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特許7139350機内エンターテイメントシステムによる座席作動制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】機内エンターテイメントシステムによる座席作動制御
(51)【国際特許分類】
   B64D 11/06 20060101AFI20220912BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
B64D11/06
B60N3/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019554761
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018026542
(87)【国際公開番号】W WO2018187736
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】62/482,756
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516298445
【氏名又は名称】サフラン パッセンジャー イノベーションズ, エルエルシー
【住所又は居所原語表記】2929 East Imperial Highway, Suite 170, Brea, California 92821(US)
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】グレディッチ、マシュー
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0375865(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0113250(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02602189(EP,A1)
【文献】特表2012-514559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0062327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 11/06
B60N 3/00
B64D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席の作動を制御するように構成された機内エンターテイメントシステムであって、
乗客の制御デバイスを介して受信した入力に基づいて乗客の座席を作動させるコマンドを送信するように構成された電子制御ユニットを備え、
前記電子制御ユニットは、飛行段階の通知を直接または周辺コントローラを介して受信するように構成され、
前記飛行段階の通知が地上走行、離陸、または着陸(TTOL)段階を示す場合に、前記電子制御ユニットは前記乗客の座席の作動を無効にするコマンドを送信し、
前記飛行段階の通知が所定時間の間受信されない場合に、前記電子制御ユニットは前記乗客の座席の作動を無効にするコマンドを送信する、機内エンターテイメントシステム。
【請求項2】
前記乗客の制御デバイスが、座席ディスプレイユニット(SDU)とポータブルコンピューティングデバイスからなる群から選択される、請求項1に記載の機内エンターテイメントシステム。
【請求項3】
前記ポータブルコンピューティングデバイスが、タブレットPC、ラップトップ、スマートフォン、およびスマートウォッチからなる群から選択される、請求項2に記載の機内エンターテイメントシステム。
【請求項4】
TTOL段階を示す前記飛行段階の通知を受信した後、前記電子制御ユニットは、乗客の座席をTTOL位置に位置させるコマンドを送信する、請求項1に記載の機内エンターテイメントシステム。
【請求項5】
前記電子制御ユニットからの前記コマンドは、前記飛行段階の通知の受信後に設定時間だけ遅延される、請求項4に記載の機内エンターテイメントシステム。
【請求項6】
TTOL段階を示す前記飛行段階の通知を受信した後、前記電子制御ユニットは、前記乗客の制御デバイスに第2のコマンドを送信して、前記設定時間の経過後に前記乗客の座席が前記TTOL位置に位置する旨の通知を提示する、請求項5に記載の機内エンターテイメントシステム。
【請求項7】
前記周辺コントローラは、前記電子制御ユニットと通信可能に結合され、飛行段階に応じて前記電子制御ユニットに対してディスクリート出力を駆動するように構成されている、請求項1に記載の機内エンターテイメントシステム。
【請求項8】
前記飛行段階の通知が非TTOL段階を示す場合、前記周辺コントローラは、前記電子制御ユニットに対して前記ディスクリート出力を駆動する、請求項7に記載の機内エンターテイメントシステム。
【請求項9】
前記飛行段階の通知が前記TTOL段階を示す場合、前記周辺コントローラは、前記電子制御ユニットに対して前記ディスクリート出力をデアサートする、請求項7に記載の機内エンターテイメントシステム。
【請求項10】
