(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20220912BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
E04B1/94 K
E04B1/94 R
E04B1/26 E
(21)【出願番号】P 2018176620
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 友希子
(72)【発明者】
【氏名】蛇石 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】関 真理子
(72)【発明者】
【氏名】黒田 瑛一
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179700(JP,A)
【文献】実開昭51-112314(JP,U)
【文献】実開昭61-091910(JP,U)
【文献】特開2017-101402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04B 1/00-1/36
E04B 1/58
E04B 2/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材からなる耐火被覆層を有する構造材に、建築物内を防火区画に仕切る防火区画体が接合された接合構造であって、
前記耐火被覆層は、難燃薬剤を含まないラミナの積層体からなる燃えしろ層であり、50mm以上の厚みを有しており、
前記防火区画体は、耐火ボードと該耐火ボードの端部の裏面に固定された受材とを有し、前記構造材の前記耐火被覆層からなる側面に、前記耐火ボード及び前記受材がそれぞれ接触した状態に固定されており、
前記受材は、木表及び木裏を有する木材であり、該木表側を前記構造材とは反対側に向けて該耐火被覆層に固定されており、
前記受材は、密度が0.4g/cm
3
以上であり、前記構造材の前記側面に当接する面に、該受材の横断面における形状が円弧状である年輪の両端が位置している、接合構造。
【請求項2】
前記耐火被覆層に、前記防火区画体の一部が挿入される切り欠き部が形成されていない、請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記耐火被覆層に、切り欠き部が形成され、該切り欠き部に、前記耐火ボード及び前記受材のうちの少なくとも該受材が挿入されている、請求項1に記載の接合構造。
【請求項4】
前記耐火ボードの裏面における前記受材の木表側に第2受材が隣接して配されており、
前記第2受材は、木表及び木裏を有する木材であり、該木表側を前記構造材とは反対側に向けて固定されている、請求項1~3の何れか1項に記載の接合構造。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか1項に記載の接合構造を有する建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材からなる耐火被覆層を有する構造材に、建築物内を防火区画に仕切る防火区画体が接合された接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は、火災時に外部から加熱されると表面が燃えて炭化層が形成される。この炭化層が木材の表面に均一に形成されると木材内部への熱の侵入が抑制され、木材内部の構造的な劣化が抑制される。この特性を利用し、燃焼後の木材の内部に長期荷重を支持し得る健全な断面が確保されるように、木材の表面に、所定の厚みの燃えしろを設ける技術が知られている。このような燃えしろを設けた構造材等を主要構造部に用いて、木造建築物を準耐火建築物とすることも行われている。
【0003】
また木造建築物には、内部で火災が発生したときに、火災を一定の範囲内に留めて、他に拡大しないようにするために、防火区画が設けられていることが好ましい。防火区画は、耐火構造の床、壁、天井、防火戸などで建築物をいくつかの部分に区画したものであり、周囲に配される耐火構造の床、壁、天井、防火戸等の壁体(以下、「防火区画体」と称する。)によって囲まれることにより形成されるようになっている。
【0004】
