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  • 特許-凹凸基材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】凹凸基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/02 20060101AFI20220912BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B28B3/02 J
E04F13/14 102C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018014139
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019130742
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 優
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172208(JP,A)
【文献】特開2003-027694(JP,A)
【文献】特開2002-052520(JP,A)
【文献】特開2017-141603(JP,A)
【文献】特開平09-263468(JP,A)
【文献】特開2002-103319(JP,A)
【文献】特開昭57-036607(JP,A)
【文献】特開平09-169015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/02-3/10
B28B 7/16-7/18
E04F 13/14-13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化の水硬性材料からなる無機質板の表面に凹凸型を押圧することにより、表面に凹凸柄が形成された凹凸基材を製造する方法であって、
前記凹凸型は、前記凹凸柄を構成する凹部を形成するための成形凸部と、前記凹凸柄を構成する凸部を形成するための成形凹部と、前記凸部に傾斜凹部を形成するための成形傾斜凸部と、を有し、前記凹部の底面にシボを形成するための成形シボが前記成形凸部の頂面に設けられており、
前記凹凸基材は、前記未硬化の水硬性材料の硬化物で形成され、前記凹凸柄を構成する前記凸部には前記傾斜凹部が設けられており、
前記傾斜凹部は、該傾斜凹部の短手方向一方側に前記凹部の前記底面に向かって下り傾斜した底面と、該傾斜凹部の該下り傾斜した底面の長手方向両側端から前記凹凸基材の表側に立ち上がる一対の側面と、を備え、
前記凹凸柄を構成する前記凹部の前記底面に形成される前記シボは、前記凹部の前記底面における前記傾斜凹部に対応する位置に形成されている、
凹凸基材の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記シボは、直径0.3mm以上1.0mm以下の複数の突起で形成されている
凹凸基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸基材の製造方法に関する。詳しくは、外壁材などの建材として使用可能な凹凸基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、未硬化の水硬性材料からなる平板状のセメント板の表面に凹凸型を押し付けて成形し、表面に凹凸柄を有する凹凸基材を製造することが行われている。この場合、成形時に、凹凸型の方にセメント板を真空吸引することにより、凹凸をシャープに形成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-103319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、柄深さ(凹凸の高低差)の大きい凹凸柄の場合、成形時の水硬性材料の移動変位が大きくなり、凹部の底面に亀裂が生じやすいという問題があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、凹部の底面に生じた亀裂が目立ち難い凹凸基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る凹凸基材の製造方法は、未硬化の水硬性材料からなる無機質板の表面に凹凸型を押圧することにより、表面に凹凸柄が形成された凹凸基材を製造する方法であって、前記凹凸型は、前記凹凸柄を構成する凹部を形成するための成形凸部と、前記凹凸柄を構成する凸部を形成するための成形凹部と、前記凸部に傾斜凹部を形成するための成形傾斜凸部と、を有し、前記凹部の底面にシボを形成するための成形シボが前記成形凸部の頂面に設けられており、前記凹凸基材は、前記未硬化の水硬性材料の硬化物で形成され、前記凹凸柄を構成する前記凸部には前記傾斜凹部が設けられており、前記傾斜凹部は、該傾斜凹部の短手方向一方側に前記凹部の前記底面に向かって下り傾斜した底面と、該傾斜凹部の該下り傾斜した底面の長手方向両側端から前記凹凸基材の表側に立ち上がる一対の側面と、を備え、前記凹凸柄を構成する前記凹部の前記底面に形成される前記シボは、前記凹部の前記底面における前記傾斜凹部に対応する位置に形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、成形時に生じた亀裂とシボとの見分けがつきにくくなり、凹部の底面に生じた亀裂が目立ち難い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、本発明に係る凹凸基材の一実施の形態を示す正面図である。図1Bは、本発明に係る凹凸基材の一実施の形態を示す斜視図である。
図2図2Aは、本発明に係る凹凸基材の一実施の形態の一部を示す断面図である。図2Bは、本発明に係る凹凸基材の一実施の形態の角部を示す拡大断面図である。
図3図3は、本発明に係る凹凸基材の製造方法の一実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
[凹凸基材]
本実施の形態の凹凸基材100は、図1A及び図1Bに示すように、表面に凹凸柄を有している。凹凸柄は複数の凹部10と複数の凸部20とを備えて形成されている。各凹部10及び各凸部20は凹凸基材100の長手方向に延びるように形成されている。また凹部10と凸部20は凹凸基材100の短手方向に交互に並んで形成されている。なお、以下では、凹凸基材100の長手方向及び短手方向をそれぞれ単に「長手方向」、「短手方向」と称する。
