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特許7139353リチウムイオン電気化学セル用材料並びにその製造及び使用方法
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  • 特許-リチウムイオン電気化学セル用材料並びにその製造及び使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】リチウムイオン電気化学セル用材料並びにその製造及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20220912BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20220912BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20220912BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220912BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220912BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220912BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20220912BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220912BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220912BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/133
H01M4/134
H01M4/36 E
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0568
H01M10/058
H01M4/587
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019563145
(86)(22)【出願日】2018-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 IB2018053231
(87)【国際公開番号】W WO2018211363
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】62/506,246
(32)【優先日】2017-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ティアンユ
(72)【発明者】
【氏名】ペレリート, マーク ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツァー, クラウス
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/092977(WO,A1)
【文献】特開2016-076292(JP,A)
【文献】特開2004-200010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/052
H01M 10/058
H01M 10/0568
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極材料であって、
ケイ素含有材料;及び
(i)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、又はクロロトリフルオロエチレンを含む2つ以上のモノマーの重合から誘導された第1の(コ)ポリマーと、(ii)(メタ)アクリル酸又はリチウム(メタ)アクリレートを含むモノマーの重合から誘導された第2の(コ)ポリマーとを含む組成物
を含み、
ケイ素含有材料が、1000mAh/ml超の容積容量を有する、負極材料。
【請求項2】
ケイ素含有材料が、式:Siを有する粒子を含有する合金材料を含み、ここで、x、y、及びzは原子%値を表し、(a)x+y+z=100%であり;(b)x>2y+zであり;(c)x及びyは0より大きく;zは0以上であり;かつ、(d)Mは、鉄及び任意選択的にマンガン、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、銅、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、及びイットリウムから選択される1つ以上の金属である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
65%≦x≦85%、5%≦y≦20%、及び5%≦z≦15%である、請求項に記載の負極材料。
【請求項4】
負極材料の総重量に基づいて、20から90重量%の間の量のグラファイトをさらに含む、請求項1に記載の負極材料。
【請求項5】
第1の(コ)ポリマーの総モル数に基づいて、テトラフルオロエチレン由来のモノマー単位が25から80モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在し、ヘキサフルオロプロピレン由来のモノマー単位が5から22モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在し、かつ、フッ化ビニリデン由来のモノマー単位が25から80モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在する、請求項1に記載の負極材料。
【請求項6】
第1の(コ)ポリマーの総モル数に基づいて、CTFE由来のモノマー単位が2から95モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在し、VDF由来のモノマー単位が1から75モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在し、HFP由来のモノマー単位が0から30モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在する、請求項1に記載の負極材料。
【請求項7】
第1の(コ)ポリマーが、組成物中の第1及び第2の(コ)ポリマーの総重量に基づいて、30から60重量%の間の量で組成物中に存在する、請求項1に記載の負極材料。
【請求項8】
第2の(コ)ポリマーが1000kD未満の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の負極材料。
【請求項9】
リチウム(メタ)アクリレート由来のモノマー単位が、第2の(コ)ポリマー中のリチウム(メタ)アクリレート由来のモノマー単位及びアクリル酸由来のモノマー単位の総重量に基づいて、2から40重量%の間の量で第2の(コ)ポリマー中に存在する、請求項1に記載の負極材料。
【請求項10】
組成物が、負極材料の総重量に基づいて、1から20重量%の間の量で負極材料中に存在する、請求項1に記載の負極材料。
【請求項11】
組成物が負極材料全体に均一に分散される、請求項1に記載の負極材料。
【請求項12】
請求項1に記載の負極材料;及び
集電体
を含む負極。
【請求項13】
請求項12に記載の負極;
リチウムを含有する正極組成物を含む正極;及び
リチウムを含有する電解質
を含む電気化学セル。
【請求項14】
請求項13に記載の電気化学セルを含む電子デバイス。
【請求項15】
電気化学セルの製造方法であって、
リチウムを含有する正極組成物を含む正極を提供すること;
請求項12に記載の負極を提供すること;
リチウムを含有する電解質を提供すること;及び