柱や梁として、燃えしろを設けた構造材を使用し、該構造材に防火区画体を接合することにより、建築物内を防火区画に仕切ることが行われている。燃えしろを設けた構造材と防火区画体とを接合する技術は種々提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、防火区画体の接合部において、柱に設けられた燃えしろの外周面に燃え止まり部材や強化石膏ボードを固定することが提案されている。また、特許文献3には、外側に仕上材が配された燃え止まり層を有する木質構造材に、該仕上材よりも奥の燃え止まり層まで到達するように、防火区画体を接合することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-225130号公報
【文献】特開2015-40431号公報
【文献】特開2017-179700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2の接合構造では、防火区画体の耐火ボードを固定する受材とは別に、燃え止まり部材や強化石膏ボードを用意し固定する必要があるため、製造工程が複雑となり製造コストが高くなってしまう。特許文献3の接合構造では、燃え止まり層自体が焼失又は収縮した場合に、木質構造材の芯部まで延焼することを防ぐことは困難である。
【0007】
本発明の目的は、耐火性能に優れ、製造も容易な接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、木材からなる耐火被覆層を有する構造材に、建築物内を防火区画に仕切る防火区画体が接合された接合構造であって、前記防火区画体は、耐火ボードと該耐火ボードの端部の裏面に固定された受材とを有し、前記構造材の前記耐火被覆層からなる側面に、前記耐火ボード及び前記受材がそれぞれ接触した状態に固定されており、前記受材は、木表及び木裏を有する木材であり、該木表側を前記構造材とは反対側に向けて該耐火被覆層に固定されている、接合構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接合構造は、耐火性能に優れ、製造も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態の接合構造を示す横断面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の第1実施形態に係る構造材を示す横断面図であり、
図2(b)は、当該構造材の構成の説明図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(d)は、ラミナの横断面に表れる年輪の状態を示す横断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る防火区画体の横断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態の接合構造の作用を説明する図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態の接合構造を示す横断面図であり、
図1相当図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の第2実施形態に係る構造材を示す横断面図であり、
図7(b)は、当該構造材の構成の説明図である。
図7は、
図2相当図である。
【
図8】
図8は、本発明の第
2実施形態に係る防火区画体の横断面図であり、
図4相当図である。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、本発明に係る防火区画体の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の接合構造をその好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1実施形態の接合構造1は、構造材10に防火区画体20が接合された接合構造である。
第1実施形態では、構造材10は、木造建築物の柱材として使用される角材であり、軸方向を鉛直方向として使用されるものである。第1実施形態の構造材10は、木材からなる耐火被覆層12を有している。構造材10は、
図1及び
図2に示すように、軸方向に直交する横断面形状が四角形状であり、軸方向に沿って延びる4側面a~dを有している。構造材10について更に詳述すると、構造材10は、荷重支持部として機能する芯部11を有しており、構造材10の軸方向に沿って延びる4側面a~dに沿って耐火被覆層12が形成されている。芯部11は、木材からなり、構造材10の横断面の中心に位置している。構造材10は、横断面において、第1方向Xと第1方向Xに直交する第2方向Yとを有している。
