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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】移動式作業装置、アーチ橋の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 4/00 20060101AFI20220912BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20220912BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
E01D4/00
E01D1/00 C
E01D21/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019007870
(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公開番号】P2020117886
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597094503
【氏名又は名称】巴機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】塩塚 正吾
(72)【発明者】
【氏名】織田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】波田 匡司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-046133(JP,A)
【文献】特開平06-002430(JP,A)
【文献】特開昭50-035930(JP,A)
【文献】特開2017-040139(JP,A)
【文献】特開2009-235687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補剛桁と前記補剛桁の下方のアーチ部材を有するアーチ橋の施工に用いる移動式作業装置であって、
前記補剛桁上を橋軸方向に移動する移動台車と、
前記移動台車から吊り下げられ、前記アーチ部材の構築に用いられる作業装置と、
を有し、
前記作業装置は、コンクリート打設用の型枠を下から支持する型枠支持部を含み、
前記型枠支持部は、橋軸方向の途中に設けられた折曲部の前後の部分のそれぞれが吊材によって前記移動台車から吊られ、前記吊材の長さ調節により前記折曲部において折り曲げることで、前記折曲部の前後の部分が鉛直面内において成す角度が可変であり、
前記角度に応じて前記吊材の橋軸方向の間隔が可変であることを特徴とする移動式作業装置。
【請求項2】
前記型枠支持部の前記折曲部の前後の部分には、それぞれ、鉛直面内においてトラス形状を有するトラス部が設けられ、
各トラス部が、伸縮可能な連結部材により連結されることを特徴とする請求項記載の移動式作業装置。
【請求項3】
前記型枠は、
前記折曲部の前後の部分の上に配置される前部および後部と、
前記前部と前記後部の間に配置され、前記角度に応じた形状を有する中間部と、
を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動式作業装置。
【請求項4】
前記型枠支持部は、既設の前記アーチ部材への固定部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の移動式作業装置。
【請求項5】
前記作業装置は、
前記アーチ部材の構築時の作業足場を含み、
前記作業足場は水平方向の作業床を有し、前記移動台車から上下動可能に吊られることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の移動式作業装置。
【請求項6】
記作業足場と前記型枠支持部はそれぞれ独立して上下動可能に前記移動台車から吊られ、
前記作業足場は、
前記型枠支持部の下方に配置される前記作業床と、
前記作業床の上に設けられ、前記型枠支持部を囲むように配置される枠組足場と、
を有することを特徴とする請求項5記載の移動式作業装置。
【請求項7】
補剛桁と前記補剛桁の下方のアーチ部材を有するアーチ橋の施工方法であって、
前記補剛桁上を移動する移動台車から吊り下げられた作業装置を用いて、前記アーチ部材の構築を行い、
前記作業装置は、コンクリート打設用の型枠を下から支持する型枠支持部を含み、
前記型枠支持部は、橋軸方向の途中に設けられた折曲部の前後の部分のそれぞれが吊材によって前記移動台車から吊られ、前記吊材の長さ調整により前記折曲部において折り曲げることで、前記折曲部の前後の部分が鉛直面内において成す角度が可変であり、
