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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】ネオデカン酸亜鉛を含む消臭剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20220912BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20220912BHJP
   A61K 8/28 20060101ALI20220912BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20220912BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/92
A61K8/26
A61K8/28
A61Q15/00
A61L9/01 H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019524251
(86)(22)【出願日】2017-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017078604
(87)【国際公開番号】W WO2018087147
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-06
(31)【優先権主張番号】1619015.9
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(74)【代理人】
【識別番号】100195419
【弁理士】
【氏名又は名称】矢後 知美
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス,マシュー ピーター
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06599472(US,B1)
【文献】特開2008-125810(JP,A)
【文献】特開平10-045543(JP,A)
【文献】特開2000-219607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61L 9/00-22
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフレグランス成分を含むフレグランス構成要素に溶解されているか、またはこれと混合されているネオデカン酸亜鉛を含む、消臭剤。
【請求項2】
フレグランス構成要素が、グループAからの少なくとも1つのフレグランス成分、および/またはグループBからの少なくとも1つのフレグランス成分を含み、ここで
グループA成分が、3,7-ジメチルオクタ-6-エナール;3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール;2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド;(E)-デカ-4-エナール;エチル2-メチルブチラート;1-フェニルエチルアセタート;(Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルアセタート;ヘキシルアセタート;イソアミルアセタート;リツェアクベバオイル;ノナナール;オレンジオイル;オレンジテルペン;プレニルアセタート;4-メチル-2-(2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)テトラヒドロ-2H-ピラン;4-メチレン-2-フェニルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン;2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エンカルバルデヒドからなる群から選択される;および
グループB成分が、2,6,10-トリメチルウンデカ-9-エナール;アルモワーズオイルモロッコ;8-(sec-ブチル)-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン;(2E)-3-フェニルプロパ-2-エナール;(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール;エチルカプロアート;1,3,3-トリメチル-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン;ユーカリオイル;1-(1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン;ヘキシルイソブチラート;(E)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタ-3-エン-2-オン;イソブチルイソブチラート;イソブチルキノロン;イソプロピルメチル-2-ブチラート;(2E,6Z)-3,7-ジメチルノナ-2,6-ジエンニトリル;3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール;2,6-ジメチルヘプタ-5-エナール;メチルアミルケトン;メチルベンゾアート;メチルヘプテノン;メチルヘキシルケトン;フェニルエチルアセタート;テトラヒドロミルセノール;パチョリオイル;トリデセン-2-ニトリル;6-メトキシ-2,6-ジメチルオクタナール;5-tert-ブチル-2-メチル-5-プロピル-2H-フラン;(4E)-9-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-4-デセナール;1-メチル-2-(5-メチルヘキサ-4-エン-2-イル)シクロプロピル)メタノール;および3-(4-イソブチル-2-メチルフェニル)プロパナールからなる群から選択される、請求項に記載の消臭剤。
【請求項3】
以下の香料グループA成分:
3,7-ジメチルオクタ-6-エナール;3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール;2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド;(E)-デカ-4-エナール;エチル2-メチルブチラート;1-フェニルエチルアセタート;(Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルアセタート;ヘキシルアセタート;イソアミルアセタート;リツェアクベバオイル;ノナナール;オレンジオイル;オレンジテルペン;プレニルアセタート;4-メチル-2-(2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)テトラヒドロ-2H-ピラン;4-メチレン-2-フェニルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン;2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エンカルバルデヒ
のうち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つ;および
