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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/00 20060101AFI20220912BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20220912BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B60C15/00 B
B60C11/01 A
B60C13/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018213941
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020079060
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 純一
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-191720(JP,A)
【文献】特開平06-032120(JP,A)
【文献】特開2008-055962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/00
B60C 11/01
B60C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部と一対のサイドウォール部と一対のビード部とを備えるタイヤであって、
前記トレッド部と前記一対のサイドウォール部と前記一対のビード部とに跨ってカーカス層が設けられ、
前記カーカス層は、積層された複数のカーカスプライを有し、
前記トレッド部には、前記トレッド部のトレッド踏面部と前記カーカス層とのタイヤ径方向の間に位置するベルト層が埋設され、
前記複数のカーカスプライは、
前記トレッド部から前記一対のサイドウォール部を介して前記一対のビード部に延びて前記ビード部に埋設されたビードコア回りにタイヤ幅方向の外側に折り返された第1カーカスプライと、
前記第1カーカスプライに積層された第2カーカスプライと、
を含み、
前記第1カーカスプライにおける前記ビードコア回りに折り返された部分の先端部である第1端部は、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置よりもタイヤ径方向の外側において、前記トレッド部のトレッド踏面部にタイヤ径方向の内側向きの力が加えられた際に前記サイドウォール部のうち最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の外側で、かつ、前記ベルト層におけるタイヤ幅方向の端部であるベルト端部からタイヤ幅方向の外側に離れた位置に配置され、
前記第1端部と前記ベルト端部との距離は、前記タイヤのうち前記第1端部が位置する部分におけるタイヤ厚さ方向の寸法よりも大きく、
前記最もひずみが大きくなる部分は、標準リムに装着され規定内圧が充填された前記タイヤに、前記タイヤの最大負荷能力に対応する最大負荷を加えて、前記トレッド部のトレッド踏面部が地面からの垂直抗力によってタイヤ径方向の内側向きに力を受けた際に最もひずみが大きくなる前記サイドウォール部の部分であり、
前記タイヤ厚さ方向は、前記カーカス層の外面に直交する法線方向であり、
前記第2カーカスプライは、前記トレッド部から前記一対のサイドウォール部を介して前記一対のビード部に延びて前記ビードコア回りにタイヤ幅方向の外側に折り返され、
前記第2カーカスプライにおける前記ビードコア回りに折り返された部分の先端部である第2端部は、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置よりもタイヤ径方向の外側に位置し、かつ、前記最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の内側に位置していることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
タイヤ幅方向の外側面には、凸部が形成され、
前記第1端部は、前記凸部とタイヤ厚さ方向に重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ビードコア回りにタイヤ幅方向の外側に折り返された部分において、前記第1カーカスプライは、前記第2カーカスプライよりもタイヤ幅方向の外側に位置し、
前記第1端部は、前記第2端部よりもタイヤ径方向の外側に位置していることを特徴とする請求項またはに記載のタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤのうち前記第1端部が位置する部分における前記タイヤ厚さ方向の寸法をT1とし、
前記タイヤのうち前記第2端部が位置する部分における前記タイヤ厚さ方向の寸法をT2としたとき、
T1:T2=7:4の関係を満たすことを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
タイヤ径方向の内端部と前記第2端部との間のタイヤ径方向の距離は、断面高さの45%以上、55%以下であることを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
タイヤ径方向の内端部と前記第1端部との間のタイヤ径方向の距離は、断面高さの65%以上、75%以下であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
