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特許7139354排気ガス過給機のための結合具及び排気ガス過給機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】排気ガス過給機のための結合具及び排気ガス過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20220912BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20220912BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
F02B39/00 Z
F02B39/00 T
F16B2/08 F
B60K13/04 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019563385
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018000341
(87)【国際公開番号】W WO2019011464
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】102017115935.5
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505448822
【氏名又は名称】アイ・エイチ・アイ チャージング システムズ インターナショナル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ハダディアン,ファルハード
(72)【発明者】
【氏名】スパーリング,クラウス
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-025503(JP,A)
【文献】特開2009-167971(JP,A)
【文献】国際公開第2016/005442(WO,A1)
【文献】特開2016-205563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F16B 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス過給機のための結合具であって、略々湾曲状の第1部材(10)と略々湾曲状の第2部材(11)とを備えており、前記第1部材(10)は径方向に延在する第1荷重印加アーム部(16)を第1端に備え、前記第2部材(11)は径方向に延在する第2荷重印加アーム部(17)を前記第1端に対向する第2端に備え、前記第1端とは反対側の端部である前記第1部材の第3端は、前記第2端とは反対側の端部である前記第2部材の第4端に対向しており、前記第3端と前記第4端とは可動とされており、前記第1荷重印加アーム部(16)には前記第3端とは反対側に第1ストッパ部(24)が設けられ、前記第2荷重印加アーム部(17)には前記第1ストッパ部(24)に対向する第2ストッパ部(29)が設けられ、前記第1荷重印加アーム部(16)と前記第2荷重印加アーム部(17)とは前記結合具(9)の第1連結要素(12)を介して連結可能であり、前記第端と前記第4端とは第2連結要素(13)を介して可動に互いに連結されている、前記結合具において、
前記第1及び第2荷重印加アーム部(16、17)における応力を低減するために、前記第1荷重印加アーム部(16)と、当該第1荷重印加アーム部(16)から前記第3端まで延在する前記第1部材(10)の支持部(25)との間に存在する移行部(30)、並びに、前記第2荷重印加アーム部(17)と、当該第2荷重印加アーム部(17)から前記第4端まで延在する前記第2部材(11)の支持部(27)との間に存在する移行部(31)が、弾性変形可能に構成されており、前記第1部材(10)と前記第2部材(11)とは、前記第1荷重印加アーム部(16)とは反対側に位置する前記第1部材の第端部(38)と、前記第2荷重印加アーム部(17)とは反対側に位置する前記第2部材の第端部(39)とにおいて、前記第2連結要素(13)を介した前記可動な連結により連結されており、少なくとも前記第1部材(10)及び/又は前記第2部材(11)は少なくとも前記第2連結要素(13)の近傍領域において所定の横断面形状を有するように形成されており、少なくとも前記第2連結要素(13)に囲繞されている領域において前記第1部材(10)及び/又は前記第2部材(11)はU字形状又は台形状の横断面形状を有する、ことを特徴とする結合具。
【請求項2】
前記荷重印加アーム部(16;17)から前記支持部(25;27)へ向けて前記移行部(30;31)の横断面が変化していることを特徴とする請求項1記載の結合具。
【請求項3】
前記第1及び第2移行部(30、31)の近傍領域において内周部(32)に発生する引張応力の大きさと外周部(33)に発生する圧縮応力の大きさとが、前記第1及び第2ストッパ部(24、29)を互いに当接させるだけの前記第1及び第2移行部(30、31)の弾性変形を生じさせ得る大きさとなるようにしてあることを特徴とする請求項1又は2記載の結合具。
