(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】官能化されたクロマトグラフィー媒体を用いたウイルス生成物を回収するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C12N 7/02 20060101AFI20220912BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20220912BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20220912BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20220912BHJP
G01N 30/96 20060101ALI20220912BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20220912BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20220912BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220912BHJP
【FI】
C12N7/02
B01J20/281 G
B01J20/281 X
G01N30/26 A
G01N30/88 E
G01N30/96 A
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/113 Z
(21)【出願番号】P 2019500819
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(86)【国際出願番号】 GB2017052084
(87)【国際公開番号】W WO2018011599
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-14
(32)【優先日】2016-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516106689
【氏名又は名称】ピュリディファイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】スカンロン・イアン
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/052460(WO,A1)
【文献】特表2006-528886(JP,A)
【文献】特開2010-193720(JP,A)
【文献】特開2007-117003(JP,A)
【文献】特表2012-529917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N7/
C12N15/
C07K1/
G01N30/
B01J20/
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス生成物を前記生成物および生成物関連不純物を含む組成物から回収するためのプロセスであって、前記プロセスは、前記組成物を、1または複数の高分子ナノファイバーを含む、官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させるステップを含み、
前記ウイルス生成物は、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコア、またはプロウイルスを含み、その各々は1または複数のポリヌクレオチドを含有し、かつ
前記生成物関連不純物は、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスを含み、その各々が完全なウイルスゲノムを欠いており、
i)前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、
700μmol/g~
900μmol/gの官能化されたクロマトグラフィー媒体中のトリメチルアンモニウム配位基の密度を有する;
ii)前記ウイルスが、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスから選択される;ならびに
iii)前記組成物が、導電率が
6mS/cm未満となるような溶解塩濃度を有する、
プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、
a)前記ウイルス生成物が、複数のウイルス、ウイルス粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、外膜が除去されたウイルスコア、またはプロウイルスを含み、その各々が細胞に感染する能力を有し;
b)前記生成物関連不純物が、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスを含み、その各々が細胞に感染する能力を有し;ならびに/あるいは
c)前記生成物関連不純物が、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスを含み、その各々が完全なウイルスゲノムを欠き;
d)前記ウイルス生成物が、各々が1または複数のトランスジェニックポリヌクレオチドを含有する複数のウイルスベクターを含む;ならびに/あるいは
e)前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、1または複数の不織布高分子ナノファイバーで形成されている、プロセス。
【請求項3】
前記1または複数の高分子ナノファイバーが、同じであっても異なっていてもよい1または複数の配位基で官能化されていて、それが、前記1または複数の配位基を含む前記高分子ナノファイバーをクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記1または複数の高分子ナノファイバーが、同じであっても異なってもよく、それと共有結合していて、1または複数のポリマー鎖および1または複数の配位基を含む、前記1または複数の高分子ナノファイバーをクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする、1または複数のポリマー鎖を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
a)前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、イオン交換、疎水性相互作用および混合モード法からなる群から選択されるクロマトグラフィー法での使用に適している;
c)前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、最大50mg/mL(10%破過)の動的結合容量を有する;
e)前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、膜またはシートの形態である;
f)前記組成物が、1分以下の期間、前記官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触する;
g)前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、1または複数の荷電基で官能化されている;
h)前記1または複数のポリヌクレオチドが、DNAおよびsiRNAを含むRNAから選択される1または複数の核酸である;ならびに/あるいは
i)前記生成物関連不純物が二次生成物として回収される、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が膜またはシートの形態であり、前記組成物が1または複数の前記膜もしくはシートおよび/または1または複数のフリットまたはその他のスペーサー材料を含むホルダーを通過し、
前記組成物が、(a)前記1または複数の膜/シートを通る経路長が2mm未満であり、または(b)膜、シート、フリットおよびその他のスペーサー材料を通る総経路長が50mm未満であるように、前記ホルダーを通過する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
(i)前記組成物を前記官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させるステップと;
(ii)前記官能化されたクロマトグラフィー媒体を増加するイオン強度の液相と接触させることによって、前記ウイルス生成物および前記生成物関連不純物を選択的に溶出するステップと
を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
(i)前記組成物を含む溶液を前記官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させるステップと;
(ii)ステップ(i)で前記官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させた、前記ウイルス生成物を含む前記溶液を回収するステップと
を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記高分子ナノファイバーがセルロースナノファイバーである、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
ウイルス生成物を前記生成物および非生成物関連不純物を含む組成物から回収するためのプロセスであって、組成物を、1または複数の高分子ナノファイバーを含む官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させることを含み、
前記ウイルス生成物は、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコア、またはプロウイルスを含み、その各々は1または複数のポリヌクレオチドを含有し、かつ
前記非生成物関連不純物は、細胞および/または細胞成分を含み、
i)前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、
700μmol/g~
900μmol/gの官能化されたクロマトグラフィー媒体中のトリメチルアンモニウム配位基の密度を有する;
ii)前記ウイルスが、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスから選択される;ならびに
iii)前記組成物が、導電率が
6mS/cm未満となるような溶解塩濃度を有する、
プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス生成物(一般に充填されたウイルスベクター)を、ウイルス生成物と生成物関連不純物(一般に充填されていないウイルス)の両方を含む組成物から回収するためのプロセスに関する。このプロセスは、組成物と、1または複数の高分子ナノファイバーを含む官能化されたクロマトグラフィー媒体とを接触させることを含む。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジー市場は、世界の製薬市場で最も急成長している部門であり、2012年の全市場売上高の20%(1530億ドル)を占めている。これは2002年の市場シェアの10%から増加し、2012年から2018年の間に1530億ドルから2150億ドルに41%増加すると見込まれている。
【0003】
今後成長する可能性が大いにある1つの分野が遺伝子治療である。そのような治療方法は、遺伝性の遺伝的欠陥を修正するか、または細胞をエクスビボまたはインビボで操作して癌(Davila et al.,2014)、血友病(Nathwani et al.,2014)およびパーキンソン病(Kaplitt et al.)などの疾患を治療する可能性がある。
【0004】
遺伝子治療の方法では、目的の遺伝子を細胞に送達するには、ベクターの使用を必要とする。臨床用途用に開発されている多くのそのようなベクターは、アデノウイルス(AdV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)およびレンチウイルス(LV)などの組換えウイルスから誘導される。遺伝子治療においてベクターの目的は、核酸配列(DNAまたはRNA)を細胞に送達し、そこで細胞の生化学機構によってプロセシングを受けて細胞の性質を変化させて所望の治療効果を得ることである。
【0005】
ベクター材料は、一般に、ベクターの構成要素、例えばその外被またはカプシド、および細胞に送達されることを目的とする核酸材料を産生するように改変された細胞株から生成される。ベクター作製プロセスの間に、核酸配列をベクターに組み込んで「充填(packed)」または「フル」ベクターを形成する必要がある。「活性」または「感染性」ベクターは、標的細胞にうまく感染して核酸配列の発現をもたらすことのできる「充填」ベクターである。核酸材料を本質的に欠く「空」または「非充填(unpacked)」ベクターも、典型的なベクター作製プロセスで作製される。したがって、ベクターの作製の間に上記の変異体の混合物を含有する混合集団が生成される。
【0006】
充填ベクターの空ベクターからの分離は、一般に、実験室規模で、密度差を分離に利用する密度勾配遠心分離、例としてCsCl(Vellekamp et al.,2001)またイオジキサノール勾配(Martin Lock et al.,2010)を用いて実施されている。しかし、そのような方法はスケールアップに現実的な課題をもたらすので、大きい患者集団を治療するための工業規模の精製には適していない。そのため、本質的によりスケーラブルであるという理由で、特定のクロマトグラフィー分離方法が適用されてきた。
【0007】
フルAAVベクターを空ベクターから分離するために、いくつかの市販の多孔質ビーズに基づく系がイオン交換分離(Urabe et al.,2006)、(Qu et al.,2007)に使用されている。陰イオン交換官能基を有するモノリスを使用する同様の分離も報告されている(M.Lock,Alvira,&Wilson,2012)。さらに(Lee,Kim,&Seol,2009)は、感染性AdV材料を金属親和性の膜を用いて欠陥のあるAdV粒子から分離することができたことを報告した。
【0008】
しかし、これらの既知の吸着剤材料を、充填ウイルスベクターを非充填ベクターから分離することを含むクロマトグラフィー分離に使用することには欠点がある。したがって、従来の多孔質ビーズは高容量を有するが、そのようなビーズを含む充填層系を高い流速で運用することは不可能である。それは、多孔質ビーズに基づく系では、標的分子/不純物と固相との間の結合事象が多孔質ビーズへの拡散に依存するためであり、これは滞留時間の減少とともに結合容量が低下することを意味する。また、高い流速は何リットルものビーズ懸濁液がカラムに充填される製造規模では多孔質ビーズと特に適合しない。ここでは、多孔質ビーズの機械的不安定性が圧縮または崩壊事象を招く恐れがあり、その結果、不均一なカラム床が生じる。
【0009】
多孔質ビーズの典型的な結合容量は、固相の官能基および結合した種に応じて35~120mg/mLの範囲内である。しかし、そのような系を通る典型的な流速が低いということは、単一カラム多孔質ビーズ系の全体的な生産性がたった約10~120mg/mL/分しか達成できないことを意味する。
【0010】
多孔質ビーズを使用するさらなる弱点は、材料の容量が、ビーズの内部表面積に到達する標的の能力に依存することである。典型的な多孔質ビーズは、15~30nmの間の細孔径を有するので、標的ベクターが細孔径よりもはるかに大きくなり得るベクター精製には限界がある。例はAAV(約20nm)、AdV(約80nm)、およびLV(約100nm)である。
【0011】
膜およびモノリスを含む分離は、多孔質ビーズに基づく系よりもはるかに高い流速で行うことができ、典型的な滞留時間は0.2~0.5分ほどである。しかし、動的流れ下でのモノリス(10~20mg/mL)および膜(7.5~29mg/mL)に対する標的の10%破過での典型的な結合容量は、多孔質ビーズよりも低い(Gottschalk,U.2008 Biotechnol Prog,24(3),496-503.doi:10.1021/bp070452g)。モノリスおよび膜材料の結合容量が低いこと(多孔質ビーズに基づく材料と比較)は、より高い流速を用いることによってある程度相殺され得る。上に考察されるモノリスおよび膜の典型的な結合容量および滞留時間は、モノリスおよび膜系に対する結合事象の全体的な生産性を約10~145mg/mL/分にする。
【0012】
その上、膜の細孔径は、0.2~2μmの範囲内である多孔質ビーズよりもはるかに大きいが、膜の結合容量は、吸着種のサイズが大きくなるにつれて低下する(Wickramasinghe,Carlson,Teske,Hubbuch,&Ulbricht,2006)。このことは、利用可能な表面積の大きい、高度に多孔質の吸着剤を有する必要性を強調する。
【0013】
充填ベクターを非充填ベクターから分離して、治療用生成物を工業規模で回収することを可能にすることのできるクロマトグラフィー材料が必要とされている。また、クロマトグラフィー材料は、多孔質ビーズ系材料に関連する高い結合容量と、モノリス/膜材料によって達成可能なより高い流速とを共有するべきである。クロマトグラフィー材料はまた、結合領域が大きいベクターに利用しやすく、適切に高い流速が達成され得るように十分に多孔性でなければならない。そのような材料は、最大の生産性(精製済み生成物/mL/分)を実現するために、高い流速で高容量を提供するものであろう。
【0014】
本発明者らは、驚くべきことに、高分子ファイバー材料、特に高分子ナノファイバー材料を、非充填ベクター材料から充填ベクター材料を分離するために使用することができることを見出した。したがって、彼らはそのような材料が非常に短い滞留時間で、すなわち高い流速でベクター材料に高容量を有することを見出した。これは、この材料がその他の吸着剤、例えばビーズ、膜およびモノリスと比較して有利に高い生産性を有することを意味する。本発明者らはまた、高分子のグラフト化度およびその後の高分子ファイバー材料の官能化を最適化して、充填種および非充填種の分解を改善した。また、驚くべきことに、本発明に従って材料を使用すると、充填画分と非充填画分の両方が非常に低い塩濃度(溶出伝導率<6mS)で溶出され得ることも見出された。これは、導電率が約12.5mSに達するまで画分が溶出されないという文献の例とは対照的である(Urabe et al.,2006)。
【発明の概要】
【0015】
したがって、本発明は、ウイルス生成物を前記生成物および生成物関連不純物を含む組成物から回収するためのプロセスを提供し、そのプロセスは、組成物を、1または複数の高分子ナノファイバーを含む、官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させることを含み、
