(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】熱可塑性複合材、熱可塑性複合材の製造方法及びパネル
(51)【国際特許分類】
B29B 15/12 20060101AFI20220912BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20220912BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20220912BHJP
【FI】
B29B15/12
C08J3/12 CES
C08J3/12 101
B29K101:12
(21)【出願番号】P 2019516597
(86)(22)【出願日】2017-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2017006531
(87)【国際公開番号】W WO2018062667
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】10-2016-0125218
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルエックス・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LX HAUSYS,LTD.
【住所又は居所原語表記】98, Huam-ro, Jung-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガン,キョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ガン,ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミンギョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イム,チェホ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-063841(JP,A)
【文献】特開2005-194639(JP,A)
【文献】特開平3-247844(JP,A)
【文献】特表2020-501949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;
15/08-15/14
C08J 3/12;
5/04-5/10;
5/24
D06M 13/00-15/715
B29K 101:12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面の平均直径が15μm~20μmである連続繊維からなる繊維製織シートが積層された構造及び網構造を含む繊維構造体を製造するステップ;
粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子を製造するステップ;
粒径が1μm~10μmであり比重が1~3である、前記粒子状難燃剤を、前記熱可塑性樹脂粒子100重量部に対し、20~30重量部と、前記熱可塑性樹脂粒子をボールミル(ball-mill)方式で乾式混合するステップと;及び、
混合した前記熱可塑性樹脂粒子と前記粒子状難燃剤を前記繊維構造体の内部に乾式含浸させるステップを含む、
熱可塑性複合材の製造方法。
【請求項2】
前記粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子を製造するステップは、
熱可塑性樹脂を押出機に投入するステップ;
前記熱可塑性樹脂から熱可塑性溶融樹脂噴射液を形成するステップ;及び、
前記熱可塑性溶融樹脂噴射液を噴射ノズルで噴射すると同時に冷却して、粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子を得るステップを含む、
請求項
1に記載の熱可塑性複合材の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂から熱可塑性溶融樹脂噴射液を形成するステップは、
前記熱可塑性樹脂を噴射ノズルに移動させるステップ;及び、
