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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】締固め地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/08 20060101AFI20220912BHJP
【FI】
E02D3/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019066825
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165206
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】深田 久
(72)【発明者】
【氏名】今給黎 健一
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-311854(JP,A)
【文献】特開平03-208908(JP,A)
【文献】特開2008-196249(JP,A)
【文献】特開平11-061820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に締固め改良域を形成して強固な地盤に改良する締固め地盤改良方法であって、
外周に螺旋状のスクリュー羽根を取り付け、かつ下部に土砂を締固める締固め装置を取り付けた地盤中に貫入可能な上下に向かうケーシングパイプを、正回転しながら地盤を掘削して地盤中の所定深度まで貫入するケーシングパイプ貫入工程と、
所定深度まで貫入したケーシングパイプを所定の長さ引抜くケーシングパイプ引抜き工程と、
ケーシングパイプを引抜いた後に、ケーシングパイプを逆回転して、スクリュー羽根でケーシングパイプを引抜いてできた空洞に、ケーシングパイプ貫入工程で掘削した土砂を充填する土砂充填工程と、
充填した土砂を締固め装置で締固める土砂締固め工程と、を有し、
ケーシングパイプ貫入工程後に、ケーシングパイプ引抜き工程と土砂充填工程と土砂締固め工程とを上方に向かって順次繰り返して、地盤中に締固め改良域を形成することを特徴とする締固め地盤改良方法。
【請求項2】
請求項1に記載された締固め地盤改良方法において、
土砂充填工程において、ケーシングパイプを上下移動しない状態にしてスクリュー羽根により土砂を充填する締固め地盤改良方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された締固め地盤改良方法において、
土砂充填工程において、土砂の充填をスクリュー羽根による土砂の移動量に基づいて算出した土砂の充填時間で行う締固め地盤改良方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された締固め地盤改良方法において、
土砂締固め工程において、ケーシングパイプの下部に取り付けられた、動力発生部と動力発生部により動く先端締固め部を有する締固め装置を用い、締固め装置の先端締固め部で、土砂を上方から衝打し又は押圧し又は打撃して締固めを行う締固め地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に締固め改良域を形成して強固な地盤に改良する締固め地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤を改良する締固め地盤改良方法は、地盤中に砂を排出し、排出した砂を圧縮することで、地盤中に拡径した砂杭を造成し、地盤を強固なものに改良する締固め砂杭工法(サンドコンパクションパイル工法)が知られている(特許文献1参照)。
締固め砂杭工法に用いる地盤改良装置は、前部にマストを立設した自走可能な施工機械を備えるとともに、立設したマストに沿って上下に向かう地盤中に貫入可能なケーシングパイプを備える。施工機械は、ケーシングパイプの地盤中への貫入又は地盤中からの引抜きを行う。ケーシングパイプは、円筒形の管で、その内部を砂の通る供給路にする。また、ケーシングパイプの下部には、排出口を設け、排出口から砂を地盤中に排出する。
【0003】
