(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20220912BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20220912BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
F16H63/34
B60K17/12
B60T1/06 G
(21)【出願番号】P 2021568464
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2020045428
(87)【国際公開番号】W WO2021137286
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2019240050
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】安井 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 隆義
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-266452(JP,A)
【文献】特開2012-82930(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0056497(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60K 17/12
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
力点に別部材からの力が作用することにより、作用点側に位置する爪部が係合位置に移動するように回動する第1種てこ形式のパークポールと、
前記パークポールと対向するプレート部材と、を有し、
前記プレート部材は、前記プレート部材の貫通孔を囲うリング状の突起部を有し、
前記パークポールは、支点と作用点との間の位置であって、前記リング状の突起部を避けて前記プレート部材から離れるように構成された段差部が設けられている、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記プレート部材に対向するホルダを有し、
前記パークポールは、支点と作用点との間の位置であって、前記ホルダを避けられる位置に対向側段差部が設けられている、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3において、
モータと、
歯車機構と、を有し、
軸方向において、前記モータと前記歯車機構との間に前記パークポールが配置されている、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか一において、
前記リング状の突起部の内周に軸受を有する、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか一において、
前記貫通孔と軸方向で対向するパークギアを有する、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パークポールおよび動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第2種てこ形式のパークポールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパークポールでは、支点が端部に位置しており、作用点であるパークポールの爪部は、支点を中心として回動して回転体の外周に係合する。
そのため、このようなパークポールを動力伝達装置に適用すると、動力伝達装置が大型化する。
動力伝達装置を電気自動車に搭載するにあたり、いっそうの小型化が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様におけるパークポールは、
力点に力が作用することにより、作用点側に位置する爪部が係合位置に移動するように回動する第1種てこ形式のパークポールであって、
支点と作用点との間の位置に段差部が設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のある態様によれば、動力伝達装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】動力伝達装置の遊星減速ギア周りの拡大図である。
【
図4】動力伝達装置の差動機構周りの拡大図である。
【
図6】動力伝達装置の差動機構の分解斜視図である。
【
図7】差動機構の第1ケース部を説明する図である。
【
図8】差動機構の第1ケース部を説明する図である。
【
図9】差動機構の第1ケース部を説明する図である。
【
図10】差動機構の第1ケース部を説明する図である。
【
図11】差動機構の第2ケース部を説明する図である。
【
図12】差動機構の第2ケース部を説明する図である。
【
図13】差動機構の第2ケース部を説明する図である。
【
図14】差動機構の第2ケース部を説明する図である。
【
図15】差動機構の第2ケース部を説明する図である。
【
図16】差動機構の第2ケース部を説明する図である。
【
図25】第4ボックスをモータ側から見た図である。
【
図26】第4ボックスをモータ側から見た図である。
【
図35】パークロック機構の動作を説明する図である。
【
図36】パークロック機構の動作を説明する図である。
【
図37】パークロック機構の動作を説明する図である。
【
図38】パークロック機構の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明するスケルトン図である。
図2は、本実施形態にかかる動力伝達装置1を説明する断面の模式図である。
図3は、動力伝達装置1の遊星減速ギア4周りの拡大図である。
図4は、動力伝達装置1の差動機構5周りの拡大図である。
【0009】
図1に示すように、動力伝達装置1は、モータ2と、モータ2の出力回転を減速して差動機構5に入力する遊星減速ギア4(減速機構)と、を有する。動力伝達装置1は、また、駆動軸としての、ドライブシャフト9(9A、9B)と、パークロック機構3と、を有する。
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、パークロック機構3と、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフト9(9A、9B)と、が設けられている。
【0010】
動力伝達装置1では、モータ2の出力回転が、遊星減速ギア4で減速されて差動機構5に入力された後、ドライブシャフト9(9A、9B)を介して、動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪W、Wに伝達される。
ここで、遊星減速ギア4は、モータ2の下流に接続されている。差動機構5は、遊星減速ギア4の下流に接続されている。ドライブシャフト9(9A、9B)は、差動機構5の下流に接続されている。
【0011】
図2に示すように、動力伝達装置1の本体ボックス10は、モータ2を収容する第1ボックス11と、第1ボックス11に外挿される第2ボックス12と、を有する。本体ボックス10は、第1ボックス11に組み付けられる第3ボックス13と、第2ボックス12に組み付けられる第4ボックス14と、を有する。
【0012】
第1ボックス11は、円筒状の支持壁部111と、支持壁部111の一端111aに設けられたフランジ状の接合部112と、を有している。
第1ボックス11は、支持壁部111をモータ2の回転軸Xに沿わせた向きで設けられている。支持壁部111の内側には、モータ2が収容される。
【0013】
接合部112は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。接合部112は、支持壁部111よりも大きい外径で形成されている。
【0014】
第2ボックス12は、円筒状の周壁部121と、周壁部121の一端121aに設けられたフランジ状の接合部122と、周壁部121の他端121bに設けられたフランジ状の接合部123と、を有している。
周壁部121は、第1ボックス11の支持壁部111に外挿可能な内径で形成されている。
第1ボックス11と第2ボックス12は、第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121を外挿して互いに組み付けられている。
【0015】
周壁部121の一端121a側の接合部122は、回転軸X方向から、第1ボックス11の接合部112に当接している。これら接合部122、112は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
第1ボックス11では、支持壁部111の外周に複数の凹溝111bが設けられている。複数の凹溝111bは、回転軸X方向に間隔をあけて複数設けられている。凹溝111bの各々は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
第1ボックス11の支持壁部111に、第2ボックス12の周壁部121が外挿される。凹溝111bの開口が周壁部121で閉じられている。支持壁部111と周壁部121との間に、冷却水が通流する複数の冷却路CPが形成される。
【0016】
第1ボックス11の支持壁部111の外周では、凹溝111bが設けられた領域の両側に、リング溝111c、111cが形成されている。リング溝111c、111cには、シールリング113、113が外嵌して取り付けられている。
これらシールリング113は、支持壁部111に外挿された周壁部121の内周に圧接して、支持壁部111の外周と、周壁部121の内周との間の隙間を封止する。
【0017】
第2ボックス12の他端121bには、内径側に延びる壁部120が設けられている。壁部120は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。壁部120の回転軸Xと交差する領域に、ドライブシャフト9Aが挿通する開口120aが設けられている。
壁部120では、モータ2側(図中、右側)の面に、開口120aを囲む筒状のモータ支持部125が設けられている。
モータ支持部125は、後記するコイルエンド253bの内側に挿入されている。モータ支持部125は、ロータコア21の端部21bに回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0018】
第2ボックス12の周壁部121は、動力伝達装置1の車両への搭載状態を基準とした鉛直線方向において、下側の領域の径方向の厚みが、上側の領域よりも厚くなっている。
この径方向の厚みが厚い領域には、回転軸X方向に貫通してオイル溜り部128が設けられている。
オイル溜り部128は、連通孔112aを介して、第3ボックス13の接合部132に設けた軸方向油路138に連絡している。連通孔112aは、第1ボックス11の接合部112に設けられている。
【0019】
第3ボックス13は、回転軸Xに直交する壁部130を有している。壁部130の外周部には、回転軸X方向から見てリング状を成す接合部132が設けられている。
第1ボックス11から見て第3ボックス13は、差動機構5とは反対側(図中、右側)に位置している。第3ボックス13の接合部132は、第1ボックス11の接合部112に回転軸X方向から接合されている。第3ボックス13と第1ボックス11は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。この状態において第1ボックス11は、支持壁部111の接合部122側(図中、右側)の開口が、第3ボックス13で塞がれている。
【0020】
