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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】抗レプチン中和抗体を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220912BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220912BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220912BHJP
   C07K 16/26 20060101ALN20220912BHJP
   C07K 14/575 20060101ALN20220912BHJP
   C07K 14/72 20060101ALN20220912BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 U
G01N33/543 501F
A61K38/22
A61P3/06
A61P5/24
A61P1/16
A61P3/00
C07K16/26
C07K14/575
C07K14/72
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019513974
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017051232
(87)【国際公開番号】W WO2018049424
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】62/393,632
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】318003423
【氏名又は名称】アムリット・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・セイルスタッド
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0072426(US,A1)
【文献】国際公開第2005/022156(WO,A1)
【文献】WU, Z. et al,Quantification of the Soluble Leptin Receptor in Human Blood by Ligand-Mediated Immunofunctional Assay,Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism,2002年06月01日,Vol.87/No.6,p.2931-2939
【文献】CHAN, J.L. et al,Immunogenicity Associated with Metreleptin Treatment in Patients with Obesity or Lipodystrophy,Clinical Endocrinology,2015年11月21日,Vol.85/No.1,p.137-149
【文献】BELTRAND, J. et al,Resistance to leptin-replacement therapy in Berardinelli-Seip congenital lipodystrophy: an immunological origin,European Journal of Endocrinology,2010年06月,Vol.162/No.6,p.1083-1091
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のレプチンに対する中和抗体を検出する方法であって、
(a)試料中に存在するレプチンを不活性化する工程;
(b)既知量の標識レプチンを試料に添加する工程;
(c)(b)の標識レプチンを含有する試料を、標識レプチンを結合することができる基板と接触させる工程;
(d)未結合の標識レプチンを除去するために基板を洗浄する工程;及び
(e)基板に結合した標識レプチンによって生成された標識シグナルを測定する工程
を含み、
標識レプチンを結合することができる前記基板が、
(i)被覆マトリックス;及び
(ii)(i)のマトリックスに結合したタグ付けされたレプチン受容体、
を含み、又は
標識レプチンを結合することができる前記基板が、
(iii)被覆マトリックス;
(iv)(iii)のマトリックスに結合した抗体;及び
(v)(iv)の抗体に結合したタグ付けされたレプチン受容体
を含む、方法。
【請求項2】
血液、血清、又は血漿中のレプチンに対する中和抗体を有する対象を同定する方法であって、
(a)対象の血液、血清、又は血漿に由来する試料中に存在するレプチンを不活性化する工程;
(b)既知量の標識レプチンを試料に添加する工程;
(c)(b)の標識レプチンを含有する試料を、標識レプチンを結合することができる基板と接触させる工程;
(d)未結合の標識レプチンを除去するために基板を洗浄する工程;
(e)結合した標識レプチンによって生成された標識シグナルを測定する工程;
(f)工程(a)~(e)に加えて、工程(b)で既知量の抗レプチン抗体を添加することを更に含む工程を完了することによって生成された陽性対照シグナルを測定する工程;及び
(g)(e)からのシグナルを(f)からのシグナルと比較する工程であって、工程(e)で測定されたシグナルのレベルが、工程(f)で測定されたシグナルのレベル以下であることが、対象が抗レプチン中和抗体について陽性であることを示す、工程
を含み、
標識レプチンを結合することができる前記基板が、
(i)被覆マトリックス;及び
(ii)(i)のマトリックスに結合したタグ付けされたレプチン受容体、
を含み、又は
標識レプチンを結合することができる前記基板が、
(iii)被覆マトリックス;
(iv)(iii)のマトリックスに結合した抗体;及び
(v)(iv)の抗体に結合したタグ付けされたレプチン受容体
を含む、方法。
【請求項3】
血液、血清、又は血漿中のレプチンに対する中和抗体を有する対象を同定する方法であって、
(a)対象由来の血液、血清又は血漿の試料、又は、抗レプチン中和抗体を含まない血液、血清、もしくは血漿の試料中に存在するレプチンを不活性化する工程;
(b)既知量の標識レプチンを試料に添加する工程;
(c)(b)の標識レプチンを含有する試料を、標識レプチンを結合することができる基板と接触させる工程;
(d)未結合の標識レプチンを除去するために基板を洗浄する工程;