任意に、以下の香料グループB成分:
2,6,10-トリメチルウンデカ-9-エナール;アルモワーズオイルモロッコ;8-(sec-ブチル)-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン;(2E)-3-フェニルプロパ-2-エナール;(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール;エチルカプロアート;1,3,3-トリメチル-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン;ユーカリオイル;1-(1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン;ヘキシル イソブチラート;(E)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタ-3-エン-2-オン;イソブチルイソブチラート;イソブチルキノロン;イソプロピルメチル-2-ブチラート;(2E,6Z)-3,7-ジメチルノナ-2,6-ジエンニトリル;3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール;2,6-ジメチルヘプタ-5-エナール;メチルアミルケトン;メチルベンゾアート;メチルヘプテノン;メチルヘキシルケトン;フェニルエチルアセタート;テトラヒドロミルセノール;パチョリオイル;トリデセン-2-ニトリル;6-メトキシ-2,6-ジメチルオクタナール;5-tert-ブチル-2-メチル-5-プロピル-2H-フラン;(4E)-9-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-4-デセナール;1-メチル-2-(5-メチルヘキサ-4-エン-2-イル)シクロプロピル)メタノール;および3-(4-イソブチル-2-メチルフェニル)プロパナー
のうち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つ
を含有する、フレグランス構成要素を含む、請求項に記載の消臭剤。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の消臭剤を含む、デオドラント組成物。
【請求項5】
制汗デオドラント組成物である、請求項に記載のデオドラント組成物。
【請求項6】
アルミニウムベースのおよび/またはジルコニウムベースの制汗剤がないか、または実質的にない、請求項に記載のデオドラント組成物。
【請求項7】
無水の組成物である、請求項4~6のいずれか一項に記載のデオドラント組成物。
【請求項8】
悪臭発生源の部位へ消臭性利益を送達する方法であって、該方法が、該発生源に近接する空間への悪臭の発散を予防、低減または抑制するために、請求項4~7のいずれか一項に記載のデオドラント組成物を、前記部位へ、または前記部位に近接する場所へ適用する工程を含む、前記方法。
【請求項9】
悪臭発生源の部位へ消臭性利益および持続的な香りの利益を提供する、請求項に記載の方法であって、該方法が、前記部位へ、または前記部位に近接する場所へ、請求項4~7のいずれか一項に記載の香りづけされたデオドラント組成物を適用する工程を含む、前記方法。
【請求項10】
デオドラント組成物を人体の表面へ適用する工程を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
請求項4~7のいずれか一項に記載のデオドラント組成物を製造する方法であって、該方法が、消臭剤を、消臭剤が可溶であるかまたは混和できるデオドラントベース中へ組み込む工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本開示は、ヒト、動物および環境の悪臭、特に人体の悪臭を予防または抑制することにおいて有用な消臭剤(deodorizing agent)、ならびにそれを含有するデオドラント組成物(deodorant composition)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
デオドラント活性剤は、悪臭がいったん形成されるとそれをマスクするように、またはそれらの形成を予防または妨げるように設計されている成分または配合物である。
前者の方法(マスキング)は、フレグランス成分の使用に関連し、気相において作用し、ヒト被験者による悪臭の存在の知覚を低下させる嗅覚シグナルを作り出す。
【0003】
後者の方法(悪臭予防または抑制)は、悪臭成分に化学的に直接反応または相互作用させることによって、あるいは悪臭成分が形成される経路を不活性化または遮断することによって悪臭成分を除去するためのデオドラント活性剤を用いる。人体の悪臭を一例とすると、後者の方法は、微生物の局所集団を破壊するために、汗に含まれ悪臭を発生する悪臭前駆化合物に作用する殺菌剤または静菌剤の使用のいずれかに関与し、および/またはこれは汗の流束を予防または減少させるために、収斂性の制汗成分(典型的にはアルミニウムまたはジルコニウム塩)の使用に関与する。
【0004】
多くのデオドラントまたは制汗活性成分の主な欠点は、前述のアルミニウムまたはジルコニウム塩または殺菌剤および静菌剤などの一般的に使用される成分のいくつかが、ヒトの皮膚にとって、またはヒトの皮膚に含まれるマイクロフローラの集団にとって不快であると認識されることである。その結果、これらの材料の使用を減らすかさらにはなくすことさえ業界では望まれている。これは特に、ヒトの皮膚に局所的に適用することを意図した化粧品におけるそれらの使用に関して当てはまる。
【0005】
カルボン酸亜鉛は、一般に安全であると認識されている、デオドラント活性成分の1属を代表し、これは汗に含まれる無数の硫黄含有または窒素含有成分または鎖脂肪酸などの悪臭成分と化学的に相互作用するまたは反応させることによって悪臭中和または除去効果を発揮するように作用する。リシノール酸亜鉛は、デオドラント用途の観点において先行技術においてしばしば言及されているカルボン酸亜鉛の特定の例である。
【0006】
実質的に全てのデオドラント組成物は、臭気マスキング成分(フレグランス)および臭気予防/抑制活性成分の両方を組み合わせるであろう。したがって、配合者にとっての課題は、臭気予防/抑制活性成分と臭気マスキング成分とが互いに干渉せず、むしろこれらの成分に起因する全体的な臭気予防/抑制/マスキング特性、ならびに快楽効果が、十分に活用させるために、それぞれを補完しあうことを確保することである。
【0007】
例えば、フレグランス成分はデオドラント組成物において重要な臭気マスキングの役割を果たすことができるが、それらは審美的配慮を念頭に置いてデオドラント組成物においても使用され、そしてデオドラント活性成分の使用は、不均衡な、魅力的でない、あるいは不快な香りの印象を引き起こすべきではなく、それに寄与すべきではない。
【0008】
一方で、悪臭化合物を吸収するために化学的に相互作用するカルボン酸亜鉛などのデオドラント活性成分は、それらがデオドラント組成物中へ組み込まれるレベルが十分に高くない限り、一般に効力を欠くと見なされる。許容可能な臭気予防/抑制効果を発揮するために、これらの活性成分はフレグランス含有デオドラント組成物ベースに容易に組み込まれる必要があり、そして好ましくは有効なレベルで容易にそれに可溶であるかまたは混和できる。
【0009】