【請求項4】
前記第1連結要素(12)による予荷重(FVor)が印加されていない状態において、前記第1荷重印加アーム部(16)と前記第2荷重印加アーム部(17)とが互いから離隔する方向へ延在し、前記第1荷重印加アーム部(16)と第2荷重印加アーム部(17)との間の離隔距離が前記第1及び第2ストッパ部(24、29)の近傍領域において最大離隔距離(42)となるようにしてあることを特徴とする請求項1又は2記載の結合具。
【請求項5】
前記第1及び第2部材(10、11)は、それらの横断面形状がU字形状又は台形状とされていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の結合具。
【請求項6】
前記第2連結要素(13)は鎖環(13)の形状に形成されており、前記第1部材(10)及び/又は前記第2部材(11)は前記鎖環(13)の中を延在するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の結合具。
【請求項7】
前記端部(38;39)は湾曲形状に形成され、且つ、前記第2連結要素(13)を少なくとも部分的に囲繞するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の結合具。
【請求項8】
前記第1部材(10)及び/又は前記第2部材(11)は、前記第2連結要素(13)と係合している前記端部(38;39)に、前記第2連結要素(13)を少なくとも部分的に囲繞するように形成された安全要素(26;28)を備えていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の結合具。
【請求項9】
高温の排気がその中を貫流して流れる第1ハウジング部分(2)と、第2ハウジング部分(3)とを備え、前記第1ハウジング部分(2)と前記第2ハウジング部分(3)とが結合具(9)により互いに結合されている排気ガス過給機において、前記結合具は請求項1乃至8の何れか1項記載の結合具であることを特徴とする排気ガス過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分に記載した種類の排気ガス過給機のための結合具に関する。本発明は更に、請求項9の前段部分に記載した種類の排気ガス過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス過給機の好適な構成の1つに、以下に示すいくつかのハウジング部分を備えたものがある。第1ハウジング部分はその中を高温ガスが貫流して流れるハウジング部分であり、ここでいう高温ガスは概ねエンジンの排気である。第2ハウジング部分はその中に回転体アセンブリを収容して回転可能に支持するハウジング部分であり、第1ハウジング部分と第3ハウジング部分との間に配置される。第3ハウジング部分はその中を吸入外気が貫流して流れるハウジング部分である。ハウジング部分どうしが当接する当接箇所には双方にフランジ面が形成され、それらフランジ面どうしが当接した間から高温ガスや吸入外気が漏出しないように漏出防止が図られている。フランジ面どうしが当接した間から漏出が生じると排気ガス過給機の総合効率が低下する。また、第1ハウジング部分と第2ハウジング部分との間の当接箇所から漏出が生じる場合には、環境に有害な排気が漏出することになるため、この箇所からの漏出を防止することは特に重要である。更に、排気ガス過給機は分解可能な構成とすべきことも考慮せねばならない。例えば、フランジ面どうしを材料接合方式で結合してしまえば、気密性が得られるものの、排気ガス過給機の分解及び再組立は容易に行えなくなる。
【0003】
特に問題となるのは、排気がその中を貫流して流れる第1ハウジング部分と、吸入した空気や潤滑油及び/又は冷却水などがその中を貫流して流れる第2ハウジング部分との間の結合箇所であり、なぜならば、それら2つのハウジング部分の結合箇所には非常に大きな温度差が存在し、また非常に大きな温度変動も発生するからである。それゆえ、それら2つのハウジング部分を結合する結合具は、それらハウジング部分の間の熱膨張量の差を吸収できるものでなければならず、また、その結合具に作用する様々な応力の変化に対応し得るものでなければならない。
【0004】
かかる結合具は多くの場合、パイプどうしを連接するために用いられているクランプ式結合具と同様に構成されている。即ち、その結合具の周方向に延在する2つの部材を備えており、それら2つの部材は両端が互いに対向するように組合わされ、両端のうちの少なくとも一端どうしが、ネジとナットから成る連結要素により連結解除可能に連結されるように構成されている。
【0005】
