(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】ポリエステル合成繊維用処理剤、ポリエステル合成繊維用処理剤含有組成物、ポリエステル合成繊維用第1処理剤、ポリエステル合成繊維用第2処理剤、ポリエステル合成繊維用第1処理剤含有組成物、ポリエステル合成繊維の処理方法、及びポリエステル合成繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 15/643 20060101AFI20220912BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20220912BHJP
【FI】
D06M15/643
D06M101:32
(21)【出願番号】P 2022005178
(22)【出願日】2022-01-17
【審査請求日】2022-01-17
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金子 一輝
(72)【発明者】
【氏名】大海 卓滋
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-279480(JP,A)
【文献】特開昭59-122548(JP,A)
【文献】特開平08-120571(JP,A)
【文献】特開平03-249281(JP,A)
【文献】特開昭61-186582(JP,A)
【文献】特開2001-248062(JP,A)
【文献】特開2005-298689(JP,A)
【文献】特開2013-177495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00-15/715
C08L 83/00-83/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のシリコーン(A)、下記のシリコーン(B)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及び任意選択で下記のシリコーン(C)を含有するポリエステル合成繊維用処理剤であって、前記ポリエステル合成繊維用処理剤中の前記シリコーン(C)の含有割合が10質量%未満であることを特徴とするポリエステル合成繊維用処理剤。
シリコーン(A):数平均分子量が50000以上200000未満であるシラノール変性シリコーン。
シリコーン(B):分子中に、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、エポキシ基を含まないシランカップリング剤。
シリコーン(C):シリコーンレジン、ジメチルシリコーン、及びアルキル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1つであって、シリコーン(A)に該当するものを除く。
【請求項2】
前記シリコーン(B)が、分子中にアミノ基を含むものである請求項1に記載のポリエステル合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記ノニオン界面活性剤が、炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物を含む請求項1又は2に記載のポリエステル合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記アニオン成分が、有機酸、アルキルスルホン酸、アルキル硫酸、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの金属塩から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエステル合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記ポリエステル合成繊維用処理剤中に、前記シリコーン(A)を50質量%以上95質量%以下、前記シリコーン(B)を1質量%以上25質量%以下、前記シリコーン(C)を0質量%以上10質量%未満、前記ノニオン界面活性剤を1質量%以上20質量%以下、及び前記アニオン成分を0.1質量%以上20質量%以下の割合で含有する請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエステル合成繊維用処理剤。
【請求項6】
前記シリコーン(A)、前記ノニオン界面活性剤、前記アニオン成分、及び任意選択で前記シリコーン(C)を含有するポリエステル合成繊維用第1処理剤と、前記シリコーン(B)を含有するポリエステル合成繊維用第2処理剤とを含むセットである請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエステル合成繊維用処理剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエステル合成繊維用処理剤と、溶媒とを含有することを特徴とするポリエステル合成繊維用処理剤含有組成物。
【請求項8】
使用時に下記のシリコーン(B)を含有するポリエステル合成繊維用第2処理剤と併用され、下記のシリコーン(A)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及び任意選択で下記のシリコーン(C)を含有するポリエステル合成繊維用第1処理剤であって、
前記ポリエステル合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル合成繊維用第2処理剤が混合された混合物中において前記シリコーン(C)の含有割合が10質量%未満となるように含有することを特徴とするポリエステル合成繊維用第1処理剤。
シリコーン(A):数平均分子量が50000以上200000未満であるシラノール変性シリコーン。
シリコーン(B):分子中に、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、エポキシ基を含まないシランカップリング剤。
シリコーン(C):シリコーンレジン、ジメチルシリコーン、及びアルキル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1つであって、シリコーン(A)に該当するものを除く。
【請求項9】
請求項8に記載のポリエステル合成繊維用第1処理剤と、溶媒とを含有することを特徴とするポリエステル合成繊維用第1処理剤含有組成物。
【請求項10】
溶媒に、請求項
9に記載のポリエステル合成繊維用第1処理剤含有組成物と、
下記のシリコーン(B)を含有するポリエステル合成繊維用第2処理剤とを添加して得られたポリエステル合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル合成繊維に付与することを特徴とするポリエステル合成繊維の処理方法。
シリコーン(B):分子中に、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、エポキシ基を含まないシランカップリング剤。
【請求項11】
更に、前記ポリエステル合成繊維用処理剤の希釈液を付与した繊維を100℃以上200℃以下で熱処理する請求項