正極、負極、及び電解質を電気化学セルに組み込むこと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気化学セル(例えば、リチウムイオン電池)のための負極に有用な組成物、並びにその調製及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の負極に使用するために、さまざまな成分が導入されている。このような成分は、例えば、米国特許第8,354,189号、米国特許第7,875,388号、及びM. N. Obrovac and V. L. Chevrier, Chemical Reviews 2014, 114, 11444-11502に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
幾つかの実施態様では、負極材料が提供される。該材料は、ケイ素含有材料と、(i)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、又はクロロトリフルオロエチレンを含む2つ以上のモノマーの重合から誘導された第1の(コ)ポリマー;及び、(ii)(メタ)アクリル酸又はリチウム(メタ)アクリレートを含むモノマーの重合から誘導された第2の(コ)ポリマーを含む組成物とを含む。
【0004】
本開示の上記概要は、本開示の各実施形態を説明することを意図したものではない。本開示の1つ以上の実施態様の詳細は、以下の説明にも記載されている。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、その説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0005】
本開示は、添付の図面に関連して本開示のさまざまな実施態様の以下の詳細な説明を考慮することにより、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の負極材料及び比較負極材料を使用して調製されたリチウムハーフセルのための電気化学サイクルの結果のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0007】
電気化学エネルギー貯蔵は、グリッド貯蔵、電気自動車、及びポータブル電子機器を含む、さまざまなアプリケーションにとって重要な技術となっている。リチウムイオン電池(LIB)は、比較的高いエネルギー密度と優れた速度能力の理由から、実行可能な電気化学エネルギー貯蔵システムである。電気自動車などの産業関連のバッテリー用途を大規模に商業的に実行可能にするためには、リチウムイオン電池ケミストリのコストを下げることが望ましい。
【0008】
ケイ素をベースにした高エネルギー密度のアノード材料は、電気自動車及びハンドヘルド電子機器などの用途のためのリチウムイオン電池のコストを削減し、エネルギー密度を向上させる手段として特定されている。ある特定のケイ素合金材料は、良好な粒子形態(最適化された粒子サイズ、低い表面積)と高い初回サイクル効率を提供し、より高エネルギーのセル(体積(Wh/L)及び重量(Wh/kg)の両方のエネルギー密度に基づく)をもたらす。アノード結合剤もまた、ケイ素合金又はケイ素合金とグラファイトとのブレンドに基づいた、アノードを含むリチウム電池の性能を最大化する上での重要な役割を果たす。最大Wh/L値を達成するためには、アノード中のケイ素合金の重量パーセントを最大にし、アノード中の結合剤の重量パーセントを減らす必要がある。
【0009】
例えば、容量が1100mAh/グラムを超え、密度が約3.4g/ccのある特定のケイ素合金は、充放電サイクル中に大幅な体積変化(最大約140%以上)を被る。ポリ(フッ化ビニリデン)及びスチレン-ブタジエン-スチレン/カルボキシルメチルセルロースナトリウム(SBS/Na-CMC)などのグラファイトアノードで通常使用される結合剤は、これらの材料が電極内のこの程度の体積膨張に耐えることができないことから、約15重量%超のケイ素合金を含むアノードでの使用に適した選択肢ではない。これらの結合剤を組み込んだアノードで作られたバッテリーは、非常に低い容量維持率を示す。
【0010】
ポリ(アクリル酸)のリチウム塩(LiPAA)は、とりわけ高合金含有量(たとえば、グラファイト/ケイ素合金アノード配合中、約20%を超える合金)で、ケイ素合金ベースのアノードの結合剤として有望なサイクル寿命性能を示した。しかしながら、LiPAAは、この業界の一部にとって効果的な結合剤として処理するには、脆弱すぎるか又は吸湿性が高すぎることが観察されている。LiPAAは、アノード(銅箔)集電体に対する不十分な接着性も示している。したがって、次世代のリチウムイオン電池にケイ素合金などの高容量アノード材料を使用可能にする新しいアノード材料の開発が必要とされている。開発された材料は、処理及び原料コストの観点からスケーラブルかつ経済的であるべきであり、従来のバッテリー電解質に不溶性でなければならない。
【0011】
ある特定の分子量のポリ(アクリル酸)とある特定のフルオロポリマーとのブレンドが、ケイ素合金アノードの材料(例えば結合剤)として機能するように調製できることが見出された。これらのブレンドを含むアノードは、ニートのポリアクリル酸リチウムを使用して調製されたアノードと同等又はほぼ同等の充放電サイクルの関数としての容量維持率を示すことがわかった。さらには、約50重量パーセントの極性の親水性ポリ((メタ)アクリル酸)をある特定の疎水性フルオロポリマーに置き換えると、材料の機械的柔軟性の向上(脆性の減少)及び水分吸収の大幅な低減など、他の利点がもたらされる。
【0012】
本開示のブレンドを含む負極を有する電池の上記のサイクル性能に関して、このような性能は、少なくとも、単独で使用される場合に、ブレンドのフルオロポリマー成分(並びにポリ(フッ化ビニリデン)などの他の既知のフルオロポリマー)が負極成分として非常に低い性能を示すことから、驚くべきことである。さらには、ある特定の分子量のポリ(アクリル酸)が沈殿することなくフルオロポリマー成分とうまくブレンドするという発見は、さらに驚くべき結果を示している。
【0013】
本明細書で用いられる場合、
「(コ)ポリマー」という用語は、ホモポリマー又はコポリマーを指す;
「(メタ)アクリル酸」という用語は、アクリル酸又はメタクリル酸を指す;
「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート又はメタクリレートを指す;
「リチウム化する」及び「リチウム化」という用語は、リチウムを電極材料又は電気化学的に活性な相に加えるプロセスを指す;
「脱リチウム化する」及び「脱リチウム化」という用語は、電極材料又は電気化学的に活性な相からリチウムを除去するプロセスを指す;
「充電」及び「充電する」という用語は、電気化学エネルギーをセルに供給するプロセスを指す;
「放電」及び「放電する」という用語は、例えば、セルを使用して所望の作業を実行するときに、セルから電気化学エネルギーを取り出すプロセスを指す;
「充放電サイクル」という語句は、電気化学セルが完全に充電されるサイクル、すなわち、セルがその上部カットオフ電圧に達し、アノードが約100%の充電状態にあり、その後放電されて下部カットオフ電圧に達し、アノードが約100%の放電深度にある、サイクルを指す;
「正極」という語句は、フルセルの放電プロセス中に電気化学的還元及びリチウム化が発生する電極(しばしばカソードと呼ばれる)を指す;
「負極」という語句は、フルセルの放電プロセス中に電気化学的な酸化及び脱リチウム化が発生する電極(しばしばアノードと呼ばれる)を指す;
「電気化学的活性材料」という語句は、リチウムイオン電池での充放電中に発生する可能性のある条件下(例えば、0Vから2Vの間の電圧対リチウム金属)で、リチウムと電気化学的に反応又は合金化できる単相又は複数の相を含むことができる材料を指す;
「合金」という用語は、金属、メタロイド、又は半金属のいずれか又はすべての間に化学結合を含む物質を指す;
「鎖状連結したヘテロ原子」という語句は、炭素-ヘテロ原子-炭素鎖を形成するように炭素鎖内の炭素原子に結合している炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を意味する。
