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特許7139246高分子電解質層形成ブロックコポリマーならびにその組成物および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】高分子電解質層形成ブロックコポリマーならびにその組成物および使用
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/04 20060101AFI20220912BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20220912BHJP
   A01N 43/78 20060101ALI20220912BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20220912BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A01N25/04
A01P7/04
A01N43/78 C
C09B67/20 F
C09B67/20 L
C08F293/00
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2018530111
(86)(22)【出願日】2016-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2016001863
(87)【国際公開番号】W WO2017098325
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】62/265,725
(32)【優先日】2015-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593091979
【氏名又は名称】アダマ・マクテシム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】シルベルト,ギラッド
(72)【発明者】
【氏名】ベルコヴィッチ,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,デイヴィッド,ジェームズ
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-021486(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104430477(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104585224(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104585226(CN,A)
【文献】特表2008-536840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0325808(US,A1)
【文献】特開2008-266225(JP,A)
【文献】特表2012-525384(JP,A)
【文献】特表2012-525382(JP,A)
【文献】特表2002-541161(JP,A)
【文献】国際公開第2008/004677(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/04
A01P 7/04
A01N 43/78
C09B 67/20
C08F 293/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業材料組成物であって、
(i)少なくとも1種の農業材料化合物の粒子;ならびに
(ii)(A)疎水性の固着部分および(B)少なくとも1つの帯電したモノマーを含む、少なくとも1つの親水性の帯電した安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系
を含み、前記ブロックコポリマーが前記農業材料化合物粒子の疎水性表面に吸着されており、
前記農業材料化合物が、農薬であり、
前記疎水性の固着部分が疎水性モノマーを含み、前記疎水性モノマーが、アクリル酸アルキル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、およびメタクリル酸2-エチル-ヘキシルからなる群から選択され、
前記親水性の安定化部分中のモノマーが、帯電した陰イオン性モノマーを含み、前記陰イオン性モノマーがスルホネート基を有する、農業材料組成物。
【請求項2】
前記農業材料化合物が殺有害生物剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記殺有害生物剤が、フルエンスルホンまたはフォルペットである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
a)前記組成物が水中油型エマルションであり、
b)前記組成物がフロアブル製剤(suspension concentrate)であり、または
c)前記組成物が粒剤の形態である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
a)前記組成物が、少なくとも50重量%の油相を含む、水中油型エマルションであり、
b)前記組成物中の農業材料粒子の濃度が、500g/Lを超え、
c)前記組成物が、高充填であり、前記組成物中の農業材料粒子の濃度が、900g/L~1200g/Lであり、
d)前記組成物の密度が1.4~1.6kg/Lであり、および/または
e)前記組成物の粘度が、ブルックフィールド粘度計のスピンドル62および12RPMで決定された場合、750cP未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
高塩環境において安定である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記高分子電解質層形成ブロックコポリマーが櫛型ブロックコポリマーまたは線状ブロックコポリマーである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記疎水性の固着部分が疎水性ブロックコポリマーである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
a)前記疎水性の固着部分の少なくとも90%が疎水性モノマーであり、および/または
b)前記疎水性の固着部分の10%未満が親水性モノマーである、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記疎水性の固着部分の少なくとも90%が疎水性モノマーであり、前記疎水性モノマーがアクリル酸アルキルである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記アクリル酸アルキルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、またはアクリル酸ブチルである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記疎水性モノマーが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチル-ヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、およびメタクリル酸2-エチル-ヘキシルからなる群から選択される、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項13】
前記疎水性モノマーがアクリル酸エチル(EA)である、請求項9から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの親水性の安定化部分が、親水性ブロックコポリマーである、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
a)前記親水性の安定化部分中の少なくとも60重量%のモノマーが帯電したモノマーであり、及び/又は
b)前記親水性の安定化部分中の40重量%未満のモノマーが中性の親水性モノマーである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記親水性の安定化部分中の少なくとも60重量%のモノマーが、帯電した陰イオン性モノマーである、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記陰イオン性モノマーの少なくとも1つが、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩(AMPS)である、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記親水性の帯電した安定化部分中の40重量%未満のモノマーが、中性の親水性モノマーである、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記中性の親水性モノマーが、N-ビニルピロリドン、エチレンオキシド、アクリル酸グリコシド、およびアクリルアミドからなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
a)前記ブロックコポリマーが最大150のモノマーを含み、
b)前記ブロックコポリマーの重量が最大31000g/molであり、
c)前記安定化部分の重量が5,000~100,000g/molであり、
d)前記疎水性の固着部分の重量が500~5,000g/molであり、
e)前記安定化部分の重量百分率が、前記ブロックコポリマーの合計重量の65~90%であり、および/または
f)前記組成物中の前記ブロックコポリマーの濃度が0.2~3%w/wである、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
有害生物を防除および防止するために、有害生物が防除および防止されるべき場所に請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物を適用するステップを含む、有害生物を防除および防止する方法であって、
この際、
a)前記場所が、植物、植物に隣接する領域、植物の成長を支援するように適応させた土、植物の根、植物の葉、および/または植物を生産するように適応させた種子であり、
b)前記場所が、壁、床、または家具もしくは器具の表面であり、
c)前記場所が、台所表面または浴室表面であり、
d)前記場所が、鉄道または鉄道を囲む領域であり、または
e)前記場所が、動物の周囲である、方法
【請求項22】
植物の成長を改善するために、植物、植物に隣接する領域、植物の成長を支援するように適応させた土、植物の根、植物の葉、および植物を生産するように適応させた種子の少なくとも1つに請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物を適用するステップを含む、植物の成長を改善する方法。
【請求項23】
請求項1から20のいずれか一項に記載の農業材料組成物を調製する方法であって、少なくとも1種の農業材料化合物の粒子を、前記高分子電解質層形成ブロックコポリマーのある一定量と混合するステップを含む、方法。
【請求項24】
前記農業材料化合物が、フルエンスルホンまたはフォルペットである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
混合するステップが、少なくとも1種の農業材料化合物の粒子の分散液を調製するステップ、および、前記農業材料粒子の疎水性表面に前記高分子電解質層形成ブロックコポリマーを吸着させて前記農業材料粒子界面に高分子電解質層を形成するステップを含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、フロアブル製剤(suspension concentrate)であり、
前記高分子電解質層が形成された後、前記農業材料粒子の湿式混練のステップをさらに含む、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
a)前記ブロックコポリマーの量が、前記ブロックコポリマーを含まない同じ組成物の湿式混練中の温度と比較して、前記組成物の湿式混練中の温度を下げるのに有効であり、および/または
b)前記ブロックコポリマーの量が、湿式混練中の前記ブロックコポリマーを含まない同じ組成物の粘度と比較して、前記組成物の湿式混練中の前記組成物の粘度を下げるのに有効である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
a)湿式混練中の温度が30℃未満であり、
b)湿式混練中の温度が40℃~50℃から20℃~25℃に下げられ、
c)湿式混練中の粘度が、1000~2000cPから200~400cPに下げられ、および/または
d)前記粒子の90%が、湿式混練前に50μm以上の粒径を有し、湿式混練後に1μm以下の粒径を有する、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、粒剤の形態であり
前記高分子電解質層が形成された後、前記組成物を造粒するステップをさらに含む、請求項23から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ブロックコポリマーの量が、前記ブロックコポリマーを含まない同じ組成物の造粒中の圧力と比較して、前記組成物の造粒中の圧力を下げるのに有効である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記疎水性の固着部分と前記親水性の帯電した安定化部分との重量比が、0.6未満である、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記疎水性の固着部分と前記親水性の帯電した安定化部分とのモル比が、1:2~4である、請求項1から20、31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記ブロックコポリマーの重量が、10,000~25,000g/molである、請求項1~20、31、32のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2015年12月10日に出願された米国仮出願第62/265,725号明細書の優先権を主張し、その全体内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に水溶液中のコロイド界面に吸着した高分子電解質層形成ブロックコポリマー、ならびにその組成物および使用に関する。特に、本発明は、少なくとも1種の農業材料化合物の粒子および高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む農業材料組成物に関する。本発明はまた、少なくとも1種の非農業材料化合物の粒子および高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む非農業材料組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