前記熱可塑性樹脂が噴射ノズルで加熱されて、熱可塑性溶融樹脂噴射液が形成されるステップを含む、
請求項
2に記載の熱可塑性複合材の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性溶融樹脂噴射液は、前記噴射ノズルに空気とともに注入される、
請求項
2に記載の熱可塑性複合材の製造方法。
【請求項5】
前記繊維構造体の内部に混合した前記熱可塑性樹脂粒子と前記粒子状難燃剤を含浸させるステップは、前記熱可塑性樹脂粒子と前記粒子状難燃剤を前記繊維構造体上に分散して、前記繊維構造体の網構造の中に入るようにするステップである、
請求項
1に記載の熱可塑性複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物、車両、フィルター等の内外装材及び部品に適用し得る熱可塑性複合材及びこの製造方法と、前記熱可塑性複合材から製造されたパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂等の樹脂と無機繊維等の繊維を混合した繊維強化複合材料は、様々な技術分野に活用されている。このような繊維強化複合材料は、通常、押出法又は湿式含浸法によって製造される。例えば、押出法を用いて繊維強化複合材料を製造する場合には、樹脂と繊維との相溶性が重要であり、相溶化剤の添加が必ず必要である。相溶化剤を添加しないと、押出時に樹脂と繊維との層分離が起こるようになり、最終製造された繊維強化複合材料の物性が低下する。また、湿式含浸法によって繊維強化複合材料を製造する場合には、溶媒状の樹脂を繊維に含浸して製造するが、ほとんどの溶媒は、有毒で、人体や環境に有害であり、再使用や廃棄のために回収工程が必要となり、高価である問題がある。従って、多様な物性を同時に具現しながら、人体や環境に有害ではなく、工程の効率及び経済性を向上させる複合材料の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一具現例は、難燃性及び強度に優れており、このような物性が全体として均一に具現される熱可塑性複合材を提供する。
【0004】
本発明の他の具現例は、時間及び費用面から効率性が向上して、人体や環境に有害ではない熱可塑性複合材の製造方法を提供する。
【0005】
本発明のさらに他の具現例は、前記熱可塑性複合材から製造され、建物、車両、フィルター等の内外装材及び部品に様々な用途に活用できるパネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一具現例では、少なくとも1層の繊維製織シートを含む網構造の繊維構造体;粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子;及び粒子状難燃剤を含み、前記熱可塑性樹脂粒子及び前記粒子状難燃剤は、前記繊維構造体の内部に含浸した構造である熱可塑性複合材を提供する。
【0007】
本発明の他の具現例では、少なくとも1層の繊維製織シートを含む網構造の繊維構造体を製造するステップ;粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子を製造するステップ;前記熱可塑性樹脂粒子と粒子状難燃剤を乾式混合するステップ;及び混合した前記熱可塑性樹脂粒子と前記粒子状難燃剤を前記繊維構造体の内部に含浸させるステップを含む熱可塑性複合材の製造方法を提供する。
【0008】
本発明のさらに他の具現例では、前記熱可塑性複合材の熱圧着物を含むパネルを提供する。
【発明の効果】
【0009】
前記熱可塑性複合材は、難燃性及び強度に優れており、このような物性が全体として均一に具現される利点を有する。
【0010】
前記熱可塑性複合材の製造方法は、時間及び費用面から効率性が高く、人体や環境に有害ではない方法で熱可塑性複合材を製造する利点を有する。
【0011】
前記パネルは、前記熱可塑性複合材から製造され、建物、車両、フィルター等の内外装材及び部品に様々な用途に活用できる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一具現例による熱可塑性複合材を概略的に示したものである。
【
