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特許7139245風味付けされたアルコール飲料およびその製造方法
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  • 特許-風味付けされたアルコール飲料およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】風味付けされたアルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12H 6/02 20190101AFI20220912BHJP
   C12G 3/00 20190101ALI20220912BHJP
【FI】
C12H6/02
C12G3/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018519014
(86)(22)【出願日】2016-11-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 US2016064204
(87)【国際公開番号】W WO2017095915
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-11-07
(31)【優先権主張番号】62/261,287
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518123523
【氏名又は名称】エドリントン ディスティラーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EDRINGTON DISTILLERS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス ビー ホール
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ エム ガーガッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース フォーシー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス ジェー ビープル
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】実公昭13-012055(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0149423(US,A1)
【文献】米国特許第02145243(US,A)
【文献】特開平08-009956(JP,A)
【文献】特開平04-084882(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0092636(US,A1)
【文献】米国特許第02807547(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12H、C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸留酒に、より熟成した蒸留酒の知覚特性を付与するための方法であって、当該方法は、
アルコール度数が40%~57%である蒸留酒を容器に導入するステップと、
前記容器内で且つ前記蒸留酒の上に吊るされたインナーホルダーに植物を配置するステップと、
前記容器を密封するステップと、
前記容器内で所定の最大圧力が達成されたら該圧力を開放して前記容器の内部圧力が所定のより低い圧力に戻るように、前記容器の前記内部圧力を5psi~150psiに上昇させるステップであって、前記内部圧力が減圧される前に前記蒸留酒が前記所定の最大圧力で保持される最大時間が24時間未満である、ステップと、を含み、
前記上昇させるステップを1回以上実行する、方法。
【請求項2】
前記容器の前記内部圧力を上昇させる前記ステップを繰り返すステップをさらに含み、前記容器の前記内部圧力を合計10回にわたって増減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器の前記内部圧力を上昇させる前記ステップを繰り返すステップをさらに含み、前記容器の前記内部圧力を合計2~6回にわたって増減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法の全プロセス時間は、24時間未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記容器を密封する前に、前記蒸留精液750mL当たり30g~60gの割合で、前記容器に木材チップを添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記木材チップの少なくとも一方側を事前に炭化またはトーストし、該木材チップを、前記容器へ導入する前に仕上げる、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記容器に導入する前に、前記木材チップをスモークする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記容器に導入する前に、前記木材チップを仕上げる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記木材チップの一次側(長さ×幅)の寸法は、長さが1~2インチ、幅が1/2~1インチであり、且つ、厚さは、1/8~1/4インチである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記木材チップのオープングレイン表面積が20%以上である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記蒸留酒の前記アルコール度数が40%~45%である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記インナーホルダーが、複数の孔を有するかまたはメッシュであり、前記液体内容物からの蒸気を通過させることができる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
蒸留酒に、より熟成した蒸留酒の知覚特性を付与するための方法であって、当該方法は、
アルコール度数が40%~45%である蒸留酒を容器に導入するステップと、
前記容器内で且つ前記蒸留酒の上に吊るされたインナーホルダーに植物を配置するステップと、
前記容器を密封するステップと、
前記容器内で所定の最大圧力が達成されたら該圧力を開放して前記容器の内部圧力が所定のより低い圧力に戻るように、前記容器の前記内部圧力を5psi~150psiに上昇させるステップであって、前記内部圧力が減圧される前に前記蒸留酒が前記所定の最大圧力で保持される最大時間が24時間未満である、ステップと、を含み、
前記上昇させるステップを1回以上実行する方法。
【請求項14】
前記方法の全プロセス時間は、24時間未満である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2015年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/261,287号の利益を主張するものである。
【0002】
<連邦支援研究に関する声明>
適用なし。
【0003】
<共同研究協定に対する締約国の名称>
適用なし。
【0004】
<コンパクトディスクで提出された資料の参照による組み込み>
適用なし。
【0005】
本発明は、概して、アルコール飲料に関する。より詳細には、より強い風味と魅力的な知覚特性を付与するための方法および該方法により製造された蒸留酒に関する。
【背景技術】
【0006】
伝統的なウイスキーの製造方法においては、高品質の蒸留物をオーク樽で熟成させ、木材によって色、滑らかさ、風味およびその他の特性をウイスキーに加える。しかしながら、木製の樽はますます高価になってきており、また、木製の樽の多孔質性は(熟成プロセスにおいては重要である一方で)、顕著な蒸発損失をもたらし得る。
【0007】
さらに、木材費用に関するコスト上の問題は、特定の蒸留酒は3~50年またはそれ以上の年月をかけて熟成し得る、という実際の熟成プロセスにある。一般的に、長期間にわたって熟成させた蒸留酒は、樽の木材とより多くの相互作用が可能となり、消費者が望むようなより洗練された風味、味、色、後味および滑らかさを発現させることができる。
【0008】
この問題を複雑にしているのは、熟成したウイスキーの在庫が減少しており、伝統的なスコッチウイスキーや他の熟成した蒸留酒を消費した年代である「ベビーブーム」世代のウイスキーの在庫が減少している、という事実である。
【0009】
若い(熟成期間が短い)蒸留酒は、辛くて粗い傾向がある。一般に、蒸留酒は、蒸留酒を保持する樽をなす木材との相互作用を介して、購入の好みや「滑らかさ」および「飲みやすさ」といった認識によって測定される、消費者が一般に好む知覚特性を発現する。
【0010】
業界内では、異なるプロセスによって蒸留酒に風味付けできることが知られている。多くの場合、添加される風味は、人工的なものであるか、そうでなければ自然で馴染みのある風味の再現を試みて「実験室で作られた」ものである。しかしながら、蒸留酒をたしなむ若い世代は、より強い風味でありつつも蒸留酒の本来の風味を隠すのではなく補完して後押しする、より自然な風味を求めている。
【0011】
これまで、伝統的に熟成した蒸留酒の知覚特性を有する、より若い蒸留酒を製造する試みがなされてきた。その一つが、特許文献1に記載される「エチルアルコールの熟成方法」である。特許文献1は、「コニャックを熟成させるための熟成促進」のプロセスを開示しており、該プロセスは、10mm厚のオークリベットをアルコール入りタンクに装填するステップと、その後、タンクの内圧を24~48時間かけて2~5ATAに上昇させてから24~48時間無圧にするステップと、を含む。特許文献1に記載されるプロセスは従来の方法に比べて速いが、より迅速なサイクルタイムによって同様の結果を得ることが好ましい。