その一例として、特許文献1には、プロファイル材のごとく所定の横断面形状を有するクランプ式結合具が開示されている。この結合具では、2つの部材の互いに対向する両端のうち、ネジとナットから成る連結要素が備えられている方の一端において、それら2つの部材に夫々に突片部が設けられており、それら2つの部材のフランジ部どうしが、それら突片部においてのみ互いに当接するようにしてある。また、2つの部材はプロファイル材のごとく所定の横断面形状を有しており、両側に側縁壁部を備えることでその横断面形状が台形状とされており、この横断面形状としているのは、この所定の横断面形状を有するクランプ式結合具が、テーパの付いたフランジ部に装着するための結合具だからである。
【0006】
かかる結合具には大きな熱負荷が加わるため、結合具に伸び変形が発生するおそれがあり、その結果として結合具が外れてしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第10 2014 103 683 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、確実な結合を行える排気ガス過給機のための結合具を提供することにある。また更なる目的は、改良した排気ガス過給機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は請求項1に記載した特徴を備えた排気ガス過給機のための結合具により達成される。また、上記更なる目的は請求項9に記載した特徴を備えた排気ガス過給機により達成される。従属請求項は本発明の好適且つ重要な構成上の特徴を備えた特に有利な構成例を記載したものである。
【0010】
本発明は排気ガス過給機のための結合具に関するものであり、該結合具は、略々湾曲状の第1部材と略々湾曲状の第2部材とを備えており、前記第1部材は径方向に延在する第1荷重印加アーム部を第1端に備え、前記第2部材は径方向に延在する第2荷重印加アーム部を前記第1端に対向する第2端に備え、前記第1端とは反対側の端部である前記第1部材の第3端は、前記第2端とは反対側の端部である前記第2部材の第4端に対向しており、前記第3端と前記第4端とは相対的に可動とされている。前記第1荷重印加アーム部には前記第3端とは反対側に第1ストッパ部が設けられ、前記第2荷重印加アーム部には前記第1ストッパ部に対向する第2ストッパ部が設けられている。前記第1荷重印加アーム部と前記第2荷重印加アーム部とは前記結合具の第1連結要素を介して連結可能である。前記第2端と前記第4端とは第2連結要素を介して相対的に可動に互いに連結されている。本発明によれば、前記第1及び第2荷重印加アーム部における応力を低減するために、前記第1荷重印加アーム部と、当該第1荷重印加アーム部から前記第3端まで延在する前記第1部材の支持部との間に存在する移行部、並びに、前記第2荷重印加アーム部と、当該第2荷重印加アーム部から前記第4端まで延在する前記第2部材の支持部との間に存在する移行部が、弾性変形可能に構成されており、前記第1部材と前記第2部材とは、前記第1荷重印加アーム部とは反対側に位置する前記第1部材の第1端部と、前記第2荷重印加アーム部とは反対側に位置する前記第2部材の第2端部とにおいて、前記第2連結要素を介した前記相対的に可動な連結により連結されており、少なくとも前記第1部材及び/又は前記第2部材は少なくとも前記第2連結要素の近傍領域において所定の横断面形状を有するように形成されており、前記第1部材及び/又は前記第2部材は前記第2連結要素の近傍領域において前記第2連結要素に囲繞されている。
【0011】
本発明の利点は、前記第1及び第2部材をより短くできること、即ち、周方向の長さをより短くできることにあり、これが可能であるのは、前記移行部が弾性変形することで前記第1及び第2部材が伸び変形を生じ得るからである。そのため、主として前記結合具の排気ガス過給機のハウジングに接触している部分に生じる、熱の流入に起因する前記結合具の変形量を、また特に伸び変形量を小さく抑えることができ、これが可能であるのは前記第1及び第2部材を従来のものより短くできることによるものである。
【0012】
特に、前記荷重印加アーム部から前記支持部へ向けて前記移行部の横断面が変化している。即ち、前記荷重印加アーム部に近い側の当該移行部の端部から、当該移行部の最も強く屈曲している最急屈曲部分へかけて、当該移行部の横断面が次第に縮小し、また、当該移行部の最急屈曲部分から、排気ガス過給機のハウジングに嵌合する支持部に近い側の当該移行部の端部へかけて、当該移行部の横断面が次第に拡大するようにしている。
【0013】
前記第2連結要素を介した相対的に可動な連結は、例えば前記第2連結要素を帯板形状の連結要素としても実現可能であり、そうした場合でも前記結合具の装着を容易且つ好適に行うことができるが、ただし、前記第2連結要素を鎖環として形成し、前記第1部材と前記第2部材とをその鎖環に係合させることにより、前記結合具の装着を更に好適に行うことができる。即ち、そうすることで、前記第1部材と前記第2部材とが当該鎖環において3次元空間内の様々な方向へ相対的に可動となるため、それら2つの部材を弾性変形可能な帯板形状の連結要素で連結した場合と比べて、それら2つの部材の間の相対的に可動な状態の自由度が大きくなる。
【0014】