積層された複数のカーカスプライを有するカーカス層が設けられたタイヤが知られている。例えば、特許文献1には、2つのカーカスプライが積層された構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-20499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなタイヤにおいては、サイドウォール部が切れるサイドカットが生じることを抑制するために、ビードコア回りに折り返されたカーカスプライの端部のタイヤ径方向位置を、より外側に配置して、サイドウォール部の強度を向上させることが考えられる。しかし、カーカスプライの端部においてはタイヤに外力が加えられた際に応力が集中しやすく、タイヤがひずみやすい。そのため、単にカーカスプライの端部をタイヤ径方向の外側に配置するだけでは、車両の走行時においてタイヤのひずみが大きくなる場合があった。これにより、タイヤの耐久性が低下する虞があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、サイドカットが生じることを抑制しつつ、耐久性が低下することを抑制できる構造を有するタイヤを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤの一つの態様は、トレッド部と一対のサイドウォール部と一対のビード部とを備えるタイヤであって、前記トレッド部と前記一対のサイドウォール部と前記一対のビード部とに跨ってカーカス層が設けられ、前記カーカス層は、積層された複数のカーカスプライを有し、前記トレッド部には、前記トレッド部のトレッド踏面部と前記カーカス層とのタイヤ径方向の間に位置するベルト層が埋設され、前記複数のカーカスプライは、前記トレッド部から前記一対のサイドウォール部を介して前記一対のビード部に延びて前記ビード部に埋設されたビードコア回りにタイヤ幅方向の外側に折り返された第1カーカスプライと、前記第1カーカスプライに積層された第2カーカスプライと、を含み、前記第1カーカスプライにおける前記ビードコア回りに折り返された部分の先端部である第1端部は、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置よりもタイヤ径方向の外側において、前記トレッド部のトレッド踏面部にタイヤ径方向の内側向きの力が加えられた際に前記サイドウォール部のうち最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の外側で、かつ、前記ベルト層におけるタイヤ幅方向の端部であるベルト端部からタイヤ幅方向の外側に離れた位置に配置され、前記第1端部と前記ベルト端部との距離は、前記タイヤのうち前記第1端部が位置する部分におけるタイヤ厚さ方向の寸法よりも大きく、前記最もひずみが大きくなる部分は、標準リムに装着され規定内圧が充填された前記タイヤに、前記タイヤの最大負荷能力に対応する最大負荷を加えて、前記トレッド部のトレッド踏面部が地面からの垂直抗力によってタイヤ径方向の内側向きに力を受けた際に最もひずみが大きくなる前記サイドウォール部の部分であり、前記タイヤ厚さ方向は、前記カーカス層の外面に直交する法線方向であり、前記第2カーカスプライは、前記トレッド部から前記一対のサイドウォール部を介して前記一対のビード部に延びて前記ビードコア回りにタイヤ幅方向の外側に折り返され、前記第2カーカスプライにおける前記ビードコア回りに折り返された部分の先端部である第2端部は、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置よりもタイヤ径方向の外側に位置し、かつ、前記最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の内側に位置していることを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤの一つの態様によれば、第1カーカスプライの第1端部は、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置よりもタイヤ径方向の外側で、かつ、トレッド部のトレッド踏面部にタイヤ径方向の内側向きの力が加えられた際にサイドウォール部のうち最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の外側に位置している。ここで、サイドウォール部のうち最もひずみが大きくなる部分は、通常、トレッド部とサイドウォール部との境界部よりもタイヤ径方向の内側で、かつ、タイヤのタイヤ幅方向の寸法が最大となる位置よりもタイヤ径方向の外側に位置している。そのため、第1端部をサイドウォール部のうち最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の外側に配置することで、第1カーカスプライにおけるビードコア回りに折り返された部分を、サイドウォール部におけるタイヤ径方向の外側寄りの部分まで好適に延在させることができる。これにより、サイドウォール部におけるタイヤ径方向の外側寄りの部分において、タイヤ幅方向に重ねられるカーカスプライの数を多くすることができる。したがって、サイドウォール部の強度を、カーカス層に設けられた複数のカーカスプライによって好適に向上させることができ、サイドカットが生じることを抑制できる。また、サイドウォール部においてひずみやすい部分を避けて第1端部が配置されるため、車両の走行時におけるタイヤのひずみが大きくなることを抑制でき、タイヤの耐久性が低下することを抑制できる。
【0008】
また、例えば、ベルト層のベルト端部においては、応力が集中しやすく、タイヤがひずみやすい。そのため、第1カーカスプライの第1端部がベルト端部に近いと、タイヤのひずみが大きくなりやすい。これに対して本発明のタイヤの一つの態様によれば、第1端部は、ベルト層におけるタイヤ幅方向の端部であるベルト端部から離れて配置され、第1端部とベルト端部との距離は、第1端部が位置する部分におけるタイヤのタイヤ厚さ方向の寸法よりも大きい。そのため、第1端部とベルト端部との距離を好適に大きくして、第1端部をベルト端部から好適に離すことができる。これにより、タイヤのひずみが大きくなることを抑制でき、タイヤの耐久性が低下することをより抑制できる。
以上により、本発明のタイヤの一つの態様によれば、サイドカットが生じることを抑制しつつ、耐久性が低下することを抑制できる。
【0009】