10に記載のポリエステル合成繊維の処理方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエステル合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とするポリエステル合成繊維。
【請求項13】
詰め綿に適用される請求項
12に記載のポリエステル合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル合成繊維用処理剤、ポリエステル合成繊維用処理剤含有組成物、ポリエステル合成繊維用第1処理剤、ポリエステル合成繊維用第2処理剤、ポリエステル合成繊維用第1処理剤含有組成物、ポリエステル合成繊維の処理方法、及びポリエステル合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程、仕上げ工程等において、例えば合成繊維の摩擦低減、帯電防止性、集束性等の観点から、繊維の表面に合成繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1~4に開示の合成繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、アミノ基等の官能基を有する変性シリコーンを必須成分とするシリコーンと、ポリアルキレンオキサイド付加物を必須成分とする界面活性剤と、水とを含有するシリコーンエマルション組成物について開示する。特許文献2は、アミノ変性シリコーンと、シリコーンレジンと、アルキルポリシロキサンとを含有する撥水剤組成物について開示する。特許文献3は、所定のシロキサン構造を有するシリコーンオイルと、所定のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルを含有するシリコーンオイル組成物について開示する。特許文献4は、ジメチルシリコーン及び/又はアミノ変性シリコーン、所定のポリオキシアルキレンアルキルエーテルである界面活性剤、水を含むシリコーンエマルション組成物について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-177495号公報
【文献】国際公開第2019/131456号
【文献】特開2020-59799号公報
【文献】特許第4749677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の合成繊維用処理剤は、安定性、合成繊維用処理剤が付与された繊維の帯電防止性及び柔軟性の向上という各効能の両立を十分に図ることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、ポリエステル合成繊維用処理剤において、所定のシリコーン、ノニオン界面活性剤、及びアニオン成分を含有する構成が好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様のポリエステル合成繊維用処理剤では、下記のシリコーン(A)、下記のシリコーン(B)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及び任意選択で下記のシリコーン(C)を含有するポリエステル合成繊維用処理剤であって、前記ポリエステル合成繊維用処理剤中の前記シリコーン(C)の含有割合が10質量%未満であることを要旨とする。
【0008】
シリコーン(A):数平均分子量が50000以上200000未満であるシラノール変性シリコーン。
シリコーン(B):分子中に、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、エポキシ基を含まないシランカップリング剤。
【0009】
シリコーン(C):シリコーンレジン、ジメチルシリコーン、及びアルキル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1つであって、シリコーン(A)に該当するものを除く。
前記ポリエステル合成繊維用処理剤において、前記シリコーン(B)が、分子中にアミノ基を含むものであってもよい。
【0010】
前記ポリエステル合成繊維用処理剤において、前記ノニオン界面活性剤が、炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物を含んでもよい。
【0011】
前記ポリエステル合成繊維用処理剤において、前記アニオン成分が、有機酸、アルキルスルホン酸、アルキル硫酸、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの金属塩から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
【0012】
前記ポリエステル合成繊維用処理剤において、前記ポリエステル合成繊維用処理剤中に、前記シリコーン(A)を50質量%以上95質量%以下、前記シリコーン(B)を1質量%以上25質量%以下、前記シリコーン(C)を0質量%以上10質量%未満、前記ノニオン界面活性剤を1質量%以上20質量%以下、及び前記アニオン成分を0.1質量%以上20質量%以下の割合で含有してもよい。
【0013】
前記ポリエステル合成繊維用処理剤において、前記シリコーン(A)、前記ノニオン界面活性剤、前記アニオン成分、及び任意選択で前記シリコーン(C)を含有するポリエステル合成繊維用第1処理剤と、前記シリコーン(B)を含有するポリエステル合成繊維用第2処理剤とを含むセットであってもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様のポリエステル合成繊維用処理剤含有組成物では、前記ポリエステル合成繊維用処理剤と、溶媒とを含有することを要旨とする。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様のポリエステル合成繊維用第1処理剤では、使用時に下記のシリコーン(B)を含有するポリエステル合成繊維用第2処理剤と併用され、下記のシリコーン(A)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及び任意選択で下記のシリコーン(C)を含有するポリエステル合成繊維用第1処理剤であって、前記ポリエステル合成繊維用第1処理剤及び前記ポリエステル合成繊維用第2処理剤が混合された混合物中において前記シリコーン(C)の含有割合が10質量%未満となるように含有することを要旨とする。
【0015】
シリコーン(A):数平均分子量が50000以上200000未満であるシラノール変性シリコーン。
シリコーン(B):分子中に、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、エポキシ基を含まないシランカップリング剤。
【0016】
