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特許7139259遮水シートの検査装置及び遮水シートの検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】遮水シートの検査装置及び遮水シートの検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20220912BHJP
【FI】
G01N27/00 L
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019009466
(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公開番号】P2020118540
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317015559
【氏名又は名称】株式会社一路
(73)【特許権者】
【識別番号】591101113
【氏名又は名称】岩野物産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518199296
【氏名又は名称】株式会社東海技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】日向 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】中井 貴暁
(72)【発明者】
【氏名】日浦 一朗
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 武一
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 純
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-158990(JP,A)
【文献】特開平09-210836(JP,A)
【文献】特開2003-112139(JP,A)
【文献】特開2004-239785(JP,A)
【文献】特開平07-171531(JP,A)
【文献】特開平06-066757(JP,A)
【文献】特開平11-337333(JP,A)
【文献】特開平10-263500(JP,A)
【文献】特開2018-043205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を有し、被覆面に展張された遮水シートの上を走行する走行台車と、
前記走行台車に設けられ、前記遮水シートの表面に接する第一電極と、
前記走行台車に設けられ、前記第一電極から一定距離の範囲内に配置されて前記遮水シートに接する第二電極と、
前記走行台車に設けられ、前記第一電極と前記第二電極との間に電圧を印加する電源部と、
前記走行台車に設けられ、前記遮水シートの孔の空いた前記表面を前記第一電極が通過するときの電流の変化により前記孔を検知する検知器と、
を具備することを特徴とする遮水シートの検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の遮水シートの検査装置であって、
前記走行台車または前記第一電極のいずれか一方に設けられ、位置情報を取得する位置情報取得部を具備することを特徴とする遮水シートの検査装置。
【請求項3】
請求項2記載の遮水シートの検査装置であって、
前記第一電極に、前記位置情報取得部のアンテナが設けられていることを特徴とする遮水シートの検査装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の遮水シートの検査装置であって、
前記走行台車に設けられ、施工対象域となる地図情報、前記位置情報及び前記検知器による検知情報を記憶する記憶部と、
前記走行台車に設けられ、前記検知器が前記孔を検知したときに前記検知情報及び前記位置情報を前記記憶部に記憶させる制御部と、
を具備することを特徴とする遮水シートの検査装置。
【請求項5】
請求項4記載の遮水シートの検査装置であって、
前記走行台車が、前記制御部に接続される送受信装置を有し、
前記送受信装置に無線接続されて前記走行装置を作動させることにより前記走行台車の走行を制御する操縦装置を備えることを特徴とする遮水シートの検査装置。
【請求項6】
請求項5記載の遮水シートの検査装置であって、
前記送受信装置を介して前記制御部と無線接続され、表示装置を有する携帯型情報処理端末を備え、
前記携帯型情報処理端末が、前記検知情報及び前記位置情報を前記地図情報に重畳して前記表示装置に表示可能とすることを特徴とする遮水シートの検査装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の遮水シートの検査装置であって、
前記走行台車が、進行方向とほぼ直交方向で前記走行台車に対して前記第一電極を接近離反方向に移動させる第一電極進退駆動部を備えていることを特徴とする遮水シートの検査装置。
【請求項8】
請求項7記載の遮水シートの検査装置であって、
前記第一電極進退駆動部が、ロープを繰り出しまたは巻き上げる巻取り装置を有し、
前記走行台車が、平らな面から下り傾斜する法面に沿って前記平らな面を走行する一方、所定の位置で前記走行を停止した際、
前記巻取り装置の前記ロープの繰り出しまたは巻き上げにより前記ロープの端末に支持した前記第一電極及び第二電極を自重により前記遮水シートの表面に摺接させながら前記法面を下降上昇させることを特徴とする遮水シートの検査装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の遮水シートの検査装置であって、
前記第一電極がブラシ電極であることを特徴とする遮水シートの検査装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の遮水シートの検査装置であって、
前記第二電極がパッド電極であることを特徴とする遮水シートの検査装置。
【請求項11】
走行装置を有した走行台車を、被覆面に展張された遮水シートの上を走行させ、
前記走行台車に設けられた第一電極を前記遮水シートの表面に摺接するとともに、前記走行台車に設けられた第二電極を前記第一電極から一定距離の範囲内で前記遮水シートに接触させ、
前記走行台車に設けられた電源部により前記第一電極と前記第二電極との間に電圧を印加し、
前記遮水シートの孔の空いた前記表面を前記第一電極が通過するときの電流の変化により前記孔を、前記走行台車に設けられた検知器によって検出することを特徴とする遮水シートの検査方法。
【請求項12】
請求項11記載の遮水シートの検査方法であって、
前記走行台車に設けられた位置情報取得部により、前記走行台車及び前記第一電極の位置情報を取得することを特徴とする遮水シートの検査方法。
【請求項13】
請求項12記載の遮水シートの検査方法であって、
前記検知器が前記孔を検知したときにその検知情報及び前記位置情報を、前記走行台車に設けられた制御部により記憶部に記憶させることを特徴とする遮水シートの検査方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の遮水シートの検査方法であって、
検査開始時に、位置情報取得部により前記走行台車の位置情報を取得するとともに、スキャン計測装置により取得した周囲の地形情報を周囲地形情報として記録し、
前記制御部が、前記位置情報及び前記周囲地形情報に基づき、前記走行台車の走行を判断することを特徴とする遮水シートの検査方法。
【請求項15】
請求項14に記載の遮水シートの検査方法であって、
事前に施工対象域となる施工区域図情報を記憶させ、
前記制御部が、前記位置情報、前記周囲地形情報及び前記施工区域図情報に基づき、前記走行台車の走行を判断することを特徴とする遮水シートの検査方法。
【請求項16】
請求項15に記載の遮水シートの検査方法であって、
前記施工区域図情報に、前記走行台車が通過する複数の座標ポイントと、その座標ポイントの通過順序が与えられていることを特徴とする遮水シートの検査方法。
【請求項17】
請求項11~16のいずれか1つに記載の遮水シートの検査方法であって、
前記検知器により前記孔が検知された際に、その位置にて第一電極を再度往復移動させて、前記電流の変化による再検査を行い、再び前記電流の変化が検知されたときに、前記孔の検知を確定する手順を含むことを特徴とする遮水シートの検査方法。
【請求項18】
請求項11~17のいずれか1つに記載の遮水シートの検査方法であって、
前記走行台車が、進行方向とほぼ直交方向で前記走行台車に対して前記第一電極を接近離反方向に移動させる第一電極進退駆動部を備え、
前記第一電極進退駆動部が、ロープを繰り出しまたは巻き上げる巻取り装置を有し、
前記走行台車が、平らな面から下り傾斜する法面に沿って前記平らな面を走行する一方、所定の位置で前記走行を停止した際、
前記巻取り装置の前記ロープの繰り出しまたは巻き上げにより前記ロープの端末に支持した前記第一電極を自重により前記遮水シートの表面に摺接させながら前記法面を下降上昇させることを特徴とする遮水シートの検査方法。
【請求項19】
請求項18記載の遮水シートの検査方法であって、
前記第一電極が、前記下降上昇の方向に直交する幅方向が長尺に形成され、
前記第一電極が前記下降上昇して戻ったときに、前記走行台車を前記第一電極の幅長だけ走行させて次の幅長分の前記遮水シートを検査することを特徴とする遮水シートの検査方法。
【請求項20】
請求項11~19のいずれか1つに記載の遮水シートの検査方法であって、
前記第一電極がブラシ電極であることを特徴とする遮水シートの検査方法。
【請求項21】
請求項11~20のいずれか1つに記載の遮水シートの検査方法であって、
前記第二電極がパッド電極であることを特徴とする遮水シートの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水シートの検査装置及び遮水シートの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、廃棄物処分場や、ため池、景観池、調整池、ルーフィングなどの遮水構造として使用される遮水シートに対して、ピンホール等を検出するために行われる検査が知られている。
