(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】改装サッシ及び改装サッシの施工方法
(51)【国際特許分類】
E06B 1/56 20060101AFI20220912BHJP
E06B 3/964 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
E06B1/56 A
E06B3/964 B
(21)【出願番号】P 2018041302
(22)【出願日】2018-03-07
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】井東 克孝
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-117238(JP,A)
【文献】特開2006-152802(JP,A)
【文献】特開2007-182755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00 - 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部に残存する既設枠と、前記既設枠の内周側を覆うように取り付けられる新設枠と、を備え、前記新設枠は、前記既設枠の内周側に配置されるベース材を介して前記既設枠に取り付けられる改装サッシであって、
前記既設枠は、既設上枠、既設下枠及び既設縦枠を有すると共に、
前記既設枠の四周の各隅部が、隣接する前記既設上枠と前記既設縦枠とに亘り、及び隣接する前記既設下枠と前記既設縦枠とに亘り、それぞれ、前記ベース材とは別部材からなる連結金具により連結されており、
前記連結金具の屋内外方向の幅は、前記既設枠の屋内外方向の幅よりも小さ
く、
前記連結金具は、前記既設上枠又は前記既設下枠に対してねじ止めされる当接部と、前記既設縦枠の屋外側の端部を包持するように係合させる包持部と、を有する、改装サッシ。
【請求項2】
建物の開口部に残存する既設枠と、前記既設枠の内周側を覆うように取り付けられる新設枠と、を備え、前記新設枠は、前記既設枠の内周側に配置されるベース材を介して前記既設枠に取り付けられる改装サッシであって、
前記既設枠は、既設上枠、既設下枠及び既設縦枠を有すると共に、
前記既設枠の四周の各隅部が、隣接する前記既設上枠と前記既設縦枠とに亘り、及び隣接する前記既設下枠と前記既設縦枠とに亘り、それぞれ、前記ベース材とは別部材からなる連結金具により連結されており、
前記連結金具の屋内外方向の幅は、前記既設枠の屋内外方向の幅よりも小さく、
前記連結金具は、既設障子用の屋外側のガイドレールよりも屋外側に配置される、改装サッシ。
【請求項3】
前記連結金具は、前記既設上枠又は前記既設下枠に対してねじ止めされる当接部と、前記既設縦枠の屋外側の端部を包持するように係合させる包持部と、を有する、請求項
2に記載の改装サッシ。
【請求項4】
前記連結金具は、前記既設枠の四周の各隅部の内周面に固定される、請求項1
~3のいずれか1項に記載の改装サッシ。
【請求項5】
建物の開口部に残存する既設枠と、前記既設枠の内周側を覆うように取り付けられる新設枠と、を備え、前記新設枠は、前記既設枠の内周側に配置されるベース材を介して前記既設枠に取り付けられる改装サッシの施工方法であって、
前記新設枠は、前記既設枠の内周側に配置されるベース材を介して前記既設枠に取り付けられ、
前記既設枠の四周の各隅部に隣接する既設上枠及び既設下枠と、既設縦枠と、に亘り、それぞれ、前記ベース材とは別部材からなるとともに屋内外方向の幅が前記既設枠の屋内外方向の幅よりも小さい連結金具により連結する工程と、
前記既設枠に、前記ベース材を介して前記新設枠を取り付ける工程と、を備え
、
前記連結金具により連結する工程は、前記連結金具を、既設障子用の屋外側のガイドレールよりも屋外側に配置する、改装サッシの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に設けられている既設窓を改装するための改装サッシ及び改装サッシの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設の窓を改装する方法として、カバー工法が採用されている。このカバー工法によって改装された改装サッシでは、建物の開口部に取り付けられた既設枠に対して、その内周側を覆うように新設枠が取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新たに改装される改装サッシが引違い窓である場合、
