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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】健康状態検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20220912BHJP
   A61B 5/1171 20160101ALI20220912BHJP
   A61B 5/1172 20160101ALI20220912BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220912BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220912BHJP
   G01N 33/493 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
G01N21/17 Z
A61B5/1171 100
A61B5/1172
A61B5/00 102A
G01N33/50 N
G01N33/493 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018142559
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020020598
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛西 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126375(JP,A)
【文献】特開2016-004005(JP,A)
【文献】特開2007-252805(JP,A)
【文献】特開2001-101309(JP,A)
【文献】特開平07-102610(JP,A)
【文献】特開2000-126137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/61
A61B 5/00
A61B 5/117 - 5/1178
G01N 33/48 - 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器内に排泄された被検者の排泄物に対して赤外線を照射するための第1光源と、
前記便器の内側に配置され、前記第1光源から照射された赤外線を受光する複数の第1赤外線センサと、
前記複数の第1赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される検査データに基づいて、前記被検者の健康状態を検査する検査手段と、
前記便器に取り付けられている便座に着座した前記被検者の臀部に対して赤外線を照射するための第2光源と、
前記便座の座面に配置され、前記第2光源から照射された赤外線を受光する複数の第2赤外線センサと、
前記複数の第2赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される前記被検者の静脈パターンに基づいて、前記被検者を認証し、当該被検者を識別するための識別情報を取得する認証手段と、
前記検査手段による検査結果及び前記取得された識別情報を出力する出力手段と
を具備する健康状態検査システム。
【請求項2】
前記複数の第1赤外線センサは、シート状に形成され、前記便器の内側の面に沿うように配置されている請求項1記載の健康状態検査システム。
【請求項3】
前記検査手段は、他の被検者の排泄物に対して照射された赤外線の強度に応じて取得される検査データと当該他の被検者の健康状態とを含む学習データに基づいて作成された検査モデルを用いて前記被検者の健康状態を検査する請求項1記載の健康状態検査システム。
【請求項4】
前記排泄物は、便を含み、
前記検査手段による検査結果は、前記便中の潜血の有無を含む
請求項3記載の健康状態検査システム。
【請求項5】
前記複数の第1赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される検査データ及び前記検査手段による検査結果を含む学習データに基づいて前記検査モデルを更新する学習手段を更に具備する請求項3記載の健康状態検査システム。
【請求項6】
格納手段、分類手段、取得手段及び学習手段を更に具備し、
前記格納手段は、前記被検者を含む複数の被検者の各々を識別するための識別情報に対応づけて当該被検者の排泄物に対して照射された赤外線の強度に応じて取得される検査データを格納し、
前記分類手段は、前記格納手段に格納されている検査データを分類し、
前記取得手段は、前記分類された検査データに対応づけて前記格納手段に格納されている識別情報によって識別される被検者の健康状態に関する被検者データを取得し、
前記学習手段は、前記分類された検査データ及び前記取得された被検者データを含む学習データに基づいて前記被検者の健康状態を推定するための推定モデルを作成する
請求項記載の健康状態検査システム。
【請求項7】
便器内に排泄された被検者の排泄物を当該便器から外部に排出するための配管の内部に配置され、当該配管を通過する当該排泄物に対して赤外線を照射するための光源と、
前記配管の内部に配置され、前記光源から照射された赤外線を受光する複数の赤外線センサと、
前記複数の赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される検査データに基づいて、前記被検者の健康状態を検査する検査手段と、
前記便器に取り付けられている便座に着座した前記被検者の臀部に対して赤外線を照射するための第2光源と、
前記便座の座面に配置され、前記第2光源から照射された赤外線を受光する複数の第2赤外線センサと、
前記複数の第2赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される前記被検者の静脈パターンに基づいて、前記被検者を認証し、当該被検者を識別するための識別情報を取得する認証手段と、
前記検査手段による検査結果及び前記取得された識別情報を出力する出力手段と
を具備する健康状態検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、健康状態検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、被検者から排泄される排泄物(例えば、便)を採取して当該被検者の健康状態を検査することが行われている。このような検査によれば、例えば便中の潜血の有無を調べることによって大腸がん等を発見することができる。
【0003】
しかしながら、上記した検査をする場合、被検者は排泄物を自ら採取する必要があり、手間がかかる。よって、被検者の健康状態を容易に検査する仕組みが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-108327号公報