粒子と液滴との間の力は、組成物の特性、その調製および用途に影響を及ぼす。例えば、液体分散液または懸濁液において、粒子の濃度が増すと、粒子間の摩擦、したがって製剤の粘度は、通常、同じように増加する。エマルション製剤においては、連続相中の分散相の量を増やすと、転相し、その結果として逆エマルション製剤をもたらす場合がある。
【0004】
粒子間の力はまた、著しく混練プロセスおよび造粒プロセスに影響する場合がある。高い粒子濃度では、液体懸濁液の粘度および温度は、通常、混練中に増加し、プロセスは有効成分に対して非効率的または破壊的になる。造粒プロセスにおいて、固体の濃度が高いと、適当な粒剤を調製するためには圧力を下げる必要がある。
【0005】
農業用途のための、多数の殺有害生物剤有効成分(AI)および他の材料は、疎水性であり水に不溶性である。したがって、水系製剤は、水相中に懸濁したAIの疎水性固体粒子、または水中に分散した有効成分を含有する疎水性液滴およびカプセルで構成されている。
【0006】
さらに、製剤中の農業用途のための殺有害生物剤活性物質および他の材料の濃度は、製品の適用速度および包装に影響を及ぼす場合がある。高充填製剤(high-load formulations)は、それほど包装を必要せず、そのため取り扱いおよび輸送がより容易である。多くの場合において、殺有害生物製剤の設計にとって究極の目標は、可能な限り最高濃度の活性物質を含む製剤を調製し、結果として得られる製剤が安定性および長い貯蔵寿命を維持し、しかも環境に優しくより安価な製品を提供することである。
【0007】
これらの目的を達成するための様々な分散剤および界面活性剤が、当技術分野で公知である。分散剤は、この点に関してイオン性または非イオン性の化合物であっても、ポリマーまたは非ポリマーの界面活性剤であってもよい。これらの補助配合剤の幾つかは、濃縮した殺有害生物製剤に対してレオロジー特性を与える。分散剤は、粒子を囲み、液相中の粒子を分散させて、そのため、凝集体を防止および/または破壊する。
【0008】
この点に関して有用な、先に例示した公知の分散剤には、Atlox(商標)4913などの櫛型コポリマー、アルキレンオキシドのブロックコポリマー、エトキシレートアルコールおよび脂肪酸スルホネートなどの陰イオン型ポリマーが含まれる。
【0009】
高充填製剤を得て安定化するためには、分散剤が凝析および凝結に対して極めてよく安定化し、低濃度の分散剤でよく機能し、かつ粒子間の摩擦を低減することが必要である。造粒プロセスにおいて、分散剤の良好な潤滑特性も望まれる。分散剤に関して別の重要な特性は、電解質の高濃度と低濃度の両方での良好な性能である。
【0010】
多数の高分子電解質が当技術分野で公知である。例えば、国際公開第2015116716号パンフレットは、1種または複数の植物成長調節剤と組み合わせた少なくとも1種の多価陰イオン性ポリマーを含む、植物成長調節のための組成物を対象とし、好ましい形態において、多価陰イオン性ポリマーは、ポリマーがポリマー鎖に沿ってランダムに位置する繰り返し単位を有し、繰り返し単位の規則的配列を全く含まない、コポリマーを含む。
【0011】
国際公開第2013004704号パンフレットは、一部に、ミセルのコアがミセルコロナより親水性である、コポリマーABを含むミセルを含む無極性液体を開示している。コポリマーは、水を含まない有機溶媒液体媒体中のミセルとして形成されて表面コーティングをもたらす。
【0012】
国際公開第2013189776号パンフレットは、疎水性有効成分およびN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートとメタクリル酸メチル(モノマー重量比は35:65~55:45)との陽イオン性コポリマーからなる固体分散液を開示している。
【0013】
国際公開第2013133706号パンフレットは、多価陰イオン、好ましくは、例えばキサンタンガム、アルギネート、リグノスルホネートなどのリグニン化合物、ペクチン、カラギーナン、フミン酸、フルボ酸、アンギコガム、コンダゴグ(Kondagogu)ガム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ポリ-γ-グルタミン酸、マレイン酸デンプンハーフエステル、カルボキシメチルセルロース、コンドロイチン硫酸、硫酸デキストラン、ヒアルロン酸からなる群から選択される天然多価陰イオン、ならびにポリ(アクリル酸)、ポリリン酸およびポリ(L-ラクチド)などの合成多価陰イオン、ならびに、好ましくは、ポリ-L-リシン、イプシロン-ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン、キトサンオリゴ糖およびキトサンからなる群から選択される多価陽イオンの高分子電解質複合体を含む組成物を開示している。
【0014】
国際公開第2013093578号パンフレットは、ポリ(メタクリル酸-co-アクリル酸エチル);ポリ(メタクリル酸-co-スチレン);ポリ(メタクリル酸-co-メタクリル酸ブチル);ポリ[アクリル酸-co-ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート];およびポリ(メタクリル酸n-ブチル-co-メタクリル酸)からなる群から選択されるポリマーを開示している。
【0015】
先行技術によって記載されている公知の分散剤はいずれも、高充填製剤を得るために分散剤が必要とする特徴の幾つか:凝集に対する安定化、粒子間の摩擦の低減、低濃度での高機能性および異なる電解質溶液中での効率性は限定されている。このように、一般に、先行技術では、存在する粒子の量が限定されている製品を提供する。したがって、組成物中でより高濃度の有効成分を許容し、組成物の混練および造粒を改善できる、改善された分散剤を含有する殺有害生物組成物に対する必要性が当技術分野に残されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
一般に、本主題は、分散液中で有効成分粒子の表面に吸着して安定なブラシ型「粒子-ポリマー」複合体をもたらす高分子電解質層形成ブロックコポリマーの分散剤または乳化剤としての使用に関する。したがって、本組成物は、非常に効率的な様式で粒子間の摩擦を低減し、分散液を安定化する。また、立体的およびイオン的な安定化を組み合わせることによって、それらは、電解質の高濃度と低濃度の両方でよく機能する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、農業材料組成物であって
(i)少なくとも1種の農業材料化合物の粒子;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系
を含み、ブロックコポリマーが農業材料化合物粒子の疎水性表面に吸着されている、農業材料組成物を提供する。
【0018】
本発明は、殺有害生物組成物であって、
(i)少なくとも1種の殺有害生物剤化合物の粒子;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系
を含み、ブロックコポリマーが殺有害生物剤化合物粒子の疎水性表面に吸着されている、殺有害生物組成物を提供する。
【0019】
本発明はまた、有害生物を防除および防止する方法であって、有害生物が防除および防止されるべき場所に殺有害生物組成物を適用するステップを含み、殺有害生物組成物が、
(i)少なくとも1種の殺有害生物剤化合物の粒子;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含み、
ブロックコポリマーが殺有害生物剤化合物粒子の疎水性表面に吸着されている、方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、植物の成長を改善する方法であって、植物、植物に隣接する領域、植物の成長を支援するように適応させた土、植物の根、植物の葉、および/または植物を生産するように適応させた種子の少なくとも1つに農業材料組成物を適用するステップを含み、組成物が、
(i)少なくとも1種の農業材料の粒子;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含み、
ブロックコポリマーが農業材料粒子の疎水性表面に吸着されている、方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、組成物を調製する方法であって、少なくとも1種の化合物の粒子を、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーのある一定量と混合するステップを含む、方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、殺有害生物組成物を調製する方法であって、少なくとも1種の殺有害生物剤化合物の粒子を、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーのある一定量と混合するステップを含む、方法を提供する。
【0023】
本発明はまた、色素系組成物であって、
(i)着色剤成分;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含み、
分散液として調製される、着色剤系組成物を提供する。
【0024】
本発明はまた、非農業用途系水性組成物であって、少なくとも、
(i)1種の非農業材料化合物;
(ii)水;ならびに
(iii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含む、非農業用途系水性組成物を提供する。
【0025】
本発明はまた、コーティング組成物を調製する方法であって、フィルム形成ポリマーラテックスを、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系と接触させることを含む、方法を提供する。
【0026】
本発明はまた、着色剤系組成物を調製する方法であって、着色剤成分を、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系と接触させることを含み、結果として得られる着色剤系組成物が分散液である、方法を提供する。
【0027】
本発明はまた、アルキド樹脂系ベースコーティングまたはラテックス系ベースコーティングを染色する方法であって、アルキド樹脂系ベースコーティングまたはラテックス系ベースコーティングを、
i)着色剤成分;ならびに
ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含む着色剤系組成物と接触させることを含み、
着色剤系組成物が分散液として調製される、方法を提供する。
【0028】
本発明はまた、固体粒子、ならびに(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む油セメントグラウト組成物を提供する。
【0029】
本発明はまた、油セメントグラウト組成物の懸濁液中の固体粒子を維持するための、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本明細書に記載されるポリマーを用いない製剤1、および本明細書に記載されるポリマーを用いる製剤2の混練ステップ間の粘度の変化を示すグラフである。
図2】製造プロセスの混練ステップ中の粒径分布の変化を示すグラフである。
図3A】高塩溶液中の、公知の分散剤と、本明細書に記載されるポリマー分散剤との性能比較を示す写真である。
図3B】高塩溶液中の、公知の分散剤と、本明細書に記載されるポリマー分散剤との性能比較を示す写真である。
図4】高塩溶液中の、追加の公知の分散剤と、本明細書に記載されるポリマー分散剤との性能比較を示す写真である。
図5】(図5A及び5B)高塩溶液中の、さらなる公知の分散剤と、本明細書に記載されるポリマー分散剤との性能比較を示す写真である。
図6】製剤3および製剤2の混練中の粘度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本主題を詳述する前に、本明細書において使用される特定の用語の定義を設けることは有用であり得る。他に定義されない限り、本明細書において使用される技術および科学用語はすべて、この主題が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0032】
定義
本明細書において使用される場合、用語「農業材料(agricultural material)」は、作物育成のための土地の耕作を含む農作業において使用される有効成分を意味する。しかし、農業材料の使用は、作物への適用に限定されない。農業材料は、例えば生物の浄化またはその成長を支援もしくは阻害するために任意の表面に適用されてもよい。他の非作物への適用は、動物、例えば家畜への適用、芝地および観賞植物への適用、ならびに鉄路の雑草への適用を含むがこれらに限定されない。
【0033】
本明細書において使用される場合、用語「農薬(agrochemical)」は、作物育成のための土地の耕作を含む農作業に使用される化学的有効成分である。しかし、農薬の使用は作物への適用に限定されない。農薬は、例えば生物の浄化、またはその成長を支援もしくは阻害するために任意の表面に適用されてもよい。
【0034】
農業材料および農薬の例は、殺有害生物剤(pesticides)、ホルモン(hormones)、バイオ刺激薬(bio-stimulants)および植物成長剤(plant growth agents)を含むがこれらに限定されない。
【0035】
本明細書において使用される場合、用語「殺有害生物剤」、「殺有害生物剤化合物」または「殺有害生物化合物」は、植物保護であろうと、非作物への適用であろうと、有害生物を死滅させまたはその成長または増殖を阻害することができる化合物を意味する。本明細書において使用される場合、「殺有害生物剤」、「殺有害生物剤化合物」または「殺有害生物化合物」はすべて、「農業材料化合物」に該当する。用語「殺有害生物剤」、「殺有害生物剤化合物」または「殺有害生物化合物」は、殺虫剤、殺線虫剤、除草剤、殺菌剤、殺藻剤、動物忌避剤および殺ダニ剤を含むがこれらに限定されない。本明細書において使用される場合、用語「有害生物」は、虫、線虫、雑草、真菌、藻、ダニ、マダニおよび動物を含むがこれらに限定されない。本明細書において使用される場合、用語「雑草」は任意の望ましくない植物を指す。
