(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】ギヤボックスの防水構造および減速機付きモータ
(51)【国際特許分類】
F16H 57/029 20120101AFI20220912BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20220912BHJP
H02K 5/10 20060101ALI20220912BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
F16H57/029
F16J15/10 A
F16J15/10 D
H02K5/10 Z
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2019079999
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】植西 英史
(72)【発明者】
【氏名】村井 剛史
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-268841(JP,A)
【文献】実開昭54-130145(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/029
F16J 15/10
H02K 5/10
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタが嵌合されるギヤボックスの防水構造であって、
前記コネクタ及び前記ギヤボックスの一方に設けられた凹部と、
前記コネクタ及び前記ギヤボックスの他方に設けられ、前記凹部に内嵌する凸部と、
前記凸部を囲んで設けられ、前記凸部の突出方向に交差する方向に延在する載置面と、
前記凸部を囲む環状をなし、前記凹部及び前記凸部の嵌合前の状態で前記凸部の側面及び前記載置面の双方に接触するように装着されるパッキンと、
前記載置面の外周端部において前記突出方向と同方向に突設され、前記パッキンと接触する角部を有するリブと、を備え、
前記リブの突出高さは、前記パッキンの高さ寸法の1/4以下に設定されている
ことを特徴とする、ギヤボックスの防水構造。
【請求項2】
前記リブの突出高さは、前記パッキンの高さ寸法の1/6以上に設定されている
ことを特徴とする、請求項1記載のギヤボックスの防水構造。
【請求項3】
前記リブの幅は、前記パッキンの幅の2/5以下に設定されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のギヤボックスの防水構造。
【請求項4】
前記リブの幅は、前記パッキンの幅の1/4以上に設定されている
ことを特徴とする、請求項3記載のギヤボックスの防水構造。
【請求項5】
前記リブの前記角部に角Rが設けられている
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のギヤボックスの防水構造。
【請求項6】
前記リブは、前記載置面の前記外周端部に沿って間隔をあけて複数配置されている
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のギヤボックスの防水構造。
【請求項7】
ロータ及びステータを備えたモータ部と、
前記モータ部の回転が伝達されるウォーム及び前記ウォームと噛み合うウォームホイールを備えた減速機構と、を具備し、
請求項1~6のいずれか1項に記載のギヤボックスの防水構造が、前記減速機構を収容するギヤボックスと当該ギヤボックスに嵌合されるコネクタとの嵌合部分に適用されている
ことを特徴とする、減速機付きモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタが嵌合されるギヤボックスの防水構造、および、この防水構造が適用された減速機付きモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気密性や防水性が要求される製品では、部品同士の接続箇所にパッキンやOリングといったシール部材が挟持されることで、外部からの異物の混入や水分の浸入等を防止している。これは、減速機付きモータにおいても同様であり、例えば特許文献1では、コネクタ部に環状の防水ゴムを装着し、このコネクタ部を、減速機構が内蔵される減速ハウジングの延出部に挿設することで浸水を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