本明細書で用いられる「ニート」という用語は、希釈剤、溶媒、又は添加剤のない、本質的に100%の材料の組成物を意味する。
【0014】
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の実施態様で用いられる場合、「又は」という用語は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、「及び/又は」を含むその意味内で一般的に使用される。
【0015】
本明細書で用いられる場合、端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(例えば、1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5が含まれる)。
【0016】
別途指示がない限り、本明細書及び実施態様で使用される量又は成分、特性の測定値などを表すすべての数値は、すべての場合において、「約」という用語によって修正されるものと理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び実施態様に添付のリストに記載される数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化しうる。少なくとも、特許請求された実施態様の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、かつ、通常の丸め技法を適用することによって、解釈されるべきである。
【0017】
幾つかの実施態様では、本開示は、二次リチウム電気化学セル(例えば、リチウムイオン電池)での使用に適した電極組成物に関する。概して、電極組成物(例えば、負極組成物)は、(i)ケイ素を含む電気化学的活性材料と、(ii)フルオロポリマー/ポリ((メタ)アクリル酸)(PAA)のブレンドとを含みうる。
【0018】
幾つかの実施態様では、電気化学的活性材料には、ケイ素含有材料が含まれうる。ケイ素含有材料には、元素ケイ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、又はケイ素含有合金が含まれうる。幾つかの実施態様では、ケイ素含有材料は、1000mAh/ml超、1500mAh/ml超、2000mAh/ml超、又は2500mAh/ml超の容積容量;あるいは、1000から5500mAh/ml、1500から5500mAh/ml、又は2000から5000mAh/mlの範囲の容量を含みうる。本開示の目的では、容積は、ピクノメータで測定された真の密度に、C/40のレートでリチウムに対して5mVまでの最初のリチウム化比容量を乗算して決定される。この最初のリチウム化比容量は、90重量%の活性材料と1から4mAh/cmを有する10%のリチウムポリアクリレート結合剤とを有する電極を形成し、アノードとしてのリチウム金属及び従来の電解質(例えば、1.0MのLiPF6でEC:EMC比3:7)を使用してセルを構築し、リチウムに対して5mVまで約C/10のレートでアノードをリチウム化し、C/40のレートまで5mVを保持することによって、測定することができる。
【0019】
ケイ素含有材料がケイ素含有合金を含む実施態様では、ケイ素含有合金は、式:Siを有してよく、ここで、x、y、及びzは原子%値を表し、(a)x+y+z=100%であり;(b)x>2y+zであり;(c)x及びyは0より大きく;zは0以上であり;(d)Mは、鉄及び任意選択的にマンガン、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、銅、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、イットリウム、又はそれらの組合せから選択される1つ以上の金属である。幾つかの実施態様では、65%≦x≦85%、70%≦x≦80%、72%≦x≦74%、又は75%≦x≦77%であり;5%≦y≦20%、14%≦y≦17%、又は13%≦y≦14%;及び5%≦z≦15%、5%≦z≦8%、又は9%≦z≦12%である。幾つかの実施態様では、x、y、及びzは0より大きい。
【0020】
幾つかの実施態様では、合金材料は粒子の形態を取ることができる。粒子は、60μm以下、40μm以下、20μm以下、又は10μm以下、若しくはそれより小さい平均直径(又は最長寸法の長さ);少なくとも0.5μm、少なくとも1μm、少なくとも2μm、少なくとも5μm、又は少なくとも10μm若しくはそれより大きい平均直径(又は最長寸法の長さ);あるいは、0.5から10μm、1から10μm、2から10μm、40から60μm、1から40μm、2から40μm、10から40μm、5から20μm、10から20μm、1から30μm、1から20μm、1から10μm、0.5から30μm、0.5から20μm、又は0.5から10μmの平均直径(又は最長寸法の長さ)を有しうる。
【0021】
幾つかの実施態様では、合金材料は、低表面積を有する粒子の形態を取ることができる。粒子は、20m/g未満、12m/g未満、10m/g未満、5m/g未満、4m/g未満、又はさらに2m/g未満の表面積を有しうる。
【0022】
幾つかの実施態様では、合金材料の各相(すなわち、合金材料の活性相、不活性相、又は他の任意の相)は、1つ以上の粒子を含むことができる、若しくは1つ以上の粒子の形態でありうる。幾つかの実施態様では、合金材料の各相のシェラー粒度は、50ナノメートル以下、20ナノメートル以下、15ナノメートル以下、10ナノメートル以下、又は5ナノメートル以下である。本明細書で用いられる場合、合金材料の相のシェラー粒度は、当業者によって容易に理解されるように、X線回折及びシェラー方程式によって決定される。
【0023】
幾つかの実施態様では、電気化学的活性材料は、合金材料を少なくとも部分的に取り囲むコーティングをさらに含みうる。「少なくとも部分的に取り囲む」とは、コーティングと合金材料の外部との間に共通の境界が存在することを意味する。コーティングは化学的保護層として機能し、粒子の成分を物理的及び/又は化学的に安定させることができる。コーティングに有用な材料の例には、炭素質材料(例えば、カーボンブラック又はグラファイトカーボン)、LiPONガラス、リン酸リチウム(LiPO)、メタリン酸リチウム(LiPO)、亜ジチオン酸リチウム(Li)、フッ化リチウム(LiF)、メタケイ酸リチウム(LiSiO)、及びオルトケイ酸リチウム(LiSiO)などのリン酸塩が含まれる。コーティングは、ミリング、溶液堆積、気相プロセス、又は当業者に知られている他のプロセスによって適用することができる。幾つかの実施態様では、コーティングは、非金属の導電性の層又はコーティングを含みうる。例えば、幾つかの実施態様では、コーティングは、カーボンブラックを含みうる。カーボンブラックは、合金材料及びカーボンブラックの総重量に基づいて、0.01から20重量%、0.1から10重量%、又は0.5から5重量%の間の量で存在しうる。このような実施態様では、コーティングは合金材料を部分的に取り囲むことができる。
【0024】
幾つかの実施態様では、上述の電気化学的活性材料は、負極組成物の総重量に基づいて、10から99重量%、20から98重量%、40から98重量%、60から98重量%、75から95重量%、又は85から95重量%の間の量で電極組成物中に存在しうる。
【0025】
幾つかの実施態様では、電極組成物のフルオロポリマー/PAAブレンドは、1つ以上のフルオロポリマーを含みうる。フルオロポリマーには、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニリデン(VDF)、及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)のうちの少なくとも2つ、並びに、任意選択的にエチレン(E)、プロピレン(P)、又は改質剤(以下に記載)を含む、モノマーの重合から誘導される1つ以上の(コ)ポリマーを含みうる。幾つかの実施態様では、(コ)ポリマーは、TFE、HFP、及びVDFを含むモノマーの重合から誘導されうる。さまざまな実施態様では、(コ)ポリマーは、CTFE並びにVDF、HFP、E、P及び改質剤(以下に記載)のうちの1つ以上を含むモノマーの重合から誘導されうる。
