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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】樹脂繊維およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/42 20060101AFI20220912BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
D01F6/42
C08J5/04 CET
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019537585
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2018030402
(87)【国際公開番号】W WO2019039373
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2017158392
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017158394
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅典
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502179(JP,A)
【文献】特開平06-316812(JP,A)
【文献】特開2005-538239(JP,A)
【文献】特開2014-43524(JP,A)
【文献】特開2003-105626(JP,A)
【文献】国際公開第2016/055192(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00-6/96
D01F 9/00-9/04
D04H 1/00-18/04
C08J 5/00-5/24
B29B 15/10
C08L 23/00
C08L 101/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂としてスチレン系樹脂のみを含む熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂繊維であって、前記熱可塑樹脂組成物の、ISO1133に準じ、温度220℃、荷重10kgの条件で測定されたメルトボリュームレイトが20(cm3/10分)以下であることを特徴とする樹脂繊維。
【請求項2】
スチレン系樹脂と、スチレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物(ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を除く)からなる樹脂繊維であり、前記熱可塑樹脂組成物の、ISO1133に準じ、温度220℃、荷重10kgの条件で測定されたメルトボリュームレイトが20(cm 3 /10分)以下であることを特徴とする樹脂繊維。
【請求項3】
前記他の熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することを特徴とする請求項2に記載の樹脂繊維。
【請求項4】
強化繊維と、請求項1~の何れか1項に記載の樹脂繊維とを含む、繊維強化プラスチック。
【請求項5】
溶融紡糸法またはメルトブロー法で得られることを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の樹脂繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂繊維およびその製造方法に関する。より詳細には、スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂繊維、スチレン系樹脂及びその他の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂繊維、およびそれらの製造方法に関する。本願は、2017年8月21日に日本に出願した特願2017-158392号、および2017年8月21日に日本に出願した特願2017-158394号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維等の強化繊維を樹脂に配合した繊維強化プラスチックは、成形品にした際の剛性が高いことから薄肉化による軽量化を図ることが出来る。そのため、種々の分野で利用されている。強化繊維を樹脂に配合させる方法としては、押出混練機を用いて溶融混練する方法が挙げられるが、強化繊維が混練中に切断されてしまい、剛性が低下する課題がある。さらに、溶融混練後、射出成形された成形品では、強化繊維の配向が生じ、押出成形された成形品では、強化繊維の分布ムラが生じてしまうことで、機械的特性が不均一となる課題もある。そこで、強化繊維の長さを保ち、配向や分布ムラを解消させる繊維強化プラスチック成形品の製造方法として、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を抄造法や不織布法により混合させ加熱加圧する方法が試みられている(特許文献1及び2参照)。しかしながら、熱可塑性樹脂繊維の樹脂としては、結晶性樹脂やポリカーボネート樹脂であり、成形品の吸湿性、収縮性、反り及び耐久性については未だ不十分である。これら特性を改良するため、熱可塑性樹脂繊維としてスチレン系樹脂を配合することが考えられる。スチレン系樹脂を含む樹脂繊維としては、特許文献3に開示されているが、強度や伸びが未だ不十分であり、抄造法や不織布法に耐えうる性能のスチレン系樹脂を含む樹脂繊維が得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-62336号公報
【文献】特開2014-224333号公報
【文献】特開平1-183516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、抄造法や不織布法での繊維強化プラスチックの製造に耐えうる強度と伸びを兼ね備え、さらに、連続生産可能な樹脂繊維およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討した結果、スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物のメルトボリュームレイトを特定範囲に規定することで、上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明者は、スチレン系樹脂及びその他の熱可塑性樹脂を含み、かつ、スチレン系樹脂をナノ単位で分散させることで、上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の項1~項6で構成される。
