(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】エアジェット紡績機上の紡績工程の再開の方法、及びその方法を実施するためのエアジェット紡績機
(51)【国際特許分類】
D01H 1/115 20060101AFI20220912BHJP
D01H 13/22 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
D01H1/115 Z
D01H13/22
(21)【出願番号】P 2016223466
(22)【出願日】2016-11-16
【審査請求日】2019-10-09
(32)【優先日】2015-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】513176454
【氏名又は名称】リーター シーゼット エス.アール.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エブゼン、ピラール
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-001491(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10346194(DE,A1)
【文献】特開平08-246272(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10335651(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H 1/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアジェット紡績機の紡績工程の再開の方法であって、紡績の中断が発生した後に、糸(5)が紡績ノズル(4)の後方にその紡績経路に逆向きに導かれ、又は、糸(5)の端部が前記紡績ノズル(4)の後方に位置付けられた状態で、糸(5)が制御されて前記紡績経路に停止され、
この位置で、糸(5)が、巻取装置(9)の前の糸(5)の負圧糸収容装置(73)の傍らを通過し、糸(5)の引出機構(6)の中を通過し、
続いて、糸(5)の前記端部が、前記紡績ノズル(4)の出口開口(41)に導入され、糸(5)の前記端部が、糸の逆転動作によって、前記紡績ノズル(4)及びスライバ(0)の供給装置(3)を通って前記紡績ノズル(4)の前に位置するガイド・チャネル(2)まで送られ、前記ガイド・チャネル(2)において、糸の紡績開始端が、前記紡績ノズル(4)から離れている糸(5)の前記紡績開始端を準備する装置(20)によって形成され、その後、予備糸の形成が、糸(5)の前記巻取装置(9)の前に位置する前記負圧糸収容装置(73)において始まり、糸(5)の前記紡績開始端が、前記ガイド・チャネル(2)において前記供給装置(3)からの定められた距離に位置する、方法において、
前記紡績ノズル(4)の前に位置する前記ガイド・チャネル(2)における糸(5)の長さが、糸(5)の巻き戻し中に測定され、
糸(5)の前記紡績開始端の形成の前、それと同時、又は、その後に、最初に、ボビン(90)上への糸の巻取りが開始され、その際に、前記負圧糸収容装置(73)からの前記予備糸(5)を前記ボビン(90)上へ糸(5)を巻取ることによって完全に使い切る前に、前記紡績ノズル(4)を介して前記ガイド・チャネル(2)まで通過する糸(5)の引込みが、前記引出機構(6)によって開始され、
前記引出機構(6)による糸(5)の引込みの開始に続いて、糸(5)が、スライバ(0)の回転する供給装置(3)によって保持され、スライバ(0)の前記供給装置(3)による糸(5)の保持に続いて、新しい繊維が牽引装置(1)を通りスライバ(0)の前記供給装置(3)へ供給され始めて、スライバ(0)からの新しい繊維が、前記紡績ノズル(4)で紡績を行うために糸(5)の前記紡績開始端とともにスライバ(0)の前記供給装置(3)に達し、
前記引出機構(6)は、動作開始すると、加速して第1の速度(r
1)に達して、糸(5)の前記紡績開始端は、糸(5)の引込みが前記第1の速度(r
1)に達するときか又はその後に、スライバ(0)の前記供給装置(3)まで達し、それによって、新しい繊維は、前記牽引装置(1)を通りスライバ(0)の前記供給装置(3)及び前記紡績ノズル(4)へ供給され始めて、糸の前記紡績開始端及び新しい繊維は、スライバ(0)の前記供給装置(3)において前記第1の速度(r