【0012】
Lixによる特許文献2のような他の特許は、加圧容器内でウイスキーを製造するためのプロセスに関する一般的な情報を提供しているが、アルコールを入れた容器内に配置される樽板のプロファイルを教示する以外には、該プロセスに関する多くの詳細を提供していない。
【0013】
Watsonによる特許文献3は、「エタノールベースの飲料の熟成を加速させる」ための方法を開示している。当該方法では、少なくとも200psi~5000psiの圧力を用いる方法を非常に一般的に説明しており、それ未満の圧力は所望の反応を「得るのに不十分である」であるとしている。しかしながら、そのような圧力は、生産工程で実現するのは非常にコスト高であるとともに、大半の生産設備では達成できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】ロシア登録特許第2084510号明細書
【文献】米国特許第8889206号明細書
【文献】米国特許出願第2010/092636号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、木製の樽と天然香料を用いて複数年かけて熟成させることにより発現される知覚特性を、1日未満の全プロセス時間かつより低い適応圧力によって得ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、成熟した蒸留酒の知覚特性を、若い蒸留酒に付与するための方法に関する。この方法は、アルコール度数が約40%~約57%である蒸留酒を容器に導入するステップと、蒸留酒の上にあるインナーホルダーに植物を吊るすステップと、容器を密封するステップと、容器内で所定の最大圧力が達成されたら該圧力を開放して容器の内部圧力が所定のより低い圧力に戻るように、容器の内部圧力を約5psi~約150psiに上昇させるステップと、を含む。容器の内部圧力の増減は、必要に応じて繰り返すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】例示的な一実施形態に係る蒸留酒の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、本発明は、天然香料を用いた風味豊かな蒸留酒の知覚特性を、有意に短期間で蒸留酒に付与する方法を含む。
【0019】
なお、本発明の方法の特徴は、特定の消費者市場に向けられていることに留意されたい。特に、本発明の方法の特徴は、現在「ミレニアルズ」として認識されている、一般に、1980年~2000年生まれを含む世代が魅力を感じることが判明している、蒸留酒における風味、質感、色、滑らかさ、および、飲みやすさの知覚特性を提供する。
【0020】
この方法を研究するにあたっては、21~39歳の消費者をアルコール消費法に沿ってリサーチした。本発明の方法に従って得られる蒸留酒の知覚特性は、伝統的なウイスキー、バーボンまたは他の蒸留酒の酒飲みにとっては、総じて美味しくない可能性がある。しかしながら、ミレニアルズは最も勢いのある消費者に成長しているので、本発明の方法および当該方法により得られた完成品に関して実施した調査は、主にミレニアルズに焦点を当てている。また、分野横断的な業界慣習と同様に、商品およびサービスの新しいカテゴリに導入されているがため法的にその製品を使用することができる、若年層を惹きつける必要がある。
【0021】
図面を参照すると、蒸留酒を蒸気注入する方法が示されている。この方法では、容器内の蒸留酒の上に吊るすことができるインナーホルダーを用いている。
【0022】
インナーホルダー内には、植物、スパイスまたは他の香味料が配置されている。当該植物、スパイスまたは他の香味料は、蒸留酒製造の当業者に既知のものである。
【0023】
インナーホルダーは、容器に入れられた液体状の蒸留酒の上に吊るされている。従って、蒸留酒がインナーホルダーやその内容物に直接接触することはない。なお、容器は閉鎖系である。
【0024】
インナーホルダーは、インナーホルダーの内容物を該インナーホルダーから落下させないようにするが、液体の内容物からの蒸気を通過させることができるように、穿孔されているかまたは複数の孔を有していることが好ましい。
【0025】
本明細書全体を通して使用される蒸留酒という用語は、少なくとも5体積%のアルコール(ABV)を含有する蒸留された飲料をいう。
【0026】
蒸留酒は、ウイスキー、スコッチウイスキー、バーボン、ウォッカ、ジン、ラム酒、ブランデー、オー・ドゥ・ヴィ(フルーツブランデーまたはシュナップス)、テキーラ、白酒、ソジュ、アグアルディエンテ、パリンカ、カシャーサ、シンガニ、ボロヴィチュカ、スリヴォヴィッツ、ムーンシャイン、蒸留精液もしくは若い蒸留酒のいずれか、または、それらの組み合わせとすることができる。本発明における蒸留酒のアルコール度数は、約40%~約57%であることが好ましいことが判明している。