【文献】特表2018-510334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、被検者の健康状態を容易に検査することが可能な健康状態検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る健康状態検査システムは、第1光源と、複数の第1赤外線センサと、検査手段と、第2光源と、複数の第2赤外線センサと、認証手段と、出力手段とを具備する。前記第1光源は、便器内に排泄された被検者の排泄物に対して赤外線を照射する。前記複数の第1赤外線センサは、前記便器の内側に配置され、前記第1光源から照射された赤外線を受光する。前記検査手段は、前記複数の第1赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じた検査データに基づいて、前記被検者の健康状態を検査する。前記第2光源は、前記便器に取り付けられている便座に着座した前記被検者の臀部に対して赤外線を照射する。前記複数の第2赤外線センサは、前記便座の座面に配置され、前記第2光源から照射された赤外線を受光する。前記認証手段は、前記複数の第2赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される前記被検者の静脈パターンに基づいて、前記被検者を認証し、当該被検者を識別するための識別情報を取得する。前記出力手段は、前記検査手段による検査結果及び前記取得された識別情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る健康状態検査システムのネットワーク構成の一例を示す図。
図2】検出装置のシステム構成の一例を示す図。
図3】シート状に形成された赤外線センサユニットの配置例について説明するための図。
図4】認証装置のシステム構成の一例を示す図。
図5】サーバ装置のシステム構成の一例を示す図。
図6】健康状態検査システムの機能構成の一例を示すブロック図。
図7】健康状態検査システムの処理手順の一例を示すシーケンスチャート。
図8】指紋に基づいて被検者を認証する場合の認証装置のシステム構成の一例を示す図。
図9】第2実施形態に係る健康状態検査システムの機能構成の一例を示すブロック図。
図10】格納部に格納された検査結果を利用して新たな学習済みモデルを作成する場合のサーバ装置の処理手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る健康状態検査システムのネットワーク構成の一例を示す。本実施形態に係る健康状態検査システムは、例えば被検者(対象者)によって排泄される排泄物を利用して当該被検者の健康状態を検査するために用いられる。
【0009】
図1に示すように、健康状態検査システムは、検出装置10、認証装置20及びサーバ装置(健康状態検査装置)30を備える。
【0010】
検出装置10は、例えばトイレ等の空間に設置された便器に組み込まれ、当該便器内に排泄された被検者の排泄物に基づき被検者の健康状態を検査するための検査データを検出するために用いられる。
【0011】
認証装置20は、検出装置10と接続され、被検者を認証するために用いられる。認証装置20においては、被検者を認証する処理が実行され、当該被検者を識別するための識別情報(以下、被検者IDと表記)が取得される。
【0012】
なお、図1においては検出装置10及び認証装置20が1つずつ示されているが、健康状態検査システムは、当該健康状態検査システムを利用する被検者の数に応じて複数の検出装置10及び認証装置20を備える構成であってもよい。
【0013】
検出装置10によって取得された検査データ及び認証装置20によって取得された被検者IDは、例えばインターネットのようなネットワーク40を介して認証装置20からサーバ装置30に送信される。
【0014】
サーバ装置30は、認証装置20から送信された検査データ及び被検者IDを受信する。サーバ装置30は、受信された検査データに基づいて、被検者IDによって識別される被検者の健康状態を検査する。
【0015】
なお、図1においては検出装置10によって取得された検査データが認証装置20からサーバ装置30に送信されるものとして説明したが、検出装置10がネットワーク40と接続されることによって、当該検査データは、検出装置10からサーバ装置30に送信されてもよい。同様に、認証装置20によって取得された被検者IDは、検出装置10からサーバ装置30に送信されてもよい。
【0016】
また、本実施形態においては、便宜的に検出装置10及び認証装置20が別個の装置であるものとして説明するが、検出装置10及び認証装置20は一体として構成されていてもよい。
【0017】
図2は、図1に示す検出装置10のシステム構成の一例を示す。図2に示すように、検出装置10は、MCU(Micro Control Unit)11、光源(第1光源)12、赤外線センサユニット13、通信デバイス14及び電源15等を備える。
【0018】
MCU11は、検出装置10内の各コンポーネントの動作を制御する組み込み用のマイクロプロセッサである。MCU11は、検出装置10内に格納されているファームウェア(F/W)等のソフトウェア(プログラム)を実行する。また、MCU11は、内部に検出装置10(または当該検出装置10が組み込まれている便器)を識別するための識別情報(以下、検出装置IDと表記)を保持している。
【0019】
光源12は、便器内に排泄された被検者の排泄物に対して赤外線(赤外光)を照射可能な位置に設けられている。光源12は、例えば便器の内面に配置されていてもよいし、当該便器に取り付けられている便座の裏面(座面に対して裏側の面)に配置されていてもよい。
【0020】
赤外線センサユニット13は、光源12から照射された赤外線を受光する複数の赤外線センサ(第1赤外線センサ)を含む。赤外線センサユニット13(複数の赤外線センサ)は、シート状に形成され、図3に示すように便器の内側の面に沿うように配置される(貼り付けられる)。なお、このような赤外線センサユニット13(赤外線シートセンサ)によれば、光源12によって照射された赤外線であって、便器内の排泄物を透過した赤外線(透過光)または当該排泄物で反射された赤外線(反射光)を受光することができる。
【0021】
通信デバイス14は、外部装置と例えば有線または無線による通信を実行するように構成されたデバイスである。
【0022】
電源15は、検出装置10に電力を供給する。検出装置10内の各コンポーネントは、電源15から供給される電力によって動作することができる。
【0023】
図4は、上記した認証装置20のシステム構成の一例を示す。本実施形態における認証装置20においては、例えば被検者の臀部の静脈パターンに基づいて当該被検者を認証する静脈認証が行われるものとして説明する。
【0024】
図4に示すように、認証装置20は、MCU21、光源22、赤外線センサユニット23、通信デバイス24及び電源25等を備える。
【0025】
MCU21は、認証装置20内の各コンポーネントの動作を制御する組み込み用のマイクロプロセッサである。MCU21は、認証装置20内に格納されているファームウェア(F/W)等のソフトウェア(プログラム)を実行する。
【0026】
光源22は、便器に取り付けられている便座に着座した被検者の臀部に対して赤外線を照射可能な位置に設けられている。光源22は、例えば便座の座面に配置される。
【0027】
赤外線センサユニット23は、光源22から照射された赤外線を受光する複数の赤外線センサ(第2赤外線センサ)を含む。赤外線センサユニット23は、シート状に形成され、例えば光源22とともに便座の座面に配置される。赤外線センサユニット23(赤外線シートセンサ)は、光源22によって照射された赤外線であって、被検者の臀部で反射された赤外線(反射光)を受光する。
【0028】
通信デバイス24は、外部装置と例えば有線または無線による通信を実行するように構成されたデバイスである。
【0029】
電源25は、認証装置20に電力を供給する。認証装置20内の各コンポーネントは、電源25から供給される電力によって動作することができる。