1)で出会い、前記第1の速度(r
1)での糸継ぎの形成の後に、前記引出機構(6)が製造速度まで加速することを特徴とする、方法。
【請求項2】
紡績開始工程中に、前記ボビン(90)がゼロから製造速度に滑らかに加速し、又は、製造速度よりも速い一時的に増加した速度に加速した後に製造速度に減速することを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
糸(5)が、前記引出機構(6)による糸(5)の引込み開始と同時に、又は、前記引出機構(6)による糸(5)の引込み開始の後の時間遅延後に、スライバ(0)の回転する前記供給装置(3)によって保持されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記引出機構(6)による糸(5)の引込みが開始された後、ワークステーションの前記ガイド・チャネル(2)内の糸存在確認センサー(21)からの、糸(5)の前記紡績開始端が前記ワークステーションの前記ガイド・チャネル(2)内の前記糸存在確認センサー(21)を通過したことについての信号を受信した際、又は、前記ワークステーションの前記ガイド・チャネル(2)内の前記糸存在確認センサー(21)の、糸(5)の前記紡績開始端が前記ワークステーションの前記ガイド・チャネル(2)内の前記糸存在確認センサー(21)を通過したことについての信号を受信してから時間遅延後、糸(5)がスライバ(0)の回転する前記供給装置(3)によって保持されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記引出機構(6)によって引き込まれる糸(5)の所定長さを測定した後に、前記引出機構(6)による糸(5)の引込みが開始されると、糸(5)がスライバ(0)の回転する前記供給装置(3)によって保持されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項6】
糸(5)の引込みの開始からのタイミングによって、新しい繊維が前記牽引装置(1)を通りスライバ(0)の前記供給装置(3)へ供給され始めることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項7】
ワークステーションの前記ガイド・チャネル(2)内の糸存在確認センサー(21)からの、糸(5)の前記紡績開始端が前記ワークステーションの前記ガイド・チャネル(2)内の前記糸存在確認センサー(21)を通過したことについての信号を受信した後のある時間間隔の後に、新しい繊維が前記牽引装置(1)を通りスライバ(0)の前記供給装置(3)へ供給され始めることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記引出機構(6)によって引き込まれる糸(5)の所定長さを測定した後に、新しい繊維が前記牽引装置(1)を通りスライバ(0)の前記供給装置(3)へ供給され始めることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアジェット紡績機の紡績工程の再開の方法であって、紡績工程において中断が発生した後に、糸が紡績ノズルの後方にその紡績経路に逆向きに導かれ、又は、糸の端部が紡績ノズルの後方にある状態で、糸が制御されて紡績経路に停止され、それによって、この位置で、糸が、巻取装置の前の糸の負圧糸収容装置の周りを案内され、糸の引出機構を通って案内され、続いて、糸端が紡績ノズルの出口開口に導入され、糸端が、糸の逆転動作によって、紡績ノズル及びスライバの供給装置を通って紡績ノズルの前に位置するガイド・チャネルまで送られ、その際、ガイド・チャネルにおいて、糸の紡績開始端が、紡績ノズルから離れている糸の紡績開始端を準備する装置によってガイド・チャネル内の糸に形成され、糸の巻取装置の前の負圧糸収容装置において予備糸の形成が始まる。
【背景技術】
【0002】
糸が偶発破断した後か、糸品質センサーからの信号を受信した後の制御された紡績の中断の後か、若しくは満巻のボビンを空のものと交換した後かを問わず、紡績工程での中断が発生した後、紡績(糸製造)を再開するため、紡績機械には様々な技術が使われている。
【0003】
紡績工程の再開のためにワークステーションを準備する目的は、ワークステーションの個々の機械部品に、又は必要であれば相伴装置の部品にも、必要とされる位置又は設定を取らせ、その結果、糸の紡績開始端が回転する準備を確実にし、また、紡績端が、紡績工程を開始するために定められた初期位置に配置されるのを確実にすることである。
