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特許7139131無電解メッキ用硬化物形成用組成物、無電解メッキ用硬化物、無電解メッキ用硬化物の製造方法、配線基板、及び配線基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】無電解メッキ用硬化物形成用組成物、無電解メッキ用硬化物、無電解メッキ用硬化物の製造方法、配線基板、及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20220912BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
C23C18/18
H05K3/18 B
H05K3/18 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018059531
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019173052
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】大友 知亜紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢実
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/096670(WO,A1)
【文献】特開2004-353027(JP,A)
【文献】特開2002-290016(JP,A)
【文献】国際公開第2017/142022(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/017625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-18/54
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位とを有する共重合体と、
(2)溶剤とを含有し、
前記保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位が、下記一般式(III)で表される単量体単位であり、当該一般式(III)中のPで表されるカルボキシ基の保護基が、下記一般式(III-A)で表される1価の基である、無電解メッキ用硬化物形成用組成物。
【化1】
(一般式(III)中、R31は水素原子又はメチル基であり、Pはカルボキシ基の保護基を表し、下記一般式(III-A)で表される1価の基である。)
【化2】
(一般式(III-A)中、R32、R33及びR34はそれぞれ独立に、炭素数1以上30以下の炭化水素基であり、当該炭化水素基は置換基を有していてもよい。)
【請求項2】
さらに(3)熱反応性化合物を含有する、請求項1に記載の無電解メッキ用硬化物形成用組成物。
【請求項3】
前記(3)の熱反応性化合物が、エポキシ基、ベンゾオキサジン基、エピスルフィド基及びオキセタン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の熱反応性基を有する、請求項2に記載の無電解メッキ用硬化物形成用組成物。
【請求項4】
前記(1)の共重合体と前記(3)の熱反応性化合物との混合比が、質量比で30:70~95:5である、請求項2又は3に記載の無電解メッキ用硬化物形成用組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無電解メッキ用硬化物形成用組成物を準備する工程と、
前記組成物を加熱する工程と、
を有する無電解メッキ用硬化物の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無電解メッキ用硬化物形成用組成物を準備する工程と、
基板上に前記組成物を塗布する工程と、
前記塗布後の前記組成物を加熱することにより無電解メッキ用硬化物層を形成する工程と、
前記無電解メッキ用硬化物層上に少なくとも無電解メッキを行うことにより金属層を形成する工程と、
を有する配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解メッキ用硬化物形成用組成物、無電解メッキ用硬化物、無電解メッキ用硬化物の製造方法、配線基板、及び配線基板の製造方法に関する。なお、本発明においては、無電解メッキ用硬化物形成用組成物を、単に「無電解メッキ用組成物」と称する場合がある。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を有する配線基板が、電子部品や半導体素子等に用いられている。金属パターンを形成する方法としては、例えば、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、フルアディティブ法等が知られ、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の方法では、メッキ等により基板上に金属層を形成する。
メッキにより基板表面に金属層を形成する場合においては、基板表面と金属層との密着性を持たせるために、基板表面を粗化することが行われている。基板表面を粗化することにより、アンカー効果により基板表面と金属層との密着性を向上することができる。
しかし、基板と金属パターンとの界面が凹凸になると、高周波特性が悪くなったり、微細配線化が困難になる等の問題がある。
【0003】
一方で、基板表面の粗化を必要としないメッキ用部材も提案されている。例えば特許文献1には、直接の無電解メッキが可能な樹脂絶縁層用組成物として、メッキしようとする金属のイオン、又はこのメッキしようとする金属の析出を促進する触媒となる金属のイオンを補足する能力のあるキレート配位子を含有する高分子化合物を含有する樹脂絶縁層用組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、基板上に、金属イオン又は金属塩と相互作用する官能基を有し、該基板と直接化学結合するポリマーからなるポリマー層を設ける工程と、前記ポリマー層に金属イオン又は金属塩を付与する工程と、前記金属イオン又は金属塩を還元して導電層を形成する方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、(A)金属粉及び金属酸化物粉から選択される少なくとも1種、(B)バインダー樹脂、並びに、(C)金属及び金属イオンから選択される少なくとも1種に対する捕捉能を有する化合物、を含有する無電解メッキ下地層形成用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-12504号公報
【文献】国際公開第2007/123022号
【文献】特開2015-229788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、表面の粗化をせずに直接の無電解メッキを可能とする従来の材料は、成膜した際に表面の平滑性を向上し難く、硬化膜の表面に部分的な隆起や皺が発生し易いという問題がある。
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、無電解メッキによる金属の析出性に優れ、表面の平滑性に優れた無電解メッキ用硬化膜を形成可能な無電解メッキ用組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、無電解メッキによる金属の析出性に優れ、表面の平滑性に優れた無電解メッキ用硬化物及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、無電解メッキによる金属の析出性に優れ、表面の平滑性に優れた無電解メッキ用硬化物層を有する配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無電解メッキ用硬化物形成用組成物(無電解メッキ用組成物は、(1)アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位とを有する共重合体と、
(2)溶剤とを含有し、
前記保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位が、後述する一般式(III)で表される単量体単位であり、当該一般式(III)中のPで表されるカルボキシ基の保護基が、後述する一般式(III-A)で表される1価の基であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る無電解メッキ用硬化物は、前記本発明に係る無電解メッキ用組成物の硬化物であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る無電解メッキ用硬化物の製造方法は、前記本発明に係る無電解メッキ用組成物を準備する工程と、
前記無電解メッキ用組成物を加熱する工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る配線基板は、基板と、前記本発明に係る無電解メッキ用硬化物からなる無電解メッキ用硬化物層と、金属層とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る配線基板の製造方法は、前記本発明に係る無電解メッキ用組成物を準備する工程と、
基板上に前記無電解メッキ用組成物を塗布する工程と、
前記塗布後の前記無電解メッキ用組成物を加熱することにより無電解メッキ用硬化物層を形成する工程と、
前記無電解メッキ用硬化物層上に少なくとも無電解メッキを行うことにより金属層を形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無電解メッキによる金属の析出性に優れ、表面の平滑性に優れた無電解メッキ用硬化膜を形成可能な無電解メッキ用組成物を提供することができる。また、本発明によれば、無電解メッキによる金属の析出性に優れ、表面の平滑性に優れた無電解メッキ用硬化物及びその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、無電解メッキによる金属の析出性に優れ、表面の平滑性に優れた無電解メッキ用硬化物層を有する配線基板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る配線基板の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明に係る配線基板の製造方法の一例を示す工程図である。