【0030】
なお、図2及び図4においては検出装置10及び認証装置20の各々にMCU、通信デバイス及び電源が備えられるものとして説明したが、本実施形態において検出装置10及び認証装置20は例えば同一のトイレ内に配置される場合を想定しているため、当該MCU、通信デバイス及び電源は、検出装置10及び認証装置20に共通に設けられる構成とすることも可能である。
【0031】
図5は、上記したサーバ装置30のシステム構成の一例を示す。図5に示すように、サーバ装置30は、CPU31、不揮発性メモリ32、主メモリ33及び通信デバイス34等を備える。
【0032】
CPU31は、サーバ装置30内の各コンポーネントの動作を制御するハードウェアプロセッサである。CPU31は、ストレージデバイスである不揮発性メモリ32から主メモリ33にロードされる様々なプログラムを実行する。CPU31によって実行されるプログラムには、オペレーティングシステム(OS)及び被検者の健康状態を検査するためのプログラム等が含まれる。また、CPU31は、例えばハードウェア制御のためのプログラムである基本入出力システム(BIOS)等も実行する。
【0033】
通信デバイス34は、外部装置と例えば有線または無線による通信を実行するように構成されたデバイスである。
【0034】
なお、図5においては、CPU31、不揮発性メモリ32、主メモリ33及び通信デバイス34のみが示されているが、サーバ装置30は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)のような他の記憶装置を備えていてもよいし、入力装置及び出力装置等を備えていてもよい。
【0035】
図6は、本実施形態に係る健康状態検査システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【0036】
図6に示すように、検出装置10は、光源駆動部101、検査データ取得部102及び送信部103を含む。本実施形態において、検出装置10に含まれる各部101~103の一部または全ては、上記したMCU11にプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアによって実現されてもよいし、ハードウェアによって実現されてもよいし、当該ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
【0037】
光源駆動部101は、健康状態検査システムにおいて被検者の健康状態を検査する際に、検出装置10に備えられている光源12を駆動する。光源駆動部101によって光源12が駆動されることによって、便器内の排泄物に対して当該光源12から赤外線が照射される。
【0038】
検査データ取得部102は、上記したように排泄物に対して赤外線が照射された際に、検出装置10に備えられている赤外線センサユニット13によって受光された赤外線の強度に応じた検査データを取得する。検査データ取得部102によって取得される検査データは、例えば赤外線センサユニット13に含まれる複数の赤外線センサの各々によって受光された赤外線の強度の分布を表す。
【0039】
ここで、排泄物や血液成分(血液中のヘモグロビン)の赤外線の吸収率は便器内の他の物体(物質)とは異なり、当該排泄物や血液成分からの光(反射光または透過光)に含まれる赤外成分には差異が生じている。このため、排泄物を含む領域に対して赤外線を照射した際に複数の赤外線センサの各々によって受光される赤外線の強度の分布によれば、当該排泄物の形状及び当該排泄物に混入している血液成分を表す画像(イメージ)に相当する検査データを得ることができる。
【0040】
なお、赤外線センサユニット13に含まれる複数の赤外線センサは当該赤外線センサによって受光された赤外線の強度を表す信号を得ることができるが、検査データは、当該信号が例えばアナログフロントエンド回路(A/Dコンバータ)等を介して処理されることによって取得される。
【0041】
送信部103は、通信デバイス14を介して、検査データ取得部102によって取得された検査データを認証装置20に送信する。
【0042】
図6に示すように、認証装置20は、光源駆動部201、静脈パターン取得部202、認証処理部203及び送信部204を含む。本実施形態において、認証装置20に含まれる各部201~204の一部または全ては、上記したMCU21にプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアによって実現されてもよいし、ハードウェアによって実現されてもよいし、当該ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
【0043】
光源駆動部201は、被検者が便座に着座した際に、認証装置20に備えられている光源22を駆動する。光源駆動部201によって光源22が駆動されることによって、便座に着座した被検者の臀部に対して当該光源22から赤外線が照射される。
【0044】
静脈パターン取得部202は、上記したように被検者の臀部に対して赤外線が照射された際に、認証装置20に備えられている赤外線センサユニット23によって受光された赤外線の強度に応じた被検者の臀部における静脈パターンを取得する(読み取る)。静脈パターン取得部202によって取得される静脈パターンは、例えば赤外線センサユニット23に含まれる複数の赤外線センサの各々によって受光された赤外線の強度の分布を表す。
【0045】
ここで、上記したように血液成分の赤外線の吸収率は他の生体構成物質よりも高いため、被検者の臀部に対して赤外線を照射した際に複数の赤外線センサの各々によって受光される赤外線の強度の分布によれば、当該臀部において血液成分が流れる静脈の位置を表す静脈パターンを取得することができる。
【0046】
なお、赤外線センサユニット23に含まれる複数の赤外線センサは当該赤外線センサによって受光された赤外線の強度を表す信号を得ることができるが、静脈パターンは、当該信号が例えばアナログフロントエンド回路(A/Dコンバータ)等を介して処理されることによって取得される。
【0047】
認証処理部203は、静脈パターン取得部202によって取得された静脈パターンに基づいて認証処理を実行する。この認証処理によれば、静脈パターン取得部202によって取得された静脈パターンに対応する被検者を識別するための被検者IDが取得される。
【0048】
送信部204は、通信デバイス24を介して、認証処理部203によって取得された被検者ID及び検出装置10(送信部103)から送信された検査データをサーバ装置30に送信する。
【0049】
図6に示すように、サーバ装置30は、受信部301、格納部302、検査処理部303及び出力部304を含む。本実施形態において、サーバ装置30に含まれる各部301、303及び304の一部または全ては、上記したCPU31にプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアによって実現されてもよいし、ハードウェアによって実現されてもよいし、当該ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。また、格納部302は、例えばサーバ装置30に備えられている不揮発性メモリ32またはその他の記憶装置によって実現される。
【0050】
受信部301は、通信デバイス34を介して、認証装置20(送信部204)から送信された被検者ID及び検査データを受信する。
【0051】