前記周辺コントローラは、飛行段階の通知が所定時間の間受信されない場合に前記電子制御ユニットに対して前記ディスクリート出力をデアサートする、請求項7に記載の機内エンターテイメントシステム。
【請求項11】
前記周辺コントローラは、前記周辺コントローラのDAL Dソフトウェアが故障したことを検出した場合に前記電子制御ユニットに対して前記ディスクリート出力をデアサートする、請求項7に記載の機内エンターテイメントシステム。
【請求項12】
前記電子制御ユニットは、座席制御ユニットから前記飛行段階の通知を受信するように構成されている、請求項1に記載の機内エンターテイメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、座席作動制御システムであり、特に、旅客機または他の乗り物における座席作動制御のための機内エンターテイメントシステムの使用である。
【背景技術】
【0002】
この出願は、2017年4月7日に提出された米国仮出願番号第62/482,756号の優先権を主張する。同出願および他の参照された付帯的な資料は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた参照用語の定義または使用が本明細書中に記載されるその用語の定義に矛盾または反する場合、本明細書に記載されるその用語の定義が支配的であるとみなされる。
【0003】
以下の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書に記載された情報は、先行技術であることや現在特許請求されている発明に関連することを容認するものでなく、特定的にもしくは暗黙的に参照される刊行物が先行技術であることを容認するものでもない。
【0004】
従来、座席作動システムは、座席の様々な制御のための物理ボタンを備えた乗客用制御ユニット(PCU:passenger control unit)を備えている。しかしながら、座席サブシステムの数の増加(例えば、加熱/冷却、エアクッション、読書灯、座席のより多くの動きなど)に伴い、PCUの複雑さやボタンの数が増加している。また、航空会社はすべての座席サブシステム間のより一層の統合を求めている。
【0005】
本背景技術に記載されたすべての刊行物は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが特定的にかつ個別に示されるのと同程度に、参照により組み込まれる。組み込まれた参照文献の用語の定義または使用が本明細書中に記載されるその用語の定義に矛盾または反する場合、本明細書に記載されるその用語の定義が適用され、参照文献におけるその用語の定義は適用されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、座席の作動および制御のための動的な集中制御センターが依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主題は、機内エンターテイメントシステムが座席の作動を制御するように構成されている装置、システム、および方法を提供する。電子制御ユニットは、乗客の制御デバイスを介して受信した入力に基づいて乗客の座席を作動させるコマンドを送信するように構成されている。起こり得る危険性を防ぐために、電子制御ユニットは、航空機が地上走行、離陸、または着陸の段階にあるときにコマンドを無視するように使用され得る。
【0008】
また、地上走行、離陸、または着陸の段階にあるときに座席が動かないようにするために、電子制御ユニットは、飛行通知が地上走行、離陸、または着陸の段階を示す場合に乗客の座席を作動させないように構成され得る。電子制御ユニットは、飛行通知が所定時間の間受信されない場合はシステムの一部が故障していることを示している可能性があるとして、乗客の座席を作動させないように構成され得る。
【0009】
本発明の主題の種々の目的、特徴、態様、および利点は、同様の参照番号が同様の構成要素を表す添付の図面とともに、以下の好適な実施形態の詳細な説明からより明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】AirbusTMA320TMおよびA330TM型の航空機の例示的なシステムアーキテクチャを示す図。
図2】AirbusTMA350TM型の航空機の例示的なシステムアーキテクチャを示す図。
図3】AirbusTMA380TM型の航空機の例示的なシステムアーキテクチャを示す図。
図4】TTOL段階中の座席制御を許可または制限するための例示的なシステムアーキテクチャを示す図。
図5】周辺コントローラの例示的なシステムアーキテクチャを示す図。
図6】CIDSまたはNSSと周辺コントローラまたは電子制御ユニットとの間に通信障害がある場合の例示的なシステムアーキテクチャを示す図。
図7】DAL Dソフトウェアが故障した場合の周辺コントローラの例示的なシステムアーキテクチャを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明全体を通じて、サーバ、サービス、インタフェース、ポータル、プラットフォーム、またはコンピューティングデバイスからなるその他のシステムに関して、多くの言及がなされる。このような用語の使用は、コンピュータ可読型の有形の非一時的媒体に格納されたソフトウェア命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを有する1つまたは複数のコンピューティングデバイスを表すものと見なされる。例えば、サーバは、記載された役割、能力、または機能を果たすように、ウェブサーバ、データベースサーバ、または他の種類のコンピュータサーバとして動作する1つまたは複数のコンピュータを含み得る。