【0004】
例えば、糸の中断による突然の紡績中断の場合、紡績は一般的に高速工程なので、紡績機のワークステーションの制御された停止に適用することはできず、破断した糸端がボビンに巻き取られる。紡績工程を再開するために、したがって相伴装置を使用するか手作業でボビン上のこの糸端を見つけて、欠損糸部分をボビンから巻き戻して除去し、糸をそれの紡績経路に導くか、若しくはワークステーションの手段に容易に引き渡すことができる位置に導く必要がある。それと同時に、紡績工程の再開には、ワークステーションで作業を更に進めるため、紡績ノズルに対するいわゆる転送位置に糸端を置く必要があり、紡績ノズルへの供給に向け、紡績工程の再開のためエアジェット紡績機のワークステーションの準備の最終ステップを行う。
【0005】
この状況に類似するのが、満巻ボビンを空のボビンと交換した後の紡績工程の再開のためのワークステーションの準備であり、この場合、糸端は巻かれたボビン上に見つからないが、補助糸上に巻かれ、これは相伴装置によって補助糸のボビン上で、通常、提供される。相伴装置がワークステーションの手段へ速やかに供給できるように補助糸を準備する。相伴装置は、糸端をいわゆる転送位置に置き、糸が紡績ノズルに挿入されてワークステーションが更に作業を進められるようにする。これにより、紡績工程の再開のためにエアジェット紡績機のワークステーションの準備の最終ステップが実行できるようになる。
【0006】
回転が制御されて中断された場合、例えば、糸の品質センサーからの信号の後に、ワークステーションの機械部品が協調したやり方で徐々に減速して完全に停止する、即ち、紡績の中断に至り、糸がワークステーションの紡績経路に残り、端部が紡績ノズルの中に位置し、そうするとボビン上に探す必要はなく、また、ワークステーションが更に作業を進められるようにするため、及び紡績ノズルに糸を挿入するため、いわゆる転送位置に糸端をセットし、紡績工程再開のためのエアジェット紡績機のワークステーションの準備の最終ステップを行う必要もない。
【0007】
前述の紡績工程再開のためのエアジェット紡績機のワークステーションの準備の最終ステップは、糸端を転送位置から紡績ノズルへ送ること、その次に、必要な長さの糸を、通常紡績時に紡績ノズルに繊維を送る方向とは反対の方向に紡績ノズルの手前まで巻き戻すことに含まれ、紡績ノズルの手前に糸の紡績開始端準備用装置が配設され、巻き戻された糸に糸の紡績開始端を形成する。一方で、ワークステーションの他の機械部品が、紡績開始工程を始めるための準備をし、準備にはボビンからの糸の巻き戻しにより負圧糸収容装置内で予備糸を形成することが含まれる。その結果、紡績工程の再開のためのワークステーションの準備が、ここで、整う。続けて、紡績開始工程が開始され、そこで、ワークステーションの個々の機械部品が動作開始し、糸が、糸の引出機構により引き込まれ、加速したボビン上へ巻かれ始め、引込み速度とボビンの回転速度との間に起きる差は、徐々に増加する一方であって、実質的に引出機構によって糸が急速に加速されるが、負圧糸収容装置によって補償され、ボビン加速の間に糸がそこを通過して運転速度に至り、糸の巻取装置の前に位置付けられる。事前決定時刻に、糸の引込みが始まるとスライバの紡績ノズルへの供給が開始され、結果的に、新たに形成された糸が紡績ノズルの中の糸の紡績開始端に接続される。
【0008】
上述の技術は、例えば特許文献1による解決策、また特許文献2及び3のように公開される解決策の中に開示されている。
【0009】
特許文献1による背景技術、また特許文献2及び3のように公開される背景技術の問題点は、糸の紡績開始端の位置の変化が継続してある程度存在することであり、これが糸を中断することで発生し、通常、糸の紡績開始端準備用装置の中で糸を切断することで発生し、その結果、1つのワークステーション及び異なるワークステーションでの糸継ぎの均一性に悪影響を与える。別の欠陥は、紡績糸端のある糸の部分、即ち、紡績ノズルを通過する部分が、新しく形成された糸の紡績の間に、その端、即ち、紡績端に接続されるが、糸の紡績開始端形成装置と紡績ノズルとの間の糸経路の長さによって決められる限られた長さしか持たないことである。ある場合では、この長さが明らかに不十分であり、というのは、糸の紡績開始端が接続時にある速度に達し比較的一定速度で移動するならば、高品質で均一な糸継ぎに有利であるからである。