シリコーン(C):シリコーンレジン、ジメチルシリコーン、及びアルキル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1つであって、シリコーン(A)に該当するものを除く。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様のポリエステル合成繊維用第1処理剤含有組成物では、前記ポリエステル合成繊維用第1処理剤と、溶媒とを含有することを要旨とする。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様のポリエステル合成繊維の処理方法では、溶媒に、前記ポリエステル合成繊維用第1処理剤含有組成物と、下記のシリコーン(B)を含有するポリエステル合成繊維用第2処理剤とを添加して得られたポリエステル合成繊維用処理剤の希釈液をポリエステル合成繊維に付与することを要旨とする。
【0018】
シリコーン(B):分子中に、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、エポキシ基を含まないシランカップリング剤。
【0019】
前記ポリエステル合成繊維の処理方法において、更に、前記ポリエステル合成繊維用処理剤の希釈液を付与した繊維を100℃以上200℃以下で熱処理してもよい。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様のポリエステル合成繊維では、前記ポリエステル合成繊維用処理剤が、付着していることを要旨とする。
【0020】
前記ポリエステル合成繊維において、詰め綿に適用されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば安定性、合成繊維用処理剤が付与された繊維の帯電防止性及び柔軟性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下、本発明のポリエステル合成繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、下記に示されるシリコーン(A)、シリコーン(B)、ノニオン界面活性剤、及びアニオン成分を含有する。さらに任意選択で下記に示されるシリコーン(C)を含有してもよい。
【0023】
(シリコーン(A))
本実施形態の処理剤に供されるシリコーン(A)は、数平均分子量が50000以上200000未満であるシラノール変性シリコーンである。シラノール変性シリコーンは、主鎖の末端ケイ素原子に直接、シラノール基とも表現されるヒドロキシ基が結合したポリジメチルシロキサン化合物が適用できる。
【0024】
シラノール変性シリコーンの数平均分子量の下限は、50000以上、好ましくは100000以上である。かかる数平均分子量が50000以上の場合、使用時における処理剤の安定性、特に処理剤をエマルジョン状態にした際の乳化安定性を向上できる。シラノール変性シリコーンの数平均分子量の上限は、200000未満、好ましくは150000以下である。かかる数平均分子量が200000未満の場合、処理剤が付与された繊維の柔軟性を向上できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。尚、シラノール変性シリコーンの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。これらのシリコーン(A)は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0025】
処理剤中において、シリコーン(A)の含有割合の下限は、好ましくは35質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。かかる含有割合が35質量%以上の場合、使用時における処理剤の安定性、特に処理剤をエマルジョン状態にした際の乳化安定性を向上できる。処理剤中において、シリコーン(A)の含有割合の上限は、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。かかる含有割合が97質量%以下の場合、使用時における処理剤の安定性、特に処理剤をエマルジョン状態にした際の乳化安定性を向上できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0026】
(シリコーン(B))
本実施形態の処理剤に供されるシリコーン(B)は、分子中に、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、エポキシ基を含まないシランカップリング剤である。シリコーン(B)により、特に処理剤が付与された繊維の柔軟性を向上できる。シリコーン(B)の具体例としては、例えば3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの中で、シリコーン(B)として分子中にアミノ基を含むシランカップリング剤が好ましい。アミノ基を含むシランカップリング剤の場合、処理剤が付与された繊維の柔軟性を向上できる。
【0027】
これらのシリコーン(B)は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、シリコーン(B)の含有割合の下限は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含有割合が0.5質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維の柔軟性を向上できる。処理剤中において、シリコーン(B)の含有割合の上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。かかる含有割合が30質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維の柔軟性を向上できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0028】
(シリコーン(C))
本実施形態の処理剤に供されるシリコーン(C)は、シリコーンレジン、ジメチルシリコーン、及びアルキル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1つであって、シリコーン(A)に該当するものを除く。シリコーン(C)は、任意選択で処理剤中に含まれてもよい。
【0029】
上記シリコーンレジンとしては、例えばMQシリコーンレジン、MDQシリコーンレジン、Tシリコーンレジン、MTQシリコーンレジン等が挙げられる。
ここで、シリコーンレジンに関して記載したM、D、T、Qについて説明する。これらの表記方法はシリコーンレジンを構成する成分の表記方法として一般的に使用されており、Mとは、1官能性構成単位R1R2R3SiO1/2であり、Dとは、2官能性構成単位R4R5SiO2/2であり、Tとは、3官能性構成単位R6SiO3/2であり、Qとは、4官能性構成単位SiO4/2である。R1~R6は炭素数1~24の炭化水素基、-RaNHRbNH2(式中、RaおよびRbは炭素数2又は3の炭化水素基)や-RcNH2(式中、Rcは炭素数2又は3の炭化水素基)等で示される有機アミノ基、ビニル基、カルビノール基である。
【0030】
上記ジメチルシリコーンとしては、特に制限はないが、25℃における粘度が5mPa・s以上5000mPa・s以下であるものが好ましい。粘度によって規定される公知のジメチルシリコーンを適宜採用できる。
【0031】
上記アルキル変性シリコーンは、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーであるシリコーンオイルの側鎖に-CaH2a+1からなる導入有機基を導入したものが挙げられる。