【0012】
以下、本発明の主題の多くの例示的な実施形態について説明する。各実施形態は本発明の要素群の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題は開示された要素群の可能なすべての組み合わせを含むと見なされる。したがって、一つの実施形態が要素A,B,Cを含み、第2の実施形態が要素B,Dを含む場合、本発明の主題は、明示的に開示されていなくても、要素A,B,C,Dの他の残りの組み合わせを含むと見なされる。
【0013】
機内エンターテイメント(IFE)システムは、典型的には、乗客が使用するための1つまたは複数の入力(例えば、タッチ画面、ナビゲーション用の乗客用制御ユニット(PCU)、無線デバイスとのペアリングなど)を備える背もたれ(SDU)内に配置されたディスプレイを含む。現在、多くの旅客機は各座席にIFEディスプレイを備えているため、IFEシステムを利用することで、既存の座席制御ユニットを置き換え、IFEシステムのグラフィックユーザーインタフェース(GUI)を使用して動的な座席制御を行うことが可能となる。また、GUIを使用することで、インタフェースの外観の新たな再構築が可能となるとともに、様々な物理コントロールの物理的な取り外しや取り付けを必要とすることなく、長期にわたって追加の制御を加えることが可能となる。
【0014】
乗客の座席を作動させるコマンドを送信するために、例えば、SDU、ラップトップ、タブレットPC、スマートフォン、スマートウォッチなどを含む乗客の制御デバイスが使用され得ることが考慮される。乗客のデバイスが使用される場合、乗客の座席を作動させる前に、コマンドを検証して、航空機が地上走行、離陸、または着陸(TTOL)の段階にないことを保証する必要があることが考慮される。コマンドは受信されているものの、要求される飛行段階の通知が受信されていないかまたはその通知がTTOL段階を示している場合、そのコマンドは無視される。
【0015】
概して、現在使用されているほとんどの座席サブシステムの制御はAirbusTMによってDAL E(例えば、関連する危険性なし)とみなされている。しかしながら、座席の制御にIFEシステムを使用することはAirbusTMによってDAL D(軽度の危険性)とみなされており、IFEシステムを使用したそのような制御を可能にするために対処しなければならない課題がある。例えば、潜在的な危険性には、(i)座席移動中の身体部分の挟み込み、(ii)IFEシステムによる複数の座席の誤った制御、(iii)TTOL段階中における誤ったIFE座席制御が含まれる。これらの潜在的な危険性に対する解決策を以下に示す。
【0016】
IFEシステムを介した座席の作動または他の制御を可能にするシステム100の例示的な図が図1に示されている。システム100は、航空機または他の乗り物へのインタフェースポイントである1つまたは複数の座席制御ユニット(SCU)102A,102Bを含む。AirbusTMA320TMやA330TMなどの一部のプラットフォームでは、1つまたは複数のSCU102A,102Bとキャビン相互通信データシステム(CIDS)110との間のインタフェース101はARINC-429である。
【0017】
各SCUは、個別の座席または座席グループ120(座席のセット)と通信可能に結合され得る。典型的なビジネスクラスの座席内において、SCUは、電源(例えば、SPB4 122)と通信可能に結合され、この電源自体は、1つまたは複数の乗客用ディスプレイ(RDU/DDS)124と、座席作動システムコントローラ(例えば、電子制御ユニット(ECU))126と、場合によっては周辺コントローラ(処理ユニットRPU2)128とに結合されている。
【0018】
図2は、IFEシステムを介した座席の作動または他の制御を可能にするシステム200の別の実施形態の図を示す。この実施形態において、SCU202AとCIDS210Aとの間のインタフェース201Aは、AirbusTMA350TMで使用されるようなイーサネット(登録商標)である。SCU202BとCIDS210Bとの間のインタフェース201Bもイーサネットである。
【0019】
同様に、各SCU202A,202Bは個別の座席または座席グループ220(座席のセット)と通信可能に結合され得る。複数のSCUが個別の座席または座席グループに結合されてもよいし、あるいは複数のSCUが座席または座席グループを共有してもよい。典型的なビジネスクラスの座席内において、座席グループ220は電源(例えば、SPB4 222)を含み、この電源自体は、1つまたは複数の乗客用ディスプレイ(RDU/DDS)224と、座席作動システムコントローラ(例えば、電子制御ユニット(ECU))226と、場合によっては周辺コントローラ(処理ユニットRPU2)228とに結合されている。
【0020】