【0012】
芯部11は、荷重支持部として機能するものであり、単独で、固定荷重、積載荷重等の長期に生ずる荷重(長期荷重)に対して構造耐力上安全であるようにその断面設計がなされている。斯かる断面設計は公知である。芯部11の横断面形状は四角形状であり、構造材10の横断面における、芯部11の第1方向X及び第2方向Yの長さは、柱や梁の形状、或いは大きさ等によって適宜に変更することができる。
図1及び
図2に示す芯部11は、第2方向Yに複数本のラミナ4を積層接着したラミナ積層体を第1方向Xに並べて配して横断面形状を四角形状としている。
【0013】
構造材10の耐火被覆層12の厚みLa~Ldは、公知の燃えしろ設計に基づいて設定することができる。燃えしろ設計は、長期構造耐力や地震時等の短期構造耐力に対して必要な断面に、所定の燃えしろ分を足す設計手法であり、防耐火性能上の非損傷性(火災加熱を受けても建物を支える荷重に耐えたまま、崩壊しない性能)を芯部11により確保した上で、その周囲に、要求される耐火性能に応じた厚みの燃えしろ層を設ける設計である。例えば、1時間の準耐火性能に対しては45mmの木材被覆を設ける燃えしろ設計が行われている。
【0014】
また構造材10の耐火被覆層12は、
図1及び
図2に示すように、第1方向Xにおいて芯部11の両側に位置する第1耐火被覆層12b,12dと、第2方向Yにおいて芯部11の両側に位置する第2耐火被覆層12a,12cとを含んでいる。第1耐火被覆層12b,12dは、第2方向Yをラミナ4の積層方向とする第1ラミナ積層部13b,13dから構成されている。第2耐火被覆層12a,12cは、第2方向Yをラミナ4の積層方向とするラミナ積層体を第1方向Xに並べて配した第2ラミナ積層部13a,13cから構成されている。第1実施形態では、第1耐火被覆層12dには、後述する防火区画体20を挿入するための切り欠き部は形成されていない。
【0015】
第1耐火被覆層12b,12dを構成する第1ラミナ積層部13b,13d及び第2耐火被覆層12a,12cを構成する第2ラミナ積層部13a,13cは、ラミナ4の積層方向である第2方向Yにおける全体が、木表5どうしの積層面を有しないように複数本のラミナ4が積層接着されたラミナの積層構造を有している。
そのため、構造材10の側面a~dが、火災時の火炎に晒された場合に、該側面a~dに形成される炭化層に、ラミナ4の木表どうしの積層面に沿って大きな割れが生じることや、そのような割れに起因して炭化層の一部が欠落することも抑制され、構造材10の側面a~d付近に、熱伝導の抑制効果又は酸素遮断効果に優れた密な炭化層が形成される。それにより、構造材10は、燃えしろ層が、難燃薬剤を配合しなくても燃えどまり機能を有し、優れた耐火性能を有するものとなっている。
【0016】
第1実施形態の構造材10において、第1ラミナ積層部13b,13d及び第2ラミナ積層部13a,13cを構成するラミナ4は全て、木表5及び木裏6を有するラミナである。
図3は、ラミナの軸方向(長手方向)に直交する横断面を示す図であり、
図3(a)及び
図3(b)に示すラミナ4は、木表5及び木裏6を有するラミナである。ラミナの木表5は、幅が広い相対向する2面のうちの原木の樹芯7から遠い方の面であり、ラミナの木裏6は、当該2面のうち原木の樹芯7に近い方の面である。
図3(c)及び
図3(d)に示すラミナ4は、幅が広い相対向する2面に木表5及び木裏6の区別のないラミナであり、第1ラミナ積層部13b,13d及び第2ラミナ積層部13a,13cに含まれていても良いラミナの例である。構造材製造上の品質管理の観点から、燃えしろ層として機能する第1ラミナ積層部13b,13d及び第2ラミナ積層部13a,13cは、積層されたラミナの3分の2以上が、木表5と木裏6の区別のあるラミナであることが好ましく、4分の3以上が、木表5と木裏6の区別のあるラミナであることがより好ましく、構造材10のように、第1ラミナ積層部13b,13d及び第2ラミナ積層部13a,13cを構成する全てのラミナが、木表5と木裏6の区別のあるラミナであることが更に好ましい。なお、構造材10は、第1ラミナ積層部13b,13d、第2ラミナ積層部13a,13c及び芯部11を構成する全てのラミナが、木表5と木裏6の区別のあるラミナとなっている。また、