(e)結合した標識レプチンによって生成された標識シグナルを測定する工程;
(f)工程(a)~(e)を完了することによって生成された陰性対照シグナルを測定する工程であって、抗レプチン中和抗体を含まない血液、血清、又は血漿の試料を用いて行われる、工程;及び
(g)(e)からのシグナルと(f)からの最大シグナルとの差を最大シグナルで割ることによって計算される値をカットポイントと比較する工程であって、前記値がカットポイントより大きいことが、対象が抗レプチン中和抗体について陽性であることを示す、比較する工程
を含み、
標識レプチンを結合することができる前記基板が、
(i)被覆マトリックス;及び
(ii)(i)のマトリックスに結合したタグ付けされたレプチン受容体、
を含み、又は
標識レプチンを結合することができる前記基板が、
(iii)被覆マトリックス;
(iv)(iii)のマトリックスに結合した抗体;及び
(v)(iv)の抗体に結合したタグ付けされたレプチン受容体
を含む、方法。
【請求項4】
カットポイントが、約5%~約40%の間である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
標識レプチンが、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、又はルテニウムトリス-ビピリジンで標識されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
不活性化工程(a)が、試料を加熱することによって達成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
レプチン受容体が、ビオチンでタグ付けされている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
被覆マトリックスがストレプトアビジン被覆されたマトリックスである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
レプチン受容体が、ヘキサヒスチジンタグでタグ付けされている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
抗体が、抗ヘキサヒスチジン抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗体が、被覆マトリックスに結合するのに適したタグで標識されている、請求項1から7、9又は10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)で添加される標識レプチンが、標識メトレレプチンである、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
試料中のレプチンに対する中和抗体を検出するために使用するキットであって、(a)標識レプチン、及び(b)標識レプチンを結合することができる基板を含む、
標識レプチンを結合することができる前記基板が、
(i)被覆マトリックス;及び
(ii)(i)のマトリックスに結合したタグ付けされたレプチン受容体、
を含み、又は
標識レプチンを結合することができる前記基板が、
(iii)被覆マトリックス;
(iv)(iii)のマトリックスに結合した抗体;及び
(v)(iv)の抗体に結合したタグ付けされたレプチン受容体
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年9月12日に出願された米国仮出願第62/393632号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、レプチンに対する中和抗体を検出する方法、及びこのような方法を実行するために使用することができるキットに関する。このような方法及びキットは、試料中のレプチンに対する中和抗体を検出するために、又は対象の血液、血清、若しくは血漿中にレプチンに対する中和抗体を有する対象を同定するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
メトレレプチンは、先天性又は後天性全身性脂肪異栄養症の対象におけるレプチン欠乏症の合併症を治療するための補充療法として食事療法の補助として示されるレプチン類似体である。先天性全身性脂肪異栄養症は、体内の脂肪組織のほぼ完全な欠如及び非常に筋肉質の外観によって特徴付けられる稀な状態である。脂肪組織は、皮膚の下及び内臓の周囲等を含む体の多数の部分に見られる。脂肪組織は、エネルギー及びクッションのために脂肪を蓄え、体を保護する。脂肪組織が不足すると、肝臓や筋肉等体内の他の場所に脂肪が蓄積されるようになり、深刻な健康上の問題を引き起こす。後天性全身性脂肪異栄養症は、小児期又は青年期に見られる稀な状態であり、体の広い領域、特に顔、腕、及び脚に影響を与える脂肪減少によって特徴付けられる。
【0004】
更に、メトレレプチンは、部分的脂肪異栄養症、視床下部性無月経、非アルコール性脂肪性肝炎、及び他の様々な低レプチン血症性代謝異常障害を含む他の適応症の治療法として研究されている。
【0005】
メトレレプチンは、一般的に、毎日の皮下注射により投与される。この反復投与のために、対象がメトレレプチンに対する抗体を発生し得る危険性がある。これらの抗体はメトレレプチンを中和し、治療を無効にする可能性がある。更に、それらは内因性レプチンを中和し、すでにレプチン欠乏症に罹患している対象の疾患を悪化させる場合がある。このため、対象において中和抗体を確実に検出する方法が当該技術分野において必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開番号WO96/05309
【文献】米国特許第6,309,853号
【文献】米国特許第5,521,283号
【文献】米国特許第5,532,336号
【文献】米国特許第5,552,522号
【文献】米国特許第5,552,523号
【文献】米国特許第5,552,524号
【文献】米国特許第5,554,727号
【文献】米国特許第5,559,208号
【文献】米国特許第5,580,954号
【文献】米国特許第5,594,101号
【文献】米国特許第5,691,309号
【文献】米国特許第5,756,461号
【文献】米国特許第5,851,995号
【文献】米国特許第5,935,810号
【文献】米国特許第6,001,968号
【文献】米国特許第6,350,730号
【文献】米国特許第6,420,339号
【文献】米国特許第6,429,290号
【文献】米国特許第6,541,033号