特許文献4は、空気渦紡績ユニットに、牽引システムからモータによって駆動される供給ローラ対及び取出ローラ対を介してスライバが供給される解決策について説明する。端部の切断後に糸継ぎを行うために、糸がパッケージから引き戻され、端部がスライバに結合され、紡績を開始するためにすばやく再び前方に引き出される。ニップローラは、モータが加速されている間は開いたままであり、設定された速度で急速に閉じられるために、糸は、すぐに同じ速度まで加速される。続いて、他の駆動モータが特定された順序で始動される。空気渦紡績装置は、減速された中間速度までモータを順次始動させ、第2のモータが始動される前にニップローラを閉じるための駆動装置及びコントローラを含む。ニップローラは、迅速な動作をもたらすために、閉じる直前に中間位置にすることができる。巻上装置を駆動する第3のモータが最後に始動され、紡績速度への加速中の糸の速度の不一致は、圧縮空気によって支持される貯蔵ループに吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】独国特許出願公開第102012108380号明細書
【文献】特開2014-001491号公報
【文献】米国特許出願公開第2013/333347号明細書
【文献】独国特許第10346194号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、背景技術の不都合な点を除去するか、少なくとも最小化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の目的が、エアジェット紡績機の紡績工程を再開するワークステーションを準備する方法によって達成され、その原理は、紡績ノズルの前に位置するガイド・チャネルにおける糸の長さが、糸の巻き戻し中に測定され、それによって、糸の紡績開始端の形成の前、それと同時、又は、その後に、最初に、糸のボビン上への巻取りが開始され、その際に、負圧糸収容装置からの予備糸をボビン上へ糸を巻取ることによって完全に使い切る前に、紡績ノズルを介してガイド・チャネルまで通過する糸の引込みが、引出機構によって開始され、それによって、引出機構による糸の引込みの開始に続いて、糸が、スライバの回転する供給装置によって、新しい繊維が牽引装置を通りスライバの供給装置に供給され始めて、スライバからの新しい繊維が、紡績ノズルで紡績を行うために糸の紡績開始端とともにスライバの供給装置の出口に達したことが測定され、又は検出されたときに保持されることからなる。
【0013】
この発明の有利な点は、機械の全てのワークステーションで安定した糸継ぎが取得できるといった事実にある。
【0014】
本発明が以下の図面に概略的に表わされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】エアジェット紡績機のワークステーションの配置を示す図である。
【
図2】紡績工程を再開するために個々の工程がワークステーションで実行されたタイミングの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
隣り合って並べられた少なくとも一列の同一ワークステーションを備える、エアジェット紡績機のワークステーションの実施例の実例に基づいて、本発明を説明する。
【0017】
ワークステーションはスライバ0の牽引機構1を備え、牽引機構1は、図示しないスライバ供給源と位置合わせされた入口10と、駆動装置32に接続されたスライバ0の供給装置3の入口30と位置合わせされた出口11とを有する。スライバ0の供給装置3は、紡績ノズル4への繊維の入口40と位置合わせされた出口31を有する。紡績ノズル4では、入ってくるスライバ0は糸5に変換され、糸5は、紡績ノズル4の糸5の出口開口41の後方に設けられた引出機構6により引き出される。
【0018】
引出機構6は、一対のローラ60、61を備え、一対のローラは互いの方向に押し付けられ、ローラの一方は回転駆動装置62に接続し、他方は加圧アーム(図示せず)に回転可能に取り付けられ、加圧アームはワークステーションに傾斜可能に組みこまれている。
【0019】
紡績ノズル4の出口開口41と糸5の引出機構6との間に、糸5の紡績経路に並ぶ吸引チューブ7の吸引入口70がある。吸引チューブ7は、負圧源Xに制御可能に接続されている。吸引チューブ7では、糸5の中断用装置71とノズル4に糸5の端を送出する装置72とが設けられている。
【0020】
