(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20220912BHJP
【FI】
F16H61/02
(21)【出願番号】P 2018138342
(22)【出願日】2018-07-24
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 憲一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】松本 直樹
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-170606(JP,A)
【文献】特開2014-118947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン、トルクコンバータ、変速機および駆動輪を伝達経路の配列順とし、
前記トルクコンバータにオイルを供給するオイルポンプと、
前記トルクコンバータからオイルが抜けていると推定したとき、前記オイルポンプによる前記トルクコンバータへのオイル供給量を増大させるコントローラと、
を有する車両制御装置であって、
前記コントローラは、
前記トルクコンバータのトルク比tに容量係数τを乗じたtτの値に基づいて、前記トルクコンバータからオイルが抜けているか否かを推定する車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トルクコンバータからのオイルの抜けを推定したとき、オイルポンプによるトルクコンバータへのオイル供給量を増大させるにあたり、エンジン始動時のトルクコンバータの速度比に基づいて、トルクコンバータからオイルが抜けているか否かを推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術にあっては、エンジン始動時におけるトルクコンバータの速度比は時々刻々と変化するため、推定精度が低下するおそれがあった。
本発明の目的の一つは、トルクコンバータのオイル抜けの推定精度を向上できる車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る車両制御装置では、エンジン始動時のタービン回転数の上昇勾配に基づいて、トルクコンバータからオイルが抜けているか否かを推定する。
【発明の効果】
【0006】
よって、トルクコンバータのオイル抜けの推定精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施形態1の車両制御装置の制御ブロック図である。
【
図3】変速機コントローラ12のオイル抜け推定制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】エンジン回転数センサ42およびタービン回転数センサ43の実波形から算出したトルクコンバータ2の速度比eとtτとの関係図である。
【
図5】オイル抜けが生じていない場合の実施形態1におけるオイル抜け推定作用を示すタイムチャートである。
【
図6】オイル抜けが生じている場合の実施形態1におけるオイル抜け推定作用を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1の車両制御装置の概略図である。
実施形態1の車両は、動力源としてエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、トルクコンバータ2、第1ギヤ列3、バリエータ20、副変速機30(以下、バリエータ20と副変速機30を合わせて、単に「変速機4」という。)、第2ギヤ列5、終減速装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。
また、車両には、エンジン1を制御するエンジンコントローラ1a、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるオイルポンプ10と、オイルポンプ10からの油圧を調圧して変速機4およびトルクコンバータ2に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11を制御する制御装置としての変速機コントローラ12とが設けられている。
【0009】
各構成について説明する。トルクコンバータ2は、ポンプインペラ2a、タービンランナ2bおよびロックアップクラッチ2cを有する。ポンプインペラ2aは、エンジン1に連結されている。タービンランナ2bは、第1ギヤ列3に連結されている。ロックアップクラッチ2cは、ポンプインペラ2aとタービンランナ2bとを一体的に連結可能である。変速機4は、バリエータ20と、バリエータ20に対して直列に設けられる副変速機30とを備える。「直列に設けられる」とは同動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機30が直列に設けられるという意味である。副変速機30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていてもよい。
【0010】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21,22の間に掛け回されるVベルト23とを備えるベルト式無段変速機である。プーリ21,22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a,23bとを備える。油圧シリンダ23a,23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21,22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比vRatioが無段階に変化する。