図14に示すように、障子20を矢印の方向に強く閉めたときの衝撃が縦枠(既設縦枠310及び新設縦枠320)に伝わり、窓枠に歪みが生じて仕口部A、Bが開いて隙間が生じてしまうことがある。窓枠の仕口部に隙間が生じると、意匠性が悪くなるだけでなく、雨水浸入防止等のサッシの性能を維持できなくなるおそれがある。
【0005】
このように仕口部に隙間が生じる問題は、既設枠が古く、衝撃に弱くなっている場合に特に発生し易い。しかし、改装サッシの既設枠は新設枠に覆われているため、例えば、既設枠の仕口部Aに隙間が発生しても、改装後では確認することができない。
【0006】
そこで、本発明は、障子を閉めたときの衝撃により既設枠の仕口部に隙間が発生することを防止できる改装サッシ及び改装サッシの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る改装サッシは、建物の開口部(例えば、後述の開口部2)に残存する既設枠と、前記既設枠の内周側を覆うように取り付けられる新設枠と、を備える改装サッシ(例えば、後述の改装サッシ1)であって、前記既設枠は、既設上枠(例えば、後述の既設上枠110)、既設下枠(例えば、後述の既設下枠210)及び既設縦枠(例えば、後述の既設縦枠310、410)を有すると共に、前記既設枠の四周の各隅部が、隣接する前記既設上枠と前記既設縦枠とに亘り、及び隣接する前記既設下枠と前記既設縦枠とに亘り、それぞれ連結金具(例えば、後述の連結金具500、600)により連結されている。
【0008】
(2) (1)に記載の改装サッシにおいて、前記連結金具(例えば、後述の連結金具600)は、前記既設上枠又は前記既設下枠に対してねじ止めされる当接部(例えば、後述の当接部601)と、前記既設縦枠の屋外側の端部を包持するように係合させる包持部(例えば、後述の包持部602)と、を有することが好ましい。
【0009】
(3) (1)又は(2)に記載の改装サッシにおいて、前記連結金具は、前記既設枠の四周の各隅部の内周面(例えば、後述の内周面110a、210a、310a、410a)に取り付けられることが好ましい。
【0010】
(4) 本発明に係る改装サッシの施工方法は、建物の開口部(例えば、後述の開口部2)に残存する既設枠と、前記既設枠の内周側を覆うように取り付けられる新設枠と、を備える改装サッシ(例えば、後述の改装サッシ1)の施工方法であって、
前記既設枠の四周の各隅部に隣接する既設上枠(例えば、後述の既設上枠110)及び既設下枠(例えば、後述の既設下枠210)と、既設縦枠(例えば、後述の既設縦枠310、410)と、に亘り、それぞれ連結金具(例えば、後述の連結金具500、600)により連結する工程と、前記既設枠に、前記新設枠を取り付ける工程と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、障子を閉めたときの衝撃により既設枠の仕口部に隙間が発生することを防止できる改装サッシ及び改装サッシの施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る改装サッシを屋外側から見た正面図である。
【
図2】
図1に示す係る改装サッシの縦断面図である。
【
図4】
図2に示す改装サッシの上枠の拡大縦断面図である。
【
図5】
図2に示す改装サッシの下枠の拡大縦断面図である。
【
図6】
図3に示す改装サッシの一方の縦枠の拡大縦断面図である。
【
図7】
図3に示す改装サッシの他方の縦枠の拡大縦断面図である。
【
図10】(a)は連結金具の正面図であり、(b)は連結金具の底面図である。
【
図11】(a)は別の実施形態に係る連結金具の平面図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその斜視図である。
【