図3は、AirbusTMA380TMで使用するためのシステム300の別の実施形態の図を示す。この実施形態では、飛行段階メッセージングにCIDSの代わりにネットワークサーバシステム(NSS)310が利用され、NSS310とSCU302Aとの間のインタフェース301はイーサネットである。
【0021】
同様に、SCU302A,302Bは個別の座席または座席グループ320と通信可能に結合され得る。SCU302A,302Bは個別の座席または座席グループに結合されてもよいし、あるいは、SCU302A,302Bは座席または座席グループを共有してもよい。典型的なビジネスクラスの座席内において、座席グループ320は電源(例えば、SPB4 322)を含み、この電源自体は、1つまたは複数の乗客用ディスプレイ(RDU/DDS)324と、座席作動システムコントローラ(例えば、電子制御ユニット(ECU))326と、場合によっては周辺コントローラ(処理ユニットRPU2)328とに結合されている。
【0022】
先のシステムとは異なり、周辺コントローラ328は(それが含まれる場合には)以下でさらに説明するようにECU326と通信可能に結合され得る。また、SCU302A,302Bも互いに通信可能に結合され得ることが考慮される。
【0023】
ゾディアック(Zodiac Inflight InnovationsTM)社が提供するRAVETMのIFEシステムは、ギガビットイーサネット(プラットフォームに依存して銅線およびファイバの両方)を使用して、SCUから座席のライン交換可能ユニット(LRU)またはSDUまで通信する。
【0024】
以下の説明では図3に示されたシステム300を参照するが、そのような説明は図1および図2に示されたシステムにも適用可能であることが意図される。
座席の移動中に身体部分が挟み込まれる潜在的な危険性に対処するために、ECU326は、1つまたは複数のセンサを備えた障害物検出システムを使用して、座席の動きが障害物に衝突したことを検出するように構成され得る。これが検出されると、座席の移動が停止および/または反転され得る。これは通常、座席作動システム内で完全に処理され、IFEシステムにおける座席制御の統合には影響を与えない。
【0025】
また、明瞭化のためにこの危険性が追加されている。IFE制御に関連する危険性の1つは、IFEシステム内のDAL Eソフトウェアが座席移動コマンドを誤った座席に間違って送信する可能性があることである。IFEシステムが誤った座席に座席コマンドを送信した場合、そのコマンドは、最悪の場合その座席の乗客に対して不便さを生じさせるものとなる。しかしながら、障害物検出システムはECU326に対して常にローカルであり、座席を移動させるコマンドの発信元(例えば、ECU PCU、IFEシステム、無線デバイスなど)に関係なく機能するため、誤ったコマンドが危険を引き起こすことはない。
【0026】
別の潜在的な危険性は、例えば乗客によって開始された座席移動コマンドが機内の複数の座席に送信されたり、複数の座席に対する座席移動コマンドが誤って生成されたりするなど、IFEシステムが複数の座席を誤って制御する場合である。同様に、このような誤ったコマンドは乗客に不便さを与えるとともに客室乗務員の作業負荷を増加させる可能性があるが、安全上の危険性はない。このような状況では、障害物検出システムが座席内の人などの障害物を検出すると座席の動きを停止および/または逆転させるため、ECU326は怪我を防止するように構成されている。また、システム300が誤作動した場合、客室乗務員は、座席を個別に制御したり、制御を解除(override)したりして、座席をTTOL位置に戻すことができる。
【0027】
別の潜在的な危険性は、IFEシステムがTTOL段階中に座席を非TTOL位置(例えば、リクライニング位置)に誤って指示することである。これは、ほとんどの航空機の座席はTTOL中に乗客をリクライニング状態で完全に保護するための認証を受けていないため懸念事項であり、軽度の安全上の危険性とみなされている。この状況を回避するために、飛行機がTTOL段階にある間は、ECU326がすべてのIFE座席コマンドを無視するようにシステム300が構成され得ることが考慮される。このようにするには、航空機がTTOL段階にあることをECU326が認識する必要がある。
【0028】
1つの方法は、TTOL段階中にIFE座席制御を無効にするためにトライステート・キーライン(Tristate Keyline)を使用することである。しかしながら、飛行中に何らかの理由で乗客の電子デバイス(PED)の電源を切断する必要がある場合、トライステート・キーラインが使用されることでIFE座席制御も切断されることとなり、乗客が例えば自分の座席をリクライニングできなくなるため、この方法は望ましくない。また、航空機のモデルが異なると、通常、異なるソースがトライステート・キーラインを生成する(例えば、二次配電システム(SPDB)、アドバンストマスターコントロールユニット(AMCU)など)。したがって、このような方法の実装には、特定のロジックを航空機の各モデルの配電システムに展開するための追加の時間と調整が必要になる。
【0029】