図3中、符号7は、原木の樹芯7の位置を示し、符号41は年輪を示している。
【0017】
構造材10の第1ラミナ積層部13b,13d及び第2ラミナ積層部13a,13cを構成するラミナ4は、同一樹種の木材から構成されたものである。ただし、ラミナ4は、単一樹種に由来のもののみを用いても良いし、複数の樹種から得られたものを併用することもできる。ラミナ4の原料とする木材の樹種としては、任意のものを用いることができ、例えば、針葉樹であれば、カラマツ、ベイマツ、グイマツ、ツガ等、広葉樹であれば、ケヤキ、くり、ミズナラ、タモ等を用いることができる。また、個々のラミナ4は、構造材10の長手方向(軸方向に同じ)と同方向に長い形状を有している。個々のラミナ4は、構造材10の長手方向の全長に亘って連続する一枚の挽き板等であっても良いが、ラミナの全部又は一部は、複数の挽き板等をフィンガージョイント等の接合方法で長手方向に継いだものであっても良い。
【0018】
構造材10の第1ラミナ積層部13b,13d及び第2ラミナ積層部13a,13cを構成するラミナ4の厚みは、好ましくは50mm以下、より好ましくは35mm以下、更に好ましくは20mm以下である。ラミナ4の厚みの下限は、好ましくは5mm以上、より好ましくは8mm以上である。またラミナ4の幅は、厚み以上であり、好ましくは厚みの2倍以上50倍以下、より好ましくは厚みの3倍以上10倍以下である。
【0019】
構造材10の第1ラミナ積層部13b,13d及び第2ラミナ積層部13a,13cは、それぞれに含まれるラミナどうし間が、接着剤により接合された状態で積層されており、且つラミナ積層体どうし間も、接着剤により接合されている。
ラミナどうし間又はラミナ積層体どうし間を接合する接着剤としては、集成材の製造に従来用いられている各種公知の接着剤を用いることができ、例えば、水性高分子-イソシアネート系接着剤、レゾルシノール樹脂接着剤、レゾルシノール・フェノール樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、メラミンユリア樹脂接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等が挙げられる。これらのなかでも、レゾルシノール樹脂接着剤又はレゾルシノール・フェノール樹脂接着剤が好ましい。
【0020】
構造材10は、例えば、ラミナ間に接着剤を配して積層加圧して、各ラミナ積層体を製造した後、それらのラミナ積層体間に接着剤を配してラミナ積層体を積層加圧することにより製造することができるが、それに制限されるものではなく、それぞれ、任意の手順により製造することができる。
【0021】
第1実施形態では、第1ラミナ積層部13b,13dは、第2方向Yにおいて芯部11と同位置に存在する部分と、該部分から延出する部分とを有しており、第2方向Yにおける構造材10の両端間に亘っている。第2ラミナ積層部13a,13cは、第1ラミナ積層部13b,13dどうしの間の全域に亘っている。
【0022】
なお、本発明者らは、燃えしろ層を、ラミナの積層体から構成しつつも高い耐火性能を有する耐火木製構造材を開発するべく、ラミナの有する年輪の状態を変化させた集成材の耐火性能について研究した結果、ラミナ積層体を、横断面の周方向に沿う方向が積層方向となるように配して燃えしろ層を設けた集成材を火炎に晒すと、その燃えしろ層の燃焼により形成される炭化層に、ラミナの年輪(より詳細には年輪の早材部)に沿って割れが生じ、該割れに沿った燃焼が、耐火木製構造材の内部に進行しやすいことを知見した。斯か斯かる知見に基づき、防火区画体が有する受材の向きを所定の向きとすることで、耐火性能に優れた接合構造を容易に製造できることを見出した。
【0023】
第1実施形態では、防火区画体20は、建築物内を防火区画に仕切る壁である。第1実施形態では、防火区画体20の面内方向と構造材10の軸方向とが平行となっている。防火区画体20は、
図1及び
図4に示すように、一対の耐火ボード21,21と受材22とを有している。一対の耐火ボード21,21は間隔を空けて互いに略平行に配されており、該一対の耐火ボード21,21の間に、受材22が配されている。一対の耐火ボード21,21における互いに対向している面が、耐火ボード21の裏面21aである。
耐火ボード21としては、石膏ボード、けい酸カルシウム板、木毛セメント板等を使用することができる。
【0024】
受材22は、木表5及び木裏6を有する木材である(