【0036】
本明細書において使用される場合、用語「疎水性」は、化合物または表面を特徴づけるために使用される場合、化合物または表面が、水に対する親和性を欠いていることを意味する。
【0037】
本明細書において使用される場合、用語「高分子電解質(polyelectrolyte)」は、帯電したモノマーを含有するポリマーを意味する。
【0038】
本明細書において使用される場合、語句「ブロックコポリマー」は、共有結合によって結合した少なくとも2種の異なるポリマーを含むポリマーを意味する。ブロックのそれぞれは、通常、ホモポリマーであるが、特定の別個の物理的/化学的または機能的な特徴を有するコポリマーであってもよい(例えば、水に容易に可溶な一方のブロックを、水に元来不溶性の他方のブロックと一緒に有する)。
【0039】
本明細書において使用される場合、語句「固着ブロック(anchoring block)」、「固着部分(anchoring moiety)」または「ANCHOR」は、粒子表面に対して親和性を有し、粒子表面に強く不可逆的なまでブロックコポリマーを吸着させるホモポリマーまたはコポリマーで構成されたブロックを意味する。
【0040】
本明細書において使用される場合、語句「安定化ブロック(stabilizing block)」、「安定化部分(stabilizing moiety)」または「STAB」は、分散媒体、例えば水が良溶媒である、帯電したポリマーゾーンを意味する。より具体的には、コポリマーが、安定化ブロックと同じモル質量および組成物で調製されている場合、コポリマーは、10重量%以上、例えば20重量%以上、例えば30重量%以上、例えば40重量%以上、例えば50重量%以上、例えば60重量%以上、さらに80重量%の濃度で分散媒体に可溶であるはずである。
【0041】
本明細書において使用される場合、語句「櫛型コポリマー」は、ポリマー側鎖が、ポリマー/コポリマーの主鎖(しばしば骨格としても公知である)に結合しているポリマーを意味する。本事例において、本ポリマー/コポリマーは、ポリオレフィン系マクロモノマーに由来する少なくとも1つの繰り返し単位を有する。
【0042】
本明細書において使用される場合、用語「分散液」は、第1(連続相)は液体であり、第2(分散相)は固体または液体粒子である、少なくとも2つの相の不均一混合物を含む製剤を意味する。本明細書において論じられる「分散液」組成物は、連続相として必ず水相を含む。
【0043】
本明細書において使用される場合、用語「懸濁液」および「分散液」は交換可能であり、少なくとも1つの液相と混合されるが、溶解しないままである固体粒子を有する製剤を意味する。水は連続相である。
【0044】
本明細書において使用される場合、語句「カプセル懸濁液」は、固体コーティングによって囲み、水に分散した有効成分含有固体カプセルを有する製剤を意味する。
【0045】
本明細書において使用される場合、用語「粒子」、「固体粒子」、「液体小滴」およびカプセルは、固体および/または液滴を意味するように交換可能に使用することができる。
【0046】
本明細書において使用される場合、「ブラシ型構造」を有する粒子では、ポリマーの層が、粒子の表面に一端で結合し、他端で表面に垂直にバルク溶液へ延在する。
【0047】
本明細書において使用される場合、語句「農業的に許容される担体」は、農業または園芸で使用するための製剤の形成に関して当技術分野で公知、かつ容認されている担体を意味する。
【0048】
本明細書において使用される場合、語句「超高濃度」および「高充填濃度(high-load concentration)」は、少なくとも500g/Lの量の活性物質を意味する。
【0049】
本明細書において使用される用語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、特に別記しない限り、単数および複数を含む。そのため、用語「1つの(a)」または「1つの(an)」または「少なくとも1つの」は、本出願において交換可能に使用することができる。
【0050】
本出願の全体にわたって、様々な実施形態の記載は用語「含む」を使用するが、当業者は、幾つかの特定の事例において、実施形態は、代替として、語法「本質的に~からなる」または「からなる」を使用して、記載することができることを理解するであろう。本明細書およびそれに続く特許請求の範囲の全体にわたって、文脈上他に必要としない限り、単語「含む(comprise)」、および「含む(comprises)」または「含むこと(comprising)」などの変形は、明示された整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を含むが、任意の他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を除外することはないということを意味すると理解されよう。
【0051】
本明細書において使用される場合、用語「高塩環境(high salt environment)」は、組成物が、組成物の重量に対して塩の少なくとも5重量%を含有することを意味する。組成物はまた、組成物の合計重量に対して少なくとも7重量%の塩または少なくとも10重量%の塩を含有してもよい。
【0052】
本教示をより良く理解し、本教示の範囲を決して限定しないという目的のために、特に断らない限り、量、百分率または割合を表すすべての数、ならびに本明細書および特許請求の範囲において使用される他の数値は、すべての事例中で用語「約」によって修飾されるものと理解されたい。したがって、反対に示さない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に述べられる数的パラメータは、得ようと努力される所望の特性に応じて変化し得る近似値である。せめて、各数的パラメータは、少なくとも報告された有効桁数の観点から、および通常の四捨五入技法の適用によって解釈されるべきである。この点に関して、本明細書の用語「約」の使用では、具体的には範囲中に指示値から±10%を含む。さらに、本明細書において同じ構成要素/部分/または特性を対象とするすべての範囲の終点は、終点を含み、独立して結合可能であり、中間点および範囲をすべて含む。
【0053】
パラメータ範囲が設けられる場合、その範囲内のすべての整数およびその10分の1もまた本発明によって設けられることが理解される。
【0054】
本明細書に言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願がそれぞれ参照によって本明細書に組み込まれるように具体的に個々に示される場合と同程度に、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0055】
農業材料組成物およびその使用
本発明は、農業材料組成物であって
(i)少なくとも1種の農業材料化合物の粒子、ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系
を含み、ブロックコポリマーが農業材料化合物粒子の疎水性表面に吸着されている、農業材料組成物を提供する。
【0056】
本発明は、殺有害生物組成物であって、
(i)少なくとも1種の殺有害生物剤化合物の粒子、ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系
を含み、ブロックコポリマーが殺有害生物剤化合物粒子の疎水性表面に吸着されている、殺有害生物組成物を提供する。
【0057】
ブロックコポリマーは、粒子の疎水性表面と水との間の界面に吸着される。水媒体に囲まれると、ブロックコポリマーは水和して非常に効率的な潤滑をもたらす。一実施形態において、粒子は水に分散する。ブロックコポリマーによって形成された高分子電解質層と有効成分との組合せの結果として得られる粒子は、ブラシ型構造を有する。水中で、ブラシ型高分子電解質層は水和され、非常に効率的な潤滑を結果としてもたらす。
【0058】
一実施形態において、組成物は分散液である。
【0059】
一実施形態において、農業材料は農薬である。
【0060】
一実施形態において、農業材料は植物成長調節剤である。一実施形態において、農業材料はバイオ刺激薬である。一実施形態において、農業材料はホルモンである。
【0061】
一実施形態において、農業材料は殺有害生物剤である。
【0062】
一実施形態において、殺有害生物剤は殺虫剤である。一実施形態において、殺有害生物剤は殺線虫剤である。一実施形態において、殺有害生物剤は除草剤である。一実施形態において、殺有害生物剤化合物は殺菌剤である。一実施形態において、殺有害生物剤は殺藻剤である。一実施形態において、殺有害生物剤は動物忌避剤である。一実施形態において、殺有害生物剤は殺ダニ剤である。
【0063】
除草剤の例は、アトラジン、ジウロン、クロロトルロン、クレトジム、クロマゾンおよびテブチウロンを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0064】
殺虫剤および殺ダニ剤の例は、アバメクチン、ピリプロキシフェン、アセタミプリド、ビフェントリン、シフルトリン、ピメトロジン、ノバルロン、エチプロール、フィプロニルおよびラムダ-シハロトリンを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0065】
殺菌剤の例は、アゾキシストロビン、クロロタロニル、エポキシコナゾール、プロピコナゾール、フェンプロピジン(fenpropidin)、フォルペット、エポキシコナゾール、テブコナゾール、シプロジニル、ダイアジノン、ジメトモルフ、フィプロニル、フルジオキソニルおよびカプタンを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0066】
殺線虫剤の例は、フルエンスルホンを含んでもよいが、これに限定されない。
【0067】
幾つかの実施形態において、農業材料は疎水性農業材料である。
【0068】
幾つかの実施形態において、農業材料は疎水性農薬である。
【0069】
幾つかの実施形態において、農業材料は疎水性殺有害生物剤である。
【0070】
幾つかの実施形態において、少なくとも1種の農業材料化合物の粒子は疎水性粒子である。
【0071】
幾つかの実施形態において、粒子は農業材料を含む溶液中にある。
【0072】
幾つかの実施形態において、粒子は固体である。
【0073】
幾つかの実施形態において、粒子は液体である。
【0074】
幾つかの実施形態において、粒子はカプセルである。
【0075】
幾つかの実施形態において、粒子は液滴である。
【0076】
幾つかの実施形態において、液滴は溶媒に溶解した農業材料である。
【0077】
幾つかの実施形態において、液滴は溶媒に溶解した殺有害生物剤である。
【0078】
幾つかの実施形態において、粒子は溶媒に溶解した農業材料である。
【0079】
幾つかの実施形態において、粒子は溶媒に溶解した殺有害生物剤である。
【0080】
幾つかの実施形態において、粒子は封入された農業材料である。
【0081】
幾つかの実施形態において、粒子は封入された殺有害生物剤である。
【0082】
幾つかの実施形態において、液滴は農業材料を含む溶液中にある。
【0083】
幾つかの実施形態において、農業材料は液体である。
【0084】
幾つかの実施形態において、農業材料は溶媒に溶解している。
【0085】
幾つかの実施形態において、溶媒は非水溶媒である。
【0086】
幾つかの実施形態において、溶媒は有機溶媒である。
【0087】
溶媒は、オレイン酸メチル(Agnique(登録商標)ME 181)、芳香族流体(Solvesso(商標))、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルオクタンアミド、N,N-ジメチル-デカンアミド、アセトフェノンおよびオクタノールを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0088】
一実施形態において、組成物は農業的に許容される担体をさらに含む。一実施形態において、組成物は毒性緩和剤をさらに含む。一実施形態において、組成物は防腐剤をさらに含む。別の実施形態において、組成物は、界面活性剤、レオロジー改質剤、沈降防止剤、発泡防止剤、緩衝剤および液体希釈剤からなる群から選択される少なくとも1つの追加の成分/部分をさらに含む。湿潤剤、接着剤、増粘剤、結合剤、着色剤(アゾ、フタロシアニンまたは他の顔料など)または不凍剤などの他の成分もまた、組成物の安定性、密度、外観および取り扱い易さを増やすために組成物に添加されてもよい。さらに別の実施形態において、農業材料組成物は、イオン性、陰イオン性、非イオン性、ポリマー/コポリマー、または非ポリマー/コポリマーの界面活性剤などのアジュバントをさらに含むことができる。この点に関して1つの例示の部分は、ピロリドンなどの集積浸透剤(penetrant amassment)であり得る。
【0089】
一実施形態において、組成物は、エマルション製剤、懸濁液、フロアブル製剤(suspension concentrate)、カプセル懸濁液またはサスポエマルション製剤である。
【0090】
一実施形態において、組成物はエマルション製剤であり、エマルション製剤は水中油型エマルション製剤である。水中油型エマルション製剤において、油相にあり、水連続相に分散した少なくとも1種の農業材料化合物を含有する小滴の表面に吸着した高分子電解質層は、分散液の油相としての小滴を安定化する。本明細書に記載されるブロックコポリマーの使用によって、本分散液は、水中油型エマルション系を保持しつつ油の高い濃度を維持することができる。これによって、エマルション製剤を安定に保ち、油相と水相の反転を防止することが可能になる。一実施形態において、水中油型エマルション製剤は、少なくとも40、50、60または70重量%の油相を含む。
【0091】
一実施形態において、組成物は水性懸濁液である。一実施形態において、水性懸濁液は、500g/Lを超える濃度の農業材料化合物の粒子を有する。一実施形態において、水性懸濁液は900g/L~1200g/Lの間の濃度の農業材料化合物の粒子を有する。一実施形態において、懸濁液は750cP未満の粘度を有する。一実施形態において、懸濁液は増粘化剤を含有せず、750cP未満の粘度を有する。粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用してスピンドル62および12RPMで測定される。
【0092】
一実施形態において、組成物はフロアブル製剤である。一実施形態において、フロアブル製剤は非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、および/または抗結晶化剤(結晶成長抑制剤)をさらに含む。
【0093】