前記角度に応じて前記吊材の橋軸方向の間隔が可変であることを特徴とするアーチ橋の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーチ橋の施工に用いる移動式作業装置およびこれを用いたアーチ橋の施工方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は逆ランガー式アーチ橋10の例である。逆ランガー式アーチ橋10は、隣り合う橋脚12の間に補剛桁13とアーチ部材14(アーチリブともいう)を設けて構成される。アーチ部材14は補剛桁13の下方に配置され、補剛桁13を支える鉛直材15がアーチ部材14上に取り付く。
【0003】
アーチ部材14は双曲線を直線近似した形状となっており、鉛直材15とアーチ部材14の交点近傍では、アーチ部材14が角折れすることが設計・施工上において通例である。また、アーチ部材14の角折れ部および隣り合う角折れ部の間の中間部は、斜め方向のケーブル16によって橋脚12側から支持される。これらのケーブル16の上端は、補剛桁13の橋脚12または鉛直材15上の部分に取付けられる。
【0004】
アーチ部材14は橋脚12から急傾斜で張出し、橋脚12間の中央部にかけて傾斜が緩やかになる。アーチ部材14の構築には作業足場と型枠支持部を備えた作業車を用い、型枠支持部上の型枠にコンクリートを打設する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平7-26370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では作業車をアーチ部材14上で移動させるので、アーチ部材14の傾斜やその変化に対処するために、作業車の機構や施工手順が複雑になる。例えば特許文献1では、アーチ部材14の傾斜により作業車の前後に取付けた作業足場の高さが異なるので、これらの作業足場を繋ぐ階段足場が必要であり、またアーチ部材14の傾斜の変化に応じて階段足場の位置調整等を行う必要が生じる。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、アーチ橋の施工を容易に行うことのできる移動式作業装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、補剛桁と前記補剛桁の下方のアーチ部材を有するアーチ橋の施工に用いる移動式作業装置であって、前記補剛桁上を橋軸方向に移動する移動台車と、前記移動台車から吊り下げられ、前記アーチ部材の構築に用いられる作業装置と、を有し、前記作業装置は、コンクリート打設用の型枠を下から支持する型枠支持部を含み、前記型枠支持部は、橋軸方向の途中に設けられた折曲部の前後の部分のそれぞれが吊材によって前記移動台車から吊られ、前記吊材の長さ調節により前記折曲部において折り曲げることで、前記折曲部の前後の部分が鉛直面内において成す角度が可変であり、前記角度に応じて前記吊材の橋軸方向の間隔が可変であることを特徴とする移動式作業装置である。
【0009】
本発明では、補剛桁上を移動する移動台車からアーチ部材の施工に必要な作業装置を吊り下げてアーチ部材の構築を行う。補剛桁はアーチ部材に比較して傾斜が大幅に小さく、また傾斜の変化もほぼ無いので、移動式作業装置の機構や施工手順が簡単で済み、アーチ橋の施工を容易に行うことができる。
【0010】
業装置は例えばアーチ部材をコンクリートによって構築する際の型枠を支持する型枠支持部を含み、型枠支持部を上記のように折れ曲がり可能とすることで、アーチ部材の直線部と角折れ部の双方に対応でき、アーチ部材の構築を容易に行うことができる。
【0011】
前記型枠支持部の前記折曲部の前後の部分には、それぞれ、鉛直面内においてトラス形状を有するトラス部が設けられ、各トラス部が、伸縮可能な連結部材により連結されることが望ましい。
本発明では上記のトラス部により型枠支持部を補強することができ、且つトラス部同士を連結する連結部材が型枠支持部の折れ曲がりに応じて伸縮することで、連結部材を用いたトラス部同士の連結固定により型枠支持部を様々な折れ曲がり形状で保持できる。
【0012】
また本発明では、前記型枠支持部の前記折曲部の前後の部分のそれぞれが吊材によって前記移動台車から吊られ、前記吊材の橋軸方向の間隔が可変であることより、型枠支持部の折れ曲がりに応じて吊材の間隔を調整できる。
また前記型枠は、前記折曲部の前後の部分の上に配置される前部および後部と、前記前部と前記後部の間に配置され、前記角度に応じた形状を有する中間部と、を有することが望ましい。
前記型枠支持部は、既設の前記アーチ部材への固定部を有することも望ましい。
【0013】
前記作業装置は、前記アーチ部材の構築時の作業足場を含み、前記作業足場は水平方向の作業床を有し、前記移動台車から上下動可能に吊られることが望ましい。