しかしながら、悪臭中和カルボン酸亜鉛は、フレグランス含有デオドラント組成物に容易に組み込まれないことが特有の欠点である。特に、低分子量同族体のカルボン酸亜鉛に含まれる残留遊離酸は悪臭を放つ傾向があり、それらを含有するあらゆるデオドラント組成物の香りの印象を乱し不均衡にする可能性がある。一方で、リシノール酸亜鉛などの高分子量同族体のカルボン酸亜鉛は、所与の質量のカルボン酸亜鉛に対して比較的低いレベルの亜鉛イオンのために、許容できる消臭性効果(deodorancy effect)を与えるのに十分高いレベルでデオドラントベースに装填することが困難である。それらの効力(efficacy)の欠如は、デオドラントベースへのそれらの低い溶解度によってさらに悪化する可能性がある。さらに、低い溶解度はそれらの消臭効力に影響し、処置を必要とする部位に投与された場合、見苦しい残留物を残す可能性がある。さらにまた、デオドラント組成物がエアロゾル形式の場合、溶解していない材料がノズル詰まりを引き起こす可能性がある。
【0010】
悪臭発生源を含有する部位に適用された場合に高レベルの知覚される悪臭低減をもたらすことができるデオドラント活性成分およびそれを含有するデオドラント組成物を提供する必要性が依然としてある。ヒト対象、具体的にはヒト対象の下腕部に局所適用した場合に高レベルの悪臭低減知覚をもたらすことができるデオドラント活性成分およびそれを含有するデオドラント組成物が特に必要とされている。さらに、フレグランス含有デオドラント組成物に有効なレベルで容易に組み込むことができ、そしてバランスのとれていない、魅力のない、または不快な全体的な香りの印象ですら引き起こさない、またはそれに寄与しないデオドラント活性剤を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の概要
本発明者らは、ヒト、動物および環境の悪臭、しかし具体的には人体の臭気の抑制に有用なデオドラント組成物、特にフレグランス含有デオドラント組成物の性能が、該組成物へのネオデカン酸亜鉛を含有する消臭剤の添加によって改善できることを発見した。より具体的には、本発明者らは、ネオデカン酸亜鉛が驚くほど容易な方法でデオドラント組成物ベースに組み込むことができることを見出した。さらに、悪臭発生源の部位に適用されるかかるデオドラント組成物は、消臭性利益および持続的で歪まれていない心地良い香りの印象を与えることができる。
【0012】
したがって、本発明は、第一の側面において、ネオデカン酸亜鉛を含む消臭剤に関する。
他の側面において、本発明は、本発明の消臭剤を含むデオドラント組成物、特にフレグランス含有デオドラント組成物に関する。
【0013】
本発明の一態様において、該デオドラント組成物は、制汗デオドラント組成物である。
本発明の一態様において、該デオドラント組成物は、アルミニウムおよび/またはジルコニウム収斂性制汗剤がないか、または実質的にない制汗剤デオドラント組成物である。
本発明の一態様において、該デオドラント組成物は、無水のデオドラント組成物である。
【0014】
本発明はまた、悪臭発生源の部位に消臭性利益を送達する方法を提供し、該方法は、該発生源に近接する空間への悪臭の発散を予防、低減または抑制するために、本発明のデオドラント組成物をその部位またはその部位に近接する場所に適用する工程を含む。
本発明はさらに、悪臭発生源の部位に消臭性利益および持続的な香りの利益(scent benefit)を提供する方法を提供し、該方法は、その部位に、またはその部位に近接する場所に、本発明のフレグランス含有デオドラント組成物を適用する工程を含む。
【0015】
本発明の一態様において、消臭性利益を悪臭発生源の部位に送達する方法が提供され、該方法は、本発明のデオドラント組成物を人体の表面に適用する工程を含む。
本発明の一態様において、悪臭発生源の部位に消臭性利益および持続する香りの利益を送達する方法が提供され、該方法は、本発明のデオドラント組成物を人体の表面に適用する工程を含む。
【0016】
関連する側面において、本発明は、本発明によるデオドラント組成物の製造方法に関し、該方法は、ネオデカン酸亜鉛を含む消臭剤を、当該消臭剤が可溶であるかまたは混和できるデオドラントベースに組み込む工程を含む。
本発明はさらに、消臭剤としてのネオデカン酸亜鉛の使用に関する。特に、ネオデカン酸亜鉛は、ヒト、動物および環境の悪臭、特に人体の悪臭を予防または抑制するための消臭剤として使用することができる。
本発明のこれらおよび他の側面および態様は、以下の詳細な説明および例を参照してさらに詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な記載
本発明による消臭剤は、周囲温度またはデオドラント組成物に取り込まれる温度で注ぐことができる液体の形態であるべきである。純粋な形態のネオデカン酸亜鉛は注入可能な液体であり、それ自体消臭剤として使用することができる。
【0018】
したがって、本発明の一態様において、消臭剤は、純粋な形態のネオデカン酸亜鉛から本質的になる。
本発明の他の態様において、消臭剤は、ネオデカン酸亜鉛および消臭剤用途に適合するこれのための溶媒から本質的になる溶液またはブレンドの形態であり得る。例えば、1.5以上のclog Pを有する溶媒を一般的に使用することができる。
【0019】
本発明の消臭剤は、1つ以上のフレグランス成分を含むフレグランス成分をさらに含んでもよい。したがって、本発明の一態様において、消臭剤は本質的に、少なくとも1つのフレグランス成分を含むフレグランス構成要素に溶解または混和したネオデカン酸亜鉛からなる。
【0020】
代替的に、または加えて、消臭剤は、ミリスチン酸イソプロピルなどの溶媒も含んでもよい。
消臭剤中のネオデカン酸亜鉛のレベルは、消臭剤の総重量に基づいて約1wt%~約100wt%であり得る。
【0021】
ネオデカン酸亜鉛は市販されており、周知の方法にしたがって製造することができる。好ましくは、ネオデカン酸亜鉛は精製ネオデカン酸から調製される。ネオデカン酸を精製するための好適な方法は、例えば以下の例5および6に記載される。
本発明の特定の態様において、消臭剤は、少なくとも1つのフレグランス成分を含むフレグランス構成要素に溶解または混和したネオデカン酸亜鉛を含むフレグランス含有消臭剤である。
【0022】
フレグランス構成要素にはあらゆるフレグランス成分を使用することができる。使用に好適なフレグランス成分の非限定的な例は、香料業界で使用されている標準的な参考文献、例えばArctander, Perfume and Flavour Chemicals (Aroma Chemicals), vol. I and II (1969)、およびこの著作物のそれ以降の巻および版に記載されている。
【0023】
本発明の特定の態様において、消臭剤は、悪臭中和効果を発揮するのに特に有効である少なくとも1つのフレグランス成分を含有してもよい。悪臭中和フレグランス成分は当該技術分野において知られている。しかしながら、本発明者らは、単独でまたは組み合わせて使用した場合に特に有効な悪臭中和成分である、ある種のフレグランス成分を見出した。これらの成分は、以下のグループAおよびグループBの成分を含むが、これらに限定されない:
【0024】