一実施形態において、組成物は固体形態をしている。一実施形態において、固体組成物は粒剤の形態をしている。
【0094】
本発明はまた、有害生物を防除および防止する方法であって、有害生物が防除および防止されるべき場所に殺有害生物組成物を適用するステップを含み、殺有害生物組成物が
(i)少なくとも1種の殺有害生物剤化合物の粒子;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含み、
前記ブロックコポリマーが殺有害生物剤化合物粒子の表面に吸着されている、方法を提供する。
【0095】
一実施形態において、有害生物は虫である。一実施形態において、有害生物は真菌である。一実施形態において、有害生物は線虫である。一実施形態において、有害生物は雑草である。
【0096】
一実施形態において、場所は、植物、植物に隣接する領域、植物の成長を支援するように適応させた土、植物の根、植物の葉、および/または植物を生産するように適応させた種子である。
【0097】
本組成物は健康な、または病気の植物に適用されてもよい。幾つかの実施形態において、本組成物は、作物、種子、球根、繁殖材料、芝地または観賞用の種を含むがこれらに限定されない様々な植物に適用される。
【0098】
一実施形態において、場所は、壁、床または家具もしくは器具の表面である。一実施形態において、場所は台所表面または浴室表面である。
【0099】
一実施形態において、場所は動物の皮膚または動物の周囲である。一実施形態において、場所は鉄道または鉄道を囲む領域である。
【0100】
本組成物は、希釈し、習慣的な方式で、例えば、散水(潅注)、点滴潅漑、散布および/または噴霧することによって適用することができる。
【0101】
本発明はまた、植物成長を改善する方法であって、植物、植物に隣接する領域、植物の成長を支援するように適応させた土、植物の根、植物の葉、および/または植物を生産するように適応させた種子の少なくとも1つに農業材料組成物を適用するステップを含み、組成物が、
(i)少なくとも1種の農業材料化合物の粒子;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含み、
ブロックコポリマーが農業材料化合物粒子の疎水性表面に吸着されている、方法を提供する。
【0102】
一実施形態において、農業材料は植物成長調節剤である。一実施形態において、農業材料はバイオ刺激薬である。一実施形態において、農業材料はホルモンである。
【0103】
一実施形態において、方法は植物の収量を増やすのに有効である。一実施形態において、方法は植物の成長速度を高めるのに有効である。一実施形態において、方法は植物の大きさを増すのに有効である。
【0104】
幾つかの実施形態において、本組成物は、作物、種子、球根、繁殖材料または観賞用の種を含むがこれらに限定されない様々な植物に適用される。
【0105】
本組成物は、希釈し、習慣的な方式で、例えば、散水(潅注)、点滴潅漑、散布および/または噴霧することによって適用することができる。
【0106】
高充填農業材料組成物
本発明の幾つかの実施形態において、農業材料組成物は高充填である。本発明の幾つかの実施形態において、殺有害生物組成物は高充填である。
【0107】
一実施形態において、高充填組成物は分散液である。一実施形態において、高充填組成物は、安定で、正確に希釈することができ、容易に希釈することができる濃縮分散液として調製される。
【0108】
一実施形態において、組成物中の粒子濃度は、500、600、700、800、900、1000、1100または1200g/Lである。別の実施形態において、組成物中の粒子濃度は900~1200g/Lである。
【0109】
さらなる実施形態において、組成物の密度は約1.4~1.6kg/Lである。この密度の分散性組成物は、組成物中に最密充填した粒子を有する製剤の安定性を高める。
【0110】
さらなる実施形態において、組成物は約15~40重量%の水を含む。
【0111】
別の実施形態において、組成物の粘度は750cP未満である。粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用してスピンドル62および12RPMで測定される。
【0112】
本高充填分散性組成物は、稠密充填した粒子を含有し、それにもかかわらず、低い粘度および高い流動性を維持しているので有利である。これらの組成物はまた、高い粒子濃度および非常に少量の水を有することができる。
【0113】
本高充填組成物はまた、少なくとも1種の化合物を含む組成物のパッケージ体積の減少を可能にするので有利である。
【0114】
一実施形態において、少なくとも1種の化合物は農業材料化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は農薬化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は殺有害生物剤化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は、植物成長調節剤、ホルモンまたはバイオ刺激薬である。一実施形態において、少なくとも1種の化合物は非農業材料化合物である。
【0115】
組成物を調製する方法
本発明は、組成物を調製する方法であって、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーのある一定量と、少なくとも1種の化合物の粒子を混合するステップを含む、方法を提供する。
【0116】
本発明は、殺有害生物組成物を調製する方法であって、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーのある一定量と、少なくとも1種の殺有害生物剤化合物の粒子を混合するステップを含む、方法を提供する。
【0117】
一実施形態において、混合するステップは、少なくとも1種の化合物の粒子の分散液を調製するステップ、および、粒子の疎水性表面に高分子電解質層形成ブロックコポリマーを吸着させて粒子界面に高分子電解質層を形成するステップを含む。
【0118】
一実施形態において、混合するステップは、最大20%w/wの水中に少なくとも1種の化合物の粒子を含む分散液を調製するステップ、および分散液中の粒子の疎水性表面に高分子電解質層形成ブロックコポリマーを吸着させるステップ、および粒子界面に高分子電解質層を形成するステップを含む。
【0119】
一実施形態において、少なくとも1種の化合物は農業材料化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は農薬化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は殺有害生物剤化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は、植物成長調節剤、ホルモンまたはバイオ刺激薬である。別の実施形態において、少なくとも1種の化合物は非農業材料化合物である。
【0120】
本発明は、殺有害生物組成物を調製する方法であって、
i)少なくとも1種の殺有害生物剤化合物の粒子を含む分散液を調製するステップ;ならびに
ii)A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを、分散液中の殺有害生物剤化合物粒子の疎水性表面に吸着させること、および粒子界面に高分子電解質層を形成するステップ
を含む、方法を提供する。
【0121】
一実施形態において、分散液は水分散液である。一実施形態において、分散液は、少なくとも900g/Lの農業材料粒子の濃度を有する。
【0122】
一実施形態において、方法は、高分子電解質層が形成された後、湿式混練ステップをさらに含む。
【0123】
一実施形態において、ブロックコポリマーの量は、ブロックコポリマーを添加しない同じ組成物の混練中の温度と比較して、組成物の混練中の温度を下げるのに有効である。
【0124】
一実施形態において、ブロックコポリマーの量は、ブロックコポリマーを添加しない同じ組成物の混練中の粘度と比較して、組成物の混練中の組成物の粘度を下げるのに有効である。
【0125】
別の特定の実施形態において、湿式混練プロセス中の温度は30℃未満である。一実施形態において、混練中の温度を40℃~50℃から20℃~25℃に下げる。一実施形態において、混練中の粘度を1000~2000cPから200~400cPに下げる。粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用してスピンドル62および12RPMで測定される。さらに別の特定の実施形態において、粒子の90%は、湿式混練プロセス前に50μm以上の粒径を有し、湿式混練プロセス後に1μm以下の粒径を有する。
【0126】
一実施形態において、方法は、高分子電解質層が形成された後に、造粒ステップをさらに含む。
【0127】
特定の実施形態において、調製は、造粒中に発生する圧力を下げることにより造粒を改善する。一実施形態において、ブロックコポリマーの量は、ブロックコポリマーを添加しない同じ組成物の造粒中の圧力と比較して、組成物の造粒中の圧力を下げるのに有効である。
【0128】
組成物の造粒プロセスの改善
本発明は、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーのある一定量を組成物に添加することによって、少なくとも1種の化合物を含む組成物の造粒中の圧力を下げる方法であって、ブロックコポリマーの量が、ブロックコポリマーを添加しない同じ組成物の造粒中の圧力と比較して、組成物の造粒中の圧力を下げるのに有効である、方法を提供する。
【0129】
一実施形態において、少なくとも1種の化合物は農業材料化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は農薬化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は殺有害生物剤化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は、植物成長調節剤、ホルモンまたはバイオ刺激薬である。別の実施形態において、少なくとも1種の化合物は非農業材料化合物である。
【0130】
造粒は、水和性顆粒剤を調製するために使用されるプロセスである。造粒プロセスにおいて、有効成分(複数可)を固体添加剤と混練した後、若干量の水(最大30%w/w)を添加する。本ブロックコポリマーをこの水と一緒に添加する。次いで、粉末を造粒機に導入する。造粒機は、特定の速度(使用者によって決定される)で回転する翼でできており、小さな孔のあるスクリーンを介して粉末を押し出す。硬い場合には、粉末は大きい圧力を生じ、スクリーンを介するこの移動に抵抗する。
【0131】
ブロックコポリマーを使用して、粒子に形成される高分子電解質層は、造粒プロセス中に発生する圧力を著しく下げることにより、造粒を改善する。
【0132】
組成物の湿式混練プロセスの改善
本発明は、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーのある一定量を、少なくとも1種の化合物を含む組成物に添加することによって、組成物の混練中の組成物の粘度を下げる方法であって、ブロックコポリマーの量が、ブロックコポリマーを添加しない混練中の同じ組成物の粘度と比較して、組成物の混練中の組成物の粘度を下げるのに有効である、方法を提供する。
【0133】
本発明は、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーのある一定量を、少なくとも1種の化合物を含む組成物に添加することによって、組成物の混練中の温度を下げる方法であって、ブロックコポリマーの量が、ブロックコポリマーを添加しない同じ組成物の混練中の温度と比較して、組成物の混練中の温度を下げるのに有効である、方法を提供する。
【0134】
一実施形態において、少なくとも1種の化合物は農業材料化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は農薬化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は殺有害生物剤化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は、植物成長調節剤、ホルモンまたはバイオ刺激薬である。別の実施形態において、少なくとも1種の化合物は非農業材料化合物である。
【0135】
湿式混練は、フロアブル製剤を調製するために使用されるプロセスである。ブロックコポリマーによって形成された高分子電解質層は、粒子間の相互作用を著しく下げ/低減し、それによって系の温度を上げることなく粘度を低減し、懸濁液に高濃度の粒子をロードすることが可能になる。幾つかの実施形態において、本組成物の1000g/Lの懸濁液の混練中の温度は30℃未満である。一実施形態において、混練中の温度を40℃~50℃から20℃~25℃に下げる。一実施形態において、混練中の粘度を1000~2000cPから200~400cPに下げる。粘度は、ブルックフィールド粘度計を使用してスピンドル62および12RPMで測定される。幾つかの実施形態において、粒子の90%の粒径は湿式混練プロセスの結果、50μmから1μmに減少する。
【0136】
したがって、本主題は、製剤のより大きな密度および効率的で低温の湿式混練プロセスを可能にする。
【0137】
高塩環境における組成物の安定性の改善
本発明の高分子電解質層形成ブロックコポリマーは、アジュバントとして、より具体的には非常にイオン性の溶液中の様々な条件下で立体的な分散剤として機能することができる。本発明のブロックコポリマーを使用すると、高塩環境中で化合物の粒子を、例えばその沈殿を防止または遅延することによって安定化する。
【0138】
一実施形態において、化合物は農業材料化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は農薬化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は殺有害生物剤化合物である。一実施形態において、農業材料化合物は、植物成長調節剤、ホルモンまたはバイオ刺激薬である。別の実施形態において、化合物は非農業材料化合物である。
【0139】
非農業材料組成物およびその使用
本発明は、非農業材料組成物であって、
(i)少なくとも1種の非農業材料化合物の粒子、ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散系
を含み、ブロックコポリマーが非農業材料化合物粒子の疎水性表面に吸着されている、非農業材料組成物を提供する。
【0140】
本出願は、
a)着色剤成分;ならびに
b)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含み、