第3ボックス13では、壁部130の中央部に、ドライブシャフト9Aの挿通孔130aが設けられている。
挿通孔130aの内周には、リップシールRSが設けられている。リップシールRSは、図示しないリップ部をドライブシャフト9Aの外周に弾発的に接触させている。挿通孔130aの内周と、ドライブシャフト9Aの外周との隙間が、リップシールRSにより封止されている。
壁部130における第1ボックス11側(図中、左側)の面には、挿通孔130aを囲む周壁部131が設けられている。周壁部131の内周には、ドライブシャフト9AがベアリングB4を介して支持されている。
【0021】
周壁部131から見てモータ2側(図中、左側)には、モータ支持部135が設けられている。モータ支持部135は、回転軸Xの外周を間隔を空けて囲む筒状を成している。
モータ支持部135の外周には、円筒状の接続壁136が接続されている。接続壁136は、壁部130側(図中、右側)の周壁部131よりも大きい外径で形成されている。接続壁136は、回転軸Xに沿う向きで設けられており、モータ2から離れる方向に延びている。接続壁136は、モータ支持部135と第3ボックス13の壁部130とを接続している。
【0022】
モータ支持部135は、接続壁136を介して第3ボックス13で支持されている。モータ支持部135の内側を、モータシャフト20の一端20a側が、モータ2側から周壁部131側に貫通している。
モータ支持部135の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部135で支持されている。
ベアリングB1と隣り合う位置には、リップシールRSが設けられている。
【0023】
第3ボックス13では、接続壁136の内周に、後記する油孔136aが開口している。接続壁136で囲まれた空間(内部空間Sc)に、油孔136aからオイルOLが流入するようになっている。リップシールRSは、接続壁136内のオイルOLのモータ2側への流入を阻止するために設けられている。
【0024】
第4ボックス14は、遊星減速ギア4と差動機構5の外周を囲む周壁部141と、周壁部141における第2ボックス12側の端部に設けられたフランジ状の接合部142と、を有している。
第4ボックス14は、第2ボックス12から見て差動機構5側(図中、左側)に位置している。第4ボックス14の接合部142は、第2ボックス12の接合部123に回転軸X方向から接合されている。第4ボックス14と第2ボックス12は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0025】
動力伝達装置1の本体ボックス10の内部には、モータ2を収容するモータ室Saと、遊星減速ギア4と差動機構5を収容するギア室Sbとが形成されている。
モータ室Saは、第1ボックス11の内側で、第2ボックス12の壁部120と、第3ボックス13の壁部130との間に形成されている。
ギア室Sbは、第4ボックス14の内径側で、第2ボックス12の壁部120と、第4ボックス14の周壁部141との間に形成されている。
【0026】
ギア室Sbの内部には、プレート部材8が設けられている。
プレート部材8は、第4ボックス14にボルトBで固定されている。
プレート部材8は、ギア室Sbを、遊星減速ギア4と差動機構5を収容する第1ギア室Sb1と、パークロック機構3を収容する第2ギア室Sb2とに区画している。
回転軸X方向において第2ギア室Sb2は、第1ギア室Sb1と、モータ室Saとの間に位置している。
【0027】
モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を間隔をあけて囲むステータコア25とを、有する。
【0028】
モータシャフト20では、ロータコア21の両側に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。
ロータコア21から見てモータシャフト20の一端20a側(図中、右側)に位置するベアリングB1は、第3ボックス13のモータ支持部135の内周に支持されている。他端20b側に位置するベアリングB1は、第2ボックス12の円筒状のモータ支持部125の内周に支持されている。
【0029】
モータ支持部135、125は、後記するコイルエンド253a、253bの内径側で、ロータコア21の一方の端部21aと他方の端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置されている。
【0030】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものである。珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成している。珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0031】
ロータコア21の外周を囲むステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものである。ステータコア25は、第1ボックス11の円筒状の支持壁部111の内周に固定されている。
電磁鋼板の各々は、支持壁部111の内周に固定されたリング状のヨーク部251と、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出するティース部252と、を有している。
【0032】
本実施形態では、巻線253を、複数のティース部252に跨がって分布巻きした構成のステータコア25を採用している。ステータコア25は、回転軸X方向に突出するコイルエンド253a、253bの分だけ、ロータコア21よりも回転軸X方向の長さが長くなっている。
【0033】
なお、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線を集中巻きした構成のステータコアを採用しても良い。
【0034】
第2ボックス12の壁部120(モータ支持部125)には、開口120aが設けられている。モータシャフト20の他端20b側は、開口120aを差動機構5側(図中、左側)に貫通して、第4ボックス14内に位置している。
モータシャフト20の他端20bは、第4ボックス14の内側で、後記するサイドギア54Aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0035】
図3に示すように、モータシャフト20では、第4ボックス14内に位置する領域に、段部201が設けられている。段部201は、モータ支持部125の近傍に位置している。段部201とベアリングB1との間の領域の外周には、モータ支持部125の内周に支持されたリップシールRSが当接している。
リップシールRSは、モータ2を収容するモータ室Saと、第4ボックス14内のギア室Sbとを区画している。
【0036】
第4ボックス14の内径側には、遊星減速ギア4と差動機構5を潤滑するためのオイルOLが封入されている(
図2参照)。
リップシールRSは、モータ室SaへのオイルOLの流入を阻止するために設けられている。
【0037】
図3に示すように、モータシャフト20では、段部201から他端20bの近傍までの領域が、外周にスプラインが設けられた嵌合部202となっている。
嵌合部202の外周には、パークギア30とサンギア41がスプライン嵌合している。
【0038】
パークギア30は、回転軸X方向におけるパークギア30の一方の側面が、段部201に当接している(図中、右側)。パークギア30の他方の側面に、サンギア41の円筒状の基部410の一端410aが当接している(図中、左側)。
基部410の他端410bには、モータシャフト20の他端20bに螺合したナットNが、回転軸X方向から圧接している。
サンギア41とパークギア30は、ナットNと段部201との間に挟み込まれた状態で、モータシャフト20に対して相対回転不能に設けられている。
【0039】
サンギア41は、モータシャフト20の他端20b側の外周に、歯部411を有している。歯部411の外周には、段付きピニオンギア43の大径歯車部431が噛合している。
【0040】
段付きピニオンギア43は、サンギア41に噛合する大径歯車部431と、大径歯車部431よりも小径の小径歯車部432とを有している。
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432が、回転軸Xに平行な軸線X1方向で並んで、一体に設けられたギア部品である。
大径歯車部431は、小径歯車部432の外径R2よりも大きい外径R1で形成されている。
段付きピニオンギア43は、軸線X1に沿う向きで設けられている。この状態において大径歯車部431をモータ2側(図中、右側)に位置させている。
【0041】
小径歯車部432の外周は、リングギア42の内周に噛合している。リングギア42は、回転軸Xを間隔をあけて囲むリング状を成している。リングギア42の外周には、径方向外側に突出する複数の係合歯421が設けられている。複数の係合歯421は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。
リングギア42は、外周に設けた係合歯421を、第4ボックス14の支持壁部146に設けた歯部146aにスプライン嵌合している。リングギア42は、回転軸X回りの回転が規制されている。
【0042】
段付きピニオンギア43は、大径歯車部431と小径歯車部432の内径側を軸線X1方向に貫通した貫通孔430を有している。
段付きピニオンギア43は、貫通孔430を貫通したピニオン軸44の外周で、ニードルベアリングNB、NBを介して回転可能に支持されている。
【0043】
ピニオン軸44の外周では、大径歯車部431の内周を支持するニードルベアリングNBと、小径歯車部432の内周を支持するニードルベアリングNBとの間には、中間スペーサMSが介在している。
【0044】
図4に示すように、ピニオン軸44の内部には、軸内油路440が設けられている。軸内油路440は、軸線X1に沿ってピニオン軸44の一端44aから、他端44bまで貫通している。
ピニオン軸44には、軸内油路440とピニオン軸44の外周とを連通させる油孔442、443が設けられている。
【0045】
油孔443は、大径歯車部431の内周を支持するニードルベアリングNBが設けられた領域に開口している。
油孔442は、小径歯車部432の内周を支持するニードルベアリングNBが設けられた領域に開口している。
ピニオン軸44において油孔443、442は、段付きピニオンギア43が外挿された領域内に開口している。
【0046】
さらに、ピニオン軸44には、オイルOLを軸内油路440に導入するための導入路441が設けられている。
ピニオン軸44の外周において導入路441は、後記する第2ケース部7の支持孔71a内に位置する領域に開口している。導入路441は、軸内油路440とピニオン軸44の外周とを連通させている。
【0047】
支持孔71aの内周には、ケース内油路781が開口している。ケース内油路781は、第2ケース部7の基部71から突出するガイド部78の外周と、支持孔71aとを連通させている。
軸線X1に沿う断面視においてケース内油路781は、軸線X1に対して傾斜している。ケース内油路781は、回転軸X側に向かうにつれて、基部71に設けたスリット710に近づく向きで傾斜している。
【0048】
ケース内油路781には、後記するデフケース50が掻き上げたオイルOLが流入する。ケース内油路781には、デフケース50の回転による遠心力で外径側に移動するオイルOLが流入する。
ケース内油路781から導入路441に流入したオイルOLは、ピニオン軸44の軸内油路440に流入する。軸内油路440に流入したオイルOLは、油孔442、443から径方向外側に排出される。油孔442、443から排出されたオイルOLは、ピニオン軸44に外挿されたニードルベアリングNBを潤滑する。