ここで、格納部302には、被検者の健康状態を検査する際に用いられる検査モデルが予め格納されているものとする。この検査モデルは、他の被検者(例えば、健康な被検者及び健康でない被検者を含む複数の被検者)の排泄物に対して照射された赤外線の強度に応じた検査データ(つまり、他の被検者の検査データ)と当該他の被検者の健康状態とを含む学習データを学習することによって作成された学習済みモデルに相当する。換言すれば、検査モデルは、検査データと健康状態との関連性を規定したアルゴリズムを含み、検査データを入力することによって当該検査データに対応する健康状態を出力することができるものである。
【0052】
なお、検査モデルは、例えば多数の学習データを取得してサーバ装置30内で作成されたものであってもよいが、外部装置で作成されたものであってもよい。
【0053】
検査処理部303は、格納部302に格納されている検査モデルを用いて被検者の健康状態を検査する。具体的には、検査処理部303は、受信部301によって受信された検査データを検査モデルに入力することによって当該検査モデルから出力される当該検査データに対応する健康状態(つまり、被検者の健康状態)を検査結果として取得する。
【0054】
なお、検査処理部303によって検査される被検者の健康状態には、例えば当該被検者の排泄物中の血液成分(つまり、便中の潜血)の有無等が含まれる。
【0055】
検査処理部303によって取得された被検者の健康状態(つまり、検査処理部303による検査結果)は、出力部304によって例えば外部装置に出力される。なお、検査処理部303による検査結果は、上記した被検者ID及び検査データとともに格納部302にも格納される。
【0056】
以下、図7のシーケンスチャートを参照して、本実施形態に係る健康状態検査システムの処理手順の一例について説明する。なお、図7に示す処理は、被検者がトイレを利用する度に実行されてもよいし、予め定められた期間毎に(例えば、1日に1回)実行されてもよい。
【0057】
まず、便等の排泄物を排泄するために、被検者がトイレ内に設置されている便器の便座に着座した場合を想定する。
【0058】
この場合、認証装置20においては被検者を認証するための認証処理が実行される。この認証処理においては、便座に着座した被検者の臀部に対して赤外線を照射する光源22が光源駆動部201によって駆動されることによって、赤外線センサユニット23において受光された赤外線の強度に応じた被検者の静脈パターン(静脈データ)が取得される。
【0059】
ここで、認証処理部203(または認証装置20)内には、例えば健康状態検査システムを利用する被検者毎の静脈パターンが予め登録されており、当該静脈パターンに対応づけて当該被検者を識別するための被検者IDが保持されているものとする。
【0060】
これによれば、認証処理部203は、取得された静脈パターンに合致する静脈パターンに対応づけて保持されている被検者IDを取得することができる(ステップS1)。
【0061】
ここでは認証処理部203内に被検者IDが保持されているものとして説明したが、当該被検者IDは、例えばサーバ装置30または他の外部装置において管理されており、当該サーバ装置30または他の外部装置から取得される構成としてもよい。
【0062】
次に、便座に着座した被検者によって排泄物が排泄されると、検出装置10において検査データが取得される(ステップS2)。
【0063】
ステップS2においては、便器内に排泄された排泄物に対して赤外線を照射する光源12が光源駆動部101によって駆動されることによって、赤外線センサユニット13において受光された赤外線の強度に応じた検査データが取得される。なお、ステップS2において取得される検査データは、上記したように被検者の排泄物の形状及び当該排泄物中の血液成分等を表す画像に相当するデータである。
【0064】
ステップS2の処理が実行されると、当該ステップS2において取得された検査データ(被検者の検査データ)は、検出装置10(送信部103)から認証装置20に送信される(ステップS3)。
【0065】
認証装置20(送信部204)は、ステップS1において取得された被検者ID及びステップS3において送信された検査データ(ステップS2において取得された検査データ)をサーバ装置30に送信する(ステップS4)。
【0066】
なお、ここでは図1に示すように認証装置20がネットワーク40を介してサーバ装置30と通信可能に接続されているものとして説明したが、例えば検出装置10がネットワーク40を介してサーバ装置30と通信可能に接続されている場合には、被検者ID及び検査データは、検出装置10からサーバ装置30に送信されても構わない。
【0067】
ステップS4の処理が実行されると、当該ステップS4において送信された被検者ID及び検査データがサーバ装置30に含まれる受信部301によって受信される。
【0068】
次に、検査処理部303は、受信部301によって受信された検査データに基づいて被検者の健康状態を検査する(ステップS5)。ステップS5において、検査処理部303は、格納部302に格納されている検査モデルに対して検査データを入力することによって当該検査モデルから出力される健康状態を被検者の健康状態として取得する。なお、本実施形態において、検査処理部303によって取得される被検者の健康状態には、例えば排泄物(例えば、便)中の潜血の有無等が含まれる。
【0069】
ステップS5の処理が実行されると、検査処理部303による検査結果(検査処理部303によって取得された被検者の健康状態)は、受信部301によって受信された被検者ID及び検査データに対応づけて格納部302に格納される(ステップS6)。なお、ここでは被検者ID、検査データ及び検査結果が格納部302に格納されるものとして説明したが、当該被検者ID、検査データ及び検査結果以外に、例えば当該被検者ID及び検査データが受信された日時(つまり、検査日時)等が格納部302に格納されてもよい。
【0070】
更に、上記したように検出装置10に備えられるMCU11内に保持されている検出装置IDが格納部302に格納されてもよい。この場合には、ステップS3において検出装置IDが検査データとともに検出装置10から認証装置20に送信され、ステップS4において被検者ID、検査データ及び検出装置IDが認証装置20からサーバ装置30に送信されればよい。
【0071】
次に、出力部304は、格納部302に格納された被検者ID及び検査結果等を出力する(ステップS7)。
【0072】
なお、ステップS7において、被検者ID及び検査結果は、例えば健康状態検査システムの管理者が閲覧するディスプレイ等に出力されて表示されてもよい。
【0073】
また、被検者ID及び検査結果は、例えば認証装置20に出力(送信)されてもよい。この場合、被検者ID及び検査結果は、例えば認証装置20に接続されたディスプレイ(トイレに配置されているディスプレイ)に出力されて表示されてもよい。
【0074】
ここでは、被検者ID及び検査結果が出力されるものとして主に説明したが、上記したように格納部302に検査日時及び検出装置IDが格納されている場合には、被検者ID及び検査結果とともに当該検査日時及び検出装置IDが出力されても構わない。
【0075】
また、図7においてはステップS1~S7の処理が一連の処理として実行されるものとして説明したが、例えばステップS4において認証装置20から送信された被検者ID及び検査データを格納部302に蓄積しておき、被検者の健康状態を検査する処理等は後で実行されるようにしてもよい。すなわち、図7に示すステップS1~S4の処理とステップS5~S7の処理とは独立して実行される構成であってもよい。