分散液として調製される、着色剤系組成物を提供する。
【0141】
一実施形態において、着色剤成分は少なくとも1種の着色剤粒子を含んでよく、ブロックコポリマーは着色剤粒子の疎水性表面に吸着されている。
【0142】
一実施形態において、分散剤系は第2の分散剤をさらに含む。一実施形態において、第2の分散剤は、ポリマー分散剤、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸ナトリウム、グリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、C6~18アルコールエトキシレートおよびその硫酸塩もしくはリン酸塩、ソルビタンモノオレエート、トリスチリルフェノールエトキシレート、ノポール含有界面活性剤またはエイコサ(プロポキシ)デカ(エトキシ)ジエチルアミンの少なくとも1つである。
【0143】
一実施形態において、着色剤組成物は約100g/L未満のVOC(揮発性有機物含量)を有する。
【0144】
一実施形態において、着色剤組成物はラテックス系コーティングとアルキド樹脂系コーティングの両方に相溶性がある。
【0145】
本発明は、アルキド樹脂系ベースコーティングまたはラテックス系ベースコーティングを染色する方法であって、アルキド樹脂系ベースコーティングまたはラテックス系ベースコーティングを、
i)着色剤成分;ならびに
ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含む着色剤系組成物
と接触させることを含み、着色剤系組成物が分散液として調製される、方法を提供する。
【0146】
本発明はまた、非農業用途系水性組成物であって、少なくとも、
(i)1種の非農業材料化合物;
(ii)水;ならびに
(iii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含む、非農業用途系水性組成物を提供する。
【0147】
一実施形態において、非農業用途系水性組成物は、有効量の分散剤系およびフィルム形成ポリマーラテックスを含むエマルション製剤である。
【0148】
一実施形態において、非農業用途系水性組成物は、1種または複数の顔料、充填剤または増量剤をさらに含む。
【0149】
一実施形態において、非農業用途系水性組成物は、ラテックス塗料、ラテックスコーティング、化粧料、清浄剤/クレンザー、刺激流体および油田採掘流体からなる群から選択されるエマルション製剤である。一実施形態において、エマルション製剤はラテックス塗料である。
【0150】
一実施形態において、非農業用途系水性組成物は、界面活性剤、レオロジー改質剤、消泡剤、増粘剤、着色剤、ワックス、香料および共溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0151】
本発明は、コーティング組成物を調製する方法であって、フィルム形成ポリマーラテックスを、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系と接触させることを含む、方法を提供する。
【0152】
一実施形態において、方法はフィルム形成ポリマーラテックスを水と接触させることをさらに含む。
【0153】
本発明は、着色剤系組成物を調製する方法であって、着色剤成分を、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系と接触させることを含み、結果として得られる着色剤系組成物が分散液である、方法を提供する。
【0154】
本発明はまた、油セメントグラウト中の添加剤として使用するための高分子電解質層形成ブロックコポリマーを提供する。幾つかの実施形態において、高分子電解質層形成ブロックコポリマーは、油セメントグラウト中の懸濁化剤として使用される。
【0155】
一実施形態において、本発明の高分子電解質層形成ブロックコポリマーは、セメント中に存在する固体粒子と組み合わせて、接合中の分散効果を提供する。
【0156】
本発明はまた、固体粒子、ならびに(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む油セメントグラウトを提供する。
【0157】
本発明はまた、油セメントグラウトの懸濁液中に固体粒子を維持するための高分子電解質層形成ブロックコポリマーの使用であって、ブロックコポリマーが(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む、使用を提供する。
【0158】
高分子電解質層形成ブロックコポリマーおよび調製の方法
本発明の高分子電解質層形成ブロックコポリマーは、構造A、BおよびCの1つを有する。
【0159】
【化1】
【0160】
A)線状ポリマー/コポリマーは、疎水性部分(固着部分)のブロックおよび帯電した親水性部分(安定化部分)のブロックからなる。これはジブロックコポリマーと称することもできる。
【0161】
【化2】
B)線状ポリマー/コポリマーは、疎水性部分および帯電した親水性/部分の2つのブロックからなる。これはトリブロックコポリマーと称することもできる。
【0162】
【化3】
C)櫛型グラフトポリマー/コポリマーは、疎水性部分および帯電した親水性部分の複数のブロック、例えば上に表すような帯電した親水性部分の4つのブロックからなる。これは単にグラフトしたコポリマーと称することもできる。
【0163】
本発明に記載される高分子電解質層形成ブロックコポリマーの吸着は、幾つかの技法によって測定されてもよい。
【0164】
例えば、本発明の高分子電解質層形成ブロックコポリマーは、水性媒体中で粒子の分散液に添加されてもよい。その後、セラムを、スラリーの遠心分離または濾過により得てもよい。結果として得られるセラムを、マトリックスからポリマーを分離するのに妥当な方法を実施するサイズ排除クロマトグラフィーデバイスに注入し、既知濃度のポリマー試料の注入によって得られる検量線を使用してその濃度を決定することができる。代替として、遠心分離にかけた粒子を洗浄し、当業者に公知の装置を使用してそのゼータ電位を測定することができる。高分子電解質層形成ブロックコポリマーの吸着は、結果として粒子表面での負電荷の純増をもたらし、これは、吸着したポリマーからの高分子電解質ブラシ層の形成に相当する。
【0165】
本発明の一実施形態において、固着部分は疎水性ブロックコポリマーである。一実施形態において、固着部分の少なくとも90%は疎水性モノマーを含む。幾つかの場合において、少量の親水性モノマー(すなわちモノマー数で10%未満)がブロックに導入されてもよい。
【0166】
一実施形態において、疎水性モノマーは、アクリレート誘導体、メタクリレート誘導体、スチレン誘導体およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。メチル、エチルまたはアクリル酸ブチルなどのアクリル酸アルキルモノマーは、この点に関して1つの例示の実施形態である。
【0167】
一実施形態において、疎水性モノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチル-ヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチルおよびメタクリル酸2-エチル-ヘキシルからなる群から選択される。一実施形態において、疎水性モノマーはアクリル酸エチルである。
【0168】
一実施形態において、少なくとも1つの安定化部分は親水性ブロックコポリマーである。一実施形態において、少なくとも1つの安定化部分は帯電したモノマーを含む。一実施形態において、安定化部分の少なくとも60重量%は帯電したモノマーである。一実施形態において、安定化部分の少なくとも70重量%は帯電したモノマーである。一実施形態において、安定化部分の少なくとも80重量%は帯電したモノマーである。一実施形態において、安定化部分の少なくとも90重量%は帯電したモノマーである。一実施形態において、安定化部分の100重量%は帯電したモノマーである。
【0169】
特定の一実施形態において、安定化ブロック中の帯電したモノマーの重量百分率は、安定化ブロックの重量の77%である。別の特定の実施形態において、安定化ブロック中の帯電したモノマーの重量百分率は、安定化ブロックの重量の88%である。別の特定の実施形態において、安定化ブロック中の帯電したモノマーの重量百分率は、安定化ブロックの重量の68%である。別の特定の実施形態において、安定化ブロック中の帯電したモノマーの重量百分率は、安定化ブロックの重量の83%である。
【0170】
別の実施形態において、安定化ポリマーの帯電したモノマーの重量百分率は、ブロックコポリマーの合計重量の少なくとも35%である。別の実施形態において、安定化ポリマーの帯電したモノマーの重量百分率は、ブロックコポリマーの合計重量の58%である。
【0171】
一実施形態において、帯電したモノマーは両性イオン性モノマーである。一実施形態において、帯電したモノマーは陰イオン性モノマーである。一実施形態において、安定化ブロック中のモノマーの少なくとも60%は、陰イオン性モノマーである。一実施形態において、陰イオン性モノマーはスルホネート基を有する。一実施形態において、陰イオン性モノマーは2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネート(AMPS)である。
【0172】
一実施形態において、安定化ブロック中のモノマーの40%未満は、中性の親水性モノマーである。一実施形態において、中性の親水性モノマーは、N-ビニルピロリドン、エチレンオキシド、アクリル酸グリコシドおよびアクリルアミドからなる群から選択される。
【0173】
別の実施形態において、安定化ブロックの重量百分率は、ブロックコポリマーの合計重量の65~90%である。
【0174】
一実施形態において、組成物中のブロックコポリマーの濃度は、約0.1%w/w、0.5%w/w、1.0%w/w、1.5%w/wまたは2.0%w/wである。一実施形態において、組成物中のブロックコポリマーの濃度は0.2~3%w/wである。
【0175】
一実施形態において、ブロックコポリマーは最大150のモノマーを含む。一実施形態において、ブロックコポリマーは85のモノマーを含む。一実施形態において、ブロックコポリマーは63のモノマーを含む。
【0176】
別の実施形態において、ブロックコポリマーの重量は最大約31000g/molである。一実施形態において、ブロックコポリマーの重量は約17000g/molである。別の実施形態において、ブロックコポリマーの重量は約12000g/molである。一実施形態において、ブロックコポリマーの重量は8,000~50,000g/molである。一実施形態において、ブロックコポリマーの重量は10,000~25,000g/molである。
【0177】
一実施形態において、安定化ブロックの重量は5,000~100,000g/molである。一実施形態において、安定化ブロックの重量は6,000~50,000g/molである。一実施形態において、安定化ブロックの重量は7,000~30,000g/molである。
【0178】
一実施形態において、固着部分の重量は500~5,000g/molである。一実施形態において、固着部分の重量は1,000~4,000g/molである。
【0179】
一実施形態において、固着部分はアクリル酸アルキルモノマー、好ましくはアクリル酸エチルモノマーを含み、固着部分の重量は1,000~4,000g/molである。一実施形態において、固着部分はアクリル酸アルキルモノマー、好ましくはアクリル酸エチルモノマーを含み、固着部分の重量は1,500~3,500g/molである。一実施形態において、固着部分はアクリル酸アルキルモノマー、好ましくはアクリル酸エチルモノマーを含み、固着部分の重量は1,500~3,000g/molである。
【0180】
一実施形態において、固着部分と安定化部分とのモル比は、1:2~4である。
【0181】
一実施形態において、固着部分と安定化部分との間の重量比([固着部分]:[安定化部分])は、0.6未満、0.5以下、0.4以下、0.3以下、または0.2以下である。一実施形態において、固着部分と安定化部分との間の重量比([固着部分]:[安定化部分])は、0.01~0.6の間である。一実施形態において、固着部分と安定化部分との間の重量比([固着部分]:[安定化部分])は、0.1~0.3の間である。
【0182】
本発明のブロックコポリマーは、ラフト重合/共重合(raft and polymer/copolymerization)によって合成することができる。
【0183】
本発明の実施形態のいずれか1つによると、本発明の高分子電解質層形成ブロックコポリマーは、
-(A)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチル-ヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチルおよびメタクリル酸2-エチル-ヘキシル、特にアクリル酸メチル、アクリル酸エチルまたはアクリル酸ブチルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーの重合によって得られた固着部分であって;前記モノマーに由来する少なくとも90重量%の単位を含み、1,000~4,000g/mol、例えば1,500~3,500g/mol、例えば1,500~3,000g/molの範囲の分子量を有する固着部分と;
-(B)少なくとも1種の陰イオン性モノマー、特にスルホネート基を有する1種の陰イオン性モノマー、好ましくは2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホネートの重合によって得られた安定化部分であって;少なくとも60重量%の前記陰イオン性モノマーに由来する単位を含み、6,000~50,000g/mol、例えば7,000~30,000g/molの範囲の分子量を有する安定化部分と
を含み;
固着ブロックと安定化ブロックとの間の重量比は0.1~0.3の間の範囲であり、
好ましくは8,000~50,000g/mol、例えば10,000~25,000g/molの範囲の全体分子量を有する。
【0184】
本発明の高分子電解質層形成ブロックコポリマーを製造するための方法は幾つかある。そのようなコポリマーを製造するための幾つかの方法は下記に提供される。
【0185】
本発明の文脈において、Quirk and Lee(Polymer International 27, 359(1992))によって定義されるリビング重合または制御された重合を使用することができる。この特定の方法によって、狭い分散度を有し、ブロックの長さおよび組成が化学量論および転化率によって制御されるポリマーを調製することが可能になる。この型の重合の文脈において、例えば、以下のような、任意のいわゆるリビング重合または制御された重合方法によって得ることができるコポリマーがとりわけ推奨される:
