(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】加圧式筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 7/035 20060101AFI20220912BHJP
B43K 24/08 20060101ALI20220912BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B43K7/035
B43K24/08 150
B43K29/02 F
(21)【出願番号】P 2019527083
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2018024941
(87)【国際公開番号】W WO2019004461
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2017129882
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017129883
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】瀬利 伸一
(72)【発明者】
【氏名】真田 裕右
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-253872(JP,A)
【文献】特開2004-291248(JP,A)
【文献】特開2005-104119(JP,A)
【文献】特開2004-142381(JP,A)
【文献】特開2014-193571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 7/035
B43K 7/12
B43K 24/08
B43K 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具用インキ組成物が充填されたレフィルを内部に収容可能な軸筒と、
前記レフィルの後方に位置し、前記筆記具用インキ組成物の後端に連通する加圧室と、
前記加圧室に圧力を加える加圧機構と、
前記加圧機構の後方に配設されたノック体と、を備え、
前記レフィルの前端部が前記軸筒の前端開口部から突出した筆記状態と、前記レフィルの前端部が前記軸筒の前端開口部から没入した非筆記状態と、を切り換え可能な加圧式筆記具であって、
前記ノック体を回動することで、少なくとも筆記時における前記加圧室の容積を増減させ
て前記圧力を調整する加圧力調整機構を有する、加圧式筆記具。
【請求項2】
軸筒内に、筆記具用インキ組成物を充填したインキ収容筒と、該インキ収容筒の前方部にボールペンチップと、を具備したボールペンレフィルを収容してなり、
前記ボールペンレフィルの後方に、前記筆記具用インキ組成物の後端に連通する加圧室と、該加圧室に圧力を加える加圧機構とが配設され、
前記加圧機構の後方に配設したノック体を前方へ押圧することにより、前記軸筒の前端開口部から前記ボールペンレフィルの前端が突出するよう構成した加圧式筆記具であって、
前記ノック体の前方にカム部材が配設され、
前記加圧機構の後方に、前記ノック体を回動することで少なくとも筆記時における前記加圧室の容積を増減させる加圧力調整機構を具備し、
前記ボールペンレフィルの外段部と前記軸筒の内段部との間に第一弾発体を配設して該軸筒に対して該ボールペンレフィルを後方へ弾発し、
前記ノック体を前方へ押圧すること、または、筆記時の筆圧によりボールペンレフィルが後退することで前記加圧機構を作動させ、前記筆記具用インキ組成物の後端に圧力を掛けると共に、前記加圧力調整機構により前記筆記具用インキ組成物の後端に掛かる圧力を調整可能に構成した、加圧式筆記具。
【請求項3】
前記ノック体の外方に、前記軸筒に対して前後動自在に形成したスライド部材が配設され、前記スライド部材に対して前記ノック体を回動自在且つ前後動不能に係止すると共に、前記スライド部材に対して前記カム部材を前後動自在且つ回動不能に係止し、
前記スライド部材と前記ノック体と前記カム部材とで前記加圧力調整機構を構成した、請求項2に記載の加圧式筆記具。
【請求項4】
軸筒内に、筆記具用インキ組成物を充填したインキ収容筒と、該インキ収容筒の前方部にボールペンチップと、を具備したボールペンレフィルを収容してなり、
前記ボールペンレフィルの後方に、前記筆記具用インキ組成物の後端に圧力を加える加圧機構が配設され、
前記加圧機構の後方に、前方へ押圧することにより前記軸筒の前端開口部から前記ボールペンレフィルの前端部を突出させる出没機構が配設された加圧式筆記具であって、
前記出没機構は、前記軸筒に対して前後動自在、且つ、回動不能に配設されたスライド部材と、前記スライド部材の後部に回動自在に係止され、前記軸筒の後端より後方へ突出するノック体と、前記スライド部材の内方に配設され、該スライド部材に対して前後動自在、且つ、回動不能に係止された摺動部材と、を備え、
前記摺動部材は、前記ノック体の回動に連動して前後動するよう該ノック体に係止され、その前端が前記加圧機構の後端に当接しており、
前記ボールペンレフィルの外段部と前記軸筒の内段部との間に第一弾発体を配設することで該軸筒に対して該ボールペンレフィルが後方へ弾発され、
前記出没機構のノック体を前方へ押圧することにより、前記スライド部材の外壁に形成した掛止部が、前記軸筒の後部に設けたクリップの前部の被掛止部に掛止して、前記ボールペンレフィルの前端部が、前記軸筒の前端開口部から突出した状態を維持し、前記クリップの後端部を押圧して、クリップの被掛止部に掛止した前記掛止部との掛止状態を解除すると、前記第一弾発体の弾発力によって、前記スライド部材を後方に移動させると共に、前記ボールペンレフィルの前端部を軸筒の前端開口部内に没入させ、
前記ボールペンレフィルの前端部が、前記軸筒の前端開口部からの突出を維持した状態で、筆記時の筆圧によりボールペンレフィルが後退することで前記加圧機構を作動させ、前記筆記具用インキ組成物の後端に圧力を掛けると共に、前記出没機構のノック体を回動して前記摺動部材を前後動させることで、前記筆記具用インキ組成物の後端に掛かる圧力を調整可能に構成した、加圧式筆記具。
【請求項5】
前記加圧機構は、前記インキ収容筒の後端部に連結し内外を連通する空気孔を有するシリンダーと、前記シリンダーの後端開口部に該シリンダーに対し前後動可能に配設したピストンと、前記シリンダーの空気孔を閉鎖する密閉部材と、前記シリンダーと前記ピストンの間に配設され該シリンダーを前方に弾発する第二弾発体と、前記シリンダーの内壁と前記ピストンの前端との間に形成され前記インキ収容筒の後端開口部内に連通する前記加圧室と、が具備され、
前記ボールペンレフィルが軸筒内にある非ノック時においては、前記第二弾発体の弾発力より前記第一弾発体の弾発力が小さくなるよう構成した、請求項2~4のいずれかに記載の加圧式筆記具。
【請求項6】
前記ノック体を前方へ押圧し、前記ボールペンレフィルを前記軸筒の前端開口部から突出させたノック時においては、前記第二弾発体の弾発力より前記第一弾発体の弾発力が大きくなるように構成した、請求項5に記載の加圧式筆記具。
【請求項7】
前記ノック体を前方へ押圧し、前記ボールペンレフィルを前記軸筒の前端開口部から突出させたノック時においては、前記第二弾発体の弾発力より前記第一弾発体の弾発力が小さくなるように構成した、請求項5に記載の加圧式筆記具。
【請求項8】
前記筆記具用インキ組成物は、熱変色性インキであり、
前記軸筒の後端に設けられ、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱により該筆跡を変色させることが可能な摩擦体を有する、請求項1~7のいずれかに記載の加圧式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の加圧式筆記具は、例えばJP2000-335173Aに開示のように、インキ収容管の後端部に加圧機構が設けられ、ノック機構(ノック体)の押圧操作に連動させて前記インキ充填管内を加圧状態とする構造が知られている。
【0003】
しかしながら、JP2000-335173Aのような加圧式筆記具にあっては、加圧機構部を作動させた後は、インキ収容管内に掛かる圧力が変えられないため、必ずしも使用者の好みに合った筆跡幅や筆跡濃度にならない場合があった。
【0004】
また、この問題を解決する技術としてJPH08-141482Aには、液タンク内の修正液の後端に掛ける圧力を任意に調整可能な塗布具が開示されている。
JPH08-141482Aの塗布具では、軸筒後端の回転体を、筒内端部のタンク押動部の押圧起点から押圧終点方向に向けて段階的に回転させることで、各段の加圧部の高さに応じて液タンクの後端を軸筒前方に押動し段階的に液タンクを圧縮する構造となっている。
【0005】
しかしながら、JPH08-141482Aの構造では、使用時に液タンク内を任意の強さで加圧することが可能であるが、使用時には毎回、回転体を回転させることで加圧力を調整する必要があり、更に使用を中止する際も、加圧したままでは液漏れを起こす危険性があるため、回転体を元の位置まで回転させてから保管する必要があり、手間が掛かっていた。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、前記問題を鑑みてなされたものであって、ノック体を回動することでインキ収容筒内を使用者の好みに合わせて任意の強さで加圧することができ、一度設定すれば加圧力設定を維持したまま使用時に容易に筆記状態と非筆記状態とを切り替え可能な加圧式筆記具を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の加圧式筆記具は、
筆記具用インキ組成物が充填されたレフィルを内部に収容可能な軸筒と、
前記筆記具用インキ組成物に圧力を加える加圧機構と、を備え、
前記レフィルの前端部が前記軸筒の前端開口部から突出した筆記状態と、前記レフィルの前端部が前記軸筒の前端開口部から没入した非筆記状態と、を切り換え可能な加圧式筆記具であって、
前記圧力を調整する加圧力調整機構を有する。
【0008】
本発明の加圧式筆記具は、
軸筒内に、筆記具用インキ組成物を充填したインキ収容筒と、該インキ収容筒の前方部にボールペンチップと、を具備したボールペンレフィルを収容してなり、
前記ボールペンレフィルの後方に、前記筆記具用インキ組成物の後端に連通する加圧室と、該加圧室に圧力を加える加圧機構とが配設され、
前記加圧機構の後方に配設したノック体を前方へ押圧することにより、前記軸筒の前端開口部から前記ボールペンレフィルの前端が突出するよう構成した加圧式筆記具であって、
前記ノック体の前方にカム部材が配設され、
前記加圧機構の後方に、前記ノック体を回動することで少なくとも筆記時における前記加圧室の容積を増減させる加圧力調整機構を具備し、
前記ボールペンレフィルの外段部と前記軸筒の内段部との間に第一弾発体を配設して該軸筒に対して該ボールペンレフィルを後方へ弾発し、