【0076】
なお、図7の説明では省略したが、例えばトイレには人感センサが設けられている場合がある。この人感センサによれば、人物(被検者)がトイレに入室したことを検知することができる。また、便器に取り付けられている便座には着座センサが設けられている場合がある。この着座センサによれば、便座にかかる荷重等に応じて人物(被検者)が便座に着座したことを検知することができる。
【0077】
本実施形態に係る健康状態検査システムは、このような人感センサ及び着座センサと連動(連携)するように構成されていてもよい。
【0078】
この場合、健康状態検査システムは、例えばトイレに被検者が入室したことが人感センサによって検出された場合に起動され、検出装置10の電源がONされるようにすることができる。
【0079】
また、着座センサによって被検者が便座に着座したことが検知された場合に、例えば認証装置20の電源がONされるようにすることができる。
【0080】
上記したように健康状態検査システムを人感センサ及び着座センサと連動させることによって、当該健康状態検査システムにおける消費電力を低減することができる。
【0081】
上記したように本実施形態においては、便器内に排泄された被検者の排泄物に対して赤外線が照射されることによって、便器の内側に配置された赤外線センサユニット13(複数の第1赤外線センサ)で受光された赤外線の強度に応じた検査データが取得され、当該検査データに基づいて被検者の健康状態が検査される。本実施形態においては、このような構成により、被検者の健康状態を容易に検査することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態において、赤外線センサユニット13は、シート状に形成され、便器の内側の面に沿うように配置されている(貼り付けられている)。このような構成によれば、排泄物に対する検査がされていることを被検者に意識させることなく正確な検査データを取得(検出)することが可能となる。
【0083】
なお、検出装置10において検査データを取得する際には被検者が便座に着座しているため、便器内の光量が不足する場合がある。このため、検査データを取得する際には、赤外線センサユニット13において赤外線を受光する時間(つまり、露光時間)を長くすることが好ましい。
【0084】
また、本実施形態においては検出装置10が備える赤外線センサユニット13がシート状に形成されて便器の内側の面に貼り付けられるものとして説明したが、当該赤外線センサユニット13に含まれる複数の赤外線センサは、便器内の排泄物に対して照射された赤外線を受光することが可能であれば、例えば便器の内面に埋め込まれるように構成されていてもよいし、その他の位置に配置されていてもよい。
【0085】
また、本実施形態においては、他の被検者の検査データ(他の被検者の排泄物に対して照射された赤外線の強度に応じた検査データ)と当該他の被検者の健康状態とを含む学習データに基づいて作成された検査モデルを用いて被検者の健康状態を検査するため、精度の高い検査結果を得ることができる。また、本実施形態においては、例えば便中の潜血の有無を検査することが可能であるため、大腸がん等の発見に有用である。
【0086】
なお、本実施形態に係る健康状態検査システムにおいて検査される被検者の健康状態は便(排泄物)中の潜血の有無に限られない。具体的には、被検者の健康状態として、例えば便が軟便であるか否か(つまり、便が固いか緩いか)等が検査されてもよい。この場合には、例えばサーバ装置30に含まれる格納部302に被検者の検査データから便が軟便であるか否か(液状であるか固形状であるか)を出力することが可能な検査モデルを予め用意しておき、当該検査モデルを用いることによって、被検者の便が軟便であるか否かを検査することが可能となる。
【0087】
また、便が便器内に排泄された状態(つまり、便器内に留まっている)で得られる検査データからは当該便が軟便であるか否かを正確に判別することが困難である場合があるため、このような場合には、被検者によって排泄された便が便器に着水するまでの間(つまり、落下している間)に、例えば15Hz以上の動画相当のサンプリング周期で検査データを取得するようにしてもよい。このような検査データによれば、比較的正確に便が軟便であるか否かを検査することが可能となる。
【0088】
ここでは、被検者の便が軟便であるか否かを検査する場合について説明したが、例えば検査データに基づいて被検者の便の量等について検査するようなことも可能である。
【0089】
また、本実施形態においては、被検者を認証し、当該被検者を識別するための被検者ID(識別情報)を取得する認証装置20を備え、当該認証装置20によって取得された被検者ID及び検査結果が出力される。なお、本実施形態において、被検者ID及び検査結果は、例えば健康状態検査システムを管理する管理者が使用する管理者端末に出力されることによって当該管理者に提示される。これによれば、管理者は、被検者IDによって識別される被検者の健康状態(検査結果)を確認することができる。また、本実施形態において、被検者ID及び検査結果は、例えばトイレ内に設けられたディスプレイ等に出力されることによって当該被検者に提示(通知)されてもよい。これによれば、被検者は、当該被検者の健康状態(検査結果)を確認することができる。なお、被検者ID及び検査結果は、例えば音声やランプ等で被検者に通知されてもよい。
【0090】
更に、被検者ID及び検査結果は、例えば保険会社等が運用する外部のシステムに出力されてもよい。これによれば、被検者IDによって識別される被検者の保険料の算出等の際に検査結果を考慮するようなことが可能となる。なお、本実施形態における被検者ID及び検査結果は、他のサービス(システム)において利用されても構わない。また、被検者ID及び検査結果は、検査データとともに格納部302に蓄積され、各種分析等に利用することも可能である。
【0091】
また、上記した認証装置20による認証処理に関して、当該認証装置20は便器に取り付けられている便座に着座した被検者の臀部に対して赤外線を照射するための光源22(第2光源)、及び便座の座面に配置され、当該光源22から照射された赤外線を受光する赤外線センサユニット23(複数の第2赤外線センサ)を備え、当該赤外線センサユニット23によって受光された赤外線の強度に応じた被検者の静脈パターンに基づいて当該被検者を識別するための被検者IDを取得することができる。
【0092】
本実施形態においては、このような構成により、排泄物を排泄する(つまり、トイレを利用する)際の被検者の通常の動作に応じて当該被検者を識別(認証)することが可能となる。
【0093】
なお、本実施形態においては認証装置20が臀部の静脈パターンに基づいて被検者を認証するものとして説明したが、認証装置20は、指紋に基づいて被検者を認証するように構成されていてもよい。この場合における認証装置20は、図8に示すように、被検者の指紋を表す指紋データを取得する指紋センサ26を備えていればよい。
【0094】
ここで、便器内に排泄された排泄物を外部に排出するためには、被検者は、所定のボタン(例えば、「流す」ボタン等)を含む操作部を操作するものとする。この場合、認証装置20に備えられる指紋センサ26は、排泄物を外部に排出する際に操作されるボタン等を覆う位置(つまり、被検者が操作部を操作する際に当該被検者の指が接触する位置)に設けられるものとする。
【0095】
