(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】切削工具の配向の推定
(51)【国際特許分類】
B23B 25/06 20060101AFI20220912BHJP
B23B 27/00 20060101ALI20220912BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20220912BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20220912BHJP
B23Q 17/12 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B23B25/06
B23B27/00 D
B23Q17/00 D
B23Q17/22 D
B23Q17/12
(21)【出願番号】P 2019513445
(86)(22)【出願日】2017-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2017070911
(87)【国際公開番号】W WO2018046281
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-06-18
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スタンダール, オドヴァル
(72)【発明者】
【氏名】チョムスランド, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンセン, オレ ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】オストリング, ダン
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン, トルモド
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第630722(DE,C1)
【文献】特開2013-066999(JP,A)
【文献】東ドイツ国経済特許第213146(DD,A1)
【文献】登録実用新案第3161534(JP,U)
【文献】特開2010-064880(JP,A)
【文献】特表2001-526967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0170397(US,A1)
【文献】特開平10-055208(JP,A)
【文献】特開平10-109204(JP,A)
【文献】特開2011-041985(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0092148(KR,A)
【文献】特開2007-276100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00 - 29/34
B23Q 15/00 - 15/28
B23Q 17/00 - 23/00
G05B 19/18 - 19/46
G01B 21/00 - 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターニングにおいて使用するための切削工具(100)であって、前記切削工具は、
軸線(111)に沿って延在する工具バー(110)と、
前記工具バーに位置付けされている切削ヘッド(120)と、
前記工具バーまたは前記切削ヘッドと一体化されている少なくとも1つのセンサー(130)と
を含み、
前記少なくとも1つのセンサーは、前記軸線に関する前記切削工具の回転角度の推定を可能にする出力を提供するように配置され且つ方向付けられており、また、前記出力を提供するタイプのものであり、
前記少なくとも1つのセンサーは、前記切削工具が切削に用いられていないときに、少なくとも2つの方向(131、132)の加速度を測定するように構成された加速度計を備え
、
前記少なくとも1つのセンサーは、前記工具バーまたは前記切削ヘッドの内部に配置されている、
切削工具(100)。
【請求項2】
請求項
1に記載の切削工具を含むターニングマシン(200)であって、前記ターニングマシンは、前記切削工具が切削に用いられていないときに、前記少なくとも1つのセンサーによって提供される前記出力を使用して、前記軸線に関する前記切削工具の回転角度を推定するように適合されている、ターニングマシン(200)。
【請求項3】
前記推定された角度をユーザーに示すように構成されているユーザーインターフェース(260)をさらに含む、請求項
2に記載のターニングマシン。
【請求項4】
前記推定された角度を示す信号伝達を提供するように構成されている通信インターフェース(240)を含む、請求項
2または
3に記載のターニングマシン。
【請求項5】
前記少なくとも1つのセンサーによって提供される前記出力を使用して、前記軸線に関する前記切削工具の前記回転角度を推定するように構成されている処理セクション(210)をさらに含む、請求項
2から
4のいずれか一項に記載のターニングマシン。
【請求項6】
ターニングにおいて使用するための切削工具(100)を提供すること(440)であって、前記切削工具は、軸線(111)に沿って延在する工具バー(110)、前記工具バーに位置付けされている切削ヘッド(120)、および、前記工具バーまたは前記切削ヘッドと一体化されている少なくとも1つのセンサー(130)を含む、前記切削工具(100)を提供すること(440)と、
前記少なくとも1つのセンサーによる出力を提供すること(450)と、
前記少なくとも1つのセンサーによって提供される前記出力に基づいて、前記軸線に関する前記切削工具の回転角度を推定すること(460)と
を含み、
前記少なくとも1つのセンサーは、加速度計を備え、
前記工具バーまたは前記切削ヘッドの内部に配置されており、
前記少なくとも1つのセンサーによる出力を提供することは、前記切削工具が切削に用いられていないときに、少なくとも2つの方向(131、132)の加速度を測定することを含む、
方法(400)。
【請求項7】
