(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
B64C 13/18 20060101AFI20220912BHJP
B64C 13/20 20060101ALI20220912BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B64C13/18 Z
B64C13/20 Z
B64C39/02
(21)【出願番号】P 2018221380
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】田中 昌廣
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-247008(JP,A)
【文献】米国特許第04980835(US,A)
【文献】特表2005-538884(JP,A)
【文献】米国特許第05730394(US,A)
【文献】中国特許出願公開第1631733(CN,A)
【文献】特開2012-245906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/18
B64C 13/20
B64C 39/02
B64C 27/57
B64C 27/04
A63H 27/133
G05D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔制御ヘリコプタのメインロータの回転数を検出する回転数検出手段と、
ロール軸、ピッチ軸、ヨー軸からなる制御軸の角速度を検出するジャイロセンサと、
前記ジャイロセンサにて検出された角速度と操縦信号に基づいて前記制御軸に関する動作を制御する制御アクチュエータの制御信号を生成する制御手段と、
を有する遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置であって、
前記制御手段は、
前記遠隔制御ヘリコプタの複数の飛行状態ごとに予め設定された前記ジャイロセンサ
が検出した角速度信号を増幅する度合いを示すジャイロ感度及び前記メインロータの設定回転数の情報を有しており、前記複数の飛行状態から選択される飛行状態における前記メインロータの設定回転数と前記回転数検出手段が検出したメインロータの回転数との差分に応じて前記ジャイロ感度を補正することを特徴とする遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記回転数検出手段にて検出した前記メインロータの回転数と前記設定回転数との差分に所定の補正係数を乗じて得た数値で前記ジャイロ感度を補正することを特徴とする請求項1に記載の遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記メインロータの回転数の変化量と前記ジャイロ感度補正値との関係を示す制御データを有しており、前記設定回転数と前記回転数検出手段が検出したメインロータの回転数との差分に対応した前記制御データのジャイロ感度補正値により前記ジャイロ感度を補正することを特徴とする請求項1に記載の遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記メインロータが予め設定された回転数以下になった場合に、ジャイロ機能をオフにすることを特徴とする請求項1に記載の遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、PID制御から比例制御に切り替えて前記ジャイロ感度の補正を行うことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模型ヘリコプタや空撮、農薬散布ヘリコプタ等の遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば模型ヘリコプタなどの遠隔制御ヘリコプタ11は、基本的に
図3のような構成であり、機体11aについたメインロータ12と尾部11bにあるテールロータ13で駆動の制御を行う。メインロータ12は、回転によって上昇力を発生し、ピッチ角度を調整することで遠隔制御ヘリコプタ11の上昇・下降・前後・左右の駆動を制御する。テールロータ13は、メインロータ12の回転による反動トルクを打ち消す作用と、遠隔制御ヘリコプタ11を水平に回転運動させる制御を行う。
【0003】
ところで、遠隔制御ヘリコプタ11には、飛行中の姿勢を安定させるため、例えば下記特許文献1に開示されるように、ジャイロ装置(駆動制御装置)が機体11aに実装されている。ジャイロ装置は、ロール軸、ピッチ軸、ヨー軸それぞれの角速度を検出するジャイロセンサを搭載しており、各軸のジャイロセンサが検出した角速度と操縦信号を比較し、操縦信号に追従するようにアクチュエータを操作し、遠隔制御ヘリコプタ11を制御する。
【0004】