前記したように、移動台車は水平に近い補剛桁上を移動するので、アーチ部材が傾斜する場合も、作業足場は特段の機構無しに水平を維持することが可能である。また作業足場は上下動可能であり、アーチ部材の構築の進捗に応じて上下させることができる。
【0014】
記作業足場と前記型枠支持部はそれぞれ独立して上下動可能に前記移動台車から吊られ、前記作業足場は、前記型枠支持部の下方に配置される前記作業床と、前記作業床の上に設けられ、前記型枠支持部を囲むように配置される枠組足場と、を有することが望ましい。
本発明では移動台車から型枠支持部と作業足場を吊り支持して上記のような位置関係で配置することで、アーチ部材の構築時の作業性や安全性を高めることができる。また型枠支持部と作業足場は独立に吊り支持されることで、アーチ部材の構築の進捗に応じてこれらを別々に上下させることができ、アーチ部材の構築時の作業性が向上する。
【0015】
第2の発明は、補剛桁と前記補剛桁の下方のアーチ部材を有するアーチ橋の施工方法であって、前記補剛桁上を移動する移動台車から吊り下げられた作業装置を用いて、前記アーチ部材の構築を行い、前記作業装置は、コンクリート打設用の型枠を下から支持する型枠支持部を含み、前記型枠支持部は、橋軸方向の途中に設けられた折曲部の前後の部分のそれぞれが吊材によって前記移動台車から吊られ、前記吊材の長さ調整により前記折曲部において折り曲げることで、前記折曲部の前後の部分が鉛直面内において成す角度が可変であり、前記角度に応じて前記吊材の橋軸方向の間隔が可変であることを特徴とするアーチ橋の施工方法である。
第2の発明は、第1の発明の移動式作業装置を用いたアーチ橋の施工方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、アーチ橋の施工を容易に行うことのできる移動式作業装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】アーチリブ用ワーゲン1を示す図。
図2】移動台車2と作業足場3を示す図。
図3】移動台車2と作業足場3を示す図。
図4】作業足場3の平面を示す図。
図5】型枠支持部4と型枠5を示す図。
図6】逆ランガー式アーチ橋10の施工方法を示す図。
図7】逆ランガー式アーチ橋10の施工方法を示す図。
図8】逆ランガー式アーチ橋10を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(1.アーチリブ用ワーゲン1)
図1は本発明の実施形態に係るアーチリブ用ワーゲン1の概略を示す図であり、アーチリブ用ワーゲン1を側方から見たものである。アーチリブ用ワーゲン1は、図8で例示した逆ランガー式アーチ橋10の施工に用いられる移動式作業装置である。前記したように、逆ランガー式アーチ橋10は補剛桁13の下方にアーチ部材14を設けて構成される。
【0020】
図1に示すように、アーチリブ用ワーゲン1は、移動台車2、作業足場3、型枠支持部4等を有する。
【0021】
移動台車2は、作業足場3と型枠支持部4を吊材6、7によってそれぞれ独立して上下動可能に吊り支持しつつ、補剛桁13上を橋軸方向に移動するものである。作業足場3と型枠支持部4はアーチ部材14の構築に用いられる作業装置である。また橋軸方向は図1の左右方向に対応する。
【0022】
図2、3は移動台車2と作業足場3を示す図であり、図2はこれらを側方から見た図、図3はこれらを前方から見た図である。ここで、「前」とは、橋軸方向における橋脚12間の中央部側をいうものとする。また「後」というときは、橋軸方向における橋脚12側を指すものとする。
【0023】
移動台車2は、フレーム21、繋ぎ材22a、22b、タラップ23a、23b、ステージ24a、24b、走行部25、チェーンブロック26a、26b、足場27a、27b、ジャッキ28等を有する。
【0024】
フレーム21は主にH形鋼等の鋼材により形成される。フレーム21は、橋軸直交方向に延びる横架材211の両端に鉛直方向の脚部212を設けて略門形に形成される。フレーム21は橋軸方向の前後に一対配置される。橋軸方向は図2の左右方向および図3の紙面法線方向に対応する。橋軸直交方向はこれと平面において直交する方向であり、図2の紙面法線方向および図3の左右方向に対応する。
【0025】
脚部212は横架材211の両端から下方に延び、補剛桁13を両側から挟むように配置される。脚部212の下端は補剛桁13の上面より下方に達し、当該下端には内側に向かって延びる折返部213が設けられる。なお、内側とは補剛桁13の橋軸直交方向の中央部側をいうものとする。
【0026】