【文献】米国特許第6,936,439号
【文献】米国特許第7,112,659号
【文献】米国特許第7,183,254号
【文献】米国特許第7,208,577号
【文献】米国特許第8,080,254号
【文献】米国特許第8,394,765号
【文献】米国出願公開第2016/0083446号
【文献】PCT国際公開番号WO00/09165
【文献】PCT国際公開番号WO00/20872
【文献】PCT国際公開番号WO00/21574
【文献】PCT国際公開番号WO00/47741
【文献】PCT国際公開番号WO04/39832
【文献】PCT国際公開番号WO09/64298
【文献】PCT国際公開番号WO96/22308
【文献】PCT国際公開番号WO96/23517
【文献】PCT国際公開番号WO96/40912
【文献】PCT国際公開番号WO97/02004
【文献】PCT国際公開番号WO97/06816
【文献】PCT国際公開番号WO97/18833
【文献】PCT国際公開番号WO97/38014
【文献】PCT国際公開番号WO98/08512
【文献】PCT国際公開番号WO98/12224
【文献】PCT国際公開番号WO98/28427
【文献】PCT国際公開番号WO98/46257
【文献】PCT国際公開番号WO98/55139
【文献】PCT国際公開番号WO2012/050925
【文献】PCT国際公開番号WO2012/050930
【文献】PCT国際公開番号WO2013/009539
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、レプチンに対する中和抗体の検出に関する。
【0008】
一態様では、本発明は、試料中のレプチンに対する中和抗体を検出する方法であって、以下:(a)試料中に存在するレプチンを不活性化する工程;(b)既知量の標識レプチンを試料に添加する工程;(c)(b)の標識レプチンを含有する試料を、標識レプチンを結合することができる基板と接触させる工程;(d)未結合の標識レプチンを除去するために基板を洗浄する工程;及び(e) 基板結合標識レプチンによって生成された標識シグナルを測定する工程を含む、方法に関する。
【0009】
一態様では、本発明は、対象由来の血液、血清、又は血漿中のレプチンに対する中和抗体を有する対象を同定する方法であって、(a)レプチン及び対象の血液、血清、又は血漿の試料中に存在するレプチンを不活性化する工程;(b)既知量の標識レプチンを試料に添加する工程;(c)(b)の標識レプチンを含有する試料を、標識レプチンを結合することができる基板と接触させる工程;(d)未結合の標識レプチンを除去するために基板を洗浄する工程;(e)結合した標識レプチンによって生成された標識シグナルを測定する工程;(f)工程(a)~(e)を完了することによって生成された陽性対照シグナルを測定する工程であって、工程(b)で既知量の抗レプチン抗体を添加することを更に含む、測定する工程;及び(g)(e)からのシグナルを(f)からのシグナルと比較する工程であって、工程(e)で測定されたシグナルのレベルが、工程(f)で測定されたシグナルのレベル以下である場合、対象の抗レプチン中和抗体についての検査結果が陽性である、比較する工程を含む、方法に関する。
【0010】
別の態様では、本発明は、対象由来の血液、血清、又は血漿中のレプチンに対する中和抗体を有する対象を同定する方法であって、(a)対象の血液、血清又は血漿の試料中に存在するレプチンを不活性化する工程;(b)既知量の標識レプチンを試料に添加する工程;(c)(b)の標識レプチンを含有する試料を、標識レプチンを結合することができる基板と接触させる工程;(d)未結合の標識レプチンを除去するために基板を洗浄する工程;(e)結合した標識レプチンによって生成された標識シグナルを測定する工程;(f)工程(a)~(e)を完了することによって生成された陰性対照シグナルを測定する工程であって、更に血液、血清、又は血漿の試料が抗レプチン中和抗体を含まない、測定する工程;及び(g)(e)からのシグナルと(f)からのシグナルとの差の割合をカットポイントと比較する工程であって、(e)からのシグナルと(f)からのシグナルとの差の割合がカットポイントより大きい場合、対象の抗レプチン中和抗体についての検査結果が陽性である、比較する工程を含む、方法に関する。一部の実施形態では、カットポイントは、約5%~約40%の間、又は約5%~約30%の間、又は約5%~15%の間である。
【0011】
別の態様では、本発明は、対象において、対象由来の血液、血清、又は血漿中のレプチンに対する中和抗体の存在の変化を経時的に対象において決定することを伴う方法に関する。一部の実施形態では、この方法は、レプチン治療を受ける対象において使用され得、対象の血液、血清、又は血漿中の中和抗体の存在は、レプチン治療の前(治療前)、続くレプチン治療の間又はその後に評価され得る。本方法は、以下:(1a)対象の血液、血清、又は血漿の第1の試料中に存在するレプチンを不活性化する工程;(1b)既知量の標識レプチンを第1の試料に添加する工程;(1c)(1b)の標識レプチンを含有する第1の試料を、標識レプチンに結合することができる基板と接触させる工程;(1d)未結合の標識レプチンを除去するために基板を洗浄する工程;(1e)結合した標識レプチンによって生成された標識シグナルを測定する工程;(2a)対象の血液、血清、又は血漿の第2の試料に存在するレプチンを不活化する工程;(2b)既知量の標識レプチンを第2の試料に添加する工程;(2c)(2b)の標識レプチンを含有する第2の試料を、標識レプチンに結合することができる基板と接触させる工程;(2d)未結合の標識レプチンを除去するために基板を洗浄する工程;(2e)結合した標識レプチンによって生成された標識シグナルを測定する工程;(3)(2e)の標識シグナルを(1e)の標識シグナルと比較する工程を含む。一部の実施形態では、比較は、(2e)の標識シグナルと(1e)の標識シグナルとの間の差の割合を決定することであり得る。特定の実施形態では、差の割合をカットポイントと比較することができる。カットポイントは、約55%~約95%の間、又は約60%~約90%の間、例えば、約65%、又は約85%、又は約80%であり得る。
【0012】
ある特定の実施形態では、レプチンは、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、又はルテニウムトリス-ビピリジンで標識され得る。
【0013】
一部の実施形態では、レプチンの不活性化は、試料を加熱することによって達成され得る。