【0049】
ピニオン軸44では、導入路441が設けられた領域よりも他端44b側に、貫通孔444が設けられている。貫通孔444は、ピニオン軸44を直径線方向に貫通している。
ピニオン軸44は、貫通孔444と、後記する第2ケース部7側の挿入穴782との軸線X1回りの位相を合わせて設けられている。挿入穴782に挿入された位置決めピンPが、ピニオン軸44の貫通孔444を貫通する。これによって、ピニオン軸44は、軸線X1回りの回転が規制された状態で、第2ケース部7側で支持される。
【0050】
図4に示すように、ピニオン軸44の長手方向の一端44a側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第1軸部445となっている。第1軸部445は、デフケース50の第1ケース部6に設けた支持孔61aで支持されている。
ピニオン軸44の長手方向の他端44b側では、段付きピニオンギア43から突出した領域が第2軸部446となっている。第2軸部446は、デフケース50の第2ケース部7に設けた支持孔71aで支持されている。
【0051】
ここで、第1軸部445は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない一端44a側の領域を意味する。第2軸部446は、ピニオン軸44における段付きピニオンギア43が外挿されていない他端44b側の領域を意味する。
ピニオン軸44では、第1軸部445よりも第2軸部446のほうが、軸線X1方向の長さが長くなっている。
【0052】
以下、差動機構5の主要構成を説明する。
図5は、差動機構5のデフケース50周りの斜視図である。
図6は、差動機構5のデフケース50周りの分解斜視図である。
図4から
図6に示すように、ケースとしてのデフケース50は、差動機構5を収容する。デフケース50は、第1ケース部6と第2ケース部7を回転軸X方向で組み付けて形成される。本実施形態のデフケース50は、第1ケース部6と第2ケース部7が、遊星減速ギア4のピニオン軸44を支持するキャリアとしての機能を有している。
【0053】
図6に示すように、デフケース50の、第1ケース部6と第2ケース部7との間には、3つのピニオンメートギア52と、3つのピニオンメートシャフト51と、が設けられている。ピニオンメートシャフト51は、回転軸X周りの周方向に等間隔で設けられている(
図6参照)。
ピニオンメートシャフト51各々の内径側の端部は、共通の連結部510に連結されている。
【0054】
ピニオンメートギア52は、ピニオンメートシャフト51の各々に1つずつ外挿されている。ピニオンメートギア52の各々は、回転軸Xの径方向外側から、連結部510に接触している。
この状態においてピニオンメートギア52の各々は、ピニオンメートシャフト51で回転可能に支持されている。
【0055】
図4に示すように、ピニオンメートシャフト51には、球面状ワッシャ53が外挿されている。球面状ワッシャ53は、ピニオンメートギア52の球面状の外周に接触している。
【0056】
デフケース50では、回転軸X方向における連結部510の一方側にサイドギア54Aが位置し、他方側にサイドギア54Bが位置する。サイドギア54Aは第1ケース部6で回転可能に支持される。サイドギア54Bは、第2ケース部7で回転可能に支持される。
サイドギア54Aは、回転軸X方向における一方側から、3つのピニオンメートギア52に噛合している。サイドギア54Bは、回転軸X方向における他方側から、3つのピニオンメートギア52に噛合している。
【0057】
図7から
図10は、第1ケース部6を説明する図である。
図7は、第1ケース部6を第2ケース部7側から見た斜視図である。
図8は、第1ケース部6を第2ケース部7側から見た平面図である。
図9は、
図8におけるA-A断面の模式図である。
図9は、ピニオンメートシャフト51とピニオンメートギア52の配置を仮想線で示している。
図10は、
図8におけるA-A断面の模式図である。
図10は、紙面奥側の連結梁62の図示を省略しつつ、サイドギア54Aと段付きピニオンギア43とドライブシャフト9Aの配置を仮想線で示している。
【0058】
図7および
図8に示すように、第1ケース部6は、リング状の基部61を有している。基部61は、回転軸X方向に厚みW61を有する板状部材である。
図9および
図10に示すように、基部61の中央部には、開口60が設けられている。基部61における第2ケース部7とは反対側(図中、右側)の面には、開口60を囲む筒壁部611が設けられている。筒壁部611の外周は、ベアリングB3を介して、プレート部材8で支持されている(
図2参照)。
【0059】
基部61における第2ケース部7側(図中、左側)の面には、第2ケース部7側に延びる3つの連結梁62が設けられている。
連結梁62は、回転軸X周りの周方向に、等間隔で設けられている(
図7および
図8参照)。
連結梁62は、基部61に対して直交する基部63と、基部63よりも幅広の連結部64と、を有している。
【0060】
図9に示すように、連結部64の先端面64aは、回転軸Xに直交する平坦面であり、先端面64aには、ピニオンメートシャフト51を支持するための支持溝65が設けられている。
【0061】
図8に示すように、回転軸X方向から見て支持溝65は、リング状の基部61の半径線Lに沿って、直線状に形成されている。支持溝65は、回転軸X周りの周方向における連結部64の中央部を、内径側から外径側に横断している。
図9および
図10に示すように、支持溝65は、ピニオンメートシャフト51の外径に沿う半円形を成している。支持溝65は、円柱状のピニオンメートシャフト51の半分を収容可能な深さで形成されている。すなわち、支持溝65は、ピニオンメートシャフト51の直径Daの半分(=Da/2)に相当する深さで形成されている。
【0062】
連結部64の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う形状で円弧部641が形成されている。
円弧部641では、ピニオンメートギア52の外周が、球面状ワッシャ53を介して支持される。
円弧部641では、前記した半径線Lに沿う向きで油溝642が設けられている。油溝642は、ピニオンメートシャフト51の支持溝65から、連結部64の内周に固定されたギア支持部66までの範囲に設けられている。
【0063】
ギア支持部66は、基部63と連結部64との境界部に接続されている。ギア支持部66は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。ギア支持部66は、中央部に貫通孔660を有している。
図8に示すように、ギア支持部66の外周は、3つの連結部64の内周に接続されている。この状態において貫通孔660の中心は、回転軸X上に位置している。
【0064】
図9および
図10に示すように、ギア支持部66では、基部61とは反対側(図中、左側)の面に、貫通孔660を囲む凹部661が設けられている。凹部661には、サイドギア54Aの裏面を支持するリング状のワッシャ55が収容される。
サイドギア54Aの裏面には、円筒状の筒壁部541が設けられている。ワッシャ55は筒壁部541に外挿されている。
【0065】
回転軸X方向から見て、ギア支持部66における凹部661側の面には、3つの油溝662が設けられている。油溝662は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。
油溝662は、前記した半径線Lに沿って、ギア支持部66の内周から外周まで及んでいる。油溝662は、前記した円弧部641側の油溝642に連絡している。
【0066】
図7および
図8に示すように、基部61には、ピニオン軸44の支持孔61aが開口している。支持孔61aは、回転軸X周りの周方向で間隔をあけて配置された連結梁62、62の間の領域に開口している。
基部61には、支持孔61aを囲むボス部616が設けられている。ボス部616には、ピニオン軸44に外挿されたワッシャWc(
図10参照)が、回転軸X方向から接触する。
【0067】
基部61では、中央の開口60からボス部616までの範囲に、油溝617が設けられている。
図8に示すように、油溝617は、ボス部616に近づくにつれて、回転軸X周りの周方向の幅が狭くなる先細り形状で形成されている。油溝617は、ボス部616に設けた油溝618に連絡している。
【0068】
連結部64では、支持溝65の両側に、ボルト穴67、67が設けられている。
第1ケース部6の連結部64には、第2ケース部7側の連結部74が回転軸X方向から接合される。第1ケース部6と第2ケース部7は、第2ケース部7側の連結部を貫通したボルトBが、ボルト穴67、67に螺入されて、互いに接合される。
【0069】
図11から
図16は、第2ケース部7を説明する図である。
図11は、第2ケース部7を第1ケース部6側から見た斜視図である。
図12は、第2ケース部7を第1ケース部6側から見た平面図である。
図13は、
図12におけるA-A断面の模式図である。
図13は、ピニオンメートシャフト51とピニオンメートギア52の配置を仮想線で示している。
図14は、
図12におけるA-A断面の模式図である。
図14は、紙面奥側の連結部74の図示を省略しつつ、サイドギア54Bと段付きピニオンギア43とドライブシャフト9Bの配置を仮想線で示している。
図15は、第2ケース部7を第1ケース部6とは反対側から見た斜視図である。
図16は、第2ケース部7を第1ケース部6とは反対側から見た平面図である。
【0070】
図13および
図14に示すように、第2ケース部7は、リング状の基部71を有している。
基部71は、回転軸X方向に厚みW71を有する板状部材である。
基部71の中央部には、基部71を厚み方向に貫通する貫通孔70が設けられている。
基部71における第1ケース部6とは反対側(図中、左側)の面には、貫通孔70を囲む筒壁部72と、筒壁部72を間隔をあけて囲む周壁部73が設けられている。
周壁部73の先端には、回転軸X側に突出する突起部73aが設けられている。突起部73aは、回転軸X周りの周方向の全周に亘って設けられている。
【0071】
図16に示すように周壁部73の外径側には、ピニオン軸44の3つの支持孔71aが開口している。支持孔71aは、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。
周壁部73の内径側には、基部71を厚み方向に貫通する3つのスリット710が設けられている。
回転軸X方向から見てスリット710は、周壁部73の内周に沿う弧状を成している。スリット710は、回転軸X周りの周方向に所定の角度範囲で形成されている。
【0072】
第2ケース部7においてスリット710は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。スリット710の各々は、支持孔71aの内径側を、回転軸X周りの周方向に横切って設けられている。
【0073】
回転軸X周りの周方向で隣り合うスリット710、710の間には、紙面手前側に突出した3つの突出壁711が設けられている。突出壁711は、回転軸Xの径方向に直線状に延びている。突出壁711は、外径側の周壁部73と内径側の筒壁部72とに跨がって設けられている。
【0074】
3つの突出壁711は、回転軸X周りの周方向に間隔をあけて設けられている。突出壁711は、スリット710に対して、回転軸X周りの周方向に大凡45度位相をずらして設けられている。
【0075】
周壁部73の外径側では、回転軸X周りの周方向で隣り合う支持孔71a、71aの間に、紙面奥側に窪んだボルト収容部76、76が設けられている。これらボルト収容部76、76は、半径線Lを間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。ボルト収容部76は、基部71の外周71cに開口している。