項1 スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂繊維であって、上記熱可塑樹脂組成物の、ISO1133に準じ、温度220℃、荷重10kgの条件で測定されたメルトボリュームレイトが20(cm3/10分)以下であることを特徴とする樹脂繊維。
項2 上記熱可塑性樹脂はスチレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂をさらに含む項1に記載の樹脂繊維。
項3 スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂繊維であって、上記熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂をさらに含み、かつ、上記スチレン系樹脂がナノ単位で分散していることを特徴とする樹脂繊維。
項4 上記他の熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする項1~項3の何れかに記載の樹脂繊維。
項5 強化繊維と、項1~項4の何れかに記載の樹脂繊維を含む繊維強化プラスチック。
項6 溶融紡糸法またはメルトブロー法で得られることを特徴とする、項1~項4の何れかに記載の樹脂繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、強度と伸びに優れ、連続生産可能な樹脂繊維が得られる。本発明品を使用すると、抄造法や不織布法での繊維強化プラスチックの作製に使用した際、加工性、取扱い性および変形性に優れ、立体形状への賦型も容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第一の本発明の樹脂繊維は、スチレン系樹脂を含む第一の熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂繊維であって、上記第一の熱可塑樹脂組成物のISO1133に準じ、温度220℃、荷重10kgの条件で測定されたメルトボリュームレイトが20(cm3/10分)以下であることを特徴とする。また、第二の本発明の樹脂繊維は、スチレン系樹脂を含む第二の熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂繊維であって、上記第二の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂をさらに含み、かつ、上記スチレン系樹脂がナノ単位で分散していることを特徴とする。本明細書において、第一及び第二の本発明の樹脂繊維を総称して「本発明の樹脂繊維」と称する場合がある。また、上記第一及び第二の熱可塑性樹脂組成物を総称して「本発明の熱可塑性樹脂組成物」と称する場合がある。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0009】
本発明に使用できるスチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体、スチレンおよび共重合可能な他のビニル系単量体からなる共重合体、ゴム強化スチレン系重合体が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0010】
上記、スチレンおよび共重合可能な他のビニル系単量体からなる共重合体の共重合可能な他のビニル系単量体としては、α-メチルスチレン等のスチレン以外の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸系単量体、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の架橋性単量体が例示でき、1種または2種以上用いることができる。
【0011】
上記、ゴム強化スチレン系重合体は、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、及びこれらを組み合わせた複合ゴムから選ばれる1種または2種以上により強化されたスチレン系重合体であり、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴム-スチレン重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-アクリル系ゴム-スチレン重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル-エチレン系ゴム-スチレン重合体(AES樹脂)等が例示でき、1種または2種以上用いることができる。
【0012】
本発明のスチレン系樹脂としては、中でもポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂等の剛性の高い樹脂が好ましい。
【0013】
本発明のスチレン系樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂組成物を構成する樹脂成分100質量%に対して、5~95質量%、10~80質量%、10~90質量%、10~60質量%、20~80質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。スチレン系樹脂を含むことで、最終製品の吸湿性、収縮性及び反りを抑制し、耐久性を向上させることができる。
【0014】
第二の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含有する。また、第一の熱可塑性樹脂組成物は、上記他の熱可塑性樹脂を含有することができる。上記他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂等のポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;(変性)ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリオキシメチレン樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリアリレート樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。これらの中でも、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂が好ましい。