【0014】
ある特定の実施形態では、標識レプチンを結合することができる基板は、(i)被覆マトリックス、及び(ii)(i)のマトリックスに結合したタグ付けされたレプチン受容体を含み得る。被覆マトリックスは、ストレプトアビジン被覆されたマトリックスであり得る。レプチン受容体は、ビオチンでタグ付けされ得る。
【0015】
一部の実施形態では、標識レプチンに結合することができる基板は、(i)被覆マトリックス、(ii)(i)のマトリックスに結合した抗体、及び(iii)(ii)の抗体に結合したタグ付けされたレプチン受容体を含み得る。被覆マトリックスは、ストレプトアビジン被覆されたマトリックスであり得る。レプチン受容体は、アフィニティー精製に適したタグでタグ付けされ得る;例えば、レプチン受容体は、ヘキサヒスチジンタグでタグ付けされ得る。抗体は、レプチン受容体タグに対して適切な親和性を有し得る;例えば、抗体は、抗ヘキサヒスチジン抗体であり得る。更に、抗体は、ビオチン等の被覆マトリックスに結合するのに適したタグで標識化され得る。
【0016】
本発明の方法は、酸性溶液の添加によって、不活性化試料(a)のpHを低下させる工程を更に含み、(b)で添加される標識レプチンは、添加後の試料のpHを中和するのに十分な塩基性溶液を更に含み得る。酸性溶液は、0.8%酢酸等の酢酸溶液であり得る。塩基性溶液は、0.125MのTham緩衝液等の緩衝液であり得る。
【0017】
一部の実施形態では、工程(b)で添加される標識レプチンは、組換えヒトレプチンであり得る。ある特定の実施形態では、工程(b)で添加される標識レプチンは、メトレレプチンであり得る。
【0018】
一部の実施形態では、工程(b)の試料中のメトレレプチン等の標識レプチンの濃度が約90ng/mL~約120ng/mLの間、又は約100ng/mL~約110ng/mLの間、例えば、約101ng/mL、又は約109ng/mLであるとき、検出可能なシグナルは工程(e)で生成される。
【0019】
一態様では、本発明は、レプチンによる治療に対するレプチン関連障害を有する対象の応答性を決定する方法であって、対象における抗レプチン中和抗体の量を決定する工程を含み、ここで、抗体の量は、レプチン療法に対する対象の非応答性を予測する、方法に関する。本方法は、上記に列挙された工程を含み得る。レプチン関連障害は、先天性全身性脂肪異栄養症、後天性全身性脂肪異栄養症、部分的脂肪異栄養症、視床下部性無月経、非アルコール性脂肪性肝炎、及び低レプチン血症性代謝異常障害であり得る。
【0020】
別の態様では、本発明は、試料中のレプチンに対する中和抗体を検出するために使用することができるキットに関する。キットは、(a)標識レプチン、及び(b)標識レプチンを結合することができる基板を含み得る。
【0021】
ある特定の実施形態では、キット中のレプチンは、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、又はルテニウムトリス-ビピリジンで標識され得る。
【0022】
一部の実施形態では、キット中の基板は、(i)被覆マトリックス、及び(ii)(i)のマトリックスに結合したタグ付けされたレプチン受容体を含み得る。被覆マトリックスは、ストレプトアビジン被覆されたマトリックスであり得る。レプチン受容体はビオチンでタグ付けされ得る。被覆マトリックス及びタグ付けされたレプチン受容体は、キット中の一構成要素として一緒になっていてもよく、又は個別の構成要素であってもよい。
【0023】
一部の実施形態では、キット中の基板は、(i)被覆マトリックス、(ii)(i)のマトリックスに結合した抗体、及び(iii)(ii)の抗体に結合したタグ付けされたレプチン受容体を含み得る。被覆マトリックスは、ストレプトアビジン被覆されたマトリックスであり得る。レプチン受容体は、アフィニティー精製に適したタグでタグ付けされる;例えば、レプチン受容体は、ヘキサヒスチジンタグでタグ付けされ得る。抗体は、レプチン受容体タグに対して適切な親和性を有し得る;例えば、抗体は抗ヘキサヒスチジン抗体であり得る。更に、抗体は、ビオチン等の被覆マトリックスに結合するのに適したタグで標識され得る。被覆マトリックス、抗体、及びタグ付けされたレプチン受容体は、キット中の一構成要素として一緒になっていてもよく、又は個別の構成要素として一緒になっていてもよい。
【0024】
ある特定の実施形態では、キットは、陽性対照及び/又は陰性対照を更に含み得る。
【0025】
一部の実施形態では、キットは、酸性化試薬;例えば、酢酸を更に含み得る。
【0026】
ある特定実施形態では、キットは、塩基性溶液;例えば、Tham緩衝液等の緩衝液を更に含み得る。
【0027】
本開示は、添付の図面を参照して更に説明される。示されている図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに本開示の原理を例示することに重点が置かれており、いくつかの特徴は特定の構成要素の詳細を示すために誇張されている。更に、図面に示されるか、又は以下に記載される任意の測定値、仕様等は、例示的であり、限定的ではないことが意図される。したがって、本明細書に開示される特定の構造上及び機能上の詳細は限定として解釈されるべきではないが、単に本明細書に記載される方法及びキットを用いることを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本発明の実施形態による、(i)被覆マトリックス、及び(ii)(i)のマトリックスに結合したタグ付けされたレプチン受容体を含む、標識レプチンに結合することができる基板を伴うレプチン及びメトレレプチンの例示的な受容体結合アッセイを示す図である。図1Aは、アッセイに使用される様々な構成要素を説明する。
図1B】本発明の実施形態による、(i)被覆マトリックス、及び(ii)(i)のマトリックスに結合したタグ付けされたレプチン受容体を含む、標識レプチンに結合することができる基板を伴うレプチン及びメトレレプチンの例示的受容体結合アッセイを示す図である。図1Bは、アッセイの適用を説明する。
図2】本発明の実施形態による、受容体結合アッセイの結果を提示するための例示的なデータシートを示す図である。
図3A】本発明の実施形態による、(i)被覆マトリックス、(ii)(i)のマトリックスに結合した抗体、及び(iii)(i)のマトリックスに結合した抗体、及び(ii)の抗体に結合したタグ付けされたレプチン受容体を含む、標識レプチンに結合することができる基板を伴うレプチン及びメトレレプチンについての例示的な受容体結合アッセイを示す。図3Aは、アッセイに使用される様々な構成要素を説明する。
