、タイミングベルトとして作用するベルト本体16と、ベルト本体16の外側全周に設けられたスポンジ部材17とによって構成される。スポンジ部材17の外周面は、搬送面とされている。後述する第2前部搬送ベルト13、第1後部搬送ベルト14、及び、第2後部搬送ベルト15を形成している材料も第1前部搬送ベルト12と同様の図4に示す構成であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
第1前部搬送ベルト12は、図5に示すように、フレーム6の前方端部に設けられた第1前部従動プーリ18と、第1前部従動プーリ18よりも後方に設けられた第1下側駆動プーリ19とに掛け渡されている。
【0043】
第1下側駆動プーリ19は、図6に示すように、第1駆動モータ20(ベルト駆動手段)により回転駆動され、これに伴って第1前部搬送ベルト12が無端回動する。第1前部従動プーリ18は、本発明における一方の搬送ベルトの復路から往路への折り返し先端のプーリに相当する。
【0044】
第2前部搬送ベルト13は、図5に示すように、フレーム6の前方端部に設けられた第2前部従動プーリ21と、第2前部従動プーリ21よりも後方に設けられた第2下側駆動プーリ22とに掛け渡されている。
【0045】
第2下側駆動プーリ22は、図6に示すように、第1駆動モータ20と同期して回転制御される第2駆動モータ23(ベルト駆動手段)によって回転駆動される。第2前部従動プーリ21は、本発明における一方の搬送ベルトの復路から往路への折り返し先端のプーリに相当する。
【0046】
図1に示すように、第1前部搬送ベルト12と第2前部搬送ベルト13とは、往路の搬送面が互いに当接した状態で回動する。切断機構2で切断されたニラWは、第1前部搬送ベルト12と第2前部搬送ベルト13とに挟まれて後方へ搬送される。このとき、第1前部搬送ベルト12と第2前部搬送ベルト13とがスポンジ部材17を備えることにより、切断されたニラWにダメージを与えることなく脱落を防止して搬送することができる。
【0047】
図7に示すように、第1後部搬送ベルト14は、第1下側駆動プーリ19と同軸で第1駆動モータ20(ベルト駆動手段)によって回転駆動される第1上側駆動プーリ24と、フレーム6の後部側に設けられた第1後部従動プーリ(第1後端プーリ25及び一対の第1補助プーリ26,27)とに掛け渡されている。これによって、第1後部搬送ベルト14が無端回動する。
【0048】
第2後部搬送ベルト15は、第2下側駆動プーリ22と同軸で第2駆動モータ23(ベルト駆動手段)によって回転駆動される第2上側駆動プーリ28と、フレーム6の後部側に設けられた第2後部従動プーリ(一対の第2補助プーリ29,30及び第2後端プーリ31)とに掛け渡されている。これによって、第2後部搬送ベルト15が無端回動する。
【0049】
図1に示すように、第1後部搬送ベルト14と第2後部搬送ベルト15とは、往路の搬送面が互いに当接した状態で回動する。第1前部搬送ベルト12と第2前部搬送ベルト13とに挟持されたニラWは、第1後部搬送ベルト14と第2後部搬送ベルト15とに受け渡されて連続して搬送される。
【0050】
また、第1後部搬送ベルト14と第2後部搬送ベルト15とによるニラWの挟持位置は、第1前部搬送ベルト12と第2前部搬送ベルト13とによるニラWの挟持位置よりも高い位置にある。これにより、第1後部搬送ベルト14と第2後部搬送ベルト15とによる搬送時に短いニラWや雑草等を落下させることができる。なお、本実施形態による第1後部搬送ベルト14と第2後部搬送ベルト15とは、本発明における搬送ベルトとしての機能を有すると共に、本発明における他の搬送ベルトとしての機能も有している。
【0051】
更に、両側の搬送ベルトを第1駆動モータ20と第2駆動モータ23とで格別にの間に空隙を形成することができるので、搬送さるニラWに第1駆動モータ20と第2駆動モータ23とが干渉せず、また、短いニラや雑草等を円滑に落下させることができる。
【0052】
また、図5に示すように、第1前部従動プーリ18及び第1下側駆動プーリ19と、第2前部従動プーリ21及び第2下側駆動プーリ22とは、互いに位置をずらして設けられている。
【0053】
第1下側駆動プーリ19と、第2下側駆動プーリ22とが対向する位置にあると、張力の影響に伴ってスポンジ部材17が窪みが生じる場合がある。
【0054】
このため、例えば、図8Aに示すように、第1前部搬送ベルト12と第2前部搬送ベルト13との下流端での当接位置、及び、第1後部搬送ベルト14と第2後部搬送ベルト15との上流端での当接位置に窪みが重なって、比較的大きな隙間Sが生じ、ニラWの把持力が低下する。そこで、第1下側駆動プーリ19及び第1上側駆動プーリ24の位置と、第2下側駆動プーリ22及び第2上側駆動プーリ28の位置とを前後方向にずらして設けることにより、図8B示すように、窪みを前後にずらすことができ、隙間Sを分散させてニラWの把持力低下を抑えることができる。