また、本発明のタイヤの一つの態様によれば、第1カーカスプライの第1端部がベルト端部からタイヤ幅方向の外側に離れて配置されている。そのため、例えば、第1端部がベルト端部からタイヤ幅方向の内側に離れて配置される場合に比べて、第1カーカスプライにおけるビードコア回りに折り返された部分を短くできる。これにより、カーカス層を製造するために必要な材料を低減でき、かつ、カーカス層を軽量化できる。したがって、タイヤの製造コストを低減でき、かつ、タイヤを軽量化できる。
【0010】
タイヤ幅方向の外側面には、凸部が形成され、前記第1端部は、前記凸部とタイヤ厚さ方向に重なる位置に配置されている構成としてもよい。
この構成によれば、第1端部とタイヤの外側面との間のタイヤ厚さ方向の寸法を大きくできる。これにより、タイヤのうち第1端部よりもタイヤ厚さ方向の外側に位置する部分を好適に厚くすることができ、第1端部が位置する部分においてタイヤをひずみにくくすることができる。したがって、第1端部の位置におけるタイヤのひずみをより抑制することができ、タイヤの耐久性が低下することをより抑制できる。
【0011】
前記複数のカーカスプライは、前記第1カーカスプライに積層された第2カーカスプライを含み、前記第2カーカスプライは、前記トレッド部から前記一対のサイドウォール部を介して前記一対のビード部に延びて前記ビードコア回りにタイヤ幅方向の外側に折り返され、前記第2カーカスプライにおける前記ビードコア回りに折り返された部分の先端部である第2端部は、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置よりもタイヤ径方向の外側に位置している構成としてもよい。
この構成によれば、第2カーカスプライの第2端部の位置を、よりタイヤ径方向の外側にすることができ、サイドウォール部の強度をより向上させることができる。これにより、サイドカットが生じることをより抑制できる。
【0012】
前記第2端部は、前記トレッド部のトレッド踏面部にタイヤ径方向の内側向きの力が加えられた際に前記サイドウォール部のうち最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の内側に位置している構成としてもよい。
この構成によれば、サイドウォール部においてひずみやすい部分を避けて第2端部が配置される。これにより、第2カーカスプライによってサイドカットが生じることをより抑制しつつ、タイヤの耐久性が低下することを抑制できる。
【0013】
前記ビードコア回りにタイヤ幅方向の外側に折り返された部分において、前記第1カーカスプライは、前記第2カーカスプライよりもタイヤ幅方向の外側に位置し、前記第1端部は、前記第2端部よりもタイヤ径方向の外側に位置している構成としてもよい。
この構成によれば、第1カーカスプライにおけるビードコア回りに折り返された部分によって、第2カーカスプライの第2端部をタイヤ幅方向の外側から覆うことができる。これにより、第2端部が覆われていない場合に比べて、第2端部に応力が集中しにくくできる。したがって、第2端部においてタイヤがひずむことを抑制できる。また、タイヤの強度を向上させやすく、サイドカットが生じることをより抑制できる。
【0014】
前記第1端部が位置する部分におけるタイヤ厚さ方向の寸法をT1とし、前記第2端部が位置する部分におけるタイヤ厚さ方向の寸法をT2としたとき、T1:T2=7:4の関係を満たす構成としてもよい。
寸法T1,T2をこのような関係とすることにより、上述したサイドカットを抑制する効果、および耐久性が低下することを抑制する効果を維持しつつ、第1端部が位置する部分におけるタイヤのタイヤ厚さ方向の寸法T1を比較的薄くできる。これにより、サイドウォール部を比較的薄くでき、サイドウォール部を製造するために必要な材料を低減できる。したがって、タイヤの製造コストを低減できる。また、タイヤを軽量化できる。また、サイドウォール部を比較的薄くできることで、転がり抵抗を低減することもできる。このように、上述したようにしてサイドウォール部の強度を向上できるため、サイドウォール部を比較的薄くしても、サイドカットが生じることを抑制しつつ、タイヤの耐久性が低下することを抑制できる。
【0015】
タイヤ径方向の内端部と前記第2端部との間のタイヤ径方向の距離は、断面高さの45%以上、55%以下である構成としてもよい。
タイヤにおけるタイヤ径方向の内端部と第2端部との間のタイヤ径方向の距離をこのような数値範囲とすることで、サイドウォール部のうち最もひずみが大きくなる部分をタイヤ径方向の内側に避けつつ、第2端部を好適にタイヤ径方向の外側に配置することができる。これにより、サイドカットが生じることをより抑制しつつ、タイヤの耐久性が低下することをより抑制できる。
【0016】
タイヤ径方向の内端部と前記第1端部との間のタイヤ径方向の距離は、断面高さの65%以上、75%以下である構成としてもよい。
タイヤにおけるタイヤ径方向の内端部と第1端部との間のタイヤ径方向の距離をこのような数値範囲とすることで、サイドウォール部のうち最もひずみが大きくなる部分をタイヤ径方向の外側に避けつつ、第1端部を好適にタイヤ径方向の外側に配置することができる。これにより、サイドカットが生じることをより抑制しつつ、タイヤの耐久性が低下することをより抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一つの態様によれば、サイドカットが生じることを抑制しつつ、耐久性が低下することを抑制できる構造を有するタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施形態のタイヤの一部を示す断面図であって、タイヤ幅方向に沿う断面図である。
図2図2は、本実施形態のタイヤの一部を示す断面図であって、図1における部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るタイヤについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0020】