ウイルス生成物は、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコア、またはプロウイルスを含み、その各々は1または複数のポリヌクレオチドを含有し、かつ
生成物関連不純物は、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスを含み、その各々はポリヌクレオチドを実質的に含まない。
【0016】
本発明はまた、以下も提供する:
・本明細書に定義されるウイルス生成物を、前記生成物および本明細書に定義される生成物関連不純物を含む本明細書に定義される組成物から回収するためのプロセス。このプロセスは、組成物を塩不耐性のクロマトグラフィー媒体と接触させることを含み、該塩不耐性のクロマトグラフィー媒体は、ウイルス生成物を10mS/cm未満の導電率で溶出する能力がある。
【0017】
・本明細書に定義されるウイルス生成物を、前記生成物および本明細書に定義される生成物関連不純物を含む本明細書に定義される組成物から回収するためのプロセス。このプロセスは、組成物を膜またはシートの形態のクロマトグラフィー媒体と接触させること、ならびに、1または複数の前記膜またはシートおよび所望により1または複数のフリットまたはその他のスペーサー材料を含むホルダーに組成物を通過させることを含み、
該組成物は、(a)前記1または複数の膜またはシートを通る経路長が2mm未満であるか、または(b)膜、シート、フリットおよびその他のスペーサー材料を通る総経路長が50mm未満であるようにホルダーを通過する。
【0018】
・本明細書に定義されるウイルス生成物を、前記生成物および本明細書に定義される生成物関連不純物を含む本明細書に定義される組成物から回収するためのプロセス。このプロセスは、組成物を膜またはシートの形態のクロマトグラフィー媒体と接触させること、ならびに、1または複数の前記膜またはシートおよび所望により1または複数のフリットまたはその他のスペーサー材料を含むホルダーに組成物を通過させることを含み、
該組成物は、1分以下の期間クロマトグラフィー媒体と接触する。
【0019】
・ウイルス生成物を前記生成物および非生成物関連不純物を含む組成物から回収するためのプロセス。このプロセスは、組成物を1または複数の高分子ナノファイバーを含む官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させることを含み、
該ウイルス生成物は、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコア、またはプロウイルスを含み、その各々は1または複数のポリヌクレオチドを含有し、かつ
該非生成物関連不純物は、細胞および/または細胞成分、例えば脂質、宿主細胞タンパク質および/または宿主細胞増殖培地のその他の構成要素、例えばタンパク質および/または糖などを含む。
【0020】
・ウイルス生成物を、本明細書に定義される前記生成物、生成物関連不純物および非生成物関連不純物を含む組成物から回収するためのプロセス。このプロセスは、組成物を本明細書に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させることを含む。
【0021】
・本発明のプロセスによって得ることができるかまたは得られるウイルス生成物。
【0022】
・本発明のプロセスによって得ることができるかまたは得られる生成物関連不純物。
【0023】
・本発明のウイルス生成物を製薬上許容される担体または希釈剤とともに含む組成物。
【0024】
・本発明の生成物関連不純物を製薬上許容される担体または希釈剤とともに含む組成物。
【0025】
・微生物治療、ワクチン接種または遺伝子治療の方法。この方法は、そのような治療を必要とする患者に有効量の本発明のウイルス生成物または本発明の組成物を投与することを含む。
【0026】
・微生物治療、ワクチン接種または遺伝子治療の方法で使用するための本発明のウイルス生成物または本発明の組成物。
【0027】
・ポリヌクレオチドを細胞に挿入するエクスビボ法。この方法は、細胞を本発明のウイルス生成物と接触させることを含む。
【0028】
・本発明のエクスビボ法によって得られるかまたは得ることのできる細胞。
【0029】
・1または複数の本発明の細胞を、それを必要とする患者に投与することを含む治療方法。
【0030】
・治療によってヒトまたは動物の体を治療する方法で使用するための本発明の細胞。
【0031】
・癌を治療する際に使用するための本発明の細胞。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】いくつかの異なる官能化されたクロマトグラフィー材料に対するBSAのDBCを示す図である。
【
図2】材料がグラフトされていない、低電荷密度材料と高電荷密度材料の比較を示す図である。
【
図3】材料がグラフトされている、低電荷密度と高電荷密度の材料の比較を示す図である。
【
図4】両方が高い電荷密度を有する、グラフトされた材料とグラフトされていない材料の比較を示す図である。
【
図5】AdVベクターおよびBSAに対する材料の容量を示す図である。
【
図6】AAV材料のクロマトグラムを示す図である。
【
図7】AAVカプシドタンパク質のウエスタンブロットを示す図である。
【
図8】AAV分離から回収した画分のPCR結果を示す図である。
【
図9】CsCl充填材料とおよび本発明のクロマトグラフィー分離から得た充填材料を比較するクロマトグラムを示す図である。
【
図10】CsCl材料と本発明のクロマトグラフィー分離から得た材料のさらなる比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、ウイルス生成物を前記生成物および生成物関連不純物を含む組成物から回収するためのプロセスであり、このプロセスは組成物を1または複数の高分子ナノファイバーを含む官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させることを含む。
【0034】
もう1つの実施形態では、本発明は、ウイルス生成物を前記生成物および非生成物関連不純物を含む組成物から回収するためのプロセスであり、このプロセスは、組成物を1または複数の高分子ナノファイバーを含む、官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させることを含む。
【0035】
ウイルス生成物
ウイルス生成物は、一般には、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコア、またはプロウイルスを含み、その各々は1または複数のポリヌクレオチドを含有する。したがって、一般に、ウイルス生成物は、「充填」または「フル」ウイルス生成物、すなわち「充填」または「フル」ウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコア、またはプロウイルスである。当業者は、「充填」または「フル」ウイルスおよび関連ウイルス生成物の概念を十分に認識している。
【0036】
一般に、ウイルス生成物は、複数のウイルス、ウイルス粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコア、またはプロウイルスを含み、その各々が細胞を感染させる能力を有する。したがって、一般に、ウイルス生成物は、標的細胞をうまく感染させることのできる「活性」または「感染性」ウイルス生成物である。当業者は、「活性」または「感染性」ウイルスおよび関連ウイルス生成物の概念を十分に認識している。
【0037】
一般に、ウイルス生成物は、各々が1または複数のトランスジェニックポリヌクレオチドを含有する複数のウイルスベクターを含む。したがって、本発明のプロセスは、一般に1または複数のウイルスベクターを前記ウイルスベクターおよび本明細書に定義される生成物関連不純物を含む組成物から回収するためのプロセスである。
【0038】
1または複数のウイルスベクターは各々一般に1または複数のトランスジェニックポリヌクレオチドまたは導入遺伝子を含有する。用語「トランスジェニックポリヌクレオチド」または「導入遺伝子」が本明細書においてウイルスに対してネイティブでないポリヌクレオチドを表すために使用されることは理解されるであろう。
【0039】
好ましくは、ウイルス生成物は1または複数のウイルスを含む。原則的にどんなウイルスを使用してもよい。遺伝子治療で用いるウイルスベクターには、ウイルスは一般に組換え型の遺伝子操作されたウイルスである。組換え型ウイルスは、一般に導入遺伝子を含有する。そのような導入遺伝子は、例えば生物学的に機能的なタンパク質またはペプチド、アンチセンス分子、またはマーカー分子をコードすることがあり得る。「ウイルス療法」で用いるウイルスベクターには、ウイルスは、野生型溶解性ウイルスまたは遺伝子組換え版であってよく、それにはウイルス活性を改変するように設計された導入遺伝子(例えば、固形腫瘍を通じてウイルスの拡散を強化することを目的とするタンパク質をコードする導入遺伝子)または抗癌剤の活性を改善するように設計された導入遺伝子(例えば、免役刺激タンパク質またはGDEPTタンパク質をコードする導入遺伝子)で「武装した」条件的複製形態(conditionally replicating forms)が含まれ、さらに他のウイルスをコードし、感染時にそれらを産生するように操作されたウイルスが含まれる。ウイルスワクチン接種で用いるウイルスベクターには、ウイルスは、しばしば遺伝子改変アデノウイルス(非ヒトアデノウイルスを含む)、ヘルペスウイルスまたは抗原として導入遺伝子をコードするワクシニアである。
【0040】
全ての場合において、ウイルスはRNAウイルスまたはDNAウイルスのいずれかであり、そして所望により以下の科および群の1つに由来する:アデノウイルス科;アルファモウイルス;ブロモウイルス科;アルファクリプトウイルス;パーティティウイルス:バキュロウイルス科;バドナウイルス;ベータクリプトウイルス;パルチウイルス科;ビジェミニウイルス;ジェミニウイルス科;ビルナウイルス科;ブロモウイルス;ブロモウイルス科;ビモウイルス;ポティウイルス科;ブンヤウイルス科;カリシウイルス科;カピロウイルス群;カルラウイルス群;カルモウイルス群;カリモウイルス群;クロステロウイルス群;コンメリーナ黄色斑紋ウイルス群;コモウイルスウイルス群;コロナウイルス科;PM2ファージ群;コルシコウイルス科;潜在性ウイルス群;クリプトウイルス群;ククモウイルスウイルスΦ6ファージ群;シストウイルス科;サイトハブドウイルス;ラブドウイルス科;カーネーションリングスポット群;ジアントウイルスウイルス群;ソラマメウィルト群;エナモウイルス;ファバウイルスウイルス群;フィジーウイルス;レオウイルス科;フィロウイルス科;フラビウイルス科;フロウイルス群;ジェミニウイルス群;ジアルジアウイルス群;ヘパドナウイルス科;ヘルペスウイルス科;ホルデイウイルスウイルス群;ハイブリジェミニウイルス;ジェミニウイルス科;イダイオウイルス;イラルウイルスウイルス群;イノウイルス科;イポモウイルス;イリオドウイルス科;レビウイルス科;リポトリックスウイルス科;ルテオウイルス群;マクロモウイルス;マクルアウイルス;マラフィウイルスウイルス群;トウモロコシ白化萎縮ウイルス群;イクロウイルス科;モノジェミニウイルス(Monogeminiviruses):ジェミニウイルス科;ミオウイルス科;ナナウイルス;ネクロウイルス群;ネポウイルスウイルス群;ノダウイルス科;ヌクレオラブドウイルス:ラブドウイルス科;オルトミクソウイルス科;オリザウイルス:レオウイルス科;ウルミアウイルス;パポバウイルス科;パラミクソウイルス科;パースニップイエローフレックウイルス群;パルティティウイルス科;アデノ随伴ウイルスを含むパルボウイルス科;エンドウひだ葉モザイクウイルス群;フィコドナウイルス科;ファイトレオウイルス:レオウイルス科;ピコルナウイルス科;プラズマウイルス科;ポドウイルス科;ポリドナウイルス科;ポテクスウイルス群;ポティウイルス;ポックスウイルス科;レオウイルス科;レトロウイルス科;ラブドウイルス科;リジディオウイルス群;ライモウイルス:ポティウイルス科;サテライトRNA;サテリウイルス(Satelliviruses);セキウイルス:セキウイルス科;ソベモウイルス;シホウイルス科;ソベモウイルス群;SSVI型ファージ;テクチウイルス科(Tectirividae);テヌイウイルス;テトラウイルス科(Tetravirirdae);トバモウイルス群;トブラウイルス群;トガウイルス科;トンブスウイルス群;トスポウイルス:ブニヤウイルス科;トロウイルス群;トティウイルス科;ティモウイルス;ティモウイルス群;植物ウイルスサテライト;アンブラウイルス;未割当ポティウイルス:ポティウイルス科:未割当ラブドウイルス:ラブドウイルス科;ヴァリコサウイルス;ワイカウイルス:セキウイルス科;非群化ウイルス。
【0041】
好ましくは、ウイルスは、アデノウイルス科、アデノ随伴ウイルスを含むパルボウイルス科およびレトロウイルス科から選択される。
【0042】
本発明での使用に特に好ましいウイルスは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはレンチウイルスである。アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが特に好ましく、アデノ随伴ウイルスがより好ましい。
【0043】
いくつかの実施形態では、ウイルスの成分、例えばウイルスコアまたはプロウイルス(例えばポックスウイルス由来)が使用されてよい。しかし、ウイルスまたはウイルス粒子/ビリオンを使用することが好ましい。
【0044】
当業者は、用語「ポリヌクレオチド」の意味を十分に認識している。そのようなポリヌクレオチドには、DNAまたはRNAだけでなくsiRNA分子などの合成分子が含まれる。
【0045】
疑義を避けるために明記すると、「ポリヌクレオチド」は、多数の既知のヌクレオシド間結合のいずれかによって互いに結合した複数の結合した個々のヌクレオシド単位から形成されるポリヌクレオシドである。そのようなヌクレオシド間結合には、限定されるものではないが、天然のヌクレオシド間ホスホジエステル結合または実際に修飾されたヌクレオシド間結合、例えば、限定されるものではないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホナート、アルキルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホルアミダート、シロキサン、カルボナート、カルボアルコキシ、アセトアミダート、カルバメート、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、架橋ホスホルアミダート、架橋メチレンホスホナート、架橋ホスホロチオエート、およびスルホンヌクレオシド間結合が含まれる。用語「ポリヌクレオチド」は、1または複数の立体特異的ヌクレオシド間結合(例えば、(Rp)-または(Sp)-ホスホロチオエート、アルキルホスホナート、またはホスホトリエステル結合)を有するポリヌクレオシドも包含する。本明細書において、用語「ポリヌクレオチド」は、そのような任意のヌクレオシド間結合をその結合がリン酸基を含むかどうかに関わらず有するポリヌクレオシドを含むことをはっきりと意図する。特定の好ましい実施形態では、これらのヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、またはホスホロジチオエート結合、またはその組合せであってよい。
【0046】
用語「ポリヌクレオチド」は、限定されるものではないが、タンパク質基、親油性基、挿入剤、ジアミン、葉酸、コレステロールおよびアダマンタンをはじめとするさらなる置換基を有するポリヌクレオシドも包含する。用語「ポリヌクレオチド」は、ポリマーを含有する任意のその他の核酸塩基も包含し、それには、限定されるものではないが、ペプチド核酸(PNA)、リン酸基を有するペプチド核酸(PHONA)、ロックド核酸(LNA)、モルホリノ骨格オリゴヌクレオチド、およびアルキルリンカーまたはアミノリンカーを有する骨格部分を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。アルキルリンカーは、分枝または非分枝の、置換または非置換の、キラル的に純粋であるかまたはラセミ混合物であってよい。
【0047】
ポリヌクレオチドには、天然に存在するヌクレオシド、修飾されたヌクレオシド、またはその混合物が含まれ得る。本明細書において、用語「修飾されたヌクレオシド」は、修飾された複素環塩基、修飾された糖部分、またはそれらの組合せを含むヌクレオシドである。いくつかの実施形態では、修飾されたヌクレオシドは、本明細書に記載されるように非天然ピリミジンまたはプリンヌクレオシドである。いくつかの実施形態では、修飾されたヌクレオシドは、2’-置換リボヌクレオシド、アラビノヌクレオシドまたは2’-デオキシ-2’-置換-アラビノシドである。
【0048】
本明細書において、用語「ハイブリッドポリヌクレオチド」は、2種類以上のヌクレオシドを有するポリヌクレオチドである。
【0049】
本明細書において、用語「ポリヌクレオチド」には、ハイブリッドおよびキメラのポリヌクレオチドが含まれる。「キメラポリヌクレオチド」は、配列構造内に2種類以上のヌクレオシド間結合を有するポリヌクレオチドである。そのようなキメラポリヌクレオチドの好ましい一例は、ホスホロチオエート、ホスホジエステルまたはホスホロジチオエート領域と、アルキルホスホナートまたはアルキルホスホノチオエート結合などの非イオン結合とを含むキメラオリゴヌクレオチドである(米国特許第5635377号および米国特許第5366878号)。
【0050】
本明細書において、用語「ポリヌクレオチド」には、環状化変異体および環状ポリヌクレオチドも含まれる。
【0051】
好ましくは、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの天然に存在するホスホジエステル、または1つの修飾されたホスホロチオエート、またはホスホロジチオエート・ヌクレオシド間結合を含むが、限定されるものではないが、メチルホスホナート、メチルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホチオトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、トリエステルプロドラッグ、スルホン、スルホンアミド、スルファマート、ホルムアセタール、N-メチルヒドロキシルアミン、カルボナート、カルバメート、モルホリノ、ボラノホスホナート、ホスホルアミダート、特に一級アミノ-ホスホルアミダート、N3ホスホルアミダートおよびN5ホスホルアミダート、および立体特異的結合(例えば、(Rp)-または(Sp)-ホスホロチオエート、アルキルホスホナート、またはホスホトリエステル結合)を含む、好ましい結合または実際の骨格修飾も想定される。