図3B】本発明の実施形態による、(i)被覆マトリックス、(ii)(i)のマトリックスに結合した抗体、及び(iii)(i)のマトリックスに結合した抗体、及び(ii)の抗体に結合したタグ付けされたレプチン受容体を含む、標識レプチンに結合することができる基板を伴うレプチン及びメトレレプチンについての例示的な受容体結合アッセイを示す。図3Bは、アッセイの適用を説明する。
図4】本発明の実施形態による、陽性対照及び陰性対照を伴うメトレレプチンの例示的な受容体結合アッセイを示す。
図5】本発明の実施形態による、メトレレプチンの例示的な受容体結合アッセイに使用するための酸解離工程を示す。
図6】一部は健康であり、一部は罹患しており、以前にレプチンで治療されたことがある17人の対象由来の試料の分析から集められたシグナル、阻害%、及び分類データを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
レプチンに対する中和抗体を検出する方法
試料中のレプチンに対する中和抗体を検出する方法が、本明細書に記載される。例示的な方法は、(a)試料中に存在するレプチンを不活性化する工程;(b)既知量の標識レプチンを試料に添加する工程;(c)(b)の標識レプチンを含有する試料を、標識レプチンを結合することができる基板と接触させる工程;(d)未結合の標識レプチンを除去するために基板を洗浄する工程;及び(e)基板結合した標識レプチンによって生成された標識シグナルを測定する工程を含む。
【0030】
用語「方法」及び「アッセイ」は、本明細書において互換的に使用される。
【0031】
本明細書に開示された方法は、天然に存在するヒト、マウス、ラット、及び他の異種のレプチン、並びに組換え的に生成された成熟レプチンを含む任意の種のレプチンに対する中和抗体を検出するために使用され得ることが企図される。例えば、レプチンは、例えば、それぞれが全体として参照により本明細書に組み込まれる、国際公開番号WO96/05309及び米国特許第6,309,853号に記載されているob遺伝子のポリペプチド生成物である。本発明の方法はまた、レプチンの生物学的に活性な断片、アゴニスト、アゴニスト類似体、変異体、融合タンパク質、キメラレプチン、及び他のそれらの誘導体、例えば、それぞれが全体として、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,521,283号、米国特許第5,532,336号、米国特許第5,552,522号、米国特許第5,552,523号、米国特許第5,552,524号、米国特許第5554,727号、米国特許第5,559,208号、米国特許第5,580,954号、米国特許第5,594,101号、米国特許第5,691,309号、米国特許第5,756,461号、米国特許第5,851,995号、米国特許第5,935,810号、米国特許第6,001,968号、米国特許第6,309,853号、米国特許第6,350,730号、米国特許第6,420,339号、米国特許第6,429,290号、米国特許第6,541,033号、米国特許第6,936,439号、米国特許第7,112,659号、米国特許第7,183,254号、米国特許第7,208,577号、米国特許第8,080,254号、米国特許第8,394,765号、米国出願公開第2016/0083446号、PCT国際公開番号WO00/09165号、PCT国際公開番号WO00/20872、PCT国際公開番号WO00/21574、PCT国際公開番号WO00/47741、PCT国際公開番号WO04/39832、PCT国際公開番号WO09/64298、PCT国際公開番号WO96/05309、PCT国際公開番号WO96/22308、PCT国際公開番号WO96/23517、PCT国際公開番号WO96/40912、PCT国際公開番号WO97/02004、PCT国際公開番号WO97/06816、PCT国際公開番号WO97/18833、PCT国際公開番号WO97/38014、PCT国際公開番号WO98/08512、PCT国際公開番号WO98/12224、PCT国際公開番号WO98/28427、PCT国際公開番号WO98/46257、PCT国際公開番号WO98/55139、PCT国際公開番号WO2012/050925、PCT国際公開番号WO2012/050930、及びPCT国際公開番号WO2013/009539に開示されているそれらの化合物に対する中和抗体を検出するために使用され得る。ある特定の実施形態では、本発明の方法は、メトレレプチンに対する中和抗体を検出するために使用され得る。
【0032】
レプチンを不活性化するための企図される方法としては、熱的不活性化、並びにレプチンの化学的毒物を含むレプチンの化学的阻害剤による処理が含まれるが、但し、阻害剤又は毒物は、標識レプチンの添加前に不活性化され得る。
【0033】
標識レプチンは、上記に列挙したそれらの化合物を含む、任意の形態のレプチン、レプチン類似体、レプチンキメラ若しくは融合タンパク質、又はそれらの誘導体等であり得ることが企図される。標識レプチンは、簡便に定量化されたシグナルを生成することができる任意の標識で標識され得ることが企図される。標識は、時間分解蛍光タグを含む蛍光タグであり得る。例としては、当該技術分野において公知である他のタグの中でも、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及びルテニウムトリス-ビピリジンが挙げられる。当業者は、基板結合標識レプチンによって生成された標識シグナルを検出する方法が標識の性質に依存することを理解する。
【0034】
試料含有標識レプチンと接触させるために使用される基板は、(i)被覆マトリックス;及び(ii)マトリックスに結合したタグ付けされたレプチン受容体を含み得ることが企図される。一部の実施形態では、被覆マトリックスは、ストレプトアビジン被覆されたマトリックスである。ある特定の実施形態では、レプチン受容体はビオチンでタグ付けされる。例えば、レプチン受容体は、ビオチンを介してマトリックスに結合され得る。被覆されたマトリックスは、1を超えるタグ付けされたレプチン受容体によって結合され得ることが理解される。ある特定の実施形態では、レプチン受容体の類似体をマトリックスに結合させることができる。
【0035】