前記ノック体を前方へ押圧すること、または、筆記時の筆圧によりボールペンレフィルが後退することで前記加圧機構を作動させ、前記筆記具用インキ組成物の後端に圧力を掛けると共に、前記加圧力調整機構により前記筆記具用インキ組成物の後端に掛かる圧力を調整可能に構成される。
【0009】
本発明の加圧式筆記具において、
前記ノック体の外方に、前記軸筒に対して前後動自在に形成したスライド部材が配設され、前記スライド部材に対して前記ノック体を回動自在且つ前後動不能に係止すると共に、前記スライド部材に対して前記カム部材を前後動自在且つ回動不能に係止し、
前記スライド部材と前記ノック体と前記カム部材とで前記加圧力調整機構を構成してもよい。
【0010】
本発明の加圧式筆記具は、
軸筒内に、筆記具用インキ組成物を充填したインキ収容筒と、該インキ収容筒の前方部にボールペンチップと、を具備したボールペンレフィルを収容してなり、
前記ボールペンレフィルの後方に、前記筆記具用インキ組成物の後端に圧力を加える加圧機構が配設され、
前記加圧機構の後方に、前方へ押圧することにより前記軸筒の前端開口部から前記ボールペンレフィルの前端部を突出させる出没機構が配設された加圧式筆記具であって、
前記出没機構は、前記軸筒に対して前後動自在、且つ、回動不能に配設されたスライド部材と、前記スライド部材の後部に回動自在に係止され、前記軸筒の後端より後方へ突出するノック体と、前記スライド部材の内方に配設され、該スライド部材に対して前後動自在、且つ、回動不能に係止された摺動部材と、を備え、
前記摺動部材は、前記ノック体の回動に連動して前後動するよう該ノック体に係止され、その前端が前記加圧機構の後端に当接しており、
前記ボールペンレフィルの外段部と前記軸筒の内段部との間に第一弾発体を配設することで該軸筒に対して該ボールペンレフィルが後方へ弾発され、
前記出没機構のノック体を前方へ押圧することにより、前記スライド部材の外壁に形成した掛止部が、前記軸筒の後部に設けたクリップの前部の被掛止部に掛止して、前記ボールペンレフィルの前端部が、前記軸筒の前端開口部から突出した状態を維持し、前記クリップの後端部を押圧して、クリップの被掛止部に掛止した前記掛止部との掛止状態を解除すると、前記第一弾発体の弾発力によって、前記スライド部材を後方に移動させると共に、前記ボールペンレフィルの前端部を軸筒の前端開口部内に没入させ、
前記ボールペンレフィルの前端部が、前記軸筒の前端開口部からの突出を維持した状態で、筆記時の筆圧によりボールペンレフィルが後退することで前記加圧機構を作動させ、前記筆記具用インキ組成物の後端に圧力を掛けると共に、前記出没機構のノック体を回動して前記摺動部材を前後動させることで、前記筆記具用インキ組成物の後端に掛かる圧力を調整可能に構成される。
【0011】
本発明の加圧式筆記具において、
前記加圧機構は、前記インキ収容筒の後端部に連結し内外を連通する空気孔を有するシリンダーと、前記シリンダーの後端開口部に該シリンダーに対し前後動可能に配設したピストンと、前記シリンダーの空気孔を閉鎖する密閉部材と、前記シリンダーと前記ピストンの間に配設され該シリンダーを前方に弾発する第二弾発体と、前記シリンダーの内壁と前記ピストンの前端との間に形成され前記インキ収容筒の後端開口部内に連通する前記加圧室と、が具備され、
前記ボールペンレフィルが軸筒内にある非ノック時においては、前記第二弾発体の弾発力より前記第一弾発体の弾発力が小さくなるよう構成してもよい。
【0012】
本発明の加圧式筆記具において、
前記ノック体を前方へ押圧し、前記ボールペンレフィルを前記軸筒の前端開口部から突出させたノック時においては、前記第二弾発体の弾発力より前記第一弾発体の弾発力が大きくなるように構成してもよい。
【0013】
本発明の加圧式筆記具において、
前記ノック体を前方へ押圧し、前記ボールペンレフィルを前記軸筒の前端開口部から突出させたノック時、とりわけ前記ボールペンレフィルのボールペンチップが、前記軸筒の前端開口部から突出を維持したノック時、においては、前記第二弾発体の弾発力より前記第一弾発体の弾発力が小さくなるように構成してもよい。
【0014】
本発明の加圧式筆記具において、
前記筆記具用インキ組成物は、熱変色性インキであり、
前記軸筒の後端に設けられ、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱により該筆跡を変色させることが可能な摩擦体を有してもよい。
【0015】
[発明の効果]
本発明によれば、ノック体を回動することで、インキ収容筒内を使用者の好みに合わせて任意の強さで加圧することができ、一度設定すれば使用時に容易に筆記状態と非筆記状態とを切り替え可能な加圧式筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態の加圧式筆記具の縦断面図である。
【
図3】
図3は、加圧力調整機構の構成を説明するための分解図である。
【
図5】
図5は、
図1の状態からノック体を押圧した状態を示す縦断面図である。
【
図6A】
図6Aは、
図1において、ノック体を回動した状態を示す説明図であり、加圧力を相対的に高い圧力に設定した状態を示している。
【
図6B】
図6Bは、
図1において、ノック体を回動した状態を示す説明図であり、加圧力を相対的に低い圧力に設定した状態を示している。
【
図6C】
図6Cは、
図1において、ノック体を回動した状態を示す説明図であり、加圧力が掛からないよう設定した状態を示している。
【
図7】
図7は、第1実施形態の加圧式筆記具の変形例を示す縦断面図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る加圧式筆記具においてノック体を押圧した状態を示す縦断面図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る加圧式筆記具で筆記する際の状態を示す説明図である。
【
図10】
図10は、
図9の状態から軸心に沿って筆圧を掛けた状態を示す説明図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の加圧式筆記具の縦断面図である。
【
図18A】
図18Aは、
図11において、ノック体を回動した状態を示す説明図であり、加圧力を相対的に高い圧力に設定した状態を示している。
【
図18B】
図18Bは、
図11において、ノック体を回動した状態を示す説明図であり、加圧力を相対的に低い圧力に設定した状態を示している。
【
図18C】
図18Cは、
図11において、ノック体を回動した状態を示す説明図であり、加圧力が掛からないよう設定した状態を示している。
【
図19】
図19は、加圧式筆記具の他の変形例を示す図であり、非ノック時における加圧式筆記具の縦断面図である。
【
図22A】
図22Aは、
図19の加圧式筆記具のノック時における外観を示す図であって、加圧力が掛からないよう設定した状態における加圧式筆記具を示す図である。
【
図23A】
図23Aは、
図19の加圧式筆記具のノック時における外観を示す図であって、加圧力を相対的に低い圧力に設定した状態における加圧式筆記具を示す図である。
【
図24A】
図24Aは、
図19の加圧式筆記具のノック時における外観を示す図であって、加圧力を相対的に高い圧力に設定した状態における加圧式筆記具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面を参照しながら、本発明の加圧式筆記具を詳細に説明するが、本発明は以下の各実施形態に限定されるものではない。
また、本明細書では、軸筒の長手方向において、ボールペンチップがある方を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。これにともなって、軸筒の長手方向に沿った方向を前後方向と表現することがある。また、前後方向への移動を前後動と表現することがある。更に、軸筒の軸径方向において、ボールペンレフィルがある方を内方と表現し、その反対側を外方と表現する。
尚、説明を分かりやすくするために、図面中の同様の部材、同様の部分については同じ符号を付してある。
【0018】
〔第1実施形態〕
本実施形態の加圧式筆記具1は、軸筒4と、加圧機構7と、加圧力調整機構24と、を備える。軸筒4は、筆記具用インキ組成物であるインキ11が充填されたレフィル8を内部に収容可能に構成されている。加圧機構7は、インキ11に圧力を加える機構である。加圧式筆記具1は、レフィル8の前端部が軸筒4の前端開口部3aから突出した筆記状態と、レフィル8の前端部が軸筒4の前端開口部3aから没入した非筆記状態と、を切り換え可能に構成されている。
図1から
図5に示された加圧式筆記具1では、後軸2の前方に前軸3を螺合することで軸筒4を形成してあり、軸筒4内に前後動可能に配設されたスライド部材5と、スライド部材5の後部に係止されたノック体6と、スライド部材5内に配設された加圧機構7と、加圧機構7の前部に装着され軸筒4内を前後に摺動可能なレフィル(ボールペンレフィル)8と、後軸2の側面に回動自在に係止されたクリップ9と、により構成してある。
【0019】
ボールペンレフィル8は、PP樹脂からなる透明のインキ収容筒10に、筆記具用インキ組成物であるインキ11及び当該インキ11の後端にインキの消費に伴い追従するグリース状のインキ追従体12を直接収容し、インキ収容筒10の前端開口部に、ボール(φ0.38mm)を回動自在に抱持したボールペンチップ13の後端部を圧入嵌合して得たものである。
【0020】
前軸3(軸筒4)は、
図1に示すように、前端にボールペンレフィル8のボールペンチップ13が突出可能な前端開口部3aが形成されている。また、前軸3(軸筒4)の内面に形成した内段部3bとボールペンレフィル8の外周面に形成した外段部8aとの間に第1コイルスプリング14(第一弾発体)を圧縮状態で張架し、軸筒4に対してボールペンレフィル8を後方に弾発してある。
【0021】
後軸2(軸筒4)は筒状に形成してあり、
図2に示すように、外側面2aに軸方向に沿って延び、内孔まで貫通する側孔2bが形成してある。また、外側面2aには外方へ向って突出するクリップ係止部2cが形成してあり、クリップ係止部2cはクリップ用係止突起2dとスプリング用係止突起2eにより構成してある。そして、クリップ用係止突起2dには軸方向に対して直交する方向に係止孔2fを形成してある。
また、後軸2の内周部には内方へ突出し軸方向に延びるレール部2gを形成してある。
【0022】
スライド部材5は、
図1~
図3に示すように、外周部に外方へ向って突出する掛止突起5aを形成してあり、掛止突起5aを後軸2の側孔2bに配置することで、後軸2に対してスライド部材5を前後に摺動自在且つ回動不能に装着してある。
また、スライド部材5の前部内孔には内方へ向って突出する複数の突起状のストッパー5bが形成してあり、スライド部材5の後端は内径が小さくなっている後段部5cが形成してある。
更に、スライド部材5の後部外側面には軸方向に沿って延びるカム用側孔5dが形成してある。
【0023】
クリップ9は、
図1及び