各図において左右方向は、タイヤ幅方向である。各図において上下方向は、タイヤ径方向である。以下の説明においては、ある対象に対して、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道部CLに近い側を「タイヤ幅方向の内側」と呼び、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道部CLから遠い側を「タイヤ幅方向の外側」と呼ぶ。タイヤ赤道部CLは、本実施形態のタイヤ10におけるタイヤ幅方向の中心である。また、各図において示すタイヤ10の部分においては、各図の上側がタイヤ径方向の外側であり、各図の下側がタイヤ径方向の内側である。また、タイヤ10における図示しない中心軸回りの周方向をタイヤ周方向と呼ぶ。
【0021】
本実施形態のタイヤ10は、例えば、スポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)向けのタイヤである。タイヤ10は、図1に示すように、トレッド部11と、一対のサイドウォール部12と、一対のビード部13と、を備えている。
トレッド部11は、一対のビード部13よりもタイヤ径方向の外側に配置されており、タイヤ10におけるタイヤ径方向の外端部に位置している。トレッド部11は、タイヤ周方向に延びる環状である。トレッド部11は、タイヤ10の接地面であるトレッド踏面部11aを有している。トレッド踏面部11aは、トレッド部11におけるタイヤ径方向の外側面の一部である。
【0022】
トレッド踏面部11aは、例えば、タイヤ10を「JATMA Year Book」に規定されている標準リムに装着し、かつタイヤ10に、「JATMA Year Book」での適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧-負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧(以下、規定内圧という)を充填して最大負荷能力に対応する最大負荷を負荷した状態でのトレッド部11の接地面である。
【0023】
なお、トレッド踏面部11aは、例えば、タイヤ10が生産または使用される地域が日本国以外の場合には、その地域に適用されている産業規格(例えば、アメリカ合衆国の「TRA Year Book」、欧州の「ETRTO Standard Manual」等)に準拠した状態でのトレッド部11の接地面である。
【0024】
一対のサイドウォール部12は、トレッド部11におけるタイヤ幅方向の両端部からタイヤ径方向の内側に向けて延びている。一対のサイドウォール部12は、トレッド部11のタイヤ幅方向の両端部と一対のビード部13とをそれぞれ連結している。
一対のビード部13は、一対のサイドウォール部12におけるタイヤ径方向の内端部にそれぞれ接続されている。一対のビード部13には、ビードコア60がそれぞれ埋設されている。
【0025】
タイヤ10には、骨格となるカーカス層50が設けられている。タイヤ10は、カーカス層50にタイヤ本体20とベルト層30とベルト補強層40とが組み付けられて構成されている。カーカス層50は、トレッド部11とサイドウォール部12とビード部13とに跨って設けられている。カーカス層50は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。カーカス層50については、後段において詳述する。
【0026】
タイヤ本体20は、トレッドゴム21と、一対のサイドウォールゴム22と、を有している。
トレッドゴム21は、トレッド部11の一部を構成する部分であり、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。トレッドゴム21は、カーカス層50のタイヤ径方向の外側に設けられている。
【0027】
サイドウォールゴム22は、サイドウォール部12の一部およびビード部13の一部を構成する部分であり、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。一対のサイドウォールゴム22は、カーカス層50のタイヤ幅方向の両側にそれぞれ設けられている。一対のサイドウォールゴム22のタイヤ径方向の外端部は、トレッドゴム21のタイヤ幅方向の両端部のそれぞれに接続されて、互いに連結されている。
【0028】
ベルト層30は、トレッド部11に埋設されている。ベルト層30は、カーカス層50のタイヤ径方向の外側に積層されている。ベルト層30は、トレッド部11の接地面であるトレッド踏面部11aとカーカス層50とのタイヤ径方向の間に位置している。本実施形態においてベルト層30は、積層された2枚のベルトプライ31,32を有している。ベルトプライ31は、ベルトプライ32よりもタイヤ幅方向の両側に延びている。ベルトプライ31のタイヤ幅方向の端部は、図2に示すように、ベルト層30におけるタイヤ幅方向の端部であるベルト端部31aである。ベルト端部31aは、トレッドゴム21のタイヤ幅方向の端部よりもタイヤ幅方向の内側に離れて位置している。ベルトプライ32は、ベルトプライ31のタイヤ径方向の外側に積層されている。
【0029】
ベルト補強層40は、図1に示すように、ベルト層30のタイヤ径方向の外側に積層されている。ベルト補強層40は、トレッド踏面部11aとベルト層30とのタイヤ径方向の間に位置している。ベルト補強層40は、例えば、芳香族ポリアミドとナイロンとを撚り合わせた複合コードをベルト層30の外周部に巻回して形成されている。
【0030】
カーカス層50は、積層された複数のカーカスプライ50aを有している。本実施形態において複数のカーカスプライ50aは、第1カーカスプライ51と、第2カーカスプライ52との2つのカーカスプライを含む。第1カーカスプライ51および第2カーカスプライ52は、タイヤ周方向に沿って延びる環状である。第1カーカスプライ51および第2カーカスプライ52は、トレッド部11から一対のサイドウォール部12を介して一対のビード部13に延びてビードコア60回りにタイヤ幅方向の外側に折り返されている。
【0031】
カーカス層50のうちトレッド部11に位置する部分において、第1カーカスプライ51は、第2カーカスプライ52よりもタイヤ径方向の内側に位置している。カーカス層50のうちトレッド部11からサイドウォール部12を介してビード部13まで延びる部分において、第1カーカスプライ51は、第2カーカスプライ52よりもタイヤ幅方向の内側に位置している。カーカス層50のうちビードコア60回りにタイヤ幅方向の外側に折り返された部分において、第1カーカスプライ51は、第2カーカスプライ52よりもタイヤ幅方向の外側に位置している。