-国際出願PCT国際公開第98/58974号パンフレットおよび米国特許第6,153,705号明細書の教示による、キサントゲン酸塩によって制御されたフリーラジカル重合、
-国際出願PCT国際公開第98/01478号パンフレットの教示による、ジチオエステルによって制御されたフリーラジカル重合、
-国際出願PCT国際公開第99/35178号パンフレットの教示による、ジチオエステルによって制御されたフリーラジカル重合、
-国際出願PCT国際公開第99/35177号パンフレットの教示による、ジチオカルバメートによって制御されたフリーラジカル重合、
-国際出願PCT国際公開第99/03894号パンフレットの教示による、ニトロキシド前駆体を使用するフリー重合、
-国際出願PCT国際公開第99/31144号パンフレットの教示による、ジチオカルバメートによって制御されたフリーラジカル重合、
-国際出願PCT国際公開第02/26836号パンフレットの教示による、ジチオカルバゼートによって制御されたフリーラジカル重合、
-国際出願PCT国際公開第00/75207号パンフレットおよび米国特許出願第09/980,387号明細書の教示による、ハロゲン化キサントゲン酸塩によって制御されたフリーラジカル重合、
-国際出願PCT国際公開第02/10223号パンフレットの教示による、ジチオホスホロエステルによって制御されたフリーラジカル重合、
-国際出願PCT国際公開第02/22688号パンフレットの教示による、二硫黄化合物の存在下で移動剤によって制御されたフリーラジカル重合、
-国際出願PCT国際公開第96/30421号パンフレットの教示による原子移動ラジカル重合(ATRP)、
-Otu et al., "Role of Initiator-Transfer Agent-Terminator(Iniferter)in Radical Polymerizations: Polymer Design by Organic Disulfides as Iniferters", Makromol. Chem. Rapid. Commun., 3, 127(1982)の教示による、イニファーターによって制御されたフリーラジカル重合、
-Tatemoto et al., Jap. 50, 127, 991(1975), Daikin Kogyo Co Ltd Japan, and Matyjaszewski et al., "Controlled Radical Polymerizations: The Use of Alkyl Iodides in Degenerative Transfer", Macromolecules, 28, 2093(1995)の教示による、ヨウ素の変性移動によって制御されたフリーラジカル重合、
-"Encyclopedia of Polymer Science and Engineering", Vol. 7, edited by H.F. Mark, N.M. Bikales, C.G. Overberger and G. Menges, Wiley Interscience, New York, 1987内のWebster O.W., "Group Transfer Polymerization", p.580-588の教示による官能基移動重合、
-テトラフェニルエタン誘導体によって制御されたラジカル重合(D. Braun et al., "Initiation of Free Radical Polymerization by Thermal Cleavage of Carbon-Carbon Bonds", Macromol. Symp., 111, 63(1996))、
-有機コバルト錯体によって制御されたラジカル重合(Wayland et al., "Living Radical Polymerization of Acrylates by Organocobalt Porphyrin Complexes", J. Am. Chem. Soc., 116, 7973(1994))。
【0186】
例示のリビング重合または制御された重合方法として上に引用された文書のそれぞれの全体内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0187】
好ましい方法は、移動剤の使用を含む逐次リビングフリーラジカル重合法である。
【0188】
好ましい移動剤は、式:-S-C(S)-Y-、-S-C(S)-S-、または-S-P(S)-Y-、または-S-P(S)-S-[式中、Yは、硫黄とは異なる原子、例えば酸素原子、窒素原子および炭素原子である]の基を含む薬剤である。それには、ジチオエステル基、チオエーテル-チオン基、ジチオカルバメート基、ジチオホスホロエステル、ジチオカルバゼートおよびキサントゲン酸塩基が含まれる。好ましい移動剤中に含まれる基の例としては、式:-S-C(S)-NR-NR’2、-S-C(S)-NR-N=CR’2、-S-C(S)-O-R、-S-C(S)-CR=CR’2および-S-C(S)-X[式中、RおよびR’は同一もしくは異なる水素原子、または任意選択で置換されている、任意選択でヘテロ原子を含むヒドロカルビル基などの有機基であり、Xはハロゲン原子である]の基が挙げられる。好ましい重合法は、キサントゲン酸塩を使用するリビングラジカル重合法である。
【0189】
リビングフリーラジカル重合法または制御されたフリーラジカル重合法によって得られるコポリマーは、ポリマー鎖の末端に少なくとも1つの移動剤基を含んでよい。特定の実施形態において、そのような基は除去または失活される。
【0190】
ブロックコポリマーを作るために使用されるリビングラジカル重合法または制御されたラジカル重合法は:
a)モノ-アルファ-エチレン性不飽和モノマー、少なくとも1種の遊離ラジカル源化合物および移動剤を反応させて第1のブロックを得るステップであって、移動剤が前記第1のブロックに結合する、ステップ、
b1)第1のブロック、別のモノ-アルファ-エチレン性不飽和モノマー、および任意選択で少なくとも1種のラジカル源化合物を反応させてジブロックコポリマーを得るステップ、
b2)任意選択で、ステップb1)をn回(nは0以上である)繰り返して(n-2)ブロックコポリマーを得るステップ、次いで
c)任意選択で、移動剤を、それを不活性化する手段と反応させるステップを含む。
【0191】
例えば、ジブロックコポリマーを作るのに使用される「リビング」または「制御された」ラジカル重合法は:
a)モノ-アルファ-エチレン性不飽和モノマー、少なくとも1種の遊離ラジカル源化合物および移動剤を反応させて第1のブロックを得るステップであって、移動剤が前記第1のブロックに結合する、ステップ、
b)第1のブロック、別のモノ-アルファ-エチレン性不飽和モノマー、および任意選択で少なくとも1種のラジカル源化合物を反応させてジブロックコポリマーを得るステップ、次いで、
c)任意選択で、移動剤を、それを不活性化する手段と反応させるステップを含む。ステップa)の間に、ポリマーの第1のブロックが合成される。ステップb)、b1)またはb2)の間に、ポリマーの別のブロックが合成される。
【0192】
移動剤の例は、下記式(I):
【0193】
【化4】
[式中、
- Rは、R2O-、R2R’2N-またはR3-基を表し、R2およびR’2は、同一または異なり、(i)アルキル、アシル、アリール、アルケンもしくはアルキン基または(ii)任意選択で、芳香族、飽和もしくは不飽和の炭素環、または(iii)飽和もしくは不飽和の複素環を表し、これらの基ならびに環(i)、(ii)および(iii)は置換されていてよく、R3は、H、Cl、アルキル、アリール、アルケンまたはアルキン基、任意選択で置換されている、飽和もしくは不飽和(複素)環、アルキルチオ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボキシル、アシルオキシ、カルバモイル、シアノ、ジアルキルもしくはジアリールホスホナト、またはジアルキルもしくはジアリールホスフィナト基、またはポリマー鎖を表し、
- R1は、(i)任意選択で置換されているアルキル、アシル、アリール、アルケンもしくはアルキン基または(ii)飽和もしくは不飽和であり、任意選択で置換されていているか、もしくは芳香族である炭素環、または(iii)任意選択で置換されている、飽和もしくは不飽和の複素環またはポリマー鎖を表す。
R1、R2、R’2およびR3基は、置換フェニルもしくはアルキル基、置換芳香族基、または以下の基:オキソ、アルコキシカルボニルもしくはアリールオキシカルボニル(-COOR)、カルボキシル(-COOH)、アシルオキシ(-O2CR)、カルバモイル(-CONR2)、シアノ(-CN)、アルキルカルボニル、アルキルアリールカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、イソシアナト、フタルイミド、マレイミド、スクシンイミド、アミジノ、グアニジノ、ヒドロキシル(-OH)、アミノ(-NR2)、ハロゲン、アリル、エポキシ、アルコキシ(-OR)、S-アルキル、S-アリールもしくはシリル、カルボン酸のアルカリ塩もしくはスルホン酸のアルカリ塩、ポリ(アルキレンオキシド)(PEO、PPO)鎖、または陽イオン性置換基(第四級アンモニウム塩)などの親水性またはイオンの性質を示す基で置換されていてよく、Rはアルキルまたはアリール基を表す]
の移動剤である。
【0194】
好ましくは、式(I)の移動剤は、次の式(IA)、(IB)および(IC):
【0195】
【化5】
[式中、
-R2およびR2’は、(i)アルキル、アシル、アリール、アルケンもしくはアルキン基、または(ii)任意選択で芳香族、飽和もしくは不飽和の炭素環または(iii)飽和もしくは不飽和の複素環を表し、これらの基ならびに環(i)、(ii)および(iii)は置換されていてよく、
-R1およびR1’は、(i)任意選択で置換されているアルキル、アシル、アリール、アルケンもしくはアルキン基または(ii)飽和もしくは不飽和であり、任意選択で置換されているか、もしくは芳香族である炭素環、または(iii)任意選択で置換されている、飽和もしくは不飽和の複素環またはポリマー鎖を表し、
-pは2~10の間である]
の化合物から選ばれるジチオカルボネートである。
【0196】
移動剤の他の例は、以下の式(II)および(III):
【0197】
【化6】
[式中、
-R1は、有機基、例えば式(I)、(IA)、(IB)および(IC)の移動剤について上に定義される基R1であり、
-同一または異なるR2、R3、R4、R7およびR8は、水素原子、または任意選択で環を形成する有機基である。R2、R3、R4、R7およびR8有機基の例は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、および置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビルを含む]
の移動剤である。
【0198】
モノ-アルファ-エチレン性不飽和モノマーおよびそれらの割合は、ブロック(複数可)について所望の特性を得るために選ばれる。この方法によると、逐次重合をすべて同じ反応器で実施するならば、1つの段階中で使用されるモノマーはすべて、次の段階の重合が開始する前に、したがって、新しいモノマーが導入される前に消費されてしまうのが一般に好ましい。しかし、先行段階のモノマーが次のブロックの重合中に反応器にまだ存在することが起こり得る。この場合、これらのモノマーは、一般に、モノマー全体の5モル%より多くは占めない。
【0199】
重合は、水性および/または有機溶媒媒体中で実施することができる。また、重合は、実質的にニートの溶融形態(塊状重合)で、または水性媒体中でラテックス型の方法に従って実施することができる。
【0200】
本明細書に開示される各実施形態は、開示される他の実施形態のそれぞれに適用可能であるものと企図される。したがって、本明細書に記載される様々な要素のすべての組合せは本発明の範囲内にある。さらに、組成物の実施形態に記述される要素は、本明細書に記載される方法および使用実施形態に使用することができ、逆もまた真である。
【実施例
【0201】
実施例は本主題のより完全な理解を容易にするために下記に提供される。以下の実施例は、本主題を製造し実施する例示の様式を説明する。しかし、本主題の範囲は、これらの実施例に開示される特定の実施形態に限定されず、例証の目的のみのためである。他の実施形態は、本明細書および実施例を考察すれば当業者には明らかであろう。実施例を含む本明細書が、本主題の範囲および趣旨を限定することなく、例示のみであると考えられることが意図される。
【実施例1】
【0202】
高分子電解質層形成ブロックコポリマーA(PolyAgro A)製剤
本主題による例示のブロックコポリマー製剤は、本明細書でPolyAgro Aと名付けられ、下記表1に示される。
【0203】
【表1】
【0204】
PolyAgro Aは、疎水性ブロック(アンカーブロック-ANCHOR)および親水性ブロック(安定化ブロック-STAB)で構成される、17000g/molの合計重量を有するジブロックコポリマーである。安定化、親水性ブロックは、2-アクリロイルアミノ-2-メチルプロパン-1-スルホン酸ナトリウム(AMPS)モノマーでできており、ポリマー中の全体モノマーの77%である。モノマーの他の23%はアンカーの、疎水性ブロックに属し、アクリル酸エチルモノマーでできている。ポリマー中のモノマーの合計量(重合度、DPn)は、85のモノマーである。
【0205】
このポリマーは以下の手順に従って得ることができる。
【0206】
a)マクロCTA
機械式撹拌器および還流凝縮器を装備した、2Lの二重ジャケット付き反応器に、11.26gのO-エチル-S-(1-メトキシカルボニルエチル)キサントゲン酸塩(CH3CH(CO2CH3))S(C=S)OEt)、264.08gのエタノール、および356.32gの脱イオン水および1400gのAMPS(Na)溶液(50%活性)および1.52gの4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)を添加した。反応器内容物を撹拌および窒素下で70℃に加熱した。反応混合物をさらに1時間70℃で熟成し、それから周囲温度に冷却し取り出した。測定した固形分は37.6%(115℃、60分)であった。GPC Mals:Mn=16300 Mw=2600 IP=1.6。
【0207】
b)鎖延長