図2】本発明の一具現例による熱可塑性複合材の製造方法の手順図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されるものではなく、異なる形態に具現することができる。但し、本実施例は、本発明の開示を完全にして、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。全明細書における同じ参照符号は、同じ構成要素を称する。
【0014】
図面において、複数の層及び領域を明確に表現するため厚さを拡大して示した。また、図面において、説明の便宜のため一部の層及び領域の厚さを誇張して示した。
【0015】
また、本明細書において、層、膜、領域、板等の部分が他の部分の「上に」又は「上部に」あると言うとき、これは、他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言うときは、中間に他の部分がないことを意味する。また、層、膜、領域、板等の部分が他の部分の「下に」又は「下部に」あると言うとき、これは、他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「真下に」あると言うときは、中間に他の部分がないことを意味する。
【0016】
本発明の一具現例では、少なくとも1層の繊維製織シートを含む網構造の繊維構造体;粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子;及び粒子状難燃剤を含み、前記熱可塑性樹脂粒子及び前記粒子状難燃剤は、前記繊維構造体の内部に含浸した熱可塑性複合材を提供する。
【0017】
図1は、本発明の一具現例による熱可塑性複合材100を概略的に示したものである。
図1を参照すると、前記熱可塑性複合材100は、少なくとも1層の繊維製織シート11を含む網構造の繊維構造体10を含み、前記繊維構造体10の内部に含浸した熱可塑性樹脂粒子20及び粒子状難燃剤30を含む。
【0018】
前記熱可塑性樹脂粒子20の粒径(particle diameter)は、約1μm~約50μmであってもよく、具体的には、約20μm~約50μmであってもよく、より具体的には、約30μm~約50μmであってもよい。また、前記熱可塑性樹脂粒子は、このような粒径を有する球状粒子であってもよい。このとき、「球状」とは、数学的又は幾何学的に完璧な形状の球を意味することではなく、任意の切断面の形状が実際に円を示す3次元立体形状を含むと理解しなければならない。
【0019】
前記熱可塑性樹脂粒子20の粒径は、粒子断面の平均直径を意味するものであって、TEM/SEMイメージ分析によって数平均粒径として測定されてもよい。前記熱可塑性樹脂粒子は、従来の熱可塑性樹脂粒子に比べて小さい大きさを有するものであって、前記範囲の粒径を介して粒子状難燃剤と乾式で均一に混合することができ、これによって、溶媒を用いる溶融混練法を用いないことによって、工程の効率及び環境に優しい性質を向上させる。
【0020】
前記繊維構造体10は、少なくとも1層の繊維製織シート11からなる網構造を有するものであって、網構造とは、繊維の一本と他の一本の間に空間が存在する粗い構造を意味し、具体的には、前記熱可塑性樹脂粒子及び前記粒子状難燃剤が通す気孔を含む構造を意味する。
【0021】
前記繊維製織シートからなる網構造の繊維構造体は、前記繊維製織シートを少なくとも1層含み、必要な厚さによって、例えば、2層以上、例えば、3層~5層、例えば、7層~15層含んでいてもよい。
【0022】
前記繊維構造体のうち1つの繊維製織シートは、繊維のストランドが製織された構造を有しており、具体的には、朱子織、綾織又は平織の製織構造を有する。
【0023】
また、前記繊維製織シートは、繊維を製織して製造され、具体的には、ガラス繊維、セラクウール(cerakwool)繊維、ミネラル繊維、カーボン繊維、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つを含んでいてもよい。かかる種類の繊維を用いる場合、前述した大きさを有する熱可塑性樹脂粒子と相溶性が良くて、建物、車両及びフィルター等の内装材又は部品に多様に適用できる利点を得ることができ、粒子状難燃剤とともに、目的とする水準の難燃性確保に寄与し得る。
【0024】