【0032】
本実施形態においてタイヤ10の内面は、第1カーカスプライ51の内面によって構成されている。本実施形態において第1カーカスプライ51の厚さは、全体に亘ってほぼ均一である。本実施形態において第2カーカスプライ52の厚さは、全体に亘ってほぼ均一である。第1カーカスプライ51の厚さと第2カーカスプライ52の厚さとは、例えば、同じである。
【0033】
図2に示すように、第1カーカスプライ51におけるビードコア60回りに折り返された部分の先端部である第1端部51aは、タイヤ10のタイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側に位置している。第1端部51aは、第2カーカスプライ52におけるビードコア60回りに折り返された部分よりもタイヤ径方向の外側に位置している。第1端部51aは、第2カーカスプライ52のうちトレッド部11からサイドウォール部12を介してビード部13まで延びる部分のタイヤ幅方向の外側に接触している。
【0034】
第1端部51aは、トレッド部11とサイドウォール部12との境界部14に位置している。本実施形態において境界部14とは、例えば、タイヤ厚さ方向においてトレッドゴム21とサイドウォールゴム22とが重なり合っているタイヤ10の領域のうち、トレッドゴム21のタイヤ幅方向の端部から、ベルト層30のタイヤ幅方向の端部であるベルト端部31aまでの間の領域に位置する部分である。
【0035】
なお、本明細書において「タイヤ厚さ方向」とは、例えば、カーカス層の外面に直交する法線方向である。例えば、図2において示す一点鎖線DL1が延びる方向は、トレッドゴム21のタイヤ幅方向の端部が位置する部分におけるタイヤ厚さ方向である。一点鎖線DL1は、カーカス層50の外面のうち、第1カーカスプライ51における折り返された部分のタイヤ幅方向の外側面に直交している。図2において示す一点鎖線DL2が延びる方向は、ベルト端部31aが位置する部分におけるタイヤ厚さ方向である。一点鎖線DL2は、カーカス層50の外面のうち、第2カーカスプライ52におけるトレッド部11に位置する部分のタイヤ径方向の外側面に直交している。本実施形態では、タイヤ10のうち一点鎖線DL1と一点鎖線DL2との間の領域に位置する部分が境界部14である。
【0036】
本実施形態において境界部14の外面には、タイヤ厚さ方向の外側に突出する凸部16が形成されている。境界部14の外面は、タイヤ10におけるタイヤ幅方向の外側面の一部である。本実施形態において凸部16は、境界部14のうちタイヤ幅方向の端部に形成されている。凸部16は、トレッドゴム21のタイヤ幅方向の端部と、サイドウォールゴム22のタイヤ径方向の外端部におけるタイヤ幅方向の外端部とによって構成されている。凸部16のタイヤ径方向の内端部は、ベルト層30よりもタイヤ径方向の内側に位置している。本実施形態において凸部16の全体は、ベルト層30よりもタイヤ径方向の内側に位置している。本実施形態において第1カーカスプライ51の第1端部51aは、凸部16とタイヤ厚さ方向に重なる位置に配置されている。
【0037】
第1端部51aとベルト層30のベルト端部31aとは、互いに離れて配置されている。本実施形態において第1端部51aは、ベルト端部31aからタイヤ径方向の内側、かつ、タイヤ幅方向の外側に離れた位置に配置されている。第1端部51aとベルト端部31aとの距離Lは、タイヤ10のうち第1端部51aが位置する部分におけるタイヤ厚さ方向の寸法T1よりも大きい。距離Lは、例えば、15mm以上であることが好ましい。タイヤ10のひずみを抑制しやすいためである。
【0038】
本実施形態において第1カーカスプライ51の第1端部51aは、トレッド部11のトレッド踏面部11aにタイヤ径方向の内側向きの力が加えられた際にサイドウォール部12のうちタイヤ10のひずみが他の部分に比べて大きくなりやすいひずみ領域15よりもタイヤ径方向の外側に位置している。ひずみ領域15は、トレッド踏面部11aにタイヤ径方向の内側向きの力が加えられた際にサイドウォール部12においてひずみが最も大きくなる部分、および当該ひずみが最も大きくなる部分の近傍を含む領域である。すなわち、本実施形態において第1端部51aは、トレッド部11のトレッド踏面部11aにタイヤ径方向の内側向きの力が加えられた際にサイドウォール部12のうち最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の外側に位置している。
【0039】
なお、トレッド部11のトレッド踏面部11aにタイヤ径方向の内側向きの力が加えられた状態とは、例えば、「JATMA Year Book」に規定されている標準リムに装着され規定内圧が充填されたタイヤ10に負荷を加えて、トレッド踏面部11aが地面からの垂直抗力によってタイヤ径方向の内側向きに力を受けた状態を含む。このとき、タイヤ10に加えられる負荷は、例えば、タイヤ10の最大負荷能力に対応する最大負荷を含む。また、サイドウォール部12のひずみは、例えば、サイドウォール部12にひずみゲージ等を取り付けて計測できる。
以下の説明においては、トレッド部11のトレッド踏面部11aにタイヤ径方向の内側向きの力が加えられた際にサイドウォール部12のうち最もひずみが大きくなる部分を、単に「サイドウォール部12のうち最もひずみが大きくなる部分」と呼ぶ。
【0040】
ひずみ領域15は、トレッド部11とサイドウォール部12との境界部14よりもタイヤ径方向の内側で、かつ、タイヤ10のタイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側に位置している。ひずみ領域15は、例えば、トレッドゴム21のタイヤ径方向の寸法Zがタイヤ10の断面高さSHの30%以下である場合に、上記のような位置に設けられる。
【0041】