【0012】
さらに凸部20には複数の傾斜凹部30が設けられている。長手方向に細長い凸条の凸部20は、複数の平面視略矩形状の凸部分40と、傾斜凹部30と、によって構成されている。傾斜凹部30は、短手方向一方側に底面11に向かって下り傾斜した底面31と、この底面31の長手方向両側端から凹凸基材100の表側に立ち上がる一対の側面32と、を備えている。そして、底面31の底面11側端部から側面32に亘って角度が急峻となっており、ほぼ垂直になっている。そうして、凸部分40の傾斜凹部30側の角部が急峻となっている。
【0013】
また、凹凸基材100の表面には、一対の傾斜凹部30a、30bが隣接した部分がある。この場合、一方の傾斜凹部30aの底面31aが短手方向一方側に下り傾斜している一方、他方の傾斜凹部30bの底面31bが短手方向他方側に下り傾斜している。これら両傾斜凹部30a、30bの境界には、一方の傾斜凹部30aの底面31aから立ち上がる側面32aと、他方の傾斜凹部30bの底面31bから立ち上がる側面32bと、が形成されており、それぞれ、凸部20の短手方向中央まで形成されている。
【0014】
図2に示すように、凹部10は平坦な底面11とその両側から立ち上がる側面12とを備えて形成されている。そして、凹部10の底面11にはシボ13が形成されている。シボ13は底面11の全面にわたって形成されていても良いし、底面11の一部に設けてもよい。特に、底面11の傾斜凹部30に対応する位置においては、成形時の水硬性材料の流れが複雑になるため、底面11に亀裂が生じやすいが、シボ13を形成することにより亀裂を目立ちにくくすることができる。シボ13の形状や大きさは特に限定されないが、例えば、直径0.3mm以上1.0mm以下の微細な多数の突起で形成することができる。
【0015】
また図2Bに示すように、凹部10の底面11と側面12との間の角部14は曲面状(凹曲面状)に形成されている。これにより、成形時の水硬性材料の流れがスムーズになって、角部14に亀裂が生じにくくなる。角部14は曲率半径が0.5mm以上1.5mm以下とすることができるが、これに限定されるものではない。曲面状の角部14は凹部10の長手方向の全長にわたって形成しても良いし、凹部10の長手方向の一部に形成しても良い。また凹部10の底面11と側面12とのなす角度θは、30°以上87°以下が好ましい。
【0016】
[凹凸基材の製造方法]
凹凸基材100は、無機質板の表面に凹凸型を押圧することにより形成される。無機質板は未硬化の水硬性材料で形成されている。未硬化の水硬性材料は、セメントや骨材や補強繊維及び水などを含有する成形材料である。無機質板は未硬化の水硬性材料を押出成形法や抄造法などで板状に成形することにより形成される。無機質板はコア部とスキン部とを有して形成することができる。コア部は無機質板の中心部を形成する部分であり、スキン部は無機質板の表面を形成する部分である。従って、コア部の全面はスキン部によって覆われている。コア部の比重はスキン部の比重よりも小さく形成されている。例えば、コア部に気泡や空隙や中空孔などを設け、スキン部に気泡や空隙や中空孔などを設けないようにして、コア部の比重をスキン部の比重よりも小さくすることができる。従って、単位面積あたりの重量や強度をほとんど変えることがなく、無機質板を厚く形成することができ、この結果、表面に高低差の大きい(深い)凹凸柄を形成することが可能となる。例えば、単一の材料で形成された無機質板に6mmの凹部を形成できる場合、同じ厚みでコア部とスキン部とを備えた無機質板では9~12mmの凹部を形成することができる。
【0017】
図3に示すように、凹凸型200は、凹部10を形成するための成形凸部210と、凸部20を形成するための成形凹部220と、傾斜凹部30を形成するための成形傾斜凸部(図示省略)とを備えている。成形凸部210の頂面211は凹部10の底面11を成形する。従って、頂面211にはシボ13に対応する成形シボ213が設けられている。また成形凸部210の頂面211と側面212の角部214は凹部10の底面11と側面12との角部14を成形する。従って、頂面211と側面212の角部214は、底面11と側面12との角部14の曲面状に対応するような曲面状(凸曲面状)に形成されている。
【0018】
そして、無機質板300の表面に凹凸型200を押圧することにより、平坦な無機質板300の表面に凹凸柄が形成される。このとき、凹凸型200を通じて無機質板300を真空吸引することにより、無機質板300が凹凸型200に密着しやすくなり、鮮明な(シャープな)凹凸柄が形成しやすくなる。このようにして凹凸柄を成形した後、脱型し、成形後の無機質板300を養生硬化することにより、凹凸基材100が形成される。
【0019】
[本実施形態の特徴]
本実施の形態の凹凸基材100は、水硬性材料の硬化物で形成され、表面に凹凸柄が形成された凹凸基材100である。凹凸基材100は、凹凸柄を構成する凹部10の底面11にシボ13が形成されている。
【0020】
このような凹凸基材100は、成形時に生じた亀裂とシボとの見分けがつきにくくなり、凹部の底面に生じた亀裂が目立ち難い。
【0021】
本実施の形態において、シボ13は、直径0.3mm以上1.0mm以下の複数の突起で形成されていることが好ましい。
【0022】
このような凹凸基材100は、成形時に生じた亀裂とシボとがさらに見分けにくくなり、凹部の底面に生じた亀裂がより目立ち難い。
【0023】
本実施の形態の凹凸基材100の製造方法は、未硬化の水硬性材料からなる無機質板300の表面に凹凸型200を押圧することにより、表面に凹凸柄が形成された凹凸基材100を製造する方法である。凹凸型200は、凹凸柄を構成する凹部10を形成するための成形凸部210を有する。凹部10の底面11にシボ13を形成するための成形シボ213が成形凸部210の頂面211に設けられている。
【0024】
このような凹凸基材100の製造方法は、成形時に生じた亀裂とシボとの見分けがつきにくくなり、凹部の底面に生じた亀裂が目立ち難い。
【符号の説明】
【0025】
10 凹部
11 底面
13 シボ
100 凹凸基材
200 凹凸型
210 成形凸部
211 頂面
図1
図2
図3