【0015】
特に、上記他の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる熱可塑性樹脂が好ましい。上記ポリアミド樹脂としては、PA-6、PA-66、PA-11、PA-12、PA-610、及びPA-1010からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミド樹脂が好ましい。上記ポリカーボネート樹脂としては、界面重合法により製造されたポリカーボネート樹脂(界面重合法ポリカーボネート樹脂)、溶融エステル交換法により製造されたポリカーボネート樹脂(溶融エステル交換法ポリカーボネート樹脂)が好ましい。
【0016】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ヒンダードアミン系の光安定剤;ヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤;フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤;ベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系の紫外線吸収剤;有機ニッケル系、高級脂肪酸アミド類等の滑剤;リン酸エステル類等の可塑剤;ポリブロモフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール-A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化等の含ハロゲン系化合物;リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤;臭気マスキング剤;帯電防止剤;カーボンブラック、酸化チタン等の顔料;染料等を添加することもできる。
【0017】
第二の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂がナノ単位で分散している。また、第一の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂がナノ単位で分散していることが好ましい。ここで言う「ナノ単位」とは、透過電子顕微鏡で観察される分散単位が1000nm未満であることを示す。上記ナノ単位は、透過電子顕微鏡で観察される分散単位が、1000nm未満、950nm未満、900nm未満、または850nm以下であることがさらに好ましい。上記分散単位の下限は、例えば10nmである。
【0018】
ナノ単位で分散させる方法に特に制限はないが、例えば、通常使用される2軸以上の押出し混練機を用い、そのL/Dが35以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。上記L/Dの上限は例えば150である。また、シリンダー温度、吐出量、スクリュー構成およびスクリュー回転数等、混合条件を変更することで適宜調整可能である。例えば、シリンダー温度は低い方がナノ分散には好ましく、吐出量は上げすぎるとナノ分散には好ましくなく、スクリュー回転数は高い方がナノ分散には好ましいという傾向がある。
【0019】
第一の熱可塑性樹脂組成物のメルトボリュームレイト(以下、MVRとも呼ぶ)は20(cm3/10分)以下である。また、第二の熱可塑性樹脂組成物のMVRは20(cm3/10分)以下であることが好ましい。MVRは、ISO1133に準じ、温度220℃、荷重10kgの条件で測定された値である。MVRが20(cm3/10分)を超えると樹脂繊維の強度が劣り、連続生産性に劣る傾向にある。さらに、抄造法や不織布法での繊維強化プラスチックの作製に耐えられない傾向にある。さらに、直径100μm以下の樹脂繊維を作成する加工性も考慮すると20(cm3/10分)未満であることがより好ましく、15(cm3/10分)以下、10(cm3/10分)以下、または5(cm3/10分)以下であることがさらに好ましい。
【0020】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物の220℃におけるダイスウェルは、2.5以下であることが樹脂繊維径のバラツキを低減させるためには好ましい。より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下である。ダイスウェルは、例えばMALVERUN社製 RH7を用いてJIS K7199に準じて測定することができる。
【0021】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物の240℃におけるメルトテンションは0.18N以下であることが、樹脂繊維径のバラツキを低減させるためには好ましい。特に好ましくは0.16N以下である。上記メルトテンションの下限は、例えば0.05Nである。メルトテンションは、例えば東洋精機製キャピログラフを用いて測定することができる。
【0022】
本発明の樹脂繊維は、溶融紡糸法またはメルトブロー法で作製されることが好ましい。加工温度は、200℃~300℃に調整することが好ましく、220℃~290℃に調整することがより好ましい。200℃以上であると、樹脂が十分に溶融し、樹脂圧力が許容上限を超えにくく、あるいはメルトフラクチャーを発生しにくいため、安定した紡糸加工が容易となる傾向にある。300℃以下であると樹脂の分解や酸化劣化による変色が発生しにくくなる傾向にある。
【0023】
溶融紡糸法における紡糸加工機の溶融紡糸ダイスのノズル径に特に制限はなく、1.0mm以下の範囲のものが使用できる。生産性、押出圧力を考慮すると0.2mm~0.9mmの範囲にあることが好ましい。0.2mm以上であると、溶融紡糸ノズル部の樹脂圧力の上昇を抑制でき吐出が不安定となりにくい傾向にある。1.0mm以下であると樹脂繊維径のバラツキを小さくできる傾向にある。
【0024】