機械式撹拌器および還流凝縮器を装備した、5Lの二重ジャケット付き反応器に、2127gのマクロCTA溶液(a参照)および330gの脱イオン水を添加した。反応器内容物を撹拌および窒素流下で70℃に加熱した。70℃に達したら、106.67gのアクリル酸エチル(EA)を2時間かけて添加し、10重量%の4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)の溶液37.37gを2時間30分かけて同時に添加した。開始剤溶液の導入が終わってから、反応溶液を1時間さらに熟成した。その後、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)の10重量%溶液44.85gを一度に添加し、混合物をさらに1時間70℃で熟成し、それから周囲温度に冷却し、取り出した。測定した固形分は40.0%(115℃、60分)であった。
【0208】
ロータリーエバポレーターを使用して、エタノールをポリマー溶液から除去した。水を戻して40.4%の最終固形分を有するポリマー溶液を得た。
【0209】
機械式撹拌器および還流凝縮器を装備した、5Lの二重ジャケット付き反応器に、2600gのポリマー溶液を入れた。溶液のpHを、NaOHの50%溶液を使用して、8,5に上げた。混合物を撹拌しながら70℃に加熱し、それから過酸化水素の30%溶液48.4を1時間で添加した。添加の最後に、溶液をさらに3時間熟成し、それから冷却し取り出した。
【0210】
残留モノマーを、HPLCおよびGCによって測定した(AMPS=22ppm、EA=2ppm)。
【0211】
測定した固形分は37.5%であった。ポリマーは、約30%w/wの濃度で準備できているポリマー水溶液から以下の実施例による製剤に使用する。
【実施例2】
【0212】
混練プロセスに対する効果
この実施例は、PolyAgro Aを用いた場合と用いない場合の混練フロアブル製剤間の比較を提供する。これらの製剤はどちらも高充填製剤と考えられ、使用する分散剤のみ異なる。
【0213】
製剤1において、従来のポリマー分散剤を使用した(Atlox(商標)4913-非イオン性のグラフトしたコポリマー)。製剤2において、使用した分散剤系は本ジブロックコポリマーPolyAgro A2を含有する(備考:PolyAgro A2は、上の表1に示すように実施例1の30%w/wのPolyAgro Aポリマー/コポリマーを含む水溶液である)。2つの試料の混練プロセスは同じである。
【0214】
有効成分および分散剤を3ステップ以内で混合物に導入し、ステップ間で、以下により詳細に記載するように、混合物を混練し、混合物の粘度および粒子の粒度分布を測定する。
【0215】
懸濁液としてフォルペットを1000g/L含む製剤1を、分散剤としてAtlox(商標)4913を使用することにより調製した。懸濁液としてフォルペットを1000g/L含む製剤2を、分散剤としてPolyAgro A2を使用することにより調製した。
【0216】
有効成分を3ステップで添加し、分散剤および湿潤剤(Emcol 4500、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)も同様にする。フォルペットの約半分を直ちに添加し、次いでそれを混練し、さらなる量のフォルペットを添加し(約32%)、再度混練する。最後のステップで、フォルペットの残りを添加し混練する。
【0217】
製剤1および製剤2は、下記表2Aおよび2Bに要約する。
【0218】
【表2-1】
【0219】
【表2-2】
【0220】
各ステップの前後に、粘度および粒径を測定し、混練中の温度を絶えず追跡する。(図1および2を参照)
【0221】
図1を見ると、このグラフは、PolyAgro A2を用いない製剤1とPolyAgro A2を用いる製剤2に対するステップ間の粘度の変化を示す。有効成分粉末の各添加後、ステップ毎に粘度が上がるが、各ステップの混練後には、粘度は下がる。PolyAgro A2を用いない製剤の場合には、粘度上昇は、PolyAgro A2を用いる製剤の場合より劇的に急である。
【0222】
図2を見ると、このグラフは、プロセス中の粒径分布(PSD)の変化を示す(d90は、90体積%の粒子がより小さな直径を有する値である)。それは、PolyAgro A2ポリマーが混練の有効性を損なわないこと、および、両方の場合において、d90の減少は類似していることを示す。
【実施例3】
【0223】
高塩条件での安定化試験
等しい量の異なる分散剤を含む高濃度の塩溶液を調製した。乾燥し混練した有効成分を溶液に分散し、一定期間静置した。次いで、沈降を異なる溶液間で比較した。組成(すなわち塩の種類、濃度、分散剤、有効成分)を各組の測定について下記表3に明示する。
【0224】
【表3】
【0225】
他の公知の分散剤に対してPolyAgro A2分散剤を含有する製剤の性能のさらなる分析は、本図で知ることができる。図3Aおよび3Bは、高塩溶液中の異なる公知の分散剤、およびPolyAgro A2分散剤の性能の比較を提供する。ここで、等しい量の有効成分粉末(ピメトロジン)を、高い塩濃度(硫酸アンモニウム10%w/w)を含む、異なる分散剤溶液(1%w/w)に分散した。24時間後、分散し続ける唯一の粉末は、PolyAgro A2ポリマー分散剤溶液に分散したものである。残りの管では、粉末は底部に沈降した。
【0226】
同様に、図4は、高塩溶液中の異なる公知の分散剤の性能と、PolyAgro A2分散剤の性能とのさらなる比較を提供する。ここで、等しい量の有効成分粉末(フォルペット)を、高い塩濃度(塩化ナトリウム10%w/w)を含む、異なる分散剤溶液(1%w/w)に分散した。一晩静置した後、分散し続ける唯一の粉末は、PolyAgro A2ポリマー分散剤溶液(3つの異なるバッチ)に分散したものである。残りの管では、粉末は底部に沈降した。
【0227】
同様に、図5Aおよび5Bは、高塩溶液中の異なる公知の分散剤の性能と、PolyAgro A2分散剤の性能との別の比較を提供する。ここで、等しい量の有効成分粉末(フォルペット)を、高い塩濃度を含む、異なる分散剤溶液(1%w/w)に分散した(図5A-硫酸アンモニウム10%w/w;図5B-塩化カルシウム10.5%w/w)。ある時間(図5Aでは1時間、図5Bでは5時間)後分散し続ける唯一の粉末は、PolyAgro A2ポリマー分散剤溶液(3つの異なるバッチ)に分散したものである。残りの管では、粉末は底部に沈降した。
【実施例4】
【0228】
造粒プロセスに対する効果
以下の表4は、本発明の高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む組成物、およびそれを含まない3つの異なる組成物の比較である。
【0229】
【表4-1】
【0230】
【表4-2】
【0231】
表4に例示した3つの異なる組成物を、ピメトロジン-ジノテフラン製剤の造粒について試験した。組成および造粒プロセスは、使用した界面活性剤のみが異なる。試料1および2は、2%の濃度の従来の界面活性剤を使用したが、試料3は、1%のPolyAgro A2ポリマー溶液(約30%w/w)を使用した。
【0232】
造粒プロセス中に、混練した粉末は、スクリーンを介してプレスした。生じた圧力によって、スクリーンを介して粉末を押し出すために電力をより多く必要とした。電流を測定し、圧力の指標とした。試料3の場合には、造粒プロセスには最小の電流が必要とされた。これは、生じた圧力が最小であることを示している。
【0233】
すなわち、本ブロックコポリマーを含まない製剤には、造粒中に生じる厳しい圧力問題があり、それは本ブロックコポリマーを使用してのみ解決された。生じた圧力を克服し必要な造粒速度を達成するために造粒機が必要とする電流は、アンペアで得られ、押出圧力の問題を示す。
【実施例5】
【0234】
高分子電解質層形成ブロックコポリマーB(PolyAgro B)製剤
本主題による例示のコポリマーの製剤は、本明細書でPolyAgro Bと名付けられ、下記表5に示される。
【0235】
【表5】
【0236】
これは、疎水性ブロック(アンカーブロック-ANCHOR)および親水性ブロック(安定化ブロック-STAB)で構成される、12000g/molの合計重量を有するジブロックコポリマーである。安定化親水性ブロックは、2-アクリロイルアミノ-2-メチルプロパン-1-スルホン酸ナトリウム(AMPS)モノマーでできており、これはポリマー中の全体モノマーの69%である。モノマーの他の31%は、アクリル酸エチルモノマーでできた疎水性アンカーブロックに属する。ポリマー(重合度、DPn)中のモノマーの合計量は、64のモノマーである。
【0237】
このポリマーは以下の手順に従って得ることができる。
a)マクロCTA
機械式撹拌器および還流凝縮器を装備した、2Lの二重ジャケット付き反応器に、14.9gのO-エチル-S-(1-メトキシカルボニルエチル)キサントゲン酸塩(CH3CH(CO2CH3))S(C=S)OEt)、266.2gのエタノール、および364.7gの脱イオン水1400gのAMPS(Na)溶液(50%活性)および1.7gの過硫酸ナトリウムを添加した。反応器内容物を撹拌および窒素下で70℃に加熱した。反応混合物をさらに1時間70℃で熟成し、それから周囲温度に冷却し、取り出した。測定した固形分は38%であった(115℃、60分)。
b)鎖の延長
機械式撹拌器および還流凝縮器を装備した、2Lの二重ジャケット付き反応器に、1314.8gのマクロCTA溶液(a参照)および283gの脱イオン水を添加した。反応器内容物を撹拌および窒素下で70℃に加熱した。70℃で2時間かけて100gのアクリル酸エチル(EA)を添加し始め、2時間30分かけて過硫酸ナトリウムの12重量%溶液24.8gを添加した。開始剤溶液の導入が終わってから、1時間熟成した。過硫酸ナトリウムの12重量%溶液14.3gを一度に添加し、さらに1時間70℃で熟成し、それから周囲温度に冷却し、取り出した。測定した固形分は35.4%であった(115℃、60分)。
【0238】
ロータリーエバポレーターを使用して、エタノールをポリマー溶液から除去した。水を戻して35.8%の最終固形分を有するポリマー溶液を得た。
【0239】
1101gのストリップしたポリマー溶液を、機械式撹拌器および還流凝縮器を装備した、2Lの二重ジャケット付き反応器に入れた。溶液のpHを、105gの5重量%(NaHCO3/Na2CO3 50/50mol%)緩衝溶液および87.8gの脱イオン水を使用して8.5に上げた。混合物を撹拌しながら70℃に加熱し、それから過酸化水素の30%溶液35.8gを1時間で添加し、添加の最後で、溶液をさらに3時間熟成し、それから冷却し取り出した。
【0240】
測定した固形分は32.2%であった(PolyAgro B2)。
【0241】
この実施例は、本ブロックコポリマー界面活性剤(「PolyAgro B」)を用いて高充填フロアブル製剤を混練した結果を提供する。PolyAgro B2を用いるこの製剤(すなわち製剤3)は、下記表6に要約する。製剤3の調製方法は、実施例2に記載した製剤2の方法に類似している。
【0242】
上記の製剤3および製剤2の混練中の粘度間の比較を図6に提示する。
【0243】
【表6】
【実施例6】
【0244】
水中油型殺有害生物組成物
この実施例において、有機相に富む水中油(o/w)型エマルション製剤の安定な殺有害生物製剤を提示する。有効成分は殺線虫剤、フルエンスルホンである。組成物を表7に提示する。有機相を水相に添加し、次いで、エマルション製剤を、高剪断ホモジナイザーを使用して調製する。最終の小滴寸法はD90<2μmであり、最終のフルエンスルホンは630gr/lであり、有機相含量は69%で、水相の2倍より多い。最終粘度は、高剪断後、370cPである(ブルックフィールド粘度計、12RPM、スピンドル62で測定)。
【0245】
【表7】
【実施例7】
【0246】
非農業用途系水性組成物
顔料着色ペーストの調製のために実施例5において調製したポリマーの有効性および最適な使用のレベルの評価を分散剤需要曲線の調査によって決定した。出発点の製剤は、3種の顔料Blue PB 15:2(40%固形分)、Black Raven(登録商標)5000(20%固形分)およびYellow PY42(50%固形分)について選んだ。特定の顔料それぞれについて、活性な分散剤と顔料の比を変えた、6つの試料の分散液に対応する6つの粘度データ点を得ることにより需要曲線を取得した。各試料は合計1.5gを含有する。
【0247】
通常の手順で、6つの4mlガラスバイアルに所与の量の2mmのガラスビーズをロードし、次いで、同量の顔料をバイアルにロードした。Blue PB 15:2、Black Raven(登録商標)5000およびYellow PY42に対するガラスビーズおよび粒子の量は、それぞれ600mg、300mgおよび750mgである。その後、発泡防止剤(20mg、BYK022)、分散剤水溶液、Blue PB 15:2、Black Raven(登録商標)5000について20%、およびYellow PY42(アンモニア溶液でpH 9~10に調節した)について5%で、およびDI水(アンモニアでpH 9~10に調節した)を添加した。各バイアルに添加する分散剤の量は、活性な分散剤と顔料との比が、PB 15:2が6~21%、Raven(登録商標)5000が20~70%およびPY42が0.3~4%の間になるように変えた。最終顔料濃度が、PB 15:2が40%、Raven(登録商標)5000が20%、PY42が50%となるようにDI水の量を添加した。Scientific industries Vortex-Genie(登録商標)2、速度6~8を使用して、混合物を緩やかなボルテックス混合により湿らせ、次いで、激しいボルテックス撹拌を90分間使用し、分散した。異なるバイアル中の分散液の粘度は、Gilson Viscomanの携帯用粘度計を使用して測定した。
【0248】
種々の評価に関する結果を、下記表8~10に示す。
【0249】
【表8】
【0250】
【表9】
【0251】
【表10】
【0252】
それらは、実施例5からの分散剤を用いて評価したすべての顔料について低粘度分散液を得ることができることを示す。また、それらは、基準の分散剤Solsperse(商標)65000に対して、本発明のポリマーの改善された普遍性を示す。
【0253】
本主題を、その好ましい実施形態を参照して示し記載したが、多くの代替、修正および変形が、その趣旨および範囲から逸脱することなく、それになされ得ることは当業者によって理解されよう。したがって、添付された特許請求の範囲の趣旨および広範な範囲内にあるような代替、修正および変形をすべて包含するものと意図される。

本発明は以下の実施態様を含むものである。
〔1〕農業材料組成物であって、
(i)少なくとも1種の農業材料化合物の粒子;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系
を含み、前記ブロックコポリマーが前記農業材料化合物粒子の疎水性表面に吸着されている、農業材料組成物。
〔2〕前記農業材料化合物が農薬化合物である、上記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記農業材料化合物が、殺有害生物剤、植物成長調節剤、ホルモンまたはバイオ刺激薬である、上記〔1〕に記載の組成物。