なお、トレッドゴム21のタイヤ径方向の寸法Zは、トレッドゴム21のタイヤ径方向の内端部から外端部までのタイヤ径方向の距離である。本実施形態においてトレッドゴム21のタイヤ径方向の内端部は、トレッドゴム21のタイヤ幅方向の外端部であり、トレッドゴム21のうち図2において一点鎖線DL1が通る部分である。本実施形態においてトレッドゴム21のタイヤ径方向の外端部とは、トレッド部11のタイヤ径方向の外端部であり、トレッド踏面部11aのうちタイヤ赤道部CLに位置する部分である。
【0042】
また、断面高さSHとは、図1に示すような縦断面視において、タイヤ10におけるタイヤ径方向の内端部とトレッド部11のタイヤ径方向の外端部とのタイヤ径方向に沿った距離である。なお、本実施形態においてタイヤ10におけるタイヤ径方向の内端部は、ビード部13のタイヤ径方向の内端部である。
【0043】
第1カーカスプライ51の第1端部51aが位置する部分におけるタイヤ10のタイヤ厚さ方向の寸法T1は、第1端部51aよりもタイヤ径方向の内側で、タイヤ10のタイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側に位置する部分におけるタイヤ10の厚さ方向の寸法よりも大きい。タイヤ10のタイヤ厚さ方向の寸法は、タイヤ10のタイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLから第1端部51aの位置に向かうに従って大きくなっている。本実施形態においてタイヤ10は、例えば、第1端部51aよりもタイヤ径方向の外側において、第1端部51aが位置する部分におけるタイヤ10のタイヤ厚さ方向の寸法T1よりもタイヤ厚さ方向の寸法が大きくなる部分を有する。
【0044】
タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側に位置するタイヤ10の部分において、第1カーカスプライ51におけるビードコア60回りに折り返された部分とタイヤ10のタイヤ幅方向の外側面12aとの間におけるタイヤ厚さ方向の寸法T5は、第1端部51aと外側面12aとの間において最大となる。言い換えれば、第1端部51aと外側面12aとの間におけるタイヤ厚さ方向の寸法T3は、第1カーカスプライ51におけるビードコア60回りに折り返された部分のうち第1端部51aよりもタイヤ径方向の内側で、かつ、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側に位置する部分と、タイヤ10のタイヤ幅方向の外側面12aとの間におけるタイヤ厚さ方向の寸法よりも大きい。寸法T5は、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLから第1端部51aに向かうに従って大きくなり、第1端部51aにおいて最大の寸法T3となる。
【0045】
第1端部51aと外側面12aとの間における寸法T3は、第1端部51aとタイヤ10のタイヤ幅方向の内側面12bとの間におけるタイヤ厚さ方向の寸法T4よりも大きい。第1端部51aと外側面12aとの間における寸法T3は、例えば、第1端部51aと内側面12bとの間における寸法T4の3倍以上である。本実施形態において外側面12aは、サイドウォールゴム22のタイヤ幅方向の外側面である。本実施形態において内側面12bは、カーカス層50のタイヤ幅方向の内側面である。
【0046】
なお、寸法T5とは、より詳細には、第1カーカスプライ51におけるビードコア60回りに折り返された部分におけるタイヤ幅方向の外側面とタイヤ10におけるタイヤ幅方向の外側面12aとの間におけるタイヤ厚さ方向の寸法である。また、寸法T3とは、より詳細には、第1端部51aにおけるタイヤ幅方向の外側面とタイヤ10におけるタイヤ幅方向の外側面12aとの間におけるタイヤ厚さ方向の寸法である。また、寸法T4とは、より詳細には、第1端部51aにおけるタイヤ幅方向の内側面とタイヤ10におけるタイヤ幅方向の内側面12bとの間におけるタイヤ厚さ方向の寸法である。
【0047】
第2カーカスプライ52におけるビードコア60回りに折り返された部分の先端部である第2端部52aは、タイヤ10のタイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側に位置している。本実施形態において第2端部52aは、ひずみ領域15よりもタイヤ径方向の内側に位置している。すなわち、第2端部52aは、サイドウォール部12のうち最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の内側に位置している。第2端部52aは、第1端部51aよりもタイヤ径方向の内側に位置している。すなわち、第1端部51aは、第2端部52aよりもタイヤ径方向の外側に位置しており、第1カーカスプライ51は、第2カーカスプライ52よりも折り返された部分の長さが大きい。
【0048】
タイヤ10におけるタイヤ径方向の内端部と第1端部51aとの間のタイヤ径方向の距離H1は、例えば、タイヤ10の断面高さSHの65%以上、75%以下である。タイヤ10におけるタイヤ径方向の内端部と第2端部52aとの間のタイヤ径方向の距離H2は、例えば、断面高さSHの45%以上、55%以下である。
【0049】
第1端部51aが位置する部分におけるタイヤ10のタイヤ厚さ方向の寸法T1は、第2端部52aが位置する部分におけるタイヤ10のタイヤ厚さ方向の寸法T2よりも大きく、寸法T2の2倍以下である。本実施形態において第1端部51aが位置する部分におけるタイヤ10のタイヤ厚さ方向の寸法T1と第2端部52aが位置する部分におけるタイヤ10のタイヤ厚さ方向の寸法T2とは、T1:T2=7:4の関係を満たしている。
【0050】