或いは、基板は、(i)被覆マトリックス;(ii)マトリックスに結合した抗体;及び(iii)抗体に結合したタグ付けされたレプチン受容体を含み得ることが企図される。一部の実施形態では、被覆マトリックスはストレプトアビジン被覆されたマトリックスである。ある特定の実施形態では、レプチン受容体は、アフィニティー精製に適した任意のタグでタグ付けされ得る。例えば、タグは、ヘキサヒスチジンタグであり得る。一部の実施形態では、「レプチン受容体捕捉抗体」と呼ばれる得る抗体は、レプチン受容体タグに対して適切な親和性を有する任意の抗体である。例えば、レプチン受容体が、ヘキサヒスチジンタグを有する場合、レプチン受容体捕捉抗体は抗ヘキサヒスチジン抗体であり得る。レプチン受容体捕捉抗体はまた、それをマトリックスに結合させるのに適したタグ、例えばビオチンで標識され得る。ある特定の実施形態では、レプチン受容体の類似体をマトリックスに結合させることができる。
【0036】
本明細書で使用されるマトリックスは、タグ付けされたレプチン受容体又は抗体が結合している固体支持体であり得る。マトリックスは、標識されたレプチンによって生成されたシグナルを測定するのに適切であり得る。マトリックスの例としては、限定されないが、マイクロタイタープレート等のプレートのウェル、及びビーズが挙げられる。ある特定の実施形態では、マトリックスは、メソスケールディスカバリー(Meso Scale Discovery)(MSD)マルチウェルプレートであり得る。
【0037】
ある特定の実施形態では、レプチンに対する中和抗体を検出するための本方法で使用される試料は、対象の血液、血清、又は血漿から選択され得る。対象は、ヒト等の哺乳動物であり得る。
【0038】
本発明の一態様では、本明細書で企図される方法を用いて、例えば、対象の血液、血清、又は血漿中に中和抗体を有する対象を同定し得る。任意のレプチン又はレプチン類似体に対する中和抗体を有する個体を同定し得ることが企図される。中和抗体について陽性である個体は、標識レプチンによって生成されたシグナルを陽性及び/又は陰性対照データと比較することによって同定され得る。対照が陽性対照であるとき、シグナルが陽性対照シグナル未満又はそれに等しい場合、試料は中和抗体について陽性であるとしてスコアリングされることが企図される。対照が陰性対照である場合、試料シグナルと対照シグナルとの間の差の割合を計算し、差の割合をカットポイントと比較して、それがカットポイントよりも大きい場合、対象は、試験したレプチンに対する中和抗体を有すると診断される。
【0039】
陰性対照を伴う方法の実施形態を図1A図1B及び図3A図3Bに示す。これらの図は、標識レプチン/メトレレプチンとレプチン受容体との間、及び/又は抗レプチン/抗メトレレプチン中和抗体とレプチン受容体との間の結合がどのように起こり得、カットポイント未満であるか、又はカットポイントに等しいか若しくはそれより大きいシグナルの差の割合をもたらすかを実証する。
【0040】
カットポイントは、約5%~約40%の間、又は約10%~約30%の間、又は約20%であり得る。例えば、カットポイントは、約5%、又は約6%、又は7%、又は約8%、又は約9%、又は約10%、又は約11%、又は約12%、又は約13%、又は約14%、又は約15%、又は約16%、又は約17%、又は約18%、又は約19%、又は約20%、又は約21%、又は約22%、又は約23%、又は約24%、又は約25%、又は約26%、又は約27%、又は約28%、又は約29%、又は約30%、又は約31%、又は約32%、又は約33%、又は約34%、又は約35%、又は約36%、又は約37%、又は約38%、又は約39%、又は約40%であり得る。
【0041】
ある特定の実施形態では、対象が正常なレプチンレベルを有する場合、又は対象がレプチン欠乏症を有する場合、カットポイントは異なり得る。ある特定の実施形態では、対象が、女性で約16ng/mL以下、及び男性で約7ng/mL以下の血清濃度;女性で約8ng/mL以下、及び男性で約5ng/mL以下の血清濃度;又は女性で約5ng/mL以下、及び男性で約3ng/mL以下の血清濃度を有する場合、対象はレプチン欠乏症を有する。又は、対象が、NHANES IIIに従って15パーセンタイル、又は10パーセンタイル、又は8パーセンタイル、又は2パーセンタイル、又は1パーセンタイル内の血清濃度を有する場合、対象はレプチン欠乏症を有する。或いは、対象が、BMI、性別、及び/又は他の因子に対して調整された特定のパーセンタイル内の血清濃度、例えば、BMI用に調整された、NHANES IIIに従って10パーセンタイル、又は5パーセンタイル、又は3パーセンタイル、又は2パーセンタイル内の血清濃度を有する場合、対象はレプチン欠乏症を有する。
【0042】
対象がレプチン欠乏症を有しないある特定の実施形態では、カットポイントは、約5%~約40%の間、若しくは約5%~約30%の間であり、或いは一部の実施形態では約5%~約15%の間であり、例えば、レプチンに対する中和抗体が、検出されている場合(例えば、対象がレプチンで治療されている場合)は約10.2%であり、又はメトレレプチンに対する中和抗体が、検出されている場合(例えば、対象がメトレレプチンで治療されている場合)は約7.89%である。対象がレプチン欠乏症を有するある特定の実施形態では、カットポイントは、約5%~約40%の間、又は約5%~約30%の間であり、又は一部の実施形態では約5%~約15%の間であり、例えば、レプチンに対する中和抗体が、検出されている場合(例えば、対象がレプチンで治療されている場合)は約10.2%であり、又はメトレレプチンに対する中和抗体が、検出されている場合(例えば、対象がメトレレプチンで治療されている場合)は約9.66%である。
【0043】
図2は、本発明の方法とともに使用するための例示的なデータシートを示す。
【0044】
一態様では、本明細書で企図される方法は、対象において、対象由来の血液、血清、又は血漿中のレプチンに対する中和抗体の存在の変化を経時的に決定するために使用され得る。例えば、本方法は、レプチン治療を受ける対象において、レプチン治療の前、続くレプチン治療の間又はその後に、対象の血液、血清、又は血漿中の中和抗体の存在の変化を評価するために使用され得る。レプチンによる治療の例は、当該技術分野において公知である。本方法は、以下:(1a)対象の血液、血清、又は血漿の第1の試料中に存在するレプチンを不活性化する工程;(1b)既知量の標識レプチンを第1の試料に添加する工程;(1c)(1b)の標識レプチンを含有する第1の試料を、標識レプチンに結合することができる基板と接触させる工程;(1d)未結合の標識レプチンを除去するために基板を洗浄する工程;(1e)結合した標識レプチンによって生成された標識シグナルを測定する工程;(2a)対象の血液、血清、又は血漿の第2の試料に存在するレプチンを不活化する工程;(2b)既知量の標識レプチンを第2の試料に添加する工程;(2c)(2b)の標識レプチンを含有する第2の試料を、標識レプチンに結合することができる基板と接触させる工程;(2d)未結合の標識レプチンを除去するために基板を洗浄する工程;(2e)結合した標識レプチンによって生成された標識シグナルを測定する工程;(3)(2e)の標識シグナルを(1e)の標識シグナルと比較する工程を含み得る。