ボルト収容部76の内側には、ボルトの挿通孔77が開口している。挿通孔77は、基部71を厚み方向(回転軸X方向)に貫通している。
【0076】
図11および
図12に示すように、基部71における第1ケース部6側(図中、右側)の面には、第1ケース部6側に突出する3つの連結部74が設けられている。
連結部74は、回転軸X周りの周方向に、等間隔で設けられている。連結部74は、第1ケース部6側の連結部64と同じ周方向の幅W7で形成されている。
【0077】
図13に示すように、連結部74の先端面74aは、回転軸Xに直交する平坦面である。先端面74aには、ピニオンメートシャフト51を支持するための支持溝75が設けられている。
【0078】
図12に示すように、回転軸X方向から見て支持溝75は、基部71の半径線Lに沿って直線状に形成されている。支持溝75は、連結部74を内径側から外径側に横断して形成されている。
図5に示すように、支持溝75は、ピニオンメートシャフト51の外径に沿う半円形を成している。
図13に示すように、支持溝75は、円柱状のピニオンメートシャフト51の半分を収容可能な深さで形成されている。すなわち、支持溝75は、ピニオンメートシャフト51の直径Daの半分(=Da/2)に相当する深さで形成されている。
【0079】
連結部74の内径側(回転軸X側)には、ピニオンメートギア52の外周に沿う円弧部741が設けられている。
円弧部741では、ピニオンメートギア52の外周が、球面状ワッシャ53を介して支持される(
図13および
図14参照)。
円弧部741では、前記した半径線Lに沿う向きで油溝742が設けられている。油溝742は、ピニオンメートシャフト51の支持溝75から、連結部74の内周に位置する基部71までの範囲に設けられている。
【0080】
油溝742は、基部71の表面71bに設けた油溝712に連絡している。回転軸X方向から見て油溝712は、半径線Lに沿って設けられており、基部71に設けた貫通孔70まで形成されている。
基部71の表面71bには、サイドギア54Bの裏面を支持するリング状のワッシャ55が載置される。サイドギア54Bの裏面には、円筒状の筒壁部540が設けられている。ワッシャ55は筒壁部540に外挿されている。
【0081】
貫通孔70を囲む筒壁部72の内周には、油溝712と交差する位置に油溝721が形成されている。筒壁部72の内周では、油溝721が、回転軸Xに沿う向きで、筒壁部72の回転軸X方向の全長に亘って設けられている。
【0082】
図11および
図12に示すように、第2ケース部7の基部71では、回転軸X周りの周方向で隣り合う連結部74、74の間に、ガイド部78が設けられている。ガイド部78は、第1ケース部6側(紙面手前側)に突出している。
回転軸X方向から見て、ガイド部78は筒状を成している。ガイド部78は、基部71に設けた支持孔71aを囲んでいる。ガイド部78の外周部は、基部71の外周71cに沿って切除されている。
【0083】
図13および
図14に示すように、軸線X1に沿う断面視において、ガイド部78の支持孔71aには、第1ケース部6側からピニオン軸44が挿入される。ピニオン軸44は、位置決めピンPにより、軸線X1回りの回転が規制された状態で位置決めされている。
この状態において、ピニオン軸44に外挿された段付きピニオンギア43の小径歯車部432が、ワッシャWcを間に挟んで、軸線X1方向からガイド部78に当接している。
【0084】
図4に示すように、デフケース50では、第2ケース部7の筒壁部72に、ベアリングB2が外挿されている。筒壁部72に外挿されたベアリングB2は、第4ボックス14の支持部145で保持されている。デフケース50の筒壁部72は、ベアリングB2を介して、第4ボックス14で回転可能に支持されている。
【0085】
支持部145には、第4ボックス14の開口部145aを貫通したドライブシャフト9Bが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフト9Bは、支持部145で回転可能に支持されている。
開口部145aの内周には、リップシールRSが固定されている。リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフト9Bに外挿されたサイドギア54Bの筒壁部540の外周に弾発的に接触している。
これにより、サイドギア54Bの筒壁部540の外周と開口部145aの内周との隙間が封止されている。
【0086】
デフケース50の第1ケース部6は、筒壁部611に外挿されたベアリングB3を介して、プレート部材8で支持されている(
図2参照)。
【0087】
第1ケース部6の内部には、第3ボックス13の挿通孔130aを貫通したドライブシャフト9Aが、回転軸方向から挿入されている。
ドライブシャフト9Aは、モータ2のモータシャフト20と、遊星減速ギア4のサンギア41の内径側を回転軸X方向に横切って設けられている。
【0088】
図4に示すように、デフケース50の内部では、ドライブシャフト9(9A、9B)の先端部の外周に、サイドギア54A、54Bがスプライン嵌合している。サイドギア54A、54Bとドライブシャフト9(9A、9B)とが、回転軸X周りに一体回転可能に連結されている。
【0089】
この状態においてサイドギア54A、54Bは、回転軸X方向で間隔をあけて、対向配置されており、サイドギア54A、54Bの間に、ピニオンメートシャフト51の連結部510が位置している。
本実施形態では、合計3つのピニオンメートシャフト51が、連結部510から径方向外側に延びている。ピニオンメートシャフト51の各々に、ピニオンメートギア52が支持されている。ピニオンメートギア52は、回転軸X方向の一方側に位置するサイドギア54Aおよび他方側に位置するサイドギア54Bに、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0090】
図2に示すように、第4ボックス14の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留されている。デフケース50の下部側は、貯留されたオイルOL内に位置している。
本実施形態では、連結梁62が最も下部に位置した際に、連結梁62がオイルOL内に位置する高さまで、オイルOLが貯留されている。
貯留されたオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
【0091】
図17から
図22は、オイルキャッチ部15を説明する図である。
図17は、第4ボックス14を第3ボックス13側から見た平面図である。
図18は、
図17に示したオイルキャッチ部15を斜め上方から見た斜視図である。
図19は、第4ボックス14を第3ボックス13側から見た平面図である。
図19は、デフケース50を配置した状態を示している。
図20は、
図19に示したオイルキャッチ部15を斜め上方から見た斜視図である。
図21は、
図19におけるA-A断面の模式図である。
図22は、動力伝達装置1を上方から見た場合におけるオイルキャッチ部15と、デフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)との位置関係を説明する模式図である。
尚、
図17および
図19では、第4ボックス14の接合部142と、支持壁部146の位置を明確にするために、ハッチングを付して示している。
【0092】
図17に示すように、回転軸X方向から見て第4ボックス14には、中央の開口部145aを間隔をあけて囲む支持壁部146が設けられている。支持壁部146の内側(回転軸X)が、デフケース50(
図19参照)の収容部140となっている。
第4ボックス14内の上部には、オイルキャッチ部15の空間と、ブリーザ室16の空間が形成されている。
【0093】
第4ボックス14の支持壁部146では、鉛直線VLと交差する領域に、オイルキャッチ部15と、デフケース50の収容部140とを連通させる連通口147が設けられている。
【0094】
図17に示すように、オイルキャッチ部15とブリーザ室16は、回転軸Xと直交する鉛直線VLを挟んだ一方側(図中、左側)と他方側(図中、右側)に、それぞれ位置している。
オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転中心(回転軸X)を通る鉛直線VLからオフセットした位置に配置されている。
図22に示すように、上方からオイルキャッチ部15を見ると、オイルキャッチ部15は、デフケース50の真上からオフセットした位置に配置されている。
ここで、鉛直線VLは、動力伝達装置1の車両での設置状態を基準とした鉛直線VLである。回転軸X方向から見て鉛直線VLは、回転軸Xと直交している。
なお、以下の説明において水平線HLは、動力伝達装置1の車両での設置状態を基準とした水平線HLである。回転軸X方向から見て水平線HLは、回転軸Xと直交している(
図17参照)。
【0095】
図18に示すように、オイルキャッチ部15は、支持壁部146よりも紙面奥側まで及んで形成されている。オイルキャッチ部15の下縁には、紙面手前側に突出して支持台部151が設けられている。支持台部151は、支持壁部146よりも紙面手前側であって、第4ボックス14の接合部142よりも紙面奥側までの範囲に設けられている。
【0096】
図17に示すように、回転軸X方向から見て、オイルキャッチ部15の鉛直線VL側(図中、右側)には、オイルキャッチ部15と、デフケース50の収容部140とを連通させる連通口147が形成されている。連通口147は、支持壁部146の一部を切り欠いて形成されている。
回転軸X方向から見て連通口147は、鉛直線VLをブリーザ室16側(図中、右側)から、オイルキャッチ部15側(図中、左側)に横切る範囲に設けられている。
【0097】
図19に示すように、本実施形態では、動力伝達装置1を搭載した車両の前進走行時に、第3ボックス13側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
そのため、オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置している。そして、連通口147の周方向の幅は、鉛直線VLを挟んだ左側のほうが、右側よりも広くなっている。鉛直線VLを挟んだ左側は、デフケース50の回転方向における下流側であり、右側は上流側である。これにより、回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入できる。
【0098】
さらに、
図22に示すように、前記したピニオン軸44の第2軸部446の回転軌道の外周位置と、大径歯車部431の回転軌道の外周位置は、回転軸Xの径方向でオフセットしている。第2軸部446の回転軌道の外周位置のほうが、大径歯車部431の回転軌道の外周位置よりも内径側に位置している。そのため、第2軸部446の外径側に空間的な余裕がある。この空間を利用して、オイルキャッチ部15を設けることで、本体ボックス10内の空間スペースの有効利用が可能となっている。
【0099】
そして、第2軸部446は、モータ2から見て小径歯車部432の奥側に突出している。第2軸部446の周辺部材(例えば、第2軸部446を支持するデフケース50のガイド部78)が、オイルキャッチ部15に近接した位置になる。
よって、当該周辺部材からオイルキャッチ部15へのオイルOL(潤滑油)の供給をスムーズに行うことができる。
【0100】
図18に示すように、支持台部151の奥側には、油孔151aの外径側の端部が開口している。油孔151aは、第4ボックス14内を内径側に延びている。油孔151aの内径側の端部は、支持部145の内周に開口している。
図2に示すように、支持部145において油孔151aの内径側の端部は、リップシールRSとベアリングB2との間に開口している。