【0026】
幾つかの実施態様では、TFE由来のモノマー単位は25から80モル%、30から65モル%、又は35から55モル%の間の量で(コ)ポリマー中に存在することができ;HFP由来のモノマー単位は1から22モル%、5から17モル%、又は11から14モル%の間の量で(コ)ポリマー中に存在することができ;VDF由来のモノマー単位は25から80モル%、40から60モル%、又は36から51モル%の間の量で(コ)ポリマー中に存在することができ;E又はP由来のモノマー単位(個別に又は組み合わせて)は20から60モル%又は30から50モル%の量で存在することができる。幾つかの実施態様では、CTFE由来のモノマー単位は2~95モル%、10~80モル%、又は25~60モル%の量で(コ)ポリマー中に存在することができ;VDF由来のモノマー単位は1~75モル%、5~20モル%、又は30~70モル%の量で(コ)ポリマー中に存在することができ、HFP由来のモノマー単位は0~30モル%、1~20モル%、又は5~15モル%の量で(コ)ポリマー中に存在することができ;E又はP由来のモノマー単位は、0~60モル%、5~50モル%、又は10~45モル%の量で(コ)ポリマー中に存在することができる。
【0027】
幾つかの実施態様では、改質剤は、CF=CF-(CF-O-Rなどの過フッ素化ビニル又はアリルエーテル類を含むことができ、ここで、n=0又は1であり、Rは、追加の酸素原子によって分断されてもよい、直鎖又は分岐C-C10過フッ素化アルキル基である。特定の改質剤の例には、CF=CF-O-CF、CF=CF-O-C/CF=CF-O-C(PPVE)、CF=CF--O(CF-OCF、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C/C、及びCF=CF-CF-O-(CF-OCFが含まれる。改質剤には-SOF及び-SOXなどの官能基も含めることができ、ここで、X=H、Li、又はNaである。改質剤由来のモノマー単位は、0.1~10モル%、0.5~6モル%、又は1~5モル%の量で存在しうる。
【0028】
幾つかの実施態様では、フルオロポリマーは、例えば、水溶性開始剤(例えば、KMnO、過硫酸カリウム、又は過硫酸アンモニウム)を使用する水性乳化重合によって調製することができる。過硫酸塩は、単独で、又は還元剤(例えば亜硫酸水素塩)の存在下でも適用することができる。開始剤の濃度は、水性重合媒体に基づいて、0.001重量%から5重量%まで変化させることができる。幾つかの実施態様では、緩衝液(例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩)は、水性重合媒体に基づいて、0.01~5重量%の量で用いることができる。H、CBr、アルカン、アルコール、エーテル、及びエステルなどの連鎖移動剤は、分子量の調整に使用することができる。重合温度は、0.4~2.5MPa又は0.5~2MPaの重合圧力で、20℃から100℃、又は30~90℃の範囲でありうる。例えば、CF-O-CF-CF-CF-O-CHF-CFCOONHなどのフッ素化又は過フッ素化乳化剤を重合中に用いてもよい。ポリマーは、非フッ素化乳化剤を使用することによって製造することもできる。得られた水性ラテックスのフルオロポリマーの固形分は、10~40重量%の間でありうる。ラテックスは、得られたままで使用するか、あるいは代替的に、例えば限外濾過又は熱濃縮によって、40~60重量%の固形分になるまで、さらに濃縮することができる。フルオロポリマーは、非晶質(DSC測定で検出可能な融点を有しない)であるか、あるいは最高280℃、又は100℃から260℃の間の融点を有しうる。
【0029】
幾つかの実施態様では、1つ以上のフルオロポリマーは、ブレンド中のフルオロポリマー、PAA、及びLi-PAAの総重量に基づいて、15から85重量%、30から70重量%、40から60重量%、又は45から55重量%の間の量で、フルオロポリマー/PAAブレンド中に存在しうる。幾つかの実施態様では、1つ以上のフルオロポリマーは疎水性でありうる。
【0030】
幾つかの実施態様では、フルオロポリマー/PAAブレンドは、PAA、Li-PAA、又はそれらの組合せを含みうる。幾つかの実施態様では、PAA又はLi-PAAは、(メタ)アクリル酸又はリチウム(メタ)アクリレートを含むモノマーの重合から誘導される(コ)ポリマーとして存在しうる(このような(コ)ポリマーは本明細書ではアクリル酸(acylic acid)系(コ)ポリマーと称されうる)。さまざまな実施態様では、アクリル酸(acylic acid)系(コ)ポリマーは、1000kD未満、900kD未満未満、800kD未満、700kD未満、又は600kD未満;若しくは、5kDから900kD、5kDから750kD、又は5kDから590kDの間の重量平均分子量を有しうる。この開示の目的では、それがアクリル酸(acylic acid)系(コ)ポリマーに関することから、重量平均分子量は、pH7及び水中のポリ(アクリル酸)についてのdn/dcを0.231mL/gに調整した、0.2M NaNO/0.01M NaHPOの水溶液で得られた水性ゲル浸透クロマトグラフィーの結果に基づいている。
【0031】
幾つかの実施態様では、アクリル酸(acylic acid)系(コ)ポリマーは、その開示全体が参照することによって本明細書に組み込まれる米国特許第7,875,388号に記載されるようなアクリロニトリル又はアルキル(メタ)アクリレートなどの1つ以上の追加のモノマーの重合からさらに誘導されうる。幾つかの実施態様では、アクリル酸系(コ)ポリマーの水溶性を維持するため、(メタ)アクリル酸又はリチウム(メタ)アクリレート由来のモノマー単位は(個別に又は組み合わせて)、アクリル酸系(コ)ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の量でアクリル酸(acylic acid)系(コ)ポリマー中に存在しうる。さまざまな実施態様では、アクリル酸(acylic acid)系(コ)ポリマーは、アクリル酸系(コ)ポリマーの総重量に基づいて、60~80重量%の(メタ)アクリル酸又はリチウム(メタ)アクリレート由来のモノマー単位、及び20~40重量%のアクリロニトリル由来のモノマー単位の組成を有しうる。
【0032】
幾つかの実施態様では、リチウム(メタ)アクリレート由来のモノマー単位は、アクリル酸(acylic acid)系(コ)ポリマー中のリチウム(メタ)アクリレート由来のモノマー単位及びアクリル酸由来のモノマー単位の総重量に基づいて、0.1から50重量%、2から40重量%、4から25重量%、又は5から15重量%の間の量でアクリル酸(acylic acid)系(コ)ポリマー中に存在しうる。
【0033】
幾つかの実施態様では、フルオロポリマー/PAAブレンドは、PAA又はLi-PAAの溶液(例えば水溶液)と1つ以上のフルオロポリマーの分散体(例えば、水性分散体)とを組み合わせることによって生成されうる。驚くべきことに、このようなブレンドでは、高分子量のPAA又はLi-PAAで観察されたような沈殿が起こらないことが見出された。フルオロポリマー分散体は、フルオロポリマーに加えて、分散助剤、界面活性剤、pH調整剤、殺生物剤、共溶媒などの他の添加剤を含んでもよい。
【0034】
幾つかの実施態様では、水性フルオロポリマー分散体は、TFE、HFP、及びVDF(「THV組成物」)と、30~80モル%の範囲のTFE由来のモノマー単位、10~20モル%の範囲のHFP由来のモノマー単位、30~55モル%の範囲のVDF由来のモノマー単位、及び0~5モル%の範囲の改質剤(例えばCF=CF-OC)由来のモノマー単位との重合から誘導される(コ)ポリマーを含みうる。例示的な実施態様では、THV組成物は、35~60モル%の量のTFE由来のモノマー単位、10~18モル%の量のHFP由来のモノマー単位、32~55モル%の量のVDF由来のモノマー単位、及び、0~3モル%の量の改質剤由来のモノマー単位を含む。