図3】実施例3で得られた無電解メッキ用硬化物3の表面の倍率50倍の顕微鏡写真である。
図4】比較例1で得られた比較硬化物1の表面の倍率50倍の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る無電解メッキ用組成物、無電解メッキ用硬化物、無電解メッキ用硬化物の製造方法、配線基板、及び配線基板の製造方法について、順に詳細に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。
本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
【0016】
I.無電解メッキ用組成物
本発明に係る無電解メッキ用組成物は、(1)アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位とを有する共重合体と、
(2)溶剤とを含有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る無電解メッキ用組成物は、前記特定の共重合体と溶剤とを含有することにより、無電解メッキによる金属の析出性に優れ、表面の平滑性に優れた無電解メッキ用硬化膜を形成することができる。
従来、直接の無電解メッキを可能とするために基板上に設けられる層は、例えば、塗工液を塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜を硬化させることにより形成されるが、従来の材料では、塗膜の表面を平滑にすることが困難であるため、硬化後も表面の平滑性が不十分であったり、塗膜の際には表面が平滑であっても、塗膜を硬化する際に不均一な収縮が生じて、硬化後の表面の平滑性が低下してしまうことにより、表面の平滑性に優れた硬化膜を得ることが困難であった。
それに対し、本発明に係る無電解メッキ用組成物は、表面の平滑性に優れた塗膜を形成可能であり、更に、塗膜を加熱して硬化膜とする際に生じる表面の平滑性の低下を抑制することができるため、表面の平滑性に優れた無電解メッキ用硬化膜を形成することができる。
本発明に係る無電解メッキ用組成物は、前記特定の共重合体と溶剤とを含有するため、適度な流動性を有し、更に、前記特定の共重合体が水酸基及びアミノ基を有することにより、基板との親和性が高いため、基板上に塗布した際に適度な濡れ性を有し、レベリング性に優れ、表面が平滑な塗膜を形成しやすいと考えられる。本発明に係る無電解メッキ用組成物を用いて形成した塗膜を加熱することにより得られる硬化膜が表面の平滑性に優れるのは、本発明に係る無電解メッキ用組成物を用いて形成した塗膜を加熱すると、前記特定の共重合体中のカルボキシ基の保護基が脱保護し、脱保護されたカルボキシ基と水酸基とが反応してエステル架橋構造を形成することにより、前記特定の共重合体が、基板との親和性を保持しながら架橋構造を形成して、塗膜中の架橋密度が適度に高くなるため、塗膜を硬化する際に、加熱による収縮が均一になりやすく、不均一な収縮が抑制されるためと推定される。このように、本発明に係る無電解メッキ用組成物を用いることにより、表面が平滑な塗膜を形成することができ、更に、塗膜を加熱する際に不均一な収縮が抑制されるため、表面の平滑性に優れた硬化膜を形成することができると考えられる。
また、本発明に係る無電解メッキ用組成物を用いて形成される硬化膜は、前記特定の共重合体が有するアミノ基が、メッキする金属のイオン又は当該金属の析出を促進する触媒となる金属のイオンを補足する能力を有するため、無電解メッキによる金属の析出性に優れる。
さらに、従来の直接の無電解メッキを可能とする材料は、基板が数μm~数百μm単位の凹凸を有するような微小構造の表面に均一に塗布することが特に困難であり、当該微小構造の表面に均一な硬化膜を形成することが困難であるが、本発明に係る無電解メッキ用組成物は、上述したように適度な濡れ性を有し、レベリング性に優れるため、数μm~数百μm単位の凹凸を有する壁面においても、塗布性に優れ、均一な硬化膜を形成することができる。
また、本発明に係る無電解メッキ用組成物は、基板との密着性に優れる硬化膜を形成することができ、特にガラス基板との密着性に優れる硬化膜を形成することができる。本発明に係る無電解メッキ用組成物を用いて形成される硬化膜は、前記特定の共重合体中の脱保護されたカルボキシ基と水酸基とが反応して形成されるエステル架橋構造を有するため、エステル架橋構造が、基板表面と水素結合とすることにより密着性が向上し、更に、硬化膜中に架橋構造が形成されていることにより、硬化膜の強度が向上したものであるため、基板から剥がれ難く、より密着性が向上していると推定される。
【0018】
以下、本発明に係る無電解メッキ用組成物に用いられる各成分について説明する。
本発明に係る無電解メッキ用組成物は、少なくとも(1)アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位とを有する共重合体と、(2)溶剤とを含有し、更に(3)熱反応性化合物を含有することが好ましく、更に、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加成分、未反応モノマー、前記(1)の共重合体とは異なる重合体等のその他の成分を含有していてもよい。
【0019】
(1)共重合体
前記(1)の共重合体は、(i)アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、(ii)水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、(iii)保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位とを有し、更に、本発明の効果を損なわない範囲で、(iv)その他の単量体単位を有していてもよい。
【0020】
(i)アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位
前記(1)の共重合体が有するアミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位は、側鎖に少なくとも1つのアミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位であれば特に限定はされないが、好ましくは、例えば、下記一般式(I)で表される単量体単位が挙げられる。
【0021】
【化1】
(一般式(I)中、R11は水素原子又はメチル基であり、Lは直接結合又は2価の連結基であり、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、R12及びR13が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0022】
前記一般式(I)のLにおける2価の連結基としては、例えば、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基、アリーレン基、炭素原子数1以上10以下のエーテル基(-R’-OR”-:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。Lは、中でも、有機溶剤への溶解性の点から、直接結合、又は、炭素原子数1以上10以下の直鎖又は分岐のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1以上6以下の直鎖又は分岐のアルキレン基であることがより好ましい。なお、Lが直接結合とは、酸素原子が窒素原子に直接結合していることを意味する。
【0023】
前記一般式(I)のR12及びR13における炭化水素基としては、直鎖、分岐又は環状の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、或いは、単環又は多環芳香族基、或いは、これらの組み合わせが挙げられ、ヘテロ原子として、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が含まれていてもよい。
12及びR13における炭化水素基としては、メチル基などのアルキル基、シクロペンチル基などのシクロアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、エチニル基などのアルキニル基、フェニル基などのアリール基、ピリジル基などの芳香族複素環基、ピロリジル基などの脂肪族複素環基、ベンジル基などのアリールアルキル基、1,3,5-トリメチルフェニル基などのアルキルアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
12及びR13における炭化水素基としては、中でも、炭素数が1以上3以下であることが、触媒となる金属又はメッキする金属との配位の点から好ましい。R12及びR13が互いに結合して環構造を形成している場合は、R12及びR13の炭素数の合計が2以上6以下であることが好ましい。中でも、R12及びR13における炭化水素基としては、アルキル基が、無電解メッキ用組成物の硬化膜とガラス等の基板及び金属層との密着性の点から好ましい。
【0024】
前記一般式(I)で表される単量体単位を誘導する単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モルフォリノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも、金属の析出性の点、ガラス等の基板及び金属層との密着性の点から、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、前記(1)の共重合体が有する前記アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の単量体単位を含むものであってもよい。
【0025】
前記(1)の共重合体において、前記アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位の含有割合は、無電解メッキによる金属の析出性、濡れ性及びレベリング性の点から、全単量体単位の合計100質量%に対し、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、一方で、他の単量体単位を十分に含有させる点から、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0026】