前記第1部材及び前記第2部材は、それら部材の前記第2連結要素の近傍部分が、プロファイル材のごとく所定の横断面形状を有すると共に前記第2連結要素により囲繞されており、これによって前記結合具が装着されたときの周方向応力の分布が好適化されるようになっている。また、前記第1部材及び前記第2部材をプロファイル材のごとく所定の横断面形状を有するものとすることで、それら部材の横断面の断面係数を大きくできるという利点が得られる。
【0015】
前記第1部材及び前記第2部材は、前記第2連結要素の近傍部分だけでなくその他の部分においてもプロファイル材のごとく所定の横断面形状を有するものとすることが好ましい。こうすることで、前記結合具の全体としての弾性力を高めることができ、ひいては前記結合具を結合対象のハウジング部分により良好に適合させることが可能となる。
【0016】
本発明に係る結合具の別の1つの構成例によれば、前記第1及び第2移行部の近傍領域において内周部に発生する引張応力の大きさと外周部に発生する圧縮応力の大きさとが、前記第1及び第2ストッパ部を互いに当接させるだけの前記第1及び第2移行部の弾性変形を生じさせ得る大きさとなるようにしてある。こうすることで、前記第1及び第2部材に作用する周方向の応力の分布を一様化することができる。
【0017】
本発明に係る結合具の別の1つの構成例によれば、前記第1連結要素による予荷重が印加されていない状態において、前記第1荷重印加アーム部と前記第2荷重印加アーム部とが互いから離隔する方向へ延在し、前記第1荷重印加アーム部と第2荷重印加アーム部との間の離隔距離が前記第1及び第2ストッパ部の近傍領域において最大離隔距離となるようにしてある。こうすることで、前記第1及び第2ストッパ部が互いに当接した後に互いに押圧し合うことで前記第1及び第2荷重印加アーム部が梃子の作用を発揮し、もって、前記第1及び第2部材に周方向の引張力が作用するようにすることができる。
【0018】
本発明に係る結合具の別の1つの構成例によれば、前記端部は湾曲形状に形成され、且つ、前記第2連結要素を少なくとも部分的に囲繞するように形成されている。特に好ましいのは、前記端部がクレーンのフックの形状に形成されているようにすることである。そうすることで、断面係数を更に大きくすることができ、ひいては、前記端部における応力分布をより良好に、即ち最適化して、亀裂の発生ないし成長を防止することができ、また前記端部が変形するのを防止することができる。
【0019】
前記部材の前記端部に設けられた、前記第2連結要素を少なくとも部分的に囲繞するように形成された安全要素を備えることによって、前記第2連結要素が失われることも防止される。
【0020】
本発明の第2の態様は排気ガス過給機に関するものであり、該排気ガス過給機は、高温の排気がその中を貫流して流れる第1ハウジング部分と、第2ハウジング部分とを備え、前記第1ハウジング部分と前記第2ハウジング部分とが結合具により互いに結合されている。本発明によれば、前記結合具は請求項1乃至8の何れか1項に記載の結合具である。
【0021】
前記排気ガス過給機の作動中には、排気による高温のために前記第1及び第2ハウジング部分に熱膨張が生じている。そこで、そのような熱膨張が、前記排気ガス過給機の効率に大きな影響を及ぼさないようにするために、前記結合具を請求項1乃至8の何れか1項に記載の結合具としたものである。これによって、前記第1ハウジング部分と前記第2ハウジング部分とが確実に結合され、もって、有害物質の漏出が低減ないし防止される。
【0022】
本発明の更なる利点、特徴、及び細部構成については、以下に示す好適な実施の形態についての説明を参照し、また添付図面を参照することにより明らかとなる。以上の説明中で言及した様々な特徴及びそれら特徴の組合せ、並びに、添付図面に関連した以下の説明中で言及し、及び/又は、図面中に示す様々な特徴及びそれら特徴の組合せは、それら説明ないし図面に示した通りの組合せで利用し得るばかりでなく、それとは異なる組合せで利用することもでき、また、個々の特徴を単独で利用することも可能なものであって、そのように特徴を利用した場合でも本発明の範囲から逸脱するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る排気ガス過給機のための結合具の側面図である。
図2】非装着状態にある図1の結合具の縦断面を示した断面斜視図である。
図3】結合具の一方の端部領域の横断面図である。
図4図1の結合具の第1部材の一端を示した斜視図である。
図5】装着状態にある図1の結合具の縦断面図であり、基本的な力の流れを併せて示した図である。
図6】本発明に係る排気ガス過給機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1つの実施例に係る排気ガス過給機1は、図6に示したように構成されており、この排気ガス過給機1は第1ハウジング部分2を備えている。第1ハウジング部分2は、排気ガス過給機の作動中に気体がその中を貫流して流れる排気流通部2として形成されており、流れる流体は通常、排気そのものである。またここでいう排気とは概ねエンジン(不図示)の燃焼生成物であるが、ただし必ずしもそれに限られない。
