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特許7139127操艦支援システム、艦船、及び、操艦支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】操艦支援システム、艦船、及び、操艦支援方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 49/00 20060101AFI20220912BHJP
   B63H 25/04 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B63B49/00 Z
B63H25/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018051218
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019162922
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】521511542
【氏名又は名称】三菱重工マリタイムシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】村田 航
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-146878(JP,A)
【文献】実開昭60-065690(JP,U)
【文献】特開2016-151541(JP,A)
【文献】特開平08-015433(JP,A)
【文献】特開2005-028891(JP,A)
【文献】特開2018-002040(JP,A)
【文献】特開平06-048392(JP,A)
【文献】特開平05-170191(JP,A)
【文献】特開平04-268480(JP,A)
【文献】特開平03-025094(JP,A)
【文献】特開平06-286694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0145751(US,A1)
【文献】中国実用新案第204473093(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 49/00
B63H 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補給艦に並走して前記補給艦からの洋上補給を受ける受給艦との間で行われる洋上補給作業を支援する操艦支援システムにおいて、
前記補給艦と前記受給艦のどちらか一方を第1船とし、他方を第2船とし、前記第1船側の光波測距儀の受発光部と、前記第2船側の反射器又は光波測距儀の受発光部とを有して、相互間の距離と前記受給艦の船首方向に対する測定用光波の投光方向の角度を検出する測距システムを構成すると共に、
1組の前記測距システムと前記受給艦が備えているジャイロコンパスとの組み合わせから、又は、2組の前記測距システムの組み合わせから、前記補給艦と前記受給艦との間の相対距離と相対針路と相対速度とを検出する二船間情報取得手段を備え
前記相対距離とは、少なくとも、前記補給艦と前記受給艦との間における、前記補給艦の船長方向の相対距離および前記補給艦の船幅方向の相対距離とを含む情報であり、
前記相対速度とは、少なくとも、前記補給艦と前記受給艦との間における、前記補給艦の船長方向の相対速度および前記補給艦の船幅方向の相対速度とを含む情報である、
操艦支援システム。
【請求項2】
前記測距システムが前記光波測距儀の光波としてアイセーフ可視レーザー光を使用していることを特徴とする請求項1に記載の操艦支援システム。
【請求項3】
前記測距システムが前記光波測距儀の光波を用いた一方向通信機能又は双方向通信機能を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の操艦支援システム。
【請求項4】
前記補給艦に対して予め設定された受給位置領域に到達した後に、前記二船間情報取得手段で得られた前記補給艦と前記受給艦との間の相対距離と相対針路と相対速度に基づいて、前記補給艦に対する前記受給位置領域を維持するように前記受給艦の操艦を自動で行う相対位置維持制御手段を備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の操艦支援システム。
【請求項5】
前記二船間情報取得手段で得られた前記補給艦と前記受給艦との間の相対距離と相対針路と相対速度に基づいて、前記補給艦に対して予め設定された受給位置領域に前記受給艦を導くための操艦を自動で行う近接制御手段を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の操艦支援システム。
【請求項6】