前記繊維は、断面の平均直径が約5μm~約20μmであってもよく、例えば、具体的には、約10μm~約20μmであってもよく、より具体的には、約15μm~約20μmであってもよい。前記繊維断面の平均直径は、前記繊維を長さ方向に垂直した方向に切断したとき、断面の数平均直径を意味する。前記繊維断面の平均直径がこのような範囲に相当することによって、前記繊維が好適な繊度を有するようになり、これを製織した繊維製織シートからなる繊維構造体が前記熱可塑性樹脂粒子及び粒子状難燃剤を好適に含浸させる網構造を形成することができる。その結果、前記熱可塑性複合材が優れた耐久性、強度及び難燃性を具現することができる。
【0025】
図1を参照すると、前記熱可塑性複合材は、前記熱可塑性樹脂粒子及び前記粒子状難燃剤が前記繊維構造体の内部に含浸した構造を有する。このとき、前記熱可塑性樹脂粒子及び前記粒子状難燃剤は、前記繊維構造体に乾式含浸したことを特徴とする。
【0026】
通常用いられる湿式含浸法は、溶融混練法等を用いて樹脂及び難燃剤を溶媒に溶解又は分散した形態に製造した後、これを繊維構造体に含浸させる方法である。通常用いられる溶媒は、揮発性を有する化合物であって、人体や環境に有害であり、最終製品内に少量でも存在する場合、耐久性及び強度低下の原因になる。また、樹脂及び難燃剤を溶融混練する場合、混和性向上のために多様な添加剤が必要となるため、工程の効率及び製造費用面からも好ましくない。
【0027】
一方、本発明の一具現例による前記熱可塑性複合材は、粒子形状を有する熱可塑性樹脂と難燃剤を乾式混合して、前記網構造の繊維構造体に乾式含浸させたものであって、湿式含浸法で製造された熱可塑性複合材に比べて、向上した耐久性及び強度を具現すると同時に、優れた経済性及び環境に優しい性質を具現することができる。
【0028】
また、前記熱可塑性樹脂粒子が約1μm~約50μmの粒径を有する球状を有することによって、前記粒子状の難燃剤と乾式混合するとき、別途添加剤なしにも均一に混合可能であり、断面の平均直径が約15μm~約20μmである連続繊維からなる網構造の繊維構造体に対して高い含浸率を示し得る。
【0029】
前記熱可塑性樹脂粒子は、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレングリコール(PEG)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、耐衝撃ポリスチレン(High Impact Polystyrene,HIPS)、ポリラクト酸(PLA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つを含んでいてもよい。
【0030】
前記熱可塑性樹脂粒子がかかる化合物からなることによって、約1μm~約50μmの粒径を有する球状に製造しやすく、前述した種類の連続繊維と用いられて、熱可塑性複合材に向上した耐久性及び強度を付与し得る。
【0031】
前記熱可塑性複合材は、前記熱可塑性樹脂粒子とともに粒子状難燃剤を含む。前記粒子状難燃剤は、前記熱可塑性樹脂粒子のように、前記繊維構造体内に粒子形状を維持しながら含浸したものである。
【0032】
前記熱可塑性樹脂粒子の場合、通常、熱に対する安全性が低くて、難燃化処理が容易ではない。また、前記熱可塑性複合材の繊維構造体は、連続繊維を含むものであって、熱可塑性樹脂から連続繊維へ熱が伝達され、さらに焼きやすくなり、繊維の連続した配列によって可燃性物質の伝達が加速化して、難燃化が容易ではない問題がある。
【0033】
このため、本発明の一具現例による前記熱可塑性複合材は、前記熱可塑性樹脂粒子とともに粒子状難燃剤を含み、より具体的には、前記熱可塑性樹脂粒子及び粒子状難燃剤を前記網構造の繊維構造体の内部に均一に含浸させることによって、優れた難燃化処理が可能である。
【0034】
前記粒子状難燃剤の粒径は、約1μm~約10μmであってもよく、例えば、約1μm~約5μmであってもよく、例えば、約2μm~約3μmであってもよい。前記粒子状難燃剤の粒径が前記範囲を満すことで、前記熱可塑性樹脂粒子と均一に混合可能であり、前記繊維構造体内に高い含浸率に含浸して、前記熱可塑性複合材が全面にかけて均一な難燃特性を表し得る。
【0035】