上記アルキル変性シリコーンとしては、特に制限はないが、25℃における粘度が5mPa・s以上5000mPa・s以下であるものが好ましい。粘度によって規定される公知のアルキル変性シリコーンを適宜採用できる。
【0032】
これらのシリコーン(C)は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中におけるシリコーン(C)の含有割合は、10質量%未満である。シリコーン(C)の含有割合が10質量%未満の場合、使用時における処理剤の安定性、特に処理剤をエマルジョン状態にした際の乳化安定性及び処理剤が付与された繊維の帯電防止性を阻害しない。
【0033】
(ノニオン界面活性剤)
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、アミン化合物としてアルキルアミン類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、カルボン酸類と炭素数3以上6以下の多価アルコール等との部分エステル化合物等が挙げられる。
【0034】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0035】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)レシノール酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0036】
ノニオン界面活性剤の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上60モル以下、より好ましくは3モル以上50モル以下、さらに好ましくは5モル以上20モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中におけるアルコール類又はカルボン酸類1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0037】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0038】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるアルキルアミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0039】
これらのノニオン界面活性剤は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
これらの中で、炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で3モル以上50モル以下付加させた化合物が好ましい。また、炭素数2以上18以下の1価以上4価以下のアルコール1モルに対し、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを合計で5モル以上20モル以下付加させた化合物がより好ましい。これらの化合物により、帯電防止性を向上できる。
【0040】
ノニオン界面活性剤の具体例としては、例えばポリオキシエチレン(6モル:アルキレンオキサイドの付加モル数を示す(以下同じ))ポリオキシプロピレン(2)ドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10)C12-13分岐アルキルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0041】
処理剤中において、ノニオン界面活性剤の含有割合の下限は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含有割合が0.5質量%以上の場合、使用時における処理剤の安定性、特に処理剤をエマルジョン状態にした際の乳化安定性を向上できる。処理剤中において、ノニオン界面活性剤の含有割合の上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。かかる含有割合が30質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維の柔軟性を向上できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0042】
(アニオン成分)
本実施形態の処理剤に供されるアニオン成分としては、陰イオン性化合物を示し、例えば酸、その塩等が挙げられる。アニオン成分により、特に処理剤が付与された繊維の帯電防止性を向上できる。
【0043】
酸としては、例えば無機酸、有機酸、脂肪酸、アルキルスルホン酸、アルキル硫酸、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、脂肪酸の硫酸エステル、油脂の硫酸エステル、それらの塩等が挙げられる。
【0044】
無機酸又はその塩の具体例としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、硫酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0045】
有機酸の具体例としては、例えばクエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルコン酸、グルクロン酸、安息香酸等が挙げられる。
脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、1価の脂肪酸であっても、多価カルボン酸(多塩基酸)であってもよい。
【0046】
飽和脂肪酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等が挙げられる。
【0047】
不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
【0048】
多価カルボン酸(多塩基酸)の具体例としては、例えば(1)コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸、(2)アコニット酸等の三塩基酸、(3)安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、(4)トリメリット酸等の芳香族トリカルボン酸、(5)ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0049】
これらの脂肪酸の中で処理剤が付与された繊維の帯電防止性に優れる観点から炭素数8以上18以下の脂肪酸が好ましい。
アルキルスルホン酸の具体例としては、例えばラウリルスルホン酸(ドデシルスルホン酸)、ミリスチルスルホン酸、セチルスルホン酸、オレイルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、二級アルキルスルホン酸(C13~15)等が挙げられる。
【0050】