【0003】
特許文献1には、電極プローブを交換可能とし、片手で持つことのできる小型のピンホール探知器が開示される。特許文献2には、遮水シートの溶着方向に導電線を埋設し、導電線にスパーク試験機の一方の極を接続するとともに、スパーク試験機のブラシ状電極を接合部の表面に沿って移動させる接合部試験方法が開示されている。特許文献3には、遮水シートの下部に導電性シートを別体にして敷設し、通電手段を用いて、シート同士がお互いに通電可能状態とした遮水シートの敷設構造が開示されている。特許文献4には、地盤上に敷設した保護マットに水分を散布し、その上に遮水シートを敷設し、高電圧発生装置の平型ブラシを遮水シートの上面に沿って走査させることで、遮水シートの表面に電圧を印加し、放電の有無を検知することでピンホールを検知するピンホール検知方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-2218号公報
【文献】特許第4336504号公報
【文献】特開平8-229530号公報
【文献】特開平10-288563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の遮水シートの検査方法は、作業者がシート面上を歩行し、ブラシ電極を当てる作業が必要となる。このため、検査対象域が広大な処分場等である場合、作業者による作業では、多大な労力を要し、且つ時間がかかり、また、法面などでは足元が不安定となり、滑落など事故の生じる危険があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、遮水シートの穿孔検知作業において、従来に比べ作業労力を軽減し、安全性を向上させながら、作業時間を短縮できる遮水シートの検査装置及び遮水シートの検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の遮水シートの検査装置11は、走行装置35を有し、被覆面37に展張された遮水シート15の上を走行する走行台車19と、
前記走行台車19に設けられ、前記遮水シート15の表面に接する第一電極21と、
前記走行台車19に設けられ、前記第一電極21から一定距離の範囲内に配置されて前記遮水シート15に接する第二電極23と、
前記走行台車19に設けられ、前記第一電極21と前記第二電極23との間に電圧を印加する電源部25と、
前記走行台車19に設けられ、前記遮水シート15の孔の空いた前記表面を前記第一電極21が通過するときの電流の変化により前記孔を検知する検知器31と、
を具備することを特徴とする。
【0008】
この遮水シートの検査装置11では、走行装置35が作動することにより、走行台車19が遮水シート15の上を走行する。走行台車19は、任意の位置で第一電極21を遮水シート15の表面に接触させながら走行する。走行台車19に設けられた検知器31は、遮水シート15に孔が空いていると、遮水シート15の表面を通過した際に、孔を介して遮水シート15の下層へ流れる電流の変化を検知する。遮水シートの検査装置11では、走行台車19の走行に伴ってこの検知動作が繰り返される。つまり、遮水シートの検査装置11は、検査を自動で行うことができる。
このように、遮水シートの検査装置11では、走行台車19が第一電極21及び第二電極23を搭載して、これらを遮水シート15の表面に接触させながら走行するので、従来、作業者が第一電極21を手に持って、広大な面積を検査するのに比べ、労力を大幅に軽減することができる。
また、法面13に対して第一電極21及び第二電極23を接触可能にすることにより、足場の確保しにくい斜面で、作業者が重量物の第一電極21を両手で持って走査する危険な作業も回避可能となる。
さらに、作業者が歩行しながら第一電極21を走査する検査に比べ、正確に且つ一定速度で検査を連続して行えるので、作業時間を短縮することができ、さらには広大な面積に対する検査箇所の欠落(検査漏れ)なども防止できる。
【0009】
本発明の請求項2記載の遮水シートの検査装置11は、請求項1記載の遮水シートの検査装置11であって、
前記走行台車19または前記第一電極21のいずれか一方に設けられ、位置情報を取得する位置情報取得部27を具備することを特徴とする。
【0010】
この遮水シートの検査装置11では、遮水シート15の上を走行し、第一電極21の接触位置は、走行台車19または第一電極21に設けられる位置情報取得部27によりリアルタイムに取得される。遮水シートの検査装置11では、走行台車19の走行に伴ってこの検知動作が繰り返される。つまり、遮水シートの検査装置11は、位置情報の取得と検査を自動で行うことができる。
【0011】
本発明の請求項3記載の遮水シートの検査装置11は、請求項2記載の遮水シートの検査装置11であって、
前記第一電極21に、前記位置情報取得部27のアンテナ47が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この遮水シートの検査装置11では、第一電極21の現在位置、すなわち、孔の検知位置を取得可能としている。
【0013】
本発明の請求項4記載の遮水シートの検査装置11は、請求項2または3記載の遮水シートの検査装置11であって、
前記走行台車19に設けられ、施工対象域となる地図情報、前記位置情報及び前記検知器31による検知情報を記憶する記憶部29と、
前記走行台車19に設けられ、前記検知器31が前記孔を検知したときに前記検知情報及び前記位置情報を前記記憶部29に記憶させる制御部33と、
を具備することを特徴とする。
【0014】
この遮水シートの検査装置11では、孔を検知したことの検知信号が制御部33へと送られる。制御部33は、検知信号を受けると、位置情報取得部27により、第一電極21の現在位置を記憶部29に記憶する。
遮水シートの検査装置11では、走行台車19の走行に伴ってこの検知動作と、記憶とが繰り返される。つまり、遮水シートの検査装置11は、位置情報の取得、検査、記録を自動で行うことができる。
【0015】
本発明の請求項5記載の遮水シートの検査装置11は、請求項4記載の遮水シートの検査装置11であって、
前記走行台車19が、前記制御部33に接続される送受信装置83を有し、
前記送受信装置83に無線接続されて前記走行装置35を作動させることにより前記走行台車19の走行を制御する操縦装置81を備えることを特徴とする。
【0016】
この遮水シートの検査装置11では、走行台車19に送受信装置83が搭載される。送受信装置83は、制御部33を介して、或いは直接的に走行装置35を作動可能とする。一方、遮水シートの検査装置11は、走行台車19とは別体の操縦装置81を備える。操縦装置81は、無線で送受信装置83と交信することにより、走行装置35を作動させる。つまり、走行台車19は、台車本体に取り付けられている操作パネル85が操作される場合と同様に、操縦装置81を用いて遠隔操作により走行の制御が可能となる。走行の制御としては、例えば、発進停止、後退、右旋回、左旋回、第一電極進退駆動部45の駆動等が挙げられる。
【0017】
本発明の請求項6記載の遮水シートの検査装置11は、請求項5記載の遮水シートの検査装置11であって、
前記送受信装置83を介して前記制御部33と無線接続され、表示装置89を有する携帯型情報処理端末87を備え、
前記携帯型情報処理端末87が、前記検知情報及び前記位置情報を前記地図情報に重畳して前記表示装置89に表示可能とすることを特徴とする。
【0018】
この遮水シートの検査装置11では、表示装置89を備えた携帯型情報処理端末87が、走行台車19の送受信装置83に無線接続される。携帯型情報処理端末87は、送受信装置83を介して制御部33に接続される。制御部33に接続された携帯型情報処理端末87は、例えば表示装置89の一部分に表示される操作ボタン等の操作により、制御部33に対して検知情報及び位置情報を記憶部29から読み出させる。携帯型情報処理端末87は、読み出した検知情報及び位置情報を無線により取得し、これら検知情報及び前記位置情報を地図情報に重畳して表示装置89に表示する。
【0019】
本発明の請求項7記載の遮水シートの検査装置11は、請求項1~6のいずれか1つに記載の遮水シートの検査装置11であって、
前記走行台車19が、進行方向とほぼ直交方向で前記走行台車19に対して前記第一電極21を接近離反方向に移動させる第一電極進退駆動部45を備えていることを特徴とする。
【0020】
この遮水シートの検査装置11では、走行台車19が、第一電極進退駆動部45を備える。第一電極進退駆動部45は、第一電極21を、走行台車19の進行方向とほぼ直交方向で走行台車19に対して接近離反方向に移動させる。これにより、遮水シートの検査装置11は、走行を停止し、その位置から第一電極21を進行方向と直交方向に接近離反させて検査を行うことできる。つまり、遮水シートの検査装置11は、走行台車19の走行と第一電極21の接近離反動作とにより、遮水シート15の表面をXY方向に走査して効率的な検査を行うことでできる。
【0021】
本発明の請求項8記載の遮水シートの検査装置11は、請求項7記載の遮水シートの検査装置11であって、
前記第一電極進退駆動部45が、ロープ49を繰り出しまたは巻き上げる巻取り装置51を有し、
前記走行台車19が、平らな面53から下り傾斜する法面13に沿って前記平らな面53を走行する一方、所定の位置で前記走行を停止した際、
前記巻取り装置51の前記ロープ49の繰り出しまたは巻き上げにより前記ロープ49の端末に支持した前記第一電極21及び第二電極23を自重により前記遮水シート15の表面に摺接させながら前記法面13を下降上昇させることを特徴とする。
【0022】
この遮水シートの検査装置11では、第一電極進退駆動部45が、巻取り装置51を有する。巻取り装置51は、ロープ49を繰り出しまたは巻き上げ可能とする。ロープ49の端末には、所定の距離だけ離間させて第一電極21と第二電極23とが取り付けられる。