図12】連結金具が取り付けられた既設下枠を示す縦断面図である。
【
図13】連結金具が取り付けられた既設下枠を示す横断面図である。
【
図14】従来の改装サッシの一方の縦枠の要部を示す拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明に係る改装サッシを屋外側から見た正面図である。
図2は、
図1に示す改装サッシの縦断面図であり、
図3は、
図1に示す改装サッシの横断面図である。
図4は、
図2に示す改装サッシの上枠の拡大縦断面図であり、
図5は、
図2に示す改装サッシの下枠の拡大縦断面図である。
図6は、
図3に示す改装サッシの一方の縦枠の拡大縦断面図であり、
図7は、
図3に示す改装サッシの他方の縦枠の拡大縦断面図である。
【0014】
図1~
図3に示すように、本発明に係る改装サッシ1は、建物の開口部2に納められた引違い窓タイプの改装サッシである。改装サッシ1は、上枠100及び下枠200と、左右一対の縦枠300、400とにより矩形に枠組みされた窓枠10と、この窓枠10にスライド可能に納められる2枚の障子20と、この障子20の屋外側に配置されて窓枠10にスライド可能に納められる1枚の網戸30と、を備える。建物の開口部2の内周面には四周に亘って額縁部材3が設けられている。本実施形態に示す窓枠10は、開口部2の屋外側にせり出すように取り付けられる外付けタイプの窓枠である。
【0015】
なお、本実施形態の額縁部材3において、上枠100側は既設窓の鴨居により構成され、下枠200側は既設窓の敷居により構成される。また、縦枠300、400側は、それぞれ既設窓の縦側に配置される柱材により構成される。
【0016】
各障子20は、
図4、
図5に示すように、屋外側及び屋内側に配置される2枚のガラス21、21と、これら2枚のガラス21、21で挟持されたスペーサ22と、を備える複層ガラスからなり、優れた断熱性を有する。
【0017】
図2、
図4に示すように、上枠100は、既設上枠110と、新設上枠120と、上枠ベース材130と、を含んで構成される。
【0018】
既設上枠110は、建物の開口部2の上側部に取り付けられ、下方に向けて立設される既設障子用のガイドレール111a、111bと、ガイドレール111a、111bよりも屋外側の端部に、下方に向けて延びる屋外側壁部112と、を有する。既設上枠110の屋内側は額縁部材3に固定されている。
【0019】
新設上枠120は、上枠ベース材130を間に挟んで、既設上枠110の内周側に取り付けられる。
図4に示すように、新設上枠120は、下方に向けて立設される引違いの2枚の障子20、20用のガイドレール121a、121bと、網戸30用のガイドレール121cとを有する。ガイドレール121a、121bには、障子20の上端部が係合している。ガイドレール121cには、網戸30の上端部が係合している。
【0020】
新設上枠120は、屋外側の端部に、上方に向けて延びる屋外側壁部122を有する。屋外側壁部122は、既設上枠110の屋外側壁部112と略平行に延びており、屋外側壁部112の屋外側を覆い隠すように配置されている。新設上枠120は、上枠ベース材130との間にスペーサ部材140を介して、取付けねじ123a、123bによって上枠ベース材130に固定される。
【0021】
上枠ベース材130は、既設上枠110の内周側に配置され、既設上枠110と新設上枠120との間に介在される。上枠ベース材130は、既設上枠110の長さに比べて十分に短い長さに形成された金属製の板状部材からなり、上枠ベース材130の裏面に設けられる取付け部材132によって、既設上枠110のガイドレール111a、111bを利用して取り付けられる。上枠ベース材130は、既設上枠110の長さ方向に間隔をおいて複数取り付けられる。これにより、各上枠ベース材130は、既設上枠110の内周側(下側)に、新設上枠120のための略平坦な取付け面を形成する。新設上枠120は、この上枠ベース材130の表面(下面)に対して取り付けられる。
【0022】
図2、
図5に示すように、下枠200は、既設下枠210と、新設下枠220と、下枠ベース材230と、を含んで構成される。
【0023】