前記粒子状難燃剤の比重(specific gravity)は、約1~約3であってもよく、例えば、約1~約2であってもよく、例えば、約1~約1.5であってもよい。前記範囲の比重を有する粒子状難燃剤を用いることによって、前記繊維構造体内に乾式法で含浸することが有利であり、高分子粒子と類似する比重として高分子間に均一に分布することができ、難燃効果を極大化することができる。
【0036】
具体的には、前記粒子状難燃剤は、非ハロゲン系難燃剤であってもよく、例えば、燐系難燃剤、窒素系難燃剤又は燐窒素系難燃剤を含んでいてもよい。このとき、前記燐窒素系難燃剤とは、燐系難燃剤及び窒素系難燃剤の物理的混合物であってもよく、燐系化合物及び窒素系化合物が化学的に結合して形成された難燃剤であってもよい。
【0037】
かかる種類の粒子状難燃剤を用いることによって、前記熱可塑性複合材は、向上した難燃性、耐着色性及び耐ガソリン性を具現することができ、前記熱可塑性樹脂粒子と乾式法で均一に混合可能であり、前記範囲の粒径及び比重を有するように容易に制御できる利点を有する。
【0038】
前記熱可塑性複合材は、前記熱可塑性樹脂粒子100重量部に対し、前記粒子状難燃剤を約20重量部~約30重量部含んでいてもよく、例えば、約25重量部~約30重量部含んでいてもよい。前記粒子状難燃剤と前記熱可塑性樹脂粒子の含量がかかる重量比を満すことで、乾式法で互いに均一に混合可能であり、前記熱可塑性複合材が建物、車両等に適用される難燃性の基準を満し得る。
【0039】
本発明の他の具現例では、熱可塑性複合材の製造方法を提供する。具体的には、前記熱可塑性複合材の製造方法は、少なくとも1層の繊維製織シートを含む網構造の繊維構造体を製造するステップ;粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子を製造するステップ;前記熱可塑性樹脂粒子と粒子状難燃剤を乾式混合するステップ;及び混合した前記熱可塑性樹脂粒子と前記粒子状難燃剤を前記繊維構造体の内部に含浸させるステップを含む。
【0040】
前記熱可塑性複合材の製造方法によって、少なくとも1層の繊維製織シートを含む網構造の繊維構造体;粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子;及び粒子状難燃剤を含み、前記熱可塑性樹脂粒子及び前記粒子状難燃剤は、前記繊維構造体の内部に含浸した構造である熱可塑性複合材を製造することができる。
【0041】
前記熱可塑性複合材の製造方法において、前記繊維製織シートは、ガラス繊維、セラクウール(cerakwool)繊維、ミネラル繊維、カーボン繊維、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つの繊維を製織して製造される。
【0042】
具体的には、前記繊維製織シートは、前記繊維を朱子織、綾織又は平織の構造に製織して製造することができる。前記熱可塑性複合材が2層以上の繊維製織シートを含む場合、それぞれの繊維製織シートは、同じ製織構造を有してもよいし、異なる製織構造を有してもよい。
【0043】
また、前記網構造の繊維構造体は、複数の繊維製織シートを、例えば、等方向積層、直交積層、非対称直交積層、非対称積層して製造されてもよい。このとき、等方向積層とは、複数の繊維製織シートの繊維が同じ配向性を有するように積層することであり、直交積層とは、複数の繊維製織シートの繊維が互いに直交するように交互積層することであり、非対称直交積層とは、複数の繊維製織シートの繊維が直交するものの、ランダムに積層することであり、非対称積層とは、複数の繊維製織シートの繊維が直交しない所定の角度を有するように交互積層するかランダムに積層することである。
【0044】
前記繊維製織シートの製織構造及びこの組み合わせによって前記繊維構造体の網構造が異なり、前記熱可塑性樹脂粒子及び粒子状難燃剤が含浸し得る気孔構造が異なる。
【0045】
一具現例において、前記網構造の繊維構造体は、朱子織又は綾織の繊維製織シートと平織の繊維製織シートを交互積層して製造されてもよい。
【0046】
他の具現例では、前記網構造の繊維構造体は、複数の綾織の繊維製織シートを直交積層して製造されてもよい。
【0047】