前記二船間情報取得手段で得られた前記補給艦と前記受給艦との間の相対距離と相対針路と相対速度に基づいて、前記受給位置領域から前記受給艦を離脱させるための操艦を自動で行う離脱制御手段を備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載の操艦支援システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項の操艦支援システムを備えたことを特徴とする艦船。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項の操艦支援システムを用いることを特徴とする操艦支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補給艦と受給艦との間の洋上補給時における並走等の操艦を支援する操艦支援システム、艦船、及び、操艦支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
補給艦から洋上補給を受ける艦船においては、針路と速度を一定に保持して航行する補給艦に近接して、予め定められた一定の相対距離と、艦速、方位を維持しながら、補給艦から燃料やその他の物質を受け取り、その後、相対距離を大きくして離脱している。
【0003】
この洋上補給に関しては、無線封鎖時やレーダー波等の電波発信制限時に行われることも想定しなければならず、従来では、給油ラインなど測距と通信のための距離索や通信のための現場電話索を補給艦と受給艦の間に張り巡らせて、距離電話線員や現場電話線員等の甲板要員からの連絡を受けつつ、艦橋で熟練の操艦要員が操艦していた。
【0004】
この洋上補給は、数時間にも及ぶ上に、風波の影響を受けているので、甲板要員も操艦要員も大きな緊張を長時間強いられることになり、この洋上補給の作業における甲板要員と操艦要員の負担の軽減が望まれてきた。
【0005】
これに関連して、船尾に左舷側推進器と右舷側推進器の2つの推進器と、左舷側舵と右舷側舵を2つの舵を備えている船舶において、左舷側に接岸若しくは接船する連続左舷側接岸制御、または、左舷側に接岸若しくは接船する連続左舷側接岸制御を自動で行う出港自動制御モードを備えている船舶の操縦システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-2040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、補給艦と受給艦との洋上補給時における操艦の高度な自動化と、測距用の距離索と現場電話線用の電話索の無索化による甲板要員の甲板配置の削減化により、洋上補給作業における安全性の向上と省人化への寄与を可能とすることができる、操艦支援システム、艦船、及び、操艦支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するための本発明の操艦支援システムは、補給艦に並走して前記補給艦からの洋上補給を受ける受給艦との間で行われる洋上補給作業を支援する操艦支援システムにおいて、前記補給艦と前記受給艦のどちらか一方を第1船とし、他方を第2船とし、前記第1船側の光波測距儀の受発光部と、前記第2船側の反射器又は光波測距儀の受発光部とを有して、相互間の距離と前記受給艦の船首方向に対する測定用光波の投光方向の角度を検出する測距システムを構成すると共に、1組の前記測距システムと前記受給艦が備えているジャイロコンパスとの組み合わせから、又は、2組の前記測距システムの組み合わせから、前記補給艦と前記受給艦との間の相対距離と相対針路と相対速度とを検出する二船間情報取得手段を備えて構成される。
【0009】
この構成では、自艦の位置を暴露する虞のあるレーダーや、電波妨害の虞のあるGPS(全地球測位システム)を使用せず、光波を用いて距離を測定する光波測距義を有する測距システムを使用しているので、電波を使用しない電波封止の状態や電波妨害を受けている状態などの環境下でも運用でき、しかも、距離測定のために、洋上補給用に補給艦と受給艦の間に張り巡らせていた距離索が不要になり、甲板における作業が減少するとともに、距離索を監視する必要もなくなるので、甲板要員を減少でき、洋上補給の作業要員の安全性を向上できる。
【0010】
上記の操艦支援システムにおいて、前記測距システムが前記光波測距儀の光波としてアイセーフ可視レーザー光を使用していると、次のような効果を発揮できるようになる。
【0011】
大気中に伝播するレーザー光は、気体分子による吸収や 散乱により減衰されるが、気体分子による吸収の少ない波長域であり、「大気の窓」と呼ばれる「可視~赤外領域の一部の波長域」があるので、この波長域の中でも、目の網膜まで達し難い1.4μmから2.6μmの波長のアイセーフレーザー光を、レーザー光を光波測距儀で用いる光波として用いる。このアイセーフレーザー光を用いることで、暴露部にいる作業要員の目に対する安全性を向上できる。
【0012】
上記の操艦支援システムにおいて、前記測距システムが前記光波測距儀の光波を用いた一方向通信機能又は双方向通信機能を備えていると、次のような効果を発揮できるようになる。なお、この一方向通信機能又は双方向通信機能は、受給艦側と補給艦側の両方で光波測距儀の受発光部を備えて、この光波に通信情報を乗せることで容易に実現できる。この場合、データをまとめて一気に送信する方式を取ることがより好ましい。
【0013】