一部の実施形態では、比較は、(2e)の標識シグナルと(1e)の標識シグナルとの間の差の割合を決定することであり得る。ある特定の実施形態では、差の割合をカットポイントと比較することができる。カットポイントは、約55%~約95%の間、又は約60%~約90%の間であり得る。例としては、約60%、又は約61%、又は約62%、又は約63%、又は約64%、又は約65%、又は約66%、又は約67%、又は約68%、又は約69%、又は約70%、又は約71%、又は約72%、又は約73%、又は約74%、又は約75%、又は約76%、又は約77%、又は約78%、又は約79%、又は約80%、又は約81%、又は約82%、又は約83%、又は約84%、又は約85%、又は約86%、又は約87%、又は約88%、又は約89%、又は約90%が挙げられる。あ
る特定の実施形態では、カットポイントは、対象が治療を継続するべきかどうか、又は対象が治療に応答性であるかどうかを決定するために使用され得る。例えば、差の割合がカットポイントに等しい又はそれ未満である場合、対象は治療を中断すべきである、又は対象は治療に応答しないと決定され得る。
【0045】
企図される方法は、試料中に存在し得るあらゆるレプチンから試料中のあらゆる中和抗体も解離させるために、解離工程を更に含み得る。前記解離工程は、レプチン中和後に試料のpHを低下することによって達成され得る。試料を酸性化するための適切な試薬は、当業者に容易に明らかであり、例えば、約0.5%~約1%の酢酸溶液、又は約0.8%の酢酸溶液等の酢酸を使用し得る。試料を酸性化するために使用され得る他の適切な試薬は、当業者に公知である。試料の酸性化後に、試料中に存在し得るレプチンからいかなる中和抗体も解離させて、標識レプチンは、試料のpHを中和するのに十分な塩基性溶液と一緒に添加され得る。標識レプチンを含有する溶液は緩衝液であり得、それにより、それが試料に添加されると、試料のpHが約7、例えば7.4に上昇し、試料中に存在するあらゆる中和抗体が、標識レプチンに結合することを可能にすることが企図される。適切な緩衝液としては、約0.1M~約0.15M、又は約0.12M~約0.14M、又は約0.124M若しくは0.125MのTham緩衝液が挙げられる。試料のpHをほぼ中性に戻すことができる他の適切な緩衝液は、当業者に公知である。
【0046】
標識によって生成されたシグナルは、当該技術分野において公知である方法によって測定され得る。例えば、シグナルを測定することができる適切な装置は、当業者に公知である。
【0047】
対象がレプチンに対する中和抗体を有するか否かに関する決定を用いて、対象がレプチンによる治療に応答するかどうか、例えば、高レベルの中和抗体を有する対象がレプチン治療に対して応答しないと期待されるかどうかを予測し得ることが企図される。
【0048】
キット
本発明の他の態様は、本発明の方法を実行するための構成要素を含むキットである。このようなキットは、標識レプチン、及び本発明の方法で使用するための上記される標識レプチンに結合することができる基板を含み得る。例えば、一部の実施形態では、レプチンは、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、又はルテニウムトリス-ビピリジンで標識され得る。ある特定の実施形態では、レプチンはメトレレプチンである。
【0049】
ある特定の実施形態では、基板は、ストレプトアビジン被覆されたマトリックス等の上記される被覆マトリックス、及びタグ付けされたレプチン受容体を含むことができる。レプチン受容体は、ビオチンでタグ付けされ得る。一部の実施形態では、被覆マトリックス及びタグ付けされたレプチン受容体を個別にキットに保存し得る。他の実施形態では、タグ付けされたレプチン受容体は、被覆マトリックスに結合され得る。
【0050】
一部の実施形態では、基板は、ストレプトアビジン被覆されたマトリックス等の被覆マトリックス;抗体;タグ付けされたレプチン受容体を含み得る。レプチン受容体は、ヘキサヒスチジンタグ等の、アフィニティー精製に適した任意のタグでタグ付けされ得る。一部の実施形態では、抗体、すなわち、レプチン受容体捕捉抗体は、レプチン受容体タグに対して適切な親和性を有する任意の抗体である。例えば、レプチン受容体が、ヘキサヒスチジンタグを有する場合、レプチン受容体捕捉抗体は抗ヘキサヒスチジン抗体であり得る。レプチン受容体捕捉抗体はまた、それをマトリックスに結合させるのに適したタグ、例えばビオチンで標識され得る。一部の実施形態では、抗体をマトリックスに結合させることができる、及び/又はタグ付けされたレプチン受容体を抗体に結合させることができる。他の実施形態では、被覆マトリックス、抗体、及びタグ付けされたレプチン受容体は個別にキットに含まれる。
【0051】
ある特定の実施形態において、キットは、抗レプチン抗体又は抗メトレレプチン抗体等の陽性対照を更に含む。
【0052】
ある特定の実施形態では、キットは更に陰性対照を含む。
【0053】
一部の実施形態では、キットは、1つ又は複数の酸性化試薬を更に含む。例えば、酸性化試薬は、酢酸、例えば、約0.5%~約1%の酢酸溶液、又は約8%の酢酸溶液であり得る。
【0054】
一部の実施形態では、キットは、緩衝液等の塩基性溶液を更に含む。適切な緩衝液としては、約0.1M~約0.15M、又は約0.12M~約0.14M、又は約0.124M~0.125MのTham緩衝液が挙げられる。
【0055】
一部の実施形態では、キットは、キット内の構成要素を操作するための説明書を更に含む。
【実施例
【0056】
以下の実施例は、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、開示された方法の態様を説明するために提供される。本発明の他の多数の実施形態は、当業者に明らかである。
【0057】
(実施例1)
対象試料は、それらが含有する中和抗体のレベルを決定するために、以下のように試験され得る(図4も参照されたい)。
1.ストレプトアビジン被覆されたプレートをSuperblockを用いて1時間遮断する。
2.対象試料を熱不活性化する。