(ii)水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位
前記(1)の共重合体が有する水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位は、側鎖に少なくとも1つの水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位であれば特に限定はされないが、好ましくは、例えば、下記一般式(II)で表される単量体単位が挙げられる。
【0027】
【化2】
(一般式(II)中、R21は水素原子又はメチル基であり、Lは2価の連結基である。)
【0028】
前記一般式(II)において、Lは2価の連結基である。Lにおける2価の連結基としては、例えば、エーテル基(-O-)及びカルボニル基(-C(=O)-)から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよいアルキレン基、アリーレン基及びこれらの組み合わせ等が挙げられ、当該アルキル基及び当該アリーレン基は、水酸基によって置換されていてもよく、当該アルキル基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基によって置換されていてもよい。Lにおける2価の連結基としては、中でも、炭素数1以上10以下の直鎖又は分岐のアルキレン基が好ましく、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐のアルキレン基がより好ましい。
【0029】
前記一般式(II)で表される単量体単位を誘導する単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン1モル付加物、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも、無電解メッキ用組成物の塗膜及び硬化膜の表面の平滑性、基板密着性の点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、前記(1)の共重合体が有する前記水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の単量体単位を含むものであってもよい。
【0030】
前記(1)の共重合体において、前記水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位の含有割合は、レベリング性及び基板との密着性の点から、全単量体単位の合計100質量%に対し、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、一方で、他の単量体単位を十分に含有させる点から、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0031】
(iii)保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位
前記(1)の共重合体が有する保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位は、側鎖に少なくとも1つの保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位であれば特に限定はされないが、好ましくは、例えば、下記一般式(III)で表される単量体単位が挙げられる。
【0032】
【化3】
(一般式(III)中、R31は水素原子又はメチル基であり、Pはカルボキシ基の保護基である。)
【0033】
前記一般式(III)において、Pはカルボキシ基の保護基である。Pにおけるカルボキシ基の保護基は、加熱により脱保護してカルボキシ基を発生することができる基であれば特に限定はされず、例えば、下記一般式(III-A)で表される1価の基を挙げることができる。
【0034】
【化4】
(一般式(III-A)中、R32、R33及びR34はそれぞれ独立に、炭素数1以上30以下の炭化水素基であり、当該炭化水素基は置換基を有していてもよい。)
【0035】
一般式(III-A)中のR32、R33及びR34における炭素数1以上30以下の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよいし、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、前記炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいし、更にエーテル結合、ハロゲン原子、ケトン基、エステル基、アミノ基、アミド基、イミド基等の置換基を有していてもよい。また、前記一般式(III-A)におけるR32、R33及びR34は、それぞれ互いに末端部位で連結して環状構造を形成していてもよい。中でも、加熱により脱保護されやすく、且つ脱保護により生成する化合物が揮発しやすい点から、前記炭化水素基は、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐のアルキル基であることがより好ましい。
前記一般式(III-A)で表される1価の基としては、中でも、脱保護により生成する化合物が揮発しやすい点から、炭素原子の合計数が12以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。
【0036】
前記一般式(III-A)で表される1価の基としては、中でも、tert-ブチル基、tert-ペンチル基が好ましく、加熱により脱保護されやすく、且つ脱保護により生成する化合物が揮発しやすい点から、tert-ブチル基がより好ましい。
なお、前記(1)の共重合体が有する前記保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の単量体単位を含むものであってもよい。
【0037】
前記(1)の共重合体において、前記保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位の含有割合は、レベリング性の点から、全単量体単位の合計100質量%に対し、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、一方で、他の単量体単位を十分に含有させる点から、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0038】
(iv)その他の単量体単位
前記(1)の共重合体は、前述した(i)アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位、(ii)水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位、及び(iii)保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位とは異なるその他の単量体単位を更に有していても良い。前記その他の単量体単位としては、例えば、下記一般式(IV)で表される単量体単位が挙げられる。
【0039】
【化5】
(一般式(IV)中、R41は水素原子又はメチル基であり、R42は、前記一般式(III)中のPとは異なる炭化水素基であり、当該炭化水素基は置換基を有していてもよい。)
【0040】
前記一般式(IV)のR42における炭化水素基としては、例えば、前記一般式(I)のR12及びR13における炭化水素基と同様のものを挙げることができ、中でも、炭素数1以上10以下の直鎖、分岐又は環状の飽和脂肪族炭化水素基が、耐熱性の点から好ましい。
42における炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子、ケトン基、エステル基、アミノ基、アミド基、イミド基等を挙げることができる。
前記一般式(IV)で表される単量体単位を誘導する単量体としては、中でも、耐熱性の点から、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる少なくとも一種を好ましく用いることができる。
【0041】
前記(1)の共重合体において、前記一般式(IV)で表される単量体単位の含有割合は、上述した効果を十分に発揮する点から、全単量体単位の合計100質量%に対し、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、一方で、他の単量体単位を十分に含有させる点から、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以下である。
【0042】
前記(1)の共重合体の好ましい重量平均分子量(Mw)は、粘度の点から、1000以上15000以下であることが好ましく、2000以上10000以下であることがより好ましく、3000以上5000以下であることが特に好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求める。
【0043】
前記(1)の共重合体のアミン価は、濡れ性の点から、5mgKOH/g以上であることが好ましく、10mgKOH/g以上であることがより好ましく、一方で、硬化膜の金属析出性の点から、50mKOH/g以下であることが好ましく、25mgKOH/g以下であることがより好ましい。
アミン価は、試料1g中に含まれるアミン成分を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数をいい、JIS-K7237に定義された方法により測定することができる。
【0044】
本発明に係る無電解メッキ用組成物の全固形分中における前記(1)の共重合体の含有量は、硬化膜の平滑性及び金属析出性の点から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、一方で、後述する熱反応性化合物を含有させる場合には、熱反応性化合物及び任意添加成分を十分に含有させるために、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよい。
なお、本発明において固形分とは、溶剤以外の全ての成分をいう。
【0045】
前記(1)の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれの形態であってもよいが、ランダム共重合体であることが、形成される硬化膜の表面の平滑性をより向上できる点から好ましい。