【0055】
図7に示すように、第1後部搬送ベルト14は、第1後端プーリ25を介して横方向(収容部4に向かう方向)に屈曲している。この屈曲部32に沿って、第2上側駆動プーリ28と第2後端プーリ31との間の第2後部搬送ベルト15も屈曲している。これにより、走行体1の走行方向に沿った搬送方向に延びる第1搬送路33と、第1搬送路33の終端から屈曲部32を介して収容部4へ向かって延びる第2搬送路34とが形成される。
【0056】
屈曲部32には、第1後部搬送ベルト14に対する第2後部搬送ベルト15の圧接力を緩和する屈曲ガイド35(ベルト圧接量調整手段)が設けられている。屈曲ガイド35は、第2後部搬送ベルト15のベルト本体16に摺接して屈曲部32の外側方向へ第2後部搬送ベルト15を引っ張る。これにより、屈曲部32を通過するニラWが過剰な挟持力によって損傷することを防止することができる。
【0057】
以上の構成による搬送機構3は、搬送速度を制御する図示しない搬送制御ユニット(制御手段)を備えている。搬送制御ユニットは、ニラWの搬送速度と走行体1の走行速度とを同期させる。これにより、走行体1の走行速度よりも搬送速度が遅延して切断前にニラWを押し倒したり、走行体1の走行速度よりも搬送速度が高くて切断前にニラWを引き抜いたりといったことが回避され、走行体1を走行させながら、切断機構2によるニラWの切断と、切断されたニラWの搬送とを円滑に行うことができる。
【0058】
また、図2に示すように、第1搬送路33における各プーリ間の距離が比較的長い位置には、複数のベルト支持部材36が設けられている。第1前部搬送ベルト12や第2前部搬送ベルト13等のプーリ間の掛け渡し距離が比較的長いとき、図9Aに示すように、挟持しているニラWの荷重によりスポンジ部材17が下方に撓むように変形し、ニラWの挟持状態が維持できなくなる恐れがある。そこで、本実施形態においては、図9Bに示すように、ベルト支持部材36を設けてスポンジ部材17の撓み変形を規制する。これにより、ニラWの確実な挟持状態を維持して搬送することができる。
【0059】
収容部4は、図2及び図7に示すように、操作部7の一側方に設けられている。収容部4の上流側には、搬送機構3により搬送されたニラWを起立状態で一時貯留する貯留部37が設けられている。
【0060】
貯留部37は、図10に示すように、ニラWの起立状態を載置する載置台38と、載置台38上のニラWに当接して起立状態を維持する当接部材39とを備えている。当接部材39は、ニラWの貯留量に応じて載置台38上を移動自在に設けられている。これにより、ニラWの量が比較的少ない場合に載置台38の載置面積が小さくなるように当接部材39を移動させて、ニラWの起立状態を維持して一時貯留が行える。
【0061】
貯留部37に貯留されたニラWは、続いて収容部4に収容され、収容部4に所定量のニラWが収容されたとき、収容部4から取り出される。
【0062】
なお、本実施形態においては、貯留部37を設けて収容部4へのニラWの投入を自動化させた例を示しているが、これに限るものではなく、図示しないが、貯留部37を設けることなく、搬送されたニラWを手作業によって収容部4へ配列投入するように構成してもよい。
【0063】
また、以上の実施形態においては、図5に示すように、搬送機構3の第1前部搬送ベルト12と第2前部搬送ベルト13とによって、前半部の搬送路を形成したものを示したが、これ以外に、第1前部搬送ベルトと第2前部搬送ベルトとを複数に分割して上下に一部が重なるように構成してもよい。
【0064】
当該搬送機構3の変形例を詳説すれば、図11に示すように、複数(図示においては3つ)に分割された第1前部搬送ベルト12a,12b,12cと、複数(図示においては3つ)に分割された第2前部搬送ベルト13a,13b,13cとを備えている。
【0065】
当該搬送機構3の変形例においては、第1前部搬送ベルト12a,12c、第2前部搬送ベルト13a,13cが本発明における搬送ベルトに相当し、第1前部搬送ベルト12b、第2前部搬送ベルト13bが本発明における他の搬送ベルトに相当する。
【0066】
第1前部搬送ベルト12aと第2前部搬送ベルト13aとは往路を密着させて互いに対向し、第1前部搬送ベルト12bと第2前部搬送ベルト13bとは往路を密着させて互いに対向し、第1前部搬送ベルト12cと第2前部搬送ベルト13cとは往路を密着させて互いに対向する。
【0067】