締固め砂杭工法は、施工機械でケーシングパイプを所定深度まで貫入し、貫入後、ケーシングパイプを少し引抜き、引抜いた跡にケーシングパイプの排出口から砂を排出する。地盤中に砂を排出した後、ケーシングパイプを打ち戻して排出した砂を圧縮する。このケーシングパイプの引抜きと、ケーシングパイプからの砂の排出と、ケーシングパイプの打ち戻しによる砂の圧縮を、上方に向かって繰り返し行うことで、地盤中に拡径した砂杭を造成して地盤を強固なものに改良することができる。
【0004】
しかしながら、従来の締固め砂杭工法では、地盤中に砂杭を造成するときに、地盤中に新たに砂を排出し、ケーシングパイプを打ち戻して排出した砂を圧縮して、地盤中に拡径した砂杭を造成するため、地盤中において水平方向に変位する側方変位が発生する。そのため、作業現場の近傍に、家屋やビルなどの既設構造物があると、地盤の側方変位によって既設構造物に損傷などの悪影響を及ぼす虞があり、家屋が密集した市街地では、従来の締固め砂杭工法による施工を行うことができないという問題がある。また、地盤中に砂を排出して拡径した砂杭を造成することで、地盤中での体積の増加が起こり、その上部の地表面が盛り上がることもあり、そのため、地表面の盛り上がりを除去する作業を行わなくてはならず、除去のための作業コストがかかることで、地盤改良の工費が高くなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-284146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、地盤を改良するときに、地盤中に発生する側方変位を低減し、既設構造物などに側方変位による悪影響が及ぶのを防止するとともに、地表面の盛り上がりを防止し、盛り上がりの除去作業を不要にして工費を削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、地盤中に締固め改良域を形成して強固な地盤に改良する締固め地盤改良方法であって、外周に螺旋状のスクリュー羽根を取り付け、かつ下部に土砂を締固める締固め装置を取り付けた地盤中に貫入可能な上下に向かうケーシングパイプを、正回転しながら地盤を掘削して地盤中の所定深度まで貫入するケーシングパイプ貫入工程と、所定深度まで貫入したケーシングパイプを所定の長さ引抜くケーシングパイプ引抜き工程と、ケーシングパイプを引抜いた後に、ケーシングパイプを逆回転して、スクリュー羽根でケーシングパイプを引抜いてできた空洞に、ケーシングパイプ貫入工程で掘削した土砂を充填する土砂充填工程と、充填した土砂を締固め装置で締固める土砂締固め工程と、を有し、ケーシングパイプ貫入工程後に、ケーシングパイプ引抜き工程と土砂充填工程と土砂締固め工程とを上方に向かって順次繰り返して、地盤中に締固め改良域を形成する締固め地盤改良方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ケーシングパイプを引抜いてできた空洞に貫入時に掘削した土砂を充填し、充填した土砂を締固め装置で上方から締固めて、地盤中に締固め改良域を形成するようにしたことで、周囲の地盤への影響が小さく、地盤中に発生する側方変位を大幅に低減させることができる。これにより、地盤の側方変位による既設構造物などに損傷などの悪影響を及ぼすのを防止でき、家屋が密集した市街地においても、地盤の改良を行うことができる。
また、地盤中に締固め改良域を形成して地盤を改良する際は、ケーシングパイプを貫入したときに掘削した土砂を締固めて締固め改良域を形成するため、地盤中に新たに土砂を投入することがないので、地盤中での体積の増加が起こらない。これにより、地表面が盛り上がるのを防止することができ、盛り上がりの除去作業が不要になることで、工費を大幅に削減することができる。また、廃棄物処分場において地盤を改良する場合、地盤の改良を行った場所の地表面を沈下させることができ、これにより、沈下した分だけ新たに廃棄物の埋設ができ、廃棄物処分場での廃棄物の減容化を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】地盤改良装置の側面図である。
図2】ケーシングパイプの下部の側面図である。
図3】ケーシングパイプの底面図である。
図4図4Aは、ケーシングパイプの下部に取り付けた締固め装置を示す拡大断面図、図4Bは、締固め装置が作動したときの状態を示す拡大断面図である。
図5】ケーシングパイプの正回転を説明する平面図である。