また、前記(1)の共重合体は、アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体、保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体、及び必要に応じて更に前記その他の単量体を用いて、公知の合成手段で得ることができ、特に限定はされないが、例えば、ラジカル重合法、イオン重合法等の重合法で得ることができる。
【0046】
(2)溶剤
前記(2)の溶剤は、無電解メッキ用組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な溶剤であればよく、特に限定されない。
溶剤の具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、メトキシアルコール、エトキシアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、酪酸イソブチル、酪酸n-ブチル、乳酸エチル、シクロヘキサノールアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどのグリコールエステル系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶剤;プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート等のジアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ-ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;テトラヒドロフランなどの環状エーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N-ヘプタン、N-ヘキサン、N-オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などの有機溶剤が挙げられる。
中でも、レベリング性の点及び無電解メッキ用組成物の濡れ性を向上する点から、グリコールエステル系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤よりなる群から選択される1種以上が好ましく、グリコールエステル系溶剤と、アルコール系溶剤及びエステル系溶剤よりなる群から選択される1種以上とを混合した混合溶剤がより好ましい。
グリコールエステル系溶剤としては、中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
アルコール系溶剤としては、中でも、ジアセトンアルコール及びi-プロピルアルコールから選択される1種以上であることが好ましい。
エステル系溶剤としては、中でも、乳酸エチル及びシクロヘキサノールアセテートから選択される1種以上であることが好ましい。
グリコールエーテル系溶剤としては、中でも、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテルから選択される1種以上であることが好ましい。
【0047】
また、本発明に係る無電解メッキ用組成物が含有する溶剤の含有量は、特に限定はされないが、本発明に係る無電解メッキ用組成物の濡れ性を向上する点から、無電解メッキ用組成物中に、好ましくは50質量%以上99.5質量%以下、より好ましくは80質量%以上98質量%以下であり、特に85質量%以上97質量%以下であることが好ましい。
【0048】
(3)熱反応性化合物
本発明に係る無電解メッキ用組成物は、基板との密着性を向上する点、及び形成される硬化膜の表面の平滑性を向上しやすい点から、さらに熱反応性化合物を含有することが好ましい。本発明に係る無電解メッキ用組成物が熱反応性化合物を含有することにより、熱反応性化合物が、熱反応性化合物同士、又は前記共重合体と反応して、硬化膜中にさらに架橋構造が形成されることにより、硬化膜の強度が向上し、硬化膜と基板との密着性がより向上すると推定される。また、本発明に係る無電解メッキ用組成物を加熱して硬化膜を形成する際に、熱反応性化合物が、熱反応性化合物同士、又は前記共重合体と反応することにより、塗膜中の架橋密度が適度に高くなりやすく、加熱による収縮が均一になりやすいため、硬化膜表面の平滑性がより向上すると推定される。さらに、熱反応性化合物から水酸基を発生する場合は、当該発生した水酸基が基板表面と反応して結合することにより、基板との密着性がより高まると推定される。また、熱反応性化合物から水酸基を発生する場合は、当該発生した水酸基により、熱反応性化合物と基板との親和性が向上し、塗膜が基板上に濡れ広がりやすくなり、塗膜のレベリング性がより向上するため、硬化膜表面の平滑性もより向上すると推定される。
【0049】
前記熱反応性化合物としては、熱により硬化反応が可能な熱反応性基を有する化合物であれば特に限定されず、低分子化合物でも、高分子化合物でもよい。
前記熱反応性基としては、例えば、エポキシ基、ベンゾオキサジン基、エピスルフィド基、オキセタン基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基が挙げられる。本発明に用いる前記(3)の熱反応性化合物としては、中でも、エポキシ基、ベンゾオキサジン基、エピスルフィド基及びオキセタン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の熱反応性基を有する化合物が、基板との密着性を向上する点から好ましく、更に形成される硬化膜の平滑性を向上しやすい点から、エポキシ基、ベンゾオキサジン基及びエピスルフィド基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の熱反応性基を有する化合物がより好ましく、中でも保存安定性が優れる点、及び形成される硬化膜の平滑性をより向上しやすい点から、ベンゾオキサジン基を有する化合物が特に好ましい。
また、本発明に用いる前記(3)の熱反応性化合物としては、前記熱反応性基を1分子中に2個以上有するものが、硬化膜の強度を向上して基板との密着性を向上する点、及び硬化膜の表面の平滑性を向上しやすい点から好ましく、硬化膜中に適度に架橋構造が形成されやすい点から、前記熱反応性基を1分子中に2個以上4個以下有する熱反応性化合物が特に好ましい。
【0050】
エポキシ基を有する熱反応性化合物としては、1分子中にエポキシ基を2個以上を有するエポキシ化合物を好ましく用いることができ、エポキシ基含有(共)重合体及びエポキシ基含有モノマーが挙げられ、市販のエポキシ樹脂を用いることもできる。また、エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
前記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、テトラブロモビフェニル型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ベンゾフェノン型エポキシ樹脂、フェニルベンゾエート型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホキシド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、ジフェニルジスルフィド型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、メチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂;N,N-ジグリシジルアミノベンゼン型エポキシ樹脂、o-(N,N-ジグリシジルアミノ)トルエン型エポキシ樹脂、トリアジン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジアミノベンゼン型エポキシ樹脂等の4官能型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ブロモ化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂;及び脂環式エポキシ樹脂類等が挙げられる。
【0051】
ベンゾオキサジン基を有する熱反応性化合物としては、ベンゾオキサジン環を有する化合物であれば特に限定はされないが、1分子中にベンゾオキサジン環2個以上を有するベンゾオキサジン化合物を好ましく用いることができる。好ましいベンゾオキサジン化合物としては、例えば、下記一般式(A-1)で表される化合物及び下記一般式(A-2)で表される化合物を挙げることができる。
【0052】
【化6】
(一般式(A-1)及び一般式(A-2)中、X及びXはそれぞれ独立に、直接結合又は2価の連結基であり、Y、Y、Y及びYはそれぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、a、b、c及びdはそれぞれ独立に、0以上4以下の整数である。)
【0053】
一般式(A-1)及び一般式(A-2)中、X及びXにおける2価の連結基としては、例えば、直鎖又は分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、-O-、-SO-、-C(=O)-及びこれらを組み合わせ等が挙げられる。中でも、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基及びイソプロピレン基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0054】
一般式(A-1)及び一般式(A-2)中、Y、Y、Y及びYにおける炭素数1以上6以下の炭化水素基としては、中でも、直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基が特に好ましい。
【0055】
一般式(A-1)及び一般式(A-2)中、a、b、c及びdはそれぞれ独立に、0以上4以下の整数であり、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0056】
また、前記(3)の熱反応性化合物としては、中でも、前記一般式(A-1)で表される化合物が、溶解性及び保存安定性の点から好ましい。
前記一般式(A-1)で表される化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記化学式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0057】
【化7】
【0058】