アルキル硫酸の具体例としては、例えばラウリル硫酸エステル、オレイル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキル硫酸の具体例としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル等が挙げられる。
【0051】
アルキルリン酸エステルの具体例としては、例えばラウリルリン酸エステル、セチルリン酸エステル、オクチルリン酸エステル、オレイルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル等が挙げられる。
【0052】
ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステルの具体例としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
【0053】
脂肪酸の硫酸エステルの具体例としては、例えばひまし油脂肪酸硫酸エステル、ごま油脂肪酸硫酸エステル、トール油脂肪酸硫酸エステル、大豆油脂肪酸硫酸エステル、なたね油脂肪酸硫酸エステル、パーム油脂肪酸硫酸エステル、豚脂脂肪酸硫酸エステル、牛脂脂肪酸硫酸エステル、鯨油脂肪酸硫酸エステル等が挙げられる。
【0054】
油脂の硫酸エステルの具体例としては、例えばひまし油の硫酸エステル、ごま油の硫酸エステル、トール油の硫酸エステル、大豆油の硫酸エステル、菜種油の硫酸エステル、パーム油の硫酸エステル、豚脂の硫酸エステル、牛脂の硫酸エステル、鯨油の硫酸エステル等が挙げられる。
【0055】
塩としては、例えばアンモニウム塩、アミン塩、金属塩等が挙げられる。金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0056】
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0057】
なお、例えば上述したアニオン成分のうち脂肪酸の金属塩等は、アニオン界面活性剤を構成する。そのためアニオン成分としてアニオン界面活性剤を適用してもよい。
これらのアニオン成分は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0058】
これらの中で、有機酸、アルキルスルホン酸、アルキル硫酸、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、これらの金属塩が好ましい。かかる化合物を使用することにより、帯電防止性を向上できる。また、処理剤の乳化特性に優れる観点からアルキルスルホン酸金属塩、アルキルリン酸エステル金属塩が好ましい。
【0059】
処理剤中において、アニオン成分の含有割合の下限は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含有割合が0.05質量%以上の場合、使用時における処理剤の安定性、特に処理剤をエマルジョン状態にした際の乳化安定性を向上できる。処理剤中において、アニオン成分の含有割合の上限は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。かかる含有割合が35質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維の柔軟性を向上できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0060】
処理剤中において、シリコーン(A)を50質量%以上95質量%以下、シリコーン(B)を1質量%以上25質量%以下、シリコーン(C)を0質量%以上10質量%未満、ノニオン界面活性剤を1質量%以上20質量%以下、及びアニオン成分を0.1質量%以上20質量%以下の割合で含有することが好ましい。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果を向上できる。
【0061】
(保存形態)
処理剤は、シリコーン(A)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及び任意選択でシリコーン(C)を含有するポリエステル合成繊維用第1処理剤(以下、「第1処理剤」という)と、シリコーン(B)を含有するポリエステル合成繊維用第2処理剤(以下、「第2処理剤」という)とを含むセットとして構成されてもよい。第1処理剤は、該第1処理剤及び第2処理剤が混合された混合物中においてシリコーン(C)の含有割合が10質量%未満となるように含有している。処理剤は、保存時又は流通時等において第1処理剤と、第1処理剤とは別剤として構成される第2処理剤とから構成されている。処理剤は、使用時に第1処理剤と第2処理剤とが混合された混合物が調製される。
【0062】
(溶媒)
本実施形態の処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル合成繊維用処理剤含有組成物(以下、「処理剤含有組成物」という)を調製し、処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0063】
溶媒は、大気圧における沸点が105℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中で、各成分の分散性又は溶解性に優れる観点から水、低級アルコール等の極性溶媒が好ましく、ハンドリング性に優れる観点から水がより好ましい。
【0064】
処理剤含有組成物中において、処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、処理剤を10質量部以上80質量部以下で含有することが好ましい。
上記第1実施形態の処理剤の効果について説明する。
【0065】
(1-1)上記第1実施形態の処理剤では、所定のシリコーン、ノニオン界面活性剤、及びアニオン成分を含有する。したがって、処理剤の安定性、特に処理剤をエマルジョン状態にした際の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維の帯電防止性、柔軟性、及び嵩高性を向上できる。
【0066】
(1-2)上記第1実施形態の処理剤では、シリコーン(A)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及び任意選択でシリコーン(C)を含有する第1処理剤と、シリコーン(B)を含有する第2処理剤とを含むセットとして構成されてもよい。かかる構成により、処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。
【0067】
<第2実施形態>
次に、本発明の第1処理剤を具体化した第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0068】
本実施形態の第1処理剤では、シリコーン(A)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及び任意選択でシリコーン(C)を含有する。第1処理剤は、使用時にシリコーン(B)を含有する第2処理剤と併用される。シリコーン(A)、シリコーン(B)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及びシリコーン(C)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。第1処理剤は、使用時における混合物中、つまり第1処理剤及び第2処理剤が混合された混合物中においてシリコーン(C)の含有割合が10質量%未満となるように含有する。