本実施形態によれば、第1カーカスプライ51の第1端部51aは、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側で、サイドウォール部12のうち最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の外側に位置している。ここで、サイドウォール部12のうち最もひずみが大きくなる部分を含むひずみ領域15は、本実施形態のように、通常、トレッド部11とサイドウォール部12との境界部14よりもタイヤ径方向の内側で、かつ、タイヤ10のタイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側に位置している。そのため、第1端部51aをサイドウォール部12のうち最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の外側に配置することで、第1カーカスプライ51におけるビードコア60回りに折り返された部分を、サイドウォール部12におけるタイヤ径方向の外側寄りの部分まで好適に延在させることができる。これにより、サイドウォール部12におけるタイヤ径方向の外側寄りの部分において、タイヤ幅方向に重ねられるカーカスプライ50aの数を多くすることができる。具体的に本実施形態では、サイドウォール部12におけるタイヤ径方向の外側寄りの部分において、折り返された第1カーカスプライ51によって第2カーカスプライ52が挟まれて、カーカスプライ50aが3層に積層されている。したがって、サイドウォール部12の強度を、カーカス層50に設けられた複数のカーカスプライ50aによって好適に向上させることができ、サイドカットが生じることを抑制できる。また、サイドウォール部12においてひずみやすい部分を避けて第1端部51aが配置されるため、車両の走行時におけるタイヤ10のひずみが大きくなることを抑制でき、タイヤ10の耐久性が低下することを抑制できる。
【0051】
また、例えば、ベルト端部31aにおいては、応力が集中しやすく、タイヤ10がひずみやすい。そのため、第1カーカスプライ51の第1端部51aがベルト端部31aに近いと、タイヤ10のひずみが大きくなりやすい。これに対して本実施形態によれば、第1端部51aは、ベルト層30におけるタイヤ幅方向の端部であるベルト端部31aから離れて配置され、第1端部51aとベルト端部31aとの距離Lは、第1端部51aが位置する部分におけるタイヤ10のタイヤ厚さ方向の寸法T1よりも大きい。そのため、距離Lを好適に大きくして、第1端部51aをベルト端部31aから好適に離すことができる。これにより、タイヤ10のひずみが大きくなることを抑制でき、タイヤ10の耐久性が低下することをより抑制できる。具体的に本実施形態では、距離Lを15mm以上としやすく、タイヤ10のひずみが大きくなることを好適に抑制でき、タイヤ10の耐久性が低下することを好適に抑制できる。
以上により、本実施形態のタイヤ10によれば、サイドカットが生じることを抑制しつつ、耐久性が低下することを抑制できる。
【0052】
また、本実施形態によれば、第1カーカスプライ51の第1端部51aがベルト端部31aからタイヤ幅方向の外側に離れて配置されている。そのため、例えば、第1端部51aがベルト端部31aからタイヤ幅方向の内側に離れて配置される場合に比べて、第1カーカスプライ51におけるビードコア60回りに折り返された部分を短くできる。これにより、カーカス層50を製造するために必要な材料を低減でき、かつ、カーカス層50を軽量化できる。したがって、タイヤ10の製造コストを低減でき、かつ、タイヤ10を軽量化できる。
【0053】
また、本実施形態によれば、第1端部51aは、凸部16とタイヤ厚さ方向に重なる位置に配置されている。そのため、第1端部51aとタイヤ10の外側面12aとの間のタイヤ厚さ方向の寸法T3を大きくできる。これにより、タイヤ10のうち第1端部51aよりもタイヤ厚さ方向の外側に位置する部分を好適に厚くすることができ、第1端部51aが位置する部分においてタイヤ10をひずみにくくすることができる。したがって、第1端部51aの位置におけるタイヤ10のひずみをより抑制することができ、タイヤ10の耐久性が低下することをより抑制できる。
【0054】
また、本実施形態によれば、凸部16のタイヤ径方向の内端部は、ベルト層30よりもタイヤ径方向の内側に位置している。そのため、凸部16に第1端部51aを配置することで、第1端部51aをベルト端部31aから、より好適に離して配置することができる。したがって、タイヤ10のひずみが大きくなることをより抑制でき、タイヤ10の耐久性が低下することをより抑制できる。
【0055】
また、本実施形態によれば、第1カーカスプライ51に積層された第2カーカスプライ52の第2端部52aは、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側に位置している。そのため、第2端部52aの位置を、よりタイヤ径方向の外側にすることができ、サイドウォール部12の強度をより向上させることができる。これにより、サイドカットが生じることをより抑制できる。
【0056】
また、本実施形態によれば、第2端部52aは、サイドウォール部12のうち最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の内側に位置している。そのため、サイドウォール部12においてひずみやすい部分を避けて第2端部52aが配置される。これにより、第2カーカスプライ52によってサイドカットが生じることをより抑制しつつ、タイヤ10の耐久性が低下することを抑制できる。
【0057】
また、本実施形態によれば、ビードコア60回りにタイヤ幅方向の外側に折り返された部分において、第1カーカスプライ51は、第2カーカスプライ52よりもタイヤ幅方向の外側に位置し、第1端部51aは、第2端部52aよりもタイヤ径方向の外側に位置している。そのため、第1カーカスプライ51におけるビードコア60回りに折り返された部分によって、第2カーカスプライ52の第2端部52aをタイヤ幅方向の外側から覆うことができる。これにより、第2端部52aが覆われていない場合に比べて、第2端部52aに応力が集中しにくくできる。したがって、第2端部52aにおいてタイヤ10がひずむことを抑制できる。また、タイヤ10の強度を向上させやすく、サイドカットが生じることをより抑制できる。
【0058】