本発明の樹脂繊維の繊維径は、強化繊維と混合する等の後加工性の観点から100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることがさらに好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。上記繊維系の下限は、例えば5μmである。また、本発明の樹脂繊維の繊維長については、目的に応じて適宜調整することができる。
【0025】
溶融紡糸法における紡糸加工機には特に制限はなく、モノフィラメントタイプ、マルチフィラメントタイプ等、公知の機械を目的に応じて使用することができる。
【0026】
また、本発明の樹脂繊維を製造する工程において、目開き60μm未満の金網で濾過する工程を有していることが好ましい。濾過するタイミングに制限はなく、熱可塑性樹脂組成物を構成する樹脂の製造工程の段階、熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する段階、樹脂繊維を溶融紡糸法等で製造する段階が挙げられる。目開き60μm未満の金網としては、具体的に、300メッシュ以上の金網が好ましく、400メッシュ以上の金網がより好ましく、500メッシュ以上の金網がさらに好ましい。目開き60μm未満の金網で濾過することで、樹脂繊維の連続生産性が向上する傾向にある。
【0027】
また、本発明の製造方法で得られた樹脂繊維は、必要に応じて延伸加工を施しても良い。この場合の加工温度は、例えば50℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。上記加工温度の上限は、例えば200℃、190℃、好ましくは180℃である。50℃以上(特に80℃以上)では延伸を充分にとることができる。200℃以下(特に180℃以下)であると繊維同士の融着、溶けた繊維が延伸ローラーに粘着するのを抑制することができる。特に、延伸加工の温度は、50~200℃が好ましく、80~180℃がより好ましい。
【0028】
本発明の樹脂繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の強化繊維と混合して使用することが可能である。混合の際、これらの強化繊維の繊維長、繊維径に特に制限はなく、目的に応じた長さのものを使用することが可能である。例えば、抄造法では、最終製品の補強効果の点から繊維長は、3mm~100mmであることが好ましく、5mm~80mmであることがより好ましい。
【0029】
樹脂繊維と強化繊維の混合方法に特に制限はなく、目的に応じて、不織布法、抄造法、強化繊維とのマルチフィラメント化等、公知の方法を採用することができる。
【実施例
【0030】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0031】
(実施例1)
東芝機械(株)製 TEM-35B(L/D=31)を用い、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数250rpmの条件で溶融混練を行って得られた、クララスチックKU-600R-1(日本A&L株式会社製 ABS樹脂:MVR5.5(cm3/10分))のペレットを、ノズル径0.5mmφ、24孔からなるマルチフィラメント用紡糸ダイを備えた押出機を用いて、押出温度250℃、26g/分の吐出量で押し出した。その際、ダイから押し出される前に500メッシュ金網に通した。押し出された溶融ストランドを冷却温度15℃、冷却風速0.5m/分、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、収束剤付与ローラーで収束剤としてシリコーン系油剤を付与しながら、900m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸繊維の繊維径は26μmであった。
【0032】
(実施例2)
東芝機械(株)製 TEM-35B(L/D=31)を用い、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数250rpmの条件で溶融混練を行って得られた、クララスチックMM(日本A&L株式会社製 ABS樹脂:MVR 4.0(cm3/10分))を用いた以外は実施例1と同じ条件で紡糸した。得られた未延伸繊維の繊維径は25μmであった。
【0033】
(実施例3)
東芝機械(株)製 TEM-35B(L/D=31)を用い、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数250rpmの条件で溶融混練を行って得られた、テクニエースPAX-1439(日本A&L株式会社製 ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂アロイ:MVR 13(cm3/10分))を用いた以外は実施例1と同じ条件で紡糸した。得られた未延伸繊維の繊維径は23μmであった。
【0034】
(実施例4)
東芝機械(株)製 TEM-35B(L/D=31)を用い、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数250rpmの条件で溶融混練を行って得られた、テクニエースTB-1701(日本A&L株式会社製 ポリブチレンテレフタレート樹脂/ABS樹脂アロイ:MVR検出限界(0.1(cm3/10分)以下)を、ノズル径0.5mmφ、24孔からなるマルチフィラメント用紡糸ダイを備えた押出機を用いて、押出温度260℃、26g/分の吐出量で押し出した。その際、ダイから押し出される前に500メッシュ金網に通した。押し出された溶融ストランドを冷却温度15℃、冷却風速0.5m/分、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、収束剤付与ローラーで収束剤としてシリコーン系油剤を付与しながら、1500m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸繊維の繊維径は15μmであった。
【0035】
(実施例5)
東芝機械(株)製 TEM-35B(L/D=31)を用い、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数250rpmの条件で溶融混練を行って得られた、テクニエースTA-1100(日本A&L株式会社製 ポリアミド樹脂/ABS樹脂アロイ:MVR検出限界以下)を用いた以外は、実施例4と同じ条件で紡糸した。得られた未延伸繊維の繊維径は17μmであった。