【0052】
ヌクレオシドの糖部分は、天然に存在しない糖部分であり得る。本明細書において、「天然に存在する糖部分」は、核酸、例えば,リボースおよび2’-デオキシリボースの部分として天然に存在する糖部分であり、「天然に存在しない糖部分」は、核酸の部分として天然に存在しないあらゆる糖であるが、ポリヌクレオチド、例えば限定されるものではないが、ヘキソースの骨格で使用され得る糖である。アラビノースおよびアラビノース誘導体が好ましい糖部分の例である。
【0053】
修飾または置換されたポリヌクレオチドは、細胞取り込みの増強、核酸標的に対する親和性の増強、およびヌクレアーゼの存在下での安定性の増強などの望ましい性質のために、天然型よりも好ましい場合が多い。
【0054】
本明細書において、「ポリヌクレオチド」は、「オリゴヌクレオチド」(18~25ヌクレオチド長のポリヌクレオチド分子)と、26以上のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドの両方をさす。一般に、26以上のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドは、100以上、500以上、さらには1000以上のヌクレオチドを有することがある。一般に、ポリヌクレオチドは、一般に10,000未満のヌクレオチド、例として5,000未満のヌクレオチドを有する。1000~10,000ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドが好ましいであろう。
【0055】
ウイルスがアデノ随伴ウイルス(AAV)である場合、ポリヌクレオチドは、一般に最大5000ヌクレオチドを有する。
【0056】
ウイルスがアデノウイルス(AV)である場合、ポリヌクレオチドは、一般に最大8000ヌクレオチドを有する。
【0057】
ウイルスがレンチウイルスである場合、ポリヌクレオチドは、一般に最大10,000ヌクレオチドを有する。
【0058】
生成物関連不純物
生成物関連不純物は、一般に、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスを含み、その各々はポリヌクレオチドを実質的に含まない。したがって、一般に、生成物関連不純物は、「非充填」または「空」のウイルス生成物、すなわち「非充填」または「空」のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコア、またはプロウイルスである。当業者は、「非充填」または「空」ウイルスおよび関連生成物の概念を十分に認識している。
【0059】
生成物関連不純物は、ウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスに含有されておらず、遊離形態のポリヌクレオチドをさらに含むことがある。
【0060】
一般に、生成物関連不純物は、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスを含み、その各々は、細胞を感染させることができない。したがって、一般に、生成物関連不純物は、細胞を感染させることができない「不活性」または「非感染性」生成物である。当業者は、「不活性」または「非感染性」ウイルスおよび関連ウイルス生成物の概念を十分に認識している。いくつかの実施形態では、生成物関連不純物は、ポリヌクレオチドを含んでいても含んでいなくてもよいが、いずれの場合も細胞を感染させることができない、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスを含む。そのような実施形態では、ポリヌクレオチド材料は、例として、ウイルスまたはウイルス生成物の中に不完全に充填されていることがあり、これは生成物が細胞を感染させることができないことを意味する。
【0061】
一般に、生成物関連不純物は、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスを含み、その各々は完全なウイルスゲノムを欠く。
【0062】
一般に、生成物関連不純物は、特異的ウイルスまたは上に定義されるウイルス成分の1または複数を含む、但し、それらのウイルスまたはウイルス成分は、上述の生成物関連不純物の1または複数の特徴、すなわち
・ポリヌクレオチドを実質的に含まない;
・充填されていない;
・空である;
・細胞を感染させることができない;
・不活性である;
・非感染性である;かつ/または
・完全なウイルスゲノムを欠く;
ことを、所望により遊離ポリヌクレオチドであることに加えて有する。
【0063】
したがって、好ましくは、生成物関連不純物は、複数のアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはレンチウイルスを含む、但し、それらは上述の生成物関連不純物の1または複数の特徴を有する。アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが特に好ましく、アデノ随伴ウイルスがより好ましい。
【0064】
非生成物関連不純物
非生成物関連不純物は、一般に、細胞、または脂質、宿主細胞タンパク質などの細胞成分、および/または宿主細胞増殖培地のその他の構成要素、例えばタンパク質、糖などを含む。
【0065】
したがって、一般に、非生成物関連不純物は細胞を含む。あるいは、非生成物関連不純物は、脂質、宿主細胞タンパク質などの細胞成分、および/または宿主細胞増殖培地のその他の構成要素、例えばタンパク質および/または糖などを含む。
【0066】
疑義を避けるために明記すると、非生成物関連不純物は、当業者に周知である。
【0067】
高分子ファイバー
官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1または複数の高分子ナノファイバーを含み、一般に前記1または複数の高分子ナノファイバーから形成される。本明細書において「ナノファイバー」が言及される場合、これらは下に定義される高分子ナノファイバーであると理解されるべきである。
【0068】
一般に、高分子ナノファイバーは、1または複数の不織布シートの形態であり、各シートは1または複数の前記高分子ナノファイバーを含む。1つ以上のポリマーナノファイバーを含む不織布シートは、各ファイバーが本質的にランダムに配向している前記1つ以上のポリマーナノファイバーのマットである、すなわち、それは1つまたは複数のファイバーが特定のパターンをとるように製造されていない。高分子ナノファイバーを含む不織布シートは、公知の方法によって一般に提供される。不織布シートは、特定の状況において、単一の高分子ナノファイバーで構成される。あるいは、不織布シートは、2以上の高分子ナノファイバー、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10の高分子ナノファイバーを含み得る。
【0069】
高分子ナノファイバーは、電界紡糸高分子ナノファイバーであってよい。そのような電界紡糸高分子ナノファイバーは、当業者に周知である。高分子ナノファイバーを製造するための代替方法、例えば延伸を用いてもよい。
【0070】
本発明で用いる高分子ナノファイバーは、一般に、10nm~1000nmの平均径を有する。いくつかの用途には、200nm~800nmの平均径を有する高分子ナノファイバーが適切である。200nm~400nmの平均径を有する高分子ナノファイバーは、特定の用途に適切であり得る。
【0071】
本発明で用いる高分子ナノファイバーの長さは、特に制限されない。したがって、従来のプロセス、例えば電界紡糸は、数百メートル、さらには数キロメートルもの長さの高分子ナノファイバーを製造することができる。だが一般に、1または複数の高分子ナノファイバーは、最大10km、好ましくは10m~10kmの長さを有する。
【0072】
不織布シートは、一般に1~40g/m2、好ましくは5~25g/m2、いくつかの状況では1~20または5~15g/m2の面密度を有する。
【0073】
不織布シートは、一般に5~120μm、好ましくは10~100μm、いくつかの状況では50~90μm、他の状況では5~40、10~30または15~25μmの厚さを有する。
【0074】
本発明のプロセスで使用されるナノファイバーを製造するために使用されるポリマーは、ポリマーがクロマトグラフィー用途での使用に適している限り、特に限定されない。したがって、一般に、ポリマーは、クロマトグラフィー媒体、すなわちクロマトグラフィー法の吸着剤としての使用に適しているポリマーである。適したポリマーには、ポリアミド、例えばナイロン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリスルホン(例、ポリエーテルスルホン(PES))、ポリカプロラクトン、コラーゲン、キトサン、ポリエチレンオキシド、アガロース、酢酸アガロース、セルロース、酢酸セルロース、およびその組合せが含まれる。ポリエーテルスルホン(PES)、セルロースおよび酢酸セルロースが好ましい。いくつかの例では、セルロースおよび酢酸セルロースが好ましい。
【0075】
いくつかの実施形態では、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、異なる高分子から形成された1または複数のナノファイバーを含む。したがって、この実施形態では、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1または複数の異なるポリマーを含む。典型的なポリマーは、上に定義される通りである。
【0076】
一般に、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体である。好ましくは、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1または複数の不織布シートで形成され、各々が1または複数のセルロースまたは酢酸セルロースナノファイバーを含む。酢酸セルロースは、例えば電界紡糸によってナノファイバーに容易に形成され、電界紡糸後にセルロースに容易に変換できる。
【0077】
特に好ましい実施形態では、官能化されたクロマトグラフィー媒体は1または複数の高分子ナノファイバーを含むが、代替実施形態では、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1または複数の任意の種類の高分子ファイバーを含むことがある。そのような高分子ファイバーは、上記のナノファイバーと同じ性質のいずれかまたは全てを有することがある。一般に、そのような高分子ファイバーの平均径は、10nm~1000μm、好ましくは10nm~750μm、より好ましくは10nm~500μm、さらにより好ましくは10nm~400μm、さらにより好ましくは10nm~300μm、さらにより好ましくは10nm~200μm、さらにより好ましくは10nm~100μm、さらにより好ましくは10nm~75μm、さらにより好ましくは10nm~50μm、さらにより好ましくは10nm~40μm、さらにより好ましくは10nm~30μm、さらにより好ましくは10nm~20μm、さらにより好ましくは10nm~10μm、さらにより好ましくは10nm~5μm、さらにより好ましくは10nm~4μm、さらにより好ましくは10nm~3μm、さらにより好ましくは10nm~2μm、さらにより好ましくは10nm~1μm(1000nm)であり得る。
【0078】
官能化されたクロマトグラフィー媒体
上述のように、組成物と接触する官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1または複数の高分子ナノファイバーを含む。高分子ナノファイバーは、所望により、同じであっても異なってもよく、それと共有結合している、1または複数のポリマー鎖を有する。しかし、特定の好ましい実施形態では、ナノファイバーは、それと共有結合したポリマー鎖を含まない。ナノファイバーは、一般に、同じであっても異なっていてもよい1または複数の配位基によって一般に官能化され、それが1または複数の配位基を含むナノファイバーをクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする。
【0079】
高分子をナノファイバーと結合させか、または1または複数の配位基によって官能化する前に、1または複数の高分子ナノファイバー(1または複数の不織布シートの形態であり得る)は、所望により、高分子ナノファイバー/不織布シートを加熱および/または加圧する、好ましくは高分子ナノファイバー/不織布シートを加熱および加圧することによって、物理的に修正されてよい。これらのステップは、材料の構造的安定性を改善する。加圧および加熱条件もまた、得られる材料の厚さおよび/または多孔性を変えるために様々であり得る。
【0080】
高分子ナノファイバーの複数の不織布シートを使用することにより、より高い吸着能力を有するより厚い材料を作製することが可能になる。そのため、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、一般に、積み重ねた2以上の不織布シート(各々の前記シートは1または複数の高分子ナノファイバーを含む)を準備し、積み重なったシートを同時に加熱および加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合させることによって形成される。
【0081】
セルロース官能化されたクロマトグラフィー媒体の場合には、これは一般に、積み重ねた2以上の不織布シート(各々の前記シートは1または複数の酢酸セルロースナノファイバーを含む)を準備し、積み重なったシートを同時に加熱およびプレスして隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合することによって形成される。
【0082】
高分子ナノファイバー/不織布シートの加圧および加熱に好ましい加工条件は、国際公開第2015/052460号および国際公開第2015/052465号に見出すことができ、その全文は参照により本明細書に援用される。
【0083】
上記のように、1または複数の不織布シートの形態であってよく、所望により加熱および/または加圧によって物理的に修正されていてよい、高分子ナノファイバーは、所望により、同じであっても異なっていてもよい、それと共有結合した1または複数のポリマー鎖を有する。ある種の実施形態では、前記高分子ナノファイバーは、特にウイルスがアデノ随伴ウイルス(AAV)である場合に、それと結合したポリマー鎖を有さない。
【0084】
1または複数のポリマー鎖を高分子ナノファイバーに共有結合させることは、予め形成したポリマー鎖をナノファイバーにグラフトすることか、またはポリマー鎖をナノファイバーからグラフトすることのいずれかを含むことがある。
【0085】
疑義を避けるために明記すると、ポリマー鎖は、ナノファイバーと同じではない。したがって、典型的な二次加工プロセスは、1または複数の前記高分子ナノファイバーを、所望により1または複数の前記不織布シートの形態で準備し、1または複数の予め形成されたポリマー鎖をナノファイバー/シートにグラフトすること、および/または1または複数のポリマー鎖をナノファイバー/シートからグラフトすることを含むことになる。1または複数の鎖をナノファイバー/シートからグラフトすることが好ましい。
【0086】
予め形成されたポリマー鎖をナノファイバーにグラフトすることは、一般に、ナノファイバー上の官能基と反応する能力のある少なくとも1つの基を有する、予め形成されたポリマー鎖を反応させることを含む。
【0087】
基材から1または複数のポリマー鎖をグラフトすることは、一般に、所望により1または複数の触媒の存在下で、ナノファイバー上に存在する1または複数の官能基から1または複数のポリマー鎖を成長させることを含む。
【0088】
したがって、一般に、ナノファイバーは、1または複数の官能基、好ましくは予め形成されたポリマー鎖がグラフトされてよく、かつ/またはそこからポリマー鎖が成長することのある1または複数の官能基を含む。
【0089】
1または複数の官能基からポリマー鎖を成長させるとは、個々のモノマー構成単位から1または複数の官能基でポリマーを構築することを意味する。
【0090】
ポリマー鎖は中性であっても帯電していてもよい。ある種の実施形態では、中性のポリマー鎖が好ましい。
【0091】
ポリマーの中性は、本質的に中性のpH、例えばpH6~8、一般にpH6.5~7.5、通常はpH6.75~7.25、または約pH7でイオン化可能、すなわちプロトン化または脱プロトン化される基をポリマーが含有するかどうかによって評価することができる。一般に、中性のポリマーは酸性または塩基性中心を実質的に含有しない、すなわちpH6~8、一般にpH6.5~7.5、通常pH6.75~7.25、または約pH7でプロトン化または脱プロトン化する官能基を実質的に含有しない。これは、当業者によって、当技術分野で典型的なアッセイで決定することができる。酸度および塩基性度の評価のための典型的な手順は、その理論的側面とともに、その全文が参照により本明細書に援用される「Acidity and basicity of solids:Theory,assessment and utility」Fraisard and L.Petrakis,NATO ASI Series C,volume 444,Kluwer Academic Publishers,Dordrecht,Boston and London,1994、特に513頁に考察されている。ここで使用される実質的にとは、1mol%未満、好ましくは0.1mol%未満、さらにより好ましくは0.01mol%未満、さらには0.001mol%未満を意味する。
【0092】
一般に、1種類のポリマーだけがナノファイバーと共有結合される。しかし、その他の実施形態では、2種類以上のポリマーがナノファイバーと共有結合されることもある。
【0093】
官能化されたクロマトグラフィー媒体が2種類以上の高分子ナノファイバー、すなわち2種類以上のポリマーから形成されるナノファイバーから形成される実施形態では、各異なる種類の高分子ナノファイバーは、異なる種類のポリマーから形成されたポリマー鎖と共有結合することがある。それは、例えば、異なる高分子ナノファイバーに存在する異なる官能基から生じることがあり得る。あるいは、同じポリマーが、異なる種類の高分子ナノファイバーの各々と共有結合することがある。
【0094】
典型的な官能基としては、ヒドロキシル基、アミノ基およびカルボキシル基が挙げられる。官能化されたクロマトグラフィー媒体が1または複数のセルロースまたは酢酸セルロースナノファイバーで形成される場合、官能基は一般にヒドロキシル基である。