既設下枠210は、建物の開口部2の下側部に取り付けられており、上方に向けて立設される既設障子用のガイドレール211a、211bと、既設下枠210の屋外側の端部に、上下方向に延びる屋外側壁部212と、を有する。既設下枠210の屋内側は、額縁部材3に固定されている。
【0024】
新設下枠220は、下枠ベース材230を挟んで、既設下枠210の内周側に取り付けられる。新設下枠220は、上方に向けて立設される引違いの2枚の障子20、20用のガイドレール221a、221bと、網戸30用のガイドレール221cとを有する。ガイドレール221a、221bには、障子20の下端部が係合している。ガイドレール221cには、網戸30の下端部が係合している。
【0025】
新設下枠220は、屋外側の端部に、下方に向けて延びる屋外側壁部222を有する。屋外側壁部222は、既設下枠210の屋外側壁部212と略平行に延びており、屋外側壁部212の屋外側を覆い隠すように配置されている。新設下枠220は、取付けねじ223によって下枠ベース材230に固定される。
【0026】
下枠ベース材230は、既設下枠210の内周側に配置され、既設下枠210と新設下枠220との間に介在される。下枠ベース材230は、2枚の障子20、20の荷重を受けるため、下枠200の長さ方向に亘って延びる金属製の板状部材からなる。下枠ベース材230の屋外側は、既設下枠210の屋外側のガイドレール211a上に載置され、屋内側は、ブラケット231によって既設下枠210の屋内側のガイドレール211bに取り付けられている。これにより、下枠ベース材230は、既設下枠210の内周側(上側)に、新設下枠220のための略平坦な取付け面を形成する。新設下枠220は、この下枠ベース材230の表面(上面)に対して取り付けられる。
【0027】
図3、
図6、
図7に示すように、左右の縦枠300、400は、既設縦枠310、410と、新設縦枠320、420と、縦枠ベース材330、430と、を含んで構成される。
【0028】
既設縦枠310、410は、建物の開口部2の屋外側の左右縦側部にそれぞれ取り付けられている。既設縦枠310、410は、
図6、
図7に示すように、内側に向けて突出する複数のフィン311a、311b、411a、411b、411cを有する。既設縦枠310、410の屋内側は、額縁部材3に固定されている。
【0029】
新設縦枠320、420は、縦枠ベース材330、430を間に挟んで、既設縦枠310、410の内周側に取り付けられる。新設縦枠320、420は、屋外側の端部に、左右の外側方に向けて延びる屋外側壁部321、421を有する。屋外側壁部321、421は、既設縦枠310、410の屋外側を覆い隠すように配置されている。新設縦枠320、420は、スペーサ部材340、440を介して、取付けねじ322a、322b、422a、422bによって縦枠ベース材330、430に固定される。
【0030】
縦枠ベース材330、430は、既設縦枠310、410の内周側に配置され、既設縦枠310、410と新設縦枠320、420との間に介在される。縦枠ベース材330、430は、それぞれ新設縦枠320、420の長さに比べて十分に短い長さに形成された金属製の板状部材からなる。縦枠ベース材330、430は、既設縦枠310、410の長さ方向に間隔をおいて、既設縦枠310、410の内周側に複数取り付けられる。
【0031】
縦枠ベース材330、430の屋外側は、既設縦枠310、410に設けられた最も屋外側のフィン311a、411aを利用して、取付けねじ332、432によって取り付けられる。一方、縦枠ベース材330、430の屋内側は、ブラケット333、433によって既設縦枠310、410の内周面に固定される。これにより、各縦枠ベース材330、430は、既設縦枠310、410の内周側に、新設縦枠320、420のための略平坦な取付け面を形成する。新設縦枠320、420は、この縦枠ベース材330、430の表面に対して取り付けられる。
【0032】
以上の構成を備える窓枠10は、上枠100、下枠200及び左右の縦枠300、400により矩形に枠組みされる。これにより、改装サッシ1の新設枠(新設上枠120、新設下枠220及び新設縦枠320、420)は、各ベース材130、230、330、430を介して、既設枠(既設上枠110、既設下枠210及び既設縦枠310、410)の内周側を覆うように取り付けられる。