【0036】
(比較例1)
東芝機械(株)製 TEM-35B(L/D=31)を用い、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数250rpmの条件で溶融混練を行って得られた、クララスチックGA-701(日本A&L株式会社製 ABS樹脂:MVR 62(cm3/10分))のペレットを、ノズル径0.5mmφ、24孔からなるマルチフィラメント用紡糸ダイを備えた押出機を用いて、押出温度220℃、26g/分の吐出量で押し出した。その際、ダイから押し出される前に500メッシュ金網に通した。押し出された溶融ストランドを冷却温度15℃、冷却風速0.5m/分、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、収束剤付与ローラーで収束剤としてシリコーン系油剤を付与しながら、900m/分の速度で巻き取ったところ、断糸が発生したため、巻き取り速度を800m/分へ変更した。得られた未延伸繊維の繊維径は、40μmであった。
【0037】
<連続生産性の評価>
実施例1~5及び比較例1で樹脂繊維を製造する際、900m/分以上の速度で巻き取っても断糸せず連続生産可能であったものを「○」、900m/分以上の速度で巻き取ると断糸し連続生産できなかったものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
(略語)
PC:ポリカーボネート樹脂
PBT:ポリブチレンテレフタレート樹脂
PA:ポリアミド樹脂
【0039】
表1に示すとおり、実施例1~5の熱可塑性樹脂組成物は、本発明で規定するMVRが20(cm3/10分)以下であることから、連続生産の良好な樹脂繊維が得られた。
比較例1は、本発明の規定外であるため、連続生産に劣り、樹脂繊維径も太くなる傾向にあった。
【0040】
(スチレン系樹脂の分散単位の測定方法)
下記実施例6~10及び比較例2~4で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、クライオミクロトームを用いて-85℃の低温で切り出すことで、超薄切片を得た。得られた超薄切片を四酸化オスミウム(OsO4)及び/又は四酸化ルテニウム(RuO4)で染色し、透過電子顕微鏡(JEM-1400:日本電子製)を用いて観察及び写真撮影し画像解析装置(旭化成IP-1000PC)を用いて、分散相の分散単位100個の円相当粒子径の平均値から求めた。
【0041】
(実施例6)
メタクリル酸10質量部、スチレン90質量部からなるモノマー混合物を公知の溶液重合法により重合し、スチレン系樹脂を得た。得られたスチレン系樹脂20質量部とポリアミド樹脂(ユニチカ(株)製 ユニチカナイロン6 A1030BRL)80質量部を混合し、(株)テクノベル製 KZW15-90(L/D=90)を用い、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数450rpmの条件で溶融混練を行った。その際、ダイから押し出される前に500メッシュ金網に通した。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを上記記載の方法で観察した結果、スチレン系樹脂の分散単位は850nmであった。得られたペレットを、ノズル径0.5mmφ、24孔からなるマルチフィラメント用紡糸ダイを備えた押出機を用いて、押出温度260℃、26g/分の吐出量で押し出した。押し出された溶融ストランドを冷却温度15℃、冷却風速0.5m/分、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、収束剤付与ローラーで収束剤としてシリコーン系油剤を付与しながら、1200m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸繊維の繊維径は12μmであった。
【0042】
(実施例7)
粒子径0.1μmのポリブタジエンラテックス70質量部(固形分)の存在下で、メタクリル酸10質量部、スチレン15質量部、アクリロニトリル5質量部からなる混合モノマーを乳化重合法によりグラフト重合し、スチレン系樹脂を得た。得られたスチレン系樹脂10質量部とポリアミド樹脂(ユニチカ(株)製 ユニチカナイロン6 A1030BRL)90質量部を混合し、(株)テクノベル製 KZW15-90(L/D=90)を使い、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数450rpmの条件で溶融混練を行った。その際、ダイから押し出される前に500メッシュ金網に通した。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを上記記載の方法で観察した結果、スチレン系樹脂の分散単位は800nmであった。このペレットを、ノズル径0.5mmφ、24孔からなるマルチフィラメント用紡糸ダイを備えた押出機を用いて、押出温度280℃、26g/分の吐出量で押し出した。押し出された溶融ストランドを冷却温度15℃、冷却風速0.5m/分、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、収束剤付与ローラーで収束剤としてシリコーン系油剤を付与しながら、1200m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸繊維の繊維径は13μmであった。
【0043】
(実施例8)
メタクリル酸10質量部、スチレン60質量部及びアクリロニトリル30質量部からなるモノマー混合物を公知の溶液重合法により重合し、スチレン系樹脂を得た。得られたスチレン系樹脂50質量部とポリアミド樹脂(ユニチカ(株)製 ユニチカナイロン6 A1030BRL)50質量部混合し、(株)テクノベル製 KZW15-90(L/D=90)を使い、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数450rpmの条件で溶融混練を行った。その際、ダイから押し出される前に500メッシュ金網に通した。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを上記記載の方法で観察した結果、スチレン系樹脂の分散単位は910nmであった。得られたペレットを、ノズル径0.5mmφ、24孔からなるマルチフィラメント用紡糸ダイを備えた押出機を用いて、押出温度260℃、26g/分の吐出量で押し出した。押し出された溶融ストランドを冷却温度15℃、冷却風速0.5m/分、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、収束剤付与ローラーで収束剤としてシリコーン系油剤を付与しながら、1200m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸繊維の繊維径は18μmであった。