グループA成分は、3,7-ジメチルオクタ-6-エナール(例えばCitronellal);3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール(例えばCitronellol);2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド(例えばCyclal C);(E)-デカ-4-エナール;エチル2-メチルブチラート;1-フェニルエチルアセタート(例えばGardenol);(Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルアセタート;ヘキシルアセタート;イソアミルアセタート;リツェアクベバオイル;ノナナール;オレンジオイル;オレンジテルペン;プレニルアセタート;4-メチル-2-(2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)テトラヒドロ-2H-ピラン(例えばRose Oxide);4-メチレン-2-フェニルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン(例えばRosyrane super);2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド(例えばTricyclal)からなる群から選択される;
【0025】
グループB成分は、2,6,10-トリメチルウンデカ-9-エナール(例えばAdoxal);アルモワーズオイルモロッコ(Armoise oil Morocco);8-(sec-ブチル)-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン(例えばBigaryl);(2E)-3-フェニルプロパ-2-エナール(例えばCinnamic aldehyde);(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール(例えばCitral);エチルカプロアート;1,3,3-トリメチル-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン(例えばEucalyptol);ユーカリオイル(例えばEucalyptus globulus oil China);1-(1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン(例えばGeorgywood);ヘキシルイソブチラート;(E)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタ-3-エン-2-オン(例えばIonone beta);イソブチルイソブチラート;イソブチルキノロン;イソプロピルメチル-2-ブチラート;(2E,6Z)-3,7-ジメチルノナ-2,6-ジエンニトリル(例えばLemonile);3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール(例えばLinalool);2,6-ジメチルヘプタ-5-エナール(例えばMelonal);メチルアミルケトン;メチルベンゾアート;メチルヘプテノン;メチルヘキシルケトン;フェニルエチルアセタート;テトラヒドロミルセノール;パチョリオイル;トリデセン-2-ニトリル;6-メトキシ-2,6-ジメチルオクタナール(例えばCalypsone);5-tert-ブチル-2-メチル-5-プロピル-2H-フラン(例えばCassyrane);(4E)-9-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-4-デセナール(例えばMahonial);1-メチル-2-(5-メチルヘキサ-4-エン-2-イル)シクロプロピル)メタノール(例えばRosyfolia);および3-(4-イソブチル-2-メチルフェニル)プロパナール(例えばNympheal)からなる群から選択される。
【0026】
より特定の態様において、フレグランス構成成分は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの、以下の香料グループA成分:
3,7-ジメチルオクタ-6-エナール(例えばCitronellal);3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-オール(例えばCitronellol);2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド(例えばCyclal C);(E)-デカ-4-エナール;エチル2-メチルブチラート;1-フェニルエチルアセタート(例えばGardenol);(Z)-ヘキサ-3-エン-1-イルアセタート;ヘキシルアセタート;イソアミルアセタート;リツェアクベバオイル;ノナナール;オレンジオイル;オレンジテルペン;プレニルアセタート;4-メチル-2-(2-メチルプロパ-1-エン-1-イル)テトラヒドロ-2H-ピラン(例えばRose Oxide);4-メチレン-2-フェニルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン(例えばRosyrane super);2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド(例えばTricyclal);
【0027】
および任意に、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの、以下のグループB成分:
2,6,10-トリメチルウンデカ-9-エナール(例えばAdoxal);アルモワーズオイルモロッコ;8-(sec-ブチル)-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン(例えばBigaryl);(2E)-3-フェニルプロパ-2-エナール(例えばcinnamic aldehyde);(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール(例えばCitral);エチルカプロアート;1,3,3-トリメチル-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン(例えばEucalyptol);ユーカリオイル(例えばEucalyptus globulus oil China);1-(1,2,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-2-イル)エタノン(例えばGeorgywood);ヘキシル イソブチラート;(E)-4-(2,6,6-トリメチルシクロヘキサ-1-エン-1-イル)ブタ-3-エン-2-オン(例えばIonone beta);イソブチルイソブチラート;イソブチルキノロン;イソプロピルメチル-2-ブチラート;(2E,6Z)-3,7-ジメチルノナ-2,6-ジエンニトリル(例えばLemonile);3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール(例えばLinalool);2,6-ジメチルヘプタ-5-エナール(例えばMelonal);メチルアミルケトン;メチルベンゾアート;メチルヘプテノン;メチルヘキシルケトン;フェニルエチルアセタート;テトラヒドロミルセノール;パチョリオイル;トリデセン-2-ニトリル;6-メトキシ-2,6-ジメチルオクタナール(例えばCalypsone);5-tert-ブチル-2-メチル-5-プロピル-2H-フラン(例えばCassyrane);(4E)-9-ヒドロキシ-5,9-ジメチル-4-デセナール(例えばMahonial);1-メチル-2-(5-メチルヘキサ-4-エン-2-イル)シクロプロピル)メタノール(例えばRosyfolia);および3-(4-イソブチル-2-メチルフェニル)プロパナール(例えばNympheal)