図6図6Aは、ケーシングパイプ貫入工程におけるケーシングパイプをセットした状態を示す図、図6Bは、ケーシングパイプ貫入工程におけるケーシングパイプ貫入の状態を示す図、図6Cは、ケーシングパイプ引抜き工程におけるケーシングパイプを引抜いた状態を示す図である。
図7図7Aは、土砂充填工程における土砂を充填している状態を示す図、図7Bは、土砂充填工程における土砂を充填した状態を示す図、図7Cは、土砂締固め工程における土砂を締固めた状態を示す図である。
図8図8Aは、ケーシングパイプ引抜き工程におけるケーシングパイプを引抜いた状態を示す図、図8Bは、土砂充填工程における土砂を充填している状態を示す図、図8Cは、土砂充填工程における土砂を充填した状態を示す図である。
図9図9Aは、土砂締固め工程における土砂を締固めた状態を示す図、図9Bは、地盤中に締固め改良域を形成した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の締固め地盤改良方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る締固め地盤改良方法(以下、単に本締固め地盤改良方法という)は、外周に螺旋状のスクリュー羽根を取り付けかつ下部に締固め装置を取り付けたケーシングパイプを備えた地盤改良装置を用いて、地盤中に締固め改良域を形成することで、地盤を強固なものに改良するものである。
【0011】
図1は、地盤改良装置の側面図である。図2は、ケーシングパイプの下部の側面図である。図3は、ケーシングパイプの底面図である。図4Aは、ケーシングパイプの下部に取り付けた締固め装置を示す拡大断面図であり、図4Bは、締固め装置が作動したときの状態を示す拡大断面図である。
(地盤改良装置)
締固め地盤改良方法に用いる地盤改良装置は、図1に示すように、自走可能な施工機械1を備え、施工機械1の前部にマスト2を立設し、立設したマスト2に沿って上下に向かう回転自在のケーシングパイプ3を備えている。ケーシングパイプ3は、地盤中に貫入可能となる。また、施工機械1のマスト2の上部には、ケーシングパイプ3を地盤中に貫入し又は地盤中から引抜くための回転装置4及び昇降装置5を取り付けている。
【0012】
ケーシングパイプ3は、図2図3に示すように、円筒形の管であり、下端に地盤を掘削する複数の掘削ビット6を取り付けている。また、ケーシングパイプ3の外周には、螺旋状のスクリュー羽根7を取り付けている。スクリュー羽根7の螺旋方向は、右上がり(図2中に矢印Yで示す)である。この螺旋方向が右上がりのものが、スクリュー羽根7においては一般的である。
【0013】
スクリュー羽根7は、ケーシングパイプ3の略下半分に取り付けている。例えば、ケーシングパイプ3の全長が10mの場合、下側の5mの部分にスクリュー羽根7を取り付けている(図1参照)。なお、スクリュー羽根7の取り付けは、これに限らず、例えば、ケーシングパイプ3の全長に取り付けてもよい。また、螺旋状のスクリュー羽根7は、ケーシングパイプ3の外周に連続するように取り付ける。なお、スクリュー羽根7は、前述のとおり、連続するようにしているが、これに限らず、その一部が途切れて断続するようにしてもよい。
【0014】
ケーシングパイプ3は、下部に締固め装置8を取り付けている。締固め装置8は、図4Aに示すように、動力発生部11と先端締固め部12を有し、動力発生部11により先端締固め部12を動かすことで、先端締固め部12でケーシングパイプ3の下方の土砂を上方から衝打して締固めを行う。衝打とは、衝撃(瞬間的な大きな力)を加えて打ちつけることである。締固め装置8は、ここでは、動力に電気を利用した装置である。
なお、締固め装置8は、電気を利用した装置に限らず、動力に油圧などを利用した他の装置でもよい。また、締固め装置8による土砂の締固めも、衝打に限らず、押圧あるいは打撃による締固めでもよい。
【0015】
動力発生部11は、例えば、ソレノイドである。動力発生部11は、コントローラ13と駆動部14とプランジャー15を有し、コントローラ13で駆動部14の駆動を制御して、駆動部14によりプランジャー15を動かすようにする。このコントローラ13、駆動部14、プランジャー15は、ケーシングパイプ3の内部に配置する。