【0011】
副変速機30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)とを備える。各摩擦締結要素32~34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32~34の締結・解放状態を変更すると、副変速機30の変速段が変更される。例えば、Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33およびRevブレーキ34を解放すれば副変速機30の変速段は1速となる。Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32およびRevブレーキ34を解放すれば副変速機30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。また、Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32およびHighクラッチ33を解放すれば副変速機30の変速段は後進となる。
【0012】
図2は、実施形態1の車両制御装置の制御ブロック図である。
変速機コントローラ12は、
図2に示すように、CPU121と、RAMおよびROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125とから構成される。
入力インターフェース123には、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ41の出力信号、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転数センサ42、タービン回転数(トルクコンバータ2の出力回転数)Ntを検出するタービン回転数センサ43、車速VSP(副変速機30の出力回転数)を検出する車速センサ44の出力信号、セレクトレバーの位置を検出するインヒビタスイッチ45の出力信号(レンジ信号)等が入力される。ドライバは、セレクトレバーの操作により変速機4の各レンジ(P,R,N,D,S,L)を選択可能である。Sレンジは、いわゆる2速レンジであり、Dレンジよりも低速側の変速比での変速のみが許容されている。Lレンジは、いわゆる1速レンジであり、Sレンジよりもさらに低速側の変速比での変速のみが許容されている。
【0013】
記憶装置122には、変速機4の変速制御プログラム、およびこの変速制御プログラムで用いられる変速マップ等が格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されている変速制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して変速制御信号を生成し、生成した変速制御信号を、出力インターフェース124を介して油圧制御回路11に出力する。
油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、変速機コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り替えると共にオイルポンプ10で発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4およびトルクコンバータ2に供給する。これにより、バリエータ20の変速比vRatio、副変速機30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われると共に、ロックアップクラッチ2cの締結または締結解除が行われる。
【0014】
エンジンコントローラ1aは、アクセル開度APO等の各入力情報に基づき、エンジン1の運転状態に応じて、気筒毎に設けられた各インジェクタから所定気筒に所定量の燃料を噴射する。また、ドライバがアクセルペダルから足を離したアクセルペダル解放時には、コースト走行中の燃料消費の無駄を防止するために、燃料供給を中止するフューエルカットを行う。
また、エンジンコントローラ1aは、各入力情報に基づき、エンジン1の運転状態に応じて、気筒毎に設けられた点火装置を介して所定気筒の点火栓を所定タイミングで点火させる。これにより、エンジン1は所定の通りに運転され、コースト走行中は所定の通りにフューエルカットされる。さらに、エンジンコントローラ1aは、エンジン回転が所定のリカバー閾値以下まで低下すると、各インジェクタから所定気筒に所定量の燃料を再噴射するフューエルカットリカバーを行うことによりエンジンストールを防止する。
【0015】