減速機構が内蔵されるギヤボックス(ハウジング,ケース)とコネクタとの接続箇所をシールする場合には、上記の特許文献1のように、コネクタの凸部の周囲にパッキンを装着し、ギヤボックスの凹部にこの凸部を嵌合する組立方法が考えられる。しかしながら、この組立時のパッキンの姿勢によっては、パッキンが捻じれてしまうことがある。
【0005】
この組立工程が手動で行われる場合には、パッキンの捻じれを直す作業が必要となり、作業性の悪化や煩雑化を招く。また、この組立工程が自動機によって自動で行われる場合には、パッキンの捻じれの有無を検知するセンサや、パッキンの捻じれ状態を解消するための装置等が必要となり、装置構成の複雑化を招く。なお、パッキンが捻じれた状態のまま挟持されてしまうと、パッキンが所望の圧縮率で挟持されず、防水性能が不十分となるおそれがある。
【0006】
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、組立時のパッキンの捻じれを防止し、防水性能を確保することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示するギヤボックスの防水構造は、コネクタが嵌合されるギヤボックスの防水構造であって、前記コネクタ及び前記ギヤボックスの一方に設けられた凹部と、前記コネクタ及び前記ギヤボックスの他方に設けられ、前記凹部に内嵌する凸部と、前記凸部を囲んで設けられ、前記凸部の突出方向に交差する方向に延在する載置面と、前記凸部を囲む環状をなし、前記凹部及び前記凸部の嵌合前の状態で前記凸部の側面及び前記載置面の双方に接触するように装着されるパッキンと、前記載置面の外周端部において前記突出方向と同方向に突設され、前記パッキンと接触する角部を有するリブと、を備える。前記リブの突出高さは、前記パッキンの高さ寸法の1/4以下に設定されている。
【0008】
(2)前記リブの突出高さは、前記パッキンの高さ寸法の1/6以上に設定されていることが好ましい。
(3)前記リブの幅は、前記パッキンの幅の2/5以下に設定されていることが好ましい。
(4)前記リブの幅は、前記パッキンの幅の1/4以上に設定されていることが好ましい。
(5)前記リブの前記角部に角Rが設けられていることが好ましい。
(6)前記リブは、前記載置面の前記外周端部に沿って間隔をあけて複数配置されていることが好ましい。
【0009】
(7)ここで開示する減速機付きモータは、ロータ及びステータを備えたモータ部と、前記モータ部の回転が伝達されるウォーム及び前記ウォームと噛み合うウォームホイールを備えた減速機構と、を具備し、上記(1)~(6)のいずれか一つに記載のギヤボックスの防水構造が、減速機構を収容するギヤボックスと当該ギヤボックスに嵌合されるコネクタとの嵌合部分に適用されている。
【発明の効果】
【0010】
開示の内容によれば、ギヤボックスとコネクタとの組立時のパッキンの捻じれも防止できるため、防水性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る減速機付きモータの平面図であり、コネクタがギヤボックスに嵌合される前の状態を示す。
【
図2】実施形態に係る防水構造を説明するためのコネクタの斜視図である。
【
図3】
図2のコネクタにパッキンを装着した状態を示す斜視図である。
【
図4】ギヤボックスの嵌合孔部内にコネクタの嵌合部を途中まで挿入した状態を、挿入方向に沿って切断した断面図である。
【
図5】凸部にパッキンが装着された状態を示す断面図(
図4に対し上下逆転させた断面図)であり、リブの形状とパッキンの形状との関係を示す。
【
図6】凸部にパッキンを装着する過程を説明するための側面図である。
【
図7】凸部及び凹部の嵌合状態において、
図3のパッキンに作用する圧力を解析した結果を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、実施形態としてのギヤボックスの防水構造について、減速機付きモータに適用された例を挙げて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
[1.構成]
[1-1.減速機付きモータ]
図1に示すように、本実施形態に係る減速機付きモータ1(以下「モータ1」という)は、例えば車両のパワーウィンドウシステムに適用される。モータ1は、出力を発生させるモータ部2と、モータ部2の回転を減速させる減速機構3とを備える。本実施形態の防水構造は、減速機構3を収容するギヤボックス4と、このギヤボックス4に嵌合されるコネクタ5との嵌合部分に適用される。なお、