前記熱可塑性複合材の製造方法は、粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子を製造するステップを含む。前記熱可塑性樹脂粒子は、熱可塑性樹脂原料から前記範囲の粒径を有する球状に製造されてもよい。
【0048】
前記粒径が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子を製造するステップは、具体的には、熱可塑性樹脂を押出機に投入するステップ;前記熱可塑性樹脂から熱可塑性溶融樹脂噴射液を形成するステップ;及び前記熱可塑性溶融樹脂噴射液を噴射ノズルで噴射すると同時に冷却して、粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子を得るステップを含んでいてもよい。
【0049】
前記熱可塑性樹脂を押出機に投入するステップにおいて、押出機に投入される熱可塑性樹脂原料は、特に制限されないが、例えば、ペレット(pellet)状の熱可塑性樹脂であってもよい。ペレット状の熱可塑性樹脂は、最大大きさが約1mm~約5mmである無定形粒子状の熱可塑性樹脂である。これを押出機に投入した後、後続過程を経て粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子を得ることができる。
【0050】
前記押出機に投入された熱可塑性樹脂は、溶融して、熱可塑性溶融樹脂噴射液として製造されてもよい。
【0051】
具体的には、前記熱可塑性樹脂から熱可塑性溶融樹脂噴射液を形成するステップは、前記熱可塑性樹脂を噴射ノズルに移動させるステップ;及び前記熱可塑性樹脂が噴射ノズルで加熱され、熱可塑性溶融樹脂噴射液が形成されるステップを含んでいてもよい。すなわち、押出機に投入された前記熱可塑性樹脂原料が噴射ノズルに移動し、高温噴射ノズルで溶融して、熱可塑性溶融樹脂噴射液として製造されてもよい。
【0052】
このとき、前記噴射ノズルの温度は、約200℃~約400℃であってもよい。前記温度範囲によって前記噴射ノズルで熱可塑性樹脂原料が溶融して、好適な粘度を有する熱可塑性溶融樹脂噴射液が製造されてもよい。
【0053】
前記熱可塑性溶融樹脂噴射液は、約100℃~約300℃温度でその粘度が約10Pa・s~約104Pa・sであってもよく、例えば、約10Pa・s~約102Pa・sであってもよい。前記熱可塑性溶融樹脂噴射液の粘度が前記範囲に制御されることによって、好適な流れ性を確保することができ、噴射ノズルを介して約1μm~約50μmの粒径を有する液滴として噴射されやすい。
【0054】
前記熱可塑性溶融樹脂噴射液の粘度は、熱可塑性樹脂原料の種類、噴射ノズルの温度等によって調節することができ、例えば、活剤、可塑剤、ワックス、酸化防止剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つ以上を好適な含量に添加して調節することもできる。
【0055】
前記熱可塑性溶融樹脂噴射液は、前記噴射ノズルを介して噴射されると同時に冷却して、粒径が約1μm~約50μmである熱可塑性樹脂粒子として製造されてもよい。すなわち、前記熱可塑性溶融樹脂噴射液が噴射ノズルを介して高温液滴状に噴射され、前記噴射は、クーリングチャンバー内で行われて、噴射と同時に前記液滴が冷却されて、約1μm~約50μm粒径の微細な大きさを有する熱可塑性樹脂粒子を得ることができる。
【0056】
より具体的には、前記熱可塑性溶融樹脂噴射液は、前記噴射ノズルに空気とともに注入されてもよい。前記熱可塑性溶融樹脂噴射液と共に注入される空気の温度、圧力及び注入速度を調節することによって、前記熱可塑性溶融樹脂噴射液を噴射した後、液滴の大きさ及び形状を調節することができる。
【0057】
具体的には、前記熱可塑性溶融樹脂噴射液とともに注入される空気の温度は、約200℃~約500℃であってもよく、例えば、約250℃~約450℃であってもよい。
【0058】
また、前記空気の圧力は、約1psi~約145psiであってもよく、例えば、約5psi~約60psiであってもよい。
【0059】
また、前記空気の注入速度は、約1m/s~約100m/sであってもよく、例えば、約10m/s~約90m/sであってもよい。
【0060】