【0101】
図20および
図22に示すように、支持台部151には、オイルガイド152が載置されている。
オイルガイド152は、キャッチ部153と、キャッチ部153から第1ボックス11側(
図20における紙面手前側)に延びるガイド部154とを有している。
【0102】
図22に示すように、上方から見て支持台部151は、回転軸Xの径方向外側で、デフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)の一部に重なる位置に、段付きピニオンギア43(大径歯車部431)との干渉を避けて設けられている。
回転軸Xの径方向から見て、キャッチ部153は、ピニオン軸44の第2軸部446と重なる位置に設けられている。さらにガイド部154は、ピニオン軸44の第1軸部445と大径歯車部431と重なる位置に設けられている。
【0103】
そのため、デフケース50が回転軸X回りに回転する際に、デフケース50で掻き上げられたオイルOLが、キャッチ部153とガイド部154側に向けて移動する。
【0104】
図20に示すように、キャッチ部153の外周縁には、支持台部151から離れる方向(上方向)に延びる壁部153aが設けられている。回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部は、オイルガイド152に貯留される。
【0105】
キャッチ部153の奥側(
図20における紙面奥側)では、壁部153aに切欠部155が設けられている。
図22に示すように、切欠部155は、油孔151aに対向する領域に設けられている。キャッチ部153に貯留されたオイルOLの一部は、切欠部155の部分から油孔151aに向けて排出される。
【0106】
図21に示すように、ガイド部154は、キャッチ部153から離れるにつれて下方に傾斜している。
図20に示すように、ガイド部154の幅方向の両側には、壁部154a、154aが設けられている。壁部154a、154aは、ガイド部154の長手方向の全長に亘って設けられている。壁部154a、154aは、キャッチ部153の外周を囲む壁部153aに接続されている。
キャッチ部153に貯留されたオイルOLの一部が、ガイド部154側にも排出される。
【0107】
図21に示すように、ガイド部154は、デフケース50との干渉を避けた位置を、第2ボックス12側に延びている。ガイド部154の先端154bは、第2ボックス12の壁部120に設けた油孔126aに、回転軸X方向の隙間を空けて対向している。
壁部120の外周には、油孔126aを囲むボス部126が設けられている。ボス部126には、回転軸X方向から配管127の一端が嵌入している。
【0108】
配管127は、第2ボックス12の外側を通って第3ボックス13まで及んでいる。配管127の他端は、第3ボックスの円筒状の接続壁136に設けた油孔136a(
図2参照)に連通している。
【0109】
図19に示すように、回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部は、オイルキャッチ部15に到達する。
図21に示すように、オイルOLは、ガイド部154と配管127を通って、接続壁136の内部空間Sc(
図2参照)に供給される。
【0110】
図2に示すように、第3ボックス13には、内部空間Scに連通する径方向油路137が設けられている。
径方向油路137は、内部空間Scから径方向下側に延びている。径方向油路137は、接合部132内に設けた軸方向油路138に連通している。
【0111】
軸方向油路138は、第1ボックス11の接合部112に設けた連通孔112aを介して、第2ボックス12の下部に設けたオイル溜り部128に連絡している。
オイル溜り部128は、周壁部121内を回転軸X方向に貫通している。オイル溜り部128は、第4ボックス14に設けたギア室Sbに連絡している。
【0112】
ギア室Sbでは、円板状のプレート部材8が、回転軸Xに直交する向きで設けられている。前記したようにプレート部材8は、第4ボックス14内のギア室Sbを、デフケース50側の第1ギア室Sb1と、モータ2側の第2ギア室Sb2に区画している。
【0113】
動力伝達装置1の車両への搭載状態を基準とした鉛直線VL方向で、プレート部材8の下部は、第4ボックス14の周壁部141との間に隙間を空けて設けられている。
プレート部材8の一方側に位置する第1ギア室Sb1と、他方側に位置する第2ギア室Sb2は、第4ボックス14の下部で互いに連通している。
プレート部材8は、デフケース50のモータ2側の側面を覆う大きさで形成されている。プレート部材8は、回転するデフケース50が掻き上げたオイルOLの第2ギア室Sb2側への流入を抑制している。
【0114】
図23および
図24は、プレート部材8を説明する図である。
図23は、プレート部材8をモータ2側から見た平面図である。
図24は、
図23におけるA-A断面の模式図である。
図23に示すように、モータ2側から見てプレート部材8は、リング状の基部80を有している。基部80の中央部には、貫通孔800を囲むリング状の支持部801が設けられている。
図3に示すように支持部801の内周には、デフケース50の筒壁部611が、ベアリングB3を介して支持されている。
【0115】
図23に示すように、基部80の外周縁80cには、接続片81、82、83、84が設けられている。
接続片81、82、83、84の各々は、基部80の外周縁80cから径方向外側に延出している。接続片81、82、83、84には、それぞれボルト孔81a、82a、83a、84aが設けられている。
【0116】
接続片81は、プレート部材8の上部において鉛直線VLと交差する位置に設けられている。接続片81は、鉛直線VLに沿って基部80から離れる方向に延びている。
鉛直線VLの一方側(
図23における左側)では、水平線HLを挟んだ上側と、下側に、それぞれ1つずつ接続片82、83が設けられている。これら接続片82、83もまた、基部80から離れる方向に延びている。
【0117】
鉛直線VLの他方側(
図23における右側)では、水平線HLよりも下側に接続片84が設けられている。この接続片84は、水平線HLの下側で、前記した接続片83の下縁を通る。接続片84は、水平線HLに対して平行な直線HLaと交差する位置から下方に突出している。
【0118】
鉛直線VLの他方側(
図23における右側)では、水平線HLよりも上側に接続片85が設けられている。接続片85は、回転軸X回りの周方向に所定の幅を有している。接続片85における鉛直線VL寄りの位置には、ボルト孔85aが設けられている。水平線HL寄りの位置には、支持ピン85bが設けられている。支持ピン85bは、紙面手前側に突出している。
【0119】
プレート部材8におけるモータ2側の面80a(
図24参照)には、後記するストッパピン861の支持ボス86が設けられている。
支持ボス86は、鉛直線VL上に位置する接続片81の下側に位置している。支持ボス86は、接続片81に隣接している。
【0120】
図23に示すように、支持ボス86の下側には、取付ボス87が設けられている。取付ボス87は、支持ピン85bを通り、前記した水平線HLに平行な直線HLbと交差する位置に設けられている。取付ボス87は、支持ボス86よりも紙面手前側まで突出している(
図24参照)。
さらに、鉛直線VL方向における支持ピン85bの下側には、取付ボス87と対になる取付ボス88が設けられている。
【0121】
取付ボス87から見て、支持ピン85bとは反対側(図中、左側)には、後記するサポート33の取付部89が設けられている。
取付部89では、水平線方向で隣り合う2つのボルト孔89a、89aが設けられている。
【0122】
図25は、第4ボックス14をモータ2側から見た図である。
図25では、プレート部材8の外周縁を支持する段部148d、149d、17dの配置を示している。
なお、
図25では、周壁部148、149、弧状壁部17の位置と、段部148d、149d、17dの位置を明確にするために、これらにハッチングを付して示している。
図26は、第4ボックス14をモータ2側から見た図である。
図26では、プレート部材8が取り付けられた状態を示している。
【0123】
図25に示すように、回転軸X方向から見て第4ボックス14には、周壁部148、149が設けられている。これら周壁部148、149は、支持壁部146における歯部146aが設けられた領域の外径側に位置している。
周壁部148、149は、回転軸Xを中心とした円弧状に形成されている。
【0124】
周壁部148は、鉛直線VL方向において、前記したオイルキャッチ部15の下側に位置している。
回転軸X方向から見て周壁部148は、回転軸Xを通る水平線HLを、上側から下側に横切る範囲に設けられている。
周壁部148の上側の端部148aは、支持台部151の近傍に位置している。周壁部148の下側の端部148bは、直線HLaの近傍に位置している。
【0125】
図25に示すように、回転軸X方向から見て周壁部148の内周148cは、前記したプレート部材8(基部80)の外周に沿う円弧状を成している。周壁部148の内周148cの回転軸Xを基準とした内径は、プレート部材8の回転軸Xを基準とした外径よりもわずかに大きくなっている。
周壁部148の内側には、紙面奥側に窪んだ段部148dが設けられている。
プレート部材8を第4ボックス14に取り付けると、段部148dには、プレート部材8(基部80)の外周縁が当接する。プレート部材8(基部80)は、回転軸X方向から段部148dに当接する。
【0126】
周壁部148の外側には、ボルト孔18aを有するボス部18が2つ設けられている。ボス部18、18は、周壁部148と一体に形成されている。ボス部18、18は、周壁部148の上側の端部148a側と、下側の端部148bの近傍にそれぞれ設けられている。ボス部18、18は、周壁部148よりも紙面手前側まで突出している。
【0127】
周壁部149は、前記したブリーザ室16の下側に位置している。周壁部149は、ブリーザ室16を区画形成する壁部160よりも紙面奥側に位置している。
回転軸X方向から見て周壁部149の上側の端部149aは、鉛直線VL上で、ボス部18に接続している。ボス部18には、オイルキャッチ部15側に延びる側壁部159がさらに接続されている。周壁部149の下側の端部149bは、ブリーザ室16の下側で第4ボックス14の周壁部141に接続されている。
【0128】
図25に示すように、回転軸X方向から見て周壁部149の内周149cは、前記したプレート部材8(基部80)の外周に沿う円弧状を成している。周壁部149の内周149cの回転軸Xを基準とした内径は、プレート部材8の回転軸Xを基準とした外径よりもわずかに大きくなっている。
周壁部149の内側には、紙面奥側に窪んだ段部149dが設けられている。
プレート部材8を第4ボックス14に取り付けると、段部149dには、プレート部材8(基部80)の外周縁が当接する。プレート部材8(基部80)は、回転軸X方向から段部149dに当接する。
【0129】
周壁部149の外側には、ボルト孔18aを有するボス部18が2つ設けられている。ボス部18、18は、周壁部149と一体に形成されている。ボス部18、18は、回転軸X回りの周方向に間隔をあけて設けられている。ボス部18、18は、周壁部149の上側の端部148aの外周と、ブリーザ室16の下側に位置する領域の外周にそれぞれ設けられている。
ボス部18、18は、周壁部149よりも紙面手前側まで突出している。
【0130】
第4ボックス14では、ブリーザ室16の下側であって水平線HLよりも下側の領域に、弧状壁部17が設けられている。弧状壁部17は、回転軸X周りの周方向において、周壁部148に対して大凡180°位相をずらした位置関係で設けられている。