【0035】
さまざまな実施態様では、フルオロポリマー分散体の固形分は、10~60重量%、又は20~55重量%でありうる。pH値は2から7の間でありうるが、酸、苛性、又は緩衝液を加えることによって調整することができる。水性フルオロポリマー分散体は、フッ素化界面活性剤(例えばADONA)、極性基を有する炭化水素界面活性剤(例えば、SO 、-OSO 、及びラウリン酸などのカルボン酸塩又はカルボン酸)を含むことができ、かつ、非イオン性界面活性剤(例えば、Triton X 100、Tergitols、Genapols、Glucopon)を含むことができる。これらのアジュバントの含有量は、水の量に基づいて、50ppmから5重量%の間でありうる。
【0036】
幾つかの実施態様では、フルオロポリマー分散体は、合計で25重量%までの量の有機水混和性共溶媒も含みうる。このような共溶媒には、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールなどの低級アルコール類、1-メトキシ-2-プロパノールなどのアルコールエーテル類、エチレングリコールジメチル又はジエチルエーテルなどのエーテル類、N-メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、及びN、N-ジメチルホルムアミドが含まれる。
【0037】
幾つかの実施態様では、フルオロポリマー分散体は、本出願の表1のフルオロポリマー分散体2で使用されるTHV組成物を含むことができるか、あるいは本質的にそれらで構成されうる。
【0038】
幾つかの実施態様では、フルオロポリマー分散体とPAA分散体とを併せた後、得られるフルオロポリマー/PAA分散体は、適切なベース材料(例えば、水酸化リチウム)を3から4の間のpHまで添加することにより部分的に中和されうる。驚くべきことに、このような部分的な中和では、他のさまざまなフルオロポリマーで観察されたような沈殿が起こらないことが見出された。
【0039】
幾つかの実施態様では、次いで、任意の従来の乾燥技術を使用して、フルオロポリマー/PAA分散体を乾燥させて、本開示のフルオロポリマー/PAAブレンドを形成することができる。驚くべきことに、本開示のフルオロポリマー/PAAブレンドは、乾燥後に、変形すると重度の亀裂又は粉砕さえも示す乾燥したニート形態のPAA及びLiPAAよりも大幅に改善された柔軟性及び耐屈曲性を示すことが見出された。
【0040】
幾つかの実施態様では、フルオロポリマー/PAAブレンドは、負極組成物の総重量に基づいて、1から20重量%、3から15重量%、5から12重量%、又は8から11重量%の間の量で負極組成物中に存在しうる。
【0041】
幾つかの実施態様では、フルオロポリマー/PAAブレンドは、結合剤として電極組成物中に存在しうる。本明細書で用いられる場合、電極組成物の文脈において、「結合剤」という用語は、電極組成物を形成する緩くアセンブリされた物質の凝集を生成又は促進するように機能する材料を指す。これに関して、幾つかの実施態様では、フルオロポリマー/PAAブレンドは、負極組成物全体に均一に分散させることができる。あるいは又は加えて、フルオロポリマー/PAAブレンドは、電気化学的活性材料(例えば、ケイ素合金粒子)の一部(全体まで)を取り囲むコーティングとして存在してもよい。
【0042】
幾つかの実施態様では、本開示の負極組成物は、結合剤、導電性希釈剤、フィラー、接着促進剤、分散助剤、分散粘度調整用の増粘剤、又は当業者に知られている他の添加剤などの1つ以上の添加剤も含むことができる。
【0043】
例示的な実施態様では、負極組成物は、組成物から集電体への電子移動を促進するために導電性希釈剤を含みうる。導電性希釈剤には、例えば、炭素、導電性ポリマー、粉末金属、金属窒化物、金属炭化物、金属シリサイド、及び金属ホウ化物、又はそれらの組合せが含まれる。代表的な導電性カーボン希釈剤には、Super P及びSuper Sカーボンブラック(いずれもスイス国Timcal社製)などのカーボンブラック、Shawinigan Black(Chevron Chemical Co.、米国テキサス州ヒューストン所在)、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、グラファイト、カーボンファイバー、及びそれらの組合せが含まれる。幾つかの実施態様では、導電性カーボン希釈剤は、カーボンナノチューブを含みうる。幾つかの実施態様では、電極組成物中の導電性希釈剤(例えば、カーボンナノチューブ)の量は、電極コーティングの総重量に基づいて、少なくとも2重量%、少なくとも6重量%、又は少なくとも8重量%、又は少なくとも20重量%であってよく;あるいは、負極組成物の総重量に基づいて、0.2重量%から80重量%、0.5重量%から及び50重量%、0.5重量%から20重量%、又は1重量%から10重量%の間でありうる。
【0044】
幾つかの実施態様では、負極組成物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Christensenらによる米国特許出願公開第2008/0206641号に記載されるように、とりわけカレンダーコーティングにおける、密度及びサイクル性能を改善するために、グラファイトを含みうる。グラファイトは、負極組成物の総重量に基づいて、10重量%超、20重量%超、50重量%超、70重量%超、又はそれより多い量で;あるいは、電極組成物の総重量に基づいて、20重量%から90重量%、30重量%から80重量%、40重量%から60重量%、45重量%から55量%、80重量%から90重量%、又は85重量%から90重量%の間の量で、負極組成物中に存在しうる。
【0045】
幾つかの実施態様では、本開示はさらに、リチウムイオン電気化学セルで使用するための負極を対象とする。負極は、その上に上述の負極組成物が配置された集電体を含みうる。集電体は、金属(例えば、銅、アルミニウム、ニッケル)、又は炭素複合材料などの導電性材料で形成されうる。
【0046】
幾つかの実施態様では、本開示はさらにリチウムイオン電気化学セルに関する。上述の負極に加えて、電気化学セルは、正極、電解質、及びセパレータを含みうる。セルでは、電解質は正極と負極の両方に接触していてもよく、正極と負極は互いに物理的に接触していない。典型的には、それらは電極間に挟まれた高分子セパレータフィルムによって分離される。
【0047】
幾つかの実施態様では、正極組成物は活性材料を含みうる。活性材料は、リチウム金属酸化物を含みうる。例示的な実施態様では、活性材料には、LiCoO、LiCo0.2Ni0.8、LiMn、LiFePO、LiNiOなどのリチウム遷移金属酸化物層間化合物、若しくは、有効な割合でのマンガン、ニッケル、及びコバルトのリチウム混合金属酸化物、あるいは有効な割合でのニッケル、コバルト、及びアルミニウムのリチウム混合金属酸化物が含まれうる。これらの材料のブレンドは、正極組成物にも使用できる。他の例示的なカソード材料は、米国特許第6,680,145号(Obrovacら)に開示されており、リチウム含有粒子と組み合わせて遷移金属粒子を含む。適切な遷移金属粒子には、約50ナノメートル以下の粒子サイズを有する、例えば、鉄、コバルト、クロム、ニッケル、バナジウム、マンガン、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、又はそれらの組合せが含まれる。適切なリチウム含有粒子は、酸化リチウム、硫化リチウム、ハロゲン化リチウム(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物、又はフッ化物)、若しくはそれらの組合せから選択されうる。正極組成物は、結合剤(ポリマー結合剤(例えば、ポリフッ化ビニリデン)、導電性希釈剤(例えば、カーボン、カーボンブラック、フレークグラファイト、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー)、フィラー、接着促進剤、カルボキシメチルセルロースなどのコーティング粘度調整用の増粘剤、又は当業者に知られている他の添加剤などの添加剤をさらに含みうる。さまざまな実施態様では、有用な電解質組成物は、液体、固体、又はゲルの形態でありうる。電解質組成物は、塩及び溶媒(又は電荷輸送媒体)を含みうる。液体電解質溶媒の例には、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、フルオロエチレンカーボネート、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、及びそれらの組合せが含まれる。幾つかの実施態様では、電解質溶媒は、モノグリム、ジグリム、及びテトラグリムなどのより高次のグリムを含むグリムを含みうる。適切なリチウム電解質塩の例には、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボレート、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiAsF、LiC(CFSO、及びそれらの組合せが含まれる。