図2に示すように、後軸2のスプリング用係止突起2eと、クリップ9の内壁部に軸筒4側に突出するように形成した内突起9aとの間にクリップ用スプリング16を配設し、クリップ9の内側壁に形成した係止軸部9bを係止孔2fに係止することで、クリップ9の先端部を、後軸2の外壁面側に常時弾発するよう張架すると共に、クリップ9の後端部を押圧(
図2の矢印G方向)することにより、クリップ9と後軸2との係止軸Rを支点とし、クリップ9の先端部を後軸2の外壁面から離間可能な可動式クリップとして構成してある。
尚、クリップ9の前部には、基部9dから軸筒4側に延び、スライド部材5の側面に形成した掛止突起5aと掛止する被掛止部9cを形成してある。
【0024】
加圧機構7は、
図1、
図2、
図4に示すように、ボールペンレフィル8の後方且つスライド部材5の内方に、当該スライド部材5に対して前後動自在に収納され、円筒状のシリンダー17と、シリンダー17の後端開口部17aに挿入されシリンダー17に対して前後に摺動可能に係着したピストン18と、ピストン18の側面に嵌着されたOリング19と、シリンダー17とピストン18の間に張架した第2コイルスプリング15(第二弾発体)とで構成してある。
尚、加圧機構7は、スライド部材5のストッパー5bにより前方への移動を制限してある。
【0025】
シリンダー17について詳述すると、
図4に示すように、シリンダー17は前後に貫通する段状に形成された内孔17bを有しており、シリンダー17の外周面には、内孔17bまで貫通する空気孔17cを形成してある。
また、シリンダー17の内孔17bには、シリンダー17の内側部17dとピストン18の前端とOリング19とにより囲まれた加圧空間20(加圧室)が形成され、加圧空間20は空気孔17cによりシリンダー17の外部と通気させてある。
【0026】
更に、シリンダー17の前部17eは中央部17fより小径で形成してあり、前部17eには外方へ向かって円周状に突出する装着部17gが軸方向に沿って2箇所形成してある。また、ボールペンレフィル8の後端内周部8bはシリンダー17の装着部17gに着脱自在に装着してあり、加圧空間20はシリンダー17の内孔17bによりボールペンレフィル8の後部内孔8cまで連通してある。
尚、装着部17gは、シリンダー17にボールペンレフィル8を装着した際、シリンダー17とボールペンレフィル8との間の気密が確保され、且つ、手で容易に着脱可能になるよう外方への突出量(外径)を調整してある。
一例として、シリンダー17へのボールペンレフィル8の取り付け時に掛かる力は10Nとすることができる。
【0027】
ピストン18について詳述すると、ピストン18の外周部18aには外方へ向かって突出する凸部18bが軸心を挟んで対称に2箇所形成してある。そして、凸部18bをシリンダー17の中央部17fに軸心に沿って延びるように形成した窓部17hに、前後方向に摺動自在に係止してある。
【0028】
更に、ピストン18の外周部18aには軸周方向に延びる凹状の凹状部18cが形成してあり、凹状部18cには合成ゴムで形成したOリング(密閉部材)19を嵌着してある。このOリング19の外側部はシリンダー17の内側部17dに摺接しており、シリンダー17の後端開口部17aをピストン18とOリング19とで空気が漏れないように密閉してある。また、ピストン18の後端面には前方へ向って凹状に形成された後方内孔18dを設けてある。
尚、シリンダー17が後退した際、シリンダー17の後端にスライド部材5の内段部5eが当接することで、シリンダー17の後退を制限してある。
【0029】
第2コイルスプリング15(第二弾発体)について詳述すると、第2コイルスプリング15はシリンダー17の内方段部17iとピストン18の前段部18eとの間に張架してあり、ピストン18に対してシリンダー17を前方に弾発してある。
【0030】
尚、加圧空間20は、シリンダー17の前後への摺動によりOリング19の位置がシリンダー17の空気孔17cより前方にあるときは密閉状態となり、Oリング19の位置が空気孔17cより後方にあるときは、加圧空間20とシリンダー17の外部とが空気孔17cにより通気され非密閉状態となる。
【0031】
次に、ノック体6について詳述すると、
図1から
図3に示すように、ノック体6は円筒状に形成されたノブ21と棒状の前部材22とで構成してある。図示された例では、ノック体6は、軸筒4の後端より突出するように配設されている。
【0032】
前部材22は前部22aの外側面に外方に向って突出する突起部22bを形成してあり、突起部22bには前端に円弧状の係止部22cを形成してある。
また、後部22dはノブ21の後部内孔21aに挿入することで、前部材22とノブ21とを着脱不能に圧入装着してある。
【0033】
ノブ21は、外側面に軸心方向に延びる複数の溝部21bを均等間隔で形成してあり、溝部21bによりノック体6を手で掴んだ際に滑り難くしてある。
また、溝部21bは、ノック体6を前方へ押圧したノック時には、後軸2のレール部2gに係止することでノック体6が回動不能となるようにしてある。
【0034】
更に、前部材22とノブ21とを圧入装着する際、前部材22の側面に形成した段部22eとノブ21の内段部21cとの間にスライド部材5の後部に小径に形成した後段部5cを配設することで、スライド部材5に対してノック体6を回動自在に係止してある。このため、ノック体6はスライド部材5と共に軸筒4に対して前後動自在に構成される。
【0035】
また、前部材22の突起部22bとピストン18の後端との間に、筒状に形成したカム部材23を配設してあり、カム部材23には、後端面から前方へ向って傾斜して延びるカム斜面23aが形成してあり、カム斜面23aは複数の段部23bを備えた段状に形成してある。図示された例では、カム部材23は、ノック体6(前部材22)に対して前後動自在に係止されている。そして、第2コイルスプリング15により後方へ弾発されたピストン18の後端はカム部材23の前端に当接してカム部材23を後方へ弾発し、カム斜面23aが前部材22の突起部22bの係止部22cに当接することでカム部材23の後方へ移動を制限してある。
【0036】
そして、カム部材23の段部23bには、軸方向における前方側に凹む曲面で形成した凹部23cを形成してあり、凹部23cと前部材22の突起部22bの係止部22cとの曲率を合わせることで、しっかりと係止するように形成してある。
更に、カム部材23の外周面には外方へ向って突出し前後方向に延びる摺動突起23dを形成してあり、摺動突起23dをスライド部材5のカム用側孔5dに前後動自在に挿入することで、スライド部材5に対してカム部材23を前後動可能且つ回動不能に装着してある。
【0037】
尚、スライド部材5とノック体6とカム部材23とで加圧力調整機構24が構成され、ノック体6を回動することでカム部材23が前後動するようにしてある。
【0038】
ここで、第1コイルスプリング14と第2コイルスプリング15の弾発力の関係について説明を行う。
図1の非ノック時においては、第1コイルスプリング14の弾発力<第2コイルスプリング15の弾発力を満たすように調整してあり、ノック体6を前方へ押圧した
図5の状態(ノック時)では、第1コイルスプリング14の弾発力>第2コイルスプリング15の弾発力となるよう各スプリングの弾発力を調整してある。
【0039】
次に、
図1及び
図5を用いて、ノック体6を前方へ押圧(ノック操作)することで、ボールペンレフィル8の筆記先端であるボールペンチップ13を前軸3の前端開口部3aから出没させると共に、ボールペンレフィル8内のインキ11の後端にインキ追従体12を介して圧力をかける状態を説明する。
図1の状態からノック体6を前方へ押圧(
図1の矢印F方向)すると、カム部材23を介してノック体6に押されたスライド部材5及びピストン18が前進する。その際、非ノック時は第2コイルスプリング15の弾発力は、第1コイルスプリング14の弾発力より大きく設定してあることから、第2コイルスプリング15は圧縮されることなく加圧空間20は非加圧状態のままシリンダー17と共にボールペンレフィル8が前方に押圧されて前進する。そして、ボールペンレフィル8に押されて、第1コイルスプリング14が圧縮し、当該第1コイルスプリング14の弾発力が第2コイルスプリング15の弾発力より大きくなることでシリンダー17の前進が止まる。更にノック体6がスライド部材5と共に前進し、スライド部材5の内段部5eがシリンダー17の後端に当接すると、シリンダー17がボールペンレフィル8と共に再びノック体6に押されて前進し、前軸3の前端開口部3aからボールペンチップ13の前端が突出される。そこで、スライド部材5の掛止突起5aが、後軸2の側面に配置したクリップ9の先端部の被掛止部9cに掛止することで、ボールペンチップ13の前端を、前軸3(軸筒4)の前端開口部3aから突出した状態を維持させる
図5の状態となる。
【0040】
この時、加圧機構7においては、シリンダー17の前進が止まった際、シリンダー17に対してピストン18が前進して第2コイルスプリング15が縮み、シリンダー17の空気孔17cよりOリング19の位置が前方へ移動し、Oリング19により加圧空間20を密閉する。さらに、ピストン18が前方へ移動すると、第2コイルスプリング15を更に圧縮させ、ボールペンレフィル8の後部内孔8c及び加圧空間20を圧縮させ、すなわち加圧空間20の容積を減少させ、ボールペンレフィル8内のインキ11の後端にインキ追従体12を介して圧力を加える状態となる。この場合、加圧式筆記具1は、ノック体6を回動することで、筆記時及び非筆記時のいずれにおいても加圧空間(加圧室)20の容積が減少するように、調整される。
【0041】
そして、クリップ9の後端部を押圧(
図5の矢印G方向)し、クリップ9の被掛止部9cに係止したスライド部材5の掛止突起5aの掛止状態を解除すると、第1コイルスプリング14の弾発力によって、ボールペンレフィル8、シリンダー17、ピストン18及びノック体6が後方に移動して、ボールペンチップ13の前端を前軸3の前端開口部3a内に没入させ、且つ、第2コイルスプリング15により加圧空間20の圧縮状態が解除されて
図1の非ノック状態に戻る。
【0042】
更に、本実施形態では、
図1の非ノック状態時にノック体6を後軸2に対して回動することでインキ11に掛かる加圧力を調整することができ、
図6Aの状態から、ノック体6を回動させて、
図6B、
図6Cと前部材22の突起部22bとカム部材23の段部23bとの当接位置を段階的にずらすことで、前部材22の突起部22bとピストン18との距離が短くなり、ノック体6を前方へ押圧した際のスライド部材5に対するピストン18の前進位置を後退させることができる。このため、加圧空間20に掛かる圧力を段階的に下げることが可能となる。すなわち、本実施形態の加圧力調整機構24では、ノック体6を回動することでカム部材23を前後動させ、加圧空間20の容積を増減させる。尚、本実施形態では、
図6Cの状態において、加圧空間20が全く圧縮されないように調整してあるため、通常の非加圧式の筆記具としても使用することができる。
加えて、ノック体6を回動させた際、前部材22の突起部22bの係止部22cとカム部材23の凹部23cとが係止することで係止音が発生するように形成してあり、使用者は加圧力が段階的に切り替わっていくことを触感と音で認識することができる。
【0043】