を含むように提供されてもよい。
【0028】
好ましいフレグランス成分は、例えば、ambrofix(ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン)、radjanol(2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-シクロペンタ-3-エニル)-ブタ-2-エン-1-オール)、ベンジルサリチラート、cis-3-ヘキセニルサリチラート、クマリン、シクラメンアルデヒド、ジヒドロジャスモナート、hedione(メチルジヒドロジャスモナート)、lilial(3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチルプロパナール)、nympheal(3-(4-イソブチル-2-メチルフェニル)プロパナール)、メチルイオノン、フェニルエチルフェニルアセタート、テトラヒドロゲラニルアセタート、trimofix(無水酢酸および1,5,10-トリメチル-1,5,9-シクロデカトリエンの反応生成物)、およびtropional(3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール)を含む。
【0029】
フレグランス構成要素、またはフレグランス構成要素の一部を形成するあらゆるフレグランス成分は、遊離フレグランスオイルの形態で、またはカプセル化形態で、あるいは遊離オイルとしておよびカプセル化形態の両方で存在してもよい。好適なカプセル化媒体は、水溶性の加工デンプンのマトリックスを含む。
【0030】
フレグランスを封入するのに好適なデンプンは、生デンプン、あらかじめゼラチン化されたデンプン、塊茎、マメ科植物、穀類および穀物由来の加工デンプン(modified starch derived from tubers, legumes, cereal and grains)、例えばコーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、ワキシーコーンスターチ、オート麦デンプン、キャッサバデンプン、ワキシーオオムギ、ワキシーライスデンプン、スイートライスデンプン、アミオカ、ジャガイモデンプン、タピオカデンプンおよびそれらの混合物から作られ得る加工デンプン(modified starches)である。
【0031】
カプセル化マトリックスとしての使用に好適な加工デンプンには、化学的、物理的、例えば熱や圧力によって、あるいは酵素的に加工されたデンプンが含まれる。それらは、加水分解デンプン、酸希釈デンプン、長鎖炭化水素のデンプンエステル、デンプンアセテート、デンプンオクテニルスクシネート、およびそれらの混合物を含む。約0.01%~約10.0%の範囲の置換度を有するデンプンエステルを、フレグランス成分をカプセル化するために使用することができる。修飾エステルの炭化水素部分は、C5からC16までの炭素鎖であるべきである。
【0032】
消臭剤は、あらゆる製品形式において、あらゆる種類のデオドラント組成物ベースに容易に組み込まれる。特に、消臭剤は、有効な消臭性効果(deodorancy effect)をもたらすレベルでデオドラント組成物ベースに溶解性または混和性である。特に、消臭剤は、所望の消臭効果(deodorizing effect)を達成するのに必要な任意のレベルでデオドラント組成物ベースに組み込むことができる。
【0033】
本発明の特定のデオドラント組成物は、完成したデオドラント組成物が約20wt%までの、より具体的には2~10wt%、さらに具体的には約2~5wt%、例えば約4wt%のネオデカン酸亜鉛を含むようなレベルの消臭剤を含み得る。ネオデカン酸亜鉛がデオドラント組成物に溶解しているかまたはそれと混和しているという事実を考えると、それが処理を必要とする場所に、または処理された場所と接触する他の表面に適用される場合に見苦しい残留物を残さない。
【0034】
さらに、本発明者らは、処理を必要とする表面、例えばヒトの皮膚に適用されたネオデカン酸亜鉛が薄いフィルムを形成し、それがやや閉塞性であり、そしてフレグランス構成要素が時間とともにゆっくり蒸発することを可能にすることを見出した。これにより、持続した期間にわたってフレグランスが実質的に直線的に放出されることをもたらす。この驚くべき知見は、持続期間にわたって実質的に一定の香りの印象を与えるためのデオドラント組成物の調製を可能にする。
【0035】
本発明のデオドラント組成物は、その形態として悪臭を除去するために、例えば腋窩において使用することができる。腋窩汗において鍵となる匂い物質(odorants)には、以下のものが含まれる:短鎖脂肪酸、例えば3-ヒドロキシ-3-メチルヘキサン酸(HMHA)、3-メチル-2-ヘキセン酸(Schizophrenic acid)、4-エチルオクタン酸(Goat acid);低い嗅覚閾値を有するスルファニルアルコール(チオール)、例えば3-メチル-3-スルファニルヘキサン-1-オール(sweat thiol)、2-メチル-3-スルファニルブタン-1-オール(onion thiol)、または3-メルカプト-ヘキサン-1-オール;ステロイド、例えば5α-アンドロスタ-16-エン-3-オンまたは5α-アンドロスタ-16-エン-3α-オール。他の酸もしばしば存在し、例えば酪酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、またはオクタン酸である。特に本発明のデオドラント組成物は、チオールが腋窩に発生すると、これらを取り除くことができる。
【0036】
本発明の消臭剤は、ヒト、動物または環境の悪臭の発生源を含有する場所、または含有する場所に近接する場所への適用のために当該分野で公知のあらゆるデオドラント組成物製品形式で使用することができる。消臭剤は、人体への局所適用、特にヒト腋窩への局所適用において特に有用である。好適な製品形式は、ワックスベースのスティック、石鹸ベースのスティック、ロールオン懸濁液、溶液、エマルジョンまたはゲル、絞りスプレー、ポンプスプレーおよびエアロゾルを含む。
【0037】
本発明の消臭剤に加えて、各デオドラント組成物製品形式は、特定の製品形式で従来用いられている追加の構成要素のそれ自体の選択を含有することができる。追加の構成要素の種類は当該技術分野において周知であり、かかる構成要素の非限定的な選択肢を以下に列挙する。
【0038】
本発明のデオドラント組成物は、フレグランス構成要素およびエモリエント系を含み、そして以下に記載されているおよび/または当業者に知られている様々な任意成分を含有していてもよい。
フレグランス構成要素は、本明細書で上述したように消臭剤の一部として、またはデオドラント組成物ベースの一部としてデオドラント組成物に組み込むことができる。
【0039】