【0048】
幾つかの実施態様では、リチウムイオン電気化学セルは、米国ノースカロライナ州シャーロット所在のCelgard LLCから入手可能な微孔質材料などの微孔質セパレータをさらに含みうる。セパレータをセルに組み込んで、負極が正極と直接接触するのを防ぐために使用することができる。
【0049】
開示されたリチウムイオン電気化学セルは、ポータブルコンピュータ、タブレットディスプレイ、携帯情報端末、携帯電話、電動デバイス(例えば、パーソナル又は家庭用電化製品、電動工具、及び車両)、機器、照明装置(例えば、懐中電灯)、及び加熱装置を含むがこれらに限定されない、さまざまなデバイスで使用することができる。本開示の複数のリチウムイオン電気化学セルを組み合わせて、バッテリーパックを提供することができる。
【0050】
本開示はさらに、上述の電気化学的活性材料の製造方法に関する。幾つかの実施態様では、合金材料は、冷間圧延、アーク溶解、抵抗加熱、ボールミル、スパッタリング、化学蒸着、熱蒸発、霧化、誘導加熱、又は溶融紡糸を含む金属又は合金のフィルム、リボン、又は粒子を製造するための既知の方法で製造することができる。上述の活性材料はまた、金属酸化物又は硫化物の還元によっても生成されうる。幾つかの実施態様では、合金材料は、それぞれそれらの全体が参照することによりにより本明細書に組み込まれる、米国特許第7,871,727号、米国特許第7,906,238号、米国特許第8,071,238号、又は米国特許第8,753,545号の方法に従って製造することができる。任意の所望のコーティングを、ミリング、溶液堆積、気相プロセス、又は当業者に知られている他のプロセスによって、合金材料に適用することができる。コーティングが炭素質材料又は非金属の導電層を含む実施形態では、このようなコーティングは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,664,004号の方法に従って適用することができる。
【0051】
本開示はさらに、上述の負極組成物を含む負極の製造方法に関する。幾つかの実施態様では、本方法は、水又はN-メチルピロリジノン若しくはそれらの混合物などの適切なコーティング溶媒中に、結合剤、導電性希釈剤、フィラー、接着促進剤、増粘剤などの添加剤とともに、上述の電気化学的活性材料とフルオロポリマー/PAAブレンドとを混合して、コーティング分散体又はコーティング混合物を形成することを含みうる。分散体は、完全に混合されてよく、その後、ナイフコーティング、ノッチ付きバーコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、エレクトロスプレーコーティング、又はグラビアコーティングなどの任意の適切なコーティング技術によって箔集電体に施すことができる。集電体は、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、又はニッケル箔などの導電性金属の薄い箔でありうる。スラリーを集電箔上にコーティングすることができ、その後、空気又は減圧下で乾燥させて、任意選択的に、通常約80°から約300℃の加熱オーブンで約1時間乾燥させて溶媒を除去することができる。
【0052】
本開示はさらに、リチウムイオン電気化学セルの製造方法に関する。さまざまな実施態様では、本方法は、上記のような負極を提供すること、リチウムを含む正極を提供すること、並びに負極及び正極を、リチウム含有電解質を含む電気化学セルに組み込むことを含みうる。
【0053】
実施態様のリスト
1.負極材料であって、
ケイ素含有材料;及び
(i)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、又はクロロトリフルオロエチレンを含む2つ以上のモノマーの重合から誘導された第1の(コ)ポリマー;及び、(ii)(メタ)アクリル酸又はリチウム(メタ)アクリレートを含むモノマーの重合から誘導された第2の(コ)ポリマーを含む組成物
を含む負極材料。
【0054】
2.ケイ素含有材料が、1000mAh/ml超の容積容量を有する、実施態様1に記載の負極材料。
【0055】
3.ケイ素含有材料が、式:Siを有する粒子を含有する合金材料を含み、ここで、x、y、及びzは原子%値を表し、(a)x+y+z=100%であり;(b)x>2y+zであり;(c)x及びyは0より大きく;zは0以上であり;かつ、(d)Mは、鉄及び任意選択的にマンガン、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、銅、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、及びイットリウムから選択される1つ以上の金属である、実施態様1又は2に記載の負極材料。
【0056】
4.65%≦x≦85%、5%≦y≦20%、及び5%≦z≦15%である、実施態様3に記載の負極材料。
【0057】
5.負極材料の総重量に基づいて、20から90重量%の間の量のグラファイトをさらに含む、実施態様1から4のいずれかに記載の負極材料。
【0058】
6.第1の(コ)ポリマーの総モル数に基づいて、テトラフルオロエチレン由来のモノマー単位が25から80モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在し、ヘキサフルオロプロピレン由来のモノマー単位が5から22モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在し、かつ、フッ化ビニリデン由来のモノマー単位が25から80モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在する、実施態様1から5のいずれかに記載の負極材料。
【0059】
7.第1の(コ)ポリマーの総モル数に基づいて、CTFE由来のモノマー単位が、2から95モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在し、VDF由来のモノマー単位が、1から75モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在し、かつ、HFP由来のモノマー単位が、0から30モル%の間の量で第1の(コ)ポリマー中に存在する、実施態様1から6のいずれかに記載の負極材料。
【0060】
8.組成物中の第1及び第2の(コ)ポリマーの総重量に基づいて、第1の(コ)ポリマーが30から60重量%の間の量で組成物中に存在する、実施態様1から7のいずれかに記載の負極材料。
【0061】
9.第2の(コ)ポリマーが1000kD未満の重量平均分子量を有する、実施態様1から8のいずれかに記載の負極材料。
【0062】
10.リチウム(メタ)アクリレート由来のモノマー単位が、第2の(コ)ポリマー中のリチウム(メタ)アクリレート由来のモノマー単位及びアクリル酸由来のモノマー単位の総重量に基づいて、2から40重量%の間の量で第2の(コ)ポリマー中に存在する、実施態様1から9のいずれかに記載の負極材料。
【0063】