前記推定された角度をユーザーに示すこと(470)をさらに含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記軸線に関する基準回転角度を取得することと、
前記推定された角度と前記基準回転角度との間の関係をユーザーに示すことと
を含む、請求項
6または
7に記載の方法。
【請求項9】
前記基準回転角度は、複数の利用可能な基準回転角度の中から選択された基準回転角度である、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサーは、前記切削工具に対して少なくとも2つの固定された方向の加速度を測定するように構成された加速度計を含み、前記方法は、前記出力を提供する前に、
前記軸線に関する基準回転角度に前記切削工具を配置すること(410)と、
前記加速度計を使用して、前記少なくとも2つの固定された方向への基準加速度を測定すること(420)と、
測定された前記基準加速度に基づいて、前記切削工具に対する前記加速度計のうちの少なくとも1つの装着角度を示すパラメーター値をコンピューター計算すること(430)と、
前記軸線に関する新しい回転角度に前記切削工具を配置すること(440)と
を含み、
前記軸線に関する前記切削工具の前記回転角度を推定することは、
前記少なくとも1つのセンサーによって提供される前記出力に基づいて、および、前記パラメーター値に基づいて、前記軸線に関する前記切削工具の回転角度を推定すること
を含む、請求項
6から
9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ターニングにおいて使用するための切削工具に関し、とりわけ、そのような切削工具の配向の推定に関する。
【背景技術】
【0002】
金属切削のためのマシン、たとえば、工作機械など、特に、(旋盤などのような)ターニングマシンにおいて、典型的に、ワークピースを回転させることによって、ならびに、軸線方向および/または半径方向にワークピースに向けて切削工具を移動させることによって、材料が、ワークピースの外部表面または内部表面から除去される(または、切削される)。切削工具の切れ刃によって提供される切削作用が、ワークピースの内部表面の上に(すなわち、ワークピースの孔部の内側から)実施されるケースは、ボーリングと称される場合がある。切削工具の切れ刃の位置および配向の知識は、高精度の機械加工を提供するために重要である。いくつかのケースでは、切れ刃の位置または配向における小さい偏差でも、機械加工精度を許容可能なレベルの下へ低減させることが可能である。切削工具の切れ刃は、切削工具の切削ヘッドに装着されるインサートの切れ刃であることが多い。切れ刃の配向は、たとえば、切削工具の配向の知識を介して決定され得るか、または、切れ刃自身の配向を測定することによって決定され得る。いくつかの切削工具は、平面的な表面を有しており、切削工具が正しい配向に装着されたことをチェックするために、水準器がその上に設置され得る。しかし、これは、一方の手が水準器を適切な位置に保持した状態で、ユーザーが、もう一方の手によって切削工具の配向を調節することを必要とする可能性がある。一般的に、切削工具の適正な配向を確立するプロセスは、複雑であり、および/または、時間のかかるものである可能性がある。それは、たとえば、切削工具を装着する人による特定の技能を必要とする可能性がある。したがって、切削工具の配向を推定するための新しい方式を提供することが有利であることとなる。
【発明の概要】
【0003】
上述の問題のうちの1つまたは複数をより良好に対処するために、独立請求項に定義されている特徴を有する切削工具および方法が提供される。好ましい実施形態が、従属請求項に定義されている。
【0004】
したがって、第1の態様によれば、ターニングにおいて使用するための切削工具が提供される。切削工具は、工具バーと、切削ヘッドと、少なくとも1つのセンサーとを含む。工具バーは、軸線に沿って延在している。切削ヘッドは、工具バーに位置付けされている(または、位置決めされている)。少なくとも1つのセンサーは、工具バーまたは切削ヘッドと一体化されている。少なくとも1つのセンサーは、軸線に関する(または、軸線に対する)切削工具の回転配向の推定を可能にする出力を提供するように配置されており、また、出力を提供するタイプのものである。
【0005】
少なくとも1つのセンサーによって提供される出力は、軸線に関する切削工具の回転配向(または、たとえば、所望の配向に対して、軸線の周りの切削工具の回転配向)の推定を可能にするので、切削工具が水平になっているかどうかをチェックするために切削工具の上部に手動で設置される水準器などのような、追加的な外部センサーに対する必要性が存在しない。少なくともセンサーと工具バーまたは切削ヘッドとの一体化は、軸線に関する切削工具の回転配向を推定するために追加的なセンサーを正しく配置または整合させる必要性が存在しないので、切削工具の装着(または、配向)を促進させる。
【0006】
少なくとも1つのセンサーは、軸線に関する切削工具の回転配向の推定を可能にする出力を提供することができるように、および、その出力を提供することができるようなタイプのものとなるように、配置されている(または、位置決めされているおよび/もしくは配向される)ということが認識されることとなる。換言すれば、少なくとも1つのセンサーが適切なタイプのものであるということを必要とするだけではなく、少なくとも1つのセンサーは、それが軸線に関する切削工具の回転配向の推定を可能にする出力を提供することができるように適切に配置されることも必要とする。
【0007】
本開示の全体を通して、「ターニング」という語句は、ワークピースが回転させられる機械加工プロセスを表しており、その機械加工プロセスでは、回転しない切れ刃(たとえば、切削工具の切削ヘッドに装着されている)によってワークピースから材料が切削される。そのような機械加工プロセスの間に、切れ刃は、たとえば、回転しているワークピースに向けて並進させられ、切削作用を実施することが可能であり、または、回転しているワークピースが、切れ刃に向けて並進させられ得る。
【0008】