この構成によれば、補給艦側の操艦情報や給油操作情報等を受給艦側に送り、受給艦側の操艦情報や受油操作情報等を補給艦側に送ることができ、双方の情報をお互いに共有できるので、操艦時の安全性の確保が容易にでき、また、燃料油などの物資の移動に必要な情報を得られ、容易にこれらのデータを画面表示したり、音声メッセージとしたり、操艦の制御や給油や物資の移動の際の各種操作の制御に使用できるようになる。
【0014】
従って、電話通信に比べて通信精度を著しく向上でき、通話時における誤解の発生を回避でき、機器類の操作の同調性を著しく向上でき、受給に係る時間を短縮できる。また、洋上補給時のみに補給艦と受給艦の間に張られる電話索も不要になり、給油や物資の移動に関するものを除いて、ワイヤレス化できるので、甲板上の作業と甲板上等の暴露部にいる作業要員を減少できる。
【0015】
上記の操艦支援システムにおいて、前記補給艦に対して予め設定された受給位置領域に到達した後に、前記二船間情報取得手段で得られた前記補給艦と前記受給艦との間の相対距離と相対針路と相対速度に基づいて、前記補給艦に対する前記受給位置領域を維持するように前記受給艦の操艦を自動で行う相対位置維持制御手段を備えて構成されている。
【0016】
この構成によれば、補給艦に対して、定められた一定の相対距離、艦速、方位を自動的に維持しながら、つまり、補給艦に対する受給位置領域内に受給艦の相対位置を維持しながら、自動操艦で航行できるようになり、また、距離索の監視や電話通信等で得られる情報に比べて、二船間情報取得手段で得られる情報の方が精度が高くなる。従って、甲板要員及び操艦要員の負担を著しく軽減することができると共に、操艦時の安全性を向上できる。
【0017】
上記の操艦支援システムにおいて、前記二船間情報取得手段で得られた前記補給艦と前記受給艦との間の相対距離と相対針路と相対速度に基づいて、前記補給艦に対して予め設定された受給位置領域に前記受給艦を導くための操艦を自動で行う近接制御手段を備えて構成されている。
【0018】
この構成によれば、補給艦に対して受給位置領域に接近し、受給位置領域に占位するまでを自動操艦で行うことができるようになり、また、距離索や電話索の張り渡しがない状態で、相手の艦船の位置の監視が精度よくできるようになる。従って、甲板要員及び操艦要員の負担を著しく軽減することができると共に、受給位置領域に接近するまでの時間を短縮でき、また、操艦時の安全性を向上できる。
【0019】
上記の操艦支援システムにおいて、前記二船間情報取得手段で得られた前記補給艦と前記受給艦との間の相対距離と相対針路と相対速度に基づいて、前記受給位置領域から前記受給艦を離脱させるための操艦を自動で行う離脱制御手段を備えて構成されている。
【0020】
この構成によれば、補給艦に対する受給位置領域からの離脱を自動操艦で行うことができるようになり、また、距離索や電話索の張り渡しがない状態であるので、受給ラインの離脱のみで、速やかに自動で離脱操艦できるようになる。従って、受給位置領域から安全な離立ち位置までの航行時間を短縮でき、また、操艦時の安全性を向上できる。
【0021】
そして、上記のような目的を達成するための本発明の艦船は、上記の操艦支援システムを備えて構成され、上記の操艦支援システムと同様の効果を発揮することができる。
【0022】
そして、上記のような目的を達成するための本発明の操艦支援方法は、上記の操艦支援システムを用いる方法であり、上記の操艦支援システムと同様の効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の操艦支援システム、艦船、及び、操艦支援方法によれば、電波封鎖時や電波妨害時においても、補給艦と受給艦との間の相対位置と相対針路と相対速度とを検出できて、受給艦側における自動操艦で並走を行って、甲板要員と操艦要員の負担の軽減しつつ、補給艦からの補給を受けることができる。
【0024】
従って、補給艦と受給艦との洋上補給時における操艦の高度な自動化と、測距用の距離索と現場電話線用の電話索の無索化による甲板要員の甲板配置の削減化により、洋上補給作業における安全性の向上と省人化への寄与を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態の操艦支援システムの受給艦側の構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施の形態の操艦支援システムの制御面での構成を模式的に示す図である。
図3】本発明の実施の形態の操艦支援方法のフローを模式的に示す図である。
図4】本発明の第1の実施の形態の操艦支援システムによる補給艦への受給艦の近接状況を説明するための図である。
図5】本発明の第1の実施の形態の操艦支援システムによる補給艦への受給艦の並走状況を説明するための図である。
図6】本発明の第1の実施の形態の操艦支援システムによる補給艦への受給艦の離脱状況を説明するための図である。
図7】本発明の第2の実施の形態の操艦支援システムによる補給艦への受給艦の近接状況を説明するための図である。
図8】本発明の第2の実施の形態の操艦支援システムによる補給艦への受給艦の並走状況を説明するための図である。