吸引チューブ7と糸5の引出機構6との間に、糸品質センサー8が設けられ、糸品質センサー8はワークステーションの制御システム及び/若しくはワークステーションの一部分の制御システム及び/若しくは紡績機の制御システムに接続されている。
【0021】
糸5の経路上で、糸5の引出機構6の後方に、ボビン90上に糸5を巻き取る巻取装置9が設けられている。巻取りの間、ボビン90は駆動シリンダ91の上にあり、駆動シリンダ91は回転によりボビン90を駆動し、糸5は、糸5のガイド装置のガイド92により、ボビン90の幅方向に沿って案内される。図示した実施例の実例では、横断ガイド92の前で、糸がワキシング装置93の中を通過する。巻取りが円錐ボビンの場合には、ワキシング装置93の前の糸5の経路上に糸ループの補正装置94が配置される。糸ループは、円錐ボビン90の巻取りの間、周期的に形成される。糸5の経路上で、補正装置94の前には、糸存在確認センサー95が設けられ、糸製造中は糸切れ検出モードで作動する。
【0022】
糸存在確認センサー95と糸5の引出機構6との間で、糸5の経路に近接して、吸引入口730とともに、負圧糸収容装置73が配置され、負圧源Xに接続されている。
【0023】
ワークステーションにおいて紡績工程を再開させるため、スライバ0の牽引機構1の出口11とスライバ0の供給装置3の入口30との間の空間に、糸5のガイド・チャネル2の可動出口部22(assignable exit portion 22)が設けられている。通常の紡績中は、この出口部22は、スライバ0の牽引機構1の出口11とスライバ0の供給装置3の入口30との間の空間の外側に完全に退避しているか、若しくは、固定されてスライバ0の経路の外に置かれている。ガイド・チャネル2は、他方の端が負圧源Xに接続されている。ガイド・チャネル2は、出口部22から離れた場所に糸の紡績開始端準備用装置20を有する。ガイド・チャネル2の出口部22から離れる方向に向かって糸の紡績開始端準備用装置20の後方に、ガイド・チャネル2において糸存在確認センサー21を備えている。
【0024】
図示した実施例の実例では、スライバ0の供給装置3の入口30とガイド・チャネル2にある糸5の紡績開始端準備用装置20との間の空間に、より具体的には、紡績ノズル4の入口40とガイド・チャネル2にある糸5の紡績開始端準備用装置20との間に、糸5の自由端の固定要素23(保持器)が配設されており、図示した実施例では、この固定要素23はガイド・チャネル2の出口部22の一部をなしている。
【0025】
製造した糸5に欠陥が発生し(糸5の欠陥は糸品質センサー8によって記録される)、紡績工程が中断された後、再開のためにワークステーションの準備が行われる。即ち、糸品質センサー8が糸5の欠陥を記録すると直ちに、ワークステーションは制御機構(図示せず)の指示に従って、紡績工程の円滑な停止を開始する。ワークステーションの個々の動作の時間間隔即ち個々の動作に必要な時間を最小化する観点から、ワークステーションの個々の機械部品にブレーキが掛けられる。より具体的には、糸5が紡績経路にある場合、できるだけ早く完全停止に至るよう制御されて停止する。紡績中、糸5は紡績経路内にあり、糸端は紡績ノズル4内にあるか、若しくはノズル4の上の吸引チューブ7の吸引口70の部分にある。
【0026】
次に、吸引チューブ7による糸の吸引が開始され、それによって、紡績ノズル4にある糸5の端が紡績ノズル4から引き出され、吸引チューブ7に吸い込まれる。その後、紡績中に糸5をボビンに巻き取る方向とは反対の方向にボビン90が回転し、ボビン90から糸5の欠陥部の巻き戻しが開始され、同時に引出ローラ60、61が逆回転することでボビン90から糸が引き出される。糸5の欠陥部の巻き戻しの間、巻き戻されている欠陥糸5も糸品質センサー8を通過し、吸引チューブ7に吸い込まれる。吸引チューブ7は制御可能に負圧源に接続されており、欠陥糸5はそこから更に吸引されてゴミとなる(図示せず)。このようにして、糸5の欠陥部分の長さ分がボビン90から巻き戻され、ワークステーションの紡績経路から廃棄されるのだが、欠陥糸は、長い断片ではなく、吸引チューブ7において糸5の中断用装置71によって連続的に「切断」され、小さな破片にされて吸引され廃棄される。
【0027】
欠陥糸5が吸引チューブ7から取り除かれた時、無欠陥糸5即ち欠陥検出前の糸5は既にワークステーションの紡績経路内のボビン90と吸引チューブ7との間の部分にある。
【0028】