エピスルフィド基を有する熱反応性化合物は、炭素原子2個と硫黄原子1個からなる3員環チオエーテル構造を有する化合物であればよく、特に限定はされないが、例えば、前記2官能型エポキシ樹脂においてエポキシ基をエピスルフィド基に置き換えた2官能型エピスルフィド樹脂、前記多官能型エポキシ樹脂においてエポキシ基をエピスルフィド基に置換した多官能型エピスルフィド樹脂、シクロヘキセンスルフィド、プロピレンスルフィド等の単官能型エピスルフィド化合物等を挙げることができる。
中でも、硬化性及び硬化物の強度の点から、2官能型エピスルフィド樹脂及び多官能型エピスルフィド樹脂を好ましく用いることができる。
【0059】
オキセタン基を有する熱反応性化合物としては、特に限定はされないが、例えば、キシリレンビスオキセタン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、4,4’-(3-エチルオキセタン-3-イルメチルオキシメチル)ビフェニル、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ{1-エチル(3-オキセタニル)}メチルエーテル、1,6-ビス{(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ}ヘキサン、9,9-ビス{2-メチル-4-[2-(3-オキセタニル)]ブトキシフェニル}フルオレン、9,9-ビス{4-{2-[2-(3-オキセタニル)]ブトキシ}エトキシフェニル}フルオレン等の2官能型オキセタン化合物;オキセタン化ノボラック樹脂等の多官能型オキセタン化合物;3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-フェニルオキセタン等の1官能型オキセタン化合物等が挙げられる。中でも、硬化性及び硬化物の強度の点から、2官能型オキセタン化合物及び多官能型オキセタン化合物が好ましく、2官能型オキセタン化合物が特に好ましい。
【0060】
前記(3)の熱反応性化合物は、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
本発明に係る無電解メッキ用組成物が前記(3)の熱反応性化合物を含有する場合、無電解メッキ用組成物の全固形分中における前記(3)の熱反応性化合物の含有量は、無電解メッキ用組成物のレベリング性及び濡れ性の点、基板との密着性を向上する点、硬化膜の金属析出性及び表面平滑性の点から、5質量%以上70質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
また、本発明に係る無電解メッキ用組成物が前記(3)の熱反応性化合物を含有する場合、無電解メッキ用組成物のレベリング性及び濡れ性の点、基板との密着性を向上する点、硬化膜の金属の析出性の点及び表面平滑性の点から、前記(1)の共重合体と前記(3)の熱反応性化合物との混合比(前記(1)の共重合体:前記(3)の熱反応性化合物)が、質量比で30:70~95:5であることが好ましく、50:50~90:10であることがより好ましく、70:30~85:15であることがより更に好ましい。
【0063】
(4)その他の成分
本発明に係る無電解メッキ用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、重合開始剤、硬化剤、レベリング剤、分子量調整剤等の各種添加成分、未反応モノマー、前記(1)の共重合体とは異なる重合体等のその他の成分を更に含有していてもよい。
【0064】
本発明に係る無電解メッキ用組成物が前記その他の成分を含有する場合、無電解メッキ用組成物の全固形分中における前記その他の成分の合計含有量は、2質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、一方、例えば、0.05質量%以上とすることができる。
【0065】
また、本発明に係る無電解メッキ用組成物は、特に限定はされないが、形成される硬化膜の表面の平滑性をより向上できる点、及び、濡れ性に優れ、微小構造を有する表面に均一に塗布しやすい点から、内径0.29mm、長さ125mmのガラスキャピラリーを組成物の液面に対して垂直に5mm浸漬したときに、毛細管現象によるガラスキャピラリー内の液面上昇の高さが2cm超過であることが好ましく、3cm超過であることがより好ましい。
【0066】
また、本発明に係る無電解メッキ用組成物は、特に限定はされないが、塗膜表面及び形成される硬化膜表面の平滑性をより向上できる点、及び、濡れ性に優れ、微小構造を有する表面に均一に塗布しやすい点から、25℃±0.5℃の環境下で粘度が0.3cP以上5.0以下であることが好ましく、0.5cP以上4.0cP以下であることがより好ましく、2.0cP以上3.0cP以下であることがより更に好ましい。なお、前記粘度は、振動式粘度計を用いて測定することができる。
【0067】
また、本発明に係る無電解メッキ用組成物は、特に限定はされないが、濡れ性に優れ、微小構造を有する表面に均一に塗布しやすい点から、表面張力が15mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、25mN/m以上30mN/m以下であることがより更に好ましい。なお、前記表面張力は、プレート式表面張力計(例えば、協和界面科学製、CBVP-Z)を用いて、25℃±0.5℃の環境下で測定することにより求めることができる。
【0068】
また、本発明に係る無電解メッキ用組成物は、特に限定はされないが、濡れ性に優れ、微小構造を有する表面に均一に塗布しやすい点から、ガラス基板に対する接触角が10°以下であることが好ましく、5°以下であることがより好ましく、1°以下であることがより更に好ましい。なお、本発明において接触角は、θ/2法で求められる静的接触角とする。
【0069】
本発明に係る無電解メッキ用組成物の製造方法は、特に限定はされず、例えば、前記(2)の溶剤以外の各成分を前記(2)の溶剤に添加し、混合することにより、本発明に係る無電解メッキ用組成物を得ることができる。
【0070】
II.無電解メッキ用硬化物
本発明に係る無電解メッキ用硬化物は、前記本発明に係る無電解メッキ用組成物の硬化物である。
本発明に係る無電解メッキ用硬化物は、前記本発明に係る無電解メッキ用組成物の硬化物であるため、無電解メッキによる金属の析出性に優れ、表面の平滑性に優れたものである。
【0071】
本発明に係る無電解メッキ用硬化物は、その表面に直接無電解メッキを行うことにより金属層を形成することができるものであり、特に限定はされないが、例えば、配線基板が有する金属層の下地となる無電解メッキ用硬化物層として好適に用いられるものである。
なお、本発明に係る無電解メッキ用硬化物は、前記本発明に係る無電解メッキ用組成物を加熱することにより得られるものであり、前記(1)の共重合体の水酸基と脱保護されたカルボキシ基との反応により形成されたエステル結合を有することが好ましい。
本発明に係る無電解メッキ用硬化物がエステル結合を有することは、例えば、FT-IR、熱分解GC/MSにより確認することができる。
【0072】
本発明に係る無電解メッキ用硬化物は、平坦な基板上に、無電解メッキ用硬化物層として層状に形成した場合に、その表面に、高さが0.1μm以上の凸部及び深さが0.1μm以上の凹部を有しないものとすることができる。なお、前記無電解メッキ用硬化物層の表面は、3次元光学プロファイラーを用いて観察することができる。3次元光学プロファイラーとしては、例えば、Canon製、光学計測機器Zygoを用いることができる。
【0073】
III.無電解メッキ用硬化物の製造方法
本発明に係る無電解メッキ用硬化物の製造方法は、
前記本発明に係る無電解メッキ用組成物を準備する工程と、
前記無電解メッキ用組成物を加熱する工程と、
を有する。
【0074】
本発明に係る無電解メッキ用硬化物の製造方法において、前記本発明に係る無電解メッキ用組成物を準備する方法については、前記本発明に係る無電解メッキ用組成物で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0075】
本発明に係る無電解メッキ用硬化物の製造方法においては、前記無電解メッキ用組成物を加熱する工程の前に、前記無電解メッキ用組成物を支持体上に塗布する工程を更に有することが好ましい。
前記無電解メッキ用組成物を支持体上に塗布する方法は、公知の塗布手段を用いることができ、特に限定はされないが、例えば、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等が挙げられ、中でもディップコート又はスピンコートが好ましい。
前記支持体としては、例えば、後述する本発明に係る配線基板に用いられる基板と同様のものを挙げることができる。
【0076】
前記無電解メッキ用組成物を加熱する工程において、前記加熱の温度は、特に限定はされないが、硬化物の表面の平滑性がより向上する点から、前記無電解メッキ用組成物が含有する前記(1)の共重合体が有するカルボキシ基の保護基が脱保護し得る温度以上であることが好ましく、具体的には、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、より更に好ましくは170℃以上であり、特に好ましくは200℃以上である。また、前記加熱の温度は、前記無電解メッキ用組成物中の成分の熱による分解を抑制する点から、260℃以下とすることが好ましく、250℃以下とすることがより好ましい。また、前記無電解メッキ用組成物を加熱する工程においては、130℃以上260℃以下での加熱をする前に、40℃以上100℃以下でプリベイクを行ってもよい。
前記加熱の方法は、上記温度での加熱が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、加熱炉、赤外線加熱、電磁誘導加熱等を用いることができる。
【0077】
IV.配線基板
本発明に係る配線基板は、基板と、前記本発明に係る無電解メッキ用硬化物からなる無電解メッキ用硬化物層と、金属層とを有する。
【0078】
本発明に係る配線基板について、図を参照しながら説明する。図1は、本発明の配線基板の一例を示す概略断面図である。図1に示す配線基板10は、基板1と、無電解メッキ用硬化物層2と、金属層3とを有しており、無電解メッキ用硬化物層2と金属層3とはパターン状に配置されている。
【0079】