これらロープ49の端末に取り付けられた第一電極21及び第二電極23は、走行台車19の側方から法面13に向かって投入される。法面13の上部に投入された第一電極21及び第二電極23は、巻取り装置51からロープ49が繰り出されると、自重により遮水シート15の表面に摺接しながら、下降を開始する。この下降の間に、第一電極21が通過する法面13の表面における遮水シート15が検査される。
巻取り装置51は、第一電極21が法面13の下端に到達すると、ロープ49の繰り出しを停止させた後、今度は、ロープ49を巻き上げる。
走行台車19は、第一電極21及び第二電極23の巻き上げが完了すると、検査終了領域の距離分だけ走行台車19を前進させる。遮水シートの検査装置11は、その後、次の第一電極21及び第二電極23の投入を開始し、以後、上記と同様の繰り出し及び巻き上げ作動を繰り返して、法面13の全ての検査を終了する。
【0023】
本発明の請求項9記載の遮水シートの検査装置11は、請求項1~8のいずれか1つに記載の遮水シートの検査装置11であって、
前記第一電極がブラシ電極であることを特徴とする。
【0024】
この遮水シートの検査装置11では、第一電極を、例えば長尺杆状に形成したブラシ柄部の下面に、金属製のブラシを植設したブラシ電極として構成される。このブラシ電極21によれば、遮水シート15の表面をブラシ毛が摺接し電圧が印加される。
【0025】
本発明の請求項10記載の遮水シートの検査装置11は、請求項1~9のいずれか1つに記載の遮水シートの検査装置11であって、
前記第二電極がパッド電極であることを特徴とする。
【0026】
この遮水シートの検査装置11では、第二電極を、例えば円板状或いは矩形板状に形成されるパッド電極として構成される。このパッド電極23は、その面で遮水シート15の表面などに密着配置される。
【0027】
本発明の請求項11記載の遮水シートの検査方法は、走行装置35を有した走行台車19を、被覆面37に展張された遮水シート15の上を走行させ、
前記走行台車19に設けられた第一電極21を前記遮水シート15の表面に摺接するとともに、前記走行台車19に設けられた第二電極23を前記第一電極21から一定距離の範囲内で前記遮水シート15に接触させ、
前記走行台車19に設けられた電源部25により前記第一電極21と前記第二電極23との間に電圧を印加し、
前記遮水シート15の孔の空いた前記表面を前記第一電極21が通過するときの電流の変化により前記孔を、前記走行台車19に設けられた検知器31によって検出することを特徴とする。
【0028】
この遮水シートの検査方法では、上記した遮水シートの検査装置11の作用と同様に、走行台車19が第一電極21及び第二電極23を搭載して、これらを遮水シート15の表面に接触させながら走行するので、従来、作業者が第一電極21を手に持って、広大な面積を検査するのに比べ、労力を大幅に軽減することができる。
また、法面13に対して第一電極21及び第二電極23を接触可能にすることにより、足場の確保しにくい斜面で、作業者が重量物の第一電極21を両手で持って走査する危険な作業も回避可能となる。
さらに、作業者が歩行しながら第一電極21を走査する検査に比べ、正確に且つ一定速度で検査を連続して行えるので、作業時間を短縮することができる。
また、第一電極21や第二電極23が走行台車19に備え付けとなるので、これらの検査部材を作業者が搬入、取り扱い、搬出する手間も解消される。これによって、検査に伴う作業人員の大幅な削減が可能となる。
【0029】
本発明の請求項12記載の遮水シートの検査方法は、請求項11記載の遮水シートの検査方法であって、
前記走行台車19に設けられた位置情報取得部27により前記走行台車19及び前記第一電極21の位置情報を取得することを特徴とする。
【0030】
この遮水シートの検査方法では、第一電極21の接触位置を走行台車19の走行とともにリアルタイムで取得される。
【0031】
本発明の請求項13記載の遮水シートの検査方法は、請求項12記載の遮水シートの検査方法であって、
前記検知器31が前記孔を検知したときにその検知情報及び前記位置情報を、前記走行台車19に設けられた制御部33により前記記憶部29に記憶させることを特徴とする。
【0032】
この遮水シートの検査方法では、孔を検知した際の検知信号が制御部33へと送られ、制御部33は、この検知信号を受けることで、位置情報取得部27により、第一電極21の現在位置を記憶部29に記憶する。そして、走行台車19の走行に伴って検知動作と記憶とが繰り返される。
【0033】
本発明の請求項14記載の遮水シートの検査方法は、請求項12または13に記載の遮水シートの検査方法であって、
検査開始時に、位置情報取得部27により前記走行台車19の位置情報を取得するとともに、スキャン計測装置により取得した周囲の地形情報を周囲地形情報として記録し、
前記制御部33が、前記位置情報及び前記周囲地形情報に基づき、前記走行台車93の走行を判断することを特徴とする。
【0034】
この遮水シートの検査方法では、未知の施工対象域において、位置情報取得部27により現在位置が取得されるとともに、同時に走行台車19に設けられているスキャン計測装置により周囲の地図情報が周囲地形情報として記憶される。制御部33は、走行しながら現在位置を周囲地形情報に重畳することにより、未知の施工対象域を重複走行せずに、くまなく走行・通過することが可能となる。この際、スキャン計測装置により取得した画像情報により壁や穴等の障害物も同時に走行判断に用いられ、自動走行の信頼性が高められる。
【0035】
本発明の請求項15記載の遮水シートの検査方法は、請求項14に記載の遮水シートの検査方法であって、
事前に施工対象域となる施工区域図情報を記憶させ、
前記制御部33が、前記位置情報、前記周囲地形情報及び前記施工区域図情報に基づき、前記走行台車93の走行を判断することを特徴とする。
【0036】
この遮水シートの検査方法では、施工対象域となる施工区域図情報が事前に記憶される。つまり、制御部33は、施工区域図情報と、位置情報と、周囲地形情報とを総合の情報として走行を制御する。この場合、施工区域図情報が事前に記憶されているので、走行経路を周囲地形情報から算出する必要がなくなる。これにより、制御部33は、周囲地形情報に基づき、走行経路を判断できるので、走行制御を容易にできる。また、スキャン計測装置により取得した障害物も同時に判断しながら、信頼性の高い自動走行が可能となる。
【0037】
本発明の請求項16記載の遮水シートの検査方法は、請求項15に記載の遮水シートの検査方法であって、
前記施工区域図情報に、前記走行台車93が通過する複数の座標ポイントと、その座標ポイントの通過順序が与えられていることを特徴とする。
【0038】
この遮水シートの検査方法では、施工区域図情報に、座標ポイントと、その座標ポイントの通過順序が予め与えられている。これにより、制御部33は、位置情報から座標ポイントを順番に取得しながら、走行経路を容易に決定することが可能となる。また、スキャン計測装置により取得した障害物も同時に判断しながら、信頼性の高い自動走行を容易に可能とすることができる。
【0039】
本発明の請求項17記載の遮水シートの検査方法は、請求項11~16のいずれか1つに記載の遮水シートの検査方法であって、
前記検知器31により前記孔が検知された際に、その位置にて第一電極21を再度往復移動させて、前記電流の変化による再検査を行い、再び前記電流の変化が検知されたときに、前記孔の検知を確定する手順を含むことを特徴とする。
【0040】
この遮水シートの検査方法では、検知器31が、孔を検知すると、第一電極21を再度摺接しながら検知した孔の位置を再び通過させる。再通過の際に、再び孔の検知されることが制御部33により判断される。制御部33は、所定の回数(例えば3回)、検知が確認されたなら、孔の検知情報を記憶部29に記憶する。
【0041】
本発明の請求項18記載の遮水シートの検査方法は、請求項11~17のいずれか1つに記載の遮水シートの検査方法であって、
前記走行台車19が、進行方向とほぼ直交方向で前記走行台車19に対して前記第一電極21を接近離反方向に移動させる第一電極進退駆動部45を備え、
前記第一電極進退駆動部45が、ロープ49を繰り出しまたは巻き上げる巻取り装置51を有し、
前記走行台車19が、平らな面53から下り傾斜する法面13に沿って前記平らな面53を走行する一方、所定の位置で前記走行を停止した際、
前記巻取り装置51の前記ロープ49の繰り出しまたは巻き上げにより前記ロープ49の端末に支持した前記第一電極21を自重により前記遮水シート15の表面に摺接させながら前記法面13を下降上昇させることを特徴とする。
【0042】
この遮水シートの検査方法では、上記した巻取り装置51を備えた遮水シートの検査装置11の作用と同様に、ロープ49の端末に取り付けられた第一電極21及び第二電極23が、法面13の上端に接続する平らな面53に、進行方向を向かって停止している走行台車19の側方から法面13に向かって投入される。投入された第一電極21及び第二電極23は、巻取り装置51からロープ49が繰り出されると、自重により遮水シート15の表面に摺接しながら、下降される。これにより、遮水シートの検査方法によれば、法面13など足場の確保しにくい斜面で、作業者が重量物の第一電極21を両手で持って走査する危険な作業を回避できる。
【0043】
本発明の請求項19記載の遮水シートの検査方法は、請求項18記載の遮水シートの検査方法であって、
前記第一電極21が、前記下降上昇の方向に直交する幅方向が長尺に形成され、
前記第一電極21が前記下降上昇して戻ったときに、前記走行台車19を前記第一電極21の幅長だけ走行させて次の幅長分の前記遮水シート15を検査することを特徴とする。
【0044】
この遮水シートの検査方法では、第一電極21が法面13の下端に到達すると、巻取り装置51がロープ49の繰り出しを停止させた後、今度は、ロープ49を巻き上げる。走行台車19の制御部33は、巻取り装置51による第一電極21及び第二電極23の巻き上げが完了すると、第一電極21の幅長(すなわち、検査終了領域の距離分)だけ走行台車19を前進させる。遮水シートの検査装置11は、その後、次の第一電極21及び第二電極23の投入を開始し、以後、上記と同様の繰り出し及び巻き上げ作動を繰り返して、法面13の全ての検査を終了する。