図1には、コネクタ5がギヤボックス4に嵌合(組立)される前の状態を示す。
【0014】
モータ部2は、例えばブラシ付きDCモータであって、ハウジング2Dに内蔵されたロータ2B及びステータ2Cを有する。モータ部2の回転軸2Aは、一端がハウジング2Dに軸支され、他端がハウジング2Dに結合されたギヤボックス4内に延設される。なお、ハウジング2Dは有底筒状をなし、開口部(図示略)の周囲に設けられたフランジ部2fがギヤボックス4の締結部4aに締結されることでギヤボックス4に結合される。
【0015】
減速機構3は、モータ部2の回転が伝達されるウォーム3Aと、ウォーム3Aと噛み合う歯部を持つウォームホイール3Bとを有する。ウォーム3Aは、回転軸2Aの他端に固定されて回転軸2Aと一体回転するねじ歯車である。ウォームホイール3Bは、ウォーム3Aと噛み合うはすば歯車である。ウォームホイール3Bには、被駆動部材に設けられたギヤと噛合することで被駆動部材を駆動する出力ギヤ(何れも図示略)が連結される。被駆動部材としては、例えばウィンドウレギュレータが挙げられる。モータ1は、回転軸2Aの回転を減速機構3によって減速することでモータ部2の出力を増幅し、高出力化した回転駆動力を出力ギヤから出力する。
【0016】
ギヤボックス4は、減速機構3を収容するケースであり、ウォーム3Aを収容する部分と、ウォームホイール3Bを収容する部分と、モータ部2が結合される部分と、コネクタ5が嵌合される部分とを有する。コネクタ5は、外部からモータ部2へ給電する機能及びモータ部2の検出信号を出力する機能を持つ。本実施形態のコネクタ5は、ギヤボックス4の嵌合孔部4bに嵌合される嵌合部5aに突設された一対の端子5bを有する。なお、コネクタ5は、
図1中に白抜き矢印で示すように、嵌合部5aの基端部に設けられたフランジ部5cが嵌合孔部4bの周囲の端面に接する位置まで挿入されるとギヤボックス4に嵌合する。
【0017】
[1-2.防水構造]
図2及び
図3は、コネクタ5の嵌合部5a周辺を拡大して示す斜視図であり、
図2はパッキン30が装着される前のコネクタ5を示し、
図3はパッキン30が装着された状態のコネクタ5を示す。パッキン30は、ギヤボックス4とコネクタ5との嵌合部分をシールする部材であり、環状の外形状を有する。本実施形態のパッキン30は、
図5に示すように、周方向に直交する方向に切断した縦断面形状が角丸六角形状となっている。なお、
図5は凸部10にパッキン30が装着された状態を示す断面図である。
【0018】
図2に示すように、コネクタ5の嵌合部5aは、嵌合孔部4bに挿入される方向(以下「挿入方向」という)の中途に形成された段差面13(載置面)を有し、この段差面13を境に先端側の外形状が一回り小さくなっている。以下、嵌合部5aのうち段差面13よりも先端側の部分を凸部10と呼び、凸部10の先端側に向かう方向を「突出方向」という。突出方向は、上記の挿入方向と同一方向である。
図4は、嵌合孔部4b内に嵌合部5aを途中まで挿入した状態を挿入方向に沿って切断した断面図である。
図4に示すように、凸部10は、ギヤボックス4に設けられた凹部20に内嵌する。
【0019】
図2に示すように、本実施形態の凸部10はブロック形状であり、突出方向に延在する側面11と突出方向に直交する方向に延在する頂面12とを有する。凸部10は、突出方向からみて略矩形状をなす。上記の端子5bは、この頂面12から突設されている。段差面13は、凸部10を囲んで設けられ、突出方向に交差する方向に延在する。本実施形態のコネクタ5では、頂面12と段差面13とが平行な面として設けられている。
図3に示すように、段差面13はパッキン30が載置される面として機能する。つまり、パッキン30は、凸部10を囲むように装着され、凸部10の側面11及び段差面13の双方に接触して配置される。
【0020】
図4に示すように、凹部20はギヤボックス4の嵌合孔部4bの一部として設けられる。凹部20には、凸部10が嵌合したときに頂面12を受ける第一受け面22と段差面13に対向する第二受け面23とが設けられる。第一受け面22及び第二受け面23は互いに平行であり、挿入方向に直交する方向に延在する。すなわち、凹部20の内側面21には段差が形成されている。第二受け面23は、段差面13とともにパッキン30を挟持して圧縮する面である。
【0021】