本発明に係る配線基板は、典型的には、前記本発明の無電解メッキ用硬化物からなる無電解メッキ用硬化物層の表面に、無電解メッキを行うことにより形成された無電解メッキ層を含む金属層を有するものであり、前記無電解メッキ用硬化物層と、前記金属層が含む無電解メッキ層とが隣接して位置していることが好ましい。本発明に係る配線基板は、前記無電解メッキ用硬化物層が前記本発明の無電解メッキ用硬化物からなるものであり、表面の平滑性が高いため、前記無電解メッキ用硬化物層と前記金属層との間の界面の平滑性が高い。そのため、本発明に係る配線基板においては、前記金属層をパターン状に形成する場合に微細配線が可能である。
【0080】
本発明に係る配線基板は、基板と、前記本発明に係る無電解メッキ用硬化物からなる無電解メッキ用硬化物層と、金属層とを有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲において、更に必要に応じて他の構成を有していてもよい。
【0081】
1.基板
本発明に係る配線基板は、無電解メッキ用硬化物層及び金属層を支持するための基板を有する。
前記基板としては、従来配線基板に用いられる基材の中から、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、高歪点ガラス、石英ガラス等のガラス、アルミナ、シリカなどの無機材料を用いることができ、さらに樹脂フィルム等を用いることもできる。
【0082】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラス-エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリノルボルネン等のポリシクロオレフィン、液晶性高分子化合物等のフィルムが挙げられる。
【0083】
本発明に用いる基板としては、前記無電解メッキ用硬化物層との密着性に優れる点、及び前記無電解メッキ用硬化物層の表面の平滑性が向上しやすい点から、表面に、水酸基又はケイ素原子を有する基板が好ましく、水酸基を有する基板が特に好ましい。具体的には例えば、ガラス基板、シリコン基板、ポリイミド基板等が好ましく、中でも、光学特性及び耐熱性に優れる点、前記無電解メッキ用硬化物層との密着性に優れる点から、ガラス基板が特に好ましい。
【0084】
本発明に用いる基板の形状は、用途に応じて適宜選択すればよく、平板状であっても、曲面を有するものであってもよいが、通常は平板状である。平板状の基板を用いる場合、当該基板の厚みは、用途に応じて適宜設定すればよく、例えば10μm~0.7mm程度のものとすることができる。
【0085】
2.無電解メッキ用硬化物層
本発明に係る配線基板が有する無電解メッキ用硬化物層は、前記本発明に係る無電解メッキ用硬化物からなる層であり、直接の無電解メッキを可能とするための層である。
前記無電解メッキ用硬化物層は、通常、後述する金属層と同様のパターンを有する。
【0086】
前記無電解メッキ用硬化物層は、前記基板とは反対側の表面を、高さが0.1μm以上の凸部及び深さが0.1μm以上の凹部を有しないものであることが好ましい。なお、前記無電解メッキ用硬化物層の表面は、3次元光学プロファイラー(例えば、Canon製、光学計測機器Zygo)を用いて観察することができる。
【0087】
前記無電解メッキ用硬化物層の厚みは、特に限定はされないが、金属の析出性の点から、0.2μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましい。前記無電解メッキ用硬化物層の厚みの上限は、特に限定はされないが、2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましい。
【0088】
3.金属層
本発明に係る配線基板が有する金属層は、金属を含有する導電性の層であり、通常、電子部品が配置されて所望の回路とするためのパターンを有する。
前記金属層は、前記無電解メッキ用硬化物層に隣接して位置することが好ましく、前記無電解メッキ用硬化物層上に無電解メッキを施すことにより析出した金属を含有することが好ましい。
また、前記金属層は、無電解メッキを行うことにより析出した金属を含有する無電解メッキ層と、当該無電解メッキ層上に、電解メッキを行うことにより析出した金属を含有する電解メッキ層とを有することが好ましい。前記無電解メッキ層は、前記無電解メッキ用硬化物層と隣接して位置することが好ましい。
【0089】
前記金属層が含有する金属としては、例えば、銅、錫、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウム、クロム、銀、亜鉛、アルミニウム、鉄、コバルト等が挙げられ、2種以上の金属を含む合金であってもよい。本発明においては、導電性に優れ、加工が容易な点から、前記金属層が含有する金属材料が、銅、銀及び金よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0090】
前記金属層の厚みは、用途に応じて、十分な導電性が得られるように適宜調整されればよく、特に限定はされないが、導電性の点から、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。前記金属層の厚みの上限は、特に限定はされないが、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
前記金属層が、前記無電解メッキ層と、前記電解メッキ層を有する場合は、前記無電解メッキ層の厚みは、特に限定はされないが、電解メッキの適性の点から、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.2μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。また、前記電解メッキ層の厚みは、導電性の点から、1μm以上20μm以下であることが好ましく、2μm以上15μm以下であることがより好ましい。
【0091】
また、本発明に係る配線基板は、前記無電解メッキ用硬化物層上に前記金属層を有することにより、前記無電解メッキ用硬化物層と前記金属層との界面の平滑性が高いため、微細配線が可能である。本発明に係る配線基板においては、前記金属層の配線パターンの幅を、0.1μm以上200μm以下とすることでき、より好ましい態様においては、0.3μm以上80μm以下とすることができる。また、前記金属層の配線パターン間の距離を、0.4μm以上300μm以下とすることでき、より好ましい態様においては、0.5μm以上250μm以下とすることができる。
【0092】
4.その他の構成
本発明に係る配線基板は、必要に応じ、従来公知の配線基板に含まれる構成を含有していても良く、例えば、接着層、放熱層、反射層、保護層等の他の層を更に有していてもよい。
また、本発明に係る配線基板は、さらに絶縁層と金属層とが繰り返し積層した構造を有する多層配線基板であってもよい。本発明に係る配線基板が多層配線基板である場合は、少なくとも1つの金属層が、前記無電解メッキ用硬化物層と隣接して位置していることが好ましい。前記多層配線基板において、絶縁層と金属層とが繰り返し積層した構造は、絶縁層として、前記無電解メッキ用硬化物層を用いてもよいし、絶縁樹脂層等の絶縁材料層上に前記無電解メッキ用硬化物層を有する多層構造の絶縁層を用いてもよい。また、前記多層配線基板は、異なる2層以上の金属層を接続するためにスルーホールを有していてもよく、更に、当該スルーホールの壁面に金属層を有していてもよい。
【0093】
V.配線基板の製造方法
本発明に係る配線基板の製造方法は、
前記本発明に係る無電解メッキ用組成物を準備する工程と、
基板上に前記無電解メッキ用組成物を塗布する工程と、
前記塗布後の前記無電解メッキ用組成物を加熱することにより無電解メッキ用硬化物層を形成する工程と、
前記無電解メッキ用硬化物層上に少なくとも無電解メッキを行うことにより金属層を形成する工程と、を有する。
【0094】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記本発明に係る無電解メッキ用組成物を準備する方法は、前記本発明に係る無電解メッキ用組成物で説明した通りである。
また、本発明に係る配線基板の製造方法において、基板上に前記無電解メッキ用組成物を塗布する工程は、前記本発明に係る無電解メッキ用硬化物の製造方法における、前記無電解メッキ用組成物を支持体上に塗布する工程と同様の方法により、前記本発明に係る配線基板に用いられる前記基板に、前記無電解メッキ用組成物を塗布する工程とすることができる。
前記塗布後の前記無電解メッキ用組成物を加熱することにより無電解メッキ用硬化物層を形成する工程における、前記加熱の方法は、前記本発明に係る無電解メッキ用硬化物の製造方法における、前記無電解メッキ用組成物を加熱する工程と同様とすることができる。
【0095】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記無電解メッキ用硬化物層上に少なくとも無電解メッキを行うことにより金属層を形成する方法としては、特に限定はされないが、例えば、前記無電解メッキ用硬化物層上に、無電解メッキを行うことにより無電解メッキ層を形成する工程と、前記無電解メッキ層上に、電解メッキを行うことにより電解メッキ層を形成する工程とを有し、前記無電解メッキ層と前記電解メッキ層とを有する金属層を形成する方法を挙げることができる。
【0096】
また、本発明に係る配線基板の製造方法は、前記無電解メッキ用硬化物層と前記金属層とをパターン状に形成するための工程を更に有する方法であってもよい。前記無電解メッキ用硬化物層と前記金属層とをパターン状に形成するためには、例えば、前記無電解メッキ用硬化物層上に前記金属層を形成する工程を、図2に示す方法により行う方法等が挙げられる。図2(a)~(g)は、本発明に係る配線基板の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、基板1上に無電解メッキ用硬化物層2を形成する。次に、図2(b)に示すように、前記無電解メッキ用硬化物層2上に、無電解メッキを行うことにより無電解メッキ層3aを形成する。次に、図2(c)に示すように、前記無電解メッキ層3a上にパターン状のレジスト層4を形成する。次に、図2(d)に示すように、前記レジスト層4が形成されていない領域の前記無電解メッキ層3a上に、電解メッキを行うことにより電解メッキ層3bを形成する。次に、図2(e)に示すように、前記レジスト層4を剥離する。次に、図2(f)に示すように、前記無電解メッキ層3aのうち、前記電解メッキ層3bが形成されていない領域の無電解メッキ層3aを除去する。次に、図2(g)に示すように、前記無電解メッキ用硬化物層2のうち、前記無電解メッキ層3aを除去した領域の無電解メッキ用硬化物層2を除去することにより、基板1上に、無電解メッキ用硬化物層2と、無電解メッキ層3a及び電解メッキ層3bを有する金属層3とをパターン状に配置した配線基板10’を得ることができる。