また、前述したように、ノック体6を前進させた際、ノブ21の溝部21bが後軸2のレール部2gに係止されることで、ノック時(筆記状態)はノック体6の回動ができなくなる。このため、筆記する際に使用者の意図に反してノック体6が回動することを防止でき、安定した筆跡での筆記が可能である。
尚、本実施形態では係止部22cと凹部23cが係止しているときに、レール部2gと溝部21bの軸方向から見たときの位置が一致するよう構成してあり、ノック体6を回動して係止部22cを別の凹部に係止しても、ノック時に溝部21bがレール部2gに当たることなく係止されるよう構成してある。
【0044】
以上により、本実施形態では、ノック体6を回動して加圧力調整機構24を作動させ、加圧力設定を切り替えた状態でノック体6の押圧が可能であるため、インキ11に掛かる加圧力設定を維持した状態で筆記状態と非筆記状態とをノック操作により容易に切り替え可能な加圧式筆記具1を提供することができた。
【0045】
また、加圧式筆記具1は、前軸3を後軸2に対して回転することで、後軸2から前軸3を取り外すことができ、その状態でボールペンリフィル8を前方へ引っ張ると、シリンダー17はスライド部材5のストッパー5bにより前進できないため、ボールペンレフィル8をシリンダー17から引き抜くことで、容易にボールペンレフィル8の交換ができ、更に、第1コイルスプリング14も前軸から容易に取り出せるため交換することができる。
この際、ノック時における第1コイルスプリング14の弾発力が第2コイルスプリング15の弾発力より高くなるように、第1コイルスプリング14を弾発力が小さい第1コイルスプリング34に交換することで、加圧式筆記具1の加圧方式をノック加圧式から筆圧加圧式に変更することができる。
【0046】
本実施形態の加圧式筆記具1は、筆記具用インキ組成物11が充填されたレフィル8を内部に収容可能な軸筒4と、筆記具用インキ組成物11に圧力を加える加圧機構7と、を備え、レフィル8の前端部が軸筒4の前端開口部3aから突出した筆記状態と、レフィル8の前端部が軸筒4の前端開口部3aから没入した非筆記状態と、を切り換え可能な加圧式筆記具1であって、圧力を調整する加圧力調整機構24を有する。
【0047】
このような加圧式筆記具1によれば、筆記状態と非筆記状態とを切り換え可能な加圧式筆記具1において、レフィル8内に充填された筆記具用インキ組成物11に作用する圧力を、使用者の好みに応じて調整することが可能になる。例えば
図6Bに示したように加圧式筆記具1を筆記具用インキ組成物11に圧力が作用するように調整した場合には、
図6Cに示したように加圧式筆記具1を筆記具用インキ組成物11に圧力が作用しないように調整した場合と比較して、筆記時に紙等の被筆記面上に付着する筆記具用インキ組成物11の量を増加させることができる。これにより、加圧式筆記具1による筆跡の色を濃くすること及び/又は筆跡を太くすることができる。また、
図6Aに示したように加圧式筆記具1を筆記具用インキ組成物11にさらに高い圧力が作用するように調整した場合には、
図6Bに示した場合と比較して、筆記時に紙等の被筆記面上に付着する筆記具用インキ組成物11の量をさらに増加させることができる。これにより、加圧式筆記具1による筆跡の色をさらに濃くすること及び/又は筆跡をさらに太くすることができる。
【0048】
本実施形態の加圧式筆記具1は、軸筒4内に、筆記具用インキ組成物11を充填したインキ収容筒10と、インキ収容筒10の前方部にボールペンチップ13と、を具備したボールペンレフィル8を収容してなり、ボールペンレフィル8の後方に、筆記具用インキ組成物11の後端に連通する加圧室20と、加圧室20に圧力を加える加圧機構7とが配設され、加圧機構7の後方に配設したノック体6を前方へ押圧することにより、軸筒4の前端開口部3aからボールペンレフィル8の前端が突出するよう構成した加圧式筆記具1であって、ノック体6の前方にカム部材23が配設され、加圧機構7の後方に、ノック体6を回動することで少なくとも筆記時における加圧室20の容積を増減させる加圧力調整機構24を具備し、ボールペンレフィル8の外段部8aと軸筒4の内段部3bとの間に第一弾発体14を配設して軸筒4に対してボールペンレフィル8を後方へ弾発し、ノック体6を前方へ押圧すること、または、筆記時の筆圧によりボールペンレフィル8が後退することで加圧機構7を作動させ、筆記具用インキ組成物11の後端に圧力を掛けると共に、加圧力調整機構24により筆記具用インキ組成物11の後端に掛かる圧力を調整可能に構成される。
【0049】
このような加圧式筆記具1によれば、ノック体6を前方へ押圧(ノック操作)することにより容易に筆記状態と非筆記状態とを切り替えることができる。更に、ノック体6を回動することで加圧力調整機構24を作動させ、筆記具用インキ組成物11の後端に掛ける圧力を調整することで、筆跡の太さや、筆跡濃度を使用者の好みに合わせて調整することができる。
また、筆記具用インキ組成物11の後端に圧力を掛ける加圧機構7を作動させる手段としては、ノック体6を押圧することで作動させて加圧するノック加圧式を採用してもよく、筆記する際の筆圧により作動させて加圧する筆圧加圧式を採用してもよい。
【0050】
また、ノック体6とカム部材23との係止手段としては、例えば、ノック体6の側面に外方へ向って突出する突起部22bを形成し、カム部材23の後部にカム斜面23aを形成し、ノック体6の回動により、突起部22bがカム斜面23aに沿って摺動することでカム部材23を前後動するように構成してもよく、ノック体6の前面にカム斜面を形成し、カム部材23の側面に外方へ向って突出する突起部を形成し、ノック体6を回動することでカム斜面を突起部に対して摺動させ、カム部材23が前後動するように構成してもよい。
尚、カム部材23は、該カム部材23の前後動により加圧機構7を押圧できれば該加圧機構7と当接していてもよく、当該加圧機構7の一部と一体に形成してもよい。
【0051】
また、ノック体6とカム部材23との係止手段にカム構成を用いる場合には、カム部材23またはノック体6に形成するカム斜面には複数の段部を設けることが好ましく、ノック体6を回動させた際の加圧力の調整を段階的に切り替え可能とすることで、使用者が加圧力を調整し易くなる効果を奏する。
更に、ノック体6の外面に表示部を設け、段部とノック体6の突起部22bと当接した際に、ノック体6の表示部と軸筒外面に設けた表示部とが一致した状態がそのときの加圧力の強さを表すよう構成してもよい。
【0052】
また、複数の段部23bは、前方または後方へ向って凹状に形成された凹部23cを設けてもよく、この場合、突起部22bの先端が凹部23cと係止するよう構成することで、ノック体6が簡単には回動しなくなり、使用者の意図に反して加圧力の設定が変わってしまうことを防ぐことができる。
尚、突起部22bと凹部23cとが係止する際に音が発生するよう構成することで、加圧力が切り替ったことを認識できるため好ましい。
【0053】
本実施形態の加圧式筆記具1は、ノック体6の外方に、軸筒4に対して前後動自在に形成したスライド部材5が配設され、スライド部材5に対してノック体6を回動自在且つ前後動不能に係止すると共に、スライド部材5に対してカム部材23を前後動自在且つ回動不能に係止し、スライド部材5とノック体6とカム部材23とで加圧力調整機構24を構成される。
【0054】
このような加圧式筆記具1によれば、ノック体6の前後動(ノック操作)によるボールペンレフィル8の出没と、ノック体6の回動により加圧力調整機構24を作動させ加圧力を調整する動作とを別々に実行できるようになる。このため、加圧力を毎回調整することなく、筆記状態と非筆記状態とを容易に切り替えることができる。
【0055】
本実施形態の加圧式筆記具1では、加圧機構7は、インキ収容筒10の後端部に連結し内外を連通する空気孔17cを有するシリンダー17と、シリンダー17の後端開口部17aにシリンダー17に対し前後動可能に配設したピストン18と、シリンダー17の空気孔17cを閉鎖する密閉部材19と、シリンダー17とピストン18の間に配設されシリンダー17を前方に弾発する第二弾発体15と、シリンダー17の内壁とピストン18の前端との間に形成されインキ収容筒10の後端開口部17a内に連通する加圧室20と、が具備され、ボールペンレフィル8が軸筒4内にある非ノック時においては、第二弾発体15の弾発力より第一弾発体14の弾発力が小さくなるよう構成される。
【0056】
このような加圧式筆記具1によれば、非ノック時は第二弾発体(第2コイルスプリング)15によってシリンダー17が前方へ押圧されるため、筆記具用インキ組成物11に圧力が掛かることがない。このため、ボールペンチップ13の先端からのインキ漏れを防止できる。
【0057】
本実施形態の加圧式筆記具1は、ノック体6を前方へ押圧し、ボールペンレフィル8を軸筒4の前端開口部3aから突出させたノック時においては、第二弾発体15の弾発力より第一弾発体14の弾発力が大きくなるように構成される。
【0058】
このような加圧式筆記具1によれば、第一弾発体(第1コイルスプリング)14により後方へ押されたボールペンレフィル8がシリンダー17を押すことでシリンダー17内の加圧室(加圧空間)20が加圧される。このため、ノック操作によりすぐに筆記具用インキ組成物11が加圧されることから、筆記開始から加圧力を増加させた状態で筆記することができるノック加圧式の筆記具として使用することができる。
【0059】
このノック加圧式においては、ノック体6を前方へ押圧したノック時は当該ノック体6を回動不能に構成してもよく、この場合、使用時にノック体6に手が触れるなどしてノック体6が使用者の意に反して回動することを防ぐことができる。このため、筆記具用インキ組成物11の後端に掛かる圧力が変わらなくなり、安定した筆跡で筆記することができる。
【0060】
更に、ノック加圧式においては、筆記を継続することで徐々にボールペンレフィル8内の筆記具用インキ組成物11が減るため、当該筆記具用インキ組成物11の後端に掛かる加圧力が低下する。このため、ノック時にノック体6を回動自在に構成することで、筆記することで下がった圧力をノックした状態のまま再度上げることができる。
尚、筆記することで加圧室(加圧空間)20内の圧力が下がった状態で、圧力が更に下がる方向にノック体6を回転すると、加圧室20内が外気に比べて負圧になることから、ボールペンレフィル8の先端から空気がボールペンレフィル8内部に入り込み、空気に邪魔されてインキ11が前進できず筆記不能になる虞がある。このため、ノック時においては、圧力が上がる側にのみノック体6が回転するよう構成することが好ましい。
【0061】
なお、上述した第1実施形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、第1実施形態と同様に構成され得る部分について、第1実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、第1実施形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0062】