【0069】
(溶媒)
本実施形態の第1処理剤は、必要により溶媒と混合することによりポリエステル合成繊維用第1処理剤含有組成物(以下、「第1処理剤含有組成物」という)が調製され、第1処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0070】
溶媒は、第1実施形態で例示したものを採用できる。第1処理剤含有組成物中において、第1処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を10質量部以上80質量部以下で含有することが好ましい。
【0071】
上記第2実施形態の第1処理剤の効果について説明する。上記第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)第2実施形態の第1処理剤では、シリコーン(A)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及び任意選択でシリコーン(C)を含有し、使用時にシリコーン(B)を含有する第2処理剤と併用される。したがって、第1処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、第1処理剤のみを第2処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0072】
<参考実施形態>
次に、第2処理剤を具体化した参考実施形態を説明する。以下、第1,2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
本実施形態の第2処理剤では、シリコーン(B)を含有する。第2処理剤は、使用時にシリコーン(A)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及び任意選択でシリコーン(C)を含有する第1処理剤と併用される。シリコーン(A)、シリコーン(B)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及びシリコーン(C)は、第1実施形態において説明した各成分と同一である。第1処理剤は、使用時における混合物中、つまり第1処理剤及び第2処理剤が混合された混合物中においてシリコーン(C)の含有割合が10質量%未満となるように含有する。
【0074】
上記参考実施形態の第2処理剤の効果について説明する。参考実施形態では、第1,2実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)参考実施形態の第2処理剤では、シリコーン(B)を含有する。そして、使用時にシリコーン(A)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及び任意選択でシリコーン(C)を含有する第1処理剤と併用される。したがって、第2処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第1処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、第2処理剤のみを第1処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0075】
<第4実施形態>
次に、本発明のポリエステル合成繊維の処理方法(以下、「繊維の処理方法」という)を具体化した第4実施形態を説明する。
【0076】
本実施形態の繊維の処理方法では、溶媒と、第2実施形態の第1処理剤と、参考実施形態の第2処理剤とを含む処理剤の希釈液をポリエステル合成繊維に付与することを特徴とする。溶媒としては、第1実施形態で例示したものが挙げられる。希釈液は、操作性等の観点から不揮発分濃度0.01質量%以上10質量%以下が好ましい。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0077】
希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤を添加する方法が挙げられる。希釈液は、溶媒に第2実施形態の第1処理剤含有組成物と、参考実施形態の第2処理剤とを添加して調製されることが好ましい。第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、第1処理剤と第2処理剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な繊維特性又は繊維製造特性を付与するための処理剤又は希釈液を調製することが容易になる。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=99.5/0.5~70/30であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。
【0078】
処理剤を乳化するために、各処理剤又は組成物と溶媒を混合し、公知の撹拌機、例えばホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、ラインミキサー等を用いて撹拌してもよい。
【0079】
繊維の処理方法は、上記のように得られた希釈液を、例えば紡糸又は延伸工程等からなる紡績糸製造工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。
希釈液が付与される繊維としては、ポリエステル合成繊維が挙げられる。ポリエステル合成繊維の具体例としては例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等が挙げられる。
【0080】
繊維の用途は、特に限定されず、例えば詰め綿、短繊維、長繊維、紡績糸、不織布等が挙げられる。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下である。これらの中で、本発明の希釈液は、詰め綿用のポリエステル合成繊維に適用されることが好ましい。詰め綿用のポリエステル合成繊維に適用されることにより、例えばぬいぐるみ、布団、衣類等の詰め綿に平滑性等の風合いを付与できる。
【0081】
希釈液を繊維に付着させる割合に特に制限はないが、希釈液を繊維に対し、最終的に固形分が好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下の割合となるよう付着させる。かかる構成により、各成分による効能を有効に発揮できる。また、希釈液を付着させる方法は、特に制限はなく、繊維の種類、形態、用途等により公知の方法、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等を採用できる。浸漬給油法が用いられる場合、浸漬時間は好ましくは1分以上5分以下である。
【0082】
希釈液が付与された繊維は、公知の方法を用いて乾燥又は加熱処理してもよい。乾燥又は加熱処理により水等の溶媒が揮発され、第1処理剤及び第2処理剤中に含有される成分が付着している繊維が得られる。
【0083】