【0033】
この改装サッシ1において、窓枠10における既設枠の四周の各隅部には、それぞれ連結金具500が取り付けられている。
図8、
図9は、新設枠(新設上枠120、新設下枠220及び新設縦枠320、420)が取り付けられる前の既設枠(既設上枠110、既設下枠210及び既設縦枠310、410)の内周面を示している。
図8は、既設枠の縦断面図であり、
図9は、既設枠の横断面図である。なお、
図9は、既設下枠210側を示しており、下枠ベース材230の図示は省略した。
図8、
図9に示すように、既設上枠110と既設縦枠310、410との隅部、及び、既設下枠210と既設縦枠310、410との隅部には、それぞれ連結金具500が取り付けられる。
【0034】
本実施形態の4個の連結金具500は、いずれも既設枠の内周面に取り付けられている。即ち、既設上枠110と既設縦枠310、410との隅部の連結金具500は、既設上枠110の内周面110aと既設縦枠310、410の内周面310a、410aとに亘って取り付けられる。また、既設下枠210と既設縦枠310、410との隅部の連結金具500は、既設下枠210の内周面210aと既設縦枠310、410の内周面310a、410aとに亘って取り付けられている。このため、連結金具500は、既設枠に対して屋内側から容易に取り付け可能である。
【0035】
図10は、連結金具500を示す図であり、(a)は連結金具500の正面図、(b)は連結金具500の底面図を示している。連結金具500は、中途部に屈曲部501を有する略L字状の帯板部材からなる。屈曲部501の両端側には、それぞれ当接部502、502が一体に設けられている。
【0036】
2つの当接部502、502は、それぞれ屈曲部501に対して略45°の角度で交差している。このため、2つの当接部502、502同士は、略90°の角度をなすように配置される。各当接部502、502は、既設枠の内周面110a、210a、310a、410aに当接してねじ止めされる部位であり、ねじ穴503、503がそれぞれ形成されている。
【0037】
連結金具500は、既設上枠110の内周面110aと既設縦枠310、410の内周面310a、410aとに亘り、及び、既設下枠210の内周面210aと既設縦枠310、410の内周面310a、410aとに亘り、それぞれ当接部502、502を当接させた後、各ねじ穴503、503に取付けねじ504、504をねじ込むことにより、既設枠に固定される。これにより、既設枠の四周の各隅部が連結金具500によって補強され、既設枠の矩形の枠組み形状の強度が向上する。従って、改装後に障子20を閉めたときの衝撃が既設枠に加わった際に、仕口部に隙間が発生することが防止される。
【0038】
各連結金具500は、既設枠の屋外側寄りに配置されている。具体的には、各連結金具500は、既設上枠110及び既設下枠210における屋外側のガイドレール111a、211aよりも屋外側に配置されている。本実施形態のように外付けタイプの既設枠は、開口部2に対して建物の屋外側にせり出すように取り付けられているため、屋外側には引違いの障子20のスライド方向(左右方向)の外側を支える部材(建物の躯体や額縁部材等)が存在せず、障子20を閉めたときの衝撃により、特に屋外側が左右に歪み易い。しかし、この改装サッシ1によれば、各連結金具500が屋外側寄りの位置に配置されることにより、障子20を閉めたときの衝撃による既設枠の歪みを効果的に抑制することができる。
【0039】
図11は、別の実施形態に係る連結金具600を示している。(a)は連結金具600の平面図であり、(b)は連結金具600の側面図であり、(c)は連結金具600の斜視図である。また、
図12は、連結金具600が取り付けられた既設下枠210を示す縦断面図であり、
図13は、連結金具600が取り付けられた既設下枠210を示す横断面図である。
この連結金具600は、当接部601と包持部602と、を一体に有して構成される。なお、連結金具600は、取り付けられる隅部に応じて、
図11(a)と左右対称構造のものが使用される。