ターニングは、たとえば、ワークピースの外部表面、またはワークピースの内部表面で実施され得る(ボーリングと称される場合もある)ということが認識されることとなる。
【0009】
軸線は、たとえば、メイン方向であることが可能であり、メイン方向に沿って工具バーが延在している。工具バーは、たとえば、円筒形状であることが可能であり、軸線は、たとえば、工具バーの対称軸線であることが可能である。工具バー全体が必ずしも真っ直ぐである必要があるわけでない場合にも、軸線が工具バーのメイン部分に対して平行である(または、少なくとも実質的に平行である)という意味において、工具バーは、依然として、軸線に沿って延在することが可能である。
【0010】
軸線は、たとえば、水平方向になっていることが可能である。軸線は、たとえば、ターニングの間に回転させられることとなるワークピースのための回転の軸線に対して平行になっている(または、直交している)ことが可能である。
【0011】
使用中でないときに、工具バーは軸線に沿って延在しているが、工具バーは、ワークピースとの相互作用に起因して、ターニングの間に曲がることが可能である(または、撓ませられ得る)。したがって、工具バーのパーツは、ターニングの間に軸線からいくらか(たとえば、2~3ミリメートル)偏位することが可能であり、工具バーの回転配向は、たとえば、ターニングの前に取得される少なくともセンサーからの出力に基づいて推定され得る。
【0012】
切削工具(または、ターニング工具)は、たとえば、ターニングマシンにおいて使用するのに適切であり得る。
【0013】
切削ヘッドは、たとえば、工具バーに装着され得、または、工具バーの一体化されたパーツであることが可能である。
【0014】
切削ヘッドは、たとえば、切れ刃を含むことが可能であり、または、切れ刃を保持する(または、装着する)のに適切であることが可能である。切削ヘッドは、たとえば、切れ刃を有するインサートを保持する(または、装着する)ように配置され得る。切削ヘッドは、たとえば、ダミー切削ヘッド(または、フェイク切削ヘッド)であることが可能であり、ダミー切削ヘッドは、切削工具を配向させるように意図されているだけであり、ダミー切削ヘッドは、インサートを保持するのに適切ではない。ダミー切削ヘッドは、たとえば、まさに通常の切削ヘッドのように工具バーに装着され得、切削工具の適切な配向が取得されたときに、通常の切削ヘッドによって交換され得る。
【0015】
少なくとも1つのセンサーは、たとえば、工具バーまたは切削ヘッドの中に(または、内に)一体化され得る。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのセンサーは、軸線に関する切削工具の回転配向の推定を可能にする出力を提供するように配向され得、また、その出力を提供するタイプのものであることが可能である。換言すれば、少なくとも1つのセンサーは、軸線に関する切削工具の回転配向の推定を可能にする出力を提供することができるように配向され得、および、その出力を提供することができるようなタイプのものとなることが可能である。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのセンサーは、加速度計、ジャイロスコープ、デジタル水準器、アナログ水準器、または下げ振りを含むことが可能である。
【0018】
センサー(たとえば、加速度計またはジャイロスコープなど)のタイプに応じて、少なくとも1つのセンサーが必要とされる出力(すなわち、軸線に対して切削工具の回転配向の推定を可能にする出力)を提供することができるような、適切な位置および/または配向は、たとえば、異なっていることが可能である。
【0019】
切削工具において使用するのに適切なサイズ、精度、および/または耐久性の加速度計を製造することは、比較的に容易である。したがって、そのような加速度計は、切削工具の配向を推定するためにコスト効率的な方式であることが可能である。
【0020】
加速度計は、たとえば、工具バーの前方端部に(または、近くに)位置付けされ得る。次いで、加速度計は、また、ターニングの間の切削工具の切れ刃の振動を推定するために用いられ得る。加速度計からターニングマシンの中に切削工具を装着するためのマシンインターフェースへの距離は、たとえば、加速度計から切削工具の切れ刃への距離の少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍の長さであることが可能である。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのセンサーは、工具バーの内部にまたは切削ヘッドの内部に配置され得る。工具バーまたは切削ヘッドの内部に配置されているセンサーは、たとえば、切削工具とワークピースとの相互作用の間に生成される切屑から保護され得る。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのセンサーは、少なくとも2つの方向の加速度を測定するように構成された加速度計を含むことが可能である。地球の重力場は既知であるので、切削工具において異なる方向に測定される加速度が、切削工具の配向を決定するために用いられ得る。2つの方向に測定される加速度が、たとえば、軸線に関する切削工具の回転配向を決定するのに十分であり得る。
【0023】
たとえば、切削工具が静止状態にあるときに、すなわち、切削工具がターニングの間にワークピースから材料を切削するために用いられていないときに、加速度が測定され得る。
【0024】
方向は、たとえば、互いに横断方向(または、非平行)になっていることが可能である。方向は、たとえば、互いに対して垂直になっている(または、直交している)ことが可能である。
【0025】
方向は、たとえば、軸線に対して横断方向(または、非平行)になっていることが可能である。方向は、たとえば、軸線に対して垂直になっている(または、直交している)ことが可能である。
【0026】
加速度計は、たとえば、工具バーの前方端部に(または、近くに)位置付けされ得る。また、加速度計は、次いで、ターニングの間の切削工具の切れ刃の振動を推定するために用いられ得る。加速度計からターニングマシンの中に切削工具を装着するためのマシンインターフェースへの距離は、たとえば、加速度計から切削工具の切れ刃への距離の少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍の長さであることが可能である。