加熱処理は、繊維表面にシリコーン被膜を形成するために行われる。加熱処理は、好ましくは100℃以上200℃以下の条件下で行われる。加熱時間は、処理温度等により適宜設定されるが、好ましくは1分以上20分以下であり、より好ましくは1分以上15分以下である。かかる加熱処理により、シリコーン(A)とシリコーン(B)との反応を促進させ、繊維上に架橋高分子化合物からなるシリコーン被膜が形成される。
【0084】
第4実施形態の繊維の処理方法の効果について説明する。第4実施形態では、第1~3実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(4-1)第4実施形態の繊維の処理方法では、希釈液を、例えば紡糸又は延伸工程等の紡績糸製造工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。特に、溶媒に第2実施形態の第1処理剤又は第1処理剤含有組成物と、参考実施形態の第2処理剤とを添加して調製した希釈液の場合、乳化安定性に優れる希釈液が得られる。したがって、各成分による詰め綿、短繊維、長繊維、紡績糸、不織布等に対する効能を有効に発揮できる。
【0085】
(4-2)第4実施形態の繊維の処理方法では、処理剤の希釈液を付与した繊維を100℃以上200℃以下で熱処理してもよい。かかる加熱処理により、シリコーン(A)とシリコーン(B)との反応を促進させ、繊維上に架橋高分子化合物からなるシリコーン被膜が形成される。それにより、より耐久性のある被膜が形成され、繊維の柔軟性を向上できる。
【0086】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤の希釈液の調製方法は特に限定されず、第4実施形態の繊維の処理方法欄に記載の調製方法以外を採用してもよい。例えば、上述した各シリコーン、ノニオン界面活性剤、及びアニオン成分を混合した後、溶媒と混合してもよい。
【0087】
・上記実施形態の各処理剤、各組成物、又は希釈液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、各処理剤、各組成物、又は希釈液の品質保持のため、その他成分として、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機酸、上記以外の界面活性剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。なお、溶媒以外の通常処理剤に用いられるその他の成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から各処理剤中において10質量%以下が好ましい。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0089】
試験区分1(処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、シリコーン(A)としてシラノール変性シリコーン(数平均分子量:100000)(A-1)75部(%)、シリコーン(B)として3-アミノプロピルトリエトキシシラン(官能基:アミノ基、メトキシ基)(B-1)5部(%)、ノニオン界面活性剤としてポリオキシエチレン(6)ポリオキシプロピレン(2)ドデシルエーテル(D-1)10部(%)、アニオン成分としてオクチルリン酸エステルカリウム塩(E-2)9部(%)及びオレイン酸(E-4)1部(%)を含む実施例1の処理剤を調製した。
【0090】
(実施例2~35、比較例1~12)
実施例2~35、比較例1~12の処理剤は、実施例1の処理剤と同様にしてシリコーン(A)、シリコーン(B)、シリコーン(C)、ノニオン界面活性剤、及びアニオン成分を表1に示した割合で含むように調製した。
【0091】
シリコーン(A)の種類と含有量、シリコーン(B)の種類と含有量、シリコーン(C)の種類と含有量、ノニオン界面活性剤の種類と含有量、アニオン成分の種類と含有量を、表1の「シリコーン(A)」欄、「シリコーン(B)」欄、「シリコーン(C)」欄、「ノニオン界面活性剤」欄、「アニオン成分」欄にそれぞれ示す。
【0092】
【表1】
表1に記載するシリコーン(A)、シリコーン(B)、シリコーン(C)、ノニオン界面活性剤、及びアニオン成分の詳細は以下のとおりである。
【0093】
(シリコーン(A))
A-1:シラノール変性シリコーン(数平均分子量:100000)
A-2:シラノール変性シリコーン(数平均分子量:120000)
A-3:シラノール変性シリコーン(数平均分子量:150000)
A-4:シラノール変性シリコーン(数平均分子量:60000)
A-5:シラノール変性シリコーン(数平均分子量:180000)
a-1:シラノール変性シリコーン(数平均分子量:250000)
a-2:シラノール変性シリコーン(数平均分子量:20000)
(シリコーン(B))
B-1:3-アミノプロピルトリエトキシシラン(官能基:アミノ基、メトキシ基)
B-2:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(官能基:アミノ基、メトキシ基)
B-3:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(官能基:アミノ基、メトキシ基)
B-4:メチルトリメトキシシラン(官能基:メトキシ基)
B-5:メチルトリエトキシシラン(官能基:エトキシ基)
B-6:3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(官能基:イソシアネート基、エトキシ基)
b-1:3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(官能基:エポキシ基、メトキシ基)
(シリコーン(C))
C-1:ポリジメチルシロキサン(粘度:1000mPa・s)
C-2:アルキル変性シリコーン(粘度:500mPa・s)
C-3:シリコーンレジン(MQタイプ)(常温固体)
(ノニオン界面活性剤)
D-1:ポリオキシエチレン(6)ポリオキシプロピレン(2)ドデシルエーテル
D-2:ポリオキシエチレン(10)C12-13分岐アルキルエーテル
D-3:ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート
D-4:ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油
(アニオン成分)
E-1:ドデシルスルホン酸ナトリウム塩
E-2:オクチルリン酸エステルカリウム塩
E-3:ポリオキシエチレン(3)ドデシル硫酸ナトリウム塩
E-4:オレイン酸
E-5:酢酸
試験区分2(乳化性)
試験区分1において調製された各処理剤を、イオン交換水を用いて希釈し、不揮発分の濃度1.0%の希釈液(エマルジョン)を調製した。かかる希釈液を用いて安定性としての乳化性を評価した。
【0094】
各処理剤の希釈液を20℃、60%RHの条件下、波長750nmでの光透過率(%)を測定した。測定装置は島津製作所社製の分光光度計UV-1800 SPECTROPHOTOMETERを使用した。以下の基準で希釈液の乳化性を評価した。結果を表1の「乳化性」欄に示す。
【0095】
・乳化性の評価基準