ところで、パッキン30が装着された凸部10を、ギヤボックス4の凹部20に内嵌して組み立てる場合、パッキン30が捻じれてしまうことがある。これは、パッキン30の段差面13側とは逆側の頂上部分(本実施形態では、
図5中に示す角丸六角形の角部K)から側面11に下ろした仮想的な垂線が、凸部10の頂面12に対し完全な平行とはならないからである。すなわち、角部Kからずれた箇所が段差面13と第二受け面23とによって凸部10の突出方向に押され、パッキン30に対して周方向に回転力が発生することで、パッキン30に捻じれが生じうる。この捻じれは、パッキン30が凸部10の側面11から離隔した状態であるほど生じやすい。
【0022】
これに対し、本実施形態の防水構造では、組立時におけるパッキン30の捻じれを防止するためのリブ14が設けられている。
図2及び
図3に示すように、リブ14は、段差面13の外周端部13aにおいて突出方向と同方向に突設された突起である。本実施形態のコネクタ5には、外周端部13aに沿って間隔をあけて複数のリブ14が突設される。本実施形態の凸部10の外周端部13aは、長短二つずつの辺から構成されており、短い方の辺には二つのリブ14が互いに間隔をあけて設けられ、長い方の辺には三つのリブ14が互いに間隔をあけて設けられる。
【0023】
図2及び
図5に示すように、各リブ14は、凸部10の周方向に長い略直方体形状をなし、パッキン30と接触する角部14aを有する。角部14aは、側面11側を向き側面11と平行な平面と頂面12と平行な面とで形成される。本実施形態のリブ14の角部14aには角Rが設けられる。なお、リブ14における、側面11と平行な平面であって側面11側を向く平面とは逆側の平面は、嵌合部5aの側面と面一に設けられる。
【0024】
ここで、凸部10にパッキン30を装着する過程を、
図6を用いて説明する。
図6中の左側の側面図は、パッキン30が段差面13に接触する前の状態を示し、
図6中右側の側面図はパッキン30が凸部10に装着された状態(パッキン30の装着完了状態)を示す。図中左側に示すように、環状のパッキン30は、頂面12側から凸部10に嵌められ、凸部10の四つの角で略90度に屈曲した状態とされるが、段差面13の近くでリブ14にかかり、外側への膨らみが防止される。そして、図中右側に示すように、装着完了状態ではパッキン30の外側の端部の位置がリブ14により規定され、パッキン30は段差面13上に載置された状態となる。なお、段差面13のうちパッキン30と面接触して防水機能を発揮する面を防水面13bと呼ぶ。防水面13bは、段差面13のうち外周端部13aを除いた面である。
【0025】
以下、
図5に示すように、リブ14について、突出方向の寸法を「リブ高さHr」といい、突出方向に直交する方向であって段差面13を横断する方向(幅方向)の寸法を「リブ幅Wr」という。同様に、パッキン30について、突出方向の寸法(高さ寸法)を「パッキン高さHp」といい、リブ14の幅Wrの方向と同方向(幅方向)の寸法を「パッキン幅Wp」という。また、
図2に示すように、リブ14における、外周端部13aの周方向に沿う方向(突出方向及び幅方向の両方に直交する方向)の寸法を「リブ長さLr」という。
【0026】
凸部10及び凹部20の嵌合状態では、凸部10の側面11及び段差面13と凹部20の内側面21及び第二受け面23とで囲まれる空間(以下「圧縮空間」という)が形成されるが、この圧縮空間の容積Vaは凸部10及び凹部20の形状で決まる一定値である。また、パッキン30の体積Vpもその形状で決まるため、一定値である。そのため、パッキン30の体積Vpと全てのリブ14の体積Vrとの和が圧縮空間の容積Va以下でなければ、パッキン30が圧縮空間内に収まらない。したがって、リブ14の大きさ,形状,個数は、リブ14の全ての体積Vrが、圧縮空間の容積Vaからパッキン30の体積Vpを減じた値以下(Vr≦Va-Vp)となるように設定される。
【0027】
このような観点から、本実施形態では、
図5に示すようにリブ高さHr(突出高さ)がパッキン高さHpの1/4以下に設定される。言い換えると、リブ高さHrの上限値は、パッキン高さHpの半分(Hp/2)の半分である。これにより、圧縮空間の容積Vaに対する、パッキン30の体積Vp及びリブ14の体積Vrの和の割合(以下「占有率」という)を、100%以下に設定しやすくなる。
【0028】