別の方法は、各TTOL段階の前後かまたはTTOL段階と非TTOL段階との間において客室乗務員が作動させるスイッチを航空機の各座席または座席グループごとに設置することである。しかしながら、スイッチを作動させるには客室乗務員の手動ステップと追加作業/時間が必要になるため、この方法は望ましくない。また、スイッチは、システムの重量、複雑さ、信頼性、コストを上昇させる可能性がある。
【0030】
図4に好ましい方法が示されており、システム400は、周辺コントローラ(処理ユニットRPU2)428内にDAL Dソフトウェア430を含むことにより、飛行段階に依存するディスクリート出力をECU426に対して駆動するように構成されている。したがって、例えば、RPU2 428は、非TTOL段階中にECU426に対してディスクリート出力をアサートし、TTOL段階中にECU426に対してディスクリート出力をデアサートするように構成され得る。この機能は、本明細書では「ECU TTOL通知」と呼ばれ得る。このようなシステムでは、ディスクリート出力を誤ってアサートする可能性のある回路は、飛行時間当たり1E-4の故障よりも大きな信頼性を有することが望ましい。
【0031】
図1図3に関して説明したシステムとともに利用できるこのようなシステム400では、飛行段階は例えばイーサネットまたはARINC-429などを介して航空機からSCU402で受け取ることができ、その後、IFEギガビットイーサネットのネットワーク経由で電源422を介してすべての乗客用の座席に送ることができる。有利なことに、飛行段階の情報をルーティングするためのソフトウェアは不要であり、DAL Eハードウェアのみを使用すればよい。
【0032】
システムが故障しても座席がTTOL段階で適切な位置にあることを保証するために、システム400は、飛行段階が例えば10秒間にわたって受け取られない場合にはRPU2 428または他のコンポーネントがディスクリート出力をデアサートするように構成されることが好ましい。この時間は特定の実装とニーズに応じて変更可能であるが考え方は同じであり、信号が受信されない場合、RPU2 428は、ECU426に対してディスクリート出力をデアサートし、航空機がTTOL段階にあるとみなす。
【0033】
また、RPU2 428は、座席レベルでの「ECU TTOL通知」のトップイベント機能不良/損失の故障確率を示す回路432を含むことができ、この回路は、隠れた故障によるすべての適用休止時間を考慮して安全目標を達成するために飛行時間当たり1E-4未満でなければならないことが考慮される。このような回路432は、例えばこれらの機能を実行するように構成された回路に関する障害ツリー分析を含み得る。
【0034】
また、システム400は、DAL Dソフトウェアが故障した場合にRPU2 428または他のコンポーネントがディスクリート出力をデアサートするように構成され得る。
いくつかの考慮される実施形態では、ディスクリートがデアサートされると、座席が自動的にTTOL位置に戻り得ることが考慮される。このような自動位置決めは、例えば、30秒または60秒などの設定時間内にそのような位置復帰が生じるという警告を乗客に対してIFEディスプレイを介して提示した後に生じる。これにより、例えば、航空機がTTOL段階に入る前に座席がすべて適切な位置にあることが保証されるため有利となる。
【0035】
したがって、システムは、TTOL飛行段階のメッセージを受信した場合または飛行段階メッセージが10秒間受信されない場合にディスクリート出力をデアサートして、切断の可能性および潜在的な危険性を示すように構成され得る。
【0036】
図5は、飛行時間当たり1E-4の故障の計算に含まれ得るものについての考慮される境界を示す。実装の性質(すなわち、誤りであるまたは飛行段階が受信されない場合にデアサートすること)により、DAL Dソフトウェア430とハードウェアウォッチドッグ回路432のみを考慮する必要がある。電源434が故障するとディスクリート出力がデアサートされる。イーサネットネットワーク436が故障するとSPB4 422からDAL Dソフトウェアへの飛行段階メッセージの到達が妨げられ、これによってもディスクリート出力がデアサートされる。
【0037】
RPU2 428の「ECU TTOL通知」機能に関与するソフトウェアは、DAL Dの要件を満たすように構成されている。さらに、DAL Dソフトウェアコンポーネントはハードウェアの一部であり、フィールドプログラマブルではなく、DAL Dソフトウェアは適切なドキュメンテーションが作成された専用の不揮発性ストレージスペースに格納されることが考慮される。
【0038】
図6に示されるように、何らかの理由でCIDSまたはNSS610とRPU2 628との間の通信が利用できなくなった場合(これらに限定されないが、CIDSまたはNSS610の故障や、ケーブル601の故障や、SCU602A,602Bの故障や、SPB4 622の故障や、RDU/DDS624の故障などを含む)、ECU626に対するディスクリート出力がデアサートされ、かつ、デアサートされたままとなる。これは、故障が修復され、CIDSまたはNSS610とRPU2 628との間の通信が再確立されるまで、ECU626は、すべてのIFE座席移動コマンドを無視することを意味する。
【0039】