また、エンジンや電動モータのガバナ装置を内蔵したジャイロ装置も実用化されている。このガバナ装置を内蔵したジャイロ装置によれば、遠隔制御ヘリコプタ11の飛行中、メインロータ12の負荷が変化してもメインロータ12の回転数を一定回転に保つことができる。
【0005】
さらに、遠隔制御ヘリコプタ11を遠隔制御するための送信機として、ジャイロ装置のジャイロ感度やガバナ機能の設定をスイッチ操作で切り替えられるフライトコンディション(フライトモード)機能を備えたものが知られている。
【0006】
このフライトコンディション機能では、遠隔制御ヘリコプタ11の飛行状態(例えばホバリング、ループ、ロール、オートローテーションなど)に応じてモード分けし、送信機のスイッチ装置によってモードの切り替えが行われ、各モード毎にメインロータ12の回転数、3軸(ロール軸、ピッチ軸、ヨー軸)の操作量、3軸のジャイロ感度が予め設定される。
【0007】
具体的な設定例を示すと、例えばフライトコンディション機能により遠隔制御ヘリコプタ11の姿勢を強固に保持したい場合には、ホバリングのコンディション設定として、メインロータ12の回転数を上空用より低めに設定し、ジャイロ感度を高めに設定する。また、推力が必要な上空飛行では、メインロータ12の回転数を高く設定し、ジャイロ感度は操縦追従性を良くするためにホバリング時よりも下げた設定をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の設定では、例えば遠隔制御ヘリコプタ11が上空飛行していたときに、ジャイロ感度が高くなった状態でメインロータ12の回転数が上がってオーバースピードになり、操縦中でジャイロ感度の変更が行えない場合には、ジャイロ感度が高いままとなり、テールロータ13が振動を起こして姿勢が安定しないことがある。逆に、ジャイロ感度が低くなった状態で急上昇などのように負荷が急に加わり、メインロータ12の回転数が落ち込み、操縦中でジャイロ感度の変更が行えない場合には、ジャイロ感度が低いままとなり、ジャイロ感度が足りないために遠隔制御ヘリコプタ11の機体11aがふらつくことがある。
【0010】
また、遠隔制御ヘリコプタ11のエンジンまたは電動モータを停止し、遠隔制御ヘリコプタ11を惰性で降下させて着陸させる際には、送信機のスイッチ操作によりフライトコンディション機能をオートローテーションの設定に切り替える場合がある。
【0011】
しかしながら、オートローテーションでは、メインロータ12の回転数が下がるため、一般的にジャイロ感度を高めに設定しておき、姿勢を保つように設定される。このため、操舵の入り具合が悪く、遠隔制御ヘリコプタ11の機体11aが傾いても姿勢を素早く立て直すことができず、着陸に失敗したり、着陸直後に転倒させてしまうことがある。
【0012】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、従来よりも安定した遠隔制御を行うことができる遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するため、本発明に係る遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置は、遠隔制御ヘリコプタのメインロータの回転数を検出する回転数検出手段と、
ロール軸、ピッチ軸、ヨー軸からなる制御軸の角速度を検出するジャイロセンサと、
前記ジャイロセンサにて検出された角速度と操縦信号に基づいて前記制御軸に関する動作を制御する制御アクチュエータの制御信号を生成する制御手段と、
を有する遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置であって、
前記制御手段は、
前記遠隔制御ヘリコプタの複数の飛行状態ごとに予め設定された前記ジャイロセンサが検出した角速度信号を増幅する度合いを示すジャイロ感度及び前記メインロータの設定回転数の情報を有しており、前記複数の飛行状態から選択される飛行状態における前記メインロータの設定回転数と前記回転数検出手段が検出したメインロータの回転数との差分に応じて前記ジャイロ感度を補正することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置は、前記制御手段が、前記回転数検出手段にて検出した前記メインロータの回転数と前記設定回転数との差分に所定の補正係数を乗じて得た数値で前記ジャイロ感度を補正してもよい。
【0015】
本発明に係る遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置は、前記制御手段が、前記メインロータの回転数の変化量と前記ジャイロ感度補正値との関係を示す制御データを有しており、前記設定回転数と前記回転数検出手段が検出したメインロータの回転数との差分に対応した前記制御データのジャイロ感度補正値により前記ジャイロ感度を補正してもよい。
【0016】