横架材211の各脚部212の内側の、補剛桁13の橋軸直交方向の両端部に対応する位置には別の脚部215が設けられる。脚部215は横架材211から下方に延び、その下端が補剛桁13の上面近傍に達する。
【0027】
繋ぎ材22aは前後のフレーム21の横架材211同士を繋ぐように水平方向に設けられ、繋ぎ材22bは前後のフレーム21の折返部213同士を繋ぐように水平方向に設けられる。
【0028】
前後のフレーム21の間にはステージ24a、24bが設けられる。ステージ24a、24bは水平方向の作業床であり、ステージ24aは前後のフレーム21の脚部215の下端とその隣の脚部212に取付けられ、ステージ24bは前後のフレーム21の折返部213に取付けられる。
【0029】
タラップ23aは移動台車2の上端とステージ24aとの間を作業員が上下移動するための梯子であり、タラップ23bはステージ24a、24bの間を作業員が上下移動するための梯子である。
【0030】
走行部25は、補剛桁13上のレール17を走行するものであり、前後のフレーム21の脚部215の下端に設けられる。走行部25は、例えば橋軸方向に沿って配置された鋼材を前後のフレーム21の脚部215の下端に取付け、当該鋼材の前後にレール17上を摺動する摺動材を設けたものであり、ジャッキ(不図示)による押し引きで移動台車2をレール17上で移動させる。レール17の両端には、走行部25の移動範囲を規制するストッパ171が設けられる。
【0031】
なお本実施形態では補剛桁13の長手方向が水平方向に対して若干傾斜しており、上記の鋼材はこの傾斜に合わせて傾斜した状態で前後のフレーム21の脚部215の下端に取付けている。あるいは鋼材の傾斜を調整するための機構を設け、鋼材の傾斜を補剛桁13の傾斜に合わせて調整可能としてもよい。
【0032】
チェーンブロック26aは、前後のフレーム21の各脚部212の下端に設けられ、チェーン等の吊材6により作業足場3を吊り下げる。各チェーンブロック26aの操作により作業足場3を上下させることが可能であり、チェーンブロック26aの近傍には作業用の足場27aが設けられる。
【0033】
また本実施形態では脚部212の下端からさらに吊棒8を垂下させ、この吊棒8を作業足場3に取付ける。吊棒8は吊材6のバックアップとして用いられ、作業足場3の水平維持機能も有する。
【0034】
チェーンブロック26bは繋ぎ材22bに沿って前後一対に設けられ、チェーン等の吊材7により型枠支持部4を吊り下げる。各チェーンブロック26bの操作により型枠支持部4を上下させることができ、また後述するように型枠支持部4を折り曲げた状態とすることが可能である。
【0035】
一方のチェーンブロック26bは、橋軸方向に伸縮可能なジャッキ28の端部に取り付けられ、前後に移動可能である。ジャッキ28の反対側の端部は繋ぎ材22bに固定される。図2の例では、上記一方のチェーンブロック26bを後方のチェーンブロック26bとし、当該チェーンブロック26bを前後に移動させることで前後の吊材7の間隔が可変である。また当該チェーンブロック26bの近傍には作業用の足場27bが設けられる。
【0036】
作業足場3は、アーチ部材14の構築に係る作業を行うための足場であり、型枠支持部4の周囲に配置される。図4は作業足場3の平面を示す図である。
【0037】
作業足場3は水平作業床31の平面の外周部に枠組足場32を設けたものである。水平作業床31は型枠支持部4の下方に配置される水平方向の作業床であり、平面矩形状の板材である。水平作業床31は常に水平が保たれ、作業者の作業性および安全性を確保する。水平作業床31の平面の外縁には手摺35も設けられる。
【0038】
枠組足場32は鋼材を立体格子状に組み合わせたものであり、鉛直面の格子にはX字状の斜材も配置される。枠組足場32は、平面においては後側(橋脚12側)に開放された凹字状となっており、型枠支持部4およびその上の型枠5を囲むように配置される。また、本実施形態では枠組足場32の間を架け渡すように仮設足場(フライングブリッジ)36も設けられる。仮設足場36は枠組足場32に対して着脱可能であり、アーチ部材14の構築状況に応じて適切な箇所に架け替えることができる。
【0039】
水平作業床31の下面には橋軸直交方向の桁材33が前後一対に設けられる。各桁材33の両端部は水平作業床31からはみ出しており、この両端部に前記した吊材6と吊棒8の下端部が接続される。
【0040】
図5(a)、(b)は、型枠支持部4と型枠5を示す図である。型枠支持部4は、コンクリート打設用の型枠5を下から支持する支保材41の下面にトラス部45を設けて補強したものである。
【0041】
型枠支持部4は、橋軸方向の途中のヒンジ43を境として前後の部分に分けることができる。ヒンジ43は橋軸直交方向に設けられ、型枠支持部4の前後の支保材41を鉛直面内で相対回転可能に連結する。橋軸方向は図5(a)、(b)の左右方向に、橋軸直交方向は図5(a)、(b)の紙面法線方向にそれぞれ対応する。