【0027】
少なくとも1つのセンサーは、たとえば、3つ以上の方向の加速度を測定するように構成された加速度計を含むことが可能である。3つ以上の方向に(たとえば、3つの方向などに)測定される加速度は、たとえば、軸線に関する切削工具の回転配向を決定するために用いられ得る。
【0028】
第2の態様によれば、第1の態様の実施形態のいずれかに定義されているような切削工具を含むターニングマシンが提供される。ターニングマシンは、少なくとも1つのセンサーによって提供される出力を使用して、軸線に関する切削工具の回転配向を推定する(または、決定する)ように適合され得る。
【0029】
ターニングマシンが配向自体を推定する(または、コンピューター計算する)ことができるので、軸線に関する切削工具の回転配向を推定することができるように、少なくとも1つのセンサーによって提供される出力を正しく解釈するように、外部コンピューティングデバイス(たとえば、コンピューターまたはハンドヘルド式デバイスなど)を準備する(または、プログラムする)必要性は存在しない。
【0030】
ターニングマシンは、たとえば、旋盤であることが可能である。
【0031】
ターニングマシンは、たとえば、ワークピースを回転させるためのスピンドルを含むことが可能である。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、ターニングマシンは、推定された配向をユーザーに示すように構成されているユーザーインターフェースをさらに含むことが可能である。
【0033】
ユーザーインターフェースは、たとえば、推定された配向を視覚的に示すためのディスプレイ(または、スクリーン)を含むことが可能である。
【0034】
ユーザーインターフェースは、たとえば、音を介して推定された配向を示すように適合され得る。
【0035】
推定された配向は、たとえば、推定された配向が基準(または、所望の)配向に十分に近くなっているケースにおいて提供される、視覚的なまたは聴覚的なインディケーションの形態で示され得る。異なるインディケーション(または、インディケーションはまったくない)が、たとえば、推定された配向が基準配向に十分に近くなっていないケースにおいて提供され得る。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、ターニングマシンは、推定された配向を示す信号伝達を提供するように構成されている通信インターフェースを含むことが可能である。
【0037】
信号伝達は、たとえば、ワイヤード信号および/またはワイヤー信号の形態で提供され得る。
【0038】
信号伝達は、たとえば、ターニングマシンのユーザーインターフェースに提供され得るか、または、コンピューターもしくはハンドヘルド式デバイスなどのような、遠隔に位置付けされているデバイスに提供され得る。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、ターニングマシンは、少なくとも1つのセンサーによって提供される出力を使用して、軸線に関する切削工具の回転配向を推定するように構成されている処理セクション(または、プロセッサーもしくは処理デバイス)を含むことが可能である。
【0040】
第3の態様によれば、方法が提供される。方法は、ターニングにおいて使用するための切削工具を提供することを含む。切削工具は、軸線に沿って延在する工具バー、工具バーに位置付けされている切削ヘッド、および、工具バーまたは切削ヘッドと一体化されている少なくとも1つのセンサーを含む。方法は、少なくとも1つのセンサーによる出力を提供することを含む。方法は、少なくとも1つのセンサーによって提供される出力に基づいて、軸線に関する切削工具の回転配向を推定することを含む。
【0041】
第1の態様による切削工具の特徴および、第2の態様によるターニングマシンの特徴に関して上で提示されている利点は、全体的に、第3の態様による方法の対応する特徴に関して有効であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、方法は、推定された配向をユーザーに示すことを含むことが可能である。
【0043】
推定された配向は、たとえば、切削工具がその中に配置されているターニングマシンのユーザーインターフェースを介して示され得るか、または、別々のデバイスのユーザーインターフェース(たとえば、ハンドヘルド式デバイスなど)を介して示され得る。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、方法は、軸線に関する基準回転配向を取得することと、推定された配向と基準配向との間の関係をユーザーに示すこととを含むことが可能である。
【0045】
方法は、たとえば、推定された配向が基準配向の周りの許容領域(または、許容インターバル)の中にあるかどうかということを示すことを含むことが可能である。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、基準配向は、複数の利用可能な基準配向の中から選択された基準配向であることが可能である。
【0047】
基準配向は、たとえば、ユーザーによって選択され得る。
【0048】
基準配向は、たとえば、切削工具がその中で用いられるターニングマシンのタイプに基づいて選択され得る。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのセンサーは、加速度計を含むことが可能である。少なくとも1つのセンサーによる出力を提供することは、少なくとも2つの方向の加速度を測定することを含むことが可能である。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのセンサーは、切削工具に対して少なくとも2つの固定された方向の加速度を測定するように構成された加速度計を含むことが可能である。出力を提供する前に、方法は、軸線に関する基準回転配向に切削工具を配置することと、加速度計を使用して、少なくとも2つの固定された方向への基準加速度を測定することと、測定された基準加速度に基づいて、切削工具に対する(または、切削工具の切れ刃に対する)加速度計のうちの少なくとも1つの装着角度を示すパラメーター値をコンピューター計算することと、軸線に関する新しい回転配向に切削工具を配置することとを含むことが可能である。軸線に関する切削工具の回転配向を推定することは、少なくとも1つのセンサーによって提供される出力に基づいて、および、パラメーター値に基づいて、軸線に関する切削工具の回転配向を推定することを含むことが可能である。