このように、ニラWの搬送路を、複数に分割された第1前部搬送ベルト12a,12b,12cと、複数)に分割された第2前部搬送ベルト13a,13b,13cとで構成することにより、単一の第1前部搬送ベルト12と単一の第2前部搬送ベルト13とで搬送路を構成した場合にくらべ、各搬送ベルト12a,12b,12c,13a,13b,13cの長さを短くすることができるので、撓み変形が抑制される。これにより、ベルト支持部材36(図5参照)を設けることなく撓み変形の発生を抑制することができ、装置構成の複雑化を防止することができる。
【0068】
また、図11及び図12に示すように、中間部に位置する第1前部搬送ベルト12b及び第2前部搬送ベルト13bは、最前部に位置する第1前部搬送ベルト12a及び第2前部搬送ベルト13aよりも上方に位置し、最後部に位置する第1前部搬送ベルト12c及び第2前部搬送ベルト13cよりも上方に位置している。
【0069】
このため、最前部に位置する第1前部搬送ベルト12aと第2前部搬送ベルト13aとによるニラWの把持位置を低い位置としてニラWの切断を確実に行うことができる。
【0070】
このとき、最前部に位置する第1前部搬送ベルト12aと第2前部搬送ベルト13aとによるニラの把持位置は低い位置であるため、丈の長いニラWと共に丈の短いニラWsや雑草Xも搬送されるおそれがある。しかし、中間部に位置する第1前部搬送ベルト12b及び第2前部搬送ベルト13bは、ニラWの把持位置が高い位置となるため、丈の短いニラWsや雑草Xが落下し、丈の長い良好なニラWのみを搬送し収穫することができる。
【0071】
また、図1及び図2においては図示を省略したが、少なくとも搬送機構3の全長にわたるニラWの搬送経路には、図13に示すように、ニラWの倒れ等を防止して搬送案内するための板状の案内部材40が設けられる。
【0072】
案内部材40を設けることによって、ニラWを安定した起立姿勢で搬送できる反面、案内部材40と搬送ベルトやプーリとの間に巻き込みが生じ、搬送が円滑に行われなくなるおそれがある。そこで、本実施形態においては、図13に示すように、ベルト本体16の上部に拡張部16aを設け、案内部材40の下部に垂下部40aを設けている。
【0073】
拡張部16aは、スポンジ部材17より上方に所定寸法拡張させたものであるが、ベルト本体16をスポンジ部材17よりも幅広に形成することによって容易に得られる。そして、ベルト本体16は、一部に拡張部16aを備える状態でタイミングベルトを構成するので、ベルト本体16に合わせて幅広プーリ41(軸方向に延長させた形状のプーリ)が設けられる。
【0074】
垂下部40aは、案内部材40と一体に形成されるが、別部材としてもよい。垂下部40aは、ニラWの搬送経路と拡張部16a及び幅広プーリ41の上端部との間に垂下して設けられており、これによって、ニラWがベルト本体16及び幅広プーリ41に巻き込まれることを防止する。これによれば、切断されたニラWの起立姿勢を維持した良好な搬送を円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
1…走行体、2…切断機構、3…搬送機構、4…収容部、7…操作部、8…カッター部材、9…回転軸、12,12a,12c…第1前部搬送ベルト(搬送ベルト)、12b…第1前部搬送ベルト(他の搬送ベルト)、13,13a,13c…第2前部搬送ベルト(搬送ベルト)、13b…第2前部搬送ベルト(他の搬送ベルト)、14…第1後部搬送ベルト(搬送ベルト、他の搬送ベルト)、15…第2後部搬送ベルト(搬送ベルト、他の搬送ベルト)、16…ベルト本体、17…スポンジ部材、18…第1前部従動プーリ(プーリ)、20…第1駆動モータ(ベルト駆動手段)、21…第2前部従動プーリ(プーリ)、23…第2駆動モータ(ベルト駆動手段)32…屈曲部、33…第1搬送路、34…第2搬送路、35…屈曲ガイド(ベルト圧接量調整手段)、36…ベルト支持部材、37…貯留部、38…載置台、39…当接部材、40…案内部材、40a…垂下部、16a…拡張部。
【要約】
【課題】ニラに好適な収穫作業を自動化することができるニラ収穫装置を提供する。
【解決手段】ニラ収穫装置は、配列栽培されたニラWの列に沿って走行する走行体1と、ニラWを所定の高さ位置で切断する切断機構2と、切断機構2によって切断されたニラWを起立状態で搬送する搬送機構3と、搬送機構3により搬送されたニラWを収容する収容部4とを備える。切断機構2は、鉛直方向に延びる回転軸9周りに水平回転する円盤状のカッター部材8と、カッター部材8を回転駆動するカッター駆動手段と、カッター部材8を地表から所定の高さ位置に調整し保持する調整手段とを備える。
【選択図】図1
図1
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図13