【0042】
トラス部45は前後の支保材41の下面に設けられ、鉛直面内においてトラス形状を有する。各支保材41の下面のトラス部45は、伸縮可能なスピンドル46(連結部材)により連結される。
【0043】
図中符号47は吊材7を取付けるための取付部であり、型枠支持部4の前後の支保材41のそれぞれに設けられる。本実施形態では、取付部47として橋軸直交方向の桁材が用いられる。桁材の両端部は型枠5からはみ出すように設けられており、この両端部に設けられた橋軸方向の長孔471内の吊点に吊材7が取付けられる(図4参照)。
【0044】
図中符号48は型枠支持部4を既設のアーチ部材14に仮固定するための固定部であり、固定位置481を前後に変更可能である。また符号42は支保材41上に設置される橋軸直交方向のH形鋼である。本実施形態では、複数のH形鋼42が橋軸方向に間隔を空けて平行に配置され、これらのH形鋼42の上に型枠5が配置される。
【0045】
前記したように、型枠支持部4の前後の支保材41はヒンジ43を中心として相対回転可能である。そのため、吊材7の長さ調節により型枠支持部4を図5(b)に示すようにヒンジ43(折曲部)において折り曲げることができ、ヒンジ43の前後の部分が鉛直面内において成す角度が可変となる。この角度の調整に応じて吊材7による吊り位置がdxに示すように変わるので、前記したチェーンブロック26bの位置を上記角度に応じて移動させ、吊材7の間隔を上記吊り位置の変化に応じて調整する。
【0046】
型枠5は、前後の支保材41の上にH形鋼42を介して配置される。型枠5は、前方の支保材41の上に配置される前部51と、後方の支保材41の上に配置される後部52と、これらの間に配置される中間部53に分けられる。このうち中間部53は、形状の異なる複数のピースを事前準備しておき、図5(a)、(b)に示すように型枠支持部4の角折れの角度に応じたものを用い、前部51と後部52を繋ぐように配置する。
【0047】
(2.逆ランガー式アーチ橋10の施工方法)
次に、アーチリブ用ワーゲン1を用いた逆ランガー式アーチ橋10の施工方法について図6、7等を参照して説明する。アーチリブ用ワーゲン1は逆ランガー式アーチ橋10のアーチ部材14の構築に用いられ、補剛桁13の構築はアーチリブ用ワーゲン1とは独立に移動する別途の移動式型枠装置(不図示)を用いて行われる。
【0048】
本実施形態では、まず図6(a)に示すように橋脚12および橋脚12上の補剛桁13を構築するとともに、橋脚12近傍のアーチ部材14を構築する。
【0049】
次に、補剛桁13の前端に前記の移動式型枠装置(不図示)を配置し、当該前端に続けて補剛桁13を構築した後、図6(b)に示すように補剛桁13上にレール17を配置してその上を移動する移動台車2を組み立て、作業足場3と型枠支持部4を移動台車2から吊り下げて既設のアーチ部材14の前端近傍に配置する。
【0050】
そして、型枠支持部4に型枠5を設置し、当該型枠5内にコンクリートを打設することで、既設のアーチ部材14の前端に続けてアーチ部材14を構築する。
【0051】
アーチ部材14の構築の進捗に応じて、レール17の盛替え、移動台車2の移動を行い、図6(c)に示すようにアーチ部材14の構築を上記と同様に行ってアーチ部材14を橋脚12間の中央部に向けて延ばして行く。
【0052】
アーチ部材14の角折れ部に当たる箇所では、図5(b)に示したように型枠支持部4の前部を角折れさせ、コンクリートを型枠5内に打設する。そして、図6(d)に示すように、コンクリートによって構築したアーチ部材14と補剛桁13とをケーブル16によって前記したように接続し、アーチ部材14の角折れ部には前記の鉛直材15を設ける。
【0053】
以下、移動式型枠(不図示)を移動させて既設の補剛桁13の前端に続けて補剛桁13を構築する工程と、移動台車2を移動させて既設のアーチ部材14の前端に続けてアーチ部材14を構築する工程を繰り返し、図7(a)に示すように橋脚12間の中央部へとアーチ部材14の構築を進めてゆく。アーチ部材14の高さは橋脚12間の中央部に行くにつれ高くなるので、作業足場3の位置もこれに合わせて高くする。また、枠組足場32は、移動台車2等に干渉しないよう、アーチ部材14の構築の進捗に応じて上部を解体し、その高さを減ずる。
【0054】
橋脚12間の中央部付近までアーチ部材14等を構築した後、アーチリブ用ワーゲン1を解体して図7(b)に示すように撤去する。その後、図7(c)に示すように橋脚12間の中央部にある残りの補剛桁13とアーチ部材14を構築する。これらは前記した移動式型枠(不図示)を用いて構築できる。
【0055】