【0027】
例示的な一実施形態では、木材チップを取得して容器内の蒸留酒と混合するが、これは一例である。
【0028】
木材チップを使用する場合、木材チップは任意の木材から供給することができる。好ましくは、木材チップはオーク樽から供給される。例示的な一実施形態において、木材チップの一次側(長さ×幅)の寸法は、長さが約1~約2インチ、幅が約1/2インチ~約1インチであり、且つ、厚さは、約1/8~約1/4インチである。木材チップの形状は、実質的に矩形状として説明されているが、当業者には、木材チップの形状およびサイズが変化することは理解される。
【0029】
木材チップを使用する場合、容器に木材チップを導入して、容器内で蒸留酒を木材チップと混合する。
【0030】
木材チップに加えて、または、木材チップの代替として、本発明の方法では、ナッツの殻を蒸留酒との混合に用いることができる。
【0031】
吊るされた植物および蒸留酒を保持している容器を密封して、密封した容器の内部における測定圧力が最低でも5psiに上昇するまで加熱するが、約150psiは超えないようにする。
【0032】
続いて、容器を熱から取り出し、実質的に室温まで冷却して、容器の内部圧力を所定のより低い圧力まで低下させる。
【0033】
木材チップと蒸留酒の混合物が入った容器を約5psi~150psiの雰囲気に加熱し、その後、該容器の温度を冷却して標準圧力にすることは、熟成の1サイクルと考えられる。
【0034】
容器の内部圧力が最大圧力に達したら、圧力を低下させて標準圧力にすることが好ましい。換言すれば、容器の内容物を長時間にわたって最大圧力のもとで保持しないことが好ましく、所望の知覚特性に基づいて24時間未満とすることが好ましい。とはいえ、いったん最大圧力に達してから減圧することが好ましい。各サイクルの実際の所要時間は、蒸留酒、植物および木材の量、並びに、最大圧力、所望の味覚特性および生産効率などに基づいて変化する。
【0035】
蒸留酒と、植物と、任意の木材チップと、の混合は1サイクル以上行うが、実際のサイクル数は、結果として得られる風味付けされた蒸留酒に求められる所望の知覚特性に基づいて変化する。このサイクルは、結果として得られる風味付けされた蒸留酒が、ミレニアル世代の消費者に望まれる知覚特性を有することが要求される。
【0036】
より好ましいサイクル数は、結果として得られる風味付けされた蒸留酒あたり2~5回である。
【0037】
所望のサイクル数を実行した後、結果として得られる風味付けされた蒸留酒を濾過して、あらゆる粒子状物質からそれを分離する。結果として得られる風味付けされた蒸留酒は、その後、貯蔵または消費される。
【0038】
実験によって、容器の内部圧力が上昇すると、蒸気に含まれる蒸留酒分子がインナーホルダーおよびその内容物を通過し、インナーホルダーの内容物のエッセンスおよび風味の一部が蒸留酒に混ざることが示された。これは、インナーホルダーの内容物を蒸留酒に浸したり、蒸留酒を蒸留したり、開放系である「カーターヘッドスチル」として知られる、蒸留液の滴下または植物系への通過を行うこととは対照的である。本発明のシステムは、バッチ式の閉鎖系である。
【0039】
木材チップを使用する場合、容器の内部圧力が上昇すると、蒸留酒分子が木材チップに押し込まれて、蒸留酒が木材チップの表面だけでなく内部と相互作用することが実験によって示された。容器の内部圧力が低下すると、蒸留酒が木材チップから排出される。これにより、木材の内部の一部に蒸留酒が導入され、該木材の内部の一部が蒸留酒と相互作用して新しい化合物を生成する相互作用が引き起こされる。
【0040】
圧力は、約5psi~約150psiの間であることが最も好ましい。なお、このより低い圧力は、従来技術および当業者が設定すべきであると主張する圧力に反していることに留意されたい。しかしながら、このより低い圧力によれば、結果として得られる風味付けされたアルコールが、関心のある消費者向けの蒸留酒に最も望ましい知覚特性を有するものとなることが分かった。
【0041】
驚くべきことに、木材チップの2つの一次側の少なくとも一方または木材チップ全体を炭化させると、本発明の方法が促進されることが分かった。これは、木材チップの少なくとも一方側を、該木材チップを蒸留酒と混合する前に炭化させ、1サイクル以上を経ることによれば、より少ないサイクル数で、木材チップから蒸留酒により多くの色および風味を付与できることを意味する。または、別の言い方をすれば、木材チップを炭化させると、蒸留酒に付与される異なる知覚特性が変化する。
【0042】
他の実施形態では、木材チップを炭化させることに加えて、または、木材チップを炭化させる代わりに、木材チップをトーストする。炭化と同様に、木材をトーストすると、蒸留酒に付与される異なる知覚特性が変化する。
【0043】
木材チップを炭化させる代わりに、または、木材チップを炭化させることに加えて、木材チップを容器に入れて蒸留酒と混合する前に、木材チップをスモークすることができる。従来行われているように、チップ全体を炭化させることやトーストすることもできる。