また、本実施形態のリブ高さHrは、パッキン高さHpの1/6以上に設定される。言い換えると、リブ高さHrの下限値は、パッキン高さHpの半分(Hp/2)の1/3である。これは、リブ高さHrが低いほどパッキン30を側面11側に押さえつける能力(押さえつけ力,引っ掛かり)が低くなるためである。すなわち、上述したように、リブ14の役割は、凸部10に装着されたパッキン30の捻じれを防止することであるため、この役割を発揮しうる高さに設定されている必要があるからである。
【0029】
図7は、リブ高さHrがパッキン高さHpの1/6以上かつ1/4以下に設定され、凸部10及び凹部20が嵌合状態とされたときに、パッキン30に作用する圧力を解析した結果である。
図7の解析は、リブ14の公差が、防水性能が悪くなる方向での公差上限又は公差下限に設定された状態(最悪状態)で実施されている。具体的には、リブ高さHrが公差上限に設定され、リブ幅Wrが公差上限に設定され、パッキン幅Wpが公差下限に設定された状態で解析している。なお、
図7中のドット模様はパッキン30に作用する圧力の高さを示し、ドット模様が濃い部分ほど圧力が高いことを表現している。
【0030】
図7に示すように、パッキン30の圧力は、防水面13bに接触する部分及びリブ14に接触する部分で高くなり、前者のほうが後者よりも全体的に高くなった。防水面13bと接触する部分の圧力をパッキン30の周方向(長手方向)で比較すると、最も圧力の低い箇所で1.54MPaとなり、最も圧力の高い箇所で1.71MPaとなった。つまり、リブ高さHrをパッキン高さHpの1/6以上かつ1/4以下に設定した場合には、パッキン30の防水面13bとの接触面(以下「防水接触面」という)に作用する圧力の差(最大圧と最低圧との差)が0.2MPa以下となることが解析の結果からわかった。したがって、リブ高さHrを上記の範囲以内に設定することで、パッキン30の周方向の圧力差が小さく、良好な防水構造が得られることが判明した。
【0031】
図5に示すように、本実施形態の防水構造では、リブ幅Wrがパッキン幅Wpの2/5以下に設定される。上記の通り、段差面13は、リブ14が突設されうる外周端部13aとパッキン30と面接触する防水面13bとから構成されるため、段差面13の幅は、外周端部13aの幅(すなわちリブ幅Wr)と防水面13bの幅Wfとの和と等しい。したがって、リブ幅Wrをパッキン幅Wpの2/5以下に設定することで、防水面13bの幅Wfがパッキン幅Wpの半分よりも大きくなるため、防水性が確保される。
【0032】
また、本実施形態のリブ幅Wrは、パッキン幅Wpの1/4以上に設定される。これは、リブ幅Wrが小さいほど防水面13bの幅Wfは大きくなるが、リブ幅Wrが小さすぎるとパッキン30を側面11側に押さえつける能力(押さえつけ力,引っ掛かり)が低くなるためである。すなわち、上述したように、リブ14の役割は、凸部10に装着されたパッキン30の捻じれを防止することであるため、この役割を発揮しうる幅に設定されている必要があるからである。
【0033】
なお、本実施形態では、複数のリブ14のリブ高さHrは全て同一に設定され、複数のリブ14のリブ幅Wrも全て同一に設定される。一方、リブ長さLrは、全てのリブ14において同一でなくてもよい。例えば、
図2に示すように、凸部10の短辺側に配置される二つのリブ14を、凸部10の長辺側に配置される三つのリブ14よりも長く設定してもよい。リブ長さLrは、外周端部13aに沿って島状に配置されるリブ14の間隔や個数と占有率との関係から適宜設定可能である。
【0034】
[2.効果]
(1)上述した防水構造によれば、リブ14によって凸部10に装着されたパッキン30の装着状態を適正に保持できる。すなわち、凸部10と凹部20とを嵌合する際に、パッキン30の角部Kからずれた箇所が段差面13と第二受け面23とによって圧縮されることを防止でき、パッキン30の捻じれを防止できる。また、仮に、パッキン30の外側面(パッキン30における側面11と接触する面とは逆側の面)が凹部20の内側面21に接触してパッキン30にせん断方向の力が作用したとしても、リブ14の角部14aによってパッキン30の捻じれを防止できる。
【0035】
また、リブ高さHrがパッキン高さHpの1/4以下に設定されるため、占有率を100%以下に抑えることができる。つまり、上述した防水構造によれば、凸部10に装着されたパッキン30が、ギヤボックス4とコネクタ5との組立時に捻じれることを防止できるため、防水性能を確保できる。なお、上述したリブ14があることで、凸部10に装着されたパッキン30が外側へ広がる挙動も防止でき、組立前の状態でパッキン30の姿勢を適切に保持できる。