図3参照)。受材22の原料とする木材の樹種としては、任意のものを用いることができ、例えば、針葉樹であれば、スギ、カラマツ、ベイマツ、ダフリカカラマツ、グイマツ、ツガ等、広葉樹であれば、ケヤキ、くり、ミズナラ、タモ等を用いることができる。受材22としては、これらの中でも、入手のしやすさの観点から、スギ、カラマツ又はベイマツを使用することが好ましい。
【0025】
また受材22は、防火区画体20の遮炎性能を向上させる観点から、その密度が、0.4g/cm3以上であることが好ましく、0.5g/cm3以上であることがより好ましい。
【0026】
受材22は、
図1及び
図4に示すように、耐火ボード21の端部21eの裏面21aに固定されている。第1実施形態では、受材22は、一対の耐火ボード21,21の両方の間に配されている。受材22は、一対の耐火ボード21,21のそれぞれ端部21e,21eの裏面21a,21aに固定されている。受材22は、耐火ボード21の横断面の長手方向Xにおける、耐火ボード21の端部21e側に木裏6を向け、該端部21e側とは反対側に木表5を向けて、耐火ボード21の端部21eの裏面21aに固定されている。受材22は、ステープルや、釘、ビス等により耐火ボード21に固定することができる。
第1実施形態では、受材22の木裏6と耐火ボード21の端部21eの端面21bとは面一となっている。
【0027】
第1実施形態では、防火区画体20は、
図1及び
図4に示すように、受材22に加えて、第2受材23を有している。第2受材23は、受材22と同様に、木表5及び木裏6を有する木材である(
図3参照)。第2受材23の原料とする木材の樹種としては、任意のものを用いることができ、例えば、針葉樹であれば、スギ、カラマツ、ベイマツ、ダフリカカラマツ、グイマツ、ツガ等、広葉樹であれば、ケヤキ、くり、ミズナラ、タモ等を用いることができる。第2受材23としては、これらの中でも、入手のしやすさの観点から、スギ、カラマツ又はベイマツを使用することが好ましい。尚、受材22と第2受材23とは、同種のものであってもよいし、異種のものであってもよい。
【0028】
また第2受材23は、防火区画体20の遮炎性能を向上させる観点から、その密度が、0.4g/cm3以上であることが好ましく、0.5g/cm3以上であることがより好ましい。
【0029】
第2受材23は、
図1及び
図4に示すように、耐火ボード21の裏面21aにおける受材22の木表5側に隣接して配されている。第2受材23は、受材22側に第2受材23の木裏6を向け、受材22とは反対側に第2受材23の木表5を向けている。
第1実施形態では、第2受材23は、受材22及び耐火ボード21の裏面21aに固定されている。第2受材23は、ステープルや、釘、ビス、接着剤等により固定することができる。これらの中でも、遮炎性・耐火性の観点から、受材22への固定に関しては、接着剤を使用することが好ましい。
【0030】
第1実施形態のように、耐火ボード21の端部21eの近傍に複数の受材が配されている場合、耐火ボード21の端部21eの端面21bの位置から、該端面21bから最も離れた受材における、該端面21b側とは反対側の側縁の位置までの長さt1が一定の長さであることが好ましい(
図4参照)。具体的には、耐火ボード21の端部21eの端面21bの位置から、第2受材23の木表5側の側縁の位置までの長さt1は、防火区画体20の遮炎性能を向上させる観点から、30mm以上であることが好ましく、45mm以上であることがより好ましく、経済性・施工性の観点から、60mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましい。
【0031】
第1実施形態の接合構造1では、
図1に示すように、構造材10の第1耐火被覆層12dからなる側面dに、耐火ボード21及び受材22がそれぞれ接触した状態に固定されている。具体的には、第1耐火被覆層12dからなる側面dに耐火ボード21の端部21eの端面21b及び受材22の木裏6が接触した状態で固定されている。第1実施形態では、第1耐火被覆層12dには防火区画体20を挿入するための切り欠き部は形成されておらず、第1耐火被覆層12dからなる側面dと、耐火ボード21の端部21eの端面21bと、受材22の木裏6側の側面とは面一となっている。