11.組成物が、負極材料の総重量に基づいて、1から20重量%の間の量で負極材料中に存在する、実施態様1から10のいずれかに記載の負極材料。
【0064】
12.組成物が負極材料全体に均一に分散される、実施態様1から11のいずれかに記載の負極材料。
【0065】
13.実施態様1から12のいずれかに記載の負極材料;及び
集電体
を含む負極。
【0066】
14.実施態様13に記載の負極;
リチウムを含有する正極組成物を含む正極;及び
リチウムを含有する電解質
を含む電気化学セル。
【0067】
15.実施態様14に記載の電気化学セルを含む電子デバイス。
【0068】
16.電気化学セルの製造方法であって、
リチウムを含有する正極組成物を含む正極を提供すること;
実施態様13に記載の負極を提供すること;
リチウムを含有する電解質を提供すること;及び
正極、負極、及び電解質を電気化学セルに組み込むこと
を含む方法。
【0069】
本開示の動作は、以下の詳細な例に関してさらに説明される。これらの例は、さまざまな特定の実施実施態様及び技法をさらに説明するために提供される。しかしながら、本開示の範囲内にとどまりつつ、多くの変形及び修正を行うことができることが理解されるべきである。
【実施例
【0070】
以下の実施例は、本開示の理解を助けるために提供されるのであって、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。別途指示がない限り、すべての部及びパーセンテージは重量による。すべての材料は、米国のSigma-Aldrich Corporationから入手し、別途指示がない限り、受け取ったままの状態で使用した。
【0071】
フルオロポリマー/PAAブレンド分散体の調製
調製例1--低分子量ポリアクリル酸(PAA)溶液の合成--32オンス(1L)のスクリュートップ反応ボトルに、100部のAA、400部のDI水、0.5部のCBr連鎖移動剤、及び0.5部のV-50開始剤を充填した。溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを50°Cの回転式水浴内に21時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。重量分析は、完全なモノマー変換を示した。脱イオン水をさらに添加することにより、固形分を10重量%のPAAに調整した。
【0072】
調製例2--高分子量ポリアクリル酸(PAA)溶液の合成--32オンス(1L)のスクリュートップ反応ボトルに、50部のAA、450部のDI水、及び0.125部の過硫酸カリウム開始剤を充填した。溶液を窒素で2分間パージし、密封した。ボトルを60°Cの回転式水浴内に21時間入れた。反応ボトルを取り出し、室温まで冷却した。透明な粘性ポリマー溶液を得た。重量分析は、完全なモノマー変換を示した。
【0073】
調製例3及び4-市販のポリアクリル酸(コ)ポリマーであるCARBOSPERSE K-7058及びCARBOSPERSE K-702を、米国所在のLubrizol Corporationから購入し、そのまま使用した。
【0074】
調製例5--フルオロポリマー分散体-フルオロポリマー分散体が下記表1に記載されている。フルオロポリマー分散体1を米国ミネソタ州所在の3M Companyから入手し、そのまま使用した。
【0075】
フッ素化(コ)ポリマー分散体2~9の組成は表1にまとめられており、次のように調製した。
【0076】
フルオロポリマー分散体2を調製するために、52リットル(L)のステンレス鋼製反応器に、30Lの脱塩水、60gのシュウ酸アンモニウム[(NH×1HO]、30gのシュウ酸、及び0.050kgの28重量%GENAPOL LROの溶液を充填した。無酸素反応器を60℃に加熱し、エタンで0.370bar、TFEで2.0bar、HFPで8.6bar、VDFで14.0bar、最後に再びTFEで17barに加圧した。1.1kgの2重量%KMnO溶液を添加することにより、重合を開始した。4.5時間後、重合を停止し、その時点で6.0kgのTFE、2.58kgのHFP、及び5kgのVDFを反応器に導入した。ラテックスをDOWEX MONOSPHERE 650C(H)イオン交換樹脂で処理し、カチオンを除去した。
【0077】
フルオロポリマー分散体3及び4を調製するために、52Lの反応器に、30LのHO、13gのシュウ酸アンモニウム、2gのシュウ酸×2HO、及び0.29kgの30重量%ADONA溶液を充填した。60℃に加熱された反応器を、エタンで1.2barまで、TFEで2barまで、HFPで88.6barまで、VDFで14barまで、最後にTFEで17barまで加圧した。0.27kgの1.0重量%KMnO溶液で重合を開始した。3.2時間後、7.2kgのTFE、6.3kgのVDF、2.4kgのHFPを反応容器に供給した。フルオロポリマー分散体3では、ラテックスをDOWEX MONOSPHERE 650C(H)イオン交換樹脂で処理し、カチオンを除去した。フルオロポリマー分散体4については、イオン交換は行わなかった。
【0078】
フルオロポリマー分散体5は、乳化剤なしで60℃の重合温度で、開始剤として過硫酸アンモニウムを有する水性媒体中で調製した。
【0079】
フルオロポリマー分散体6は次のように調製した。52Lのケトルに、30LのHO、60gのシュウ酸アンモニウム、25gのシュウ酸、1.3bのtert-ブタノール、0.54kgの30重量%ADONA溶液、及び60gのマロン酸ジエチルを充填した。重合温度は31℃であり;圧力は17barであり;7.5kgのTFE、2.1kgのエチレン、0.37kgのHFP、及び0.4kgのPPVEを3.7時間かけて供給した。フルオロポリマー分散体2及び3について説明したように、イオン交換によりカチオンを除去した。
【0080】
フルオロポリマー分散体7は、フルオロポリマー分散体3についての説明と同じ重合条件を使用して調製し、モノマー量を調整して、所望の組成を達成した。
【0081】
フルオロポリマー分散体8は、PPVE(CF=CF-O-C)を連続して重合内に噴霧し、TFE、HFP、VDF、及びPPVEの量を調整して所望の組成を達成したことを除き、フルオロポリマー分散体2についての説明と同じ重合条件を使用して調製した。
【0082】
フルオロポリマー分散体9は、フルオロポリマー分散体8について説明したように調製したが、フルオロポリマー分散体2について説明したようにイオン交換樹脂を用いてカチオンを除去した。
【0083】
目に見える固体微粒子が分散体のいずれかに存在する場合には、材料をWHATMAN#4フィルター漏斗(英国メードストン所在)による重力濾過によって濾過した。重量測定及び強制空気オーブン内で120℃、30分間のアルミニウムパンでの加熱によって得られた分散体のパーセント固形分測定を実施した。pH試験ストリップ(範囲0~14、Ricca Chemical Co.、米国所在)を使用して、pH測定を実施した。濾過(必要な場合)及びpH測定後、脱イオン水を加えることによって、フルオロポリマー分散体の試料を10重量%固形分になるまで希釈した。得られた10重量%の固体分散体は、希釈後、すべて透明からわずかにヘイズがあった。
【0084】
実施例6~15並びに比較例CE1及びCE3-一連の小さいガラス製スクリュートップバイアルに、実施例5で調製したフルオロポリマー分散体の10重量%希釈液1gを充填した。次いで、各バイアルに、実施例1から4の10重量%PAA溶液1gを加えた。バイアルを振盪して成分を混合し、ヘイズ(相分離の証拠)又は沈殿物の発生について視覚的に検査した。いずれの試料も、低分子量PAAの可視液相分離を生じなかった。結果が表2にまとめられている。
【0085】
実施例16~17及び比較例CE3~CE4
濾過したフルオロポリマー分散体2の一部を脱イオン水で希釈し、安定した10重量%の分散体を得た(比較例CE3)。希釈液は、上記のようにpH試験ストリップで測定して、約3.5のpHを示した。
【0086】
THV340Zフルオロポリマー分散体1の試料を脱イオン水で希釈し、安定した10重量%の分散体を得た(比較例CE4)。希釈液は、pH試験ストリップで測定して、pH8~9を示した。