【0040】
当接部601は、既設上枠110又は既設下枠210に対して当接してねじ止めされる部位であり、連結金具500の当接部502と同様の帯板状に形成されている。当接部601には、ねじ穴603が形成されている。
【0041】
包持部602は、当接部601が既設上枠110又は既設下枠210に対して当接した状態で、既設縦枠310、410の屋外側の端部を屋外側から抱え込むように係合させる部位である。この包持部602は、既設縦枠310、410の屋外側の端部を開口部2の左右方向(上枠100及び下枠200の延び方向)の両側から挟むように配置される一対の平行な挟持片602a、602bと、これらの挟持片602a、602bを連結する連結片602cと、を一体に有する。
【0042】
一対の挟持片602a、602bは、当接部601に対して略90°の角度をなすように配置されている。一方の挟持片602aは、当接部601と連結され、この当接部601から略90°の角度で屈曲形成されている。連結片602cは、この挟持片602aと連結され、挟持片602aの一方の側端部(取り付け状態における屋外側の側端部)から、当接部601とは反対方向に向けて略90°の角度で屈曲形成されている。他方の挟持片602bは、この連結片602cと連結され、連結片602cの端部から挟持片602aと同方向且つ平行に略90°の角度で屈曲形成されている。
【0043】
一対の挟持片602a、602bの間隔は、
図13に示すように、既設縦枠310(410)の屋外側の端部を両側から挟み込むことができる程度に離間している。本実施形態では、既設縦枠310(410)の内周面310aからフィン311aが突設されているため、挟持片602a、602bは、このフィン311aも内側に挟み込むことができるように離間している。
【0044】
連結金具600は、既設縦枠310、410の屋外側の端部を、屋外側から包持部602で包え込むように係合させることにより、一対の挟持片602a、602bの間に挟み込むと共に、既設上枠110側の場合には、既設上枠110の内周面110aに当接部601を当接させ、既設下枠210側の場合には、既設下枠210の内周面210aに当接部601を当接させる。このとき、包持部602の挟持片602bは、
図13に示すように、既設縦枠310(410)の外周面310b(410b)に当接した状態とされる。その後、当接部601のねじ穴603に取付けねじ604がねじ込まれることにより、連結金具600は既設枠に固定される。
【0045】
この連結金具600では、改装後に障子20を閉めたときの衝撃が既設縦枠310、410に加わった際に、包持部602が既設縦枠310、410の歪みを阻止するように機能する。このため、既設枠の四周の各隅部が補強され、既設枠の矩形の枠組み形状の強度が向上することにより、仕口部に隙間が発生することが防止される。しかも、この連結金具600は、1本の取付けねじ604だけで取り付け可能であるため、取り付け作業が簡略化される。更に、この連結金具600も、既設縦枠310、410に対して屋外側の端部に取り付けられるため、障子20を閉めたときの衝撃による既設枠の歪みを効果的に抑制することができる。
【0046】
改装サッシ1を施工する際は、先ず、既設上枠110、既設枠の四周の各隅部に隣接する既設上枠110及び既設下枠210と、既設縦枠310、410と、に亘り、それぞれ連結金具500又は600を用いて連結し、その後、既設枠に新設枠を取り付ける。これにより、障子20を閉めたときの衝撃により既設枠の仕口部に隙間が発生することを防止できる改装サッシ1を容易に構築できる。
【0047】
以上の実施形態では、連結金具500、600は、いずれも既設枠の内周面110a、210a、310a、410aにねじ止めされるようにしたが、既設枠の外周面110b、210b、310b、410bにねじ止めされるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 改装サッシ
2 開口部
110 既設上枠(既設枠)
210 既設下枠(既設枠)
310、410 既設縦枠(既設枠)
500、600 連結金具
601 当接部
602 包持部
110a、210a、310a、410a 既設枠の内周面