【0095】
一般に、ナノファイバーは、1または複数の官能基を導入するために処理されるか、ナノファイバーは官能基を脱保護または活性化するために処理されるか、あるいはナノファイバーは、官能基の数/密度を増加させるために処理される。好ましくは、ナノファイバーは、基材上のどんな官能基も脱保護するために処理される。
【0096】
官能基の脱保護は、一般に、官能基が1または複数のポリマー鎖を官能基から成長させるか、あるいは1または複数の予め形成されたポリマー鎖を官能基にグラフトさせるように行われる。脱保護はまた、下文でさらに考察される1または複数の配位基でナノファイバーが官能化されてよいように、実行されてよい。
【0097】
例えば、クロマトグラフィー媒体がセルロースクロマトグラフィー媒体である場合、一般に酢酸セルロースナノファイバーが提供され、任意のポリマーをそれと共有結合させるかまたは1または複数の配位基で官能化する前に、酢酸セルロースを処理してそれをセルロースに変換する。これは、アセチル化ヒドロキシル基を脱保護してヒドロキシル基を得ることを含む。酢酸セルロースのセルロースへの変換は、一般に、アルカリ、好ましくは水:エタノール、より好ましくは水:エタノール2:1中のNaOHを使用して、12時間よりも長い期間、例えば12~36時間行われる。同じプロトコールを、1または複数の配位基で官能化する前に、アセチル化ヒドロキシル基を脱保護する場合にも使用してよい。
【0098】
官能基の活性化は、下文の1または複数の配位基による官能化の文脈においてさらに考察されている。その考察は、1または複数のポリマー鎖をナノファイバーと共有結合させる前の官能基の活性化に等しく当てはまる。
【0099】
基材上の官能基の数/密度を増加させるための方法は、当業者に公知であろう。
【0100】
1または複数の官能基をナノファイバーに導入する場合、ナノファイバー上の1または複数の官能基は、(a)予め形成されたポリマー鎖がグラフトされてよく、かつ/または(b)それから1または複数のポリマー鎖が成長することのある、官能基を導入するために修飾される。導入ステップは、ナノファイバー上に存在する官能基を、そこに/それから1または複数のポリマー鎖をグラフトすることのできる官能基に一緒に変更する単一ステップまたは複数ステップを含んでよい。
【0101】
1または複数のポリマー鎖は分枝していてよく、その結果「ブッシュ」型構造となる。あるいは、基本的に非分枝ポリマー鎖を用いてよく、その結果「ブラシ」ポリマー構造となる。ある種の実施形態では、非分枝ポリマー鎖が好ましい。
【0102】
官能化
本発明のプロセスは、官能化されたクロマトグラフィー媒体を使用する。クロマトグラフィー媒体は、一般に1または複数の配位基で官能化され、それが材料をクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする。配位基は一般に高分子ナノファイバーに担持されている。したがって、一般に1または複数の高分子ナノファイバーは、1または複数の配位基で官能化され、それは同じであっても異なっていてもよく、1または複数の配位基を含むナノファイバーをクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする。
【0103】
ナノファイバーを形成するために使用されるポリマーは、ナノファイバーを形成するステップの前に官能化されていてよい。
【0104】
あるいは、そして好ましくは、ナノファイバーは、ポリマーがナノファイバーに形成された後に官能化される。
【0105】
一般に、1または複数の配位基は、1または複数のナノファイバーと結合している。これは、ナノファイバーがそれと共有結合した1または複数のポリマー鎖を有さない場合に典型的である。したがって、一般に、ナノファイバーは、それと共有結合した1または複数のポリマー鎖を有さない、そして1または複数の配位基は、1または複数のナノファイバーと結合している。
【0106】
あるいは、ナノファイバーがそれと共有結合した1または複数のポリマー鎖を有する場合、1または複数の配位基は、ナノファイバーおよび/またはポリマー鎖と共有結合していてよい。この場合、1または複数の配位基は、好ましくは少なくとも、1または複数のポリマー鎖と共有結合している。
【0107】
1または複数の配位基は、一般に1または複数のナノファイバーと接触させることによって導入されてよく、ナノファイバーは、所望により加圧および/または加熱され、所望によりそれと共有結合した1または複数のポリマー鎖を、生成物をクロマトグラフィー媒体として官能化する試薬とともに有する。
【0108】
試薬は一般に、1または複数の配位基を含む官能化された生成物をクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする、1または複数の配位基を導入することによって、クロマトグラフィー媒体を官能化する。配位基は、グラフト化生成物に導入された基であり、これはグラフト化生成物をクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする。適した配位基および試薬は、下文でさらに論じられる。
【0109】
いくつかの実施形態では、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1種類の配位基のみによって官能化される。その他の実施形態では、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、2種類以上の配位基によって官能化される。
【0110】
官能化されたクロマトグラフィー媒体が異なるポリマーから形成された1または複数の高分子ナノファイバーを含む実施形態では、各異なる種類の高分子ナノファイバーは、同じであっても異なっていてもよい1または複数の配位基によって(ポリマー鎖とそれとの随意の共有結合の後に)官能化され得る。
【0111】
2種類以上のポリマー鎖がナノファイバーと共有結合されている実施形態では、各ポリマー鎖は、同じであっても異なっていてもよい1または複数の配位基によって官能化され得る。
【0112】
一般用語では、媒体/ナノファイバーの官能化は、その化学的および/または物理的性質を変化させる。これは次に、官能化されたクロマトグラフィー媒体がクロマトグラフィー法で使用された場合にどのように挙動するのかに影響を及ぼす。修飾は、例えば、官能化されたクロマトグラフィー媒体の極性、疎水性または生物学的結合特性を、その官能化されていない形態と比較して変化させることであり得る。修飾は、特定の状況では、官能化されたクロマトグラフィー媒体の極性、疎水性または生物学的結合特性の2以上を、その官能化されていない形態と比較して変化させることであり得る。一実施形態では、修飾は、官能化されたクロマトグラフィー媒体の極性および疎水性をその官能化されていない形態と比較して変化させる。
【0113】
一般に、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、イオン交換クロマトグラフィー、親和性捕捉クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーおよび混合モードクロマトグラフィーから選択されるクロマトグラフィー法での使用に適している。特定の状況では、クロマトグラフィー法は、「混合モード」で動作する、すなわち、相互作用、すなわちイオン交換、親和性捕捉および疎水性相互作用の2以上の形態を利用する。一般に、そのような「混合モード」クロマトグラフィーは、イオン交換(イオン性)および疎水性相互作用を含む。好ましくは、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、イオン交換クロマトグラフィー、親和性捕捉クロマトグラフィー、および疎水性クロマトグラフィー、好ましくはイオン交換クロマトグラフィーおよび親和性捕捉クロマトグラフィーから選択されるクロマトグラフィー法での使用に適している。動作中、そのようなクロマトグラフィー法は、所望の分子を含有する移動相を吸着相、ここでは官能化されたクロマトグラフィー媒体に通過させることを含む。吸着相は、一般に、移動相に同様に存在するその他の成分に優先して、所望の分子が移動相の上に保持されるように選択される。
【0114】
一般に、クロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP、CM、フェニル、またはMEP基、例としてDEAE、Q、SP、またはCM基によって官能化される。概して、高分子ナノファイバーはセルロースナノファイバーであり、クロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP、CM、フェニル、またはMEP基、例としてDEAE、Q、SP、またはCM基によって官能化される。したがって、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP、CM、フェニル、またはMEP基、例としてDEAE、Q、SP、またはCM基から誘導体化されたセルロースナノファイバーを含むことがある。これらの配位基は、高分子ナノファイバーに結合されていてよく、かつ/または、ポリマー鎖がナノファイバーに共有結合している場合には、ポリマー鎖に結合されていてもよい。
【0115】
官能化されたクロマトグラフィー媒体は、一般にイオン交換、親和性捕捉、疎水性または混合モードのクロマトグラフィー法での使用に適している。したがって、一般に1または複数の配位基は、負に帯電した1または複数の部分、正に帯電した1または複数の部分、1または複数のタンパク質、タンパク質リガンドの作用を模倣するミメティックまたは合成リガンド、ペプチド、抗体またはそのフラグメント、色素、ヒスチジン、金属陽イオンを含有する基、あるいは疎水基である。好ましくは、1または複数の配位基は、負に帯電した1または複数の部分、正に帯電した1または複数の部分、金属陽イオンを含有する1または複数の基、あるいは疎水基である。
【0116】
上記のように、配位基は、適切に選択された試薬で処理することによってナノファイバー/ポリマー鎖に導入されてよい。2-クロロ-N,N-ジエチルアミンヒドロクロリド(DEACH)およびグリシジルトリメチルアンモニウムが、特に官能化されたクロマトグラフィー媒体が陰イオン交換クロマトグラフィー法に使用される場合には、試薬として好ましい。その他の好ましい試薬は、特に官能化されたクロマトグラフィー媒体が陽イオン交換クロマトグラフィー法に使用される場合には、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、TEMPOとそれに続く過塩素酸ナトリウム、またはアリルグリシジルエーテルとそれに続く二亜硫酸ナトリウムである。別の好ましい試薬は、特に官能化されたクロマトグラフィー媒体が疎水性クロマトグラフィー法に使用される場合には、酸化スチレンである。
【0117】
一般に、試薬はグリシジルトリメチルアンモニウム、1,4-ブタンスルホン、またはクロロ酢酸ナトリウムである。
【0118】
イオン交換クロマトグラフィーは、分子または生物学的実体をそのイオン電荷に基づいて分離するための技術である。そのため、そのような方法で用いる官能化されたクロマトグラフィー媒体は、正または負に帯電した1または複数の部分を含有する。正電荷および/または負電荷は、官能化されたクロマトグラフィー媒体中で、通常、1または複数の対イオンと釣り合っている。イオン交換クロマトグラフィーは、1または複数の陽イオン交換クロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィーを含む。
【0119】
イオン交換クロマトグラフィーが好ましい。したがって、1または複数の配位基が、帯電した(配位)基であることが好ましい。
【0120】
陽イオン交換クロマトグラフィーで用いる官能化されたクロマトグラフィー媒体は、負に帯電した1または複数の部分を含有する。典型的な負に帯電した部分としては、1または複数のカルボン酸基、スルホン酸基またはホスホン酸基、またはその混合物が挙げられる、すなわち、該部分は一般に1または複数の-COO-、-SO3
-、または-P(OH)2O-基、またはその混合物を含有する。陽イオン交換クロマトグラフィーで用いる典型的な官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1または複数の-O-CH2COO-、-CH2COO-、-SO3
-、-CH2CH2CH2SO3
-、-CH2CH2SO3
-、または-P(OH)2O-部分を含有する。
【0121】
陰イオン交換クロマトグラフィーで用いる官能化されたクロマトグラフィー媒体は、正に帯電した1または複数の部分を含有する。典型的な正に帯電した部分としては、1または複数の四級アミン基が挙げられる。陰イオン交換クロマトグラフィーで用いる典型的な官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1または複数の-N+(CH3)3、-N+(C2H5)H、-CH2CH2N+(C2H5)H、-CH2CH2N+(C2H5)2(CH2CH(OH)CH3)、-O-CH2CH2-N+(CH3)3、-CH2CH2N+(CH3)3、または-CH2CH2N+(CH3)2H部分を含有する。
【0122】
疑義を避けるために明記すると、「荷電基」は、それが正または負の電荷を有するようにイオン化されている部分を含む基を意味する、すなわち「荷電基」は、陰イオン性または陽イオン性部分を含む。荷電基は、配位基の特定の例である。
【0123】
一般に、1または複数の荷電基は、1または複数のカルボン酸基(-COO-)、スルホン酸基(-SO3
-)、またはホスホン酸基(-P(OH)2O-)基、または第四級アミン基、あるいはそれらの混合物を含む。一般に、1または複数の荷電基は、全ての陰性基または全ての陽性基を含むが、特定の状況では、陰性基および陽性基の混合物が想定される。一般に、1種類のみの陰性基が使用されるが、混合物も使用されてよい。一般に、1種類のみの陽性基が使用されるが、混合物も使用されてよい。
【0124】
代表的な荷電基としては、-O-CH2COO-、-CH2COO-、-SO3
-、-CH2CH2CH2SO3
-、-CH2CH2SO3
-、-P(OH)2O-、-N+(CH3)3、-N+(C2H5)H、-CH2CH2N+(C2H5)H、-CH2CH2N+(C2H5)2(CH2CH(OH)CH3)、-O-CH2CH2-N+(CH3)3、-CH2CH2N+(CH3)3、および-CH2CH2N+(CH3)2H部分が挙げられる。
【0125】
典型的な荷電基としては、DEAE、Q、SP、およびCM基が挙げられる。一般に、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP、またはCM基で官能化されている。したがって、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP、またはCM基で誘導体化されたセルロースナノファイバーを含むことがある。
【0126】
親和性捕捉クロマトグラフィーは、特定のリガンド、常にそうとは限らないが通常は生物学的リガンド、に対するその親和性に基づいて分子を分離するための技術である。この方法は、例えば、抗体と抗原との間、または酵素と基質との間の引力に依存し得る。親和性捕捉クロマトグラフィーで用いる官能化されたクロマトグラフィー媒体は、一般に、1または複数のタンパク質、ペプチド、抗体またはそのフラグメント、色素、ヒスチジン、または金属陽イオンを含有する基から選択された1または複数の部分を含有する。親和性捕捉クロマトグラフィーで用いる官能化されたクロマトグラフィー媒体は、好ましくは、金属陽イオンを含有する基から選択された1または複数の部分を含有する。したがって、1または複数の配位基は、1または複数のそのような部分を含むことがある。あるいは、親和性捕捉クロマトグラフィーで用いる官能化されたクロマトグラフィー媒体は、タンパク質リガンドの作用を模倣するミメティックまたは合成リガンドを含有することがある。
【0127】
親和性捕捉クロマトグラフィーで用いる典型的なタンパク質は、当業者に周知であり、それにはプロテインA、プロテインGおよびプロテインLが挙げられる。プロテインAが好ましい。
【0128】
プロテインAは、当業者に周知のタンパク質である。本明細書において、「プロテインA」への言及は、組換え型プロテインA(黄色ブドウ球菌に見出されるプロテインAと比較して配列が変更されている)および標識されたプロテインA(その全文が参照により本明細書に援用される欧州特許第0873353(B)号および米国特許第6399750号に記載される通り)を包含する。
【0129】
親和性捕捉クロマトグラフィーで用いる典型的な抗体およびその断片は、当業者に周知であり、それにはIgGが挙げられる。
【0130】
親和性捕捉クロマトグラフィーで用いる典型的な色素は、当業者に周知であり、それにはイエローHE-4R、レッドHE-3BおよびシバクロンブルーF3Gが挙げられる。
【0131】
親和性捕捉クロマトグラフィーで用いる典型的な金属陽イオンを含有する基は、当業者に周知である。そのような基は一般に、金属陽イオンを固定化するためのキレート剤を含有する。金属陽イオンは一般に、銅、ニッケル、亜鉛およびコバルト陽イオン、好ましくはCu2+、Ni2+、Zn2+およびCo2+から選択される。
【0132】
疎水性相互作用クロマトグラフィーは、分子または生物学的実体をその疎水性に基づいて分離するための技術である。そのため、そのような方法で用いる官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1または複数の疎水基を含有する1または複数の部分を含有する。典型的な疎水基としては、プロピル基、ブチル基、フェニル基、およびオクチル基が挙げられる。
【0133】
混合モード(またはマルチモーダル)クロマトグラフィーは、2以上の特徴、一般に疎水性およびイオン電荷に基づいて分子または生物学的実体を分離する技術である。これは、疎水性と陰イオン性の性質の組合せ、または疎水性と陽イオン性の性質の組合せを含み得る。そのため、そのような方法で用いる官能化されたクロマトグラフィー媒体は、一般に上に定義される正または負に帯電した1または複数の部分、および一般に上に定義される1または複数の疎水基を含有する1または複数の部分を一般に含有する。正電荷および/または負電荷は、官能化されたクロマトグラフィー媒体中で、通常、1または複数の対イオンと釣り合っている。そのような方法で使用する官能化されたクロマトグラフィー媒体は、いわゆる疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)で用いるために、イオン化可能な1または複数の疎水基も含有してよい。したがって、一実施形態では、混合モードクロマトグラフィーは、疎水性電荷誘導クロマトグラフィーである。そのような方法で用いるために適した基は、4-メルカプト-エチル-ピリジン(MEP)基およびオクチルアミン基である。