受材22は、木表5側を構造材10とは反対側に向けて第1耐火被覆層12dに固定されている。受材22は、ビスや接着剤等を使用して第1耐火被覆層12dに固定することができる。接着剤としては、耐熱性の接着剤を用いることが好ましい。耐熱性の接着剤としては、水性高分子-イソシアネート系接着剤、レゾルシノール樹脂接着剤、レゾルシノール・フェノール樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、メラミンユリア樹脂接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、炭酸カルシウム系接着剤等が挙げられる。施工性・遮炎性の観点から、接着剤とビスとを併用することが好ましい。
【0032】
第1実施形態の接合構造1では、耐火ボード21の端部21eの裏面21aに固定された受材22が、木表5側を構造材10とは反対側に向けて第1耐火被覆層12dに固定されていることにより、火災が発生して、第1耐火被覆層12dが焼失又は収縮し、受材22の年輪に沿うように燃焼が進行したとしても(
図5参照)、燃焼が進行する主たる進行方向は構造材10から離れる方向となり易いため、構造材10側に燃焼が進行することを防ぐことが可能となる。これにより、第1実施形態の接合構造1は、簡易な構成であり、製造が容易であるとともに、耐火性能に優れる。
【0033】
また第1実施形態では、耐火ボード21の裏面21aにおける受材22の木表5側に第2受材23が隣接して配されており、第2受材23は、受材22と同様に、木表5側を構造材10とは反対側に向けて固定されている。これにより、受材22が焼失して第2受材23まで燃焼が進行したとしても、受材22と同様の燃焼抑制効果を得ることが可能となり、接合構造の耐火性能が、一層効果的に向上する。
【0034】
図6に、本発明の第2実施形態の接合構造1Aを示す。第2実施形態の接合構造1Aについて、特に説明しない点は、第1実施形態の接合構造1と同様であり、第1実施形態についての説明が適宜適用される。
第2実施形態では、構造材10Aは、木造建築物の梁材として使用される構造用の角材であり、
図6に示すように、軸方向(長手方向)に沿って延びる4側面a1~d1を備えている。より具体的には、構造材10Aは、軸方向に直交する横断面形状が四角形状(より詳細には長方形状)を有し、前記4側面a1~d1として、使用時に、鉛直方向Yの上側に配される上面a1、下側に配される下面c1、上下面間に配される2側面b1,d1を備えている。構造材10Aについて更に詳述すると、構造材10Aは、芯部11を有しており、軸方向に沿って延びる4側面a1~d1のうちの3側面b1~d1に沿って耐火被覆層12が形成されている。構造材10Aの上面a1は、木床30によって覆われている。第2実施形態では、構造材10Aの芯部11は、横断面の中心から耐火被覆層12が形成されていない側面a1に亘って存在するものである。第2実施形態の構造材10Aは、第1実施形態と同様に、横断面において、第1方向Xと第1方向Xに直交する第2方向Yとを有している。第2実施形態では、第1方向Xは水平方向であり、第2方向Yは鉛直方向である。第2実施形態では、木床30は、鉛直方向Yの下方から順に、根太、合板、耐火ボードがこの順で積層されて構成されている。
【0035】
構造材10Aの耐火被覆層12Aは、
図6及び
図7に示すように、第1方向Xにおいて芯部11の両側に位置する第1耐火被覆層12b,12dAと、第2方向Yにおいて芯部11の下側に位置する第2耐火被覆層12cとを含んでいる。構造材10Aの側面d1を構成する第1耐火被覆層12dAには、防火区画体20Aの一部が挿入される切り欠き部40が形成されている。
【0036】
第2実施形態の防火区画体20Aは、建築物内を防火区画に仕切る天井である。第2実施形態においても、防火区画体20Aの面内方向と構造材10Aの軸方向とは平行となっている。防火区画体20Aは、
図6及び
図8に示すように、耐火ボード21、受材22及び第2受材23を有している。防火区画体20Aは、耐火ボード21を一つ有している。第2実施形態では、受材22の木裏6と耐火ボード21の端部21eの端面21bとは面一となっていない。受材22の木裏6は、耐火ボード21の端部21eの端面21bよりも、第1方向Xにおける受材22の木裏6側の外方に位置しており、受材22は、耐火ボード21の端部21eよりも、第1方向Xにおける受材22の木裏6側の外方に延出している。第2実施形態においても、耐火ボード21の端部21eの端面21bの位置から、第2受材23の木表5側の側縁の位置までの長さt1は、第1実施形態と同様の範囲内にあることが好ましい。