【0045】
本発明の請求項20記載の遮水シートの検査方法は、請求項11~19のいずれか1つに記載の遮水シートの検査方法であって、
前記第一電極がブラシ電極であることを特徴とする。
【0046】
この遮水シートの検査方法では、第一電極を、例えば長尺杆状に形成したブラシ柄部の下面に、金属製のブラシを植設したブラシ電極として構成される。このブラシ電極21によれば、遮水シート15の表面をブラシ毛が摺接し電圧が印加される。
【0047】
本発明の請求項21記載の遮水シートの検査方法は、請求項11~20のいずれか1つに記載の遮水シートの検査方法であって、
前記第二電極がパッド電極であることを特徴とする。
【0048】
この遮水シートの検査方法では、第二電極を、例えば円板状或いは矩形板状に形成されるパッド電極として構成される。このパッド電極23は、その面で遮水シート15の表面などに密着配置される。
【発明の効果】
【0049】
本発明に係る請求項1記載の遮水シートの検査装置によれば、遮水シートの穿孔検知作業において、従来に比べ作業労力を大幅に軽減し、安全性を向上させながら、作業時間を短縮できる。
【0050】
本発明に係る請求項2記載の遮水シートの検査装置によれば、位置情報を取得できるので、走行台車または第一電極の位置を、走行台車の走行に伴ってリアルタイムで検知が行える。
【0051】
本発明に係る請求項3記載の遮水シートの検査装置によれば、第一電極の現在位置、すなわち、遮水シートの孔の検知位置を取得可能となる。
【0052】
本発明に係る請求項4記載の遮水シートの検査装置によれば、走行台車の走行に伴って検知動作と記憶とが繰り返され、つまり、位置情報の取得、検査、記録を自動で行うことができる。
【0053】
本発明に係る請求項5記載の遮水シートの検査装置によれば、走行台車を操縦装置により遠隔操作することができる。
【0054】
本発明に係る請求項6記載の遮水シートの検査装置によれば、遮水シートに生じた穿孔箇所を地図上でリアルタイムに把握することができる。
【0055】
本発明に係る請求項7記載の遮水シートの検査装置によれば、走行台車の側方から、走行台車の進行方向とほぼ直交方向に第一電極を接近離反させて広範囲の検査を行うことができる。
【0056】
本発明に係る請求項8記載の遮水シートの検査装置によれば、自重を利用して第一電極を下降上昇することで法面を安全に検査することができる。
【0057】
本発明に係る請求項9記載の遮水シートの検査装置によれば、ブラシ電極にて遮水シートに対する接触域、すなわち通電範囲である検査範囲を所定の長さに設定できる。
【0058】
本発明に係る請求項10記載の遮水シートの検査装置によれば、パッド電極によって、通電面積を所定の面積で確保することができる。
【0059】
本発明に係る請求項11記載の遮水シートの検査方法によれば、遮水シートの穿孔検知作業において、従来に比べ作業労力を軽減し、安全性を向上させながら、作業時間を短縮できる。
【0060】
本発明に係る請求項12記載の遮水シートの検査装置によれば、走行台車または第一電極の位置情報を走行台車の走行とともにリアルタイムで取得できる。
【0061】
本発明に係る請求項13記載の遮水シートの検査装置によれば、走行台車の走行に伴って検知動作と記憶とが繰り返され、つまり、位置情報の取得、検査、記録を自動で行うことができる。
【0062】
本発明に係る請求項14記載の遮水シートの検査方法によれば、未知の施工対象域に対して位置情報と周囲地形情報とを取得して、走行台車を自動で走行させることができる。
【0063】
本発明に係る請求項15記載の遮水シートの検査方法によれば、事前に施工区域図情報を記憶することで、走行判断の処理を容易にして、走行台車を自動で走行させることができる。
【0064】
本発明に係る請求項16記載の遮水シートの検査方法によれば、走行台車が通る座標ポイントと、その順番が定められることにより、走行判断の処理をより容易にして、走行台車を自動で走行させることができる。
【0065】
本発明に係る請求項17記載の遮水シートの検査方法によれば、穿孔検知の信頼性を高めることができる。
【0066】
本発明に係る請求項18記載の遮水シートの検査方法によれば、自重を利用して第一電極を下降上昇することで法面を安全に検査することができる。
【0067】
本発明に係る請求項19記載の遮水シートの検査方法によれば、走行台車の進行方向と第一電極の延在方向を一致させることにより、第一電極進退駆動部の構造を簡単にできる。
【0068】
本発明に係る請求項20記載の遮水シートの検査装置によれば、ブラシ電極にて遮水シートに対する接触域、すなわち通電範囲である検査範囲を所定の長さに設定できる。
【0069】
本発明に係る請求項21記載の遮水シートの検査装置によれば、パッド電極によって、通電面積を所定の面積で確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明の第1実施形態に係る遮水シートの検査装置が法面を検査する状況を表した斜視図である。
図2図1の側面図である。
図3】遮水シートを備えた遮水構造体の断面図である。
図4】遮水シートを備えた他の遮水構造体の断面図である。
図5】施工区域図の一例を表す平面図である。
図6】平らな面を介して複数の法面が接続される施工対象域の一例を示す要部平面図である。
図7】(a)は図5のA-A断面図、(b)はシート押さえコンクリートと検査装置の位置関係を示すA部拡大図、(c)はシート押さえコンクリートと検査装置の他の位置関係を示すB部拡大図である。
図8】法面の傾斜勾配を説明する模式図である。
図9】第1実施形態に係る検査装置のハードウエア構成を表すブロック図である。
図10】第1実施形態に係る遮水シートの検査方法の検査手順を表すフローチャートである。
図11】第2実施形態に係る検査装置の斜視図である。
図12】検査装置の使用状況を表す斜視図である。
図13】第2実施形態に係る検査装置のハードウエア構成を表すブロック図である。
図14】第2実施形態に係る遮水シートの検査方法の検査手順を表すフローチャートである。
図15】通過ポイント及び通過順序の付された施工区域図情報の一例を表す平面図である。
図16】第3実施形態に係る遮水シートの検査方法の検査手順を表すフローチャートである。
図17】通過ポイントの付された施工区域図情報の一例を表す平面図である。
図18】第二電極(パッド電極)が下面に設けられた他の構成例による検査装置の平面図である。
図19図18に示した検査装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る遮水シートの検査装置11が法面13を検査する状況を表した斜視図である。
本実施形態に係る遮水シートの検査装置11及び遮水シートの検査方法は、遮水シート15を含む遮水構造体60が敷設された遮水シート敷設現場に好適に適用される。遮水シート敷設現場としては、例えば、一般・産業廃棄物埋立処分場、濁水沈澱池、工場廃液処理池、ヘドロ浚渫池、農業用貯水池、宅地造成調整池、ゴルフ場・庭園・公園などの観賞池、農・工業用水路、排水路、ボックストンネル・ビル・プール・タンクなどの地下構造物の外防水、アースダム・ロックフィルダム・河川堰堤・貯水池堰堤などの遮水コア等が挙げられる。本実施形態では、遮水シート敷設現場が、産業廃棄物埋立処分場17(図5)である例を説明する。
【0072】
第1実施形態に係る遮水シートの検査装置11(以下、単に「検査装置」と称す。)は、走行台車19と、第一電極としてのブラシ電極21と、第二電極としてのパッド電極23と、電源部25(図9)と、位置情報取得部27(図9)と、記憶部29(図9)と、検知器31(図9)と、制御部33(図9)と、を主要な構成として有する。
【0073】
走行台車19は、走行装置35を有し、被覆面37に展張された遮水シート15の上を走行する。走行装置35は、例えば複数の車輪駆動用の電動モータを有し、制御部33からの走行制御信号により、走行台車19を前進、停止、後退、右旋回、左旋回させる。
【0074】
走行台車19には、落し棒39が備えられている。落し棒39は、停止中の走行台車19のぐらつきを防止する。落し棒39は、棒を進退する棒落し機構41により駆動される。この場合、棒落し機構41は、制御部33により駆動制御することができる。また、落し棒39は、作業者が手動により進退してもよい。
【0075】
ブラシ電極21は、走行台車19に設けられ、遮水シート15の表面に接する。本実施形態において、ブラシ電極21は、走行台車19の進行方向に長い長尺形状で形成される。ブラシ電極21は、例えば長尺杆状に形成したブラシ柄部の下面に、金属製のブラシを植設して構成される。ブラシは、検知器31を介して電圧が印加される。
【0076】
パッド電極23は、走行台車19に設けられ、ブラシ電極21から一定距離の範囲内に配置されて遮水シート15の表面に接する。従って、パッド電極23は、ブラシ電極21が移動されても、一定距離の範囲内でブラシ電極21から離間して遮水シート上に配置される。つまり、検査時には、ブラシ電極21とパッド電極23とは、常に遮水シート15の表面に接した状態となる。
【0077】
パッド電極23が配置されるブラシ電極21からの一定距離とは、遮水シート15の裏に導電性マットや導電層がある場合のブラシ電極21とパッド電極23(すなわち、マイナス接地させている位置)の最大距離である。例えば遮水シート15の孔(ピンホール等)の有無を検査するスパーク検査では、ブラシ電極21と、その下層の導電性マットや導電層との間に15~35kVの電圧がかけられる。スパーク検査では、ブラシ電極21がピンホールの上を通過すると放電現象が生じ、検知器31がピンホールの存在を検知する。このようなスパーク検査において、最大距離は、およそ5m程度が限界となる。すなわち、ブラシ電極21は、パッド電極23を中心に半径5mの検査領域43(図8)の範囲内に配置される。