また、先端締固め部12は、円筒状のスライドカバー16と締固め板17を有し、スライドカバー16と締固め板17をケーシングパイプ3の下端から下方に突出自在にしている。スライドカバー16は、円筒状で、ケーシングパイプ3の内周に沿って上下に移動するとともに、下部に締固め板17を固着している。締固め板17は、外周をケーシングパイプ3と同じ円形にするとともに、下面を円錐状にして、その下面が土砂を衝打する。
【0016】
この締固め装置8においては、図4Bに示すように、動力発生部11のプランジャー15により、先端締固め部12のスライドカバー16及び締固め板17がケーシングパイプ3の下端から下方に突出することで、締固め板17で土砂を上方から衝打する。これにより、ケーシングパイプ3の下方の土砂を締固めることができる。
【0017】
次に、本締固め地盤改良方法について説明する。
(本締固め地盤改良方法)
本締固め地盤改良方法は、ケーシングパイプ3を地盤中の所定深度まで貫入するケーシングパイプ貫入工程と、ケーシングパイプ3を所定の長さ引抜くケーシングパイプ引抜き工程と、ケーシングパイプ3を引抜いてできた空洞Cに土砂を充填する土砂充填工程と、充填した土砂を締固める土砂締固め工程とを有し、ケーシングパイプ貫入工程後に、ケーシングパイプ引抜き工程と土砂充填工程と土砂締固め工程とを上方に向かって順次繰り返して、地盤中に締固め改良域Kを形成する。このように、地盤中に締固め改良域Kを形成することで、地盤を強固なものに改良することができる。
【0018】
図5は、ケーシングパイプの正回転を説明する平面図である。図6Aは、ケーシングパイプ貫入工程におけるケーシングパイプ3をセットした状態を示す図、図6Bは、ケーシングパイプ貫入工程におけるケーシングパイプ3貫入の状態を示す図、図6Cは、ケーシングパイプ引抜き工程におけるケーシングパイプ3を引抜いた状態を示す図である。図7Aは、図7Bは、土砂充填工程における土砂を充填した状態を示す図、図7Cは、土砂締固め工程における土砂を締固めた状態を示す図である。図8Aは、ケーシングパイプ引抜き工程におけるケーシングパイプ3を引抜いた状態を示す図、図8Bは、土砂充填工程における土砂を充填している状態を示す図、図8Cは、土砂充填工程における土砂を充填した状態を示す図である。図9Aは、土砂締固め工程における土砂を締固めた状態を示す図、図9Bは、地盤中に締固め改良域Kを形成した状態を示す図である。
【0019】
(ケーシングパイプ貫入工程)
ケーシングパイプ貫入工程は、まず、図6Aに示すように、外周にスクリュー羽根7を取り付けたケーシングパイプ3を、所定位置(締固め改良域Kを形成する位置)にセットし、続いて、図6Bに示すように、所定位置にセットしたケーシングパイプ3を、図示していないが施工機械で、正回転しながら地盤中の所定深度、例えば、8~10mの深度まで貫入する。正回転は、図中に矢印R1で示す。ただし、所定深度は、これに限定されない。貫入時の地盤の掘削は、ケーシングパイプ3の下端に取り付けた複数の掘削ビット6で行う。
ここでのケーシングパイプ3の正回転とは、螺旋方向が右上がりのスクリュー羽根7を地盤中にねじ込む方向の回転で、即ち、図5に示すように、ケーシングパイプ3を上方から見たときの時計回り(右回り)の回転である。
【0020】
(ケーシングパイプ引抜き工程)
ケーシングパイプ引抜き工程は、ケーシングパイプ3を所定深度まで貫入した後に、つまりケーシングパイプ貫入工程後、図6Cに示すように、ケーシングパイプ3を、逆回転しながら所定の長さ引抜く。引抜く所定の長さは、例えば50cmである。ただし、引抜く所定の長さは、土質によって異なる。そのため、50cmに限られない。ケーシングパイプ3の逆回転は、正回転の逆の回転で、図中に矢印R2で示し、ケーシングパイプ3を上方から見たときの反時計回り(左回り)の回転である。
このように、ケーシングパイプ3を所定の長さ引抜くことで、ケーシングパイプ3を引抜いた跡(ケーシングパイプ3の下方)には空洞Cができる。
【0021】
(土砂充填工程)
土砂充填工程は、ケーシングパイプ3を引抜いた後に、つまりケーシングパイプ引抜き工程後、ケーシングパイプ3を引抜いてできた空洞Cに、ケーシングパイプ3外周のスクリュー羽根7により土砂を充填する。即ち、図7Aに示すように、ケーシングパイプ3を上下移動しない状態にして、ケーシングパイプ3を逆回転する。この土砂の充填時間T(ケーシングパイプ3を逆回転する時間)は、スクリュー羽根による土砂の移動量に基づいて算出するもので、後述する土砂移動時間の計算式を用いる。この土砂の充填時間Tは、例えば、1分程度である。