◎(良好):分離がなく、光透過率が50%以上の場合
〇(可):分離がなく、光透過率が30%以上50%未満の場合
×(不良):分離がある場合
試験区分3(柔軟性)
一般的にクッションの詰め綿、布団等に使用される7デニール、カット長32mmのポリエステル合成繊維の綿を評価に用いた。ポリエステル合成繊維を製造する際に使用される潤滑剤等の影響を取り除くため、最初に40℃の温水で洗濯操作を行い、80℃で2時間乾燥させた後に評価を行った。
【0096】
試験区分1において調製された各例の処理剤を有効成分濃度12.5%となるように希釈し、エマルジョン形態の希釈液を調製した。ポリエステル合成繊維の綿100gに対してエマルジョン2.4gを均一にスプレーした。その後、150℃で10分間熱処理(乾燥処理)し、評価用の試料綿とした。処理剤は、綿100gに対して0.3g付着している。
【0097】
・柔軟性の評価
乾燥後の試料綿の柔軟性を、繊維の風合い評価の熟練者5名で下記の基準で点数づけし、5人の平均点を四捨五入により有効数字2桁で算出した。算出された平均点に基づき、以下の基準で柔軟性を評価した。結果を表1の「柔軟性」欄に示す。
【0098】
1点:処理剤を付着させていないポリエステル合成繊維の綿と同等程度の柔軟性を有している場合
2点:処理剤を付着させていないポリエステル合成繊維の綿より柔軟性が感じられる場合
3点:処理剤を付着させていないポリエステル合成繊維の綿より、大きく柔軟性が感じられる場合
◎(良好):5人の平均点が2.5点以上
〇(可):5人の平均点が2.0点以上2.5点未満
×(不良):5人の平均点が2.0点未満
試験区分4(帯電防止性)
試験区分3において調製された各処理剤が付着された試料綿5gを、20℃で相対湿度45%の恒温室内にて24時間調湿した。その後、公知の抵抗測定装置を用いて、ポリエステル合成繊維の電気抵抗を測定し、下記の評価基準で評価した。結果を表1の「帯電防止性」欄に示す。
【0099】
・帯電防止性の評価基準
◎(良好):表面抵抗が1.0×1011Ω未満
〇(可):表面抵抗が1.0×1011Ω以上1.0×1012Ω未満
×(不良):表面抵抗が1.0×1012Ω以上
試験区分5(嵩高性)
圧縮弾性回復率を測定することにより、嵩高性を評価した。圧縮弾性回復率は、JIS
L 2001に類似した試験方法により計測した。
【0100】
試験区分3において調製された各処理剤が付着された試料綿40gを、ローラーカード機にかけることで30cm×100cmの処理剤が付着したウェブを作成した。このウェブを15cm×15cmに切り出した生地を4枚用意した。生地を繊維方向が互いに直交するように4枚重ね合わせて直方体を作成した。
【0101】
20℃、40%RHで30分間静置したのち、直方体上に15cm×15cmの金属板(135g)をのせ、1分後の直方体の高さ(h1)を0.1cm単位で記録した。さらに、1125gの重りを金属板上に乗せ、24時間静置したのちに高さ(h2)を記録し、取り除いた。重りを取り除いてから1分後の直方体の高さ(h3)を記録した。
【0102】
次の式により回復率を計算した。
回復率(%)=100×(h3-h2)/(h1-h2)
回復率が高いほど試験綿の嵩高性が良好と判断した。
【0103】
◎(良好):回復率(%)が80%以上
〇(可):回復率(%)が50%以上80%未満
×(不良):回復率(%)が50%未満
試験区分6(第1処理剤の調製)
(第1処理剤(P-1))
シリコーン(A)としてシラノール変性シリコーン(数平均分子量:100000)(A-1)80部(%)、シリコーン(C)としてポリジメチルシロキサン(粘度:1000mPa・s)5部(%)、ノニオン界面活性剤としてポリオキシエチレン(6)ポリオキシプロピレン(2)ドデシルエーテル(D-1)10部(%)、アニオン成分としてドデシルスルホン酸ナトリウム塩(E-1)5部(%)を含む第1処理剤(P-1)を調製した。
【0104】
(第1処理剤P-2~P-14)
第1処理剤P-2~P-14は、第1処理剤(P-1)と同様にしてシリコーン(A)、シリコーン(C)、ノニオン界面活性剤、及びアニオン成分を表2に示した割合で含むように調製した。
【0105】
シリコーン(A)の種類と含有量、シリコーン(C)の種類と含有量、ノニオン界面活性剤の種類と含有量、アニオン成分の種類と含有量を、表2の「シリコーン(A)」欄、「シリコーン(C)」欄、「ノニオン界面活性剤」欄、「アニオン成分」欄にそれぞれ示す。
【0106】
【表2】
試験区分7(第2処理剤の調製)
(第2処理剤(S-1))
第2処理剤(S-1)は、シリコーン(B)として3-アミノプロピルトリエトキシシラン(官能基:アミノ基、メトキシ基)(B-1)100部(%)を含むようにした。
【0107】
(第2処理剤S-2~S-6)
第2処理剤S-2~S-6は、シリコーン(B)を表3に示した割合で含むように調製した。シリコーン(B)の種類と含有量を、表3の「シリコーン(B)」欄に示す。
【0108】
【表3】
試験区分8(製剤安定性の評価)
・第1処理剤の製剤安定性評価
各第1処理剤へイオン交換水を加えて濃度を40%に調整し、ホモジナイザーにより乳化させ、乳化液(第1処理剤含有組成物)を調製した。得られた乳化液を20℃、60%RHの恒温室内にて24時間温調した。外観を目視で判断し、以下の基準により評価した。結果を表2の「製剤安定性」欄に示す。
【0109】
・第2処理剤の製剤安定性評価
各第2処理剤を20℃、60%RHの恒温室内にて24時間温調した。外観を目視で判断し、以下の基準により評価した。結果を表3の「製剤安定性」欄に示す。
【0110】
・製剤安定性の評価基準(第1処理剤及び第2処理剤)
◎(良好):分離なしの場合
×(不可):分離している場合
試験区分9(第1処理剤と第2処理剤から処理剤の調製)
(実施例36)
表4に示される第1処理剤(P-1)95%(部)、及び第2処理剤(S-1)5%(部)を混合して実施例36の処理剤を調製した。
【0111】
(実施例37~54)
実施例36と同様にして、表4に示される第1処理剤と第2処理剤とを混合して各例の処理剤を調製した。第1処理剤の種類と質量比、第2処理剤の種類と質量比を、表4の「第1処理剤」欄、「第2処理剤」欄にそれぞれ示す。
【0112】
得られた各例の処理剤を用いて、実施例1と同様の方法にて乳化性、帯電防止性、柔軟性、嵩高性について評価した。結果を表4の「乳化性」欄、「帯電防止性」欄、「柔軟性」欄、「嵩高性」欄にそれぞれ示す。
【0113】
【表4】
表1の比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤は、乳化性を向上できる。また処理剤が付与された繊維は、帯電防止性、柔軟性、及び嵩高性を向上できる。また、本発明の第1処理剤及び第2処理剤は、製剤安定性を向上できる。
【要約】
【課題】安定性、帯電防止性、及び柔軟性の向上という各効能の両立を図ることができるポリエステル合成繊維用処理剤等を提供する。
【解決手段】本発明は、所定のシリコーン(A)、所定のシリコーン(B)、ノニオン界面活性剤、アニオン成分、及び任意選択で所定のシリコーン(C)を含有するポリエステル合成繊維用処理剤であって、前記ポリエステル合成繊維用処理剤中のシリコーン(C)の含有割合が10質量%未満であることを特徴とする。
【選択図】なし