【0078】
また、パッド電極23とブラシ電極21との距離は、ブラシ電極21と遮水シート下側の間に静電結合を生じさせ、電流経路を形成して遮水シート15を検査する方式の場合においても、ほぼ同様の最大距離とすることができる。
【0079】
遮水シート15の同一表面上に離間配置して接触させたブラシ電極21とパッド電極23による孔の検知方法としては、公知の技術を用いることができる。例えば特開平10-288563に開示される電圧を印加し、放電の有無を検知するピンホール検知方法や、特開2003-112139に開示されるブラシ電極21と遮水シート下側の間に静電結合が生じて電流経路が形成され、電流が流れることを利用する遮水シート検査方式等が挙げられる。
【0080】
なお、ブラシ電極21は、所定長の長尺で形成したものを、直線状に複数を絶縁して連結し、それぞれのブラシ電極21に電源部25を接続してもよい。ブラシ電極同士の連結は、所謂、蛇型構造のように、ある程度の自由度で可動可能とすることが望ましい。これにより、電圧降下を発生させずに大きなブラシ電極21を構成できる。このような大サイズのブラシ電極21によれば、上記の最大距離をさらに大きくすることができる。また、連結部分に自由度を有するブラシ電極21によれば、法面13の傾斜方向に直交する方向に、ブラシ電極21を走査して検査すること(すなわち、ブラシ電極21の縦使い)も可能となる。
【0081】
電源部25(図9)は、走行台車19に設けられ、ブラシ電極21とパッド電極23との間に電圧を印加する。電源部25は、走行台車19に搭載される蓄電池とすることができる。電源部25は、ブラシ電極21とパッド電極23との間への電圧印加の他に、走行装置35などの各装置への給電を行う。
【0082】
走行台車19は、進行方向とほぼ直交方向で走行台車19に対してブラシ電極21を接近離反方向に移動させるブラシ電極進退駆動部45(図9)を備える。ブラシ電極進退駆動部45により移動されるブラシ電極21には、位置情報取得部27に接続されるアンテナ47が設けられる。
【0083】
図2図1の側面図である。
検査装置11は、ブラシ電極進退駆動部45が、ロープ49を繰り出しまたは巻き上げる巻取り装置51を有する。走行台車19は、平らな面53から下り傾斜する法面13に沿って平らな面53を走行する。一方、走行台車19は、所定の位置で走行を停止した際、巻取り装置51のロープ49の繰り出しまたは巻き上げによりロープ49の端末に支持したブラシ電極21及びパッド電極23を自重により遮水シート15の表面に摺接させながら法面13を下降上昇させることができる。
【0084】
巻取り装置51は、例えばブラシ電極21の長手方向両端をそれぞれ支持できるように、一対設けることが好ましい。それぞれの巻取り装置51は、巻き取りモータにより正逆回転駆動される巻取リール55と、巻取リール55から繰り出されたロープ49を所定の向きにガイドする支持リール57等を有する。ブラシ柄部には、法面13での下降上昇を円滑にするための複数の補助輪59が取り付けられることが好ましい。
【0085】
なお、図示は省略するが、走行台車19には、パッド電極23を単独で巻取り装置51と同期させて下降上昇させる他の巻取り装置が備えられていてもよい。また、パッド電極23は、専用の巻取り装置を不要として、ブラシ電極21から一定距離が確保されるようにして、ブラシ電極21と絶縁構造で連結されていてもよい。
【0086】
検査対象となる処分場で使用される遮水シート15の種類としては、例えば、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、オレフィン系熱可塑性樹脂を挙げることができ。遮水シート15は、単体の一層で形成することができる。また、遮水シート15は、ポリエチレン素材を使用し、上層を非導電、下層を導電層61とした2層構造であってもよい。さらに、遮水シート15は、ポリエチレン素材で上層と下層の色を異ならせたものであってもよい。この場合、遮水シート15は、上層を白または緑とし、傷がつくと下層の黒色が見え、傷が目視確認しやすくなる構造とすることができる。
【0087】
図3は遮水シート15を用いた遮水構造体60の断面図である。
遮水シート15が使用される遮水構造体60は、例えばスパーク検査を行うという観点から、大きく分けて以下の2つのパターンとなる。遮水構造体60の第1のパターンは、図3に示すように、下層より、保護マット63、遮水シート15、導電性マット65、遮水シート15、保護マット63が順に積層された5層となる。保護マット63には、不織布などの緩衝材が用いられる。
【0088】
図4は遮水シート15を用いた他の遮水構造体60の断面図である。
遮水構造体60の第2のパターンは、図4に示すように、下層より、保護マット63、遮水シート15、保護マット63、導電層付き遮水シート15、保護マット63が順に積層された5層となる。導電層付き遮水シート15は、遮水シート15の下面に、導電層61が形成されている。導電層付き遮水シート15は、遮水層67の裏面にアルミシート等の導電層61を貼着したものや、遮水層67の裏面にアルミ蒸着フィルム等の導電層61を被着したものが用いられる。
【0089】
処分場の遮水構造体60は、以上のような5層構造が基本となる。なお、遮水構造体60は、上記の5層構造にそれぞれの現場の要求に合った、自己修復材と呼ばれるものが入っていてもよい。
【0090】
本実施形態では、上記した5つの層の上から2層目の遮水シート15のみが検査対象となる。この場合、後述するが、最上層の保護マット63を敷設する以前に検査を行うこととなる。なお、検査対象としては、上記した5つの層の下から2層目の遮水シート15を検査対象としてもよく、その場合は3層目の導電性マット65或いは保護マット63を敷設する以前に後述する検査を行う手順とすればよい。
【0091】
図5は施工区域図の一例を表す平面図である。
例えば産業廃棄物埋立処分場17は、図5の施工区域図で示すように、周囲の法面13に囲まれた中央部分が、平らな底面69となって施工される。法面13は、平面となる段部71を介して複数が底面69に向かって多段状となる。また、底面69からは、地上面73に通じる傾斜路である車両用通路75が設けられる。
【0092】
図6は平らな面53を介して複数の法面13が接続される施工対象域の一例を示す要部平面図である。
検査装置11は、法面13を検査する場合、地上面73もしくは段部71を、水平方向で法面13に沿って走行する。検査装置11は、例えば段部71の或る位置で停止し、側部よりブラシ電極21とパッド電極23を法面13に下降上昇させて遮水シート15の検査を行う。
【0093】
図7(a)は図5のA-A断面図、(b)はシート押さえコンクリート77と検査装置11の位置関係を示すA部拡大図、(c)はシート押さえコンクリート77と検査装置11の他の位置関係を示すB部拡大図である。
遮水シート敷設現場が多段構成の場合、上記のように途中に段部71として水平面が設けられる。この段部71は、法面13の上から下までの遮水シート15が途中でずれないように、すなわち遮水シート自身の重みで法面13上を下方向に滑らせず押さえるために有る。このため、水平面の一部には、凹溝79が設けられる。段部71では、この凹溝79に押さえ用のコンクリート77が入れられ、遮水シート15のずれが止められる。検査装置11は、これら凹溝79やコンクリート77を避けながら走行を可能とする。
【0094】
図8は法面13の傾斜勾配を説明する模式図である。
法面13の距離は、産業廃棄物埋立処分場17によって様々となる。但し、ほとんどの処分場は、直高が5.0mとなる。勾配については、「1:1.0」、「1:1.2」、「1:1.5」などとなる。例えば、直高5m、勾配1.5の場合、底辺部の長さは6.5m、法面13の長さは8.2mとなる。
【0095】
次に、検査装置11のハードウエア構成を説明する。
【0096】
図9は第1実施形態に係る検査装置11のハードウエア構成を表すブロック図である。
位置情報取得部27は、衛星測位システムであるGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して現在位置を取得する。位置情報取得部27は、走行台車19またはブラシ電極21のいずれか一方に設けられる。本実施形態では、位置情報取得部27が走行台車19に搭載される。また、位置情報取得部27に接続されるアンテナ47は、ブラシ電極21に取り付けられる。これにより、検査装置11は、ブラシ電極21の現在位置、すなわち、孔の検知位置を取得可能としている。衛星測位システムとしては、周知技術を用いることができるのでその詳細の説明は省略する。
【0097】
記憶部29は、走行台車19に設けられる。記憶部29は、施工対象域となる地図情報、位置情報及び検知情報を記憶する。この他、記憶部29は、走行装置35の制御に必要な施工区域図情報や走行経路、周囲地形情報等も記憶する。
【0098】
検知器31は、走行台車19に設けられる。検知器31は、遮水シート15の孔の空いた表面をブラシ電極21が通過するときの電流の変化により孔を検知する。検知器31は、スパーク検査、或いは静電結合により電流経路を形成する検査用のそれぞれに適したものを搭載することができる。
【0099】
制御部33は、走行台車19に設けられる。制御部33は、例えば演算装置を有するコンピュータとすることができる。制御部33は、検知器31が孔を検知したときに検知情報及び位置情報を記憶部29に記憶させる他、走行装置35を制御することによる走行制御も行う。さらに、制御部33は、操縦装置81から送られる落し棒操作信号により、棒落し機構41の駆動も可能とする。
【0100】
走行台車19には、制御部33に接続される送受信装置83が搭載される。検査装置11は、走行台車19とは別体の操縦装置81を備えることができる。操縦装置81は、送受信装置83に無線接続されて、制御部33を介して走行装置35などを作動させる。これにより、検査装置11は、操縦装置81により、無線で走行台車19の走行が遠隔操作可能となる。
【0101】