【0051】
切削工具は、たとえば、加速度計をキャリブレートするために基準配向に配置され得る。これは、たとえば、切削工具の製造または組み立ての間に行われ得る。キャリブレーションは、たとえば、コンピューター計算されたパラメーター値の観点から表現され得る。切削工具がターニングマシンの中に後で装着されるときに、切削工具は、軸線に関する新しい(たとえば、未知の)回転配向に配向され得る。次いで、キャリブレーションの間に取得されたパラメーター値は、加速度計からの出力とともに用いられ、切削工具の新しい配向を推定する(または、決定する)ことが可能である。
【0052】
新しい回転配向が所望の回転配向から大きく偏位し過ぎているということを、推定された回転配向が示す場合には、切削工具は、たとえば、切削工具の回転配向を修正するために、軸線に関して回転させられ得る。
【0053】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に記載されている特徴のすべての可能な組み合わせに関するということが留意される。さらに、第1の態様による切削工具、または、第2の態様によるターニングマシンに関して説明されているさまざまな実施形態は、第3の態様による方法の実施形態とすべて組み合わせ可能であるということが認識されることとなる。
【0054】
以下では、例示的な実施形態が、より詳細に添付の図面を参照して説明されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図2】実施形態による、
図1に示されている切削工具を含むターニングマシンの斜視図である。
【
図3】
図1に示されている切削工具の線A-A’に沿った断面図である。
【
図4】実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
すべての図は、概略的なものであり、一般的に、それぞれの実施形態を解明するために必要なパーツのみを示しており、一方、他のパーツは、省略されているかまたは単に示唆されている可能性がある。
【0057】
図1は、実施形態による切削工具100の斜視図である。切削工具100は、ターニングと呼ばれる周知の機械加工プロセスに適合された切削工具である。切削工具100は、工具バー110(それは、ターニングバー110とも称され得る)、切削ヘッド120、および少なくとも1つのセンサー130を含む。工具バー110は、軸線111に沿って延在している。切削ヘッド120は、工具バー110に位置付けされている。センサー130は、工具バー110と一体化されているか、または、切削ヘッド120と一体化されている。センサー130は、軸線111に関して(または、重力場に関して)切削工具100の回転配向の推定を可能にする出力を提供するように配置されており、また、その出力を提供するタイプのものである。
【0058】
工具バー100は、細長いエレメントまたは細長い部材である。本実施形態では、工具バー110は、軸線111に沿って延在する円筒形状のエレメントである。切削ヘッド120は、工具バー110の一方の端部に配置または装着されている。また、切削ヘッド120が、工具バー110の端部の近く、たとえば、ダンパーの後ろに配置されているという実施形態も想定され得る。
【0059】
本実施形態では、マシンインターフェース140は、ターニングマシンの中に切削工具100を装着するように、工具バー110の他方の端部に配置されている。インサート121が、切削ヘッド120に装着されている。インサート121は、ワークピースから材料(たとえば、金属)を切除するための1つまたは複数の切れ刃を有している。切削工具100は、外部ターニングのために用いられ得、外部ターニングでは、ワークピースの外部表面から材料が除去される。切削ヘッド120は工具バー110の端部に位置付けされているので、切削工具100は、内部ターニングのために用いられることも可能であり、内部ターニングでは、ワークピースの内部表面(たとえば、ワークピースの孔部の中)から、材料が除去される。内部ターニングは、ボーリングと呼ばれる場合もある。
【0060】
また、工具バー110が両端部にマシンインターフェース140を有しており、切削ヘッド120が、工具バー110に沿って、たとえば、工具バー110の中間に位置付けされているという実施形態も想定され得る。しかし、切削ヘッド120が工具バー110の端部の近くに設置されていないというそのような実施形態は、
図1を参照して説明されている実施形態ほど、内部ターニングに関して適切でない可能性がある。いくつかの実施形態では、切削ヘッド120は、工具バー110に装着されている(または、取り付けられている)というよりもむしろ、工具バー110と一体化され得る。
【0061】
工具バー110は、たとえば、スチールなどのような金属、および/または超硬合金を含むことが可能である。切削ヘッド120は、たとえば、スチールのような金属を含むことが可能である。インサート121は、たとえば、超硬合金を含むことが可能である。インサート121は、金属切削に適合され得る。
【0062】
本実施形態では、センサー130は、切削ヘッド120の近くの位置において、工具バー110と一体化されている。また、センサー130が、工具バー110に沿って他の位置に位置付けされており、または、センサー130が、(たとえば、インサート121の中に)切削ヘッド120と一体化されているという実施形態も想定され得る。
【0063】