【0097】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記無電解メッキ用硬化物層上に無電解メッキを行うことにより無電解メッキ層を形成する方法としては、公知の無電解メッキの方法を用いることができ、特に限定はされないが、例えば、メッキされる金属イオンと、還元剤及び安定剤等の添加剤と、溶剤とを含有する無電解メッキ液に、前記無電解メッキ用硬化物層が表面に形成された基板を浸漬することにより行うことができる。
前記無電解メッキ液に用いられる金属塩としては、銅、金、銀等の金属の金属塩が好ましく、中でも、硫酸銅が好ましい。
また、前記無電解メッキ液への浸漬は、例えば、20~50℃程度の温度下で、5~30分程度行うことが好ましい。
また、前記無電解メッキ液に浸漬する前に、前記無電解メッキ用硬化物層の表面に、無電解メッキ触媒を付与してもよい。前記無電解メッキ触媒としては、例えば、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、銀、金等の金属が挙げられ、中でもパラジウムが好ましい。前記無電解メッキ用硬化物層の表面に前記無電解メッキ触媒を付与する方法としては、例えば、前記無電解メッキ触媒を1質量%以上50質量%以下程度含有する無電解メッキ触媒溶液に、前記無電解メッキ用硬化物層が表面に形成された基板を浸漬することにより行うことができる。前記無電解メッキ触媒溶液への浸漬は、10秒から24時間程度行うことが好ましい。
【0098】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記無電解メッキ層上にパターン状のレジスト層を形成する方法、前記レジスト層が形成されていない領域の前記無電解メッキ層上に、電解メッキを行うことにより電解メッキ層を形成する方法、前記レジスト層を剥離する方法、前記無電解メッキ層のうち、前記電解メッキ層が形成されていない領域の無電解メッキ層を除去する方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、国際公開第2007/123022号に記載されている方法を用いることができる。
【0099】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記無電解メッキ用硬化物層のうち、前記無電解メッキ層を除去した領域の無電解メッキ用硬化物層を除去する方法としては、特に限定はされないが、例えば、プラズマアッシング、アルカリ浸漬等が挙げられる。
【0100】
また、本発明に係る配線基板の製造方法は、必要に応じて、接着層、放熱層、反射層、保護層等の他の層を形成する工程等、上述した工程とは異なる工程を更に有していてもよい。
【実施例
【0101】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
なお、重量平均分子量はポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)により測定した。
【0102】
(合成例1:共重合体Aの合成)
メチルメタクリレート(MMA)50質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)20質量部、tert-ブチルメタクリレート(t-BMA)20質量部、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMMA)10質量部、パーブチルO(日油(株)製)2質量部、n-ドデシルメルカプタン(n-DM)10質量部の混合液を、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EMDG)を150質量部入れた重合槽中に、窒素気流下、90℃で1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃で4時間加熱し、共重合体A溶液(固形分45.5質量%)を得た。共重合体Aの重量平均分子量は3200、アミン価は12.5mgKOH/gだった。
【0103】
(比較合成例1:共重合体Bの合成)
MMA70質量部、HEMA20質量部、DMMA10質量部、パーブチルO2質量部、n-DM10質量部の混合液を、EMDGを150質量部入れた重合槽中に、窒素気流下、90℃で1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃で4時間加熱し、共重合体B溶液(固形分は45.5質量%)を得た。共重合体Bの重量平均分子量は3500、アミン価は12.2mgKOH/gだった。
【0104】
(比較合成例2:共重合体Cの合成)
MMA70質量部、t-BMA20質量部、DMMA10質量部、パーブチルO2質量部、n-DM10質量部の混合液を、EMDGを150質量部入れた重合槽中に、窒素気流下、90℃で1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃で4時間加熱し、共重合体C溶液(固形分は45.5質量%)を得た。共重合体Cの重量平均分子量は3500、アミン価は12.3mgKOH/gだった。
【0105】
(比較合成例3:共重合体Dの合成)
MMA60質量部、HEMA20質量部、t-BMA20質量部、パーブチルO2質量部、n-DM10質量部の混合液を、EMDGを150質量部入れた重合槽中に、窒素気流下、90℃で1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃で4時間加熱し、共重合体D溶液(固形分は45.5質量%)を得た。共重合体Dの重量平均分子量は3500、アミン価は0mgKOH/gだった。
【0106】
(比較合成例4:共重合体Eの合成)
MMA60質量部、HEMA20質量部、DMMA10質量部、メタクリル酸(MAA)10質量部、パーブチルO2質量部、n-DM10質量部の混合液を、EMDGを150質量部入れた重合槽中に、窒素気流下、90℃で1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃で4時間加熱し、共重合体E溶液(固形分は45.5質量%)を得た。共重合体Eの重量平均分子量は3500、アミン価は12.7mgKOH/gだった。
【0107】
(実施例1)
(1)無電解メッキ用組成物の調製
合成例1で得られた共重合体A溶液11.0質量部を、乳酸エチル5.0質量部、ジアセトンアルコール3.3質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)80.7質量部と混合して10分攪拌し、実施例1の無電解メッキ用組成物1を調製した。
【0108】
(2)無電解メッキ用硬化物の作製
表面が平坦なガラス基板(100mm×100mm)上に、前記(1)で得られた無電解メッキ用組成物1を、硬化膜の膜厚が0.5μmとなるような塗工量で、スピンコーターで塗布し、80℃で3分間プリベイクした後に、230℃で30分間焼成し、実施例1の無電解メッキ用硬化物(硬化物層)1を作製した。
【0109】
(実施例2)
実施例1の無電解メッキ用組成物の調製において、合成例1で得た共重合体A溶液の量を8.8質量部に変え、更に熱反応性化合物としてビスフェノールFジエポキシ(三菱ケミカル株式会社製、商品名jER 806)を1.0質量部加え、PGMEAの添加量を80.7質量部から80.2質量部に変更した以外は、実施例1の無電解メッキ用組成物の調製と同様にして、無電解メッキ用組成物2を得た。
また、実施例1の無電解メッキ用硬化物の作製において、無電解メッキ用組成物1に代えて、前記で得られた無電解メッキ用組成物2を用いた以外は、実施例1の無電解メッキ用硬化物の作製と同様にして、無電解メッキ用硬化物(硬化物層)2を得た。
【0110】
(実施例3~5)
実施例2において、ビスフェノールFジエポキシに代えて、表1に示す熱反応性化合物を用いた以外は、実施例2と同様にして、それぞれ無電解メッキ用組成物3~5及び無電解メッキ用硬化物(硬化物層)3~5を得た。
【0111】
(実施例6)
実施例3において、共重合体Aとベンゾオキサジン(四国化成社製、ベンゾオキサジンF-a型)の質量比が30:70となるように、共重合体A溶液の量を3.3質量部に、ベンゾオキサジンの量を3.5質量部に、PGMEAの添加量を80.7質量部から84.9質量部にそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様にして、無電解メッキ用組成物6及び無電解メッキ用硬化物(硬化物層)6を得た。
【0112】
(実施例7)
実施例3において、無電解メッキ用組成物の固形分濃度が18質量%となるように、共重合体A溶液の量を31.6質量部に、ベンゾオキサジンの量を3.6質量部に、溶剤の量を、乳酸エチル18.0質量部、ジアセトンアルコール12.0質量部、PGMEA34.8質量部に変更した以外は、実施例3と同様に、無電解メッキ用組成物7及び無電解メッキ用硬化物(硬化物層)7を得た。
【0113】
(比較例1)
実施例1において、共重合体A溶液に代えて、比較合成例1で得た共重合体B溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較組成物1及び比較硬化物1を得た。
【0114】
(比較例2)
実施例1において、共重合体A溶液に代えて、比較合成例2で得た共重合体C溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較組成物2及び比較硬化物2を得た。
【0115】
(比較例3)
実施例1において、共重合体A溶液に代えて、比較合成例3で得た共重合体D溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較組成物3及び比較硬化物3を得た。
【0116】
(比較例4)
実施例1において、共重合体A溶液に代えて、比較合成例4で得た共重合体E溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較組成物4及び比較硬化物4を得た。
【0117】
(金属パターンの形成)