前記空気の温度、圧力及び注入速度が前述した範囲を同時に満すことで、前記熱可塑性溶融樹脂噴射液から最終形成しようとする微細な大きさの熱可塑性樹脂粒子を製造することができ、均一な粒度分布を有するように製造することができる。
【0061】
前記噴射ノズルの直径は、約0.5mm~約10mmであってもよく、例えば、約1mm~約5mmであってもよい。前記噴射ノズルの直径が前記範囲を満すことで、前述した範囲の粒径を有する熱可塑性樹脂粒子を容易に製造することができ、粒子を吐出する工程の効率性が向上する。
【0062】
前記熱可塑性樹脂噴射液は、前記噴射ノズルを介して約-30℃~約30℃のクーリングチャンバー内に噴射されることによって、噴射と同時に冷却されてもよい。このような温度範囲のクーリングチャンバーを用いて噴射と同時に冷却することによって、前述した範囲の粒径を有する熱可塑性樹脂粒子を均一な粒度分布に製造することができ、粒子の捕集効率が向上する。
【0063】
これによって、前記約1μm~約50μmの粒径を有する熱可塑性樹脂粒子が吐出されてもよい。
【0064】
前記熱可塑性複合材の製造方法は、製造された前記熱可塑性樹脂粒子と粒子状難燃剤を乾式混合するステップを含む。前記熱可塑性樹脂粒子が1μm~50μmの粒径を有する微細な大きさに製造されることによって、前記粒子状難燃剤と乾式混合によって均一に混合する利点を得ることができる。
【0065】
例えば、ペレット(pellet)状のように、粒子の大きさが比較的に大きくて、形状が一定ではない熱可塑性樹脂と難燃剤を混合するためには、溶融混練法を用いなければならない。また、このような溶融混練法のためには、混和性を高めるための様々な添加剤が必要となる。溶融混練法に必ず用いられる溶媒は、再使用や廃棄のために回収工程が必ず伴い、高価であり、少量残留する場合には人体や環境に有害である問題がある。
【0066】
前記熱可塑性複合材の製造方法において、前記熱可塑性樹脂粒子と粒子状難燃剤は、溶媒又は添加剤を全く用いていない乾式混合によって混合されるものであって、このような方法でも均一に混合することができ、環境に優しいし、費用及び時間の節減効果を具現することができる。
【0067】
具体的には、前記熱可塑性樹脂粒子と前記粒子状難燃剤は、ボールミル(ball-mill)方式を用いて混合することができる。
【0068】
このように、乾式混合した熱可塑性樹脂粒子及び粒子状難燃剤は、前記繊維構造体の内部に含浸される。このとき、前記繊維構造体の内部にこれらを含浸させる具体的な方法は、混合した熱可塑性樹脂粒子と粒子状難燃剤を前記繊維構造体上に分散して、前記繊維構造体の網構造の中に入るようにすることである。
【0069】
これによって、少なくとも1層の繊維製織シートを含む網構造の繊維構造体と、その内部に粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子;及び粒子状難燃剤が含浸した構造である熱可塑性複合材が製造されてもよい。
【0070】
本発明のさらに他の具現例では、前記熱可塑性複合材の熱圧着物を含むパネルを提供する。
【0071】
前記熱可塑性複合材は、少なくとも1層の繊維製織シートを含む網構造の繊維構造体;粒径(particle diameter)が1μm~50μmである熱可塑性樹脂粒子;及び粒子状難燃剤を含み、前記熱可塑性樹脂粒子及び前記粒子状難燃剤は、前記繊維構造体の内部に含浸した構造を有するものであって、前記パネルは、これを熱圧着して製造されてもよい。
【0072】
具体的には、前記熱可塑性複合材の熱圧着物は、約1ton~約7tonの圧力及び約180℃~約220℃の温度条件で行うことができる。前記熱可塑性複合材が前記範囲の圧力及び温度条件下で熱圧着されることによって、前記繊維構造体が好適に圧着されて、前記熱可塑性樹脂粒子が十分溶融し、前記繊維構造体の繊維の間で決着材の役割を上手に行うことができる。
【0073】
また、前記熱可塑性複合材の熱圧着は、前記範囲の圧力及び温度条件下で、約20分~約30分間行うことができる。これによって、前記熱可塑性樹脂粒子の決着性能を具現すると同時に、前記粒子状難燃剤の難燃物性を損傷させない。
【0074】
前記パネルは、建物、車両及びフィルター等の様々な用途に活用可能であり、前記熱可塑性複合材から製造されることによって、全面にかけて均一な難燃物性及び耐久性を具現することができる。