3.ルテニウム(Ru)スルホタグ付けされたレプチン又はメトレレプチンを各試料に添加する。陽性対照試料は、Ruスルホタグ付けされたレプチン又はメトレレプチン及び抗レプチン陽性対照抗体muLEP13-11.03を添加することによって調製される。試料を室温で2時間インキュベートする。
4.ストレプトアビジンプレートをリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄する。PBSで希釈したビオチン標識された抗ヘキサヒスチジン抗体をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートする。
5.プレートをPBSで洗浄し、希釈したヘプタヒスチジンタグ付けされたレプチン受容体タンパク質をプレートに添加し、プレートを室温で1時間インキュベートする。
6.プレートをPBSで洗浄し、試験試料及び対照試料(上記の工程2から)をプレートに添加し、プレートを室温で1時間インキュベートする。
7.プレートをPBSで洗浄し、MSD ESLリーダーで読み取る。
【0058】
レプチン及びメトレレプチンを含むが、中和抗体を含まない陰性対照ウェルについての最大シグナルを測定する。阻害パーセントは、各試料について最大シグナルと測定シグナルとの間の差を引き、その数を最大シグナルで割ることによって計算される。次に、実施例3に記載されるように、阻害パーセントをカットポイントと比較する。
【0059】
(実施例2)
実施例1に記載される手順を以下のように変更することにより、任意選択の酸解離工程を実行することができる(図5も参照されたい)。
1.熱不活化後、試料を0.8%酢酸溶液中、室温で1時間インキュベートして、試料中のいずれの結合抗体も解離させる。
2.スルホタグ付けされたレプチン又はメトレレプチンを0.124MのTham緩衝液中で希釈する。これは添加時に酢酸試料を中和し、抗体結合を可能にする。
【0060】
上記の受容体結合アッセイの感度は、メトレレプチンに対する抗体については109ng/mLであり、レプチンに対する抗体については101ng/mLであることが決定された。匹敵する細胞ベースの中和抗体アッセイについての検出限界は、251ng/mLであった。
【0061】
(実施例3)
カットポイントは、以前にメトレレプチン治療を受けたことがある疾患対象、及び正常な非疾患治療におけるレプチン及びメトレレプチンシグナルの阻害パーセントに基づいて計算された。正常及び以前に治療された疾患対象におけるレプチン結合阻害のカットポイントは、10.18%阻害であった。以前に疾患対象を治療したことがある対象におけるメトレレプチン結合阻害のカットポイントは9.66%の阻害であり、正常な対象においては7.89%の阻害であった。すべてのカットポイントは1%の偽陽性率を生じるように設定された。カットポイントデータは図6に示されている。
【0062】
【表1】
【0063】
(実施例4)
17人の患者由来の試料を上記の方法に従ってレプチン及びメトレレプチンシグナル阻害について試験した。データは、図6及びTable 2(表2)~Table 4(表4)に示されている。
【0064】
2つの対照モノクローナル抗レプチン中和抗体を156ng/ml(陽性対照(低))又は5000ng/mL(陽性対照(高))のいずれかの濃度で使用した。対照データは、図6及びTable 3(表3)に示されている。両方の抗体による阻害は顕著に一貫しており、アッセイの頑健性を示していた。
【0065】
カットポイントよりも大きい阻害を有する試料を陽性カテゴリーに割り当て、その場合、カットポイントを下回る阻害を有する試料を陰性カテゴリーに割り当てた。図6及びTable 4(表4)を参照されたい。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
参照による組み込み
特許、特許出願、特許公報、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツ等の他の文書への言及及び引用は、本開示を通じてなされている。このような文書はすべて、本明細書によって、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
同等物
本明細書に示され、記載されたものに加えて、本発明の様々な変更及びそれらの多数の更なる実施形態は、本明細書に引用された科学文献及び特許文献への言及を含む、この文書の全内容から当業者に明らかとなる。本明細書における主題は、その様々な実施形態及びそれらの同等物において本発明の実施に適合させることができる重要な情報、例示及び手引きを含有する。
【0071】
本発明の範囲内の変更は当業者に明らかであり得るため、前述の記載は、理解を明確にするためだけに与えられ、不必要な限定がそれから理解されるべきではない。
【0072】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈が他を必要としない限り、用語「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」等の変形は、記述された整数若しくは工程、又は整数若しくは工程のグループを含むことを意味すると理解されるが、他のいかなる整数若しくは工程、又は整数若しくは工程のグループを除外するものではない。
【0073】
本明細書を通じて、組成物が構成要素又は材料を含むとして記載されている場合、組成物はまた、他に記載がない限り、列挙された構成要素又は材料の任意の組合せから本質的になる又はそれからなり得ることが企図される。同様に、方法が特定の工程を含むものとして記載されている場合、方法は、他に記載がない限り、列挙された工程の任意の組合せから本質的になる又はそれからなり得ることが企図される。本明細書に例示的に開示されている発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素又は工程がなくても適切に実施することができる。
【0074】
本明細書に開示されている方法の実施、及びその個々の工程は、手動で及び/又は電子機器によって提供される自動化の助けを借りて実行することができる。特定の実施形態を参照して方法を説明してきたが、当業者は、方法に関連する動作を実行する他のやり方を使用できることを容易に理解する。例えば、様々な工程の順序は、他に記載がない限り、方法の範囲又は精神から逸脱することなく変更されてもよい。更に、個々の工程のいくつかを組み合わせたり、省略したり、又は更に追加の工程に細分することができる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6