【0044】
(実施例9)
グリシジルメタクリレート10質量部、スチレン60質量部及びアクリロニトリル30質量部からなるモノマー混合物を公知の溶液重合法により重合し、スチレン系樹脂を得た。得られたスチレン系樹脂30質量部とポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ノバレックスM‐7022J)70質量部を混合し、(株)テクノベル製 KZW15-90(L/D=90)を使い、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数450rpmの条件で溶融混練を行った。その際、ダイから押し出される前に500メッシュ金網に通した。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを上記記載の方法で観察した結果、スチレン系樹脂の分散単位は920nmであった。得られたペレットを、ノズル径0.5mmφ、24孔からなるマルチフィラメント用紡糸ダイを備えた押出機を用いて、押出温度260℃、26g/分の吐出量で押し出した。押し出された溶融ストランドを冷却温度15℃、冷却風速0.5m/分、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、収束剤付与ローラーで収束剤としてシリコーン系油剤を付与しながら、1100m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸繊維の繊維径は22μmであった。
【0045】
(実施例10)
グリシジルメタクリレート10質量部、スチレン60質量部及びアクリロニトリル30質量部からなるモノマー混合物を公知の溶液重合法により重合し、スチレン系樹脂を得た。得られたスチレン系樹脂30質量部とポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ノバデュラン5010R5L2)70質量部を混合し、(株)テクノベル製 KZW15-90(L/D=90)を使い、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数450rpmの条件で溶融混練を行った。その際、ダイから押し出される前に500メッシュ金網に通した。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを上記記載の方法で観察した結果、スチレン系樹脂の分散単位は920nmであった。得られたペレットを、ノズル径0.5mmφ、24孔からなるマルチフィラメント用紡糸ダイを備えた押出機を用いて、押出温度260℃、26g/分の吐出量で押し出した。押し出された溶融ストランドを冷却温度15℃、冷却風速0.5m/分、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、収束剤付与ローラーで収束剤としてシリコーン系油剤を付与しながら、1100m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸繊維の繊維径は20μmであった。
【0046】
(比較例2)
アクリロニトリル10質量部、スチレン90質量部からなるモノマー混合物を公知の塊状重合法により重合し、スチレン系樹脂を得た。得られたスチレン系樹脂20質量部とポリアミド樹脂(ユニチカ(株)製 ユニチカナイロン6 A1030BRL)80質量部を混合し、(株)テクノベル製 KZW15-90(L/D=90)を使い、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数450rpmの条件で溶融混練を行った。その際、ダイから押し出される前に500メッシュ金網に通した。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを上記記載の方法で観察した結果、スチレン系樹脂の分散単位は1000nm以上であった。得られたペレットを、ノズル径0.5mmφ、24孔からなるマルチフィラメント用紡糸ダイを備えた押出機を用いて、押出温度260℃、26g/分の吐出量で押し出した。押し出された溶融ストランドを冷却温度15℃、冷却風速0.5m/分、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、収束剤付与ローラーで収束剤としてシリコーン系油剤を付与しながら、1200m/分の速度で巻き取ったところ、断糸が発生したため、巻き取り速度を800m/分へ変更した。得られた未延伸繊維の繊維径は30μmであった。
【0047】
(比較例3)
粒子径0.4μmのポリブタジエンラテックス50質量部(固形分)の存在下で、メタクリル酸5質量部、スチレン30質量部、アクリロニトリル15質量部からなる混合モノマーを乳化重合法によりグラフト重合し、スチレン系樹脂を得た。得られたスチレン系樹脂10質量部とポリアミド樹脂(ユニチカ(株)製 ユニチカナイロン6 A1030BRL)90質量部を混合し、(株)テクノベル製 KZW15-90(L/D=90)を使い、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数350rpmの条件で溶融混練を行った。その際、ダイから押し出される前に500メッシュ金網に通した。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを上記記載の方法で観察した結果、スチレン系樹脂の分散単位は1000nm以上であった。このペレットを、ノズル径0.5mmφ、24孔からなるマルチフィラメント用紡糸ダイを備えた押出機を用いて、押出温度280℃、26g/分の吐出量で押し出した。押し出された溶融ストランドを冷却温度15℃、冷却風速0.5m/分、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、収束剤付与ローラーで収束剤としてシリコーン系油剤を付与しながら、1200m/分の速度で巻き取ったところ、断糸が発生したため、巻き取り速度を900m/分へ変更した。得られた未延伸繊維の繊維径は28μmであった。