このように、ケーシングパイプ3を上下移動しない状態にして、逆回転することで、ケーシングパイプ3貫入時に掘削した土砂をスクリュー羽根7で下方に移動して、ケーシングパイプ3を引抜いてできた空洞C内に土砂を入れる。つまり、ケーシングパイプ3を上下移動しない状態にしてスクリュー羽根7により土砂を充填する。これにより、図7Bに示すように、空洞C内は土砂で埋まる。
【0022】
なお、ケーシングパイプ3外周のスクリュー羽根7により空洞Cに土砂を充填する際に、ケーシングパイプ3を上下移動しない状態にしていたが、これに限らず、ケーシングパイプ3を上下にわずかに移動するようにしてもよい。このときの上下の移動は、例えば、上への移動と下への移動を繰り返すものである。
【0023】
(土砂締固め工程)
土砂締固め工程は、ケーシングパイプ3を引抜いてできた空洞Cに土砂を充填した後に、つまり土砂充填工程後、充填した土砂を締固め装置8で締固める。即ち、ケーシングパイプ3の下部に取り付けた締固め装置8において、先端締固め部12の締固め板17を下方に突出することで、図7Cに示すように、突出する締固め板17で、空洞Cに充填した土砂を上方から衝打して、土砂を締固める。なお、土砂の締固めは、衝打による締固めに限らず、押圧あるいは打撃による締固めでもよい。
このように、空洞Cに充填した土砂を締固め装置8で締固めることで、地盤中に締固め改良域Kの一部を形成することができる。
【0024】
なお、土砂締固め工程において、土砂を締固め装置8で上方から締固めるとき、ケーシングパイプ3は、締固め装置8からの反動を受けて、持ち上がろうとするが、このとき、ケーシングパイプ3の外周に取り付けたスクリュー羽根7が地盤に食い込むことで、ケーシングパイプ3が持ち上がろうとするのを抑えることができる。これにより、ケーシングパイプ3を取り付けて支持する施工機械1については、大型の施工機械でなく、小型の施工機械を使用することができ、作業コストを安価にできる。
【0025】
その後、再び、図8Aに示すように、前述と同様のケーシングパイプ引抜き工程におけるケーシングパイプ3の引抜きを行う。このときの引抜く所定の長さも、50cmである。ただし、土砂締固め工程で締固められた土砂の上端を基準にし、ここから50cm引抜く。
次に、前述と同様、図8Bに示すように、土砂充填工程の空洞Cへの土砂の充填を行う。空洞Cに土砂を充填して、図8Cに示すように、空洞C内を土砂で埋める。続いて、図9Aに示すように、土砂締固め工程の充填した土砂の締固めを行う。これを上方に向かって繰り返す。
【0026】
以上のように、ケーシングパイプ貫入工程後に、ケーシングパイプ引抜き工程と土砂充填工程と土砂締固め工程とを上方に向かって順次繰り返して、図9Bに示すように、地表面近くの所定深度まで行う。これにより、地盤中に締固め改良域Kを形成することができ、地盤中に締固め改良域Kを形成することで、地盤を強固なものに改良することができる。
【0027】
また、本締固め地盤改良方法では、地盤中に締固め改良域Kを形成して地盤を改良する際、新たに土砂を地盤中に投入することなく、掘削した土砂を締固めるので、地盤中での体積の減少が起こり、その上部の地表面を沈下させることができる。これにより、例えば、ごみ処理場などの廃棄物処分場において地盤を改良する場合、地盤の改良を行った場所の地表面を沈下させることができ、地表面が沈下した分だけ新たに廃棄物(ごみ)を埋設することができる。つまり、廃棄物処分場での廃棄物の減容化(高密度化)を行うことができ、より多くの廃棄物を処理することができる。
即ち、本締固め地盤改良方法は、廃棄物処理場の延命化対策にも良好に用いることができる。
【0028】
次に、土砂充填工程において用いる土砂移動時間の計算式について説明する。
土砂移動時間の計算式は、スクリュー羽根7による土砂の移動量に基づいたもので、この土砂移動時間の計算式で、ケーシングパイプ3を逆回転して土砂を充填する時間、つまり、土砂の充填時間Tを算出する。
【0029】