〔4〕前記農業材料化合物が疎水性である、上記〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔5〕殺有害生物組成物であって、
(i)少なくとも1種の殺有害生物剤化合物の粒子;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系
を含み、前記ブロックコポリマーが前記殺有害生物剤化合物粒子の表面に吸着されている、殺有害生物組成物。
〔6〕前記殺有害生物剤が、殺虫剤、殺線虫剤、除草剤、殺菌剤、殺藻剤、動物忌避剤または殺ダニ剤である、上記〔5〕に記載の組成物。
〔7〕分散液である、上記〔1〕から〔6〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔8〕エマルション製剤、懸濁液、フロアブル製剤、カプセル懸濁液またはサスポエマルション製剤である、上記〔1〕から〔7〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔9〕前記組成物がエマルション製剤であり、前記エマルション製剤が水中油型エマルション製剤である、上記〔8〕に記載の組成物。
〔10〕前記エマルション製剤が少なくとも60重量%の油相を含む、上記〔9〕に記載の組成物。
〔11〕造粒されている、上記〔8〕に記載の組成物。
〔12〕a)前記組成物が高充填であり、前記組成物中の農業材料粒子の濃度が900~1200g/Lであり、
b)前記組成物の密度が1.4~1.6kg/Lであり、および/または
c)前記組成物の粘度が、ブルックフィールド粘度計のスピンドル62および12RPMで決定された場合、750cP未満である、上記〔1〕から〔11〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔13〕高塩環境において安定である、上記〔1〕から〔12〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔14〕色素系組成物であって、
(i)着色剤成分;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含み、
分散液として作製される、着色剤系組成物。
〔15〕前記着色剤成分が少なくとも1種の着色剤粒子を含み、前記ブロックコポリマーが前記着色剤粒子の疎水性表面に吸着されている、上記〔14〕に記載の組成物。
〔16〕前記分散剤系が第2の分散剤をさらに含む、上記〔14〕または〔15〕に記載の組成物。
〔17〕前記第2の分散剤が、ポリマー分散剤、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸ナトリウム、グリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、C 6~18 アルコールエトキシレートおよびその硫酸塩もしくはリン酸塩、ソルビタンモノオレエート、トリスチリルフェノールエトキシレート、ノポール含有界面活性剤ならびにエイコサ(プロポキシ)デカ(エトキシ)ジエチルアミンからなる群から選択される、上記〔16〕に記載の組成物。
〔18〕約100g/L未満の揮発性有機物含量を有し、および/またはラテックス系コーティングとアルキド樹脂系コーティングの両方に相溶性である、上記〔14〕から〔17〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔19〕非農業用途系水性組成物であって、少なくとも
(i)1種の非農業材料化合物;
(ii)水;ならびに
(iii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系
を含む、非農業用途系水性組成物。
〔20〕エマルション製剤であり、
a)前記エマルション製剤が、フィルム形成ポリマーラテックスをさらに含み、ならびに/または
b)前記エマルション製剤が、ラテックス塗料、ラテックスコーティング、化粧料、清浄剤/クレンザー、刺激流体および油田採掘流体からなる群から選択される、
上記〔19〕に記載の組成物。
〔21〕a)1種もしくは複数の顔料、充填剤もしくは増量剤、ならびに/または
b)界面活性剤、レオロジー改質剤、消泡剤、増粘剤、着色剤、ワックス、香料および共溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤
をさらに含む、上記〔19〕に記載の組成物。
〔22〕固体粒子、ならびに(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む、油セメントグラウト組成物。
〔23〕前記高分子電解質層形成ブロックコポリマーが線状ブロックコポリマーである、上記〔1〕から〔22〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔24〕前記線状ブロックコポリマーがジブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマーである、上記〔23〕に記載の組成物。
〔25〕前記高分子電解質層形成ブロックコポリマーが櫛型ブロックコポリマーである、上記〔1〕から〔22〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔26〕前記固着部分が疎水性ブロックコポリマーである、上記〔1〕から〔25〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔27〕前記固着部分の少なくとも90%が疎水性モノマーである、上記〔26〕に記載の組成物。
〔28〕前記疎水性モノマーが、アクリレート誘導体、メタクリレート誘導体、スチレン誘導体およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、上記〔27〕に記載の組成物。
〔29〕前記疎水性モノマーがアクリル酸エチル(EA)である、上記〔28〕に記載の組成物。
〔30〕前記少なくとも1つの安定化部分が親水性ブロックコポリマーである、上記〔1〕から〔29〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔31〕前記安定化部分中の少なくとも60重量%のモノマーが帯電したモノマーである、上記〔30〕に記載の組成物。
〔32〕前記安定化部分中の40重量%未満のモノマーが中性の親水性モノマーである、上記〔30〕または〔31〕に記載の組成物。
〔33〕前記帯電したモノマーが陰イオン性モノマーである、上記〔31〕または〔32〕に記載の組成物。
〔34〕前記陰イオン性モノマーの少なくとも1つがスルホネート基を有する、上記〔33〕に記載の組成物。
〔35〕前記陰イオン性モノマーの少なくとも1つが2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩(AMPS)である、上記〔33〕または〔34〕に記載の組成物。
〔36〕前記中性の親水性モノマーが、N-ビニルピロリドン、エチレンオキシド、アクリル酸グリコシドおよびアクリルアミドからなる群から選択される、上記〔32〕から〔35〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔37〕a)前記ブロックコポリマーが最大150のモノマーを含み、
b)前記ブロックコポリマーの重量が最大31000g/molであり、
c)前記安定化部分の重量が5,000~100,000g/molであり、
d)前記固着部分の重量が500~5,000g/molであり、
e)前記安定化部分の重量百分率が、前記ブロックコポリマーの合計重量の65~90%であり、
f)前記固着部分と前記安定化部分とのモル比が1:2~4であり、および/または
g)前記組成物中の前記ブロックコポリマーの濃度が0.2~3%w/wである、上記〔1〕から〔36〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔38〕有害生物を防除および防止する方法であって、前記有害生物が防除および防止されるべき場所に殺有害生物組成物を適用するステップを含み、前記殺有害生物組成物が、
(i)少なくとも1種の殺有害生物剤化合物の粒子;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系
を含み、前記ブロックコポリマーが前記殺有害生物剤化合物粒子の表面に吸着されている、方法。
〔39〕a)前記有害生物が虫であり、前記殺有害生物剤が殺虫剤であり、
b)前記有害生物が真菌であり、前記殺有害生物剤が殺菌剤であり、
c)前記有害生物が線虫であり、前記殺有害生物剤が殺線虫剤であり、
d)前記有害生物が雑草であり、前記殺有害生物剤が除草剤であり、
e)前記有害生物が藻であり、前記殺有害生物剤が殺藻剤であり、
f)前記有害生物がダニもしくはマダニであり、前記殺有害生物剤が殺ダニ剤であり、または
g)前記有害生物が動物であり、前記殺有害生物剤は動物忌避剤である、
上記〔38〕に記載の方法。
〔40〕a)前記場所が、植物、植物に隣接する領域、植物の成長を支援するように適応させた土、植物の根、植物の葉、および/または植物を生産するように適応させた種子であり、
b)前記場所が、壁、床または家具もしくは器具の表面であり、
c)前記場所が、台所表面または浴室表面であり、
d)前記場所が、動物の皮膚、または動物の周囲であり、あるいは
e)前記場所が、鉄道または鉄道を囲む領域である
、上記〔39〕または〔40〕に記載の方法。
〔41〕植物の成長を改善する方法であって、植物、植物に隣接する領域、植物の成長を支援するように適応させた土、植物の根、植物の葉、および/または植物を生産するように適応させた種子の少なくとも1つに農業材料組成物を適用するステップを含み、前記組成物が、
(i)少なくとも1種の農業材料化合物の粒子;ならびに
(ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系
を含み、前記ブロックコポリマーが前記農業材料化合物の粒子の疎水性表面に吸着されている、方法。
〔42〕前記農業材料化合物が、植物成長調節剤、ホルモンまたはバイオ刺激薬である、上記〔41〕に記載の方法。
〔43〕植物の収量を上げ、植物の成長速度を高め、および/または植物の大きさを増すのに有効である、上記〔41〕または〔42〕に記載の方法。
〔44〕組成物を調製する方法であって、少なくとも1種の化合物の粒子を、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーのある一定量と混合するステップを含む、方法。
〔45〕前記少なくとも1種の化合物が農業材料化合物である、上記〔44〕に記載の方法。
〔46〕前記農業材料化合物が農薬化合物である、上記〔45〕に記載の方法。
〔47〕前記農業材料化合物が、殺有害生物剤、植物成長調節剤、ホルモンまたはバイオ刺激薬である、上記〔45〕に記載の方法。
〔48〕前記少なくとも1種の化合物が非農業材料化合物である、上記〔44〕に記載の方法。
〔49〕殺有害生物組成物を調製する方法であって、少なくとも1種の殺有害生物剤化合物の粒子を、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーのある一定量と混合するステップを含む、方法。
〔50〕混合するステップが、前記少なくとも1種の化合物の粒子の分散液を調製するステップ、および、前記粒子の疎水性表面に前記高分子電解質層形成ブロックコポリマーを吸着させて前記粒子界面に高分子電解質層を形成するステップを含む、上記〔44〕から〔49〕のいずれか一項に記載の方法。
〔51〕前記分散液が水分散液であり、および/または前記分散液が少なくとも900g/Lの濃度を有する、上記〔50〕に記載の方法。
〔52〕前記高分子電解質層が形成された後、前記粒子の湿式混練のステップをさらに含む、上記〔44〕から〔50〕のいずれか一項に記載の方法。
〔53〕a)前記ブロックコポリマーの量が、前記ブロックコポリマーを含まない同じ組成物の湿式混練中の温度と比較して、前記組成物の湿式混練中の温度を下げるのに有効であり、および/または
b)前記ブロックコポリマーの量が、湿式混練中の前記ブロックコポリマーを含まない同じ組成物の粘度と比較して、前記組成物の湿式混練中の前記組成物の粘度を下げるのに有効である、
上記〔52〕に記載の方法。
〔54〕a)湿式混練中の温度が30℃未満であり、
b)湿式混練中の温度が40℃~50℃から20℃~25℃に下げられ、
c)湿式混練中の粘度が、1000~2000cPから200~400cPに下げられ、および/または
d)前記粒子の90%が、湿式混練前に50μm以上の粒径を有し、湿式混練後に1μm以下の粒径を有する、
上記〔52〕または〔53〕に記載の方法。
〔55〕前記高分子電解質層が形成された後、前記組成物を造粒するステップをさらに含む、上記〔44〕から〔54〕のいずれか一項に記載の方法。
〔56〕前記ブロックコポリマーの量が、前記ブロックコポリマーを含まない同じ組成物の造粒中の圧力と比較して、前記組成物の造粒中の圧力を下げるのに有効である、上記〔55に記載の方法。
〔57〕少なくとも1種の非農業化合物を含むコーティング組成物を調製する方法であって、フィルム形成ポリマーラテックスを、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系と接触させることを含む、方法。
〔58〕前記フィルム形成ポリマーラテックスを水と接触させることをさらに含む、上記〔57〕に記載の方法。
〔59〕着色剤系組成物を調製する方法であって、着色剤成分を、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系と接触させることを含み、結果として得られる着色剤系組成物が分散液である、方法。
〔60〕アルキド樹脂系ベースコーティングまたはラテックス系ベースコーティングを染色する方法であって、前記アルキド樹脂系ベースコーティングまたは前記ラテックス系ベースコーティングを、
i)着色剤成分;ならびに
ii)(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーを含む分散剤系を含む着色剤系組成物
と接触させることを含み、前記着色剤系組成物が分散液として調製される、方法。
〔61〕油セメントグラウト組成物の懸濁液中に固体粒子を維持するための、(A)固着部分および(B)少なくとも1つの安定化部分を含む高分子電解質層形成ブロックコポリマーの使用。
【0254】
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図1
図2
図3A
図3B
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