【0134】
疎水性相互作用と陰イオン性相互作用の組合せを含む混合モードクロマトグラフィー法で用いる官能化されたクロマトグラフィー媒体は、一般に上に定義される正に帯電した1または複数の部分、および一般に上に定義される1または複数の疎水基を含有する。そのような方法で用いるために適した基は、N-ベンジルメチルエタノールアミン基およびN-ベンゾイル-ホモシステイン基である。疎水性相互作用と陽イオン性相互作用の組合せを含む混合モードクロマトグラフィー法で用いる官能化されたクロマトグラフィー媒体は、一般に上に定義される負に帯電した1または複数の部分、および一般に上に定義される1または複数の疎水基を含有する。そのような方法で用いるために適した基は、N-ベンゾイル-ホモシステイン基である。
【0135】
配位基は、一般に、適した試薬と、高分子ナノファイバーおよび/またはポリマー鎖に含有される1または複数の官能基とを反応させることによって官能化されたクロマトグラフィー媒体に導入される。典型的な官能基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン基およびカルボキシル基が挙げられる。高分子ナノファイバーがセルロースまたは酢酸セルロースナノファイバーである場合、官能基は一般にヒドロキシル基である。
【0136】
1または複数の官能基は、反応の前に試薬で活性化させてよい。当分野で公知の従来の活性化方法を用いてよい。したがって、官能基がヒドロキシル基である場合、そのような基は、カルボニルジイミダゾール(CDI)、ビスオキシラン、シアン尿酸、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)、2-フルオロ-1-メチルピリジニウムトルエン-4スルホネート(FMP)、NaIO4、またはジビニルスルホンで処理することによって活性化させてよい。官能基がアミノ基である場合、そのような基は、エピクロルヒドリン、グルタルアルデヒドまたはエポキシドで処理することによって活性化させてよい。官能基がカルボキシル基である場合、そのような基は、CDIまたは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)で処理することによって活性化させてよい。官能基がハロゲン原子である場合、そのような基は、ジビニルスルホンで処理することによって活性化させてよい。
【0137】
当業者は、特定のナノファイバー/ポリマー鎖の上に特定の基および部分を導入するために、適した試薬を、例えば所望の配位基および部分と、それらのナノファイバー/ポリマー鎖に含有される官能基に基づいて選択することができる。典型的な試薬としては、2-クロロ-N,N-ジエチルアミンヒドロクロリド(DEACH)、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、またはクロロ酢酸ナトリウムが挙げられる。
【0138】
一般に、
-クロマトグラフィー法は、陽イオン交換方法であり、クロマトグラフィー媒体は、1または複数のカルボン酸塩部分、スルホン酸塩部分またはホスホン酸塩部分を含む1または複数の荷電基で官能化されている;または
-クロマトグラフィー法は、陰イオン交換方法であり、クロマトグラフィー媒体は、1または複数の第四級アミノ部分またはジエチルアミン部分を含む1または複数の荷電基で官能化されている;
-クロマトグラフィー法は、親和性捕捉クロマトグラフィー法であり、クロマトグラフィー媒体は、1または複数の金属陽イオンを含有する基で官能化されている;
-クロマトグラフィー法は、疎水性相互作用クロマトグラフィー法であり、クロマトグラフィー媒体は、1または複数のプロピル基、ブチル基、フェニル基、またはオクチル基で官能化されている;あるいは
-クロマトグラフィー法は、混合モードクロマトグラフィー法であり、クロマトグラフィー媒体は、1または複数のMEP基、オクチルアミン基、N-ベンジルメチルエタノールアミン基またはN-ベンゾイル-ホモシステイン基で官能化されている。
【0139】
官能化されたクロマトグラフィー媒体の性質
官能化されたクロマトグラフィー媒体中の配位基の密度は、一般に100~1,500μmol/gの官能化されたクロマトグラフィー媒体である。密度は、好ましくは300~1,500μmol/g、より好ましくは500~1200μmol/g、さらにより好ましくは600~1000μmol/g、さらにより好ましくは700~900μmol/gである。いくつかの実施形態では、密度は100~500μmol/gである。配位基が荷電基である場合、この図は材料の電荷密度を表す。
【0140】
密度は一般に、官能化された材料中の部分の数を決定する滴定法によって求められる。当業者は、官能化された材料の所与試料中に存在する特定の部分の量を決定するために使用するのに適した方法を認識しているであろう。
【0141】
塩化トリメチルアンモニウムによる官能化の状況では、密度は塩化トリメチルアンモニウム密度として求めることができ、それは以下のアッセイによって決定されてよい:
1)50mgの材料をブフナー濾過漏斗で100mLの0.1M HCl溶液で、次にさらに100mLの0.01M HCl溶液で洗浄する;
2)材料を75℃の乾燥オーブンで一定質量になるまで乾燥させた後、細かくちぎって小片にし、小型の磁気撹拌子を装備した50mL遠心管の中に入れる;
3)約1mLのクロム酸カリウム溶液(乳首ピペットを介して添加)とともに15mLの脱イオン水を添加する、それにより混合物は色が黄色になる;
4)混合物を20分間激しく撹拌した後、0.1M硝酸銀で滴定する。滴定のエンドポイントは透明な黄色から曇った褐色への色の変化によって確認される;
5)塩化トリメチルアンモニウム含量(μmol/g)を、エンドポイントに達するまで添加した硝酸銀のマイクロモル数/滴定で用いたナノファイバー材料のグラム数として計算する。
【0142】
スルホン酸(S)基による官能化の状況では、密度は、スルホン酸密度として求めることができ、それは以下のアッセイによって決定されてよい:
1)官能化された材料の乾燥試料を0.1M HCLおよび0.01M HClで洗浄する;
2)材料をオーブンで乾燥させ、秤量する;
3)pH7に達するために添加しなければならないNaOHの量によって材料のモル濃度を求める;
4)スルホン酸(S)含量(μmol/g)を、pH7に達するために添加したNaOHの量のマイクロモル数/滴定で用いたナノファイバー材料のグラム数として計算する。
【0143】
官能化されたクロマトグラフィー材料は、一般に、10~210mg/mL(10%破過)、好ましくは20~195mg/mL(10%破過)、30~180mg/mL(10%破過)、40~165mg/mL(10%破過)、または50~150mg/mL(10%破過)の動的結合容量(DBC)を有する。ある種の実施形態では、DBCは、最大50mg/mL(10%破過)、例として10~50mg/mL(10%破過)であってよい。陰イオン性の官能化されたクロマトグラフィー媒体には、DBC(10%破過)は、一般にBSAについてのDBC(10%破過)として計算される。陽イオン性の官能化されたクロマトグラフィー媒体には、DBC(10%破過)は、一般にリゾチームについてのDBC(10%破過)として計算される。
【0144】
10%破過のDBCは、標準的な手段、例えばAKTA Pureシステムを使用することに従って求めることができる。
【0145】
10%破過のDBCは、一般に、以下のアッセイ法に従って求められる:
1)負荷材料(陰イオン交換材料には、負荷材料は、10mM Tris、pH8中1mg/mL BSAであった。陽イオン交換材料には、負荷材料は、酢酸ナトリウム、pH4.7、10mM中1mg/mLリゾチームであった。)を、AKTA Pureシステム(GEヘルスケア)上のホルダーの中に含有される官能化された材料に通す;
2)材料を、決定された膜容量/分の流量(mV/分)で、ホルダー出口後の濃度が、UVフローセルによって決定されるその負荷の10%を超えるまで負荷する;
3)システムおよびホルダー装置のデッドボリュームを考慮して、10%破過でディスクに負荷されたタンパク質の総量を、Unicornソフトウェア(GEヘルスケア)のクロマトグラムの分析によって決定した。
【0146】
一般に、官能化されたクロマトグラフィー材料は、塩不耐性材料である。塩不耐性材料は、結合溶出分離プロセスの溶出ステップにおいて低い塩濃度で生成物を溶出する能力のある材料である。ここで使用されるように、低い塩濃度は、10mS/cm未満の導電率を有する溶液である。
【0147】
クロマトグラフィープロセス
本発明のプロセスは、クロマトグラフィー分離プロセスである。一般に、クロマトグラフィー分離は、結合-溶出クロマトグラフィー分離プロセスである。あるいは、クロマトグラフィー分離プロセスは、フロースルークロマトグラフィー分離プロセスである。官能化されたクロマトグラフィー媒体は、クロマトグラフィー分離プロセスにおいて固定相として使用される。
【0148】
本発明のプロセスは、本明細書に定義されるウイルス生成物を含む組成物および本明細書に定義される生成物関連不純物を本明細書に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させることを含む。あるいは、本発明のプロセスは、本明細書に定義されるウイルス生成物を含む組成物および本明細書に定義される非生成物関連不純物を本明細書に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させることを含む。
【0149】
官能化されたクロマトグラフィー媒体は、膜またはシートの形態であってよい。そのような膜およびシートは、膜クロマトグラフィー法での使用に適している。膜クロマトグラフィー法は、当業者に周知であり、その全文が参照により本明細書に援用される「Membrane Processes in Biotechnologies and Pharmaceutics」ed.Catherine Charcosset,Elsevier,2012に考察されている。
【0150】
官能化されたクロマトグラフィー媒体は、クロマトグラフィーカートリッジまたはホルダーに収容されてよい。カートリッジおよびホルダーという用語は、本明細書において同義的に使用される。カートリッジは、一般に本発明の1または複数の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む。カートリッジは一般に円筒形である。
【0151】
一般に、クロマトグラフィーカートリッジは、一般に円筒形ホルダーの内部に積み重ねられたかまたは巻かれた1または複数の本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む。クロマトグラフィーカートリッジは、軸方向流または半径方向流の下で動作するように設計されてよい。一実施形態では、カートリッジは、ホルダーの内部に巻かれた1または複数の本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含み、軸方向流下で動作するように設計されている。あるいは、カートリッジは、ホルダーの内部に積み重ねられた1または複数の本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含み、半径方向流下で動作するように設計されている。
【0152】
一般に、クロマトグラフィーカートリッジは、2以上の本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む。クロマトグラフィーカートリッジは、一般に、20までの本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む。
【0153】
一般に、クロマトグラフィーカートリッジは、一般に円筒形のホルダーの内部に1または複数のフリットも含む。フリットは、当業者に周知であり、硬質多孔質構造、一般に硬質金属、ポリマーまたはセラミック、好ましくは硬質金属またはセラミックの多孔質構造をさす。フリットは、一般に、カートリッジを通る流量分布を改善するため、および/または1または複数の本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体を支持するためにクロマトグラフィーカートリッジに含められる。典型的なフリットの細孔の直径は、1~1000μm、好ましくは5~500μm、より好ましくは10~150μmである。その他の適したフリット細孔径には、1~20μm、好ましくは5~10μm、より好ましくは3~7μmが含まれる。
【0154】
一般に、カートリッジは、2以上の本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体および1または複数のフリットを含み、フリットは官能化されたクロマトグラフィー媒体間に位置する。
【0155】
いくつかの実施形態では、カートリッジは、フリットを含まない。
【0156】
カートリッジは、フリットの代わりに、またはフリットに加えて、代わりのスペーサー材料を含んでよい。典型的な代替スペーサー材料には不織布および織布材料が含まれる。
【0157】
不織布材料、例えば不織布ポリマー材料は当業者に公知である。そのような不織布材料は多孔質である、すなわち、一般に圧力を大幅に低下させずに液体を通過させる。一般に、不織布ポリマー材料はポリプロピレンである。一般に、不織布材料の面密度は45~150gsmである。
【0158】
いくつかの実施形態では、カートリッジは、2以上の本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体および上に定義される1または複数の不織布ポリマー材料層を含み、1または複数の不織布ポリマー材料層は官能化されたクロマトグラフィー媒体間に位置する。
【0159】
織布材料は当業者に公知である。そのような織布材料は多孔質である、すなわち、一般に圧力を大幅に低下させずに液体を通過させる。一般に、織布材料は、織布ポリマー材料、好ましくは織布ポリプロピレンである。一般に、織布材料の厚さは1mm未満である。
【0160】
一般に、クロマトグラフィーカートリッジは、1または複数の入口流体分配手段および/または出口流体収集手段も含む。そのような手段は、当業者に周知である。
【0161】
本発明のプロセスは、本明細書に定義される組成物を、本明細書に定義される膜またはシートの形態であってよく、かつ/または本明細書に定義されるカートリッジに含有されていてよい、本明細書に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させることを含む。ウイルス生成物および生成物関連不純物は、官能化されたクロマトグラフィー媒体に様々な強度で結合すると考えられる。一般に、これはその後の溶出ステップにおけるそれらの分離を可能にする。これは、既知のクロマトグラフィー法の結合段階および溶出段階について公知の従来法に従って実行することができる。あるいは、ウイルス生成物と生成物関連不純物の結合強度が異なることにより、ウイルス生成物をフロースルーモードで生成物関連不純物から分離させることができる。すなわちウイルス生成物および生成物関連不純物を含む組成物を官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させ、生成物関連不純物が官能化されたクロマトグラフィー媒体に実質的に結合する間にウイルス生成物をカラムから溶出する。
【0162】
あるいは、またはそれに加えて、ウイルス生成物および非生成物関連不純物は、官能化されたクロマトグラフィー媒体に様々な強度で結合すると考えられる。一般に、これはその後の溶出ステップにおけるそれらの分離を可能にする。これは、既知のクロマトグラフィー法の結合段階および溶出段階について公知の従来法に従って実行することができる。あるいは、ウイルス生成物と非生成物関連不純物の結合強度が異なることにより、ウイルス生成物をフロースルーモードで非生成物関連不純物から分離させることができる。すなわちウイルス生成物および非生成物関連不純物を含む組成物を官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させ、非生成物関連不純物が官能化されたクロマトグラフィー媒体に実質的に結合する間にウイルス生成物をカラムから溶出する。
【0163】
組成物は、ウイルス生成物および本明細書に定義される生成物関連不純物を一般に移動相に含む。あるいは、組成物は、ウイルス生成物および本明細書に定義される非生成物関連不純物を一般に移動相に含む。移動相は、一般に水相、好ましくは緩衝液、例えば緩衝生理食塩水、またはトリス緩衝液である。組成物は一般にウイルス生成物を生成するために用いられるプロセスから、または緩衝液交換ステップの後に、例えばウイルスベクター生成プロセスから得られる。そのようなプロセスは、当業者に公知であり(Urabe et al.,2006)(Qu et al.,2007)(M.Lock et al.,2012)(Lee et al.,2009)、その全文が参照により本明細書に援用される。
【0164】
組成物は一般にウイルス生成物を生成するために用いられるプロセスの付加的な副生成物も含む。付加的な副生成物としては、例えばバッファー、細胞片、細胞タンパク質、細胞DNAおよび細胞培地の成分が挙げられる。
【0165】
本発明に従って処理する前に、さらなる処理ステップ、例えば1または複数の遠心分離、DNAseによる処理、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーを実行してよい。
【0166】
本発明は、ウイルス生成物を回収するためのプロセスを適宜に提供し、そのプロセスは、以下を含む:
(i)本明細書に定義されるウイルス生成物および本明細書に定義される生成物関連不純物を含む本明細書に定義される組成物を準備するステップ
(ii)所望により、遠心分離、DNAseによる処理、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーから選択される1または複数の処理ステップに組成物を付すステップ、および
(iii)得られる組成物を本明細書に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させるステップ。
【0167】
あるいは、本発明は、ウイルス生成物を回収するためのプロセスを適宜に提供し、そのプロセスは、以下を含む:
(i)本明細書に定義されるウイルス生成物および本明細書に定義される非生成物関連不純物を含む本明細書に定義される組成物を準備するステップ