切削ヘッド120は、たとえば、工具バー110から除去可能であり得、他の切削ヘッドによって交換可能であるようになっている。センサー130は、たとえば、特殊な切削ヘッド120と一体化されていることが可能であり、特殊な切削ヘッド120は、いくつかの異なるタイプの工具バー110に装着されるように適合されており、単一の切削ヘッド120が異なる切削工具100の回転配向を推定するために用いられ得るようになっている。そのような特殊な切削ヘッド120は、たとえば、切削工具100の残りの部分から別々に送達されるキットの中に提供され得る。工具バー110は、たとえば、切削ヘッド120を取り付けるために、その端部において、ネジ山またはセレーションが付けられ得る。また、切削ヘッド120を工具バー110に取り付けるために用いられる機械的なインターフェースが、切削ヘッド120から工具バー110への(および/または、センサー130から工具バー110への)配向基準を提供することが可能である。
【0064】
図1を参照して説明されている実施形態では、センサー130は、工具バー110の内部に位置付けされている。したがって、センサー130は、機械加工の間に生成される金属切屑から保護されている。また、センサー130が、工具バー110の外部表面に沿って(好ましくは、インサート121がワークピースと相互作用するときに生成される金属切屑との接触を回避するように、インサート121からいくらかの距離に)、または、切削ヘッド120の内部に位置付けされているという実施形態も想定され得る。
【0065】
センサー130からの出力は、たとえば、ワイヤレスに、または、ワイヤー150を介して、処理セクション160へ送信され得る。処理セクション160は、たとえば、(たとえば、センサー130の近くに、または、マシンインターフェース140において)切削工具100自身の中に位置付けされ得るか、または、切削工具100の外側のどこかの場所に位置付けされ得る。
【0066】
少なくとも1つのセンサー130は、たとえば、1つまたは複数の検出器を含むことが可能である。選択されたセンサー130が、軸線111に関する切削工具100の回転配向の推定を可能にする出力を提供することができるように、センサー130が配置されている(たとえば、位置決めされており、および/または配向されている)限りにおいて、センサー130(または、検出器)は、異なるタイプのものであることが可能である。センサー130は、たとえば、加速度計、ジャイロスコープ、デジタル水準器、アナログ水準器、および/または下げ振りを含むことが可能である。工具バー110(または、切削ヘッド120)に沿ってほぼ任意の位置において、工具バー110と(または、切削ヘッド120と)一体化された単一の水準器の形態で提供されるセンサー130は、たとえば、軸線111の周りの切削工具100の回転配向の推定を可能にする出力を提供することができる可能性がある。
図3を参照して下記に説明されているように、加速度計の形態で提供されるセンサー130は、軸線111の周りの切削工具100の回転配向の推定を可能にする出力を提供することができるように適切に配向される必要がある可能性がある。
【0067】
図2は、実施形態による、
図1を参照して説明されている切削工具100を含むターニングマシン200の斜視図である。切削工具100は、軸線111が水平方向になるように装着されている。ターニングマシン200は、センサー130によって提供される出力を使用して、軸線111に関する切削工具100の回転配向を推定するように適合されている。ターニングマシン200は、たとえば、処理セクション210を含むことが可能であり、処理セクション210は、センサー130によって提供される出力を使用して、軸線111に関する切削工具100の回転配向を推定するように構成されている。処理セクション210は、たとえば、切削工具100の中に位置付けされ得るか(処理セクション210は、たとえば、
図1を参照して説明されている処理セクション160と一致することが可能である)、または、ターニングマシン200の何らかの他のパーツの中に位置付けされ得る。
【0068】
ターニングマシン200は、ワークピース230を回転させるためのスピンドル220を含む。切削工具100は、マシンインターフェース140を介して装着されており、ワークピース230が回転するときにワークピース230から材料を切除するために、切削工具100がワークピース230に向けて移動させられ得るようになっている。本実施形態では、ワークピース230は、孔部231を有しており、切削工具100は、孔部231を拡張するために材料を切除することが可能である。
【0069】
ターニングマシン220は、通信インターフェース240を含むことが可能であり、通信インターフェース240は、推定された配向を示す信号伝達を提供するように構成されている。通信インターフェース240によって提供される信号伝達は、ワイヤード信号またはワイヤレス信号を介して(たとえば、Bluetoothを介して)、遠隔に位置付けされているデバイス250へ提供され得、デバイス250は、ターニングマシン200を使用する人間のオペレーターに推定された配向を示すためのユーザーインターフェースを有している。デバイス250は、たとえば、パーソナルコンピューターまたはハンドヘルド式デバイス、たとえば、モバイルフォンまたはタブレットコンピューターなどであることが可能である。
【0070】
通信インターフェース240は、ワイヤレスに、または、ワイヤード接続を介して、処理セクション210と通信することが可能である。いくつかの実施形態では、処理セクション210および/または通信インターフェース240は、切削工具100の中に位置付けされ得る(または、一体化され得る)。
【0071】
ターニングマシン220は、ユーザーインターフェース260を含むことが可能であり、ユーザーインターフェース260は、推定された配向をユーザーに示すように構成されている。ユーザーインターフェース260は、たとえば、推定された配向をユーザーに視覚的に伝えるように配置されたスクリーンであるか、または、音を介して配向を信号伝達するためのオーディオインターフェースであることが可能である。
【0072】