本変形例における加圧式筆記具30では、第1コイルスプリング34の弾発力と第2コイルスプリング15の弾発力とを、
図6A~
図6Cの取り付け時(非ノック時)においては、第1コイルスプリング34<第2コイルスプリング15を満たすように調整してあり、
図7のノック体6を前方へ押圧したノック時でも、第1コイルスプリング34<第2コイルスプリング15となるよう弾発力を調整してある。
【0063】
次に、ノック体6を前方へ押圧(ノック操作)することで、ボールペンレフィル8の筆記先端であるボールペンチップ13を前軸3の前端開口部3aから出没させる状態を説明する。
図7の状態からノック体6を前方へ押圧(
図7の矢印F方向)すると、カム部材23を介してノック体6に押されたピストン18が前進する。その際、第2コイルスプリング15の弾発力は、常に第1コイルスプリング34の弾発力より大きくなるよう設定してあることから、第2コイルスプリング15は圧縮されることなく加圧空間20は非加圧状態のままシリンダー17と共にボールペンレフィル8が前方に押圧されて前進し、前軸3の前端開口部3aからボールペンチップ13の前端が突出する。そこで、スライド部材5の掛止突起5aが、後軸2の側面に配置したクリップ9の先端部の被掛止部9cに掛止することで、ボールペンチップ13の前端を、前軸3(軸筒4)の前端開口部3aから突出した状態を維持させる
図8の状態となる。
尚、シリンダー17及びボールペンレフィル8の前進は、ピストン18の凸部18bがシリンダー17の窓部後端17jに当接することで規制されて止まるようにしてある。
ここで、クリップ9の後端部を押圧(
図8の矢印G方向)し、クリップ9の被掛止部9cに掛止したスライド部材5の掛止突起5aの掛止状態を解除すると、第1コイルスプリング34の弾発力によって、ボールペンレフィル8、シリンダー17、ピストン18及びノック体6が後方に移動して
図7の状態に戻る。
【0064】
次に、本変形例において、筆記する際の筆記圧で、インキ追従体12を介してボールペンレフィル8内のインキ11の後端に圧力をかける状態を説明する。
図9に示すように、ボールペンチップ13の前端が、前軸3の前端開口部3aから突出した状態で筆記を行い筆圧が掛かると、カム部材23に当接しているピストン18は後方への移動ができないため、第2コイルスプリング15の弾発力に抗してボールペンレフィル8とシリンダー17とが連動して後方(矢印H方向)に移動する。具体的には、先ず、第2コイルスプリング15が圧縮し、シリンダー17が後方へ移動すると、シリンダー17の空気孔17cがOリング19の位置より後方へ移動し、Oリング19により加圧空間20を密閉する。さらに、シリンダー17が後方へ移動すると、第2コイルスプリング15を更に圧縮し、ボールペンレフィル8の後部内孔8c及び加圧空間20を圧縮させ、ボールペンレフィル8内のインキ11の後端にインキ追従体12を介して圧力を加える
図10の状態となる。この場合、加圧式筆記具30は、ノック体6を回動することで、
図10に示すように、筆記時において加圧空間(加圧室)20の容積が減少するように、調整される。
【0065】
また、筆圧を解除すると、第2コイルスプリング15の弾発力により、シリンダー17及びボールペンレフィル8が前方(元の位置)に移動する。その際、シリンダー17の空気孔17cの位置がOリング19まで達すると、空気孔17cが開放されて加圧空間20及びボールペンレフィル8の後部内孔8cの密閉を解除して、大気圧と同圧になり、
図9の状態に戻る。
【0066】
尚、本変形例でも、上述した第1実施形態同様、ノック体6を後軸2に対して回動させることでインキ11に掛かる加圧力を調整することが可能である。
また、本変形例では、ノック体6を前方へ押圧するノック時では加圧機構7は作動せず、インキ11は加圧されない状態であるため、ノックした状態で保管した際でもボールペンチップ13の前端からインキ11が漏れることを防止することができた。
【0067】
本変形例の加圧式筆記具30は、ノック体6を前方へ押圧し、ボールペンレフィル8を軸筒4の前端開口部3aから突出させたノック時においては、第二弾発体15の弾発力より第一弾発体34の弾発力が小さくなるように構成される。
【0068】
このような加圧式筆記具30によれば、第二弾発体(第2コイルスプリング)15により前方へ押圧されたシリンダー17及びレフィル8が第一弾発体(第1コイルスプリング)34の弾発力に抗して前進するため、ノック状態でもシリンダー17内の加圧室(加圧空間)20が加圧されることはない。このため、筆記を開始してボールペンレフィル8の先端に筆圧が掛かると、筆圧に押されたボールペンレフィル8が第二弾発体15の弾発力に抗して後退することでシリンダー17も同時に後退し、シリンダー17内の加圧室20が加圧され筆記具用インキ組成物11の後端に圧力が掛かる筆圧加圧式として使用することができる。
尚、筆圧加圧式では筆圧が掛かった時のみ筆記具用インキ組成物11の後端に圧力が掛かるため、ノック体6を前方へ押圧(ノック操作)した状態で、保管または放置しても筆記具用インキ組成物11には圧力が掛かることはない。このため、ボールペンレフィル8の前端からのインキ漏れを防止できる。
【0069】
本発明では、第一弾発体34は交換可能に構成することが好ましく、第一弾発体34の弾発力と第二弾発体15の弾発力との強さの関係を逆にすることで加圧方式をノック加圧式と筆圧加圧式のどちらにも容易に変更することができる。すなわち、本発明の加圧式筆記具1は、第1コイルスプリング(第一弾発体)34を付け替え、ノック時における第1コイルスプリング(第一弾発体)34の弾発力と第2コイルスプリング(第二弾発体)15の弾発力との強さの関係を入れ替えることで、ノック操作によりインキ11が加圧される方式(ノック加圧式)と、筆圧を掛けることでインキ11が加圧される方式(筆圧加圧式)と、を切り替えることができる。
【0070】
〔第2実施形態〕
本実施形態の加圧式筆記具101は、
図11から
図15に示すように、後軸102の前方に前軸103を螺合することで軸筒104を形成してあり、軸筒104内に前後動可能に配設されたスライド部材105と、スライド部材105の後部に係止されたノック体106と、スライド部材105内に配設された加圧機構107と、加圧機構107の前部に装着され軸筒104内を前後に摺動可能なレフィル(ボールペンレフィル)108と、後軸102の側面に回動自在に係止されたクリップ109と、により構成してある。
【0071】
ボールペンレフィル108は、PP樹脂からなる透明のインキ収容筒110に、筆記具用のインキ組成物であるインキ111及び当該インキ111の後端にインキ111の消費に伴い追従するグリース状のインキ追従体112を直接収容し、インキ収容筒110の前端開口部に、ボール(φ0.38mm)を回動自在に抱持したボールペンチップ113の後端部を圧入嵌合して得たものである。
【0072】
前軸103(軸筒104)は、
図11に示すように、前端にボールペンレフィル108のボールペンチップ113が突出可能な前端開口部103aが形成されている。また、前軸103(軸筒104)の内面に形成した内段部103bとボールペンレフィル108の外周面に形成した外段部108aとの間に第1コイルスプリング114(第一弾発体)114を圧縮状態で張架し、軸筒104に対してボールペンレフィル108を後方に弾発してある。
【0073】
後軸102(軸筒104)は筒状に形成してあり、
図12に示すように、外側面102aに軸方向に沿って延び、内孔まで貫通する側孔102bが形成してある。また、外側面102aには外方へ向って突出するクリップ係止部102cが形成してあり、クリップ係止部102cはクリップ用係止突起102dとスプリング用係止突起102eにより構成してある。そして、クリップ用係止突起102dには軸方向に対して直交する方向に係止孔102fを形成してある。
【0074】
スライド部材105は、
図11~
図13に示すように、外周部に外方へ向って突出する掛止部105aを形成してあり、掛止部105aを後軸102の側孔102bに配置することで、後軸102に対してスライド部材105を前後に摺動自在且つ回動不能に装着してある。
また、スライド部材105の前部内孔には内方へ向って突出する複数の突起状のストッパー105bが形成してあり、スライド部材105の後端は内径が小さくなっている後段部105cが形成してある。
更に、スライド部材105の後部外側面には軸方向に沿って延びる摺動部材用側孔105dが形成してある。
【0075】
クリップ109は、
図11及び
図12に示すように、後軸102のスプリング用係止突起102eと、クリップ109の内壁部に軸筒104側に突出するように形成した内突起109aとの間にクリップ用スプリング116を配設し、クリップ109の内側壁に形成した係止軸部109bを係止孔102fに係止することで、クリップ109の先端部を、後軸102の外壁面側に常時弾発するよう張架してある。また、クリップ109の後端部を押圧(
図12の矢印G方向)することにより、クリップ109と後軸102との係止軸Rを支点とし、クリップ109の先端部を後軸102の外壁面から離間可能な可動式クリップとして構成してある。
尚、クリップ109の前部には、基部109dから軸筒104側に延び、スライド部材105の側面に形成した掛止部105aと掛止する被掛止部109cを形成してある。
【0076】
加圧機構107は、
図11、
図12、
図14に示すように、ボールペンレフィル108の後方且つスライド部材105の内方に、当該スライド部材105に対して前後動自在に収納され、円筒状のシリンダー117と、シリンダー117の後端開口部117aに挿入されシリンダー117に対して前後に摺動可能に係着したピストン118と、ピストン118の側面に嵌着されたOリング119と、シリンダー117とピストン118の間に張架した第2コイルスプリング115(第二弾発体)115とで構成してある。
尚、加圧機構107は、スライド部材105のストッパー105bにより前方への移動を制限してある。
【0077】
シリンダー117について詳述すると、
図14に示すように、シリンダー117は前後に貫通する段状に形成された内孔117bを形成してあり、シリンダー117の外周面には、内孔117bまで貫通する空気孔117cを形成してある。
また、シリンダー117の内孔117bには、シリンダー117の内側部117dとピストン118の前端とOリング119とにより囲まれた加圧空間120(加圧室)120が形成され、加圧空間120は空気孔117cによりシリンダー117の外部と通気させてある
【0078】
更に、シリンダー117の前部117eは中央部117fより小径で形成してあり、前部117eには外方へ向かって円周状に突出する装着部117gが軸方向に沿って2箇所形成してある。また、ボールペンレフィル108の後端内周部108bはシリンダー117の装着部117gに着脱自在に装着してあり、加圧空間120はシリンダー117の内孔117bによりボールペンレフィル108の後部内孔108cまで連通してある。
尚、装着部117gは、シリンダー117にボールペンレフィル108を装着した際、シリンダー117とボールペンレフィル108との間の気密が確保され、且つ、手で容易に着脱可能になるよう外方への突出量(外径)を調整してある。