【0075】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。但し、下記に記載した実施例は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎないし、これをもって本発明が制限されてはならない。
【0076】
<実施例及び比較例>
実施例1
断面の平均直径が10μm~20μmであるガラス繊維を用いて綾織製織構造を有するガラス繊維製織シートを製造した後、これらをそれぞれ7層直交積層して網構造の繊維構造体を製造した。
【0077】
粒子の最大大きさが3mmであるペレット(pellet)状のポリプロピレン樹脂原料を押出機に投入して、前記ポリプロピレン樹脂原料を温度が250℃である噴射ノズルに移動して、ポリプロピレン溶融樹脂噴射液を製造した。次に、前記ポリプロピレン溶融樹脂噴射液を直径が1mmであり、圧力が140psiである噴射ノズルに空気とともに注入した。前記空気の温度は、400℃であり、圧力は、600psiで、注入速度は、35m/sであった。前記プロピレン溶融樹脂噴射液は、25℃のクーリングチャンバー内に噴射して、噴射と同時に冷却することによって、粒径が約10μmであるプロピレン樹脂粒子として製造された。
【0078】
次に、製造された前記プロピレン樹脂粒子100重量部に対し、粒子状難燃剤として粒径が2μm~3μmであり、比重が1.35である燐窒素系複合難燃剤を30重量部ボールミル(ball-mill)方式で乾式混合した。
【0079】
前記混合したプロピレン樹脂粒子及び粒子状難燃剤を前記網構造の繊維構造体上に分散して、前記網構造の中に入るように含浸して熱可塑性複合材を製造した。
【0080】
実施例2
粒子状難燃剤として粒径が5μm~10μmであり、比重が1.8である燐系難燃剤を用いたことを除いては、前記実施例1と同じ方法で熱可塑性複合材を製造した。
【0081】
比較例1
粒子の最大大きさが3mmであるペレット(pellet)状のポリプロピレン樹脂原料を冷凍粉碎して、粒径が50μmを超えるポリプロピレン樹脂粒子を熱可塑性樹脂粒子として用いたことを除いては、前記実施例1と同じ方法で熱可塑性複合材を製造した。
【0082】
<評価>
前記実施例1-2及び比較例1の熱可塑性複合材をそれぞれ180℃~220℃の温度及び1ton~7tonの圧力下で、20分~30分間熱圧着してパネルを製造した。次に、前記パネルに対して下記のように物性を評価した。
【0083】
実験例1:難燃性評価
前記実施例1-2及び比較例1の熱可塑性複合材から製造された前記パネルに対して、125mm×13mm・20mm(長さ・幅・厚さ)のバー(bar)状の試片を設けた。次に、各々の試片の長さ方向の一末端をクランプで固定し、固定した試片の下段に脱脂綿を敷いておいた。次に、下記に記載したUL 94 V Test規格テスト(Vertical Burning Test)法で難燃性を評価しており、下表1に記載した評価基準に従って難燃等級を評価した結果を表2に記載した。
【0084】
<UL 94 V Test規格テスト>
1.20mm長さの炎を0秒間試片に1次接炎した後、試片の燃焼時間t1を測定しており、燃焼の様子を記録した。
【0085】
2.1次接炎した後、燃焼が終了すると、さらに10秒間2次接炎した後、試片の燃焼時間t2及び火種が着火した時間(glowing time)t3を測定しており、燃焼の様子を記録した。
【0086】
3.t1、t2及びt3の燃焼時間と燃焼の様子(クランプまでの燃焼有無、落下による脱脂綿の発火有無)を判断して、下記基準に基づいて等級を算出した。このとき、「クランプまでの燃焼有無」は、各々の試片がいずれも燃焼してクランプまで燃焼するか否かを意味し、「落下による脱脂綿の発火有無」は、各々の試片がクランプまでいずれも燃焼して、炎が下段に敷いておいた脱脂綿に落下して発火するか否かを意味する。
【0087】
【0088】
【0089】
前記表2の結果を参照すると、前記実施例1及び実施例2の熱可塑性複合材を熱圧着して製造されたパネルは、前記比較例1の熱可塑性複合材を熱圧着して製造されたパネルに比べて優れた難燃性を示すことが分かる。