これによれば、指紋センサ26は被検者が操作部を操作する際に当該被検者の指紋を表す指紋データを取得することができ、認証装置20に含まれる認証処理部203は、このように取得された指紋データに対応する被検者を識別するための被検者IDを取得することができる。
【0096】
これによれば、上記したように認証装置20が指紋に基づいて被検者を認識する場合であっても、排泄物を排泄する(つまり、トイレを利用する)際の被検者の通常の動作に応じて当該被検者を識別(認証)することが可能となる。
【0097】
なお、上記したように認証装置20によって被検者が認証されて当該被検者を識別するための被検者IDが取得される場合には、例えばウォシュレット(登録商標)等のトイレ(便器)に関する設定を、当該被検者IDによって識別される被検者に応じて自動的に変更するような構成とすることも可能である。
【0098】
また、本実施形態においては検出装置10が便器に組み込まれるものとして説明したが、当該検出装置10は例えば便器内に排泄された被検者の排泄物を当該便器から外部に排出するための配管(下水配管)に取り付けられる構成であってもよい。この場合、検出装置10に含まれる光源12及び赤外線センサユニット13は例えば配管の内部に配置されればよい。このような構成によれば、配管を通過する排泄物に対して光源12から赤外線を照射し、当該赤外線(透過光または反射光)を赤外線センサユニット13で受光することによって、検査データを取得することができる。
【0099】
なお、検出装置10が配管に取り付けられた場合には、検出装置10が便器に組み込まれる(赤外線センサユニット13が便器の内側に配置される)構成と比較して、検査データに対する外光ノイズの影響を低減することができる。また、検出装置10が配管に取り付けられた場合には、配管を通過する際の排泄物の形状等を含む検査データ(画像)を取得することができるため、上記したように便が軟便であるか否か等を比較的正確に検査することが可能となる。
【0100】
なお、本実施形態に係る健康状態検査システムは、複数の検出装置10を備える構成であっても構わない。この場合、例えば便器に第1検出装置10が組み込まれ、配管に第2検出装置10が取り付けられる構成であってもよい。このように複数の検出装置10を備える構成によれば、より精度の高い検査データを得ることが可能となる。
【0101】
また、本実施形態において検出装置10が便器に組み込まれるまたは配管に取り付けられる場合には、当該検出装置10への電力供給が困難な場合がある。このような場合には、例えば検出装置10が無線給電用のアンテナを備える構成とすることにより、当該検出装置10に対して無線給電が行われるようにしてもよい。
【0102】
更に、本実施形態においては被検者の健康状態を検査するために当該被検者の排泄物に基づく検査データが取得されるものとして説明したが、例えば被検者が着座する便座や被検者が把持する手すり等に当該被検者の脈拍や血糖値を計測するための各種センサが設けられるようにしてもよい。このような構成によれば、排泄物に基づく検査データ以外に脈拍や血糖値等のデータを併せて取得することが可能となる。
【0103】
ここで、例えば検出装置10が出荷される際には、当該検出装置10の製造プロセスデータ及びRAWデータが例えばサーバ装置30に格納されるものとする。なお、製造プロセスデータには、検出装置10が製造された工場を識別するための工場IDや当該検出装置10が製造されたルートに関する情報等が含まれる。また、例えば検出装置10が便器に組み込まれる場合、RAWデータは、便器内に排泄物等がない状態で出荷時の検出装置10において取得された検査データを含む。一方、例えば検出装置10が配管に取り付けられる場合、RAWデータは、配管に排泄物等がない状態で出荷時の検出装置10において取得された検査データを含む。
【0104】
サーバ装置30において、製造プロセスデータ及びRAWデータは、例えば上記した検出装置10に備えられるMCU11の内部に保持されている検出装置IDに対応づけて格納される。この場合、MCU11の内部に保持されている検出装置IDによって、当該検出装置IDによって識別される検出装置10の製造プロセスデータ及びRAWデータを特定(取得)することができる。
【0105】
この検出装置10の製造プロセスデータは、例えば当該検出装置10に不具合が発生した場合に当該不具合の原因等を分析する際に利用することができる。
【0106】
また、検出装置10のRAWデータは、当該検出装置10において取得(検出)される検査データ(画像)を補正するために利用することができる。具体的には、RAWデータを利用することによって、当該RAWデータにおいて生じている輝度のばらつき等による影響を検査データにおいて低減させるような補正をすることができる。
【0107】
また、上記したRAWデータを利用した検査データの補正量が予め定められた値よりも大きいような場合には、検出装置10に不具合が生じている可能性があるとして検出装置10の製造者または設計者等にフィードバックすることができるようにしてもよい。また、検出装置10の出荷時に当該検出装置10において取得されたRAWデータ及び予め定められた日数または年数が経過した後に検出装置10において取得されたRAWデータを比較することによって、検出装置10の経年劣化に基づく不具合等を検出し、当該検出結果を検出装置10の製造者または設計者等にフィードバックするようにしてもよい。
【0108】
更に、検出装置10において取得される検査データ(画像)の質を向上させるために、被検者の排泄物に対して複数の検査データを取得し、当該複数の検査データのうち最もノイズの影響が少ない検査データを用いて被検者の健康状態が検査されるようにしてもよい。また、複数の検査データを平均化する等のノイズ除去処理が実行されるようにしてもよい。
【0109】
また、本実施形態においては被検者の排泄物が主に便である場合について説明したが、当該被検者の排泄物は尿であってもよい。また、上記した着座センサによって被検者が着座したことが検出されず、かつ、検査データに基づいて便器内に物体が存在すると判定される場合には、当該物体の種別(例えば、当該物体が男性の尿であるか嘔吐物であるか落とし物であるか等)を予め用意された学習済みモデル等を用いて判別し、当該判別結果に応じて異なる処理が実行されるようにしてもよい。
【0110】
また、本実施形態においては、検出装置10に備えられる光源12が赤外線を照射するものとして説明したが、上記したように例えば便中の潜血(血液成分)の有無を検査(判定)することが可能であれば、赤外線(赤外領域)以外の光を照射するものであっても構わない。なお、臀部の静脈パターンに基づいて被検者を認証する認証装置20に備えられる光源22についても同様に、臀部の静脈パターンを取得する(読み取る)ことが可能であれば赤外線以外の光を照射するものであっても構わない。
【0111】
また、本実施形態においては、検出装置10に備えられる光源12が便器の内面または便座の裏面等に配置されるものとして説明したが、当該光源12は、赤外線センサユニット13に組み込まれていてもよいし、便器の内面に埋め込まれていてもよい。
【0112】
なお、本実施形態においては、サーバ装置30において被検者の健康状態を検査するものとして説明したが、当該被検者の健康状態を検査する処理は例えば検出装置10側で実行されてもよいし、認証装置20側で実行されてもよい。
【0113】
また、本実施形態においては健康状態検査システムが検出装置10、認証装置20及びサーバ装置30を備えるものとして説明したが、当該健康状態検査システムは、例えば検出装置10、認証装置20及びサーバ装置30の機能を全て含む単一の装置として実現されていても構わない。