次に、吸引チューブ7における糸5の中断の装置71によって糸5の最後の部分が分離され、吸引されてゴミになると、無欠陥糸5は引出機構6によって保持される。その時、無欠陥糸の端は吸引チューブ7内でノズル4まで糸端を通す装置72の部分に位置している。
【0029】
糸の破断による中断の後、紡績工程を再開するためのワークステーションの準備は、図示しない相伴装置がボビン90上の糸の端を検出し、ボビンから巻き戻し、ノズル4の上に位置するワークステーションの手段まで通す方法で行われる。破断によってできた糸端は、糸5をワークステーションの手段まで通す前に、相伴装置の手段によって除去するか、若しくはワークステーションの吸引チューブ7内で除去される。そこで吸引チューブ7が糸5の最後の部分を分離し吸引してゴミとすると、無欠陥糸5は引出機構6によって保持される。その時、無欠陥糸の端は、吸引チューブ7内でノズル4まで糸端を通す装置72の部分に位置している。
【0030】
次に、糸5の自由端は、例えば、吸引チューブ7による吸引工程が完了した後に吹き出しを行う方法や、紡績ノズル4の出口開口41に吸い込む等の方法により、吸引チューブ7から紡績ノズル4の出口開口41へ移動する。
【0031】
無欠陥糸5の端が紡績ノズル4に戻るとすぐに、ワークステーションの糸5の引出機構6の逆転動作の助けを借りて、糸5の巻き戻しの次の段階が開始される。即ち、製造中の糸5の移動方向とは反対方向の糸5の動きであり、紡績ノズル4とスライバ0の供給装置3とを通って、糸5のガイド・チャネル2の出口部22へ、更には糸5の自由端の固定要素23(保持器)へ、そして更には糸5のガイド・チャネル2への動きである。
【0032】
スライバ0の供給装置3は開いた状態、即ち、加圧ローラが持ち上げられた状態にある。
【0033】
無欠陥糸5をガイド・チャネル2まで巻き戻す目的は、その後の紡績開始や高品質の糸継ぎの形成を実現するため無欠陥糸5の十分な長さを確保することである。補助用の無欠陥糸5のこの長さの計測は、糸5の巻き戻しの間、例えば、逆回転する引出ローラ60、61の回転回数を数えることにより、若しくは、ワークステーションの糸5の引出機構6の逆転動作の時間を測定することにより、若しくは、ガイド・チャネル2の糸存在確認センサー21からの信号により、行われる。ガイド・チャネル2において十分な長さの無欠陥糸5の信号がだされた瞬間、ボビン90の回転スピードに関連して、糸5の引出機構6のスピードが減少し、このようにして糸5の引出機構6は完全な停止に至る。こうして、引出機構6における糸5のスピードと巻き戻されるボビン90上の糸5のスピードとの差により、糸5ループが形成される。糸5ループは、紡績開始工程中のワークステーションの個々の機械部品の起動のため、特に、糸5の巻取装置9の起動のための予備の糸5として、負圧糸収容装置73に吸い込まれる。糸5の引出機構6が停止すると、ガイド・チャネル2内の無欠陥糸5は停止する。
【0034】
ガイド・チャネル2において、糸存在確認センサー21の前にある糸5の準備用装置20によって、糸5の紡績開始端が形成される。糸5の紡績開始端の形成の間、ボビン90から巻き戻される糸5のスピードは、必要に応じて、ボビン90の回転により増加若しくは減少し、それによって負圧糸収容装置73において、紡績開始中のワークステーションの個々の機械部品の起動を行うため必要な長さの予備の糸5を形成するが、同時に、収容装置のオーバーフローも避けるようにする。この場合、ガイド・チャネル2における糸5の紡績開始端の形成の間、ボビン90からの糸5の巻き戻しを停止するようにしてもよい。
【0035】
ガイド・チャネル2の糸存在確認センサー21は、糸5の切れた端がガイド・チャネル2の糸の紡績開始端準備用装置20に吸い込まれるのを記録する。これにより、糸5の紡績開始端の形成が確認される。
【0036】
次に、紡績開始端が形成された糸5は、糸5の引出機構6の逆転動作により、ガイド・チャネル2の糸存在確認センサー21まで、若しくはガイド・チャネル2の糸存在確認センサー21の後方まで移動し、そしてその結果、糸5の紡績開始端は、ガイド・チャネル2への挿入方向へ更に移動し、糸の紡績開始端準備用装置20の後方、即ち、糸5の紡績開始端の形成場所の後方の位置まで移動する。この段階で、引出機構6は、ボビン90(ボビン90からの糸の巻き戻し)と同じスピードであることが好ましい。これにより、負圧糸収容装置73内における糸5の予備は大幅に変動しない。引出機構6が、この段階でボビン90(ボビン90からの糸の巻き戻し)と異なるスピードである場合、負圧糸収容装置73内の糸5の予備が変動せず、後に続く紡績開始工程のために、負圧糸収容装置73内における予備糸の定められた長さに後で調整する(再度保管する、減少させる)必要が生じる。