【0048】
(比較例4)
メタクリル酸10質量部、スチレン90質量部からなるモノマー混合物を公知の溶液重合法により重合し、スチレン系樹脂を得た。得られたスチレン系樹脂20質量部とポリアミド樹脂(ユニチカ(株)製 ユニチカナイロン6 A1030BRL)80質量部を混合し、東芝機械(株)製 TEM-35B(L/D=31)を用い、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数450rpmの条件で溶融混練を行った。その際、ダイから押し出される前に500メッシュ金網に通した。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを上記記載の方法で観察した結果、スチレン系樹脂の分散単位は1000nm以上であった。このペレットを、ノズル径0.5mmφ、24孔からなるマルチフィラメント用紡糸ダイを備えた押出機を用いて、押出温度280℃、26g/分の吐出量で押し出した。押し出された溶融ストランドを冷却温度15℃、冷却風速0.5m/分、長さ900mmからなる冷却ダクトで冷却後、収束剤付与ローラーで収束剤としてシリコーン系油剤を付与しながら、1200m/分の速度で巻き取ったところ、断糸が発生したため、巻き取り速度を900m/分へ変更した。得られた未延伸繊維の繊維径は27μmであった。
【0049】
<連続生産性の評価>
実施例6~10及び比較例2~4で樹脂繊維を製造する際、1000m/分以上の速度で巻き取っても断糸せず連続生産可能であったものを「○」、1000m/分以上の速度で巻き取ると断糸し連続生産できなかったものを「×」とした。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
(略語)
ST:スチレン系樹脂
PA:ポリアミド樹脂
PC:ポリカーボネート樹脂
PBT:ポリブチレンテレフタレート樹脂
【0051】
表2に示すとおり、実施例6~10は、スチレン系樹脂の分散単位が1000nm未満であることから、連続生産の良好な樹脂繊維が得られた。比較例2~4は、本発明の規定外であるため、連続生産に劣り、樹脂繊維径も太くなる傾向にあった。
【0052】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記しておく。
[1]スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂繊維であって、前記熱可塑樹脂組成物の、ISO1133に準じ、温度220℃、荷重10kgの条件で測定されたメルトボリュームレイトが20(cm3/10分)以下であることを特徴とする樹脂繊維。
[2]前記メルトボリュームレイトが20(cm3/10分)以下、15(cm3/10分)以下、10(cm3/10分)以下、または5(cm3/10分)以下である、[1]に記載の樹脂繊維。
[3]前記熱可塑性樹脂はスチレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂をさらに含む[1]または[2]に記載の樹脂繊維。
[4]前記スチレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する[3]に記載の樹脂繊維。
[5]前記スチレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂が、PA-6、PA-66、PA-11、PA-12、PA-610、PA-1010、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、界面重合法ポリカーボネート樹脂、溶融エステル交換法ポリカーボネート樹脂、並びにポリイミド樹脂からなる群より選ばれる、[3]または[4]に記載の樹脂繊維。
[6]スチレン系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂繊維であって、前記熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂をさらに含み、かつ、前記スチレン系樹脂がナノ単位で分散していることを特徴とする樹脂繊維。
[7]前記スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする[6]に記載の樹脂繊維。
[8]前記スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂が、PA-6、PA-66、PA-11、PA-12、PA-610、PA-1010、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、界面重合法ポリカーボネート樹脂、溶融エステル交換法ポリカーボネート樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含有する、[6]または[7]に記載の樹脂繊維。
[9]前記ナノ単位が、透過電子顕微鏡で観察される1000nm未満、950nm未満、900nm未満、または850nm以下の分散単位である、[6]~[8]のいずれか1つに記載の樹脂繊維。
[10]延伸加工が施されており、その際の加工温度が、50~160℃または60~150℃である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の樹脂繊維。
[11]強化繊維と、[1]~[10]の何れか1つに記載の樹脂繊維とを含む、繊維強化プラスチック。
[12]前記強化繊維が炭素繊維である、[11]に記載の繊維強化プラスチック。
[13]溶融紡糸法またはメルトブロー法で得られることを特徴とする、[1]~[10]の何れか1つに記載の樹脂繊維の製造方法。
[14]加工温度が200℃~300℃または220~290℃である、[12]に記載の樹脂繊維の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上記のとおり、本発明の樹脂繊維は、連続生産可能であり、強度と伸度に優れたものである。そのため、抄造法や不織布法での繊維強化プラスチックの材料として好適に使用することができる。さらに、フィルター用濾布、電気絶縁用の不織布材料、梱包等の包装材料としても好適に使用することができる。