【0114】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。図9は、本実施形態に係る健康状態検査システムの機能構成の一例を示すブロック図である。なお、前述した図6と同様の部分には同一参照符号を付してその詳しい説明を省略する。ここでは、図6と異なる部分について主に述べる。
【0115】
また、本実施形態に係る健康状態検査システムのネットワーク構成、当該健康状態検査システムに備えられる検出装置、認証装置及びサーバ装置のシステム構成は、前述した第1実施形態と同様であるため、適宜、図1図5等を用いて説明する。
【0116】
本実施形態は、図9に示すようにサーバ装置30が学習処理部305を含む点で、前述した第1実施形態とは異なる。なお、本実施形態において、学習処理部305は、前述したCPU31にプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアによって実現されてもよいし、ハードウェアによって実現されてもよいし、当該ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
【0117】
ここで、サーバ装置30に含まれる格納部302には、前述した第1実施形態において説明したように、被検者の健康状態を検査するために用いられる検査モデルが予め格納されている。また、上記した図7に示す処理が実行された場合、格納部302には、被検者ID、検査データ及び検査結果等が格納される。
【0118】
本実施形態において、学習処理部305は、格納部302に格納された検査データ及び検査結果を用いて当該格納部302に格納されている検査モデルを更新する。
【0119】
なお、検査モデルは上記したように他の被検者の検査データ及び健康状態(のペア)を含む学習データを学習することによって作成された学習済みモデルであるが、学習処理部305は、被検者IDに対応づけて格納部302に格納された検査データ及び検査結果(つまり、図7に示すステップS2において取得された検査データ及びステップS5において検査された結果)のペアを新たな学習データとして学習することによって検査モデルを更新する。
【0120】
本実施形態においては、このように検査モデルが更新されることによって、当該検査モデルの精度(当該検査モデルを用いた被検者の健康状態の検査精度)を向上させることができる。
【0121】
ここでは格納部302に格納された検査データ及び検査結果を学習データとして学習するものとして説明したが、検査モデルの精度が低い場合には、当該検査結果が誤りである可能性がある。このような場合には、例えば健康状態検査システムと格納部302に格納されている被検者IDによって識別される被検者が利用する病院等の医療機関のシステムとを連携させ、当該医療機関における当該被検者に対する診断結果が当該格納部302に格納されている当該被検者の検査結果に反映されるようにしてもよい。
【0122】
このような場合には、学習処理部305は、検査データ及び被検者に対する診断結果(つまり、正しい検査結果)を含む学習データを用いて学習(例えば、強化学習)をすることが可能となるため、検査モデルの精度を更に向上させることが可能となる。
【0123】
なお、格納部302に格納された検査結果は上記したように既存の検査モデル(例えば、便中の潜血の有無を検査するために用いられる検査モデル)の精度向上のために利用されてもよいが、例えば新たな学習済みモデルを作成するために利用されても構わない。
【0124】
以下、図10のフローチャートを参照して、本実施形態において格納部302に格納された検査結果を利用して新たな学習済みモデルを作成する場合のサーバ装置30の処理手順について説明する。なお、図10に示す処理は学習処理部305によって実行されるものとする。
【0125】
ここで、前述した図7に示す処理は、健康状態検査システムを利用する被検者毎に実行される。このため、格納部302には、複数の被検者を識別するための被検者ID、当該被検者の各々の検査データ及び検査結果が格納(蓄積)されているものとする。なお、格納部302には、例えば医療機関等で事前に収集(登録)された被検者ID、当該被検者検査データ及び検査結果等が格納されていてもよい。
【0126】
まず、学習処理部305は、格納部302に格納されている複数の検査データに対するクラスタリング処理を実行する(ステップS11)。ステップS11において実行されるクラスタリング処理によれば、例えば同一のまたは類似する特徴を有する検査データが同一のカテゴリに分類される。この場合、例えば検査データ(画像)に対する画像処理を実行することによって同じような量及び分布の潜血が認められる検査データは同一のカテゴリに分類される。
【0127】
次に、学習処理部305は、ステップS11において同一のカテゴリに分類された検査データの各々に対応づけて格納部302に格納されている被検者IDによって識別される被検者の各々の健康状態に関するデータ(以下、被検者データと表記)を取得する(ステップS12)。被検者データは、例えば被検者の病歴等を含むが、当該病歴以外に、血液型、年齢及び性別等を含むものであってもよい。被検者データは、上記したように健康状態検査システムと連携する医療機関のシステム等(つまり、健康状態検査システムの外部)から取得されるものとする。なお、被検者データは、サーバ装置30等で管理されていても構わない。
【0128】
ステップS12の処理が実行されると、学習処理部305は、ステップS11において同一のカテゴリに分類された検査データ及びステップS12において取得された被検者データのペア(学習データ)を順次学習することによって、被検者の健康状態を推定するための学習済みモデル(以下、推定モデルと表記)を作成する(ステップS13)。
【0129】
ステップS13において作成された推定モデルは、例えば格納部302に格納される(ステップS14)。
【0130】
上記した図10に示す処理によれば、被検者の検査データと当該被検者の被検者データに基づく健康状態との関連性を規定したアルゴリズムを含み、検査データが入力された場合に当該検査データに対応する健康状態を出力することが可能な推定モデルが作成される。
【0131】
すなわち、この推定モデルによれば、例えばステップS11において同一のカテゴリに分類された検査データと同様の検査データが取得された被検者はステップS12において取得された被検者データに病歴として含まれている疾患(病気)に罹る傾向にあるという観点から、当該被検者が罹る可能性がある疾患等を推定することが可能となる。
【0132】
上記したように本実施形態においては、格納部302に格納された検査データ及び検査結果を学習データとして学習することによって、当該格納部302に格納されている検査モデルを更新する構成により、被検者に対する健康状態の検査が行われる度に当該検査モデルの精度を向上させることが可能となる。
【0133】
更に、本実施形態においては、格納部302に格納されている検査データを分類し、当該分類された検査データに対応づけて格納部302に格納されている被検者IDによって識別される被検者の健康状態に関する被検者データを取得し、当該分類された検査データ及び当該取得された被検者データを含む学習データに基づいて被検者の健康状態を推定するための推定モデルを作成する。本実施形態においては、このような構成により、作成された推定モデルを用いることによって検査データから被検者が罹る可能性のある疾患を推定することができるため、例えば健康状態検査システムを利用して健康状態を検査する被検者に対して注意喚起するようなことが可能となる。