【0037】
その後、糸5の巻き戻しが終了し、糸がボビン90からスライバ0の供給装置3までの紡績経路の全長に沿ってワークステーションに配置され、一定長の糸5がガイド・チャネル2内に配置され、その紡績開始端はガイド・チャネル2の糸存在確認センサー21の位置かその後方の位置に置かれる。この時点で、ワークステーションの機械部品が全て停止し、加圧ローラを紡績用の位置に移動することを含む紡績開始工程を起動させる準備がなされる。
【0038】
糸5の巻き戻しの第1の段階の間、即ち、吸引チューブ7への巻き戻しの段階の間に、ワークステーションの紡績ノズル4が空にされ、糸5の巻き戻しの第2の段階、即ち、ガイド・チャネル2への糸5の巻き戻しの段階を行うため、紡績ノズル4の準備がなされ、この時に糸の紡績開始及び紡績の準備が行われる。ワークステーションにおける糸5の巻き戻しの第1及び/若しくは第2の段階の間、巻き戻しに関わらないワークステーションの機械部品では、紡績開始工程のための準備が行われ、同時に紡績開始のためのスライバ0の準備が行われる。
【0039】
ここで、ワークステーションが紡績開始工程を始める準備が整っている。
【0040】
引出装置6の引出ローラ60、61の間を通る糸5が、回転しない引出ローラ60、61によって保持される紡績ノズル4の後方にある。紡績ノズル4の前で、糸5が、スライバ0の供給装置3の供給ローラの間を通る。続けて、
図2の矢印Aで示されるように、糸5のボビン90への巻取りが開始される。
図2でボビン90の回転速度における立ち上がりを示す線Rによって示されるように、この結果として、糸5の巻取り速度が増加し始め、その際に糸5の負圧収容装置73における予備糸5が、
図2の線Sで示されるように、費やされ始める。糸5がボビン90上に巻き取られ始めるのに続いて、糸5の通過も始まる。負圧収容装置73から予備糸5全体が費やされる前に、即ち、
図2の矢印Bで示される時点において、引出装置6の引出ローラ60、61が回転し始める。引出ローラ61、61の加速がボビン90に比べてかなり速い。引出機構6の動作開始の後に、糸5がガイド・チャネル2から引き出され始め、小さな遅延をもって糸5が一時的に停止し、時刻Bの後の
図2の線Sによって示されるように、糸5の負圧収容装置73内の予備糸が再び増加し始めるのは、
図2の点Bの後、線R及びTの配置によって示されるように、糸5の引出速度が小さな遅延で糸5の巻取り速度を超え始めるからである。ここで、線Tが糸5の引出速度の経過を示す。
【0041】
特別な配置によると、糸5が、糸5の引出開始と同時又は糸5の引出開始から所定時間経過後にスライバ0の回転供給装置3によって保持される。別の好適な実施例によると、糸5が糸5の引出開始の後だけスライバ0の回転供給装置3によって保持される、即ち、ワークステーションでのガイド・チャネル2内の糸品質センサー21を介した糸の紡績開始端の通過についての信号をワークステーションでのガイド・チャネル2の糸品質センサー21から受信した直後、若しくは、ワークステーションでのガイド・チャネル2内の糸品質センサー21を介した糸の紡績開始端の通過についての信号をワークステーションでのガイド・チャネル2内の糸品質センサー21から受信してからある時間経過の後に糸が保持される。別の好適な実施例によると、糸5の引込みが始まるまでは、即ち、引出装置6によって引き込まれる糸5から所定長さの糸を測定した後になるまでは、糸5がスライバ0の回転供給装置3によって保持されることはない。
【0042】
糸5がスライバ0の回転供給装置3によって保持される前又はその時に、
図2の矢印B、C1、C2で示されるように、スライバ0の供給装置3が回転し始め、よって糸5を保持する前にスライバ0の供給装置3の圧力ローラが決められた位置に保持され、このようにして、糸5がこの決められた位置において駆動されない。スライバ0の供給装置3が糸製造中に加速されて供給速度に達するのは、それが走行している糸5なのか、又は、スライバ0の回転供給装置3によって保持される留まった糸5なのかに依存する。これによれば、スライバ0の供給装置3が、加速して所定速度に達し、若しくは、ゼロから加速して糸5が保持された後で初めて所定速度に達する。糸5自身の固定が実施されるが、これは、例えば、以下のように行われる。即ち、スライバ0の供給装置3の圧力ローラを決められた位置から解放することで圧力ローラがスライバ0の供給装置3の他の被駆動ローラに当接し、この手段によってスライバ0の供給装置3が引出糸5を保持することになり、引出糸を駆動することができる。