図9】本発明の第2の実施の形態の操艦支援システムによる補給艦への受給艦の離脱状況を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態の操艦支援システム、艦船、及び、操艦支援方法について、図面を参照しながら説明する。ここでは、船首にバウスラスタを備えていない船舶を例にして説明するが、船首にバウスラスタを備えていても、水中音響機器などの使用時におけるバウスラスタ禁止時における操艦操作にも使用することができるので、本発明は、必ずしも、バウスラスタを備えていない船舶に限定する必要は無く、バウスラスタを備えていてもよい。ここでは、バウスラスタを使用しない操艦を扱っているが、バウスラスタの併用により、さらに操縦性能を向上することができる。
【0027】
最初に、図1を参照しながら、本発明に係る実施の形態の操艦支援システム20の受給艦1側の構成について説明する。この受給艦1は、船底11と船側外板12と上甲板13で囲われた船体10に上部構造14が載置され、この上部構造14には艦橋14aが設けられている。この受給艦1は、船尾側に右舷側主機関15aと左舷側主機関15bで駆動される右舷側推進器16aと左舷側推進器16bの2つの推進器と、右舷側舵17aと左舷側舵17bの2つの舵を備えている。また、この右舷側推進器16aと左舷側推進器16bの両方を可変ピッチプロペラで構成されており、更に、右舷側舵17aと左舷側舵17bはそれぞれ、右舷側操舵機18aと左舷側操舵機18bで操作されるように構成されている。
【0028】
また、この操艦支援システム20は、制御の面に関しては、制御装置21に制御手段40を備えており、この制御手段40は、図2に示すように、通常操艦手段41の他に、二船間情報取得手段42a、近接制御手段42b、相対位置維持制御手段42c、離脱制御手段42dを有して構成される洋上補給時制御手段42を備えている。そして、図3に示すようなフローで洋上補給の近接、並走、離脱を自動操艦で行う。
【0029】
先ず、通常操艦手段41は、洋上補給時以外の通常の操艦を行う手段であり、手動操艦及び自動操艦を行う各種の制御手段(図示しない)を備えて構成されている。この通常操艦手段41は、船底を流れる水流から船の対水速度を計測する電磁ログ31、風向及び風速を計測する風信儀32、人工衛星を利用して位置を測定するGPS(全地球測位システム)装置33、測距情報を得るためのレーダー装置(図示しない)、水中目標情報を得るためのソーナー装置(図示しない)等から操艦用測定データを入力する。
【0030】
それと共に、通常操艦手段41は、艦橋14aに固定された艦橋操作盤(表示パネル付)24A、戦闘指揮所(CIC)に固定された指揮所操作盤(表示パネル付)24B、可搬式の遠隔操作盤24C等における操艦要員の操艦操作で入力された操艦用指示データを入力して、2つの主機関15a、15b、2つの推進器16a、16b、及び、2つ操舵機18a、18bを制御する。
【0031】
この可搬式の遠隔操作盤24Cを用いることで、洋上補給時には、艦橋14aの左右舷・前後部等の場所で、ジョイスティック等による操艦が可能となり、また、USV(無人水上航走体)やUUV(無人水中航走体)の投入/揚収作業時、ブイ係留時等においては、その作業場所での直接的な操艦が可能となる。これにより、各種作業の円滑化、安全性向上に寄与できるようになる。
【0032】
この艦橋操作盤24A、指揮所操作盤24B、遠隔操作盤24Cについては、例えば、入力装置と操縦制御装置を備えて構成されており、この入力装置は、ジョイスティック等で構成される船尾部制御力入力部と、ダイヤル等で構成される舵角入力部とを有して構成されている。
【0033】
また、操縦制御装置は、船尾部制御力入力部からの傾倒方向(操艦方向:船の移動方向)と、その方向におけるジョイスティックの傾斜角度の大きさの傾斜角度データと、舵角入力部からの舵角データの他にも、GPS装置33、電磁ログ31等からの艦船の位置情報や速度情報、ジャイロコンパス23からの船首方位情報や、風信儀32からの情報、ソーナー装置からの情報、レーダー装置からの情報、測距システム(後述)などのからの情報などを入力して、右舷側推進器16aと左舷側推進器16bのそれぞれにおける前進又は後進の選択と、発生する推力の大きさの指令とを、それぞれの可変ピッチプロペラの制御装置に出力し、また、右舷側舵17aと左舷側舵17bの面舵と取舵の選択と、その舵角の大きさの指令とをそれぞれの操舵機18a、18bに出力する。
【0034】
そして、洋上補給時制御手段42の二船間情報取得手段42aは、図4図6に示すような測距システム(22A、22C)とジャイロコンパス23の組み合わせを用いる第1の実施の形態の操艦支援システム20と、図7図9に示すような第1の測距システム(22A、22C)と第2の測距システム(22B、22E)の組み合わせを用いる第2の実施の形態の操艦支援システム20Aがある。
【0035】
図4図6に示す第1の実施の形態の操艦支援システム20の二船間情報取得手段42aは、光波測距儀の受発光部22Aと反射器(リフレクタ)22Cの組み合わせで構成される測距システム(22A、22C)を備えている。この受発光部22Aは受給艦1側に配置され、反射器22Cが補給艦2側に配置される。この測距システム(22A、22C)では、単に相互間の距離S1を検出するだけでなく、相互間の距離S1に加えて受給艦1の船首方向に対する測定用光波の投光方向の角度α1を検出するように構成される。