図25に示すように、回転軸X方向から見て弧状壁部17の内周17cは、前記したプレート部材8(基部80)の外周に沿う円弧状を成している。弧状壁部17の内周17cの回転軸Xを基準とした内径は、プレート部材8の回転軸Xを基準とした外径よりもわずかに大きくなっている。
弧状壁部17では、前記した直線HLaと交差する位置に、ボルト孔18aを有するボス部18が形成されている。ボス部18は、弧状壁部17よりも紙面手前側に突出している。
【0131】
ボス部18の内周には、回転軸X方向に段部17dが突出している。
プレート部材8を第4ボックス14に取り付けると、段部17dには、プレート部材8(基部80)の外周縁が当接する。プレート部材8(基部80)は、回転軸X方向から段部17dに当接する。
【0132】
ここで、プレート部材8の第4ボックス14への取り付けは、はじめに、プレート部材8(基部80)の外周縁を、周壁部148、149の段部148d、149dと、弧状壁部17の段部17dに、回転軸X方向から当接させる。続いて、接続片81~85のボルト孔81a~85aを貫通したボルトBを、対応するボス部18のボルト孔18aに螺入する。これにより、プレート部材8が第4ボックス14に固定される(
図26参照)。
【0133】
ここで、プレート部材8は、第4ボックス14の構成材料の密度よりも大きい密度の構成材料で形成されている。
具体的には、動力伝達装置1の本体ボックス10(第4ボックス)は、軽量化のために、アルミニウム又はマグネシウムを主成分とする構成材料で形成される。
本実施形態では、プレート部材8は、鉄などを主成分とする構成材料であって、本体ボックス10の構成材料よりも高い密度を持つ構成材料で形成されている。
【0134】
図27および
図28は、パークロック機構3を説明する図である。
図27は、パークロック機構3が設けられた第4ボックス14を斜め上方から見た斜視図である。
図28は、パークロック機構3が設けられた第4ボックス14をモータ2側から見た平面図である。
図29から
図31は、パークポール31を説明する図である。
図29は、パークポール31をモータ2側から見た平面図である。
図30は、パークポール31をモータ2側から見た斜視図である。
図31は、パークポール31を回転軸X側の側方から見た側面図である。
なお、
図29では、ホルダ34の位置を仮想線で示している。
図31では、プレート部材8とホルダ34の位置を仮想線で示している。
図32から
図34は、パークロック機構3を説明する図である。
図32は、パークロック機構3を上方から見た図である。
図33は、
図32におけるA-A断面の模式図である。
図34は、
図33におけるC-C断面の模式図である。
【0135】
図27に示すように、パークロック機構3は、パークギア30と、パークポール31と、パークロッド32と、サポート33と、ホルダ34と、マニュアルプレート35と、ディテントスプリング36と、マニュアルシャフト37と、を有している。
【0136】
本実施形態では、プレート部材8のモータ2側には、パークギア30と、パークポール31と、パークロッド32と、サポート33と、ホルダ34が位置している。プレート部材8のモータ2と反対側には、マニュアルプレート35と、ディテントスプリング36と、マニュアルシャフト37が位置している。
【0137】
ホルダ34は、回転軸X方向から見て略矩形形状を成す板状部材である。ホルダ34は、パークポール31を支持する支持部材として機能する。ホルダ34は、突起部341でパークポール31を支持している。ホルダ34では、長手方向の両側にボルト孔34a、34aが設けられている。
ホルダ34は、ボルトB、Bで、プレート部材8の取付ボス87、88に取り付けられている。プレート部材8は、ホルダ34に対向する対向部材である。
図27に示すように、回転軸X方向から見てホルダ34は、パークギア30の上方から、ブリーザ室16の下方までの範囲に設けられている。
【0138】
図26に示すように、回転軸X方向から見てホルダ34は、ブリーザ室16側(図中、右側)に向かうにつれて、鉛直線VL方向の下側に傾斜している。ホルダ34の下縁342は、ブリーザ室16側(図中、右側)に向かうにつれて、鉛直線VL方向の下側に傾斜している。
【0139】
図27に示すように、パークポール31は、ホルダ34を介してプレート部材8で支持されている。
図28に示すように、パークポール31は挿通孔310dを有する第1板状部310と、爪部311cを有する第2板状部311と、を有する一体部品である。
【0140】
パークポール31の挿通孔310dには、ホルダ34側の突起部341が挿入されている。パークポール31は、突起部341で回動可能に支持されており、回転軸Xに平行な軸線X2回りに回動可能である。
図28に示すように、回転軸X方向から見て第1板状部310は、軸線X2に直交する直線Lx1に沿って、突起部341で支持された領域から上方側に延びている。
第1板状部310は、プレート部材8の支持ボス86と略同じ高さ位置まで延びたのち、ブリーザ室16から離れる方向(図中、左方向)に屈曲している。
第1板状部310では、屈曲部310eよりも先の領域が、直線Lx2に沿って延びており、この領域の先端側が、パークロッド32のカム320により操作される被操作部310cとなっている。
被操作部310cは、サポート33で支持されたカム320に載置されている。
【0141】
図28に示すように、回転軸X方向から見て第2板状部311の下部には、パークギア30との係合部である爪部311cが設けられている。
爪部311cは、第2板状部311の下部から回転軸X側に膨出して形成されている。爪部311cは、回転軸Xに近づくにつれて幅Wp(
図29参照)が狭くなる先細り形状を有している。
【0142】
図30に示すように、パークポール31の第1板状部310では、挿通孔310dの側方に係止孔310fが設けられている。係止孔310fには、スプリングSpの一端が係合している(
図28参照)。スプリングSpの他端は、プレート部材8の外周縁80cに圧接している。スプリングSpは、プレート部材8の支持ピン85bに外挿されている。この状態においてスプリングSpは、パークポール31に付勢力を作用させている。パークポール31は、スプリングSpから作用する付勢力で、爪部311cを、パークギア30から離間させる方向(
図28では反時計回り方向:矢印参照)に常時付勢されている。
【0143】
前記したようにパークポール31は、回転軸Xに平行な軸線X2回りに回動可能である。
図3に示すようにパークポール31の第1板状部310は、回転軸X方向において、ホルダ34とプレート部材8との間に配置されている。第2板状部311は、第1板状部310よりもモータ2側(図中、右側)に位置しており、ホルダ34の内径側を下方に延びている。
【0144】
図31に示すように、第1板状部310と第2板状部311は、回転軸Xに平行な軸線X2方向でオフセットしている。
第1板状部310と第2板状部311との境界部では、ホルダ34側の面310a、311a同士を繋ぐ段差部312と、プレート部材8側の面310b、311b同士を繋ぐ段差部313が設けられている。パークポール31の段差部313は、プレート部材8との対向面に形成された対向側段差部である。
第1板状部310のホルダ34側の面310aと、第2板状部311のホルダ34側の面311aは互いで平行である。
第1板状部310のプレート部材8側の面310bと、第2板状部311のプレート部材8側の面311bは互いで平行である。
【0145】
段差部312と段差部313は、軸線X2の径方向から見て、第1板状部310のプレート部材8側の面310bに沿う直線Lyに対してそれぞれ傾斜している。
直線Lyと段差部312との成す角θ2は、直線Lyと段差部313との成す角θ3よりも大きい。
【0146】
図31に示すように、本実施形態では、直線Lyと段差部312との成す角θ2は、ホルダ34との干渉を避けることができる角度になっている。
さらに、本実施形態では、ホルダ34側だけでなく、ホルダ34とは反対側(プレート部材8側)にも段差部313を設けている。これにより、第1板状部310と第2板状部311の軸線X2方向の厚みが同じとなるようにしている。
【0147】
図28に示すように、回転軸X方向から見てパークロッド32は、水平線HLよりも上側を通る直線Lx3に沿う向きで設けられている。パークロッド32は、回転軸Xに直交する。
パークロッド32は、カム320が外挿された先端側を、パークポール31側(ブリーザ室16側)に向けて設けられており、カム320は、サポート33と、パークポール31の被操作部310cとの間に挿入されている。
【0148】
図33に示すように、断面視においてサポート33は、弧状の底壁部331と、底壁部331の両側から上方に延びる側壁部332、333と、底壁部331から下方に延びる接続片334と、を有する。
サポート33は、接続片334を貫通したボルトBにより、プレート部材8の取付部89に固定されている。
【0149】
図33に示すように、動力伝達装置1の内部においてサポート33は、一方の側壁部333を、第2ボックス12の壁部120に接触させた状態で、プレート部材8に固定されている。また、サポート33は、他方の側壁部332は、プレート部材8との間に隙間を空けて設けられている。
【0150】
サポート33において、底壁部331と、当該底壁部331の両側の側壁部332、333から構成される部分は、断面視において略U字形状を成している。サポート33は、略U字形状の部分の開口を上方に向けて設けられている。
【0151】
図34に示すように、サポート33では、ブリーザ室16側(図中、右側)の内周に、カム部335が設けられている。カム部335の上面335aは、底壁部331の上面331aよりも上方に位置している。
パークロッド32では、先端32a側にカム320が外挿されている。カム320は、図示しないスプリングの付勢力で、先端32a側に付勢されている。
【0152】
パークロッド32が、サポート33とパークポール31の被操作部310cとの間にカム320を押し込む方向(
図34における右方向)に変位すると、カム部335に乗り上げられたカム320が、被操作部310cを押し上げる。
これにより、パークポール31は、
図28における時計回り方向に回動して、爪部311cをパークギア30の外周に係合させた位置(係合位置:
図37参照)に配置される。
【0153】
パークロッド32が、サポート33とパークポール31の被操作部310cとの間から引き抜かれる方向(
図34における左方向)に変位すると、パークロッド32のカム320が、カム部335を降りて底壁部331の上面331aに到達する(
図34における仮想線参照)。
これにより、パークポール31は、スプリングSpの付勢力により、
図28における反時計回り方向に回動して、爪部311cをパークギア30の外周から離脱させた位置(離脱位置)に配置される(
図35参照)。
【0154】
本実施形態のパークポール31は、力点である被操作部310cと、作用点である爪部311cとの間に、支点となる回動軸(軸線X2)が位置する第1種てこ形式のパークポールである。
作用点を中心に置き、力点と支点が作用点の外側(作用点から見て一方側と他方側)に位置する第2種てこ形式や、支点を、力点と作用点の外側で、かつ力点に近い場所に配置した第3種てこ形式のパークポールとは異なる。
【0155】
第1種てこ形式のパークポール31は、力点である被操作部310cに、パークロッド32に操作力(力)が作用することにより、軸線X2周りに回動する。そして、このパークポール31の回動により、作用点側に位置する爪部311cが、パークギア30に係合する係合位置に移動する。
【0156】
図32に示すように、パークロッド32の他端32bは、マニュアルプレート35の連結部355で支持されている。この状態においてパークロッド32は、連結部355からの脱落が阻止された状態で、軸方向に変位可能に設けられている。
【0157】