各実施例で得られた、無電解メッキ用硬化物(硬化物層)をガラス基板上に積層した材料において、無電解メッキ用硬化物の表面に、後述する金属析出性評価と同様の方法により無電解メッキを行うことにより、無電解メッキ層を形成した。次いで、無電解メッキ層が形成された表面に、ドライフィルムレジストをラミネートしてパターン露光した後、1%NaCOで現像してレジストパターンを形成した。その後、硫酸銅を含有する電解メッキ浴を用いて、0.5mA/cmの電流量で10分間電解メッキを施した後、更に30mA/cmの電流量で電解メッキを施し、電解メッキ層を形成した。次いで、1%NaOHによりレジストを剥離し、その後エッチング液で処理し、レジストに覆われていた部分の無電解メッキ層を除去した。更に、レジストに覆われていた部分の導電性層を除去した部分にプラズマアッシング処理を施し、レジストに覆われていた部分の無電解メッキ用硬化物を除去することにより、無電解メッキ用硬化物層上に、無電解メッキ層と電解メッキ層とが積層された金属パターンを形成した。各実施例において、形成された金属パターンのパターン幅は10μmであり、配線パターン間の距離は50μm±2μmであった。
【0118】
[評価]
<粘度>
各実施例で得られた無電解メッキ用組成物及び各比較例で得られた比較組成物について、調製直後の粘度を、振動式粘度計を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0119】
<毛細管試験>
各実施例で得られた無電解メッキ用組成物及び各比較例で得られた比較組成物の液面に対し、内径0.29mm、長さ125mmのガラスキャピラリー(アズワン製、材質:DURAN(硼硅酸ガラス))を垂直に5mm浸漬したときに、毛細管現象によるガラスキャピラリー内の液面上昇の高さを測定し、下記評価基準により評価した。評価結果を表1に示す。
(毛細管試験評価基準)
A:液面上昇の高さが3cm超過
B:液面上昇の高さが2cm超過3cm以下
C:液面上昇の高さが2cm以下
なお、毛細管現象によるガラスキャピラリー内の液面上昇の高さが高いほど、濡れ性に優れる。
【0120】
<密着性評価>
各実施例で得られた無電解メッキ用硬化物及び各比較例で得られた比較硬化物について、JIS K 5600-5-6に準拠したクロスカット試験を行い、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後、硬化膜の剥がれの有無を観察し、下記評価基準により評価した。評価結果を表1に示す。
(密着性評価基準)
AA:どの格子の目も剥がれがない
A:カットの線に沿って硬化膜が剥がれている箇所はあるが、格子全体が剥がれている箇所はない
B:格子全体が剥がれている箇所があり、剥がれの専有面積が25%未満
C:格子全体が剥がれている箇所があり、剥がれの専有面積が25%以上
【0121】
<表面平滑性評価>
各実施例で得られた無電解メッキ用硬化物及び各比較例で得られた比較硬化物の表面を倍率50倍で顕微鏡観察し、部分的な隆起又は皺の有無を観察して、下記評価基準により表面の平滑性について評価した。評価結果を表1に示す。
(表面平滑性評価基準)
AA:部分的な隆起又は皺を有する領域を有さない
A:部分的な隆起又は皺を有する領域を有するが、当該領域は3%未満
B:部分的な隆起又は皺を有する領域が3%以上10%未満
C:部分的な隆起又は皺を有する領域が10%以上20%未満
D:部分的な隆起又は皺を有する領域が20%以上
また、図3に、実施例3で得られた無電解メッキ用硬化物3の表面の倍率50倍の顕微鏡写真を示し、図4に、比較例1で得られた比較硬化物1の表面の倍率50倍の顕微鏡写真を示す。
【0122】
さらに、各実施例で得られた無電解メッキ用硬化物の表面を、3次元光学プロファイラー(Canon製、光学計測機器Zygo)を用いて観察したところ、高さ0.1μm以上の凸部及び深さ0.1μm以上の凹部のいずれも確認されず、表面平滑性に優れていた。
【0123】
<金属析出性評価>
各実施例で得られた無電解メッキ用硬化物及び各比較例で得られた比較硬化物の表面を、NNPクリーナー(奥野製薬工業(株)製)を水で30g/Lの濃度に希釈した溶液に浸漬して、25℃で3分間脱脂処理を行った。脱脂処理後の硬化物の表面を水洗いし、40℃の硫酸(10ml/L)に5分間浸漬し、活性化を行った。活性化後の硬化物の表面を水洗いし、30℃の塩化パラジウム水溶液(Pdイオン濃度32ppm)に3分間浸漬することにより、硬化物の表面にパラジウム触媒を付与した。その後、硫酸銅を含有する無電解メッキ浴を用いて無電解メッキを施した。その後、無電解メッキを施した表面を目視により観察し、下記評価基準により評価した。評価結果を表1に示す。
(金属析出性評価基準)
A:銅が表面全体に均一に析出している
B:銅が析出していない箇所が表面全体の20%以下であり、実用可能なレベルである
C:銅が析出していない箇所が表面全体の20%超過であり、実用不可能なレベルである
【0124】
【表1】
【0125】
なお、表中の各略号は以下の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
t-BMA:tert-ブチルメタクリレート
DMMA:2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
ビスフェノールFジエポキシ:三菱ケミカル株式会社製、商品名 jER 806
ベンゾオキサジン:四国化成株式会社製、商品名 ベンゾオキサジンF-a型
エピスルフィド:四国化成株式会社製、商品名 TS-G
オキセタン:東亞合成株式会社製、商品名 OXT-221
【0126】
<保存安定性評価1>
各実施例で得られた無電解メッキ用組成物について、調製直後と、25℃で2週間保存した後の粘度を、振動式粘度計を用いて測定し、保存前後の粘度から粘度変化を求め、下記評価基準により評価した。
(保存安定性評価基準)
A:保存前後の粘度変化が0.3cP未満
B:保存前後の粘度変化が0.3cP以上0.6cP未満
C:保存前後の粘度変化が0.6cP以上1.2cP未満
D:保存前後の粘度変化が1.2cP以上
実施例1、3、5~7はAであり、実施例2、4はBであった。
【0127】
<保存安定性評価2>
実施例2で得られた無電解メッキ用組成物2と、実施例3で得られた無電解メッキ用組成物3について、5℃、25℃、40℃の温度下でそれぞれ3週間保存した場合における、調製直後、1週間保存後、3週間保存後の粘度を、振動式粘度計を用いて測定した。また、3週間保存した前後の粘度変化を求めた。測定結果を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
[結果のまとめ]
表1の結果から、アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位と、保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位とを有する共重合体と、溶剤とを含有する実施例1~7の無電解メッキ用組成物は、レベリング性に優れ、表面の平滑性に優れた硬化膜を形成することができた。また、実施例1~7の無電解メッキ用組成物を用いて形成した硬化膜は、基板との密着性に優れ、無電解メッキを行うことにより表面に金属を均一に析出させることができ、金属の析出性にも優れていた。また、実施例1~7の無電解メッキ用組成物は、毛細管試験による液面上昇の高さが高く、濡れ性にも優れていた。
また、実施例1と実施例2~5との対比から示されているように、実施例2~5では、熱反応性化合物を用いたため、無電解メッキ用硬化物の基板との密着性が向上していた。実施例2~4では、さらに、無電解メッキ用硬化物の表面平滑性も向上していた。また、実施例6及び実施例7により、共重合体と熱反応性化合物との質量比を変えても、無電解メッキ用組成物の固形分濃度を変えても、表面の平滑性に優れ、基板との密着性に優れ、無電解メッキによる金属の析出性に優れる硬化膜を形成することができることが示された。なお、実施例2~4が、実施例5及び6よりも表面平滑性が向上していたのは、より適度に架橋構造が形成されたことにより、加熱による不均一な収縮がより抑制されたためと推定される。実施例2~4は、熱反応性化合物として、1分子中に熱反応性基を2個以上有する多官能型の熱反応性化合物を用いたため、1官能型オキセタンを用いた実施例5よりも硬化膜中に架橋構造が多く形成されたと推定され、熱反応性化合物の質量比から、実施例6よりも硬化膜中に架橋構造が少なく形成されたと推定される。また、実施例2~4が実施例7よりも表面平滑性が向上していたのは、実施例2~4は無電解メッキ用組成物の濡れ性が優れていたことにより、基板への塗布性に優れ、塗膜の表面平滑性が向上したため、硬化後の表面平滑性も向上したと考えられる。
一方、比較例1~4では、使用した共重合体が、アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位、及び保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位の少なくとも1つを有していなかったため、得られた硬化膜の表面平滑性が劣っていた。比較例1では、使用した共重合体Bが、保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位を有していなかったため、さらに、硬化膜と基板との密着性も劣っていた。比較例2では、使用した共重合体Cが、水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位を有していなかったため、さらに、組成物の濡れ性も劣っており、硬化膜と基板との密着性も劣っていた。比較例3では、使用した共重合体Dが、アミノ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位を有していなかったため、さらに、組成物の濡れ性も劣っており、得られた硬化膜は、無電解メッキによる金属の析出性が大きく劣っていた。比較例4では、使用した共重合体Eが、保護されたカルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位を有しておらず、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート系単量体単位(MAA)を有していたため、さらに、硬化膜と基板との密着性が劣っていた。
【0130】
また、表2の結果から、ベンゾオキサジン基を有する熱反応性化合物を用いた実施例3の無電解メッキ用組成物3は、エポキシ基を有する熱反応性化合物を用いた実施例2の無電解メッキ用組成物2に比べ、4℃、25℃、40℃のいずれの温度下においても、保存安定性が優れていることが示された。
【符号の説明】
【0131】
1 基板
2 無電解メッキ用硬化物層
3 金属層
3a 無電解メッキ層
3b 電解メッキ層
4 レジスト層
10、10’ 配線基板
図1
図2
図3
図4