【0036】
これにより、自艦の位置を暴露する虞のあるレーダーや、電波妨害の虞のあるGPS(全地球測位システム)を使用せず、光波を用いて距離を測定する光波測距義を有する測距システム(22A、22C)を使用しているので、電波を使用できない電波封止の状態や電波妨害を受けてGPSを使用できない状態などの環境下でも運用でき、しかも、距離測定のために、洋上補給用に補給艦2と受給艦1の間に張り巡らせていた距離索が不要になり、上甲板13における作業が減少して、距離索を目視で監視する必要もなくなるので、甲板要員を減少できるとともに、洋上補給の作業における安全性を向上できる。
【0037】
また、この光波測距儀の光波としてアイセーフ可視レーザー光を使用することが好ましい。つまり、大気中に伝播するレーザー光は、気体分子による吸収や散乱により減衰されるが、気体分子による吸収の少ない波長域であり、「大気の窓」と呼ばれる「可視~赤外領域の一部の波長域」があるので、この波長域のレーザー光を光波測距儀で用いる光波として用いる。その中でも、目の網膜まで達し難い1.4μmから2.6μmの波長のアイセーフレーザー光を用いることで、甲板や船橋等の暴露部にいる作業要員の目に対する安全性を向上できる。この波長のレーザー光としては、レーザーポイントなどのレーザー光が当たった場所を視認できるレーザー光がある。
【0038】
なお、気体分子による散乱は波長が長い程少なくてすむが、この測距システムでは、大気中で長距離を伝送する必要が無く、むしろ、秘匿性の面から遠くには伝送させたくないので、同じく大気の窓の中に発振波長をもつ赤外線レーザーや炭酸ガスレーザーよりは、むしろ短距離で散乱する可視レーザーを用いる。
【0039】
そして、更に、反射器(リフレクタ)22Cの代わりに、光波測距儀の受発光部22Eを用いて、光波測距儀の光波を用いた一方向通信機能又は双方向通信機能を備えて構成することが好ましい。この一方向通信機能又は双方向通信機能は、受給艦1側と補給艦2側の両方で光波測距儀の受発光部22A、22Eを備えて、この光波に通信情報を乗せることで容易に実現できる。この場合、洋上補給では、補給艦2も受給艦1も波浪などの影響を受けて船体運動をしており、荒天時などでは、受発光部22Aと受発光部22Eの間の光波のラインを途切れることなく維持することは難しい状況になる可能性も考えて、データをまとめて一気に送信する方式を取ることがより好ましい。
【0040】
この光波通信により、電話通信に比べて通信精度と、通話時における誤解の発生の回避と、機器類の操作の同調性等を著しく向上でき、洋上補給作業に係る時間を短縮できる。また、洋上補給時のみに補給艦2と受給艦1の間に張られる電話索も不要になり、給油や物資の移動に関するものを除いて、ワイヤレス化できるので、上甲板13や艦橋14aの外部等の暴露部にいる作業要員を減少できる。
【0041】
更に、補給艦2側の操艦情報及び給油機器類の操作情報等を受給艦1側に送り、受給艦1側の操艦情報及び受油機器類の操作情報等を補給艦2側に送ることができるようになり、双方の情報をお互いに共有できるようになる。そのため、操艦時の安全性の確保が容易にできるとともに、燃料油などの物資の移動に関する機器類の操作及び制御に必要な情報を得られ、容易にこれらのデータを画面表示したり、音声メッセージとしたり、操艦の制御及び給油や物資の移動の際の各種操作の制御に使用できるようになる。
【0042】
そして、この第1の実施の形態の操艦支援システム20では、二船間情報取得手段42aは、この測距システム(22A、22C)と、受給艦1が備えているジャイロコンパス23との組み合わせから、補給艦2と受給艦1との間の相対距離Dsx、Dsyと相対針路βと相対速度ΔVx、ΔVyとを検出するように構成される。
【0043】
図4図6に示すように、測距システム(22A、22C)により距離S1と投光方向の角度α1を検出し、更に、受給艦1が備えているジャイロコンパス23により、受給艦1の針路の方位θ1を得て、補給艦2の針路の方位θ2との差である相対針路β(=θ2-θ1)を算出する。この補給艦2の針路の方位θ2は、洋上補給に際して補給艦2側の予め取り決めて設定した方位として、又は、補給艦2側の操艦データとして受給艦1側に伝達された方位として得られる。
【0044】
投光方向の角度α1と補給艦2の針路の方位θ2との差を角度γとすると、図4図6に示すように、「γ=α1+β」となり、補給艦2の船長方向の相対距離(受給艦1と補給艦2との間の距離:厳密には受発光器22Aと反射器22Cとの間の距離)Dxは、「Dx=S1×Cos(α1+β)」、補給艦2の船幅方向の相対距離(受給艦1と補給艦2との間の距離:厳密には受発光器22Aと反射器22Cとの間の距離)Dyは、「Dy=S1×Sin(α1+β)」となる。また、相対速度ΔVxは相対距離Dxを時間微分し、相対速度ΔVyは相対距離Dyを時間微分することで得られる。
【0045】
なお、受発光部22Aと反射器22Cとの間の相対位置Dx、Dyから、操艦用の受給艦1と補給艦2との間の距離Dsx、Dsyを算定することは、受発光部22Aと反射器22Cのそれぞれの艦における配置位置が分かっているので容易に行うことができる。なお、図5及び図6では、図面の簡略化のために、操艦用の受給艦1と補給艦2との間の距離Dsx、Dsyの図示を省略している。