代替の態様において、消臭剤は、ネオデカン酸亜鉛または好適な溶媒中のネオデカン酸亜鉛の溶液から本質的になる第1の部分、およびフレグランス構成要素を含む第2の部分を含む部分のキットの形態であり得る。さらなる代替において、フレグランス構成要素は、該第1の部分と第2の部分との間で分割され得る。これらの部分は、デオドラント組成物の調製中に、デオドラント組成物ベースに別々に、順次にまたは同時に組み込まれることを意図している。
【0040】
デオドラント組成物中に含まれるフレグランス構成要素のレベルは、所望の香りの印象を提供するためにおよび/または悪臭予防/抑制もしくはマスキングを提供するために有効であるべきである。
通常、本発明のデオドラント組成物は、デオドラント組成物の総量に基づいて約0.05wt%~約10wt%の範囲の濃度で総フレグランス構成要素を含み得る。
【0041】
本発明のデオドラント組成物は、少なくとも1つのエモリエント成分または異なるエモリエント成分の組み合わせから成り得るエモリエント構成要素を含有し得る。エモリエントは、好ましくは周囲条件下で液体であり、約9を超える、より好ましくは約11を超える溶解度パラメータ、および25℃で約2mmHg未満の蒸気圧を有する少なくとも1つのエモリエントを含む。所望される製品形態の種類に応じて、デオドラント組成物中のエモリエント(単数または複数)の濃度は、デオドラント組成物の全重量に基づいて約10wt%から約90wt%までの範囲であり得る。
【0042】
本発明のデオドラント組成物における使用に好適なエモリエントは、局所的に安全で有効な有機、シリコーン含有またはフッ素含有、揮発性または不揮発性、極性または無極性を含むが、これらに限定されず、ただし結果として得られるエモリエントの組み合わせは、組成物の選択された加工温度で溶液または他の均一な液体または液体分散液を形成する。デオドラント組成物の加工温度は、製品形態に応じて約15℃から約150℃までの範囲であり得る。必要な溶解度パラメータおよび揮発性を有する好ましいエモリエントは、以下を含むがこれらに限定されない:プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、PEG-4、PEG-8、1,2ペンタンジオール、1,2ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、およびグリセリン。
【0043】
他の利益、例えば、良好な肌触り(skin feel)または皮膚(skin)保湿などをデオドラントに提供するために、製品に他のエモリエントを組み込むことができる。好適なエモリエントの他の例は、C2~C20の一価アルコール、C2~C40の二価または多価アルコール、多価および一価アルコールのアルキルエーテル、シクロペンタシロキサンなどの揮発性シリコーンエモリエント、ジメチコンなどの不揮発性シリコーンエモリエント、ミネラルオイル、ポリデセン、およびワセリンを含む。
【0044】
デオドラント組成物は、所望の硬度および適用特性を組成物に提供するために増粘剤または構造化剤(thickening or structuring agent)を含有し得る。増粘剤または構造化剤の濃度は、製品および増粘剤または構造化剤の種類に応じて、デオドラント組成物の総重量に基づいて約0.1wt%~約30wt%の範囲であり得る。スティック製品のための好ましい包含範囲は、約4~約20wt%である。
【0045】
デオドラント組成物が水ベースである場合、それは約50℃~約150℃の加工温度で溶融して液体キャリア内に溶液または他の均一な液体または液体分散液を形成することができる増粘剤または構造化剤を含み得る。
【0046】
本発明の含水および無水デオドラント組成物における使用に好適な増粘剤または構造化剤は、脂肪酸ゲル化剤、脂肪酸塩、ヒドロキシ脂肪酸ゲル化剤、脂肪酸またはヒドロキシ脂肪酸のエステルおよびアミド、酸性ゲル化剤、コレステリック材料、ジベンジリデンアルジトール、ラノリノール材料、脂肪アルコール、トリグリセリド、および他の好適なゲル化剤を含むが、これらに限定されない。他の例は、微細分割またはコロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、およびモンモリロナイト粘土および疎水化処理モンモリロナイト、例えばベントナイト、ヘクトライトおよびコロイド状ケイ酸マグネシウムを含むシリケートを含む。
【0047】
含水および無水デオドラント組成物における使用のために好ましい増粘剤または構造化剤は、脂肪酸部分が約12個から、約16個からまたは約18個から、約40個まで、約22個まで、または約22個まで、または約20個の炭素原子を有する脂肪酸の固体塩である。これらの増粘剤または構造化剤と共に使用するのに好適な塩形成カチオンには、アルカリ金属(例えばナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)およびアルミニウムなどの金属塩が含まれる。ナトリウム塩およびカリウム塩が好ましい。例えば、好適な塩形成カチオンは、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、モノステアリン酸アルミニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0048】
選択される製品形態(product form)に応じて、本発明のデオドラント組成物は噴射剤を使用することができる。好適な噴射剤は、ジメチルエーテル、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、二酸化炭素、ブタン、イソブタン、プロパン、イソペンタン、ペンタン、亜酸化窒素、二酸化炭素、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、トリクロロテトラ―フルオロエタン、およびモノクロロジフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。デオドラント組成物中の総噴射剤濃度は、デオドラント組成物の重量の、約5%~約99%、より典型的には約15量%~約90%、さらにより好ましくは約20%~約70%の範囲であり得る。
【0049】
前述の構成要素に加えて、本発明のデオドラント組成物は、組成物の物理的または化学的特性を改変し得る1つ以上の構成要素をさらに含み得る。かかる構成要素の非限定的な例は、pH緩衝剤、追加の悪臭制御剤、保湿剤、緩和剤(soothing agent)、染料および顔料、医薬品、重曹および関連材料、防腐剤、ならびにアロエベラ、アラントイン、D-パンテノール、アボカドオイルおよび他の植物油などの緩和剤、および地衣類抽出物を含むが、これらに限定されない。
【0050】
好適な追加のデオドラント活性構成要素は、発汗に関連する悪臭を予防または排除することで知られているか、そうでなければ有効であるあらゆる局所材料を含み得る。好適なデオドラント活性構成要素は、抗菌剤(例えば、殺菌剤、防カビ剤)、悪臭吸収材料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。例えば、抗菌剤は、セチル-トリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、ジイソブチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ナトリウムN-ラウリルサルコシン、ナトリウムN-パールメチルサルコシン(sodium N-palmethyl sarcosine)、ラウロイルサルコシン、N-ミリストイルグリシン、カリウムN-ラウリルサルコシン、トリメチルアンモニウムクロリド、ナトリウムアルミニウムクロロヒドロキシラクタート、トリエチルシトラート、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)、3,4,4’-トリクロロカルバニリド(トリクロカルバン)、L-リジンヘキサデシルアミドなどのジアミノアルキルアミド、シトラート、サリチラート、およびピロクトースの重金属塩、特に亜鉛塩、およびそれらの酸、ピリチオンの重金属塩、特に亜鉛ピリチオン、フェノール硫酸亜鉛、ファルネソール、およびそれらの組み合わせを含み得る。