マニュアルプレート35は、マニュアルシャフト37に外挿される基部351と、基部351の外周から、マニュアルシャフト37の回転軸Yの径方向に延びる腕部353および係合部352を有している。
【0158】
基部351は、マニュアルシャフト37との相対回転が規制された状態で、マニュアルシャフト37に固定されている。
腕部353は、基部351の外周からモータ2に近づく方向に延びている。回転軸Xの径方向から見て、腕部353は、プレート部材8の外径側をモータ2側に横切っている。
【0159】
図27に示すように、腕部の353の先端側は、下側(回転軸)側に折り曲げられたのち、連結部355が上面に固定された支持部354に接続している。
【0160】
また、
図32に示すように、基部351から延びる係合部352の先端側は、回転軸Yの周方向に所定の範囲を持って幅広に形成されている。この幅広に形成された領域の外周には、周方向に連続する複数の凹部が設けられている。これら複数の凹部のうちの1つに、ディテントスプリング36のローラ365(
図27参照)が弾発的に係合している。
【0161】
ディテントスプリング36は、長手方向の基端部361が、ボルトBで、第4ボックス14に固定されている。ローラ365が設けられた先端側は、マニュアルプレート35の基部351の径方向に弾性変位可能である。また、ローラ365が設けられた先端側は、マニュアルプレート35の基部351の外周(凹部)に圧接している。
【0162】
本実施形態では、動力伝達装置1を搭載した車両の走行モード/駐車モードの切り替えに連動して、マニュアルシャフト37が回転軸Y回りに回動する。
マニュアルシャフト37が回動すると、マニュアルシャフト37に固定されたマニュアルプレート35もまた回転軸Y回りに回動する。そうすると、マニュアルプレート35の基部351から延びる腕部353と、腕部353の先端の支持部354に固定された連結部355が、回転軸Y回りの周方向に変位する。連結部355に連結されたパークロッド32もまた、当該パークロッド32の長手方向に変位する。
【0163】
図35から
図38は、パークロック機構3の動作を説明する図である。
図35は、動力伝達装置1を搭載した車両が走行モードであるときのパークポール31とパークロッド32の配置を説明する図である。
図36は、動力伝達装置1を搭載した車両が走行モードであるときのパークロッド32とマニュアルプレート35の配置を説明する図である。
図37は、動力伝達装置1を搭載した車両が駐車モードであるときのパークポール31の配置を説明する図である。
図38は、動力伝達装置1を搭載した車両が駐車モードであるときのパークロッド32とマニュアルプレート35の配置を説明する図である。
【0164】
動力伝達装置1を搭載した車両が走行モードであるときには、マニュアルシャフト37は、マニュアルプレート35の凹部352bに、ディテントスプリング36のローラ365を係合させる角度位置に配置される(
図36参照)。
この状態では、パークロッド32のカム320が、サポート33と、パークポール31の被操作部310cとの間から引き抜かれた位置に配置される。
【0165】
この状態では、パークポール31は、爪部311cをパークギア30から離間した位置に配置されている(
図35参照)。
そのため、パークギア30が取り付けられたモータシャフト20は、回転軸X回りの回転が許容された状態となり、モータ2の出力回転の駆動輪W、Wへの伝達が可能な状態、すなわち、動力伝達装置1を搭載した車両が走行可能な状態となる。
【0166】
動力伝達装置1を搭載した車両において、走行モードから駐車モードに切り替えられると、マニュアルプレート35は、
図36に示す角度位置から、
図38に示す角度位置まで回動する。
【0167】
そうすると、マニュアルシャフト37は、マニュアルプレート35の凹部352aに、ディテントスプリング36のローラ365を係合させる角度位置に配置される(
図38参照)。
この状態では、パークロッド32のカム320が、サポート33と、パークポール31の被操作部310cとの間に挿入された位置に配置される。
【0168】
この状態では、パークポール31は、爪部311cをパークギア30に係合させた位置に配置されている(
図37参照)。
そのため、パークギア30が取り付けられたモータシャフト20は、回転軸X回りの回転が規制される。これにより、モータ2の出力回転の駆動輪W、Wへの伝達が不可能な状態となる。すなわち、動力伝達装置1を搭載した車両は、走行できない状態(駐車状態)となる。
【0169】
図36に示すように、パークロック機構3のパークポール31と、パークロッド32と、サポート33と、ホルダ34が、プレート部材8から見て第2ボックス12の壁部120側(モータ2側)に位置している。
マニュアルプレート35と、ディテントスプリング36と、マニュアルシャフト37が、プレート部材8から見て第2ボックス12の壁部120とは反対側(デフケース50、遊星減速ギア4側)に位置している。
すなわち、
図24において、プレート部材8のモータ2側の面80a側に、パークポール31と、パークロッド32と、サポート33と、ホルダ34が配置されている。そして、プレート部材8のデフケース50側の面80b側に、マニュアルシャフト37と、ディテント機構(マニュアルプレート35、ディテントスプリング36)が配置されている。
【0170】
パークロック機構3の構成部品が、プレート部材8を間に挟んだモータ2側の空間と、デフケース50側の空間を利用して、分散配置されている。そのため、第4ボックス14内の余裕のある空間を有効に活用しつつ、パークロック機構3の構成部品を配置できる。よって、パークロック機構3を、本体ボックス10内に設置するに際し、本体ボックス10の大型化を抑制できる。
【0171】
パークロック機構3のパークポール31は、ホルダ34を介してプレート部材8に取り付けられている。パークロッド32のカム320が載置されるサポート33は、プレート部材8に取り付けられている。
プレート部材8は、第4ボックス14にボルトBで固定される固定側部材である。よって、プレート部材8を利用して、パークロック機構3の構成部品を適切に配置できる。
【0172】
また、マニュアルプレート35、ディテントスプリング36及びマニュアルシャフト37を、鉛直線VL方向における第4ボックス14の上部に形成されたオイルキャッチ部15の空間を利用して配置している。これにより、第4ボックス14を大型化させることなく、第4ボックス14内で余裕のあるオイルキャッチ部15の空間を利用して、パークロック機構3の構成部品を配置できる。
【0173】
かかる構成の動力伝達装置1の作用を説明する。
図1に示すように、動力伝達装置1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフト9(9A、9B)と、が設けられている。
そして、動力伝達経路におけるモータ2と遊星減速ギア4との間に、パークロック機構3のパークギア30が設けられている。
【0174】
動力伝達装置1を搭載した車両が駐車モードであるときには、パークポール31は、爪部311cをパークギア30に係合させた位置に配置されている(
図37参照)。そのため、パークギア30が取り付けられたモータシャフト20は、回転軸X回りの回転が規制された状態となる。
この状態では、駆動輪W、Wの回転が規制されており、動力伝達装置1を搭載した車両は駐車状態となる。
【0175】
動力伝達装置1を搭載した車両のモードが、駐車モードから走行モードに切り替えられると、マニュアルシャフト37は、図示しないアクチュエータモータの駆動力により、回転軸Y回りに回動する。
これにより、マニュアルシャフト37は、ディテントスプリング36のローラ365を、マニュアルプレート35の凹部352aに係合させた角度位置(
図38参照)から、凹部352bに係合させた角度位置(
図36参照)まで変位する。
【0176】
そうすると、マニュアルプレート35の回転軸Y回りの回転により、パークロッド32が、サポート33とパークポール31の被操作部310cとの間からカム320を引き抜く方向(
図38における左方向)に変位する。
そうすると、カム320が、サポート33とパークポール31の被操作部310cとの間から引き抜かれた時点で、パークポール31がスプリングSpの付勢力により、軸線X1回りに回動して、爪部311cがパークギア30の外周から離脱する(
図35参照)。
【0177】
そうすると、パークギア30が取り付けられたモータシャフト20は、回転軸X回りの回転が許容された状態となる。
この状態では、駆動輪W、Wの回転が許容されており、動力伝達装置1を搭載した車両は走行可能な状態となる。
【0178】
図2に示すように、この状態において、モータ2が駆動されて、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、遊星減速ギア4のサンギア41に回転が入力される。
【0179】
図3に示すように、遊星減速ギア4では、サンギア41が、モータ2の出力回転の入力部となっている。段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、入力された回転の出力部となっている。
【0180】
サンギア41が入力された回転で回転軸X回りに回転すると、段付きピニオンギア43(大径歯車部431、小径歯車部432)が、サンギア41側から入力される回転で、軸線X1回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、第4ボックス14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、段付きピニオンギア43は、軸線X1回りに自転しながら、回転軸X周りに公転する。
【0181】
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432の外径R2は、大径歯車部431の外径R1よりも小さくなっている(
図3参照)。
これにより、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50(第1ケース部6、第2ケース部7)が、モータ2側から入力された回転よりも低い回転速度で回転軸X回りに回転する。
そのため、遊星減速ギア4のサンギア41に入力された回転は、段付きピニオンギア43により、大きく減速される。減速された回転は、デフケース50(差動機構5)に出力される。
【0182】
そして、デフケース50が、入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、デフケース50内で、ピニオンメートギア52と噛合するドライブシャフト9(9A、9B)が回転軸X回りに回転する。これにより動力伝達装置1が搭載された車両の左右の駆動輪W、W(
図1参照)が、伝達された回転駆動力で回転する。
【0183】
図2に示すように、第4ボックス14の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留されている。そのため、貯留されたオイルOLは、モータ2の出力回転の伝達時に、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
掻き上げられたオイルOLにより、サンギア41と大径歯車部431との噛合部と、小径歯車部432とリングギア42との噛合部と、ピニオンメートギア52とサイドギア54A、54Bとの噛合部とが潤滑される。
【0184】
図19に示すように、第3ボックス13側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
第4ボックス14の上部には、オイルキャッチ部15が設けられている。オイルキャッチ部15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置している。デフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入する。