なお、検査装置11は、走行台車19に操作パネル85を備えることができる。操作パネル85には、走行台車19の走行を操作するための複数の操作ボタンが設けられる。操作パネル85は、これら操作ボタンを表示領域に表示させたタッチパネル式の表示装置であってもよい。この操作パネル85により走行台車19を操作できる機能は、上記の操縦装置81による機能と同一となる。
【0102】
また、検査装置11は、送受信装置83を介して制御部33と無線接続される携帯型情報処理端末87を備えることができる。携帯型情報処理端末87は、表示装置89を有する。携帯型情報処理端末87は、制御部33を介して記憶部29からの情報を読み込むことにより、検知情報及び位置情報を地図情報に重畳して表示装置89に表示可能とする。
【0103】
次に、遮水シートの検査方法を説明する。
【0104】
図10は第1実施形態に係る遮水シートの検査方法の検査手順を表すフローチャートである。
この実施形態に係る検査方法では、図1に示した検査装置11が、法面13に展張された遮水シート15を検査する場合を説明する。なお、上述したが、遮水構造体60として法面13を全て覆ってしまう施工作業の途中で、遮水シート15が展張された後、保護マット63を展張する以前に本検査が行われる手順となる。
【0105】
遮水シート15を検査するには、先ず、検査装置11を産業廃棄物埋立処分場17に搬入する(ASt1)。操縦装置81を使用した無線操作により、走行台車19を、被覆面37に展張された遮水シート15の上を走行させ、検査装置11を検査開始位置に移動する(ASt2)。検査装置11が検査位置に達したら、棒落し機構41を作動させて、検査位置を決定して検査装置11を安定させる(ASt3)。
【0106】
操縦装置81により巻取り装置51を作動させて、ブラシ電極21及びパッド電極23の下降を開始する(ASt4)。走行台車19は、巻取り装置51のロープ49を繰り出し、ロープ49の端末に支持したブラシ電極21を自重により遮水シート15の表面に摺接させながら法面13を下降させる。検知器31は、ブラシ電極21及びパッド電極23の下降の開始に伴って通電を開始する(ASt5)。すなわち、電源部25は、ブラシ電極21とパッド電極23との間に電圧を印加する。パッド電極23は、ブラシ電極21から一定距離の範囲内で遮水シート15の表面に摺接させる。
【0107】
巻取り装置51は、ブラシ電極21に設けられる接触センサ等により、ブラシ電極21が法面下端に到達したなら、ブラシ電極21の下降を停止する(ASt6)。巻取り装置51は、ロープ49を巻き取ることにより、ブラシ電極21及びパッド電極23を収容する(ASt7)。次いで、検査範囲が終了したか否かが判断される(ASt8)。検査範囲が終了したなら、検査が終了となる。
【0108】
一方、検査範囲が未終了の場合には、走行台車19を次の検査位置まで走行させる(ASt2)。
【0109】
ブラシ電極21は、下降上昇の方向に直交する幅方向が長尺に形成される。検査装置11は、ブラシ電極21が下降上昇して戻ったときに、ブラシ電極21の幅長だけ走行台車19を走行させて次の幅長分の遮水シート15を検査する。以下、同様にASt3~ASt8が繰り返される。
【0110】
制御部33は、ブラシ電極21の下降中に、スパークの有無を、検知器31から送られる検知信号の有無により判断する(ASt9)。検知が無い場合には、ブラシ電極21の下降が続行される。
【0111】
一方、制御部33は、検知器31からの検知信号を受けると、ブラシ電極21を所定距離、例えば50cm上昇させた後、再び50cm下降させて同一箇所を再検査する(ASt10)。再検査は、スパーク回数が所定の回数となるまで繰り返される(ASt11)。再検査の回数は、例えば3回に設定される。制御部33は、3回の検査共、検知信号が送られると、スパーク位置を位置情報取得部27により取得する。
【0112】
つまり、遮水シートの検査方法は、検知器31により孔が検知された際に、その位置にてブラシ電極21を再度往復移動させて、電流の変化による再検査を行い、再び電流の変化が検知されたときに、孔の検知を確定する。
【0113】
制御部33は、検知器31から3回目の検知信号が送られると、走行台車19に設けられた位置情報取得部27により、ブラシ電極21の位置情報を取得する。制御部33は、検知器31が孔を検知したときにその検知情報及び位置情報を、走行台車19に設けられた記憶部29に記憶させる(ASt12)。
【0114】
また、制御部33は、これら検知情報及び位置情報を送受信装置83を介して携帯型情報処理端末87にも送信する(ASt13)。
【0115】
検査装置11は、遮水シート15の孔を検知した後、再びブラシ電極21が下降され、以下、ASt6~ASt13が繰り返される。
【0116】
次に、上記した構成の作用を説明する。
第1実施形態に係る遮水シートの検査装置11では、走行台車19がブラシ電極21及びパッド電極23を搭載して、これらを遮水シート15の表面に接触させながら走行するので、従来、作業者がブラシ電極21を手に持って、広大な面積を検査するのに比べ、労力を大幅に軽減することができる。
【0117】
また、法面13に対してブラシ電極21及びパッド電極23を接触可能にすることにより、足場の確保しにくい斜面で、重量物のブラシ電極21を両手で持って走査する危険な作業も回避可能となる。
【0118】
さらに、作業者が歩行しながらブラシ電極21を走査する検査に比べ、正確に且つ一定速度で検査を連続して行えるので、作業時間を短縮することができる。さらには、広大な面積に対する検査箇所の欠落(検査漏れ)なども防止できる。
【0119】
また、走行台車19が電源部25を搭載するので、従来、ブラシ電極21に電圧を印加するために接続していた電線の取り回しが不要になり、これによっても作業性を向上させることができる。
【0120】
また、ブラシ電極21やパッド電極23が走行台車19に備え付けとなるので、これらの検査部材を作業者が搬入、取り扱い、搬出する手間も解消される。これによって、検査に伴う作業人員の大幅な削減が可能となる。
【0121】
また、この遮水シートの検査装置11では、走行台車19が、ブラシ電極進退駆動部45を備える。ブラシ電極進退駆動部45は、ブラシ電極21を、走行台車19の進行方向とほぼ直交方向で走行台車19に対して接近離反方向に移動させる。これにより、遮水シートの検査装置11は、走行を停止し、その位置からブラシ電極21を進行方向と直交方向に接近離反させて検査を行うことできる。つまり、遮水シートの検査装置11は、走行台車19の走行とブラシ電極21の接近離反動作とにより、遮水シート15の表面をXY方向に走査して効率的な検査を行うことでできる。その結果、走行台車19の側方から、走行台車19の進行方向とほぼ直交方向にブラシ電極21を接近離反させて広範囲の検査を行うことができる。
【0122】
また、この遮水シートの検査装置11では、ブラシ電極進退駆動部45が、巻取り装置51を有する。巻取り装置51は、ロープ49を繰り出しまたは巻き上げ可能とする。ロープ49の端末には、所定の距離だけ離間させてブラシ電極21とパッド電極23とが取り付けられる。ブラシ電極21は、複数の補助輪59を備えることで、ブラシ先端が一定の押圧力で全てが均等に遮水シート15の表面に摺接するように構成することが望ましい。一方、パッド電極23は、平板状の電極面が、遮水シート15の表面に摺接すれば補助輪59を省略してもよい。
【0123】
これらロープ49の端末に取り付けられたブラシ電極21及びパッド電極23は、法面13の上端に接続する平らな面53に、進行方向を向かって停止している走行台車19の側方から法面13に向かって投入される。法面13の上部に投入されたブラシ電極21及びパッド電極23は、巻取り装置51からロープ49が繰り出されると、自重により遮水シート15の表面に摺接しながら、下降を開始する。ブラシ電極21とパッド電極23とは、一定の離間距離を保ちながら法面13の下端まで下降される。この下降の間に、ブラシ電極21が通過する法面13の表面における遮水シート15が検査される。
【0124】
巻取り装置51は、ブラシ電極21が法面13の下端に到達すると、例えば感圧センサ等により、ロープ49の繰り出しを停止させた後、今度は、ロープ49を巻き上げる。ロープ49の巻き上げ時、ブラシ電極21及びパッド電極23は、下降時と同一の経路を昇降するが、この際の検査は行われても行われなくてもよい。
【0125】
走行台車19の制御部33は、巻取り装置51によるブラシ電極21及びパッド電極23の巻き上げが完了すると、検査終了領域の距離分だけ走行台車19を前進させる。遮水シートの検査装置11は、その後、次のブラシ電極21及びパッド電極23の投入を開始し、以後、上記と同様の繰り出し及び巻き上げ作動を繰り返して、法面13の全ての検査を終了する。その結果、自重を利用してブラシ電極21を下降上昇することで法面13を安全に検査することができる。
【0126】
また、この遮水シートの検査装置11では、走行台車19に送受信装置83が搭載される。送受信装置83は、制御部33を介して、或いは直接的に走行装置35を作動可能とする。一方、遮水シートの検査装置11は、走行台車19とは別体の操縦装置81を備える。操縦装置81は、無線で送受信装置83と交信することにより、走行装置35を作動させる。つまり、走行台車19は、台車本体に取り付けられている操作パネル85が操作される場合と同様に、操縦装置81を用いて遠隔操作により走行の制御が可能となる。走行の制御としては、例えば、発進停止、後退、右旋回、左旋回、ブラシ電極進退駆動部45の駆動等が挙げられる。その結果、走行台車19を操縦装置81により遠隔操作することができる。
【0127】
また、この遮水シートの検査装置11では、表示装置89を備えた携帯型情報処理端末87が、走行台車19の送受信装置83に無線接続される。携帯型情報処理端末87は、送受信装置83を介して制御部33に接続される。制御部33に接続された携帯型情報処理端末87は、例えば表示装置89の一部分に表示される操作ボタン等の操作により、制御部33に対して検知情報及び位置情報を記憶部29から読み出させる。携帯型情報処理端末87は、読み出した検知情報及び位置情報を無線により取得し、これら検知情報及び位置情報を地図情報に重畳して表示装置89に表示する。その結果、遮水シート15に生じた穿孔箇所を地図上でリアルタイムに把握することができる。