本発明に係る遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置は、前記制御手段が、前記メインロータが予め設定された回転数以下になった場合に、ジャイロ機能をオフにしてもよい。
【0017】
本発明に係る遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置は、前記制御手段が、PID制御から比例制御に切り替えて前記ジャイロ感度の補正を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、選択される飛行状態におけるメインロータの設定回転数とメインロータの実測回転数との差分に応じて制御軸(ロール軸、ピッチ軸、ヨー軸)のジャイロ感度を補正するので、従来よりも安定して遠隔制御ヘリコプタを遠隔制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置のブロック構成図である。
【
図2】メインロータの回転数の変化量に対するジャイロ感度補正値を示す制御データの一例を示す図である。
【
図3】遠隔制御ヘリコプタの機体と制御に係る軸を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、ジャイロ装置1は、ジャイロ機能に加えてガバナ機能とフライトコンディション(フライトモード)機能を有し、設定手段2、回転数検出手段3、ジャイロセンサ4、制御手段5を備えた駆動制御装置として概略構成され、例えば
図3の遠隔制御ヘリコプタ11の機体11aに実装される。
【0022】
なお、ガバナ機能とは、メインロータ12の回転数を予め設定した設定回転数に制御する機能である。
【0023】
また、フライトコンディション機能は、遠隔制御ヘリコプタ11の飛行状態(例えばホバリング、ループ、ロール、着陸時のオートローテーションなど)毎にモード分けした機能であり、各モード毎にメインロータ12の回転数、制御軸の操作量、制御軸のジャイロ感度が予め設定される。このフライトコンディション機能のモードは、操縦者による送信機6のスイッチ操作によって切り替えが行われる。
【0024】
なお、制御軸は、
図3に示すように、ロール軸R(機体11aを前後に貫通する軸)、ピッチ軸P(機体11aを左右に貫通する軸)、ヨー軸Y(機体11aを上下に貫通する軸)の3軸で構成される。
【0025】
まず、本実施の形態で用いられるジャイロ感度について説明する。ジャイロ感度とは、ジャイロ装置1の制御ゲインのことであり、通常、ジャイロ装置1は機体11aの姿勢の変化をジャイロセンサ4が検知し、角速度信号(センサ信号)を増幅することで、角速度信号の大きさに応じた修正舵信号(後述の制御信号に相当)を後述する制御アクチュエータ8(サーボモータなど)に送り、機体11aの動揺を停止させるべく動作する。このときの角速度信号を増幅する度合い(大きさ)がジャイロゲインであり、ジャイロ感度に相当する。
【0026】
したがって、ジャイロゲイン(ジャイロ感度)が大きいほど、機体11aの姿勢変化に対する修正舵の操作量が大きくなるので、外乱(例えば風や操作による反トルクの影響)に対する応答速度は早くなるが、あまりゲイン(感度)を大きくし過ぎるとハンチング現象(機体11aが小刻みに振れて振動する一種の発振現象)が起こり、安定した飛行ができなくなる。
【0027】
逆に、ジャイロゲイン(ジャイロ感度)が小さいと、ジャイロ装置1を用いた効果が充分得られなくなるので、姿勢を保持する力が弱くなり、挙動が不安定になる。そのため、ジャイロゲイン(ジャイロ感度)は適切に調整する必要がある。なお、適切なゲイン(感度)設定は機体11aの特性や使用する制御アクチュエータ8(サーボモータなど)によって変わるので、その都度調整する必要がある。
【0028】
図1において、送信機6は、遠隔制御ヘリコプタ11を遠隔制御するため、操縦者のスティック操作(スロットル操作、エルロン操作、エレベーター操作、ラダー操作)に応じた操作信号を電波にて送信する。受信機7は、送信機6からの操作信号を電波にて受信し、受信した電波を元の操作信号に復調してジャイロ装置1に出力する。
【0029】
設定手段2は、ジャイロ機能のオン/オフ、ガバナ機能のオン/オフ、飛行状態(例えばホバリング、ループ、ロール、着陸時のオートローテーションなど)毎のメインロータ12の回転数と制御軸(ロール軸R、ピッチ軸P、ヨー軸Y)のジャイロ感度設定値、後述するジャイロ感度補正係数などを設定する。
【0030】
ジャイロ感度設定値は、制御軸(ロール軸R、ピッチ軸P、ヨー軸Y)の角速度に基づいて遠隔制御ヘリコプタ11の姿勢の変化を打ち消すように制御アクチュエータ8を制御するため、遠隔制御ヘリコプタ11の姿勢を保持したい位置からのずれ量に対する設定値である。具体的には、制御アクチュエータ8のサーボモータをPWM制御してスワッシュプレートの傾きを変えて遠隔制御ヘリコプタ11の姿勢を戻す際に、ある角速度に対してサーボモータのPWM制御によりスワッショプレートをどのくらい動かすかを決める設定値である。