一例として、シリンダー117へのボールペンレフィル108の取り付け時に掛かる力は10Nとすることができる。
【0079】
ピストン118について詳述すると、ピストン118の外周部118aには外方へ向かって突出する凸部118bが軸心を挟んで対称に2箇所形成してある。そして、凸部118bをシリンダー117の中央部117fに軸心に沿って延びるように形成した窓部117hに、前後方向に摺動自在に係止してある。
【0080】
更に、ピストン118の外周部118aには軸周方向に延びる凹状の凹状部118cが形成してあり、凹状部118cには合成ゴムで形成したOリング(密閉部材)119を嵌着してある。そして、Oリング119の外側部はシリンダー117の内側部117dに摺接しており、シリンダー117の後端開口部117aをピストン118とOリング119とで空気が漏れないように密閉してある。また、ピストン118の後端面には前方へ向って凹状に形成された後方内孔118dを設けてある。
尚、シリンダー117が後退した際、シリンダー117の後端にスライド部材105の内段部105eが当接することで、シリンダー117の後退を制限してある。
【0081】
第2コイルスプリング115(第二弾発体)115について詳述すると、第2コイルスプリング115はシリンダー117の内方段部117iとピストン118の前段部118eとの間に張架してあり、ピストン118に対してシリンダー117を前方に弾発してある。
【0082】
尚、加圧空間120は、シリンダー117の前後への摺動によりOリング119の位置がシリンダー117の空気孔117cより前方にあるときは密閉状態となり、Oリング119の位置が空気孔117cより後方にあるときは、加圧空間120とシリンダー117の外部とが空気孔117cにより通気され非密閉状態となる。
【0083】
次に、ノック体106について詳述すると、
図11から
図13に示すように、ノック体106は円筒状に形成されたノブ121と棒状の前部材122とで構成してある。
【0084】
前部材122は前部122aの外側面に雄螺子部122bを形成してあり、後部122cはノブ121の後部内孔121aに挿入することで、前部材122とノブ121とを着脱不能に圧入装着してある。
【0085】
ノブ121は、外側面に軸心方向に延びる複数の溝部121bを均等間隔で形成してあり、溝部121bによりノック体106を手で掴んだ際に滑り難くしてある。
【0086】
更に、前部材122とノブ121とを圧入装着する際、前部材122の側面に形成した鍔部122dとノブ121の内段部121cとの間にスライド部材105の後部に小径に形成した後段部105cを配設することで、スライド部材105に対してノック体106を回動自在に係止してある。このため、ノック体106はスライド部材105と共に軸筒104に対して前後動自在に構成される。
【0087】
また、前部材122の鍔部122dとピストン118の後端との間に、筒状に形成した摺動部材123を配設してあり、摺動部材123の内面には、前部材122の雄螺子部122bと螺合する雌螺子部123aを形成してある。
更に、摺動部材123の外周面には外方へ向って突出し前後方向に延びる摺動突起123bを形成してあり、摺動突起123bをスライド部材105の摺動部材用側孔105dに前後動自在に挿入することで、スライド部材105に対して摺動部材123を前後動可能且つ回動不能に装着してある。
【0088】
尚、スライド部材105とノック体106と摺動部材123とで、ノック体106を前方へ押圧するノック操作によりボールペンレフィル108の前端を前軸103の前端開口部103aに対して出没させる出没機構124が構成され、出没機構124のノック体106を回動することにより、摺動部材123が前後動して加圧空間120の圧力を調整することができる。
【0089】
ここで、第1コイルスプリング114と第2コイルスプリング115の弾発力の関係について説明を行う。
図11の取り付け時(非ノック時)においては、第1コイルスプリング114<第2コイルスプリング115を満たすように調整してあり、ノック体106を前方へ押圧した
図15の状態(ノック操作時)でも、第1コイルスプリング114<第2コイルスプリング115となるよう各スプリングの弾発力を調整してある。
【0090】
次に、ノック体106を前方へ押圧(ノック操作)することで、ボールペンレフィル108の筆記先端であるボールペンチップ113を前軸103の前端開口部103aから出没させる状態を説明する。
図11の状態からノック体106を前方へ押圧(
図11の矢印F方向)すると、摺動部材123を介してノック体106に押されたピストン118が前進する。その際、第2コイルスプリング115の弾発力は、常に第1コイルスプリング114の弾発力より大きくなるよう設定してあることから、第2コイルスプリング115は圧縮されることなく、加圧空間120が非加圧状態のままシリンダー117と共にボールペンレフィル108が前方に押圧されて前進し、前軸103の前端開口部103aからボールペンチップ113の前端が突出する。そこで、スライド部材105の掛止部105aが、後軸102の側面に配置したクリップ109の先端部の被掛止部109cに掛止することで、ボールペンチップ113の前端を、前軸103(軸筒104)の前端開口部103aから突出した状態を維持させる
図15の状態となる。
尚、シリンダー117及びボールペンレフィル108の前進は、ピストン118の凸部118bがシリンダー117の窓部後端117jに当接することで規制されて止まるようにしてある。
【0091】
ここで、クリップ109の後端部を押圧(
図15の矢印G方向)し、クリップ109の被掛止部109cに掛止したスライド部材105の掛止部105aの掛止状態を解除すると、第1コイルスプリング114の弾発力によって、ボールペンレフィル108、シリンダー117、ピストン118及びノック体106が後方に移動して
図11の状態に戻る。
【0092】
次に、本実施形態において、筆記する際の筆記圧で、インキ追従体112を介してボールペンレフィル108内のインキ111の後端に圧力をかける状態を説明する。
図16に示すように、ボールペンチップ113の前端が、前軸103の前端開口部103aから突出した
図15の状態で、軸筒104を傾けて保持し、ボールペンレフィル108の前端に筆圧を掛けると、摺動部材123に当接しているピストン118は後方への移動ができないため、第2コイルスプリング115の弾発力に抗してボールペンレフィル108とシリンダー117とが連動して後方(矢印H方向)に移動する。具体的には、先ず、第2コイルスプリング115が圧縮し、シリンダー117が後方へ移動すると、シリンダー117の空気孔117cがOリング119の位置より後方へ移動し、Oリング119により加圧空間120を密閉する。さらに、シリンダー117が後方へ移動すると、第2コイルスプリング115を更に圧縮させ、ボールペンレフィル108の後部内孔108c及び加圧空間120を圧縮させ、ボールペンレフィル108内のインキ111の後端にインキ追従体112を介して圧力を加える
図17の状態となる。
【0093】
また、筆圧を解除すると、第2コイルスプリング115の弾発力により、シリンダー117及びボールペンレフィル108が前方(元の位置)に移動する。その際、シリンダー117の空気孔117cの位置がOリング119まで達すると、空気孔117cが開放されて加圧空間120及びボールペンレフィル108の後部内孔108cの密閉を解除して、大気圧と同圧になり、
図16の状態に戻る。
【0094】
更に、本実施形態では、
図11の非ノック状態時にノック体106を後軸102に対して回動することでインキ111に掛かる加圧力を調整することができ、
図18Aの状態から、ノック体106を左に回転させると、前部材122に螺子嵌合している摺動部材123はスライド部材105に対して回動不能に係止していることから、ノック体106に対して摺動部材123が
図18B、
図18Cの位置に徐々に後退し、それに合わせてスライド部材105に対するピストン118の位置も後退する。このため、ノック体106を前方へ押圧した際、ピストン118の凸部118bがシリンダー117の窓部後端117jに当接することでシリンダー117の前進する長さも短くなり、シリンダー117の後端とスライド部材105の内段部105eとの隙間が小さくなる。その結果、筆圧が掛かった際にシリンダー117の後退できる長さが短くなるため、ノック体106を回動して
図18Aの状態から
図18Cにすると、加圧空間120に掛かる圧力を徐々に下げることができる。尚、
図18Cの状態では、シリンダー117の後端とスライド部材105の内段部105eとの隙間がなくなるよう設定してあるため、シリンダー117が後退できず、加圧空間120が全く圧縮されないように調整してある。このため、本実施形態の加圧式筆記具101は通常の非加圧式の筆記具としても使用することができる。
【0095】
以上により、本実施形態では、ノック体106を回動して加圧力設定を切り替えた状態でノック体106の押圧が可能であるため、インキ111の後端に掛かる加圧力設定を維持した状態で筆記状態と非筆記状態とをノック操作により容易に切り替え可能な加圧式筆記具101を提供することができた。
【0096】
また、本実施形態では、前軸103を後軸102に対して回転することで、後軸102から前軸103を取り外すことができ、その状態でボールペンレフィル108を前方へ引っ張ると、シリンダー117はスライド部材105のストッパー105bにより前進できないため、ボールペンレフィル108をシリンダー117から引き抜くことで、容易にボールペンレフィル108の交換ができ、更に、第1コイルスプリング114も前軸103から容易に取り出せるため交換することができる。
この際、ノック時における第1コイルスプリング114の弾発力が第2コイルスプリング115の弾発力より高くなるように、弾発力が高いものに交換することで、加圧式筆記具101の加圧方式を筆圧加圧式からノック加圧式に変更することができる。
【0097】