実施例16の分散体を、実施例6について上述したように調製した。これにより、pH試験ストリップで測定して約3のpHを有するヘイズのある分散体が得られ、実施例5に記載される方法を使用した重量測定によって9.8重量%の固形分が得られた。実施例17の分散体は、実施例16の分散体の一部を、pH試験ストリップで測定して混合物のpHが3.6~3.9になるまで、脱イオン水中の水酸化リチウム一水和物の10重量%溶液の液滴で処理することによって調製した。これにより、ヘイズのある分散体を得た。実施例5に記載される方法を使用した重量分析では、9.6重量%の固形分が得られた。
【0087】
実施例16及び17の分散体をアルミニウムパン内で乾燥させて水を除去した。実施例16及び17の分散体のこのドライダウンプロセスに由来する残留物は、アルミニウム試料パンの曲げに対して、屈曲時に砕けたポリアクリル酸又はLiPAA溶液由来の乾燥固形分よりもはるかに大きい柔軟性を示した。
【0088】
アノードコーティング及びコイン形ハーフセルの調製
電解質
ハーフセルの調製に用いた電解質は、90重量%の、3:7(w/w)炭酸エチレン:炭酸エチルメチル中、1MのLiPF溶液(SELECTILYTE LP 57、米国BASF社から入手可能)と、10重量%のモノフルオロエチレンカーボネート(これもBASF社から入手可能)との混合物であった。
【0089】
電極合金スラリーの調製
実施例16及び17及び比較例CE3及びCE4の材料を、ケイ素合金電極の調製のための結合剤として使用した。比較例CE5は、ポリ(アクリル酸)(PAA、分子量250,000、Sigma Aldrich社、米国所在)を水酸化リチウム一水和物でpH7に中和することにより調製されたポリアクリル酸リチウムの10重量%溶液であった。
【0090】
32個のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)ミリングメディアビーズ(直径6.5mm、米国カリフォルニア州ロサンゼルス所在のAmerican Elements社から入手可能)を45mlのタングステンカーバイド容器(ドイツ国イドン=オーバーシュタイン(Idon-Oberstein)所在のFritsch GmbHから入手可能)に入れた。式Si75.42Fe13.8910.70を有するケイ素合金複合粒子を、米国特許第8,071,238号及び米国特許第7,906,238号に開示された手順を使用して調製し、その後、合金粒子をナノカーボンでコーティングした。次に、ケイ素合金複合粒子及び1.80グラムの10%固形結合剤溶液(実施例16、17、CE3、CE4、又はCE5のいずれか)を容器に加えた後、予備混合と粘度チェックを行った。コーティング可能な粘度を達成するため、必要な場合には、脱イオン水をさらに加えた。次に容器を覆い、スラリーを遊星マイクロミル(PULVERISETTE 7、ドイツ国イドン=オーバーシュタイン(Idon-Oberstein)所在のFritsch GmbHから入手可能)で速度設定#2で1時間混合した。
【0091】
電極のコーティング
次に、以下の手順を使用して、電極スラリーを銅箔にコーティングして作用電極を調製した。最初に、きれいなガラス板に一滴のアセトンを施し、アセトンで洗浄した15ミクロンの銅箔のシート(日本所在の古河電工から入手可能)で覆った。3ミル(0.076mm)、4ミル(0.10mm)、又は5ミル(0.13mm)のコーティングバーとスチールバーガイドを使用して、スラリーをコーティングバーに施し、安定した動きで下方に引き込んた。次に、複合アノードコーティングを周囲条件下で1時間乾燥させ、その後、露点が-40℃未満の乾燥室に移した。次に、コーティングされた箔を真空オーブン内で、120℃で2時間、乾燥させた。
【0092】
コイン形セルの調製
ハーフコイン形セルを準備するために、16mmのダイを使用し、白い紙を下に敷き、コーティングされた銅箔面を下にして作用電極を打ち抜いた後、紙を取り除いた。一致する3つの銅箔片を打ち抜き(むき出しの集電体)、平均メッシュ重量を決定した。CELGARD2325セパレータ材料のフィルム(25ミクロンの微孔性3層PP/PE/PP膜、Celgard社、米国所在)を色紙のシートの間に配置し、20mmのダイを使用して打ち抜き、その後、紙を除去した。各セルについて、少なくとも2つのセパレータをカットした。リチウム箔のシートを巻いてその両面をブラッシングし、プラスチックフィルムのシートの間に配置し、18mmのダイを使用して対電極を打ち抜き、その後プラスチックフィルムを除去した。各電極の重量を個別に量り、総重量を記録した。
【0093】
次に、電気化学的2325コイン形セルを、次の順序で組み立てた:2325コイン形セル底部、30ミルの銅スペーサ、リチウム対電極、33.3マイクロリットルの電解質、セパレータ、33.3マイクロリットルの電解質、セパレータ、グロメット、33.3マイクロリットルの電解質、作用電極(面を下に向け、リチウム対電極と位置合わせした)、30ミルの銅スペーサ、2325コイン形セルトップ。セルを圧着し、ラベルを貼った。
【0094】
電気化学的性能の特性評価
次に、以下のプロトコルに従ってSERIES4000自動化試験システム(米国所在のMaccor Incから入手可能)を使用してコイン形セルをサイクルに供した。
【0095】
サイクル1:C/10で0.005Vまで放電し、C/40までトリクル放電した後、15分間休止。C/10で0.9Vに充電した後、15分間休止。
【0096】
サイクル2~100:C/4で0.005Vまで放電し、C/20までトリクル放電した後、15分間休止。C/4で0.9Vに充電した後、15分間休止。
【0097】
100回の試験サイクルにわたる放電容量維持率を記録し、プロットした。
【0098】
実施例16及び17並びに比較例CE3~CE5由来の結合剤を使用して調製したハーフセルの電気化学サイクルの結果
図1は、実施例16及び17並びに比較例CE3、CE4、及びCE5に由来する結合剤を使用して前述のように調製したリチウムハーフセルの再現実験のサイクル数の関数としての放電容量を示している。実施例17は、100サイクルの試験でCE5と同様の容量維持率を示した。比較例CE3及びCE4は、結合剤として非常に不十分な性能を示し、一方、実施例16は、実施例17よりも退色(fade)を示したが、それにもかかわらず、比較例よりはるかに良好であった。
【0099】
実施例17及びCE5由来の結合剤を伴う電極コーティングの吸湿量測定
上記の手順と、銅箔上の実施例17(4回繰り返し試料)又はLiPAA結合剤CE5(3回繰り返し試料)のいずれかとを使用して調製した、ケイ素合金電極のコーティングを備えた新鮮なコインセル電極を、露点-40℃未満の乾燥室で一定重量に平衡化させた。銅箔担体の風袋を差し引いた後、重量を記録した。試料を21℃及び相対湿度50%に制御された恒温恒湿室に移し、5日間放置した後、それらを再計量した。吸湿によるアノードコーティング重量のパーセント増加を計算し、CE5では4.5~5.7重量%、実施例17では0.8~1.8重量%であることがわかった。
【0100】
実施例18~24
濾過したフルオロポリマー分散体2の試料を脱イオン水で希釈し、安定した10重量%の分散体を得た(比較例CE3)。希釈液は、pH試験ストリップで測定して約3.5のpHを示した。この希釈した分散体及び低MW PAA-1の10重量%溶液(調製例1) を使用して、以下の表3に示すようなさまざまな重量比で一連のフルオロポリマー:PAAブレンドを調製した。試料をガラス製スクリュートップバイアル内で調製し、振盪して成分を混合し、室温で一晩放置した後、ヘイズ及び微粒子形成を視覚的に検査した。結果を表3に示す。
【0101】
幾つかの実施態様を説明する目的で、特定の実施態様を本明細書で例示及び説明してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、示され説明された特定の実施態様を、多種多様な代替及び/又は等価の実施で代用できることが、当業者に認識されよう。
図1