【0185】
図22に示すように、オイルキャッチ部15内には、支持台部151に載置されたオイルガイド152が設けられている。
デフケース50の第1ケース部6の径方向外側と、デフケース50の第2ケース部7の径方向外側に、オイルガイド152のガイド部154とキャッチ部153が位置している。
そのため、デフケース50で掻き上げられてオイルキャッチ部15内に流入したオイルの多くが、オイルガイド152に捕捉される。
オイルガイド152に捕捉されたオイルOLの一部は、壁部153aに設けた切欠部155から排出されて、支持台部151の上面に一端が開口した油孔151aに流入する。
【0186】
油孔151aの内径側の端部は、支持部145の内周に開口している(
図2参照)。そのため、油孔151aに流入したオイルOLは、第4ボックス14の支持部145の内周と、サイドギア54Bの筒壁部540との間の隙間Rxに排出される。
【0187】
隙間Rxに排出されたオイルOLの一部は、支持部145で支持されたベアリングB2を潤滑する。ベアリングB2を潤滑したオイルOLは、デフケース50の回転による遠心力で外径側に移動する。デフケース50の外径側では、周壁部73の内周に沿ってスリット710が設けられている。オイルOLは、周壁部73により外径側への更なる移動が妨げられる。オイルOLは、スリット710を第1ケース部6側に通過する。
【0188】
スリット710の第1ケース部6側では、ガイド部78の内周において、ケース内油路781が開口している。スリット710を通過したオイルOLの一部は、デフケース50の回転による遠心力によりケース内油路781内に流入する。
ケース内油路781に流入したオイルOLは、導入路441を通ってピニオン軸44の軸内油路440に流入する。軸内油路440に流入したオイルOLは、油孔442、443から径方向外側に排出される。排出されたオイルOLはて、ピニオン軸44に外挿されたニードルベアリングNBを潤滑する。
【0189】
さらに、隙間Rxに排出されたオイルOLの一部は、
図14に示すように、第2ケース部7の筒壁部72の内周に設けた油溝721を通る。油溝721を通ったオイルOLは、サイドギア54Bの裏面を支持するワッシャ55に供給されて、ワッシャ55を潤滑する。
さらに、第2ケース部7の基部71に設けた油溝712と、円弧部741に設けた油溝742を通る。油溝742を通ったオイルOLは、ピニオンメートギア52の裏面を支持する球面状ワッシャ53に供給されて、球面状ワッシャ53を潤滑する。
【0190】
また、オイルキャッチ部15のオイルガイド152に捕捉されたオイルOLの一部は、ガイド部154側に排出される(
図20参照)。ガイド部154の先端154bは、第2ボックス12の壁部120に設けた油孔126aに、回転軸X方向の隙間を空けて対向している(
図21参照)。
そのため、ガイド部154側に排出されたオイルOLの多くが、第2ボックス12の油孔126aに流入する。
【0191】
なお、油孔126aに流入しなかったオイルOLは、第2ボックス12の壁部120を伝って、第4ボックス14の下方に向けて移動する。
図2に示すように、第4ボックス14では、壁部120とプレート部材8との間が、第2ギア室Sb2となっている。第2ギア室Sb2には、パークロック機構3のパークギア30が位置している。
そのため、油孔126aに流入しなかったオイルOLは、第2ギア室Sb2内を下方に向けて移動する際に、パークギア30を潤滑する。
【0192】
図21に示すように、壁部120の外周には、油孔126aを囲むボス部126が設けられている。ボス部126には、回転軸X方向から配管127の一端が嵌入している。
そのため、第2ボックス12の油孔126aに流入したオイルOLは、配管127内に流入する。
配管127は、第2ボックス12の外側を通って第3ボックス13まで及んでいる。配管127の他端は、第3ボックス13の円筒状の接続壁136に設けた油孔136a(
図2参照)に連通している。
【0193】
そのため、本実施形態では、オイルキャッチ部15に到達したオイルOLの一部が、ガイド部154と配管127を通って、接続壁136の内部空間Scに供給される。
油孔136aから内部空間Scに排出されたオイルOLは、内部空間Scに貯留される。オイルOLは、第3ボックス13の周壁部131で支持されたベアリングB4を潤滑する。
【0194】
内部空間Scに排出されたオイルOLの一部は、ドライブシャフト9Aの外周とモータシャフト20の内周との隙間を通って、モータシャフト20の他端20b側まで移動する。
図10に示すように、モータシャフト20の他端20bは、サイドギア54Aの筒壁部541の内側に挿入されている。筒壁部541の内周には、サイドギア54Aの裏面に連通する連絡路542が設けられている。
そのため、モータシャフト20の他端20b側まで移動して、筒壁部541の内側に排出されたオイルOLの一部は、連絡路542を通る。連通路542を通ったオイルOLは、サイドギア54Aの裏面のワッシャ55に供給されて、ワッシャ55を潤滑する。
【0195】
さらに、サイドギア54Aの裏面のワッシャ55を潤滑したオイルOLは、第1ケース部6のギア支持部66に設けた油溝662と、円弧部641に設けた油溝642を通る。油溝642を通ったオイルOLはピニオンメートギア52の裏面を支持する球面状ワッシャ53に供給されて、球面状ワッシャ53を潤滑する。
【0196】
また、
図2に示すように、第3ボックス13の内部空間Scは、径方向油路137と、軸方向油路138と、連通孔112aと、第2ボックス12の下部に設けたオイル溜り部128と、を介して、第4ボックス14に設けた第2ギア室Sb2に連絡している。
そのため、内部空間Sc内のオイルOLは、第4ボックス14内に貯留されたオイルOLと同じ高さ位置に保持される。
【0197】
このように、回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、オイルキャッチ部15内に流入する。オイルOLは、オイルキャッチ部15から、第4ボックス14の支持部145内に供給されてベアリングB2を潤滑する。オイルOLは、また、オイルキャッチ部15から、第3ボックス13内の内部空間Scに供給されてベアリングB4を潤滑する。そして、これらベアリングB2、B4を潤滑したオイルOLは、最終的に第4ボックス14内に戻されて、回転するデフケース50により掻き上げられる。
さらに、オイルキャッチ部15に捕捉されたオイルOLの一部が、第2ギア室Sb2内に戻されて、第2ギア室Sb2内のパークギア30が潤滑される。
【0198】
よって、動力伝達装置1では、駆動輪W、Wの回転時に第4ボックス14内のオイルOLが掻き上げられて、ベアリング、パークギア、そしてギア同士の噛合部の潤滑に用いられる。潤滑に用いられたオイルOLは、第4ボックス14内に戻されて、再び掻き上げられるようになっている。
【0199】
以上の通り、本実施形態にかかるパークポール31は、以下の構成を有している。
(1)パークポール31は、力点である被操作部310cに操作力(力)が作用することにより、作用点側に位置する爪部311cが、パークギア30との係合位置に移動するように回動する第1種てこ形式のパークポールである。
パークポール31は、力点と作用点との間の支点(軸線X2)回りに回動可能である。
支点と作用点との間の位置に段差部312、313が設けられている。
【0200】
このように構成すると、第1種てこ形式のパークポール31とすることにより、回転軸X側(回転体の内周)に設けられたパークギア30と、爪部311cとを係合可能にできる。
これにより、回転体の外周にパークギアを設ける場合と比較して径方向のダウンサイジングが可能となる。
更に、パークポール31を支持するホルダ34(支持部材)に凹凸があった場合であっても、段差部312、313があるので、凹凸を避けてパークポール31を配置することができる。
これにより、パークポール31を採用した動力伝達装置1では、ホルダ34とパークポール31の間の軸線X1方向のクリアランスを小さくすることができるので、回転軸X方向のダウンサイジングが可能となる。
【0201】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(2)動力伝達装置1は、
力点である被操作部310cに、別部材であるパークロッド32からの操作力(力)が作用することにより、作用点側に位置する爪部311cが、パークギア30との係合位置に移動するように回動する第1種てこ形式のパークポール31と、
パークポール31の支点である突起部341を備えるホルダ34(支持部材)と、を有する。
突起部341は、ホルダ34からパークポール31に向かって突出している。
パークポール31は、支点である突起部341との係合位置と、作用点である爪部311cとの間の位置であって、突起部341を避けた位置に、段差部312、313が設けられている。
【0202】
このように構成すると、回転軸Xの近傍に作用点(爪部311c)が位置すると共に、回転軸Xから径方向外側に離れた位置に力点(被操作部310c)が位置するように、パークポール31を配置することができる。このように配置されたパークポール31は、支点である回動軸(軸線X2)が、回転軸Xの径方向で、作用点と力点との間に位置するので、力点への僅かな操作力の入力により、爪部311cをパークギア30に係脱できる。
よって、第1種てこ形式のパークポール31を、本体ボックス10(第4ボックス14)内に設置するにあたり、パークポール31が作動するために必要な空間は、第2種てこ形式のパークポールの場合よりも狭くて済む。よって、パークポール31を設けるにあたり、本体ボックス10を大型化させずに済む。
【0203】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(3)動力伝達装置1は、回転軸X方向で、ホルダ34(支持部材)に対向配置されたプレート部材8(対向部材)を有する。
回転軸X方向においてパークポール31は、プレート部材8とホルダ34との間に位置する。
軸線X2の径方向から見てパークポール31は、支点(軸線X2)と、作用点(爪部311c)との間の位置であって、プレート部材8に対向する位置に、プレート部材8との干渉を避けられる位置に段差部313(対向側段差部:
図31参照)が設けられている。
【0204】
パークポール31に段差部を設けるにあたり、ホルダ34側の面だけに段差部を設けて、反対側(プレート部材8側)を平坦にすることが考えられるが、爪部311c側(作用点側)の厚みが薄くなる。
そこで、上記のように構成して、ホルダ34とは反対側に、段差部313を設けて、パークポール31における爪部311cの近辺(作用点の近辺)を厚くすることで、爪部311c側(作用点側)の強度を高めることができる。
【0205】
動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(4)動力伝達装置1は、モータ2と、遊星減速ギア4(歯車機構)と、を有する。
回転軸X方向(軸方向)において、モータ2と遊星減速ギア4との間に、パークポール31が配置されている。
【0206】
1軸の電気自動車用の動力伝達装置において、径方向の拡大を抑制しつつパークポールを配置できる。
【0207】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0208】
1 動力伝達装置
2 モータ
30 パークギア
31 パークポール
310c 被操作部(力点)
311c 爪部(作用点)
313 段差部(対向側段差部)
32 パークロッド(別部材)
34 ホルダ(支持部材)
341 突起部
4 遊星減速ギア(歯車機構)
8 プレート部材(対向部材)
X 回転軸
X2 軸線(支点)