【0046】
また、近接制御手段42bは、図4の近接状態等から図5の並走状態に移行させる手段であり、二船間情報取得手段42aで得られた補給艦2と受給艦1との間の相対距離Dsx、Dsyと相対針路βと相対速度ΔVx、ΔVyに基づいて、補給艦2に対して予め設定された受給位置領域Rに受給艦1を導くための操艦を自動で行う手段である。この受給位置領域Rはピンポイントではなく、ある程度の範囲を持つ領域として、天候や波浪の状態等に基づいて洋上補給の開始前に予め設定される。
【0047】
なお、受給艦1の航行速度をUx、Uyとし、補給艦2の航行速度をWx、Wyとすると、「ΔVx=Ux-Wx」、「ΔVy=Uy-Wy」となる。通常の単独航行では、Uy=0、Wy=0であるが、2船が並走すると2船間の距離によって2船の間に吸引力(サクションフォース)と旋回モーメント(サクションモーメント)が発生するので、ここでは、航行速度Ux、Wxだけでなく、補給艦2の船幅方向の航行速度もUy、Wyとして採用する必要が生じる。
【0048】
この近接制御手段42bは、補給艦2と受給艦1との間の現状の相対距離Dx、Dyと相対針路βと相対速度ΔVx、ΔVyを入力して、補給艦2に対して予め設定された受給位置領域Rと現状の相対距離Dsx、Dsyとの関係とから、受給艦1を受給位置領域Rに接近させるための、今後の補給艦2の針路の方位θ1と航行速度Ux、Uyを算出して、この針路の方位θ1と航行速度Ux、Uyとなるように算出された制御力(前進力、横力、旋回モーメント)を発生するように、可変ピッチプロペラで構成されている2つの推進器16a、16bと、2つの舵17a、17bの4つの操作量を操作する近接制御を行う。
【0049】
この近接制御手段42bによれば、補給艦2に対して受給位置領域Rに接近し、受給位置領域Rに占位するまでを自動操艦で行うことができるようになり、また、距離索や電話索の張り渡しがない状態で、相手の艦船の位置の監視が精度よくできるようになる。従って、甲板要員及び操艦要員の負担を著しく軽減することができると共に、受給位置領域Rに接近するまでの時間を短縮でき、また、操艦時の安全性を向上できる。
【0050】
なお、この近接制御においては、予め設定した近接用のデータを用いて、時々刻々の相対距離Dx,Dyに応じた針路の方位θ1と航行速度Ux、Uyを自動で算出及び設定してもよいが、操艦要員からの入力により、この近接用データの指示値を変更したり、あるいは、ジョイスティックなどの操作により手動操艦したりできるように構成しておくことが好ましい。
【0051】
また、相対位置維持制御手段42cは、図5の並走状態を維持する手段であり、補給艦2に対して予め設定された受給位置領域Rに到達した後に、二船間情報取得手段42aで得られた補給艦2と受給艦1との間の相対距離Dsx、Dsyと相対針路βと相対速度ΔVx、ΔVyに基づいて、補給艦2に対する受給位置領域Rを維持するように、言い換えれば、定められた一定の相対距離Dsx、Dsy(=Ds)、艦速Ux(=Wx)、(Uy=0)、針路の方位θ1を維持するように、受給艦1の操艦を自動で行う手段である。
【0052】
この相対位置維持制御手段42cは、現状の補給艦2と受給艦1との間の相対距離Dsx、Dsyと相対針路βと相対速度ΔVx、ΔVyを入力して、今後の補給艦2の針路の方位θ2と相対速度Wx、Wyを受けて、補給艦2の針路の方位θ1(=θ2)を保ちつつ、相対速度ΔVx、ΔVyをゼロとする航行速度Ux、Uyとなるように算出された制御力(前進力、横力、旋回モーメント)を発生するように、可変ピッチプロペラで構成されている2つの推進器16a、16bと、2つの舵17a、17bの4つの操作量を操作する相対位置維持制御を行う。
【0053】
この相対位置維持制御手段42cによれば、補給艦2に対して受給位置領域Rを維持しながら自動操艦で航行できるようになり、また、距離索の監視や電話通信等で得られる情報に比べて、二船間情報取得手段42aで得られる情報の方が距離の測定精度が高くまた瞬時になる。従って、甲板要員及び操艦要員の負担を著しく軽減することができると共に、操艦時の安全性を向上できる。
【0054】
また、離脱制御手段42dは、図5の並走状態から図6の離脱状態に移行させる手段であり、二船間情報取得手段42aで得られた補給艦2と受給艦1との間の相対距離Dsx、Dsyと相対針路βと相対速度ΔVx、ΔVyに基づいて、受給位置領域Rから受給艦1を離脱させるための操艦を自動で行う手段である。
【0055】
この離脱制御手段42dは、現状の補給艦2と受給艦1との間の相対距離Dsx、Dsyと相対針路βと相対速度ΔVx、ΔVyを入力して、補給艦2に対して予め設定された受給位置領域Rと現状の相対距離Dsx、Dsyとの関係とから、受給艦1を受給位置領域Rから離脱して、受給位置領域Rの外側の離脱領域(図示しない)に移動させるための、今後の受給艦1の針路の方位θ1と航行速度Ux、Uyを算出して、この針路の方位θ1と航行速度Ux、Uyとなるように算出された制御力(前進力、横力、旋回モーメント)を発生するように、可変ピッチプロペラで構成されている2つの推進器16a、16bと、2つの舵17a、17bの4つの操作量を操作する離脱制御を行う。