こうして隣接する橋脚12から補剛桁13とアーチ部材14を延ばして行き、補剛桁13同士を橋脚12間の中央部で接続することで図8に示す逆ランガー式アーチ橋10が構築される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、補剛桁13上を移動する移動台車2からアーチ部材14の施工に必要な作業装置として作業足場3と型枠支持部4を吊り下げてアーチ部材14の構築を行う。補剛桁13はアーチ部材14に比較して傾斜が大幅に小さく、また傾斜の変化もほぼ無いので、アーチリブ用ワーゲン1の機構や施工手順が簡単で済み、逆ランガー式アーチ橋10の施工を容易に行うことができる。
【0057】
また、型枠支持部4を前記したように折れ曲がり可能とすることで、アーチ部材14の直線部と角折れ部の双方に対応でき、アーチ部材14の構築を容易に行うことができる。従来、角折れ部の近傍においてアーチ部材14を構築する際は、アーチ部材14の角度変化に合わせて型枠上に重ね枠を設けるか型枠を上下調整して組替える必要があった。この作業はアーチ部材14の角折れ部の数だけ行う必要があり、高所での作業となるため作業性が悪く、安全にも支障をきたしていたが、本実施形態では型枠支持部4を折れ曲がり可能とすることでそのような作業を軽減できる。
【0058】
また本実施形態では、前記のトラス部45により型枠支持部4を補強することができ、且つトラス部45同士を連結するスピンドル46が型枠支持部4の折れ曲がりに応じて伸縮することで、スピンドル46を用いたトラス部45同士の連結固定により型枠支持部4を様々な折れ曲がり形状で保持できる。
【0059】
また、移動台車2では吊材7の橋軸方向の間隔が可変であるので、型枠支持部4の折れ曲がりに応じて吊材7の間隔を調整できる。また前後の吊材7の長さ調節により型枠支持部4を水平にして、ケレン作業や段取り筋配置などを安全に行うこともできる。
【0060】
また、移動台車2は水平に近い補剛桁13上を移動するので、アーチ部材14が傾斜する場合も、作業足場3は特段の機構無しに水平を維持することが可能である。また作業足場3は吊材6によって上下動可能に吊られており、アーチ部材14の構築の進捗に応じて上下させることができる。
【0061】
本実施形態では、作業足場3と型枠支持部4を移動台車2から吊り支持して図2、3等のような位置関係で配置することで、アーチ部材14の構築時の作業性や安全性を高めることができる。また作業足場3と型枠支持部4は独立に吊り支持されることで、アーチ部材14の構築の進捗に応じてこれらを別々に上下させることができ、アーチ部材14の構築時の作業性が向上する。
【0062】
しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば型枠支持部4は橋軸方向の途中で折れ曲がり可能であればよく、前記した構成に限らない。例えば前後のトラス部45の間を連結する伸縮可能な連結部材として、スピンドル46の代わりにジャッキやターンバックルによる機構を用いてもよい。またアーチ部材14のコンクリートの打設時に、PC鋼棒等の支持材を用いて型枠支持部4を橋脚12や既設の補剛桁13、鉛直材15等に支持させることも可能である。
【0063】
また、本実施形態で説明した折れ曲がり可能な型枠支持部4は、逆ランガー式アーチ橋10のアーチ部材14以外の施工にも用いることができ、移動台車2に吊り支持されてアーチリブ用ワーゲン1の一部として用いられるものに限らない。
【0064】
その他、移動台車2の構成も補剛桁13上を移動できるものであればよく、特に限定されない。移動台車2の移動方法や移動機構も前記したものに限らず、例えば車輪によりレール17に沿って移動するような形式とすることも可能であり、ウインチにより移動台車2を引っ張って移動させることも可能である。加えて、移動台車2の逸走を防止するためのウインチ等による控え材をさらに設けてもよい。
【0065】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0066】
1:アーチリブ用ワーゲン
2:移動台車
3:作業足場
4:型枠支持部
5:型枠
6、7:吊材
8:吊棒
10:逆ランガー式アーチ橋
12:橋脚
13:補剛桁
14:アーチ部材
15:鉛直材
16:ケーブル
17:レール
21:フレーム
22a、22b:繋ぎ材
23a、23b:タラップ
24a、24b:ステージ
25:走行部
26a、26b:チェーンブロック
27a、27b:足場
28:ジャッキ
31:水平作業床
32:枠組足場
33:桁材
35:手摺
41:支保材
42:H形鋼
43:ヒンジ
45:トラス部
46:スピンドル
47:取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8