ユーザーインターフェース260またはデバイス250は、たとえば角度の形態の、推定された配向自体を示すことが可能である。代替的に(または、追加的に)、推定された配向は、推定された配向と基準配向との間の関係の形態で示され得る。たとえば、ユーザーは、(たとえば、ユーザーインターフェース260またはデバイス250を介して)現在のターニングマシン200の中の切削工具100に関して適切な基準配向を入力することが可能である。基準配向は、たとえば、水平方向の平面に対して0度、30度、45度、60度、または90度の角度にあることが可能である。ユーザーインターフェース260またはデバイス250は、推定された配向が、選択された基準配向の周りの許容範囲(または、許容インターバル)の中にあるかどうかということを示すことが可能である。許容範囲は、たとえば、インサート121が許容可能な切削性能を提供することができる範囲であることが可能である。推定された配向が許容範囲の中にある場合には、これは、たとえば、緑のライト、および/または、「正しい配向」もしくは「所望の配向が取得された」などのようなテキストによって、たとえば、スクリーンの上に明確に示され得る。推定された配向が許容領域の中にない場合には、ユーザーインターフェース260またはデバイス250は、たとえば、基準配向により近い配向を取得するために、どの方向に軸線111の周りに切削工具100をターンさせるかということを示すことが可能である。このように、切削工具100の適切な角度位置が取得され得る。
【0073】
図1を参照して上記に説明されているように、異なるタイプのセンサー130が、切削工具100の配向を推定するために用いられ得る。加速度計がセンサー130として用いられる実施形態が、下記に説明されることとなる。同じ目的のために、どのように他のタイプのセンサー(たとえば、1つまたは複数の水準器)を用いるかということを当業者は認識するので、そのような代替的な実施形態の詳細な説明は、本開示において省略されている。
【0074】
図3は、
図1を参照して説明されている、切削工具100の線A-A’に沿った断面図である。センサー130は、加速度計チップ130の形態で提供されている。加速度計チップ130は、2つの方向131および132の加速度を測定するように配置されている加速度計(または、加速度計回路)を含む。加速度計は、たとえば、デジタル加速度計またはアナログ加速度計であることが可能である。切削工具100が機械加工のために用いられていないときに、すなわち、切削工具100が静止状態にあり(または、固定されている位置にあり)、ワークピース230から材料を切削するために用いられていないときに、加速度が測定され得る。重力gは、既知のサイズ(たとえば、9.81m/s
2)および方向(下向き)を有しているので、方向131および132に測定される加速度が、軸線111に関するチップ130の配向を推定する(または、決定する)ために、三角法とともに用いられ得る。切削工具100に対するチップ130の配向が既知である場合には、軸線111に関する切削工具100の配向が推定され得る(または、決定されるか、もしくはコンピューター計算される)。どのように切削工具100の配向を推定するかということの詳述された例が、
図3および
図4を参照して下記にさらに説明されることとなる。
【0075】
図4は、実施形態による方法400のフローチャートである。方法400は、切削工具100を提供すること440と、センサー130による出力を提供すること450と、センサー130によって提供された出力に基づいて、軸線111に関する切削工具100の回転配向を推定すること460とを含む。
図3を参照して上記に説明されているように、センサー130は、少なくとも2つの方向131および132の加速度を測定するように構成された加速度計チップ130の形態で提供され得る。
図2を参照して上記に説明されているように、推定された配向は、ユーザーインターフェース260を介して、または、外部デバイス250を介して、ユーザーに示され得る470。推定された配向に基づいて、ユーザーは、所望の(または、適切な)配向が取得されるまで、軸線111の周りに切削工具100を回転させることが可能である。所望の配向が取得されると、切削工具100は、ワークピース230から材料を切削するために使用される前に、その回転位置において係止され得る。
【0076】
推定された配向は、基準配向(または、所望の配向)とともに、ユーザーインターフェース260またはデバイス250に表示され得る。基準配向は、0~90度などのような範囲(または、インターバル)の中で自由に、または、選択可能な基準配向の有限集合から、ユーザーによって選択可能であり得る。したがって、方法400は、複数の利用可能な基準配向の中から選択された基準配向を取得するステップを含むことが可能である。基準配向の選択は、推定された配向をユーザーに示すこと470の前に実施され得る。基準配向が水平方向の平面と一致するように設定される場合には、方法400は、切削工具100が水平であるということをチェックするために用いられ得る。
【0077】
加速度計チップ130は、切削工具100(または、インサート121)から配向が偏位している可能性があるので、方法400は、切削工具100の配向を推定する460ために用いられる出力を提供する450ためにチップ130が使用される前に、加速度計チップ130をキャリブレートするためのステップを含むことが可能である。キャリブレーションステップは、たとえば、切削工具100の製造または組み立ての間に実施され得る。
【0078】
したがって、方法400は、軸線111に関して基準回転配向φrefに切削工具100を配置すること410を含むことが可能である。換言すれば、切削工具100は、重力場gに関して、十分に定義された既知の配向φrefに設置されており、好ましくは、インサート121が水平方向の状態になっており、切削工具100のマイナスのx方向に(すなわち、半径方向136において、φref=0に)向いている。
【0079】
本実施形態では、方向131および132は、互いに対して、および、軸線111に対して垂直になっている。方向131および132は、それぞれ、チップ130のy軸131およびx軸132と称され得る。チップ130が切削工具100の中に装着されているので、2つの方向131および132は、切削工具100に対して固定されている。加速度計チップ130は、好ましくは、