本実施形態の加圧式筆記具101は、軸筒104内に、筆記具用インキ組成物111を充填したインキ収容筒110と、インキ収容筒110の前方部にボールペンチップ113と、を具備したボールペンレフィル108を収容してなり、ボールペンレフィル108の後方に、筆記具用インキ組成物111の後端に圧力を加える加圧機構107が配設され、加圧機構107の後方に、前方へ押圧することにより軸筒104の前端開口部103aからボールペンレフィル108の前端部を突出させる出没機構124が配設された加圧式筆記具101であって、出没機構124は、軸筒104に対して前後動自在、且つ、回動不能に配設されたスライド部材105と、スライド部材105の後部に回動自在に係止され、軸筒104の後端より後方へ突出するノック体106と、スライド部材105の内方に配設され、スライド部材105に対して前後動自在、且つ、回動不能に係止された摺動部材123と、を備え、摺動部材123は、ノック体106の回動に連動して前後動するようノック体106に係止され、その前端が加圧機構107の後端に当接しており、ボールペンレフィル108の外段部108aと軸筒104の内段部103bとの間に第一弾発体114を配設することで軸筒104に対してボールペンレフィル108が後方へ弾発され、出没機構124のノック体106を前方へ押圧することにより、スライド部材105の外壁に形成した掛止部105aが、軸筒104の後部に設けたクリップ109の前部の被掛止部109cに掛止して、ボールペンレフィル108の前端部が、軸筒104の前端開口部103aから突出した状態を維持し、クリップ109の後端部を押圧して、クリップ109の被掛止部109cに掛止した掛止部105aとの掛止状態を解除すると、第一弾発体114の弾発力によって、スライド部材105を後方に移動させると共に、ボールペンレフィル108の前端部を軸筒104の前端開口部103a内に没入させ、ボールペンレフィル108の前端部が、軸筒104の前端開口部103aからの突出を維持した状態で、筆記時の筆圧によりボールペンレフィル108が後退することで加圧機構107を作動させ、筆記具用インキ組成物111の後端に圧力を掛けると共に、出没機構124のノック体106を回動して摺動部材123を前後動させることで、筆記具用インキ組成物111の後端に掛かる圧力を調整可能に構成される。
【0098】
このような加圧式筆記具101によれば、出没機構124のノック体106を前方へ押圧(ノック操作)することにより容易に筆記状態と非筆記状態とを切り替えることができる。更に、ノック体106を回動することで摺動部材123を前後動させ筆記具用インキ組成物111の後端に掛かる圧力を調整することで、筆跡の太さや、筆跡濃度を使用者の好みに合わせて調整することができる。
また、本実施形態は、いわゆる筆圧加圧式であるため、筆圧が掛かった時のみ筆記具用インキ組成物111の後端に圧力が掛かる。このため、ノック体106を前方へ押圧(ノック操作)した状態で、保管または放置しても筆記具用インキ組成物111には圧力が掛かることがなく、ボールペンレフィル108の前端からインキが漏れることを防止できる。
【0099】
また、ノック体106が回動自在に係止するスライド部材105の外壁に形成した掛止部105aが、軸筒104の後端部に設けたクリップの前部の被掛止部109cに掛止して、ボールペンレフィル108を、軸筒104の前端開口部103aから突出した状態を維持した状態で、ポケットなどにクリップを挟持する際に、クリップの前端側が持ち上がると、クリップの被掛止部に掛止した掛止部が解除され、ボールペンレフィル108を軸筒104の前端開口部103a内に没入させるセーフティ機構を具備しているため、誤ってポケットなどが汚れることを防止できる。
【0100】
また、スライド部材105を軸筒104に対して前後動自在且つ回動不能に係止し、ノック体106をスライド部材105に対して回動自在且つ前後動不能に構成すると共に、スライド部材105に対して摺動部材123を前後動自在且つ回動不能に係止することが好ましく、この場合、ノック体106の前後動(ノック操作)によりボールペンレフィル108を出没させる動作と、ノック体106の回動により摺動部材123を前後動し加圧力を調整する動作とを別々に実行できるようになる。このため、本実施形態の出没機構124は、加圧力を毎回調整することなく、筆記状態と非筆記状態とを容易に切り替えることができる。
【0101】
更に、ノック体106と摺動部材123との係止手段は、ノック体106の回動に伴い摺動部材123が前後動するように係止されていれば特に限定されることはないが、例えば、ノック体106の外面に雄螺子部122bを設け、摺動部材123の内面に雌螺子部123aを設けて螺子嵌合させた螺子構造でもよく、ノック体106の外面に突起部を設け、摺動部材123の後端に突起部に当接し、軸方向に対して傾斜したカム斜面を形成し、ノック体106を回動した際に突起部がカム斜面に沿って移動するカム構造にしてもよい。
尚、ノック体106とスライド部材105は回動自在、且つ、前後動不能に係止され、摺動部材123とスライド部材105は回動不能、且つ、前後動自在に係止されていることから、螺子構造の場合は、ノック体106を回動させても摺動部材123は回動することは無く、螺子の係止位置がずれた分、摺動部材123が前後動するよう構成され、カム構造の場合は、ノック体106の回動に伴い傾斜したカム斜面と突起部との当接位置が前後にずれる分、摺動部材123が前後に移動するよう構成される。
【0102】
また、ボールペンレフィル108が軸筒104内にある非ノック状態においては、第二弾発体(第2コイルスプリング)115の弾発力より第一弾発体(第1コイルスプリング)114の弾発力を低くなるよう構成することが好ましく、この場合、非ノック時は第二弾発体115によってシリンダー117が前方へ押圧されるため、筆記具用インキ組成物111に圧力が掛かることがない。このため、非筆記時のインキ漏れを防止できる。
【0103】
更に、ノック体106を前方へ押圧し、ボールペンレフィル108を軸筒104の前端開口部103aから突出させたノック操作時においては、第二弾発体(第2コイルスプリング)115の弾発力より第一弾発体(第1コイルスプリング)114の弾発力が低くなるように構成することで、第二弾発体115により前方へ押圧されたシリンダー117及びレフィル108が第一弾発体114の弾発力に抗して前進するため、ノック状態でもシリンダー117内の加圧室(加圧空間)120が加圧されることはない。このため、筆記を開始してボールペンレフィル108の先端に筆圧が掛かると、筆圧に押されたボールペンレフィル108が第二弾発体115の弾発力に抗して後退することでシリンダー117も同時に後退し、シリンダー117内の加圧室120が加圧され筆記具用インキ組成物111の後端に圧力が掛かる筆圧加圧式として使用することができる。
【0104】
尚、ノック時は、第二弾発体(第2コイルスプリング)115の弾発力より第一弾発体(第1コイルスプリング)114の弾発力が高くなるように構成した場合、第一弾発体114により後方へ押圧されたボールペンレフィル108がシリンダー117を押圧することでシリンダー117内が加圧される。このため、ノック操作によりすぐに筆記具用インキ組成物111が加圧されるため筆記開始から加圧力を増加させた状態で筆記することができるノック加圧式として使用することができる。
【0105】
また、ノック体106の外面に表示部を設け、段部とノック体106の突起部と当接した際に、ノック体106の表示部と軸筒104外面に設けた表示部とが一致した箇所がそのときの加圧力の強さを表すよう構成してもよい。
尚、加圧力の強さを表す方法としては、数字(0、1、2、3・・・・)や文字(強、中、弱、無)、記号等を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0106】
尚、本発明の加圧式筆記具1,101は、油性インキ、水性インキなど、インキの種類に限定されることなく実施可能である。特に、水性インキや剪断減粘性の水性インキを用いた場合には、加圧によるインキ吐出量の増減が大きく、筆跡の太さや幅や筆跡の濃淡など加圧力の変化による差が大きいので好適に用いることができる。更にマイクロカプセル顔料を用いた熱変色性インキを用いた筆記具においては、通常(非加圧)であってもインキ吐出量が特に多く、総筆記距離への影響も大きいため、用途などによって加圧力が変化できる本発明の効果は顕著である。
【0107】
次に、
図19~
図24を参照して、他の変形例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、第1実施形態と同様に構成され得る部分について、第1実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、第1実施形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0108】
本変形例の加圧式筆記具201では、ボールペンレフィル8に充填される筆記具用インキ組成物11として熱変色性インキが用いられる例について説明する。本変形例の筆記具用インキ組成物11は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含む可逆熱変色性インキである。したがって、形成される筆跡は熱変色性を有しており、加熱または冷却によって変色または消色する。なお、これに限られず、筆記具用インキ組成物11として熱変色性インキ以外の他のインキ組成物を用いることも可能である。
【0109】
マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、0.1μm~5.0μmであることが好ましく、0.1μm~4.0μmであることがより好ましく、0.5μm~3.0μmであることがさらに好ましい。マイクロカプセル顔料の平均粒子径を上記数値範囲とすることにより、高濃度の発色性を維持しつつ、本発明の筆記具の筆記感をより滑らかなものとすることができる。なお、粒子径、粒度分布の測定は、例えばコールター法(電気的検知帯法)により測定することができる。具体的には精密分布測定装置(ベックマンコールター製Multisizer4e)を用いて測定し、その数値を基に平均粒子径(メジアン径)を体積基準で算出する。或いは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置〔株式会社堀場製作所製;LA-300〕を用いて測定し、標準試料を用いて校正した数値を基に平均粒子径(メジアン径)を体積基準で算出することができる。
【0110】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の含有量は、インキ組成物全量に対し、5~40質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~35質量%であることがさらに好ましい。可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の含有量を上記数値範囲とすることにより、インキ流出性を維持しつつ、発色性能を向上させることができる。
【0111】
本発明における可逆熱変色性インキの変色温度は、その目的などに応じて適切に設定される。たとえば、加熱により消色する可逆熱変色性インキを用いる場合、加熱によって消色する温度は、25℃~95℃に設定することが好ましく、36℃~90℃に設定することがより好ましい。より具体的には、高温側変色点〔完全消色温度(t4)〕を、25℃~95℃、好ましくは、36℃~90℃、の範囲に設定し、低温側変色点〔完全発色温度(t1)〕を、-30℃~+20℃、好ましくは、-30℃~+10℃、の範囲に設定することができる。このような構成とすることにより、常態(日常の生活温度域)で色彩を有効に保持することができるとともに、筆跡を加熱、具体的には後述する摩擦体220等による摩擦熱による加熱、で容易に消色させることができる。
【0112】
図19は、本変形例の加圧式筆記具201を示す図であり、非ノック時における加圧式筆記具201の縦断面図である。また、
図20は、