また、本実施形態によれば、第1端部51aが位置する部分におけるタイヤ10のタイヤ厚さ方向の寸法をT1とし、第2端部52aが位置する部分におけるタイヤ10のタイヤ厚さ方向の寸法をT2としたとき、T1:T2=7:4の関係を満たす。寸法T1,T2をこのような関係とすることにより、上述したサイドカットを抑制する効果、および耐久性が低下することを抑制する効果を維持しつつ、第1端部51aが位置する部分におけるタイヤ10のタイヤ厚さ方向の寸法T1を比較的薄くできる。これにより、サイドウォール部12を比較的薄くでき、サイドウォール部12を製造するために必要な材料を低減できる。したがって、タイヤ10の製造コストを低減できる。また、タイヤ10を軽量化できる。また、サイドウォール部12を比較的薄くできることで、転がり抵抗を低減することもできる。このように、本実施形態によれば、上述したようにしてサイドウォール部12の強度を向上できるため、サイドウォール部12を比較的薄くしても、サイドカットが生じることを抑制しつつ、タイヤ10の耐久性が低下することを抑制できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、タイヤ10におけるタイヤ径方向の内端部と第2端部52aとの間のタイヤ径方向の距離H2は、断面高さSHの45%以上、55%以下である。距離H2をこのような数値範囲とすることで、サイドウォール部12のうち最もひずみが大きくなる部分をタイヤ径方向の内側に避けつつ、第2端部52aを好適にタイヤ径方向の外側に配置することができる。これにより、サイドカットが生じることをより抑制しつつ、タイヤ10の耐久性が低下することをより抑制できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、タイヤ10におけるタイヤ径方向の内端部と第1端部51aとの間のタイヤ径方向の距離H1は、断面高さSHの65%以上、75%以下である。距離H1をこのような数値範囲とすることで、サイドウォール部12のうち最もひずみが大きくなる部分をタイヤ径方向の外側に避けつつ、第1端部51aを好適にタイヤ径方向の外側に配置することができる。これにより、サイドカットが生じることをより抑制しつつ、タイヤ10の耐久性が低下することをより抑制できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、第1カーカスプライ51の第1端部51aが、トレッド部11とサイドウォール部12との境界部14に位置している。そのため、第1カーカスプライ51におけるビードコア60回りに折り返された部分を、サイドウォール部12におけるタイヤ径方向の外側寄りの部分までより好適に延在させることができる。これにより、サイドウォール部12におけるタイヤ径方向の外側寄りの部分において、タイヤ幅方向に重ねられるカーカスプライ50aの数を多くすることができる。したがって、サイドウォール部12の強度を、カーカス層50に設けられた複数のカーカスプライ50aによってより好適に向上させることができ、サイドカットが生じることをより抑制できる。
【0062】
また、本実施形態によれば、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側に位置する部分において、第1カーカスプライ51におけるビードコア60回りに折り返された部分とタイヤ10の外側面12aとの間におけるタイヤ厚さ方向の寸法T5は、第1端部51aと外側面12aとの間において最大となる。そのため、タイヤ10のうち第1端部51aよりもタイヤ厚さ方向の外側に位置する部分をより好適に厚くすることができ、第1端部51aが位置する部分においてタイヤ10をよりひずみにくくすることができる。これにより、車両の走行時におけるタイヤ10のひずみが大きくなることをより抑制でき、タイヤ10の耐久性が低下することをより抑制できる。
【0063】
なお、上述した実施形態においては、以下の構成を採用することもできる。
第1カーカスプライ51の第1端部51aは、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側で、サイドウォール部12のうち最もひずみが大きくなる部分よりもタイヤ径方向の外側に位置し、かつ、ベルト層30のベルト端部31aから、第1端部51aが位置する部分におけるタイヤ厚さ方向の寸法T1よりも離れて配置されるならば、特に限定されない。第1端部51aは、境界部14に位置していなくてもよい。タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の外側に位置する部分において、第1カーカスプライ51におけるビードコア60回りに折り返された部分とタイヤ幅方向の外側面12aとの間におけるタイヤ厚さ方向の寸法T5は、第1端部51aにおいて最大とならなくてもよい。第1端部51aは、凸部16とタイヤ厚さ方向に重ならない位置に配置されてもよい。凸部16は、設けられなくてもよい。
【0064】
第1端部51aを有する第1カーカスプライ51が設けられるならば、第2カーカスプライ52の第2端部52aの位置は、特に限定されない。第2端部52aは、タイヤ幅方向の寸法が最大となる位置WLよりもタイヤ径方向の内側に位置してもよい。また、第2端部52aは、境界部14に位置してもよい。
【0065】
カーカス層50は、3つ以上のカーカスプライ50aを有していてもよい。また、複数のカーカスプライ50aは、第1カーカスプライ51の第1端部51aと同様のタイヤ径方向位置に先端部が配置される他のカーカスプライ50aを含んでいてもよい。また、第1カーカスプライ51と第2カーカスプライ52とは、互いに積層順が逆となっていてもよい。すなわち、ビードコア60回りにタイヤ幅方向の外側に折り返された部分において、第1カーカスプライ51が、第2カーカスプライ52よりもタイヤ幅方向の内側に位置してもよい。カーカス層50は、積層された複数のカーカスプライ50aの内面に貼り付けられたインナーライナーを有してもよい。
タイヤ10は、どのような車両に用いられてもよい。
なお、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0066】
10…タイヤ、11…トレッド部、11a…トレッド踏面部、12…サイドウォール部、12a…外側面、13…ビード部、16…凸部、30…ベルト層、31a…ベルト端部、50…カーカス層、50a…カーカスプライ、51…第1カーカスプライ、51a…第1端部、52…第2カーカスプライ、52a…第2端部、60…ビードコア、SH…断面高さ
図1
図2