図7に示されるように、RPU2 728のDAL Dソフトウェア730(またはソフトウェアをホストするハードウェア)が故障した場合、ハードウェアウォッチドッグ732も、そのディスクリート出力をデアサートするように構成され得る。
【0040】
A350TM/A380TMのアプローチは、飛行段階を含むイーサネットメッセージを生成する航空機に依存しているため、A320TMおよびA330TMのプラットフォームで完全に利用することはできない。A350TM/A380TMのアプローチでは、飛行段階イーサネットメッセージの作成に関与するソフトウェアがSCU内に存在しないため、DAL Dである必要があるシステム内のIFEソフトウェアはRPU2のみである。A320TMおよびA330TMのプラットフォームでは、飛行段階はCIDSからARINC-429を介してSCUによって受信される。受信したARINC-429メッセージをRPU2が利用可能なイーサネットメッセージに変換するには、SCU内にDAL Dソフトウェアが必要である。現在、SCU3/SCU4には「DAL D ECU TTOL通知」機能に関する規定はない。
【0041】
本明細書での説明において、また特許請求の範囲全体を通じて、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、「1つ」の意味は、複数の言及を含む。また、本明細書での使用において、「~内に」の意味は、文脈により明らかにそうでないことが示されない限りは、「~内に」と「~上に」を含む。
【0042】
本明細書での使用において、文脈により他に指示されない限り、「~に結合される」という用語は、直接的な結合(互いに結合される2つの要素が互いに接触する場合)と間接的な結合(少なくとも1つの追加の要素が2つの要素の間に配置される場合)の両方を含むことが意図される。したがって、「~に結合される」および「~と結合される」という用語は、同義語として使用される。
【0043】
文脈により反対であることが示されない限り、本明細書に記載されるすべての範囲はそれらの端点を含むと解釈され得るが、制限のない範囲は商業的に実用的な値のみを含むと解釈され得る。同様に、文脈により反対であることが示されない限り、値のすべての列挙は中間値を含むと見なされ得る。
【0044】
本明細書における値の範囲の列挙は、その範囲内に含まれる別々の値を個々に指す簡潔な方法として役立つことを単に意図している。本明細書において特に示されない限り、ある範囲を持つ個々の値は、本明細書で個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載されるすべての方法は、本明細書中において示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書の特定の実施形態に関して提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば「など」)の使用は、本発明をよりよく明らかにすることを単に意図したものであり、特許請求の範囲に記載されていない場合は本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に必須の、特許請求の範囲に記載されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0045】
本明細書に開示された本発明の代替要素または実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループの構成要素は、個別に、またはそのグループの他の構成要素もしくは本明細書内で見出される他の要素との任意の組み合わせで、参照および特許請求され得る。グループの1つまたは複数の構成要素は、利便性および/または特許性の理由により、グループに含めることも、そのグループから削除することもできる。あらゆるそのような包含または削除が生じたとき、本明細書において、その仕様は変更されたとおりのグループを含み、したがって添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記載を満たすものと見なされる。
【0046】
本明細書の発明の概念から逸脱することなく、上記で説明されたもの以外にさらに多くの変形が可能であることが当業者には明らかである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の趣旨を除き、制限されるべきではない。さらに、本明細書と特許請求の範囲との両方を解釈する際に、すべての用語は、文脈と矛盾しない最も広い方法で解釈されるべきである。特に、「備える」や「備えている」の用語は、参照される要素、構成要素、もしくは工程が存在し得るか、利用され得るか、または明示的に参照されていない他の要素、構成要素、もしくは工程と組み合わされ得ることを示す非排他的な形式で、要素、構成要素、もしくは工程を指すものとして解釈されるべきである。明細書の特許請求の範囲が、A,B,C,…,Nからなる群から選択される少なくとも1つのものを指す場合、テキストは、その群から1つの要素のみを必要とし、AおよびNまたはBおよびNなどではないと解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7