車両が長時間停止状態にある場合、トルクコンバータ2内のオイルが重力で抜けてしまい、次のエンジン始動時にオイルポンプ10が作動してもトルクコンバータ2にオイルが充填されるまでに時間が掛かり、トルクコンバータ2が駆動力を伝達できず、車両の発進が遅れる問題があった。そこで、変速機コントローラ12は、エンジン始動時にトルクコンバータ2からオイルが抜けているか否かを推定し、オイルが抜けていると推定した場合には、レンジ信号がD,R以外のレンジからDまたはRレンジに切り替わったとき、所定時間が経過するまでの間、エンジン1のアイドル回転数を上昇させるアイドルアップ要求をエンジンコントローラ1aへ出力する。所定時間は、トルクコンバータ2に充分なオイル充填が行われると予測できる時間とする。エンジンコントローラ1aは、アイドルアップ要求を受けると、エンジン回転数Neを通常の目標アイドル回転数に対して所定回転数だけ上昇させるアイドルアップ制御を実行する。このアイドルアップ制御により、オイルポンプ10の吐出流量が増大するため、トルクコンバータ2のオイル充填が速やかに行われて、トルクコンバータ2のオイル抜けに伴う車両の発進性能の低下を抑制できる。
【0016】
ここで、トルクコンバータ2のオイル抜けの推定精度が低い場合、車両の発進性能の低下を抑制できず、さらに不要なアイドルアップ制御の介入による燃費悪化を招くおそれがある。そこで、実施形態1では、トルクコンバータ2のオイル抜けの推定精度を向上することを狙いとし、変速機コントローラ12は、以下に示すようなオイル抜け推定制御を実行する。
図3は、変速機コントローラ12のオイル抜け推定制御処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1では、エンジン1が始動したかを判定する。YESの場合はステップS2へ進み、NOの場合はリターンへ進む。ここでは、エンジン回転数Neがあらかじめ設定された始動判定閾値(例えば、500rpm)以上である場合には、エンジン1が始動したと判定し、エンジン回転数Neが始動判定閾値未満である場合には、エンジン1が始動していないと判定する。
【0017】
ステップS2では、トルクコンバータ2のトルク比tにトルク容量係数τを乗じたtτ0およびトルクコンバータ2の速度比e0(=Nt/Ne)を算出する。tτ0は下記の式(1)を用いて算出する。
tτ0=(ItΔNt/Δt+Tf)/Ne2 …(1)
ここで、Itはトルクコンバータ2のイナーシャ、ΔNt/Δtはタービン回転数変化率、Tfはフリクショントルクである。イナーシャItおよびフリクショントルクTfは、あらかじめ実験やシミュレーション等により求められる。また、タービン回転数変化率ΔNt/Δtは、タービン回転数センサ43により検出されたタービン回転数Ntの1階微分により求められる。
ステップS3では、平均速度比eが0.5であるかを判定する。YESの場合はステップS4へ進み、NOの場合はステップS2へ戻る。平均速度比eは、エンジン回転数Neが500rpmに達してから(ステップS1でYESと判定されてから)現在までに算出された速度比e0の平均値とする。
ステップS4では、平均tτが目標tτ*よりも小さいかを判定する。YESの場合はステップS5へ進み、NOの場合はリターンへ進む。平均tτは、エンジン回転数Neが500rpmに達してから現在までに算出されたtτ0の平均値とする。目標tτ*は、N→Dセレクトからクリープトルクが発生するまでの時間(発進ラグ)が、例えば3secであり、かつ、クリープトルクによる車両の加速度(クリープ加速度)が、例えば0.02Gとなるtτとする。目標tτ*は、あらかじめ実験やシミュレーション等により求めるものとする。
ステップS5では、レンジ信号がD,R以外のレンジからDまたはRレンジに切り替わったとき、エンジンコントローラ1aに対し、アイドルアップ要求を出力する。
【0018】
次に、実施形態1におけるトルクコンバータ2のオイル抜け推定ロジックを説明する。
トルクコンバータ2の非ロックアップ状態(ロックアップクラッチ2cの締結解除状態)において、変速機4がNレンジの状態にある場合、トルクの釣り合いから、下記の式(2)に示す運動方程式が成立する。
It×ΔNt/Δt=(tτ×Ne2-Tf)…(2)
式(2)から、タービン回転数変化率ΔNt/Δtは、下記の式(3)となる。
ΔNt/Δt=(tτ×Ne2-Tf)/It …(3)
トルクコンバータ2は、ポンプインペラ2a内のオイルが遠心力(mrω2)によって加速されてタービンランナ2bに流入し、これが回転することでポンプインペラ2aからタービンランナ2bへ動力が伝達される。このとき、トルクコンバータ2からオイルが抜けると、m(質量)が小さくなるため、トルクコンバータ2の流体特性である、トルク比tおよびトルク容量係数τは共に低下する。この結果、式(3)の右辺の値が小さくなることにより、タービン回転数変化率ΔNt/Δtは小さくなり、車両の駆動力は低下する。
【0019】
つまり、トルクコンバータ2のオイル抜けは、タービン回転数Ntの上昇勾配の低下として現れるため、タービン回転数Ntの上昇勾配を見ることで、トルクコンバータ2のオイル抜けを推定可能である。ただし、エンジン回転数Neが低下した場合もタービン回転数変化率ΔNt/Δtは低下するため、tτのみからトルクコンバータ2のオイル抜けを推定するのが好ましい。発明者は、tτのみからトルクコンバータ2のオイル抜けを精度よく推定可能である点を見出した。その理由を以下に示す。
【0020】
図4は、エンジン回転数センサ42およびタービン回転数センサ43の実波形から算出したトルクコンバータ2の速度比eとtτとの関係図である。
図4において、「ラグ無」は発進ラグが最小であり、「ラグ14sec」は発進ラグが14secであることを表す。また、「G=0.1G」はクリープ加速度が0.1Gであり、「G=0」はクリープ加速度が0Gであることを表す。「ラグ無(G=0.1G)」は、トルクコンバータ2の仕様上の流体特性から求めたtτであり、他の5つの特性は、エンジン回転数センサ42およびタービン回転数センサ43の実波形から算出したtτである。この中で、「フル充填」は、トルクコンバータ2にオイルがフル充填されたときのtτであって、「ラグ無(G=0.1G)」の6~7割の値が得られている。