(ii)所望により、遠心分離、DNAseによる処理、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーから選択される1または複数の処理ステップに組成物を付すステップ、および
(iii)得られる組成物を本明細書に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させるステップ。
【0168】
いくつかの実施形態では、ステップ(ii)は、少なくともアフィニティークロマトグラフィーを含む。
【0169】
ステップ(i)は一般にウイルスベクター生成プロセスを含み、それは他所に考察されるように公知の方法に従って実施されてよい。
【0170】
組成物は、一般に導電率が30mS/cmよりも低くなるように溶解塩濃度を有する。導電率は、好ましくは25mS/cmよりも低く、より好ましくは20mS/cmよりも低く、さらにより好ましくは15mS/cmよりも低く、さらにより好ましくは10mS/cmよりも低く、さらにより好ましくは9mS/cmよりも低く、さらにより好ましくは8mS/cm以下である。当業者は導電率を決定するために使用することのできる適した方法をよく認識している。
【0171】
本発明のプロセスは、回分法で(すなわち組成物および媒体を容器に入れて)、または連続法で(すなわち官能化されたクロマトグラフィー媒体が膜またはシートの形態であり、1または複数の前記膜/シートおよび所望により本明細書に定義される1または複数のフリットまたはその他のスペーサー材料を含むホルダーまたはカートリッジに組成物を通過させて)組成物を官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させることを含み得る。一般に、そのような実施形態では、(a)前記1または複数の膜/シートを通る経路長が2mm未満であり、かつ/あるいは(b)ホルダーに存在する膜、シート、フリットおよびその他のスペーサー材料を通る総経路長が50mm未満であるように、組成物をホルダーに通過させる。
【0172】
実施形態(a)では、組成物は、膜/シートではないホルダー内のその他の材料も通過することがあり、2mm経路長はこれらのその他の材料を含まないことを理解されたい。実施形態(b)では、50mm経路長にはホルダー内のその他の材料を含まれる。疑義を避けるために明記すると、上述の経路長はいずれもホルダー内の材料の層間に少しの空隙も含まない。
【0173】
本発明のプロセスは、高い流速で操作することができる。したがって、一般に本発明のクロマトグラフィープロセスでは、組成物は、官能化されたクロマトグラフィー媒体と、1分以下、好ましくは50秒以下、より好ましくは40秒以下、さらにより好ましくは30秒以下、さらにより好ましくは20秒以下、さらには15秒以下、12秒以下、10秒以下、8秒以下、6秒以下、4秒以下、2秒以下、1.5秒以下、さらには1秒以下の期間接触する。
【0174】
本発明のプロセスは、一般に、ウイルス生成物を官能化されたクロマトグラフィー媒体から回収するさらなるステップを含む。ウイルス生成物は、官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触すると、官能化されたクロマトグラフィー媒体に吸着される。このステップは、一般に、1以上の生体分子が吸着されている官能化されたクロマトグラフィー媒体を溶出緩衝液と接触させることによって達成することができる。一般に、これは時間に対してイオン強度が増加する液相と接触することを含む。これは、ウイルス生成物を選択的に溶出する。生成物関連不純物も官能化されたクロマトグラフィー媒体に吸着させることができる。非生成物関連不純物も官能化されたクロマトグラフィー媒体に吸着させることができる。ウイルス生成物は、溶出緩衝液のイオン強度を慎重に段階的に制御することによって、これらの不純物に優先して選択的に溶出させることができる。これは、そのようなクロマトグラフィー法の溶出段階について公知の従来法に従って実行することができる。したがって、本プロセスは、一般に結合-溶出クロマトグラフィー法である。
【0175】
結合ステップと溶出ステップの間に、本プロセスはウイルス生成物および/または生成物関連不純物および/または非生成物関連不純物を吸着した、官能化されたクロマトグラフィー媒体を洗浄するステップをさらに含んでよい。この洗浄ステップは、官能化されたクロマトグラフィー媒体またはクロマトグラフィーカートリッジに結合していない成分を除去するために実行される。これは、そのようなクロマトグラフィー法の洗浄段階について公知の従来法に従って実行することができる。この洗浄ステップは一般に、低イオン濃度の液相で洗浄することを含む。
【0176】
一般に、本発明のプロセスは、
(i)本明細書に定義される組成物を本明細書に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させるステップ;
(ii)所望により官能化されたクロマトグラフィー媒体を低イオン濃度の液相で洗浄するステップ;および
(iii)官能化されたクロマトグラフィー媒体を増加するイオン強度の液相と接触させることによって、ウイルス生成物および生成物関連不純物を選択的に溶出するステップ
を含む。
【0177】
あるいは、本発明のプロセスは、
(i)本明細書に定義される組成物を本明細書に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させるステップ;
(ii)所望により官能化されたクロマトグラフィー媒体を低イオン濃度の液相で洗浄するステップ;および
(iii)官能化されたクロマトグラフィー媒体を増加するイオン強度の液相と接触させることによって、ウイルス生成物および非生成物関連不純物を選択的に溶出するステップ
を含む。
【0178】
溶出ステップの後、本プロセスは、官能化されたクロマトグラフィー媒体を再生するステップをさらに含んでよい。一般に、これはウイルス生成物および/または生成物関連不純物が溶出された官能化されたクロマトグラフィー媒体を緩衝液と接触させることによって達成される。これは、そのようなクロマトグラフィー法の再生段階について公知の従来法に従って実行することができる。
【0179】
あるいは、ウイルス生成物は、官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触しても官能化されたクロマトグラフィー媒体に吸着されない。代わりに、生成物関連不純物は、官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触すると官能化されたクロマトグラフィー媒体に吸着されるようになることがある。したがって、生成物関連不純物はフロースルーステップの完了後に、官能化されたクロマトグラフィー媒体と実質的に結合したままであるので、ウイルス生成物および生成物関連不純物を含む組成物を含む溶液を、官能化されたクロマトグラフィー媒体を含むカートリッジに通して流すことによって、ウイルス生成物を生成物関連不純物に優先して選択的に回収することが可能である。
【0180】
あるいは、またはそれに加えて、非生成物関連不純物は、官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触すると官能化されたクロマトグラフィー媒体に吸着されるようになることがある。したがって、非生成物関連不純物はフロースルーステップの完了後に、官能化されたクロマトグラフィー媒体と実質的に結合したままであるので、ウイルス生成物および非生成物関連不純物を含む組成物を含む溶液を、官能化されたクロマトグラフィー媒体を含むカートリッジに通して流すことによって、ウイルス生成物を非生成物関連不純物に優先して選択的に収集することが可能である。
【0181】
したがって、本発明のプロセスは、あるいは、
(i)本明細書に定義される組成物を含む溶液を本明細書に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させるステップ;および
(ii)ステップ(i)で官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させた、ウイルス生成物を含む溶液を回収するステップ
を含む。
【0182】
一般に、本発明に従ってウイルス生成物を回収するプロセスは、1回の結合-溶出ステップまたは1回のフロースルーステップを含む。あるいは、本発明に従うプロセスは、連続した2以上の結合-溶出ステップ、例えば2、3、4、5以上の結合-溶出ステップを含んでよい。あるいは、本発明に従うプロセスは、連続した2以上のフロースルーステップ、例えば2、3、4、5以上のフロースルーステップを含んでよい。あるいは、本発明に従うプロセスは、連続した結合-溶出およびフロースルーステップの組合せ、例えば合計2、3、4、5以上のステップを含んでよい。
【0183】
一般に、ウイルス生成物は回収され、生成物関連不純物は廃棄される。一般に、非生成物関連不純物は廃棄される。しかし、特定の生成物関連不純物は、特定の用途に使用される可能性があるので、生成物関連不純物を二次生成物として回収することも想定される。
【0184】
本発明のプロセスは、ウイルス生成物を回収するためのものである。しかし、どんなクロマトグラフィープロセスもウイルス生成物を100%の純度で提供することができないことを理解されたい。したがって、本発明は、ウイルス生成物および生成物関連不純物を含む組成物から、元の組成物と比較してウイルス生成物が濃縮された生成物画分を回収するための手段を提供する。したがって、一般に、生成物画分は、組成物中に存在していたよりも大量の、ウイルス生成物および生成物関連不純物の総量の百分率として表されるウイルス生成物を含有する。一般に、ウイルス生成物および生成物関連不純物の総量の百分率として表される生成物画分中のウイルス生成物の量は、組成物中の量よりも10倍以上、好ましくは100、1000、10000、1×10^5、1×10^6、1×10^7、1×10^8、1×10^9、1×10^10、1×10^11、1×10^12、1×10^13、または1×10^14倍以上の倍率で大きい。
【0185】
したがって、一般に、ウイルス生成物および生成物関連不純物の総量の百分率として表される生成物画分中のウイルス生成物の量は、%PFで表される。これは100PFVP/(PFVP+PFI)で計算することができ、式中のPFVPは生成物画分中のウイルス生成物の量であり、PFIは生成物画分中の生成物関連不純物の量である。ウイルス生成物および生成物関連不純物の総量の百分率として表される元の組成物中のウイルス生成物の量は、%Cで表される。これは100CVP/(CVP+CI)として計算することができ、式中のCVPは組成物中のウイルス生成物の量であり、CIは、組成物中の生成物関連不純物の量である。
【0186】
本発明のプロセスは、一般に%PF≧10%Cとなるように、組成物中の量に対して生成物画分中のウイルス生成物の量を濃縮する。好ましくは、%PFは、100%C、1000%C、10000%C、%C×10^5、%C×10^6、%C×10^7、%C×10^8、%C×10^9、%C×10^10、%C×10^11、%C×10^12、%C×10^13、または%C×10^14よりも大きい。
【0187】
一般に、本発明のプロセスは、擬似または実際の移動床系を用いる。したがって一般に、本プロセスは、吸着剤として官能化されたクロマトグラフィー媒体を含有する複数の連結されたクロマトグラフィーカラムを有する、1または複数の擬似または実移動床クロマトグラフィー装置に組成物を導入することを含む。
【0188】
それが吸着剤として官能化されたクロマトグラフィー媒体を含むのであれば、クロマトグラフィープロセスを実行するためにどんな既知の擬似または実移動床装置を使用してもよい。
【0189】
擬似または実移動床クロマトグラフィーは、当業者のよく知る既知技法である。動作原理は、液体溶出相および固体吸着相の向流移動を含む。この動作は溶媒の使用を最小限にして、このプロセスを経済的に実行可能にする。そのような分離技術は、膜吸着剤を使用する生体分子の精製をはじめとする多様な分野に用途が見出されている。
【0190】
擬似移動床系は、直列に連結された、吸着剤を含有するいくつかの個々のカラムからなる。溶出剤は、第1の方向でカラムを通過する。原料および溶出剤の注入点、ならびに系の中の分離成分の回収点は、一連の弁によって周期的に変化する。全体的効果は、固体吸着剤の移動床を含有する1本のカラムの動作をシミュレーションすることである。したがって、擬似移動床系は、従来の固定床系と同様に、溶出剤が通過する固体吸着剤の固定床を含有するカラムで構成されるが、擬似移動床系では、動作は連続向流移動床をシミュレートするようなものである。
【0191】
実移動床系は、擬似移動床系と動作が類似している。しかし、供給混合物および溶出剤の注入点、および分離成分回収点を弁のシステムによって変化させるのではなく、代わりに一連の吸着ユニット(すなわちカラム)を供給点および排出点に対して物理的に移動させる。この場合もやはり、動作は連続向流移動床をシミュレートするようなものである。
【0192】
本発明者らは上に概説した官能化されたクロマトグラフィー媒体を使用することには、先行技術のウイルスベクター精製プロセスと比較していくつかの利点があることを見出した。
【0193】
1つの利点は、材料が比較的塩不耐性であることであり、そのため比較的低い塩濃度の溶出緩衝液を用いてウイルス生成物をクロマトグラフィー媒体から溶出することができることである。この低い塩濃度は、溶出緩衝液の導電率によって測定することができる。
【0194】
そのため、本発明は、本明細書に定義されるウイルス生成物を、前記生成物および本明細書に定義される生成物関連不純物を含む本明細書に定義される組成物から回収するためのプロセスも提供する。このプロセスは、組成物を塩不耐性のクロマトグラフィー媒体と接触させることを含み、塩不耐性のクロマトグラフィー媒体はウイルス生成物を10mS/cm未満の導電率で溶出することができる。
【0195】
あるいは、本発明は、本明細書に定義されるウイルス生成物を、前記生成物および本明細書に定義される非生成物関連不純物を含む本明細書に定義される組成物から回収するためのプロセスも提供する。このプロセスは、組成物を塩不耐性のクロマトグラフィー媒体と接触させることを含み、塩不耐性のクロマトグラフィー媒体はウイルス生成物を10mS/cm未満の導電率で溶出することができる。
【0196】
これらの実施形態では、塩不耐性のクロマトグラフィー媒体は、上に定義されるような塩不耐性材料である。
【0197】
塩不耐性のクロマトグラフィー媒体は、上に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と多くの点で類似しているが、高分子ナノファイバーを含むクロマトグラフィー媒体に限定されない。しかし、塩不耐性のクロマトグラフィー媒体は、一般に、(高分子ナノファイバーについて)上に定義されるポリマーの1または複数で形成される高分子媒体である。塩不耐性のクロマトグラフィー媒体はまた、一般に、上に定義されるように1または複数の配位基で官能化された、官能化された媒体である。
【0198】
さらなる利点は、充填ベクターを非充填ベクターから分離するために少量のクロマトグラフィー材料しか必要としないことである。
【0199】
そのため、本発明は、本明細書に定義されるウイルス生成物を、前記生成物および本明細書に定義される生成物関連不純物を含む本明細書に定義される組成物から回収するためのプロセスも提供する。このプロセスは、組成物を膜またはシートの形態のクロマトグラフィー媒体と接触させること、ならびに、1または複数の前記膜またはシートおよび所望により1または複数のフリットまたはその他のスペーサー材料を含むホルダーに組成物を通過させることを含み、
該組成物は、(a)前記1または複数の膜またはシートを通る経路長が2mm未満であるか、または(b)膜、シート、フリットおよびその他のスペーサー材料を通る総経路長が50mm未満であるようにホルダーを通過する。
【0200】
この実施形態では、クロマトグラフィー媒体は、上に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と多くの点で類似しているが、高分子ナノファイバーを含むクロマトグラフィー媒体に限定されない。しかし、クロマトグラフィー媒体は、一般に、(高分子ナノファイバーについて)上に定義されるポリマーの1または複数で形成される高分子媒体である。クロマトグラフィー媒体はまた、一般に、上に定義されるように1または複数の配位基で官能化された、官能化された媒体である。
【0201】
さらなる利点は、短い滞留時間が可能であることである。
【0202】
そのため、本発明は、本明細書に定義されるウイルス生成物を、前記生成物および本明細書に定義される生成物関連不純物を含む本明細書に定義される組成物から回収するためのプロセスも提供する。このプロセスは、組成物を膜またはシートの形態のクロマトグラフィー媒体と接触させること、ならびに、1または複数の前記膜またはシートおよび所望により1または複数のフリットまたはその他のスペーサー材料を含むホルダーに組成物を通過させることを含み、
該組成物は、1分以下の期間クロマトグラフィー媒体と接触する。
【0203】
この実施形態では、クロマトグラフィー媒体は、上に定義される官能化されたクロマトグラフィー媒体と多くの点で類似しているが、高分子ナノファイバーを含むクロマトグラフィー媒体に限定されない。しかし、クロマトグラフィー媒体は、一般に、(高分子ナノファイバーについて)上に定義されるポリマーの1または複数で形成される高分子媒体である。クロマトグラフィー媒体はまた、一般に、上に定義されるように1または複数の配位基で官能化された、官能化された媒体である。
【0204】
好ましい滞留(接触)時間は、上に定義される通りである。
【0205】
さらなる利点は、本発明に従うプロセスが、代わりの精製プロセスを使用した場合よりも、クロマトグラフィー分離ステップの間に無傷のまま残っているウイルス粒子の割合が大きいことを確実にすると考えられる点である。したがって、本発明に従うプロセスを実行することは、先行技術で公知のウイルス精製プロセスを実行するよりも損傷するウイルス粒子が少ないと考えられる。
【0206】
ウイルス生成物、不純物、組成物および使用
本発明は、本発明のプロセスによって得られるかまたは得ることのできるウイルス生成物を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、本発明のプロセスによって得られるかまたは得ることのできるウイルスベクターを提供する。そのような生成物は、本発明の微生物治療、ワクチン接種および遺伝子治療法で有利に使用することができる。
【0207】
また、本発明のプロセスによって得ることができるかまたは得られる生成物関連不純物も提供される。そのような不純物は通常廃棄されることになるが、特定の実施形態では、それらは治療、例えばワクチン接種において有用であることがある。