図19の加圧式筆記具201の内部部品の構成を説明するための分解図であり、
図21は、
図19の加圧式筆記具201の加圧機構7を示す縦断面図である。
【0113】
図示された例では、軸筒4は、後軸2、前軸3及び後筒205を有している。後筒205は、後軸2の後方に配置され、後軸2に対して回動自在且つ前後動不能に係止されている。後筒205の後端には摩擦体220が着脱不能に係止されている。摩擦体220は、例えば熱変色性を有する筆記具用インキ組成物11による筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱によりこの筆跡を変色(消色)させるために用いられる。なお、これに限られず、摩擦体220は、砂消しゴム等の摩擦体であってもよい。摩擦体220は、例えば弾性材料からなり、後筒205の後端に圧入、係合、螺合、嵌合、接着、2色成形によって固定することができる。
【0114】
ノック体6は、ノック体6の本体から外方に向かって延び出るスライド部6aを有している。スライド部6aには、軸筒4の外方においてクリップ9が固定されている。
【0115】
軸筒4には、ノック体6を前方へ押圧してスライド部6aを前後方向にスライド移動させるためのスリット部210を有している。スリット部210は、後軸2の後部に設けられる前部スリット211と、後筒205の前部に設けられる後部スリット215とを含む。図示された例では、前部スリット211は、第1スリット212、第2スリット213及び第3スリット214の3つのスリットを含む。なお、これに限られず、前部スリット211は、2つのスリットを含んでもよいし、4つ以上のスリットを含んでもよい。前部スリット211(スリット212~214)は、後軸2を内方から外方へ向かって貫通している。また、前部スリット211は、前後方向に沿って直線状に延び後軸2の後端に開口する。後部スリット215は、1本のスリットを含む。後部スリット215は、後筒205を内方から外方へ向かって貫通している。また、後部スリット215は、前後方向に沿って直線状に延び後筒205の前端に開口する。
【0116】
使用者が後筒205を後軸2に対して回転させることにより、後部スリット215は、前部スリット211の第1スリット212、第2スリット213又は第3スリット214と前後方向に整列される。これにより、後部スリット215と、第1スリット212、第2スリット213及び第3スリット214のいずれかとが、互いに前後方向に連通する。このとき、ノック体6のスライド部6aが、後部スリット215内と、当該後部スリット215と連通したスリット212~214内と、の間を前後方向に沿って移動することができる。
【0117】
軸筒4の内部には、筒状体230が配置されている。筒状体230は、全体として略筒状に形成されている。筒状体230は、その凸部230aが軸筒4の内面に設けられた凹部2i内に係止されることにより、軸筒4に対して回動不能且つ前後動不能に固定されている。図示された例では、凹部2iは、軸筒4を内方から外方へ貫通する貫通孔として形成されている。
【0118】
シリンダー17は、筒状体230に対して回動不能且つ前後動可能に係止されている。ピストン18は、シリンダー17に対して回動不能且つ前後動可能に係止されている。本変形例のピストン18は、その後部に、後方へ向って突出して形成された突起部218fを有している。突起部218fには、その後端に円弧状の係止部218gが形成されている。
【0119】
ピストン18の後方には、カム部材223が配置されている。カム部材223はノック体6に対して回動不能且つ前後動可能に係止されている。カム部材223の前部には、軸方向に対して段状に形成したカム斜面223aが形成されている。カム部材223には、前端面から後方へ向かって傾斜して延びるカム斜面223aが形成してあり、カム斜面223aは複数の段部223bを備えた段状に形成してある。そして、第2コイルスプリング15により後方へ弾発されたピストン18の突起部218fが、複数の段部223bのいずれかに選択的に係合する。
【0120】
カム部材223の外方には、カム部材223を取り囲むようにして、動作体240及び中間部材250が配置されている。動作体240は、中間部材250に対して後方に配置されている。動作体240の側面には、案内突起240aが形成されている。その一方、軸筒4の内面には、複数の係合溝2hが形成されている。動作体240の案内突起240aは、軸筒4の係合溝2hに挿入されており、動作体240は、軸筒4に対して回動不能且つ前後動可能に係止されている。また、動作体240はノック体6に対して回動可能且つ前後動不能に係止されている。
【0121】
中間部材250の側面には、外方へ向って突出し後方へ延びるカム突起250aが形成されている。中間部材250は、軸筒4に対して回動可能に構成される。加圧式筆記具201がノック加圧式である場合、中間部材250は、ノック後においてはその前端がシリンダー17の後端に当接し、ボールペンレフィル8を後方へ付勢している第1コイルスプリング14及びシリンダー17内の第2コイルスプリング15により後方へ弾発される。
【0122】
この動作体240、中間部材250及び軸筒4の複数の係合溝2hにより、ボールペンレフィル8の出没機構が構成される。出没機構を構成する動作体240、中間部材250及び係合溝2hは、例えばJP2013-006281Aにおいて
図11及び
図12を参照して説明される出没機構と同様に構成することができるので、各部材の形状及び動作についての詳細な説明は省略する。
【0123】
次に、
図22A~
図24Bを参照して、ノック体6を回動して加圧力の設定を変更する動作について説明する。
図22Aは、本変形例の加圧式筆記具201のノック時における外観を示す図であって、加圧力が掛からないよう設定した状態における加圧式筆記具201を示す図である。
図22Bは、
図22AにおけるXXIIB-XXIIB線に沿った縦断面図である。
図23Aは、本変形例の加圧式筆記具201のノック時における外観を示す図であって、加圧力を相対的に低い圧力に設定した状態における加圧式筆記具201を示す図である。
図23Bは、
図23AにおけるXXIIIB-XXIIIB線に沿った縦断面図である。
図24Aは、本変形例の加圧式筆記具201のノック時における外観を示す図であって、加圧力を相対的に高い圧力に設定した状態における加圧式筆記具201を示す図である。
図24Bは、
図24AにおけるXXIVB-XXIVB線に沿った縦断面図である。
【0124】
非ノック状態では、ノック体6のスライド部6aは、後筒205の後部スリット215内に挿入されている。この非ノック状態においてノック体6(クリップ9)を後筒205ごと軸筒4に対して回動することで加圧室20内を圧縮する設定を変更することができる。ノック体6と後筒205とを軸筒4に対して回動すると、ノック体6に対してカム部材223を回動不能に係止していることから、ノック体6と共にカム部材223が回転する。このとき、ピストン18の突起部218fはカム部材223のカム斜面223aに沿って隣の段部へ移動される。移動した段部の前後方向における位置の差分だけピストン18が前後動することで、ノックした際の加圧室20内の加圧量が変化する。ノック体6を回動する際、後筒205の後部スリット215は、軸筒4の3本のスリット212~214の内の一つと前後方向の位置が合致する状態から、隣り合うスリット212~214と前後方向の位置が合致するまで回転する。本変形例では、後部スリット215と第1スリット212とが互いに前後方向に整列されたときに、筆記具用インキ組成物11に対して加圧力調整機構による加圧力が掛からないように設定される。また、後部スリット215と第2スリット213とが互いに前後方向に整列されたときに、筆記具用インキ組成物11に対して加圧力調整機構による相対的に低い加圧力が掛かるように設定される。さらに、後部スリット215と第3スリット214とが互いに前後方向に整列されたときに、筆記具用インキ組成物11に対して加圧力調整機構による相対的に高い加圧力が掛かるように設定される。
【0125】
非ノック時にノック体6(クリップ9)を前方へ押圧してスライドさせると、ノック体6のスライド部6aが後部スリット215から前部スリット211(スリット212~214)へと移動する。このとき、ピストン18の突起部218f(係止部218g)がカム部材223のカム斜面223aに当接している為、ピストン18はカム部材223に押されて前進し、ピストン18に押される形でシリンダー17も前進する。
【0126】
加圧式筆記具201がノック加圧式である場合、取付時における加圧室20内の第2コイルスプリング15の弾発力とボールペンレフィル8を後方へ付勢している第1コイルスプリング14の弾発力との関係は、
第2コイルスプリング15の弾発力>第1コイルスプリング14の弾発力
となり、ノック後における第1コイルスプリング14と第2コイルスプリング15の関係は、
第2コイルスプリング15の弾発力<第1コイルスプリング14の弾発力
となっているため、ノック最中に第1コイルスプリング14の弾発力が第2コイルスプリング15を上回ると、ピストン18がシリンダー17に対して相対的に前進(シリンダー17の前進が一時的に停止)し、シリンダー17の後端と中間部材250の前端が当接した時点でシリンダー17は中間部材250に押されて再度前進を開始する。この際、シリンダー17に対してピストン18が前進することでシリンダー17の側面に形成した空気孔と加圧室20内との連通をピストン18の側面に固定したOリング19が遮断することで加圧室20内が気密され、更にピストン18がシリンダー17に対して前進することで加圧室20内が圧縮され加圧された状態となる。
【0127】
加圧式筆記具201が筆圧加圧式である場合、取り付け時における加圧室20内の第2コイルスプリング15の弾発力とボールペンレフィル8を後方へ付勢している第1コイルスプリング14の弾発力との関係は、
第2コイルスプリング15の弾発力>第1コイルスプリング14の弾発力
となり、ノック後における第1コイルスプリング14の弾発力と第2コイルスプリング15の弾発力との関係は、
第2コイルスプリング15の弾発力>第1コイルスプリング14の弾発力
となっている。このため、ピストン18に対してシリンダー17が第2コイルスプリング15の弾発力で最前進した位置を維持したままピストン18の突起部218fがカム部材223のカム斜面223aに押されて前進する。この時、中間部材250も動作体240の接触面240bに押されて前進する。
【0128】
本変形例の加圧式筆記具201では、筆記具用インキ組成物11は、熱変色性インキであり、軸筒4の後端に設けられ、熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱により該筆跡を変色させることが可能な摩擦体220を有する。
【0129】
このような加圧式筆記具201によれば、筆記具用インキ組成物として熱変色性インキを用いた、筆記状態と非筆記状態とを切り換え可能な加圧式筆記具201であっても、レフィル内に充填された筆記具用インキ組成物に作用する圧力を、使用者の好みに応じて調整することが可能になる。