土砂移動時間の計算式は、次のとおりである。スクリュー羽根7による1回転当たりの土砂の移動量V2を算出する(第1の式)。これとともに、ケーシングパイプ3を引抜いてできた空洞Cの体積Vaを算出する(第2の式)。第1の式で算出した土砂の移動量V2と第2の式で算出した空洞Cの体積Vaから空洞Cを埋めるためのスクリュー羽根7の回転数Nを算出する(第3の式)。第3の式で算出した空洞Cを埋めるための回転数Nから土砂の充填時間Tを算出する(第4の式)。
【0030】
即ち、スクリュー羽根7による1回転当たりの土砂の移動量V2(m/回)を算出する第1の式は、V2=e×S×(P-v/f)であり、ここで、eは、移動効率(土砂が鉛直方向に移動する位置エネルギーとケーシングパイプ3を1回転させるときのエネルギーの比)で、既往のデータから0.3に設定できる。また、Sは、スクリュー羽根断面積(m)、Pは、スクリュー羽根ピッチ(m)、vは、ケーシングパイプ貫入速度(m/分)、fは、ケーシングパイプ回転数(回/分)である。
【0031】
ケーシングパイプ3を引抜いてできた空洞Cの体積Va(m)を算出する第2の式は、Va=A×Uであり、ここで、Aは、ケーシングパイプ断面積(m)、Uは、ケーシングパイプ3の引抜き長さ(m)である。
空洞Cを埋めるためのスクリュー羽根7の回転数N(回)を算出する第3の式は、N=Va/V2である。
土砂の充填時間T(分)を算出する第4の式は、T=N/fである。
これにより、土砂充填工程での土砂の充填時間Tを算出することができる。
【0032】
次に、土砂移動時間の計算式を用いて土砂の充填時間Tを算出する場合の具体例について説明する。
ケーシングパイプ3の外径Dを、0.4m、スクリュー羽根7の外径Wを、0.5m、スクリュー羽根ピッチPを、0.5mとすると(図2参照)、ケーシングパイプ断面積Aが、0.126m、スクリュー羽根断面積Sが、0.071mとなる。また、ケーシングパイプ貫入速度vを、0.5m/分、ケーシングパイプ回転数fを6回/分、移動効率eを、0.3、ケーシングパイプ3の引抜き長さUを、0.5mとする。
【0033】
第1の式により、スクリュー羽根7による1回転当たりの土砂の移動量V2は、0.3×0.071×(0.5-0.5/6)=0.00888m/回である。
第2の式により、ケーシングパイプ3を引抜いてできた空洞Cの体積Vaは、0.126×0.5=0.063mである。
第3の式により、空洞Cを埋めるためのスクリュー羽根7の回転数Nは、0.063/0.00888=7.1回である。
第4の式により、土砂の充填時間Tは、7.1/6=1.18分である。つまり、土砂充填工程での土砂の充填時間Tは、1分11秒である。
【0034】
このように、土砂充填工程において、スクリュー羽根7による土砂の移動量に基づいた土砂移動時間の計算式で土砂の充填時間Tを算出し、この算出した時間に則って土砂を充填することで、合理的につまり必要最低限の時間で土砂の充填を行うことができ、ここでの作業時間(土砂を充填する時間)の短縮を図ることができる。
【0035】
以上説明したように、本締固め地盤改良方法によれば、ケーシングパイプ3を引抜いてできた空洞Cに貫入時に掘削した土砂を充填し、充填した土砂を締固め装置8で上方から締固めて、地盤中に締固め改良域Kを形成するようにしたことで、従来の締固め砂杭工法のように地盤中に新たに砂を排出して拡径した砂杭を造成するのと異なり、周囲の地盤への影響が小さく、地盤中に発生する側方変位を大幅に低減させることができる。これにより、地盤の側方変位による既設構造物などに損傷などの悪影響を及ぼすのを防止でき、家屋が密集した市街地においても、地盤の改良を行うことができる。
【0036】
また、地盤中に締固め改良域Kを形成して地盤を改良する際は、ケーシングパイプ3を貫入したときに掘削した土砂を締固めて締固め改良域Kを形成するため、新たに土砂を地盤中に投入することがないので、地盤中での体積の増加が起こらない。これにより、地表面が盛り上がるのを防止することができ、盛り上がりの除去作業が不要になることで、工費を大幅に削減することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…施工機械、2…マスト、3…ケーシングパイプ、4…回転装置、5…昇降装置、6…掘削ビット、7…スクリュー羽根、8…締固め装置、11…動力発生部、12…先端締固め部、13…コントローラ、14…駆動部、15…プランジャー、16…スライドカバー、17…締固め板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9