【0044】
業界内で既知であるように、特定の木製樽は、樽内の蒸留酒に異なる知覚特性を付与する。そのような完成品の例としては、コニャック、ポート、ラム酒、シェリー、バーボン、スコッチウイスキー、マディラ、ワイン等が挙げられる。例えば、スコッチウイスキーは、シェリーオークの樽で完成される。したがって、本発明のさらに他の実施形態において、木材チップは、当業界において仕上げとして知られている手順によって準備される。
【0045】
例示的な一実施形態において、木材チップのオープングレイン表面積は平均して約20%を超えるが、これは、オープングレイン表面積が平均して約9%である従来の木材チップとは対照的である。「オープングレイン」とは、一般に、木質繊維の細孔または切断端が目に見えるおよび/または露出しているという意味で理解されている。好ましい実施形態において、オープングレインは、平均で、木材チップの表面積の約50%以上に表れている。また、最も好ましい実施形態において、オープングレインは、平均で、木材チップの表面積の73%以上に表れている。
【0046】
オープングレイン表面積が大きい(当技術分野において既知の方法で処理されて仕上げられた)木材チップは、本発明の方法に従って容器内の蒸留酒に導入可能であることが判明した。ミレニアル世代の消費者によるペア比較試験では、木材チップのオープングレイン表面積が9%である従来の木材チップを用いて製造された風味付けされた蒸留酒よりも、木材チップのオープングレイン表面積が20%以上である木材チップを用いて製造された風味付けされた蒸留酒の方が好まれる結果となった。調査の一環として、オープングレイン表面積が20%以上である木材チップを用いて製造された蒸留酒は、「よりバーボンのような味」に感じられて、潜在的な消費者の購入意向が有意に高かったことが分かった。
【0047】
蒸留酒に適用される実際のサイクル数は、使用される植物の量と種類、容器の最大圧力、使用される蒸留酒の種類、木材を使用するときの蒸留酒に対する木材チップの割合、木材を使用するときの木材チップの炭化状態、および、木材チップを使用するときの木材チップの種類等に応じて変化する。
【実施例
【0048】
<実施例1>
【0049】
本発明に従う蒸留酒(ラム酒)を、以下の容量で調製した。
植物の種類:オレンジピール、バニラビーンズ、シナモンスティック
植物の量:16.5g
木材チップの量:0g
蒸留酒の量:750ml
蒸留酒のアルコール度数:42%
サイクルあたりの最大圧力:15psi
サイクル数:4
結果として得られた風味付けされた蒸留酒のアルコール度数も42%であった。ペア比較のブラインドテストを実施して、米国および国際セールスに基づくトップセールスの1つであるスーパープレミアムラム酒と比較した。無作為に選ばれた21~39歳の米国人によってテイスティングされた。「購入意向」の評価では、本発明の実施例1が69%であり、31%であるスーパープレミアムラム酒よりも好まれる結果となった。同じペア比較において、本発明の実施例1は、消費者の「滑らかさ」の評価において77%であり、スーパープレミアムラム酒の23%を上回り、消費者の「飲みやすさ」の評価において78%であり、スーパープレミアムラム酒の22%を上回った。
【0050】
<実施例2>
【0051】
本発明に従う蒸留酒(ウイスキー)を、以下の容量で調製した。
植物の種類:オレンジピール、バニラビーンズ、シナモンスティック
植物の量:16.5g
木材チップの量:0g
蒸留酒の量:750ml
蒸留酒のアルコール度数:42%
サイクル当たりの最大圧力:150psi
サイクル数:4
結果として得られた風味付けされた蒸留酒のアルコール度数も42%であった。21~39歳の米国人を無作為にサンプリングしてペア比較のブラインドテストを実施し、上述の実施例1と比較した。「購入意向」の評価では、実施例2が35%であり、65%である実施例1に劣った。同じペア比較における消費者の「滑らかさ」および「飲みやすさ」の評価においても、実施例2は実施例1に劣った。消費者の「最も自然な味わい」の評価においても、実施例2は35%であり、65%である実施例1に劣った。
【0052】
本発明を、以上に概説した特定の実施形態とともに説明したが、当業者にとって、多くの代替、修正および変形が可能であることは明らかである。従って、上述した本発明の好適な実施形態は、例示的なものであり、本発明を限定するものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができる。
【0053】
本明細書の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれている。著作権者は、特許商標庁の特許ファイルまたは記録に記載されているように、特許文書または特許開示のいずれかによるファクシミリ複製に異論を唱えないものとし、それ以外の場合はすべての著作権を留保するものとする。
図1