【0051】
本発明のデオドラント組成物は、制汗デオドラント組成物であり得る。かかる場合、それらは制汗活性剤を含むであろう。
本教示の制汗/デオドラント組成物における使用に好適な制汗活性成分は、制汗活性を有するあらゆる化合物、組成物または他の材料を含むことができる。活性制汗成分は、収斂性金属塩、特にアルミニウム、ジルコニウム、および亜鉛の無機塩、ならびにそれらの混合物を含まれる。製品形態および使用目的に応じて、アルミニウムハライド、アルミニウムクロロハイドレート、アルミニウムヒドロキシハライド、ジルコニルオキシハライド、ジルコニルヒドロキシハライド、およびそれらの混合物などのアルミニウムおよびジルコニウム塩を使用し得る。構成に含まれ得る追加の制汗成分は以下を含む:アルミニウムクロリド、アルミニウムクロロハイドレート、アルミニウムクロロハイドレックスポリエチレングリコール、アルミニウムクロロハイドレックスプロピレングリコール、アルミニウムジクロロハイドレックスプロピレングリコール、アルミニウムセスキクロロハイドレート、アルミニウムセスキクロロハイドレックスポリエチレングリコール、アルミニウムセスキクロロハイドレックスプロピレングリコールおよびアルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート。
【0052】
しかしながら、好ましくは、本発明のデオドラント組成物は、アルミニウム系またはジルコニウム系制汗活性成分がないか、または実質的にない。
一態様において、本発明の消臭剤およびデオドラント組成物は、チオール化合物がないか、または実質的にない。
【0053】
一態様において、本発明の消臭剤およびデオドラント組成物は、極性油誘導体、特に0.1以上の無機有機バランス(I.O.B.)値を有する極性油誘導体がないか、または実質的にない。
【0054】
本発明のデオドラント組成物は、既知の、またはそうでなければ有効であるあらゆる製品形式(product format)に形成することができる。代表的な製品形式は、固体および固体様形態(例えば、スティック、ワックス、粉末)、液体(例えば、エアロゾルスプレー、ポンプスプレー、ミストスプレー、ロールオン、ワイプ)、および半固体(例えば、ゲル、クリーム、柔らかい固体、ローション)を含む。
【0055】
エアロゾル組成物は、本発明による好ましい製品形式である。
噴射剤はエアロゾル組成物の主構成要素であり、残りのデオドラント組成物は、かかる製品形式において有用であるかまたは従来から使用されている、上で言及した成分のいずれかを含有し得る。
特に好ましい製品形式は無水エアロゾル製品である。
【0056】
無水デオドラント組成物は、2wt%未満、より具体的には0.5wt%未満の水を含み、特に水を含まない製品である。より具体的には、製品中に存在する水は、製品の調製中に添加されておらず、混合される構成要素のいずれかによってもたらされ得る残留物として単に存在する。
【0057】
他の側面において、本発明は、本明細書で上述したデオドラント組成物の製造方法に関し、該方法は、消臭剤が可溶であるかまたは混和できるデオドラントベースに消臭剤を組み込む工程を含む。
【0058】
消臭効果を維持または増強するか、または心地良い香りの印象を保持する目的のために、1つ以上のフレグランス成分と消臭剤とを分離し、それらの時期尚早の混合を予防し、またはそれらの両立性を維持することは有益であり得る。これらの構成要素を物理的に離れた場所に維持することによって分離を達成することができる。1つ以上のフレグランス成分をカプセル化して、ネオデカン酸亜鉛からの分離を維持することができる。
【0059】
本発明によるデオドラント組成物は、所望の形態であり、本明細書に記載した成分を有するデオドラント組成物を提供するのに好適である、あらゆる有効技術によって調整することができる。記載された製品形態について多くのかかる技術がデオドラント組成物の技術分野に記載されている。
【0060】
エアロゾル形式のデオドラント組成物は、従来の充填装置および条件を用いて、組成物によって発生する圧力に耐えることができるキャニスターに充填される。キャニスターは通常、それを通して配合物が分配されるディップチューブ、バルブおよびスプレーノズルを備えた市販の金属製キャニスターである。
【0061】
デオドラント組成物は、ホームケア、オーラルケア、パーソナルケアおよびファブリックケア製品における使用を含む、ヒト、動物または環境の悪臭の処理に関するあらゆる用途に有用である。
【0062】
ホームケアは、フレッシュナー、食器洗い用製品、表面洗浄剤、トイレ用洗浄剤、ならびにオムツおよび女性用衛生製品などの吸収性製品を含む。
オーラルケアは、練り歯磨きおよびマウスウォッシュを含む。
【0063】
パーソナルケアは、ヘアケア、デオドラントまたは制汗デオドラント製品、バスおよびシャワー製品、ならびに石鹸が含まれる。
ファブリックケアは、前処理製品、洗剤およびコンディショナーまたは柔軟剤を含む。
【0064】
本発明のデオドラント組成物は、悪臭の発生源を含む場所に、あらゆる既知の、またはそうでなければ有効な方法で適用することができる。かかる方法は、安全かつ有効な量のデオドラント組成物の部位への適用を含む。
【0065】
本発明のデオドラント組成物は、発汗に関連する悪臭を制御するためのあらゆる既知の、またはそうでなければ有効な方法で、腋窩または皮膚の他の領域に組成物を局所適用することによるヒトの体臭の治療に特に有用である。これらの方法は、安全かつ有効な量の本発明のデオドラント組成物を腋窩またはヒトの皮膚の他の領域に適用することを含む。
【0066】
したがって、本発明はまた、消臭剤としての、または消臭剤におけるネオデカン酸亜鉛の使用にも関する。これは上記の用途に特に有用である。
ここで、本発明を説明するために役立つ一連の例が続く。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】例1の結果を示す図である。
図2】例2の結果を示す図である。
図3】例3の結果を示す図である。
図4】例4の結果を示す図である。
【0068】
例1:ネオデカン酸亜鉛およびリシノール酸亜鉛を比較する官能試験
以下の2つの試験配合物をそれぞれ使用してエアロゾルを調製した:
● 4%ネオデカン酸亜鉛、12%シクロメチコン、84%噴射剤
● 4%リシノール酸亜鉛、12%シクロメチコン、84%噴射剤
(噴射剤=イソブタン/プロパン混合物)
【0069】
試験の5日前に、男性被験者は、通常のボディウォッシュを香料が付されていない製品(Sanex 0% Bodywash)で置き換え、そして供給された特定のデオドラント(Lynx Attract for Him)のみを使用するように求められた。