【0043】
スライバ0の供給装置3によって糸5が保持されるのに続き、新しいスライバ0を牽引装置1に通しスライバ0の供給装置3まで供給し始め、その結果、糸5の紡績開始端がスライバ0の供給装置3及び紡績ノズル4に入る時に対して最適な時に、新しい繊維が至り、安定した良質の糸継ぎを生成し紡績工程を再開し、そして、糸継ぎの所定(必要)長さが生成される。それにより、スライバ0の新しい繊維が牽引装置1を通ってスライバ0の供給装置3へ供給されるのが、引出機構6の開始からのタイミングによって、若しくは、ワークステーションで糸の紡績開始端のガイド・チャネル2における糸存在確認センサー21の通過についてのガイド・チャネル2における糸存在確認センサー21からの信号の受信で、若しくは、ガイド・チャネル2内の糸存在確認センサー21の糸の紡績開始端の通過についてのワークステーションでのガイド・チャネル2内の糸存在確認センサー21の信号の受信に続く時間遅延の後に、若しくは、例えば1つの引出ローラ60又は61の回転数を測定することなどで引出機構6によって引き込まれる糸5の所定長さを測定した後に、開始される。
【0044】
また、糸継ぎの品質、安定、及び均一性にとって、接続の時に移動する糸の紡績開始端の速度が一定であることが肝心である。したがって、本発明に係る紡績の全体の工程が引出機構6によって加速されて第1の速度r
1に達し、糸5の紡績開始端が、糸5の引込みの第1の速度r
1に達した後のみ、スライバ0の供給装置3及び紡績ノズル4に達し、このようにして、新しい繊維がスライバ0の供給装置3及び紡績ノズル4へ供給されるのが、糸5の引込みの第1の速度r
1に達した後に開始され、よって、糸5の引込みのこの第1の速度r
1が、糸継ぎの形成が起きる特定の期間維持される。糸継ぎに対する特定の時間後に、
図2の線Tで示されるように、引出機構6が更に加速されて製造速度に達する。この全体期間の間、ボビン90が中断することなく製造速度まで加速され、
図2の線Sの経過に見られるように、先ず、糸5の負圧収容装置73内の予備糸5の減少が見られ、糸5の負圧収容装置73内の予備糸5の短期間増加が続き、これは、糸5の引込みの第1の速度r
1までの引出機構6の加速に起因し、そして、糸5の引出機構6及びボビン90の両方が回転の製造速度に達した後に、紡績が開始し、予備糸5における減少に続き、負圧収容装置73で予備糸5が完全になくなる。
【0045】
糸の引出機構に続き、ワークステーションの他の機械部品もまた加速されて製造速度に達する。
【0046】
別の好適な実施例によれば、第1の速度r1が製造速度、即ち糸製造の速度であり、よって機械のワークステーションの作動体は第1の速度r1に達した以降は加速されない。
【0047】
別の好適な実施例によれば、速度は紡績工程中であり、ボビン90がゼロから最高巻取り速度に滑らかに加速し、又は、必要に応じて、製造速度を超えて一時的に増加した速度まで加速された後に製造速度まで減速される。
【0048】
明らかに、本明細書に記載された動作のいくつかはワークステーションの手段の代わりに相伴装置又は機械操作で実行でき、これは、例えば、相伴装置又は機械操作のいずれかによってワークステーションに提供されるいわゆる補助糸が紡績工程に使用されるときに、満巻ボビンを空のボビンに交換した後の紡績再開の場合である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、紡績工程を再開するために繊維機械に使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
0 スライバ
1 牽引機構
2 ガイド・チャネル
3 供給装置
4 紡績ノズル
5 糸
6 引出機構
7 吸引チューブ
8 糸品質センサー
9 巻取装置
10 入口
11 出口
20 紡績開始端準備用装置
21 糸存在確認センサー
22 出口部
23 固定要素
30 入口
31 出口
40 入口
41 出口開口
60 引出ローラ
61 引出ローラ
62 回転駆動装置
70 吸引口
71 中断用装置
72 送出する装置
73 負圧糸収容装置
90 ボビン
91 駆動シリンダ
92 ガイド
93 ワキシング装置
94 補正装置
95 糸存在確認センサー
730 吸引入口