【0056】
この離脱制御手段42dによれば、補給艦2に対する受給位置領域Rからの離脱を自動操艦で行うことができるようになり、また、距離索や電話索の張り渡しがない状態であるので、受給ラインの離脱のみで、速やかに自動で離脱操艦できるようになる。従って、受給位置領域Rから安全な離脱領域までの航行時間を短縮でき、また、操艦時の安全性を向上できる。
【0057】
なお、この離脱制御においても、予め設定した離脱用のデータを用いて、時々刻々の相対距離Dsx,Dsyに応じた針路の方位θ1と航行速度Ux、Uyを自動で算出及び設定してもよいが、この離脱用データの指示値を変更したり、あるいは、ジョイスティックなどの操作により手動操艦したりできるように構成しておくことが好ましい。
【0058】
次に、第2の実施の形態の操艦支援システム20Aについて説明するが、第1の実施の形態の操艦支援システム20との差は、二船間情報取得手段42aにおける以下の違いだけであり、その他の構成は同じである。
【0059】
図7図9の構成の第2の実施の形態の操艦支援システム20Aの二船間情報取得手段42aは、第1の実施の形態の操艦支援システム20の第1の測距システム(22A、22C)に加えて、図1にも示してある光波測距儀の受発光部22Bと反射器(リフレクタ)22Dの組み合わせで構成される第2の測距システム(22B、22D)を備えて構成されている。
【0060】
なお、この第2の測距システム(22B、22D)は、前記した第1の実施の形態の操艦支援システム20では不要である。言い換えれば、第1の測距システム(22A、22C)又は第2の測距システム(22B、22D)のいずれかが故障した場合には、故障しない側の測距システムと、ジャイロコンパス23とにより、第1の実施の形態の操艦支援システム20を構成することができる。
【0061】
この第2の測距システム(22B、22D)の受発光部22Bは受給艦1側に受発光部22Bと船長方向に関して距離L1をおいて配置され、反射器22Eは補給艦2側に反射器22Cと船長方向に関して距離L2をおいて配置される。この第2の測距システム(22B、22D)でも、単に相互間の距離S2を検出するだけでなく、相互間の距離S2に加えて受給艦1の船首方向に対する測定用光波の投光方向の角度α2を検出するように構成される。
【0062】
この第2の実施の形態の操艦支援システム20Aの二船間情報取得手段42aでは、図6図8に示すように、第1の測距システム(22A、22C)により距離S1と投光方向の角度α1を検出し、更に、第2の測距システム(22B、22D)により距離S2と投光方向の角度α2を検出する。
【0063】
そして、2つ受発光部22A、22Bの間の離間距離L1、2つ反射器22C、22Eの間の離間距離L2、測定された2つの距離S1、S2と2つの投光方向の角度α1、α2とから、受発光部22A、22Bと反射器22C、22Eの相対位置D1x、D1y、D2x(図示しない)、D2y(図示しない)を算定することができ、補給艦2の針路の方位θ2に対する受給艦1の針路の方位θ1との差である相対針路βと、相対位置Dsx、Dsyを算定することができる。なお、受発光部22Aと反射器22Cとの間の相対位置D1x、D1yから、操艦用の受給艦1と補給艦2との間の距離Dsx、Dsyを算定することは、受発光部22Aと反射器22Cのそれぞれの艦における配置位置が分かっているので容易に行うことができる。なお、図7図9においては受発光部22Bと反射器22Eの相対位置D2x、D2yの図示を省略し、また、図8及び図9では、図面の簡略化のために、操艦用の受給艦1と補給艦2との間の距離Dsx、Dsyの図示も省略している。
【0064】
次に、これらの構成の操艦支援システム20、20Aを用いた操艦支援方法について説明する。この操艦支援方法では、図3に示すように、洋上補給作業に入ると、補給艦2側では、補給用操艦を行い、定針・定速航行を開始し、洋上補給作業中は、これを維持する。そして、補給艦2から受給艦1への補給などが完了した段階で、この定針・定速航行を終了し。洋上補給作業を完了する。
【0065】
一方、受給艦1側では、洋上補給作業に入ると、補給用操艦を行う。そして、「光学測距儀のペアリング」を行う。このペアリングは、受給艦1側の光波測距儀の受発光部22A(又は/及び22B)を、補給艦2側の反射器22C(又は/及び22D)に向けて、光波を投光する。この投光した光波が反射器22Cから反射されて受発光部22Aに戻ってくるように、先ず、受発光部22からの投光方向を反射器22Cに向けて自動又は手動でスキャンさせて、投光した光波が反射器22Cに当たるようにする。この時可視レーザー光を用いているので、目視による手動調整も粗い調整が可能となる。
【0066】
この光波を受けた反射器22Cの方向を自動又は手動で調整して、反射器22Cで反射した光波が受発光部22Aに戻るようにする。一旦、受発光部22Aから反射器22Cへの光路と、反射器22Cから受発光部22Aへの光路とが確立し、この光路確立を認識した後は、それぞれの装置で、上下左右の首振り機構により、光路が外れそうになったら、自動で追従するように構成されていることが好ましい。
【0067】