【0037】
第2実施形態の接合構造1Aでは、
図6に示すように、第1耐火被覆層12dAに形成された切り欠き部40に、受材22における耐火ボード21の端部21eから延出している部分が挿入されている。第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、受材22は木表5側を構造材10Aとは反対側に向けて第1耐火被覆層12dAに固定されている。第2実施形態においても、受材22は、ビスや接着剤等を使用して第1耐火被覆層12dAに固定することができる。接着剤としては、耐熱性の接着剤を用いることが好ましい。耐熱性の接着剤としては、水性高分子-イソシアネート系接着剤、レゾルシノール樹脂接着剤、レゾルシノール・フェノール樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、メラミンユリア樹脂接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、炭酸カルシウム系接着剤等が挙げられる。施工性・遮炎性の観点から、接着剤とビスとを併用することが好ましい。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、耐火ボード21の端部21eの裏面21aに固定された受材22が、木表5側を構造材10Aとは反対側に向けて第1耐火被覆層12dAに固定されていることにより、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0038】
本発明における構造材は、燃えしろ層を有する3側面又は4側面のいずれにおいても、少なくとも1時間の耐火性を有していることが好ましい。例えば、芯部11の周囲の三方又は四方を囲む燃えしろ層を形成するラミナ積層部13の厚みは、耐火性能の向上、特に燃えどまり機能の向上の観点から、50mm以上が好ましく、60mm以上がより好ましく、70mm以上が更に好ましい。また、同様の観点から、芯部11の周囲の三方又は四方を囲む燃えしろ層を形成するラミナ積層部13は、それぞれ、ISO834標準加熱曲線で1時間加熱後、5時間放冷したときに、構造材の3側面又は4側面を形成する表面からの深さが70mmの位置、好ましくは60mmの位置、さらに好ましくは50mmの位置に燃焼が到達しない燃えどまり性能を有していることが好ましい。
【0039】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、斯かる実施形態に制限されず適宜変更可能である。例えば、第1及び第2実施形態では、構造材10,10Aの軸方向と防火区画体20,20Aの面内方向とは平行となっているが、構造材10,10Aの軸方向と防火区画体20,20Aの面内方向とが交差していてもよい。例えば、構造材を梁材とし、防火区画体を壁として、構造材の軸方向と防火区画体の面内方向とが直交するようにしてもよい。
【0040】
また第1及び第2実施形態では、受材22の木表5側に第2受材23が隣接しているが、受材22の木表5側に第2受材23が隣接している必要は必ずしもなく、例えば、第2受材23を有していなくてもよい。防火区画体20,20Aが第2受材23を有していない場合、耐火ボード21の端部21eの端面21bの位置から、受材22の木表5側の側縁の位置までの長さt2は、防火区画体20の遮炎性能を向上させる観点から、30mm以上であることが好ましく、45mm以上であることがより好ましく、経済性・施工性の観点から、60mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましい(
図9参照)。
【0041】
また防火区画体20,20Aは、第2受材23の木表5側に、更に別の受材が隣接していてもよい。この場合、別の受材は、木表5及び木裏6を有する木材であってもよいし、木表5及び木裏6を有しない木材であってもよい。別の受材が木表5及び木裏6を有する木材である場合、別の受材は、木表5側を構造材10,10Aとは反対側に向けて固定されていてもよいし、木表5側を構造材10,10側に向けて固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1,1A 接合構造
10,10A 構造材
12 耐火被覆層
40 切り欠き部
20,20A 防火区画体
21 耐火ボード
21e 耐火ボードの端部
22 受材
23 第2受材
5 木表
6 木裏