【0036】
(2)上述した防水構造では、リブ高さHrがパッキン高さHpの1/6以上に設定されるため、
図7を参照して上述したように、パッキン30の防水接触面に作用する圧力の差(最大圧と最低圧との差)を0.2MPa以下に抑えることができる。つまり、上述した防水構造によれば、パッキン30の防水接触面に作用する圧力の差を周方向において小さくすることができ、どの位置でも略同等の圧力が作用するため、良好な防水性能を確保できる。
【0037】
(3)上述した防水構造では、リブ幅Wrがパッキン幅Wpの2/5以下に設定されるため、段差面13に設けられる防水面13bを十分確保でき、防水性能を確保できる。
(4)上述した防水構造では、リブ幅Wrがパッキン幅Wpの1/4以上に設定されるため、パッキン30の捻じれを防止できる。これによっても防水性能を確保できる。
【0038】
(5)また、上述したリブ14の角部14aには角Rが設けられているため、広い面でパッキン30に接触でき、パッキン30の捻じれを効果的に防止できる。
(6)上述したリブ14は、段差面13の外周端部13aに島状に配置される。このように、リブ14を外周端部13aの全体(全周)に設けるのではなく、間隔をあけて複数箇所に配置することで、リブ14の体積Vrを小さくすることができる。したがって、リブ14が圧縮空間内に占める割合を抑制しつつ、パッキン30の外側への広がりや組立時の捻じれを防止できる。
【0039】
(7)上述したモータ1によれば、減速機構13を収容するギヤボックス4とコネクタ5との嵌合部分に上述した防水構造が適用されるため、ギヤボックス4とコネクタ5との組立時におけるパッキン30の捻じれを防止でき、嵌合部分の防水性能を確保することができる。
【0040】
[3.その他]
上述した防水構造は一例であって、上述したものに限られない。例えば、上述したリブ14は、凸部10の長辺側に三つ配置され、凸部10の短辺側に二つ配置されているが、凸部10の四つの角を除いた部分に一つずつリブを設けてもよい。この場合には、各辺の中央にリブを配置すれば、リブの体積を小さくしつつ、効果的にパッキン30の膨らみ及び捻じれを防止できる。
【0041】
リブ14の角部14aに角Rが設けられていなくてもよい。この場合、リブ14の角部がパッキン30に食い込みやすくなるので、パッキン30の姿勢を保持しやすくすることができる。なお、上述した防水構造では、複数のリブ14のリブ高さHrが全て同一に設定され、複数のリブ14のリブ幅Wrも全て同一に設定される場合を例示したが、リブ高さHr,リブ幅Wrが位置によって異なる値に設定されていてもよい。
【0042】
例えば、パッキン30が膨らみやすい凸部10の長辺側に配置されるリブを、短辺側に配置されるリブよりも高くしてもよいし、防水面13bをより広く確保するために、短辺側のリブを長辺側のリブよりも薄幅にしてもよい。このように、位置によってリブの大きさを変える場合には、例えば、リブ幅Wrがパッキン幅Wpの2/5以上であるリブが存在していてもよいし、リブ高さがパッキン高さHpの1/6以上かつ1/4以下でないリブが存在していてもよい。
【0043】
上述した防水構造では、コネクタ5の嵌合部5aに段差面13が形成され、先端側に凸部10が設けられているが、コネクタ5の形状は上述したものでなくてもよい。例えば、パッキン30を載置する面が段差面13として形成されていなくてもよい。また、凹凸が上述した構成と逆であってもよい。すなわち、ギヤボックスに凸部が設けられ、コネクタに凹部が設けられている場合であっても、上述した防水構造と同様の構造を適用することができる。
【0044】
なお、上述したパッキン30の形状は一例であり、縦断面形状が角丸六角形状ではなく、例えば円形や楕円形や多角形であってもよい。また、上述したモータ1の構成は一例であって、モータ部2及び減速機構3の構成が上述したものでなくてもよい。また、ギヤボックス4に対するコネクタ5の位置も、
図1に示すものに限られない。
【符号の説明】
【0045】
1 モータ(減速機付きモータ)
2 モータ部
2B ロータ
2C ステータ
3 減速機構
3A ウォーム
3B ウォームホイール
4 ギヤボックス
5 コネクタ
10 凸部
11 側面
12 頂面
13 段差面(載置面)
13a 外周端部
13b 防水面
14 リブ
14a 角部
20 凹部
30 パッキン
Hp パッキンの高さ
Hr リブの高さ(リブの突出高さ)
Wp パッキンの幅
Wr リブの幅