この「光学測距儀のペアリング」の前後(図3では後)で、「自動操艦システムへの切替」を行う。これにより、操艦要員による自動操艦システムへの切換えスイッチの操作などにより、操艦権を操艦要員の手から自動操艦システムに切り替える。
【0068】
その後は、近接制御手段42bにより、自動操艦による近接を行う。この近接制御では、受給艦1を補給艦2に対して受給位置領域R内に移動させる。これにより、受給位置領域Rに受給艦1を近接させ、その受給位置領域Rを占位させる。
【0069】
この占位の状態に至った後は、相対位置維持制御手段42cにより、相対位置維持制御を行って、受給位置領域R内に受給艦1を自動操艦で維持する。つまり、受給艦1がその受給位置領域R内に留まるように受給艦1を補給艦2と同じ針路の方位(θ1=θ2:β=0)で同じ速度(Ux=Wx、Uy=Wy:ΔVx=0、ΔVy=0)で航行させる。
【0070】
この受給艦1が受給位置領域R内に入る直前若しくは直後に、または、受給艦1が相対位置維持制御に入る直前若しくは直後に、補給の準備としての補給艦2と受給艦1との間に補給ラインの構築を行い、この構築が完了し、しかも、相対位置維持制御に入っている状態になったら、補給を開始し、補給艦2に並行して受給艦1を航行させながら補給を行う。そして、この補給が完了したら、補給ラインを取り外して、補給を解除する。
【0071】
補給解除の後では、離脱制御手段42dにより、自動操艦による離脱を行う。この離脱制御では、受給艦1を補給艦2に対して受給位置領域Rから離脱領域に移動させる。これにより、受給位置領域Rから受給艦1を離脱させる。この離脱が完了すると、離脱完了の合図信号(光学的表示、音声信号等)受けて、操艦要員による自動操艦システムへの切換えスイッチの操作などが行われ、操艦権を自動操艦システムから操艦要員の手からに切り替える。これにより、「自動操艦システムからの切替」が行われる。
【0072】
この「自動操艦システムからの切替」の前後(図3では後)において、「光学測距儀のペアリングの解除」を行う。これは、受給艦1側の光波測距儀の受発光部22A(又は/及び22B)からの光波の投光を終了することで行う。これにより、補給用操艦を終了する。
【0073】
なお、上記の構成では、受給艦1を2軸2舵の構成としたが、前進力、横力、旋回モーメントの3つ制御力を発生できる構成の船舶であればよく、サイドスラスタを備えて1軸1舵の船舶であってもよい。
【0074】
さらに、測距システムの受発光器22A、22Bを受給艦1側に、反射器22C、22Dを補給艦2側に配置しているが、基本的には、操艦支援システム20、20Aを備えている側の受給艦1に受発光器22A、22Bを配置するのが好ましいが、測距システムを用いて、あるいは別経路で双方向通信を確保できる場合には、補給艦2側に受発光器22A、22Bを配置し、受給艦1側に反射器22C、22Dを配置してもよい。
【0075】
また、操艦支援システム20、20Aを補給艦2側に備えて、双方向通信で、受給艦1を制御してもよい。補給艦2側のみならず、受給艦1側にも操艦支援システム20、20Aを備えておくことにより、緊急時における補給艦2側からの受給艦1の補給用操艦が可能となる。
【0076】
上記の構成の操艦支援システム20、20A、艦船、及び、操艦支援方法によれば、電波封鎖時や電波妨害時においても、補給艦2と受給艦1との間の相対位置Dsx,Dsyと相対針路βと相対速度ΔVx、ΔVyとを検出できて、受給艦1側における自動操艦で並走を行って、甲板要員と操艦要員の負担の軽減しつつ、補給艦2からの補給を受けることができる。
【0077】
従って、補給艦2と受給艦1との洋上補給時における操艦の高度な自動化と、測距用の距離索と現場電話線用の電話索の無索化による甲板要員の甲板配置の削減化により、洋上補給作業における安全性の向上と省人化への寄与を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 受給艦
2 補給艦
10 船体
13 上甲板
14 上部構造
14a 艦橋
16a 右舷側推進器
16b 左舷側推進器
17a 右舷側舵
17b 左舷側舵
20、20A 操艦支援システム
21 制御装置
22A、22B、22E,22F 光波測距儀の受発光部(測距システム)
22C、22D 反射器(測距システム)
23 ジャイロコンパス
24A 艦橋操作盤
24B 指揮所操作盤
24C 遠隔操作盤
40 制御手段
41 通常操艦手段
42 洋上補給時制御手段
42a 二船間情報取得手段
42b 近接制御手段
42c 相対位置維持制御手段
42d 離脱制御手段
Dx 第1の測距システムの機器の相互間の距離(補給艦の船首尾方向)
Dy 第1の測距システムの機器の相互間の距離(補給艦の船幅方向)
Dsx 補給艦と受給艦との間の相対距離(補給艦の船首尾方向)
Dsy 補給艦と受給艦との間の相対距離(補給艦の船幅方向)
S1 第1の測距システムの機器の相互間の距離
S2 第2の測距システムの機器の相互間の距離
α1、α2 測定用光波の投光方向の角度
β 相対針路
θ1 受給艦の針路の方位
θ2 補給艦の針路の方位
γ 投光方向と補給艦の針路の方位との差の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9