【0128】
第1実施形態に係る遮水シートの検査方法では、上記した遮水シートの検査装置11の作用と同様に、走行台車19がブラシ電極21及びパッド電極23を搭載して、これらを遮水シート15の表面に接触させながら走行するので、従来、作業者がブラシ電極21を手に持って、広大な面積を検査するのに比べ、労力を大幅に軽減することができる。
【0129】
また、法面13に対してブラシ電極21及びパッド電極23を接触可能にすることにより、足場の確保しにくい斜面で、重量物のブラシ電極21を両手で持って走査する危険な作業も回避可能となる。
【0130】
さらに、作業者が歩行しながらブラシ電極21を走査する検査に比べ、正確に且つ一定速度で検査を連続して行えるので、作業時間を短縮することができる。
【0131】
また、ブラシ電極21やパッド電極23が走行台車19に備え付けとなるので、これらの検査部材を作業者が搬入、取り扱い、搬出する手間も解消される。これによって、検査に伴う作業人員の大幅な削減が可能となる。
【0132】
また、この遮水シートの検査方法では、上記した巻取り装置51を備えた遮水シートの検査装置11の作用と同様に、ロープ49の端末に取り付けられたブラシ電極21及びパッド電極23が、法面13の上端に接続する平らな面53に、進行方向を向かって停止している走行台車19の側方から法面13に向かって投入される。投入されたブラシ電極21及びパッド電極23は、巻取り装置51からロープ49が繰り出されると、自重により遮水シート15の表面に摺接しながら、下降される。これにより、遮水シートの検査方法では、足場の確保しにくい斜面で、重量物のブラシ電極21を両手で持って走査する危険な作業を回避できる。その結果、自重を利用してブラシ電極21を下降上昇することで法面13を安全に検査することができる。
【0133】
また、この遮水シートの検査方法では、ブラシ電極21が法面13の下端に到達すると、巻取り装置51がロープ49の繰り出しを停止させた後、今度は、ロープ49を巻き上げる。走行台車19の制御部33は、巻取り装置51によるブラシ電極21及びパッド電極23の巻き上げが完了すると、ブラシ電極21の幅長、すなわち、検査終了領域の距離分だけ走行台車19を前進させる。遮水シートの検査装置11は、その後、次のブラシ電極21及びパッド電極23の投入を開始し、以後、上記と同様の繰り出し及び巻き上げ作動を繰り返して、法面13の全ての検査を終了する。その結果、走行台車19の進行方向とブラシ電極21の延在方向を一致させることにより、ブラシ電極進退駆動部45の構造を簡単にできる。
【0134】
また、この遮水シートの検査方法では、検知器31が、孔を検知すると、ブラシ電極21を再度摺接しながら検知した孔の位置を再び通過する。再通過の際に、再び孔の検知されることが制御部33により判断される。制御部33は、所定の回数、例えば3回、検知が確認されたなら、孔の検知情報を記憶部29に記憶する。その結果、穿孔検知の信頼性を高めることができる。
【0135】
なお、上記第1実施形態において、ブラシ電極21とパッド電極23とは、遮水シート15の表面にそれぞれを配置して検知を行う例であるが、パッド電極23を遮水シート15の裏面側、すなわち導電性マット65や導電層61に直接接触状態として、遮水シート15の厚み方向で通電を行う方法としてもよい。この場合、パッド電極23は、移動するブラシ電極21に対して、不動となる構成となり、また、パッド電極23からは導電性マット65や導電層61の展張範囲内を導通状態とされることから、上記した最大距離である5mの範囲を越えても検査が可能となる。ただし、パッド電極23の接続位置については、遮水シート15が覆われていない位置である必要があることから、法面13の最上縁部分に限定され、走行台車19の位置などとの配置位置を考慮しながらの検査手順となる。
【0136】
次に、第2実施形態に係る遮水シートの検査装置91及び遮水シートの検査方法を説明する。
【0137】
図11は第2実施形態に係る検査装置91の斜視図である。なお、第2実施形態において第1実施形態で示した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
第2実施形態に係る検査装置91は、走行台車93が、前方(図中左下方向)に延出するブラシ支持アーム95を備える。ブラシ電極21は、このブラシ支持アーム95の先端に取り付けられる。パッド電極23は、検査装置91とブラシ電極21との間に、パッド支持アーム97により支持される。
【0138】
また、走行台車93には、全方向に移動を可能とする4つのオムニホイール99が設けられている。通常の車輪の場合、走行台車93を直角に方向転換できないが、オムニホイール99によれば、いずれの方向へも前進、後退、方向転換が可能であり、直角方向への方向転換も可能となるので、法面13だけでなく、底面などの平面部分も進行可能であり、法面13の変化点(段部71)周辺における検査も可能となる。また、このようにいずれの方向へも進行可能であることから、ブラシ電極21を進行方向側としてもよく、ブラシ電極21を牽引するような移動も可能であって、検査域の状況に応じて自由に進行が可能である。
【0139】
図12は検査装置91の使用状況を表す斜視図である。
第2実施形態に係る遮水シートの検査方法は、検査開始時に、位置情報取得部27により走行台車19の位置情報を取得する。また、走行台車93は、位置情報の取得とともに、周囲計測器101(図13参照)であるスキャン計測装置により、取得した周囲の地形情報を周囲地形情報として記録する。検査装置91は、制御部33が、これら位置情報及び周囲地形情報に基づき、走行台車19の走行を判断する。
【0140】
図13は第2実施形態に係る検査装置91のハードウエア構成を表すブロック図である。
検査装置91は、上記第1実施形態のハードウエア構成とほぼ同じ構成を有する。検査装置91は、ブラシ電極進退駆動部45に代えて周囲計測器101が設けられている点、棒落し機構41が設けられていない点が異なる。その他の構成は、第1実施形態の検査装置11と同じである。この第2実施形態の検査装置91は、周囲計測器101を搭載することにより、被覆面37の穴や凹凸等の障害物を検知可能としている。これにより、検査装置91は、事前に施工区域図情報を記憶部29に記憶させることで、障害物を回避しながら全自動での検査走行を可能とする。
【0141】
図14は第2実施形態に係る遮水シートの検査方法の検査手順を表すフローチャートである。
第2実施形態に係る遮水シートの検査方法は、検査装置91の走行に先立ち、事前に施工区域図情報を机上で作成する(BSt1)。施工区域図情報には、走行台車93が通過する座標ポイントと、その座標ポイントの通過順序が関連づけされる。これにより、走行ルートが決定されることになる。この施工区域図情報を記憶部29に記憶する(BSt2)。
【0142】
検査装置91を産業廃棄物埋立処分場17に搬入し、操縦装置81を使用した無線操作により、走行台車19を、被覆面37に展張された遮水シート15の上を走行させる。走行台車93は、位置情報取得部27によりGNSS受信を行う。また、走行台車93は、周囲計測器101により周囲地形を観測する(BSt3)。
【0143】
制御部33は、取得した周囲地形情報から走行ルートにおける障害物の有無を判断する。進行方向に障害物が有ることで進行が行えない場合には、走行ルートを修正する(BSt5)。制御部33は、修正を行った後、BSt3に処理を戻し、新しい走行ルートでの周囲地形情報を再取得する。
【0144】
一方、走行が可能な場合には、走行を開始する(BSt6)。同時にスパーク検査を開始する(BSt7)。制御部33は、スパークの有無を、検知器31から送られる検知信号の有無により判断する(BSt8)。
【0145】
制御部33は、検知器31からの検知信号を受けると、スパーク回数のカウントを開始する(BSt9)。制御部33は、ブラシ電極21への電圧印加をオフ(BSt10)した後、走行台車19を1m後退させる(BSt11)。
【0146】
制御部33は、後退位置から再び走行を開始し、ブラシ電極21への電圧印可を行い摺接させて同一箇所を再検査する。再検査は、スパーク回数が所定の回数となるまで繰り返される。再検査のカウント回数は、例えば3回に設定される。制御部33は、3回の検査共、検知信号が送られると、検知を確定し、スパーク位置を位置情報取得部27により取得し、記憶部29に記憶させる(BSt12)。
【0147】
また、制御部33は、これら検知情報及び位置情報を送受信装置83を介して携帯型情報処理端末87にも送信する(ASt13)。
【0148】
次いで、制御部33は、通過座標を記憶部29に記憶させる(BSt14)。制御部33は、通過座標から走行ルートの正誤を判断する(BSt15)。制御部33は、走行ルートが誤りの場合には、ルート修正(BSt5)に戻り、周囲地形情報取得(BSt3)から以降の処理を繰り返す。
【0149】
走行ルートが正しい場合には、経過情報が携帯型情報処理端末87へ送信される(BSt16)。次いで、施工区域図情報の検査が完了したか否かが判断される(BSt17)。制御部33は、未完了の場合には、周囲地形情報取得(BSt3)から以降の処理を繰り返す。
【0150】
制御部33は、施工区域図情報の検査が完了した場合には、走行台車93を停車し(BSt18)、検査を終了する。
【0151】
次に、上記した第2実施形態の構成による作用を説明する。
【0152】
第2実施形態に係る遮水シートの検査装置91では、走行装置35が作動することにより、走行台車93が遮水シート15の上を走行する。走行装置35は、走行台車19に設けられる操作パネル85等が作業者により操作されることで走行台車19を駆動する。また、走行台車93は、操作パネル85からの操作信号の代わりに、送受信装置83を備え、この送受信装置83と無線により送受信を行える操縦装置81から送られる操作信号により駆動されてもよい。走行台車93は、遮水シート15の上を走行し、任意の位置でブラシ電極21とパッド電極23とを遮水シート15の表面に接触させながら走行する。ブラシ電極21の接触位置は、走行台車93に設けられる位置情報取得部27によりリアルタイムに取得される。