図3に示されているように、x軸132が切削工具100のx軸134に近い状態で、および、y軸131が切削工具100のy軸133に近い状態で、切削工具100の中に配置され得る。
【0080】
方法400は、チップ130によって提供される2つの方向131および132に基準加速度を測定すること420によって継続することが可能である。測定される加速度AxrefおよびAyrefは、
Axref=g sin(φref-φ0)
Ayref=g cos(φref-φ0)
として表現され得、ここで、φ0は、切削工具100の中のチップ130の装着角度である。換言すれば、φ0は、加速度計x軸132と工具x軸134との間の角度である。これらの定義によって、工具軸線111は、マシン軸線と一致し、一方、半径方向136は、ここで、マイナスのx方向になっている。使用するときには、インサート121は、水平方向に関して方向φradに向いている。フラットベッド旋盤などのようなターニングマシンにおいて、φrad=0を有することが望ましいことが多いが、一方、他のターニングマシンでは、φrad=240度(または、4p/3ラジアン)を有することが望ましい可能性もある。
【0081】
方法400は、測定される基準加速度に基づいて、切削工具100に対する加速度計チップ130の装着角度φ
0を示すパラメーター値をコンピューター計算すること430によって継続することが可能である。たとえば、装着角度φ
0自身は、次いで、以下を介して取得され得る。
方法400は、軸線111に関して新しい回転配向に切削工具100を配置することによって継続することが可能である。これは、上に説明されているように、切削工具100を提供するステップ440に対応している。
【0082】
軸線111に関する切削工具100の回転配向を推定460する上記に説明されているステップは、センサー130によって提供される出力に基づいて、および、パラメーター値φ
0に基づいて、軸線111に関する切削工具100の回転配向φ
radを推定することを含む。より正確には、半径方向136(水平方向)の加速度A
rad、および、接線方向(垂直方向)の加速度A
tanが、以下の式により表される。
A
rad=-A
xcosφ
0+A
ysinφ
0
A
tan=-A
xsinφ
0-A
ycosφ
0
ここで、A
xは、チップ130のx軸に沿った加速度であり(方向132に対応している)、A
yは、チップ130のy軸に沿った加速度である(方向131に対応している)。装着角度φ
0が、キャリブレーション手順において決定されているので、式
が、切削工具100の回転配向φ
radを見出すために使用され得る。切削工具100の所望の配向が、切削工具100に関する現在の配向の角度φ
radと所望の配向の角度との間の差をプロットすることによって取得され得る。
【0083】
図3を参照して説明されている実施形態では、方向131および132は、互いに対して垂直になっている。また、方向131および132が、互いに横断方向(または、非平行)になっているが、互いに対して垂直になっていないという実施形態も想定され得る。当業者は良く知っているように、互いに対して垂直になっていない2つの方向に測定される加速度は、2つの元の方向の間の角度が既知である限りにおいて、標準的な三角法の関係を使用して、互いに対して垂直の2つの方向の加速度に変換され得る。したがって、上に説明されているものと同様の計算が、そのような設定においても使用され得る。
【0084】
また、方向131および132が、軸線111に対して横断方向(または、非平行)になっているが、必ずしも、軸線111に対して垂直になっているわけではないという実施形態も想定され得る。方向131および132が軸線111に対して垂直でない場合には、加速度は、どのように切削工具100が配向されているかということを推定するために、1つまたは複数の追加的な方向にも測定され得る。チップ130は、たとえば、切削工具100の配向を推定するために、互いに対して垂直になっている3つの方向に加速度を測定することが可能である。
【0085】
単一の加速度計であっても、切削工具100の回転配向を推定するために用いられ得る。加速度計が下向きに方向付けられている場合には、測定される加速度は、標準的な重力、すなわち、約9.81m/s2であるはずである。加速度計が軸線111の周りに回転させられる場合には、加速度計によって測定される加速度は減少するはずである。加速度計の方向、および、それによって、切削工具100の方向は、標準的な重力と加速度計によって測定される加速度との間の差に基づいて推定され得る。
【0086】
本発明は、決して、上に説明されている好適な実施形態に限定されないということを当業者は認識する。対照的に、多くの修正および変形が、添付の特許請求の範囲の中で可能である。たとえば、少なくとも1つのセンサー130は、たとえば、複数のセンサーを含むというよりもむしろ、単一のセンサー(たとえば、単一の水準器など)であることが可能である。センサー130は、工具バー110または切削ヘッド120に沿ってほぼどこにでも位置決めされ得るということが認識されることとなる。また、切削工具100の配向は、機械加工において切削工具100を用いる前に推定され得るということが認識されることとなる。
【0087】
追加的に、開示されている実施形態に対する変形例が、図面、本開示、および添付の特許請求の範囲を検討することから、特許請求されている発明を実践する際に、当業者によって理解および実現され得る。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語句は、他のエレメントまたはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。特定の対策が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの対策の組み合わせが利益をもたらすように使用されることができないということを示しているのではない。特許請求の範囲の中の任意の参照記号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。