【0134】
すなわち、本実施形態に係る健康状態検査システムにおいて取得された検査データは、例えば他のビッグデータ(被検者データ等)と照らし合わせることによって更に有効に活用することが可能となる。
【0135】
以下、本実施形態に係る発明を付記する。
[C1]
便器内に排泄された被検者の排泄物に対して赤外線を照射するための第1光源と、
前記便器の内側に配置され、前記第1光源から照射された赤外線を受光する複数の第1赤外線センサと、
前記複数の第1赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される検査データに基づいて、前記被検者の健康状態を検査する検査手段と、
前記検査手段による検査結果を出力する出力手段と
を具備する健康状態検査システム。
[C2]
前記複数の第1赤外線センサは、シート状に形成され、前記便器の内側の面に沿うように配置されている[C1]記載の健康状態検査システム。
[C3]
前記検査手段は、他の被検者の排泄物に対して照射された赤外線の強度に応じて取得される検査データと当該他の被検者の健康状態とを含む学習データに基づいて作成された検査モデルを用いて前記被検者の健康状態を検査する[C1]記載の健康状態検査システム。
[C4]
前記排泄物は、便を含み、
前記検査手段による検査結果は、前記便中の潜血の有無を含む
[C3]記載の健康状態検査システム。
[C5]
前記複数の第1赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される検査データ及び前記検査手段による検査結果を含む学習データに基づいて前記検査モデルを更新する学習手段を更に具備する[C3]記載の健康状態検査システム。
[C6]
前記被検者を認証し、当該被検者を識別するための識別情報を取得する認証手段を更に具備し、
前記出力手段は、前記取得された識別情報及び前記検査結果を出力する
[C1]記載の健康状態検査システム。
[C7]
前記便器に取り付けられている便座に着座した前記被検者の臀部に対して赤外線を照射するための第2光源と、
前記便座の座面に配置され、前記第2光源から照射された赤外線を受光する複数の第2赤外線センサと
を更に具備し、
前記認証手段は、前記複数の第2赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される前記被検者の静脈パターンに基づいて前記被検者を識別するための識別情報を取得する
[C6]記載の健康状態検査システム。
[C8]
前記便器内に排泄された排泄物を外部に排出するために前記被検者によって操作される操作部と、
前記被検者が前記操作部を操作する際に当該被検者の指が接触する位置に設けられ、当該被検者の指紋を表す指紋データを取得する指紋センサと
を更に具備し、
前記認証手段は、前記指紋センサによって取得された指紋データに基づいて前記被検者を識別するための識別情報を取得する
[C6]記載の健康状態検査システム。
[C9]
格納手段、分類手段、取得手段及び学習手段を更に具備し、
前記格納手段は、前記被検者を含む複数の被検者の各々を識別するための識別情報に対応づけて当該被検者の排泄物に対して照射された赤外線の強度に応じて取得される検査データを格納し、
前記分類手段は、前記格納手段に格納されている検査データを分類し、
前記取得手段は、前記分類された検査データに対応づけて前記格納手段に格納されている識別情報によって識別される被検者の健康状態に関する被検者データを取得し、
前記学習手段は、前記分類された検査データ及び前記取得された被検者データを含む学習データに基づいて前記被検者の健康状態を推定するための推定モデルを作成する
[C6]記載の健康状態検査システム。
[C10]
便器内に排泄された被検者の排泄物を当該便器から外部に排出するための配管の内部に配置され、当該配管を通過する当該排泄物に対して赤外線を照射するための光源と、
前記配管の内部に配置され、前記光源から照射された赤外線を受光する複数の赤外線センサと、
前記複数の赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される検査データに基づいて、前記被検者の健康状態を検査する検査手段と、
前記検査手段による検査結果を出力する出力手段と
を具備する健康状態検査システム。
[C11]
便器に組み込まれた検出装置と当該検出装置と通信可能に接続されたサーバ装置とを備える健康状態検査システムにおいて、
前記検出装置は、
前記便器内に排泄された被検者の排泄物に対して赤外線を照射するための光源と、
前記便器の内側に配置され、前記光源から照射された赤外線を受光する複数の赤外線センサと
を含み、
前記サーバ装置は、
前記複数の赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される検査データに基づいて、前記被検者の健康状態を検査する検査手段と、
前記検査手段による検査結果を出力する出力手段と
を含む
健康状態検査システム。
[C12]
便器に組み込まれる検出装置において、
前記便器内に排泄された被検者の排泄物に対して赤外線を照射するための光源と、
前記便器の内側に配置され、前記光源から照射された赤外線を受光する複数の赤外線センサと、
前記複数の赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じた検査データを取得する取得手段と
を具備し、
前記検査データは、前記被検者の健康状態を検査するために用いられる
検出装置。
[C13]
便器内に排泄された被検者の排泄物に対して赤外線を照射するための光源と、前記便器の内側に配置され、前記光源から照射された赤外線を受光する複数の赤外線センサとを備える検出装置と通信可能に接続される健康状態検査装置であって、
前記複数の赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される検査データに基づいて、前記被検者の健康状態を検査する検査手段と、
前記検査手段による検査結果を出力する出力手段と
を具備する健康状態検査装置。
[C14]
便器内に排泄された被検者の排泄物に対して赤外線を照射するステップと、
前記便器の内側に配置された複数の赤外線センサによって、前記照射された赤外線を受光するステップと、
前記複数の赤外線センサによって受光された赤外線の強度に応じて取得される検査データに基づいて、前記被検者の健康状態を検査するステップと、
前記検査結果を出力するステップと
を具備する方法。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0137】
10…検出装置、11…MCU、12…光源、13…赤外線センサユニット、14…通信デバイス、15…電源、20…認証装置、21…MCU、22…光源、23…赤外線センサユニット、24…通信デバイス、25…電源、30…サーバ装置、31…CPU、32…不揮発性メモリ、33…主メモリ、34…通信デバイス、40…ネットワーク、101…光源駆動部、102…検査データ取得部、103…送信部、201…光源駆動部、202…静脈パターン取得部、203…認証処理部、204…送信部、301…受信部、302…格納部、303…検査処理部、304…出力部、305…学習処理部。
図1
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図10