【0153】
走行台車93に設けられた検知器31は、遮水シート15に孔が空いていると、遮水シート15の表面を通過した際に、孔を介して遮水シート15の下層へ流れる電流の変化を検知する。
【0154】
遮水シートの検査装置91では、孔を検知したことの検知信号が制御部33へと送られる。制御部33は、検知信号を受けると、位置情報取得部27により、ブラシ電極21の現在位置を記憶部29に記憶させる。遮水シートの検査装置91では、走行台車93の走行に伴ってこの検知動作と、記憶とが繰り返される。これにより、検査対象となった遮水シート15の全面において、どの位置に孔が空いているかの情報が得られることになる。つまり、遮水シートの検査装置91は、位置情報の取得、検査、記録を自動で行うことができる。
【0155】
この遮水シートの検査方法に用いられる検査装置91は、産業廃棄物埋立処分場17における底面69や、段部71等の平らな面53での検査にも好適に用いることができる。
【0156】
また、この遮水シートの検査方法では、施工対象域となる施工区域図情報が事前に記憶される。つまり、制御部33は、施工区域図情報と、位置情報と、周囲地形情報とを総合の情報として走行を制御する。この場合、施工区域図情報が事前に記憶されているので、走行経路を周囲地形情報から算出する必要がなくなる。これにより、制御部33は、周囲地形情報に基づき、走行経路を判断できるので、走行制御を容易にできる。また、スキャン計測装置により取得した障害物も同時に判断しながら、信頼性の高い自動走行が可能となる。その結果、事前に施工区域図情報を記憶することで、走行判断の処理を容易にして、走行台車19を自動で走行させることができる。
【0157】
そして、この遮水シートの検査方法では、予め情報の無い施工対象域、すなわち未知の施工対象域において、位置情報取得部27により現在位置が取得されるとともに、同時に走行台車19に設けられているスキャン計測装置により周囲の地図情報が周囲地形情報として記憶される。制御部33は、走行しながら現在位置を周囲地形情報に重畳することにより、未知の施工対象域を重複走行せずに、くまなく通過することが可能となる。この際、スキャン計測装置により取得した画像情報により壁や穴等の障害物も同時に走行判断に用いられ、自動走行の信頼性が高められる。その結果、未知の施工対象域に対して位置情報と周囲地形情報とを取得して、走行台車19を自動で走行させることができる。
【0158】
次に、第3実施形態に係る遮水シートの検査方法を説明する。
【0159】
図15は通過ポイント及び通過順序の付された施工区域図情報の一例を表す平面図である。なお、第3実施形態において第1実施形態で示した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
第3実施形態に係る検査装置91は、第2実施形態に係る検査装置91とほぼ同一の構成のものを使用できる。動作を制御するための制御手段として記憶部29に格納される制御プログラムが、第2実施形態とは異なるものとなる。
【0160】
第3実施形態に係る遮水シートの検査方法は、施工区域図情報に、検査装置91が通過する複数の座標ポイントである例えばウエイポイント(Way Point)と、そのウエイポイントを通過する順番について情報を与える。なお、図15においては、ウエイポイントとして、P1~P7を記載しているが、施工区域の全面に亘ってn個のウエイポイントが指定される。これらウエイポイントP1~P7…Pnの位置と、通過する順番とは、記憶部29に記憶する。
【0161】
図16は第3実施形態に係る遮水シートの検査方法の検査手順を表すフローチャートである。
第3実施形態に係る遮水シートの検査方法は、検査装置91の走行に先立ち、事前にウエイポイントによる走行ルートを机上で作成する(CSt1)。この走行ルートを記憶部29に記憶する。
【0162】
検査装置91を産業廃棄物埋立処分場17に搬入し、操縦装置81を使用した無線操作により、走行台車93を、被覆面37に展張された遮水シート15の上を走行させる(CSt2)。
【0163】
検知器31は、ブラシ電極21への通電を開始する(CSt3)。
【0164】
制御部33は、全てのウエイポイントP1~P7…Pnを予め指定した順に通過完了したか否かを判断する(CSt4)。制御部33は、全てのウエイポイントP1~P7…Pnを通過していた場合、検査を終了する。
【0165】
一方、全てのウエイポイントP1~P7…Pnを通過していない場合、制御部33は、スパークの有無を、検知器31から送られる検知信号の有無により判断する(CSt5)。スパークが検知されなければ、走行台車93がウエイポイントP1~P7…Pnを順番に通過して走行される。
【0166】
制御部33は、検知器31からの検知信号を受けると、走行台車93を1m戻す(CSt6)。次いで、制御部33は、スパーク回数のカウントを開始する(CSt7)。
【0167】
制御部33は、後退位置から再び走行を開始し、同一箇所を再検査する。再検査は、スパーク回数が所定の回数となるまで繰り返される。再検査のカウント回数は、例えば3回に設定される。制御部33は、3回の検査共、検知信号が送られると、スパーク位置を位置情報取得部27により取得し、記憶部29に記憶させる(CSt8)。
【0168】
また、制御部33は、これら検知情報及び位置情報を送受信装置83を介して携帯型情報処理端末87にも送信する(CSt9)。
【0169】
制御部33は、以上の動作を全てのウエイポイントP1~P7…Pnを通過するまで繰り返す。
【0170】
この遮水シートの検査方法では、施工区域図情報に、座標ポイントと、その座標ポイントの通過順序が与えられている。これにより、制御部33は、位置情報から座標ポイントを順番に取得しながら、走行経路を容易に決定することが可能となる。また、スキャン計測装置により取得した障害物も同時に判断しながら、信頼性の高い自動走行を容易に可能とすることができる。その結果、走行台車19が通る座標ポイントと、その順番が定められることにより、走行判断の処理をより容易にして、走行台車19を自動で走行させることができる。
【0171】
次に、第3実施形態の変形例を説明する。
【0172】
図17は通過ポイントの付された施工区域図情報の一例を表す平面図である。
この変形例に係る遮水シートの検査方法は、施工区域図情報に、検査装置91が通過する複数の座標ポイントである例えばウエイポイント(Way Point)P1~P7…Pnと、そのウエイポイントP1~P7…Pnを通過する通過方向についても情報を与える。すなわち、第3実施形態では、通過する順番を記憶するのに対し、この変形例では、通過する通過方向を記憶する。これにより、施工区域図情報には、作業者の作成したウエイポイントP1~P7…Pnと、これらウエイポイント間を補足するポイントを多数配置した一筆書きのような通過情報(軌跡)とが含まれることになる。
【0173】
この変形例に係る遮水シートの検査方法によれば、制御部33の行う走行制御を簡素にすることができる。
【0174】
図18はパッド電極23が下面に設けられた他の構成例による検査装置103の平面図、図19図18に示した検査装置103の側面図である。
検査装置103は、4つのオムニホイール99を四方に備えた略円形状の走行台車105とすることができる。また、この場合、パッド電極23は、略円形状のものを走行台車105の下面に吊下状に取り付けることができる。
【0175】
このような検査装置103によれば、走行台車105を中心軸回りに回転させることにより、直角方向の旋回を容易にして、段部71等での検査をより円滑に行うことができる。
【0176】
従って、本開示の遮水シートの検査装置及び遮水シートの検査方法によれば、遮水シート15の穿孔検知作業において、従来に比べ作業労力を軽減し、安全性を向上させながら、作業時間を短縮できる。
【0177】
なお、上述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0178】
例えば、検査装置としては、少なくとも走行台車、平板ブラシ電極や検査箇所の曲面に応じて湾曲した湾曲ブラシ電極などの第一電極、導電性ゴムからなる平板パッド電極やロール型電極などの第二電極、電源部、検知器を備える構成で良く、第一電極と第二電極, 電源部, 検知器を走行台車で移動させることが可能であり、遮水シート上を容易に移動でき、遮水シートの検査を容易に行える。また、これに位置情報取得部が具備されることで、走行台車の位置や検知位置などの情報を取得可能となる。
なお、第一電極21の構成としては、上述したブラシ構造以外に、ヘラ状や球面状などの接触面を備える形状としてもよく、第二電極23の構成としては、第一電極と同様のブラシ状や遮水シートの縁部を挟持するクリップ構造などとしてもよい。
【0179】
また、例えば、広大な面積を検査する際には、複数台の検査装置で進行することとしてもよい。この場合、各検査装置同士で情報を共有し、検査域を隈なく効率よく進行し、検査漏れを防ぐ。
また、お互いにGNSS情報に基づき、同一の移動(検査)範囲を巡るように走行させてもよい。
さらに、位置情報取得システムは、GNSSの他に、近隣に設置された基地局や基準局を使うこととしてもよい。
【符号の説明】
【0180】
11,91…検査装置
13…法面
15…遮水シート
19,93…走行台車
21…第一電極(ブラシ電極)
23…第二電極(パッド電極)
25…電源部
27…位置情報取得部
29…記憶部
31…検知器
33…制御部
35…走行装置
37…被覆面
45…ブラシ電極進退駆動部
47…アンテナ
49…ロープ
51…巻取り装置
53…平らな面
81…操縦装置
83…送受信装置
87…携帯型情報処理端末
89…表示装置
101…スキャン計測装置(周囲計測器)
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