【0031】
回転数検出手段3は、遠隔制御ヘリコプタ11の主回転翼であるメインロータ12の回転数計測器である。回転数検出手段3は、メインロータ12の回転数を検出し、検出した回転数(実測回転数)に応じたメインロータ回転数信号を制御手段5に出力する。
【0032】
ジャイロセンサ4は、遠隔制御ヘリコプタ11の姿勢の変化を検知するため、制御軸(ロール軸R、ピッチ軸P、ヨー軸Y)の角速度を検出する角速度センサである。ジャイロセンサ4は、遠隔制御ヘリコプタ11のロール軸R、ピッチ軸P、ヨー軸Yそれぞれの角速度を検出し、検出した角速度に応じた角速度信号(ロール軸角速度信号、ピッチ軸角速度信号、ヨー軸角速度信号)を制御手段5(ジャイロ感度補正手段5a)に出力する。
【0033】
制御手段5は、ジャイロ装置1を統括制御するもので、遠隔制御ヘリコプタ11の複数の飛行状態(例えばホバリング、ループ、ロール、着陸時のオートローテーションなど)毎に予め設定されたジャイロセンサ4の制御軸(ロール軸R、ピッチ軸P、ヨー軸Y)のジャイロ感度設定値とメインロータ12の設定回転数の情報を有する。
【0034】
制御手段5は、設定手段2からの設定情報、受信機7からの操作信号、回転数検出手段3からのメインロータ回転数信号、ジャイロセンサ4からの制御軸(ロール軸R、ピッチ軸P、ヨー軸Y)の角速度信号に基づいて生成される制御信号により制御アクチュエータ8を制御するものであり、ジャイロ感度補正手段5a、アクチュエータ制御手段5bを備える。
【0035】
ジャイロ感度補正手段5aは、ジャイロ機能が有効な場合、以下に説明する(1)~(4)の何れかの方法により制御軸(ロール軸R、ピッチ軸P、ヨー軸Y)のジャイロ感度を補正する。
【0036】
(1)飛行状態に応じて設定されたメインロータ12の設定回転数と回転数検出手段3にて検出したメインロータ12の実測回転数の差分に応じて制御軸のジャイロ感度を補正する。すなわち、メインロータ12の実測回転数を検出し、送信機7から設定されるガバナ機能の設定回転数に対して、実際の回転数に差がある場合、その回転数の差に対して、制御軸のジャイロ感度を補正する。
【0037】
ロール軸Rのジャイロ感度を補正する場合を例にとって説明すると、飛行状態に応じて設定されたメインロータ12の設定回転数をRPMs、回転数検出手段3にて検出した実測回転数をRPMx、飛行状態に応じて設定されたロール軸Rのジャイロ感度設定値をGAINr、飛行状態に応じて設定されたロール軸Rのジャイロ感度補正係数(回転数差1rpmあたりの感度補正値)をCOMPrとすると、ロール軸Rの補正後のジャイロ感度AGAINrは、AGAINr=(RPMs-RPMx)×COMPr+GAINrの計算式によって算出される。
【0038】
なお、ピッチ軸Pやヨー軸Yの補正後のジャイロ感度についても、上述したロール軸Rと同様の計算式によって算出することができる。
【0039】
(2)設定手段2にて所定変化量(例えば10rpm)毎に設定記憶される制御軸のジャイロ感度補正値を用い、回転数検出手段3にて検出したメインロータ12の実測回転数の変化量に対応するジャイロ感度補正値で制御軸のジャイロ感度を補正する。
【0040】
(3)ロール軸R、ピッチ軸P、ヨー軸Y毎に設定された制御データを用いて制御軸のジャイロ感度を補正する。すなわち、飛行状態に応じて設定されたメインロータ12の設定回転数と回転数検出手段3にて検出したメインロータ12の実測回転数との差分に対応した制御データのジャイロ感度に補正する。
【0041】
図2はメインロータ12の回転数の変化量に対するジャイロ感度補正値を示すロール軸Rの制御データの一例を示す図である。
【0042】
図2において、横軸はメインロータ12の回転数の変化量(実測回転数-設定回転数)、横軸の0rpmは飛行状態に応じて設定されたメインロータ12の設定回転数(例えば1500rpm)、縦軸はロール軸Rのジャイロ感度補正値である。
図2の例では、メインロータ12の回転数が上がったときのハンチングを抑えるため、やや大きめにジャイロ感度を下げる必要があり、+側と-側で非対称のグラフになっている。
【0043】
この
図2を用いたロール軸Rのジャイロ感度の補正では、例えば飛行状態に応じて設定されたメインロータ12の設定回転数が1500rpm、回転検出手段3にて検出したメインロータ12の実測回転数が1560rpmの場合、回転数の変化量が60rpmなので、ジャイロ感度補正値は-10となる。このジャイロ感度補正値-10をジャイロ感度設定値に加えることによりロール軸Rのジャイロ感度が補正される。
【0044】
なお、
図2において、±100rpmを超える場合には、±100rpmのときのジャイロ感度補正値を用いる。
【0045】