【0070】
試験前の朝に、男性被験者は、与えられた香料が付されていないシャワージェルを用いてシャワーを浴びること、および制汗剤製品を使用したり、他のフレグランスが付与された製品を適用したりしないことを求められた。
被験者はその朝に、試験製品適用のために2つのグループでパネルスイートに報告した。
【0071】
管理者は各被験者の腋窩に各製品1.0gを適用した。各被験者は両方の試験配合物(各腋窩領域に1つ)を付けた。各試験配合物を適用する方法(左または右の腋窩)は無作為化した。そして、被験者の腋窩のそれぞれを、ランダムなコード番号でコード化した。
【0072】
被験者は、次の日に試験が完了するまでシャワーを浴びないように求められた。被験者はまた、試験の期間中遵守しなければならない規則のリストも提供された。規則は、試験配合物の適用と評価の間に水泳をしないこと、およびジムの活動をしないことを含んでいた。
【0073】
その後、被験者の腋窩は官能パネリストによって検査された。官能パネルのメンバーは、彼らの嗅覚感覚に基づいて選択され、その後4~6ヶ月間トレーニングを受けた。彼らの訓練は彼らが個々の匂いの特徴を識別して、そして一貫した方法で与えられた基準に対して彼らの知覚した強度を点数化することを可能にした。
【0074】
官能パネリストは、0~100の均等目盛を用いて、対象の各腋窩について知覚した悪臭強度を評価するように求められた。評価したサンプルの順序は、バランスのとれた無作為化を用いて予め決定された。腋窩を逐次モナディック法で評価した。
【0075】
パネリストは、適用の24時間後に被験者の腋窩から直接評価するよう求められた。10人の被験者が試験に参加した。
被験者は、パネリストによって評価される2つのグループに分けられ、各グループは22人のパネリストによって評価された。
【0076】
95%の信頼水準で分散分析および多重比較検定を使用してデータを分析した。ネオデカン酸亜鉛で処理した脇の下は、リシノール酸亜鉛で処理した脇の下よりも悪臭強度が有意に低いことが見いだされた。
結果を図1にグラフで示す:ネオデカン酸亜鉛についての知覚される悪臭強度は12.1(+/-0.8)であり、一方、リシノール酸亜鉛についての悪臭強度は14.0(+/-0.8)であった。
【0077】
例2:溶解度試験:ネオデカン酸亜鉛とリシノール酸亜鉛との比較
以下のモデルエアロゾルベース配合物を用いていくつかの亜鉛塩の溶解度を調べた。
● 4%亜鉛塩
● 12%シクロメチコン
● 84%ペンタン
(ペンタンは実験室での取り扱いがより簡単であるため、イソブタン/プロパン混合物の代わりとしてこれを使用した。)
【0078】
各塩およびエアロゾル製剤を密封ガラスバイアルに入れ、これを室温で数時間撹拌した。得られた懸濁液/溶液を一晩放置し、残っているあらゆる固形物を記録した。
ネオデカン酸亜鉛を含有する試料は、固体が存在しない唯一の試料であることが見出された。
【0079】
結果を図2に示し、これは他のカルボン酸亜鉛と比較したネオデカン酸亜鉛の独特の溶解度を実証する。左から右へ:酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、モノオクチルクエン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛。
【0080】
例3:ネオデカン酸亜鉛とアルミニウムクロロハイドレートとのフレグランス直線性比較(linearity comparison)
以下の2つの試験配合物をそれぞれ使用してエアロゾル組成物を調製した:
● 4%ネオデカン酸亜鉛、1%フレグランス、12%シクロメチコン、83%噴射剤
● 10%アルミニウムクロロハイドレート、0.8%ジステアロジモニウムヘクトライト、1%フレグランス、12%シクロメチコン、76.2%噴射剤
(噴射剤=イソブタン/プロパン混合物)
【0081】
エアロゾル組成物をエアロゾルパッド上に噴霧し(1.0g)、それを次に換気のよい部屋のベンチに平らに広げた。新しいパッドで24時間後にこのプロセスを繰り返した。したがって、サンプルのいくつかは評価の24時間前に適用された組成物を含み、他のサンプルでは組成物は評価の直前にのみ適用された。ランダムな数値でラベルしたサンプルのそれぞれを、訓練された官能パネルによって評価した。
【0082】
パネリストは、0~100の均等目盛を使用して、エアロゾル含有パッドのそれぞれについて知覚されたフレグランス強度を評価するように求められた。パネリストによって評価されるサンプルの順序は、バランスのとれたランダム化を使用して事前に決定された。
【0083】
95%の信頼水準で、分散分析および多重比較検定を使用してデータを分析した。適用したばかりサンプル間でフレグランス強度に有意差がないことがわかった。しかしながら、24時間後に評価されたサンプルについては、ネオデカン酸亜鉛を含むものについて有意に高いフレグランス強度が見出された。
ネオデカン酸亜鉛含有組成物の持続的な香りの印象を示す結果を図3にグラフで示す。
【0084】
例4:ホワイトマーク
以下の3つの試験配合物をそれぞれ用いてエアロゾルを調製した:
● 4%ネオデカン酸亜鉛、12%シクロメチコン、84%噴射剤
● 4%リシノール酸亜鉛、12%シクロメチコン、84%噴射剤
● 10%アルミニウムクロロハイドレート、0.8%ジステアロジモニウムヘクトライト、12%シクロメチコン、76.2%噴射剤
(噴射剤=イソブタン/プロパン混合物)
【0085】
各テンプレートに大きなX字型の穴が存在するカードテンプレートをいくつか用意した。次に各テンプレートを黒い布の上に置いた。エアロゾルを十分に振盪し、次いで3つのエアロゾルのうちの1つをおよそ3g各テンプレート穴の上に施した。噴射剤を蒸発させるために数分放置し、目に見える固体残留物の存在を記録した。
ネオデカン酸亜鉛を含有するエアロゾルのみが黒い布の上に粉末残留物を残さなかったことが見出された。結果を図4に示す。
【0086】
例5:加圧水素添加および蒸留によるネオデカン酸の精製
オートクレーブ容器(Premex 120 mL)にネオデカン酸(70.0g;Umecore)およびロジウム-アルミナ(1.0g;Fluka puriss.)を入れ、次いで100barの水素で加圧した。混合物を150℃で32時間撹拌した。
圧力を開放して通気した後、混合物をMTBE(100mL)で希釈し、吸引濾過した。濾液をロータリーエバポレーター中、減圧下で濃縮して、無色の液体56.0g(収率80%)を得、そのうち54.6gを80~85℃で15cmのVigreuxカラムで蒸留した(p=0.12mbar、浴温128℃)。
【0087】
集めた8つのフラクションのうち、N°3~7は嗅覚的に純粋であり、そして一緒にして32.3g(46%)の無色透明の油を得た。この材料はまだそれ自身の固有の臭いを有していたが、未精製のネオデカン酸が典型的に有している硫黄/ゴム/フェノールのオフノートを欠いていた。
【0088】
例6:蒸留によるネオデカン酸の精製
ネオデカン酸(152.3g;Umecore)を15cmのVigreuxカラムで89~90℃で蒸留した(p=0.02mbar、浴温140~156℃)。
14個の集められた画分のうち、N°8~14は嗅覚的に純粋であり、そして一緒にして85.5g(56%)の無色透明の油を与えた。嗅覚品質は例5のものと同様に思われた。
図1
図2
図3
図4