【0208】
また、本明細書に定義されるウイルス生成物を製薬上許容される担体または希釈剤とともに含む組成物も提供される。そのような組成物は、本発明の微生物治療、ワクチン接種および遺伝子治療法で使用することができる。
【0209】
また、本明細書に定義される生成物関連不純物を製薬上許容される担体または希釈剤とともに含む組成物も提供される。
【0210】
好ましい組成物は、汚染微生物および発熱物質を含まない。
【0211】
本発明のウイルス生成物(および所望により生成物関連不純物)は、多様な剤形で投与されてよい。したがって、それらは経口的に、例えば水性または油性懸濁液として投与されることができる。それらはまた、非経口的に、皮下に、静脈内に、筋肉内に、胸骨内に、経皮的に、または注入技術によって投与されてもよい。それらは吸入器またはネブライザーによってエアロゾルの形態で吸入によって投与されてもよい。
【0212】
経口投与用の製剤は、例えば、有効成分とともに、可溶化剤、例えばシクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリン;希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチまたはポテトスターチ;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤;例えばデンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;解凝集剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはデンプングリコール酸ナトリウム;発泡混合物;色素;甘味料;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリルサルフェートなど;ならびに、一般に、医薬製剤に使用される無毒で薬理学的に不活性な物質を含有してよい。
【0213】
経口投与用の分散液は、溶液、シロップ、乳濁液および懸濁液であってよい。溶液は、可溶化剤、例えばシクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリンを含有してよい。シロップ剤は、担体として、例えば、サッカロースまたはグリセリンを含むサッカロースおよび/またはマンニトールおよび/またはソルビトールを含有してよい。
【0214】
懸濁液および乳濁液は、担体として、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含有してよい。筋肉注射用の懸濁液または溶液は、活性化合物とともに、製薬上許容される担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコール;可溶化剤、例えばシクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリン、および必要に応じて適量の塩酸リドカインを含有してよい。
【0215】
静脈内または輸液用の溶液は、担体として、例えば、滅菌水および可溶化剤、例えばシクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリンを含有してよく、あるいは好ましくはそれらは滅菌された水性の等張性生理食塩水の形態であってよい。
【0216】
本発明のウイルス生成物は、例えば遺伝子治療または遺伝子ワクチン接種治療を実行する際に患者に治療用遺伝物質をインビボ送達するために有用であり、該ウイルス生成物には治療用遺伝物質が含まれる。用語「治療用遺伝物質」が、本明細書において、例えば治療上有用なタンパク質またはRNAの発現による、治療効果を得るために投与されるあらゆる遺伝物質または核酸を示すために使用されていることは理解されるであろう。そのような方法は、特にワクチン接種の場合に、所望により1または複数の生成物関連不純物を患者に投与することも含み得る。
【0217】
遺伝子治療は、限定されるものではないが、癌の治療(直接注射に適した局所到達可能な腫瘍結節、ならびに全身治療を必要とする転移性癌を含む)、パーキンソン病、X-SCID、鎌状赤血球症、レッシュ・ナイハン症状群、フェニルケトン尿症(PKU)、ハンチントン舞踏病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病、嚢胞性線維症、リソソーム蓄積症、心血管疾患および糖尿病を含むヒト疾患の全分野にわたって適用される。
【0218】
本発明のウイルス生成物は、ウイルスワクチンの送達にも使用されてよい。HIV、結核、マラリア、インフルエンザ、癌およびその他の疾患に対するワクチン接種が想定される。ワクチンは、プライム・ブースト法で(すなわち複数回投与によって)投与されてもよいし、アジュバントと組み合わせて投与されてもよい。
【0219】
本発明のウイルス生成物は、例えばウイルス療法をはじめとする微生物治療を実行する際に、治療薬を患者にインビボ送達するために有用である。
【0220】
ある種の実施形態では、本発明のウイルス生成物は、その他の薬物、例えば癌の治療に有効なその他の薬物と組み合わせて使用されることがある。
【0221】
ウイルス生成物は、ポリヌクレオチドを細胞に挿入するエクスビボ法で使用されてもよく、その方法は、エクスビボで細胞を本発明のウイルス生成物と接触させることを含む。そのようなエクスビボ法は、例えば、後に治療で使用するための細胞のエクスビボ操作を含むことがある。典型的な治療用途にはキメラ抗原受容体-T(CAR-T)癌治療がある。あるいは、エクスビボ法は、研究目的に、あるいは例えば遺伝子編集(CRISPRを含む)、例としてバイオ燃料の製造のための遺伝子組換え作物または酵素の作製に使用されることがある。
【0222】
このエクスビボ法に従って改変された細胞は、その後、治療薬として患者に投与され得る。本発明は、本発明のエクスビボ法によって得られるかまたは得ることのできる細胞を提供する。そのため、本発明は、本発明のエクスビボ法に従って改変された1または複数の細胞を、それを必要とする患者に投与することを含む治療方法も提供する。治療によって、例えば癌の治療において、ヒトまたは動物の体を治療する方法で使用するための、本発明のエクスビボ法に従って改変された1または複数の細胞も提供される。
【0223】
以下の実施例は本発明を説明する。
【0224】
実施例
材料および装置
特に断りのない限り、全ての化学生成物は、Fisher Scientific、シグマ-アルドリッチ、FluoroChem、Repligen、およびVWRなどの会社から入手されたかまたは入手可能である。
【0225】
洗浄プロトコール
洗浄プロトコールA
反応媒体を等量の脱イオン水と交換し、1時間循環させた。すすぎ手順をさらに1回繰り返した。最後に、材料を等量の水性エタノール(2:1-H2O:EtOH)で処理した後、反応器から取り出した。
【0226】
洗浄プロトコールB
反応媒体を等量の脱イオン水と交換し、1時間循環させた。この後、洗浄媒体を0.01M HClと交換し、これを1時間循環させた後、それを0.001M HClと交換して1時間循環させた。最後に、媒体をH2O:EtOHの2:1混合物と交換し、それを1時間循環させた。次に、誘導体化したナノファイバーを反応器から取り出した。
【0227】
洗浄プロトコールC
反応媒体を等量の温(60℃)脱イオン水:アセトンの1:1混合物と交換し、これを30分間循環させた。洗浄手順をさらに2回繰り返した。最後に、媒体をH2O:EtOHの2:1混合物と交換し、それを1時間循環させた。次に、誘導体化したナノファイバーを反応器から取り出した。
【0228】
洗浄プロトコールD
2Lの超純水をナノファイバー材料に送り出した。
【0229】
洗浄プロトコールE
反応媒体を等量の1:1-脱イオン水:EtOHと交換し、1時間循環させた。洗浄手順をさらに2回繰り返した。最後に、媒体をH2O:EtOHの2:1混合物と交換し、それを1時間循環させた。次に、誘導体化したナノファイバーを反応器から取り出した。最後に、媒体をH2O:EtOHの2:1混合物と交換し、それを1時間循環させた。次に、誘導体化したナノファイバーを反応器から取り出した。
【0230】
洗浄プロトコールF
反応媒体を超高純度の脱イオン水と交換した。ナノファイバー材料を清浄水中で30分間穏やかに撹拌した。この後、洗浄媒体を交換し、洗浄サイクルを繰り返した。
【0231】
洗浄プロトコールG
反応媒体を注ぎ出し、流出液のpHが中性または弱酸性になるまでビーカーに水を補充した。
【0232】
I 材料の調製
調製例1
相対分子量が29,000g/molの酢酸セルロース溶液を、電界紡糸の前に一般的な溶媒に溶解して、300~600nmの間の範囲の直径をもつ繊維を製造した。ナノファイバー作製のための最適化された条件は、例えば、O.Hardick、et al,J.Mater.Sci.46(2011)3890に見出すことができ、その全文は参照により本明細書に援用される。約20g/m2材料のシートを積層し、加熱および加圧を組み合わせた処理を施した。
【0233】
参考例1-塩化トリメチルアンモニウムの官能基化
ナノファイバー材料を、以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
ステップ(i):酢酸セルロース(CA)の再生セルロース(RC)への鹸化
【0234】
【化1】
調製例1の方法に従って得た酢酸セルロースシート(44
*32mm
*150mm)を、2:1-水:エタノール中0.075M水酸化ナトリウム溶液5Lを含有する大型ビーカーの中に入れた。反応混合物を室温で48時間循環させた。次に、洗浄プロトコールAに従って材料を洗浄した。
【0235】
ステップ(ii):塩化グリシジルトリメチルアンモニウムの誘導体化
【0236】
【化2】
ステップ(i)で得た材料を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。反応媒体を15分間循環させた後、塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(25mL、100mL)を一度に添加した。反応媒体をさらに16時間室温で循環させた。次に、洗浄プロトコールBに従って材料を洗浄した。
【0237】
塩化トリメチルアンモニウムの含量を以下の方法によって決定した。50mgの材料をブフナー濾過漏斗で100mLの0.1M HCl溶液で洗浄し、次にさらに100mLの0.01M HCl溶液で洗浄した。次に、材料を75℃の乾燥オーブンに入れ、一定質量になるまで乾燥させた後、細かくちぎって小片にした後、50mL遠心管の中に入れた。次に、小型の磁気撹拌子および15mLの脱イオン水を約1mLのクロム酸カリウム溶液(乳首ピペットを介して添加)とともに添加すると、混合物の色は黄色になった。混合物を20分間激しく撹拌した後、0.1M硝酸銀で滴定した。滴定のエンドポイントは透明な黄色から曇った褐色への色の変化によって確認される。
【0238】
塩化トリメチルアンモニウム含量(μmol/g)を、エンドポイントに達するまで添加した硝酸銀のマイクロモル数/滴定で用いたナノファイバー材料のグラム数として計算した。
【0239】
25mLのGMACで処理した試料の塩化トリメチルアンモニウム含量(μmol/g)は308であることが分かった。100mLのGMACで処理した試料の塩化トリメチルアンモニウム含量(μmol/g)は775であることが分かった。
【0240】
調製例3-グリシドール/塩化トリメチルアンモニウムの官能基化
ナノファイバー材料を、以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
【0241】
【化3】
ステップ(i):酢酸セルロース(CA)の再生セルロース(RC)への鹸化
【0242】
【化4】
調製例1の方法に従って得た酢酸セルロースシート(44
*32mm
*150mm)を、2:1-水:エタノール中0.075M水酸化ナトリウム溶液5Lを含有する大型ビーカーの中に入れた。反応混合物を室温で48時間撹拌した。次に、洗浄プロトコールAに従って材料を洗浄した。
【0243】
ステップ(ii):グリシドール重合
【0244】
【化5】
ステップ(i)の材料を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。反応媒体を15分間循環させた後、グリシドール(180mL)を一度に注意深く添加した。反応媒体を室温で16時間循環させ、続いて材料を洗浄プロトコールBに従って洗浄した。
【0245】
ステップ(iii):塩化グリシジルトリメチルアンモニウムの誘導体化
【0246】
【化6】
ステップ(ii)で得た材料を一般に1Lの0.5M NaOHに懸濁した。反応媒体を15分間循環させた後、塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(50mL、100mL)を一度に添加した。反応媒体をさらに16時間室温で循環させた。次に、洗浄プロトコールCに従って材料を洗浄した。
【0247】
塩化トリメチルアンモニウムの含量を調製例2の方法を用いて決定した。
【0248】
50mLのGMACで処理した試料の塩化トリメチルアンモニウム含量(μmol/g)は523であることが分かった。100mLのGMACで処理した試料の塩化トリメチルアンモニウム含量(μmol/g)は775であることが分かった。
【0249】
調製例4-アデノウイルス(AV)ベクターの調製
アデノウイルスベクターは、既知方法と同様に調製した。
【0250】
このように、アデノウイルスベクターは、HEK-293細胞培養で作製された。アデノウイルスベクターの作製方法は、Volume 1:Adenoviruses,Ad Vectors,Quantitation,and Animal Models
Editors:William S.M.Wold,Ann E.Tollefson ISBN:978-1-58829-598-9(印刷)978-1-59745-166-6(オンライン)に論じられている。細胞を、凍結融解サイクルを用いて溶解し、得られる材料を遠心分離を用いて精製し、続いてDNAse(ベンゾナーゼ)で処理した(Wright et al.,2005)。得られる物質を10mMトリス緩衝液中に透析した。
【0251】
調製例5-アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの調製
緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするDNAの配列からなるペイロードを含有するアデノ随伴ウイルスベクターを、既知方法と同様に調製した。
【0252】
このように、アデノ随伴ウイルスベクターは、HEK-293細胞培養で作製された(Martin Lock et al.,2010)。細胞を溶解し、得られる材料を濾過を用いて精製し、続いてDNAse(ベンゾナーゼ)で処理した(Wright et al.,2005)、続いてサイズ排除クロマトグラフィーを行った(Chromatographic purification of recombinant adenoviral and adeno-associated viral vectors:methods and implications;Gene Therapy (2005)12,S5-S17.doi:10.1038/sj.gt.3302611;http://www.nature.com/gt/journal/v12/n1s/full/3302611a.html)。得られる材料を、Bis Tris Propan 10mM pH8に透析した。
【0253】
調製例6-アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの代替調製
緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするDNAの配列からなるペイロードを含有するアデノ随伴ウイルスベクターを、上に考察されるように既知方法と同様に調製した。
【0254】
このように、アデノ随伴ウイルスベクターは、HEK-293細胞培養で作製された。細胞を溶解し、得られる材料を、濾過(0.45μm、0.22μm)を用いて精製した。得られる材料を、Bis Tris Propan 10mM pH8に透析した。
【0255】
II 材料の分析
分析例1-クロマトグラフィー材料のDBC
負荷材料を、AKTA Pureシステム(GEヘルスケア)のホルダー内に含有される選択された官能化ナノファイバーディスクに通した。材料を、決定された膜容量/分の流量(mV/分)で、ホルダー出口後の濃度が、UVフローセルによって決定されるその負荷の10%を超えるまで負荷した。システムおよびホルダー装置のデッドボリュームを考慮して、10%破過でディスクに負荷されたタンパク質の総量を、Unicornソフトウェア(GEヘルスケア)のクロマトグラムの分析によって決定した。
【0256】
陰イオン交換材料には、負荷材料は、10mM Tris、pH8中1mg/mL BSAであった。
【0257】
調製例2および3の様々な材料のDBCを決定した。試験した材料は、下の表1の材料1~4として示され、DBCは
図1に示される。
【0258】
【表1】
図1から、材料の電荷密度が上昇するとBSAのDBCが増加することが分かる。材料と共有結合したポリマーの量が増加してもBSAのDBCが増加する。BSAの最大容量は最少量の7.6倍である。
【0259】
II ウイルス材料の分離
実施例1-アデノウイルス材料(AV)の分離
調製例4で作製したアデノウイルス材料を、調製例2および3で作製した材料を用いて結合-溶出クロマトグラフィー分離プロセスに付した。
【0260】
以下のクロマトグラフィー法を分離に用いた。
【0261】
【表2】
クロマトグラムの分析
材料1~4について得られるクロマトグラムを
図2~4で比較する。
【0262】
図2は、材料1と2を比較する。これは、グラフトされていない材料の電荷密度の増加がクロマトグラムの形状を実質的に変えることを示す。材料2を使用したクロマトグラムには、第2の種も存在すると思われる。
【0263】
ポリマー鎖が共有結合している(グラフトされている)材料には、反対の関係が見られる。
図3は、材料3と4を比較する。このことは、グラフトされた材料に関して、電荷密度および吸着剤の(BSAに対する)結合容量が増加すると、分離の見掛分解(apparent resolution)が低下することを示す。
【0264】
同じ電荷密度のグラフトされた材料とグラフトされていない材料を比較すると、グラフトされていない材料についてより良好な分解が達成され、種の分解は電荷密度のより高い材料を使用すると改善されることが分かる。
【0265】
【0266】
アデノウイルス容量データ
4つの異なるクロマトグラフィープロセス(材料1~4を使用)についての総溶出面積を比較して材料の容量を決定した。結果を