図4から明らかなように、加速性能が悪化(発進ラグの増大、クリープ加速度の低下)するに連れて、同じ速度比eに対してtτ特性は低い側へオフセットする。このことは、センサの実波形からtτが算出可能であると同時に、tτからエンジン始動時のオイル抜けが検知可能であること、およびオイル抜けによる駆動力の低下レベルを予測可能であること、を意味している。なお、センサの実は径からtτを算出するための式(1)は、式(2)の運動方程式から求められる。
【0021】
図5は、オイル抜けが生じていない場合の実施形態1におけるオイル抜け推定作用を示すタイムチャートである。なお、「オイル抜けが生じていない」とは、フル充填に加え、オイルの抜け量が、車両の発進性能に影響を与えない程度に小さい場合を含む。
図5において、時刻t1では、エンジン始動によりエンジン回転数Neが立ち上がり、タービン回転数Ntが追従して立ち上がる。
時刻t2では、エンジン回転数Neが始動判定閾値(500rpm)に達したため、変速機コントローラ12は、エンジン1が始動したと判定し、tτ
0および速度比e
0の算出を開始する。
時刻t3では、平均速度比eが0.5に達したため、変速機コントローラ12は、平均tτと目標tτ
*とを比較する。平均tτは目標tτ
*よりも大きいため、変速機コントローラ12は、トルクコンバータ2からオイルは抜けていないと推定する。
時刻t4では、レンジ信号がNレンジからDレンジに切り替わるが、変速機コントローラ12は、エンジンコントローラ1aに対しアイドルアップ要求を出力しないため、エンジン回転数Neは通常の目標アイドル回転数に維持される。
以上のように、トルクコンバータ2にオイル抜けが生じていない場合(オイル抜けが少量である場合)は、アイドルアップ制御を実行しないことにより、燃費悪化を抑制できる。
【0022】
図6は、オイル抜けが生じている場合の実施形態1におけるオイル抜け推定作用を示すタイムチャートである。
時刻t1からt3の区間は
図5と同じであるため、説明は省略する。
時刻t3では、平均速度比eが0.5に達したため、変速機コントローラ12は、平均tτと目標tτ
*とを比較する。変速機コントローラ12は、平均tτが目標tτ
*よりも小さいため、トルクコンバータ2からオイルが抜けていると推定する。変速機コントローラ12は、エンジンコントローラ1aに対しアイドルアップ要求を出力する。
時刻t4では、レンジ信号がNレンジからDレンジに切り替わったため、エンジンコントローラ1aは、アイドルアップ制御を実行し、エンジン回転数Neを通常の目標アイドル回転数に対して所定回転数だけ上昇させる。これにより、オイルポンプ10の吐出流量が増大するため、トルクコンバータ2のオイル充填が速やかに行われることで、トルクコンバータ2のオイル抜けに伴う車両の発進性能の低下を抑制できる。
時刻t5では、時刻t4から所定時間が経過したため、エンジンコントローラ1aは、アイドルアップ制御を終了し、エンジン回転数Neを通常の目標アイドル回転数まで低下させる。
【0023】
実施形態1にあっては、以下の効果を奏する。
(1) エンジン1、トルクコンバータ2、変速機4および駆動輪7を伝達経路の配列順とし、トルクコンバータ2にオイルを供給するオイルポンプ10と、トルクコンバータ2からオイルが抜けていると推定したとき、オイルポンプ10によるトルクコンバータ2へのオイル供給量を増大させる変速機コントローラ12と、を有する車両制御装置であって、変速機コントローラ12は、エンジン始動時のタービン回転数Ntの上昇勾配に基づいて、トルクコンバータ2からオイルが抜けているか否かを推定する。トルクコンバータ2のオイル抜けは、タービン回転数Ntの上昇勾配の低下として現れるため、オイル抜けの推定にタービン回転数Ntの上昇勾配を用いることにより、エンジン始動時におけるトルクコンバータ2のオイル抜けの推定精度を向上できる。
【0024】
(2) 変速機コントローラ12は、トルクコンバータ2のトルク比tに容量係数τを乗じたtτの値に基づいて、トルクコンバータ2からオイルが抜けているか否かを推定する。具体的には、平均tτと目標tτ*との比較により、トルクコンバータ2からオイルが抜けているか否かを推定する。これにより、オイル抜けの推定精度の向上に加えて、オイル抜けによる駆動力の低下レベルを予測できる。このため、目標tτ*をエンジン始動時に必要な駆動力(加速度)に対応するtτとすることにより、オイル抜けが生じている場合であっても、必要な駆動力が得られるときにはアイドルアップ制御が実行されないため、不要なアイドルアップ制御の介入に伴う燃費悪化を抑制できる。また、tτは、式(1)を用いて容易に算出できる。
【0025】
〔他の実施形態〕
以上、本発明を実施するための形態を説明したが、本発明の具体的な構成は実施形態に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、オイルポンプ10を電動オイルポンプとしてもよい。
変速機4は有段変速機でもよい。
変速機コントローラ12に代えて、エンジンコントローラ1aがオイル抜け推定制御処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 エンジン
2 トルクコンバータ
4 変速機
7 駆動輪
10 オイルポンプ
12 変速機コントローラ(コントローラ)