(4)(1)~(3)のジャイロ感度の補正において、メインロータ12の回転数が予め設定された回転数(例えば100rpm)まで下がった場合、操舵の効きが良くなるように、制御軸のジャイロ感度を予め設定されたジャイロ感度設定値よりも低い必要最小限値または0%(ジャイロ機能をオフ)に補正する。または、制御軸のジャイロ感度をPID制御からP(比例)制御に切り替えて補正する。P制御は、PID制御のような誤差を積分し続ける積分動作がないので、操舵の効きが良くなる。これにより、着陸時に遠隔制御ヘリコプタ11の機体11aが傾いても送信機6のスティック操作により姿勢を立て直すことが可能になる。
【0046】
アクチュエータ制御手段5bは、ジャイロ感度補正手段5aにて補正された制御軸(ロール軸R、ピッチ軸P、ヨー軸Y)のジャイロ感度設定値に基づき、ジャイロセンサ4にて検出した制御軸の角速度に応じて制御軸に関する動作を制御する制御アクチュエータ8の制御信号を生成し、操縦信号に追従するように制御アクチュエータ8を制御信号により制御する。
【0047】
制御アクチュエータ8は、ロール制御アクチュエータ8a、ピッチ制御アクチュエータ8b、ヨー制御アクチュエータ8cからなり、アクチュエータ制御手段5bにて生成される制御信号によりPWM制御されるサーボモータを含み、操縦信号に追従するようにサーボモータの回転によってロール角、ピッチ角、ヨー角をそれぞれ制御する駆動機構で構成される。
【0048】
なお、
図1の例では、設定手段2がジャイロ装置1に内蔵された構成として説明したが、この構成に限定されるものではない。例えばジャイロ装置1に電気的に接続可能な別体の設定器を設定手段2として構成する他、送信機6を設定手段2として用い、送信機6のスティックやスイッチの操作により受信機7を介して設定を行うこともできる。
【0049】
そして、上記のように構成されるジャイロ装置1にて制御軸(ロール軸R、ピッチ軸P、ヨー軸Y)のジャイロ感度を補正する場合には、フライトコンディション(フライトモード)機能として、予め飛行状態に応じてメインロータ12の設定回転数、制御軸のジャイロ感度設定値、制御軸の操作量を設定しておく。
【0050】
遠隔制御ヘリコプタ11を遠隔操縦するため、操縦者のスティック操作に基づく操作信号が電波として送信機6から送信されると、受信機7が送信機6からの電波を受信し、受信した電波を元の操作信号に復調してジャイロ装置1のジャイロ感度補正手段5aに入力する。また、ジャイロ感度補正手段5aには、設定手段2からの設定情報、回転数検出手段3からのメインロータ回転数信号、ジャイロセンサ4からの制御軸の角速度信号がそれぞれ入力される。
【0051】
ジャイロ感度補正手段5aでは、上述した(1)~(4)の何れかの方法により制御軸のジャイロ感度を補正する。そして、アクチュエータ制御手段5bは、ジャイロ感度補正手段5aにて制御軸のジャイロ感度が補正されると、補正された制御軸のジャイロ感度設定値に基づき、ジャイロセンサ4にて検出した制御軸の角速度に応じて制御アクチュエータ8の制御信号を生成し、操縦信号に追従するように制御アクチュエータ8を制御信号により制御する。
【0052】
このように、本実施の形態によれば、選択される飛行状態におけるメインロータ12の設定回転数と回転数検出手段3が検出したメインロータ12の回転数との差分に応じて制御軸(ロール軸R、ピッチ軸P、ヨー軸Y)のジャイロ感度を補正するので、従来よりも安定して遠隔制御ヘリコプタ11を遠隔制御することができる。
【0053】
具体的には、遠隔制御ヘリコプタ11が上空飛行していたときに、メインロータ12の回転数が上がってオーパースピードになっても、回転数が上昇した分に応じてジャイロ感度を下げるように補正して調整することができる。その結果、テールロータ13が振動を起こすことなく安定した飛行を行うことができる。
【0054】
また、遠隔制御ヘリコプタ11のエンジンまたは電動モータを停止し、オートローテーション機能で着陸して降下してくるとき、メインロータ12の回転数がある一定の回転数(例えば100rpm)まで下がると、制御軸のジャイロ感度を予め設定されたジャイロ感度設定値よりも低い必要最小限値または0%(ジャイロ機能オフ)にするか、P制御で制御軸のジャイロ感度を補正する。これにより、着地近くではジャイロ感度を低く抑えることができ、遠隔制御ヘリコプタ11の機体11aが傾いても送信機6の操舵が直ぐに効くので、姿勢を立て直すことが可能になる。
【0055】
以上、本発明に係る遠隔制御ヘリコプタの駆動制御装置の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
1 駆動制御装置(ジャイロ装置)
2 設定手段
3 回転数検出手段
4 ジャイロセンサ
5 制御部
5a ジャイロ感度補正手段
5b アクチュエータ制御手段
6 送信機
7 受信機
8 制御アクチュエータ
8a ロール制御アクチュエータ
8b ピッチ制御アクチュエータ
8c ヨー制御アクチュエータ
11 遠隔制御ヘリコプタ
11a 機体
11b 尾部
12 メインロータ
13 テールロータ
R ロール軸
P ピッチ軸
Y ヨー軸