図5に示す。このことから、最大結合材料は最小結合材料の1.8倍多くのAdVと結合することが分かる。
【0267】
意外にも、AdV調製物に対する容量の差は、最も強い結合と最も弱い結合の差が7.6倍であったBSAに対する同じ材料の容量の差と比較してもあまり顕著ではない。
【0268】
このことは、BSA(66KDa)などの高い結合容量の小分子に最適化された材料が、何桁も大きい大型のベクター材料(20~110nm)を結合および分離するのには適さない場合があることを示している。
【0269】
実施例2-アデノ随伴ウイルス(AAV)材料の分離
調製例5で作製したアデノウイルス材料を、820μmol/gの電荷密度を有する調製例2の方法に従って作製した材料を使用して、結合-溶出クロマトグラフィー分離プロセスに付した。それは120mLのGMACを使用して、調製例2の方法を使用して調製された。
【0270】
以下のクロマトグラフィー法を分離に用いた。
【0271】
【表3】
クロマトグラムの分析
得られるクロマトグラムを
図6として示す。この図は2つの明白なピークを示し、これらは充填ベクター材料および非充填ベクター材料であると考えられた。既知技法(ウエスタンブロット法およびPCR)を使用してこれをさらに分析した。
【0272】
ウエスタンブロット解析
図6のピーク1および2を、既知方法を用いてウエスタンブロットによってAAVベクターカプシドタンパク質について解析した(例えばhttp://www.abcam.com/ps/pdf/protocols/wb-beginner.pdfに考察される通り)。ウエスタンブロット法のトレースを
図7として示す。この図から、負荷中に存在するカプシドタンパク質もピーク1と2の両方に存在することが分かる。
【0273】
PCR分析
PCR分析を
図6のピーク1および2の画分に実行してGFP DNA配列を増幅した。これは既知方法を用いて実行した(Martin Lock et al.,2010)。
【0274】
PCR分析の結果を
図8として示す。この図は、GFP DNA配列を含有するのがピーク2であることを明らかに示す。これにより、活性充填ベクターを含有するのがピーク2であることが明らかである。しかしながらピーク1はGFP DNA配列を含有しない。
【0275】
図7および
図8を総合すると、本発明のクロマトグラフィー分離プロセスは、充填材料と非充填ベクター材料の混合物をDNA含有充填ベクターとDNAペイロードを含有しないベクターとに分離したことは明らかである。
図6に戻って参照すると、充填ピークと非充填ピークの両方が6mS未満の導電率で溶出することが明らかである。
【0276】
実施例3-本発明のプロセスとCsCl勾配遠心分離の比較
調製例6で作製したアデノウイルス材料を、上の実施例2と同じ材料および方法を使用して結合-溶出クロマトグラフィー分離プロセスに付した。
【0277】
260nmと280nmのシグナルとの特徴的な関係(
図6に見られる通り)を用いて同定された充填ピークを収集し、ビス・トリスプロパン 10mM pH8中に透析した。
【0278】
同じアデノウイルス材料の別個の試料(調製例6で作製)も、既知方法(Martin Lock et al.,2010)を用いるCsCl勾配遠心分離に付した。充填ウイルス材料と非充填ウイルス材料の両方がこの方法(ビス・トリスプロパン 10mM pH8中に透析)によって得られ、それぞれ、CsCl充填およびCsCl非充填として同定された。次に、この材料を、本発明のプロセスを用いて分離した材料と比較した。
【0279】
本発明のクロマトグラフィー分離から得た精製された充填材料を、実施例2と同じ材料および方法を用いて分析した。基本的に、同じ材料および方法が使用されるが、調製クロマトグラフィーよりも分析的に使用される。クロマトグラムを作製して材料を特徴づけた。
【0280】
CsCl充填材料を同じ方法で分析した。クロマトグラムを作製して材料を特徴づけた。
【0281】
充填材料とCsCl充填材料のクロマトグラムを重ねて
図9として示す。この図から、2つのトレースの間には高いレベルの類似性があり、2つの方法の生成物が同等であることを示していることが分かる。
【0282】
CsCl法と本発明のプロセスをさらに比較するために、CsCl非充填材料を充填材料と混合し、得られる混合物を上記の充填材料およびCsCl充填材料と同じ方法で分析した。
【0283】
クロマトグラムを生成した。充填ピークと汚染物質ピークの相対サイズを
図10で比較する。
【0284】
この図から、CsCl非充填材料のスパイクは、充填ピークのサイズに寄与しないことが分かる。このことは、充填ピーク(したがって本発明のプロセスを用いて得た充填画分)が非充填ベクターを含有しないことを示す。
図10から、CsCl非充填材料が汚染物質ピークに大きく寄与していることも分かる。このことは、本発明の方法を用いて作製された充填ピーク(それ故に画分)が高純度であることを示す。
【0285】
参考文献
本明細書に引用される全ての参考文献は参照により本明細書に援用される。
【0286】
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[実施態様1]
ウイルス生成物を前記生成物および生成物関連不純物を含む組成物から回収するためのプロセスであって、前記プロセスは、前記組成物を、1または複数の高分子ナノファイバーを含む、官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させるステップを含み、
前記ウイルス生成物は、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコア、またはプロウイルスを含み、その各々は1または複数のポリヌクレオチドを含有し、かつ
前記生成物関連不純物は、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスを含み、その各々はポリヌクレオチドを実質的に含まない、プロセス。
[実施態様2]
前記ウイルス生成物が、複数のウイルス、ウイルス粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコア、またはプロウイルスを含み、その各々が細胞を感染させる能力を有する、実施態様1に記載のプロセス。
[実施態様3]
前記ウイルス生成物が、複数のウイルスベクターを含み、その各々が1または複数のトランスジェニックポリヌクレオチドを含有する、実施態様1乃至2のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様4]
前記生成物関連不純物が、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスを含み、その各々が細胞を感染させることができない、実施態様1乃至3のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様5]
前記生成物関連不純物が、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルス様粒子 ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコアまたはプロウイルスを含み、その各々が完全なウイルスゲノムを欠く、実施態様1乃至4のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様6]
前記ウイルスが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレンチウイルスから選択される、実施態様1乃至5のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様7]
前記ウイルスが、アデノ随伴ウイルスから選択される、実施態様1乃至6のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様8]
前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、1または複数の不織布高分子ナノファイバーで形成されている、実施態様1乃至7のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様9]
前記1または複数の高分子ナノファイバーが、同じであっても異なっていてもよい1または複数の配位基で官能化されていて、それが、前記1または複数の配位基を含む前記高分子ナノファイバーをクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする、実施態様1乃至8のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様10]
同じであっても異なっていてもよい1または複数の配位基が、前記1または複数の高分子ナノファイバーに結合している、実施態様9に記載のプロセス。
[実施態様11]
前記1または複数の高分子ナノファイバーが、同じであっても異なってもよく、それと共有結合している、1または複数のポリマー鎖を有する、実施態様1乃至10のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様12]
前記同じであっても異なっていてもよい1または複数のポリマー鎖が、同じであっても異なっていてもよく、それと結合していて、前記1または複数のポリマー鎖および1または複数の配位基を含む前記高分子ナノファイバーをクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものにする、1または複数の配位基を有する、実施態様11に記載のプロセス。
[実施態様13]
前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、イオン交換、疎水性相互作用および混合モード法からなる群から選択されるクロマトグラフィー法での使用に適している、実施態様1乃至12のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様14]
前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、50μmol/g~1,500μmol/gの官能化されたクロマトグラフィー媒体中の配位基の密度を有する、実施態様1乃至13のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様15]
前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、最大50mg/mL(10%破過)の動的結合容量を有する、実施態様1乃至14のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様16]
前記組成物が、導電率が30mS/cm未満となるような溶解塩濃度を有する、実施態様1乃至15のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様17]
前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、膜またはシートの形態である、実施態様1乃至16のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様18]
前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が膜またはシートの形態であり、前記組成物が1または複数の前記膜またはシートおよび所望により1または複数のフリットまたはその他のスペーサー材料を含むホルダーを通過する、実施態様1乃至17のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様19]
前記組成物が、(a)前記1または複数の膜/シートを通る前記経路長が2mm未満であり、または(b)膜、シート、フリットおよびその他のスペーサー材料を通る前記総経路長が50mm未満であるように、前記ホルダーを通過する、実施態様18に記載のプロセス。
[実施態様20]
前記組成物が官能化されたクロマトグラフィー媒体と1分以下の時間接触する、実施態様1乃至19のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様21]
(i)前記組成物を前記官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させるステップと;
(ii)所望により前記官能化されたクロマトグラフィー媒体を低イオン濃度の液相で洗浄するステップと;
(iii)前記官能化されたクロマトグラフィー媒体を増加するイオン強度の液相と接触させることによって、前記ウイルス生成物および前記生成物関連不純物を選択的に溶出するステップと
を含む、実施態様1乃至20のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様22]
(i)前記組成物を含む溶液を前記官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させるステップと;
(ii)ステップ(i)で前記官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させた、前記ウイルス生成物を含む前記溶液を回収するステップと
を含む、実施態様1乃至20のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様23]
前記高分子ナノファイバーがセルロースナノファイバーである、実施態様1乃至22のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様24]
前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が、1または複数の荷電基で官能化されている、実施態様1乃至23のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様25]
前記1または複数のポリヌクレオチドが、DNAおよびsiRNAを含むRNAから選択される1または複数の核酸である、実施態様1乃至24のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様26]
実施態様1乃至3、6および7のいずれか1項に記載のウイルス生成物を、実施態様1および4乃至7のいずれか1項に記載の前記生成物および生成物関連不純物を含む実施態様1および16のいずれか1項に記載の組成物から回収するためのプロセスであって、前記プロセスは前記組成物を塩不耐性のクロマトグラフィー媒体と接触させることを含み、前記塩不耐性のクロマトグラフィー媒体は、前記ウイルス生成物を10mS/cm未満の導電率で溶出することができる、プロセス。
[実施態様27]
実施態様1乃至3、6および7のいずれか1項に記載のウイルス生成物を、実施態様1および4乃至7のいずれか1項に記載の前記生成物および生成物関連不純物を含む実施態様1および16のいずれか1項に記載の組成物から回収するためのプロセスであって、前記プロセスが、前記組成物を膜またはシートの形態のクロマトグラフィー媒体と接触させることを含み、前記組成物が1または複数の前記膜またはシートおよび所望により1または複数のフリットまたはその他のスペーサー材料を含むホルダーを通過し、
前記組成物が、(a)前記1または複数の膜/シートを通る前記経路長が2mm未満であり、または(b)膜、シート、フリットおよびその他のスペーサー材料を通る前記総経路長が50mm未満であるように前記ホルダーを通過する、プロセス。
[実施態様28]
実施態様1乃至3、6および7のいずれか1項に記載のウイルス生成物を、実施態様1および4乃至7のいずれか1項に記載の前記生成物および生成物関連不純物を含む実施態様1および16のいずれか1項に記載の組成物から回収するためのプロセスであって、前記プロセスが、前記組成物を膜またはシートの形態のクロマトグラフィー媒体と接触させることを含み、前記組成物が1または複数の前記膜またはシートおよび所望により1または複数のフリットまたはその他のスペーサー材料を含むホルダーを通過し、
前記組成物が1分以下の期間クロマトグラフィー媒体と接触する、プロセス。
[実施態様29]
前記生成物関連不純物が二次生成物として回収される、実施態様1乃至28のいずれか1項に記載のプロセス。
[実施態様30]
ウイルス生成物を前記生成物および非生成物関連不純物を含む組成物から回収するためのプロセスであって、組成物を、1または複数の高分子ナノファイバーを含む官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させることを含み、
前記ウイルス生成物は、複数のウイルス、ウイルス粒子/ビリオン、ウイルスコア、膜が除去されたウイルス、1または複数の外膜が除去されかつ/またはカプシドが除去されたウイルスコア、またはプロウイルスを含み、その各々は1または複数のポリヌクレオチドを含有し、かつ
前記非生成物関連不純物は、細胞および/または細胞成分、例えば脂質、宿主細胞タンパク質および/または宿主細胞増殖培地のその他の構成要素、例えばタンパク質および/または糖などを含む、プロセス。
[実施態様31]
実施態様1乃至30のいずれか1項に記載のプロセスによって得ることができるかまたは得られるウイルス生成物。
[実施態様32]
実施態様1乃至29のいずれか1項に記載のプロセスによって得ることができるかまたは得られる生成物関連不純物。
[実施態様33]
実施態様31に記載のウイルス生成物を製薬上許容される担体または希釈剤とともに含む組成物。
[実施態様34]
実施態様32に記載の生成物関連不純物を製薬上許容される担体または希釈剤とともに含む組成物。
[実施態様35]
微生物治療、ワクチン接種または遺伝子治療のプロセスであって、そのような治療を必要とする患者に有効量の実施態様31に記載のウイルス生成物または実施態様33に記載の組成物を投与することを含む方法。
[実施態様36]
微生物治療、ワクチン接種または遺伝子治療の方法で使用するための、実施態様31に記載のウイルス生成物または実施態様33に記載の組成物。
[実施態様37]
ポリヌクレオチドを細胞に挿入するエクスビボ法であって、前記細胞を実施態様31に記載のウイルス生成物と接触させることを含む、方法。
[実施態様38]
実施態様37に記載の方法によって得られるかまたは得ることのできる細胞。
[実施態様39]
実施態様38に記載の1または複数の細胞を、それを必要とする患者に投与することを含む治療方法。
[実施態様40]
治療によってヒトまたは動物の体を治療する方法で使用するための、実施態様38に記載の細胞。
[実施態様41]
癌を治療する際に使用するための、実施態様38に記載の細胞。