【0025】
排気ガス過給機1は第2ハウジング部分3を備えている。第2ハウジング部分3は、軸受部として形成されており、排気ガス過給機1の回転体アセンブリ(不図示)を軸支している。軸受部3は、吸気がその中を貫流して流れる排気ガス過給機1の吸気流通部(不図示)と、排気流通部2との間に配設されている。
【0026】
回転体アセンブリ(不図示)は、コンプレッサ羽根車(不図示)とタービン羽根車(不図示)とを備えており、それら2つの羽根車は、それらが一体回転するように連結回転軸(不図示)を介して相互に連結されている。コンプレッサ羽根車は、吸気流通部のコンプレッサ羽根車ケーシング(不図示)の中に収容されており、気体の吸入を行い、吸入する気体は通常、外気である。タービン羽根車(不図示)は、排気流通部2の羽根車ケーシング(不図示)の中に回転可能に収容されている。
【0027】
排気ガス過給機1の作動中には、排気流通部2の中を貫流して流れる排気がタービン羽根車に作用してタービン羽根車を駆動しており、それによってタービン羽根車の回転運動が発生している。この回転運動が連結回転軸を介してコンプレッサ羽根車に伝達されることで、タービン羽根車の回転運動と一体的なコンプレッサ羽根車の回転運動が発生している。そして、コンプレッサ羽根車によって、即ちコンプレッサ羽根車の回転運動によって外気が吸入され、その吸入された外気が吸気流通部において圧縮される。
【0028】
排気流通部2には軸受部3の方を向いた側の端部に第1フランジ面4が形成されている。軸受部3には、この第1フランジ面4に対向する第2フランジ面5が形成されており、それら2つのフランジ面4、5は互いに略々対応する形状に形成されている。
【0029】
2つのフランジ面4、5はいずれも排気ガス過給機1の縦方向軸心(これはタービン羽根車の回転軸心である)に対して径方向及び周方向に延展するように形成されている。排気流通部2は軸受部3に対向するように形成された第1環状フランジ部7を備えており、この第1環状フランジ部7は、軸受部3の第2環状フランジ部8に対して、軸心方向に隣接して位置するものである。第1フランジ面4は第1環状フランジ部7に形成されており、第2フランジ面5は第2環状フランジ部8に形成されている。
【0030】
排気流通部2と軸受部3とは、結合具9によって、第1フランジ面4の形成箇所と第2フランジ面5の形成箇所とで互いに結合されている。結合具9は、主に周方向に延在するように湾曲した略々湾曲状の第1部材10と、同じく主に周方向に延在するように湾曲した略々湾曲状の第2部材11とを備えている。第1部材10と第2部材11とは、それらの一端どうしが第1連結要素12を介して連結解除可能に互いに連結されるようにしてあり、また、それらの他端どうしが第2連結要素13を介して相対的に可動に互いに連結されており、これらについては、結合具9の側面図を示した図1を参照されたい。結合具9は、パイプどうしを連接するためのクランプ式結合具と基本的に同様の構成を有するものである。即ち、ここに提示する結合具9は、2つのハウジング部分2、3を結合するために、第1環状フランジ部7及び第2環状フランジ部8の外周を径方向、軸心方向、及び周方向において少なくとも部分的に包持する。
【0031】
第1部材10の第1端部領域14と、第2部材11の第2端部領域15とを、第1連結要素12を介して連結可能とするために、第1連結要素12はネジとナットで構成されており、また、その連結のために、第1部材10の第1端部領域14には第1荷重印加アーム部16が設けられ、第2部材11の第2端部領域15には第2荷重印加アーム部17が設けられている。第1及び第2荷重印加アーム部16、17には夫々に開口18が形成されており、それら開口18に第1連結要素12のうちの挿通部材19であるネジが挿通される。また、挿通部材19の頭部20が第1荷重印加アーム部16の表面に当接する。頭部20とは反対側のネジ端部21にはワッシャ22とナット23が備えられており、この構成とすることで、第1連結要素12による締結力で第1部材10と第2部材11とを締結できるようにしている。
【0032】
第1部材10は、第1ストッパ部24を備えている第1荷重印加アーム部16から、第1支持部25を経由して第3端部領域43まで延在しており、この第3端部領域43には輪っか形状の第1安全要素26が形成されている。第2部材11も同様の構成であり、即ち、第2部材11は、第2荷重印加アーム部17から、第2支持部27を経由して第4端部領域44まで延在しており、この第4端部領域44には輪っか形状の第2安全要素28が形成されている。また、第2荷重印加アーム部17は、第2安全要素28とは反対側の第1端部14に、第2ストッパ部29を備えている。
【0033】
図2は結合具9の縦断面を示した断面斜視図であり、同図は装着状態である第1状態を示したものであるが、ただし、非装着状態である第2状態も破線によって部分的に示している。
【0034】
第1状態では、2つの荷重印加アーム部16、17が互いに略々平行に延在しており、2つのストッパ部24、29が互いに当接している。なお、第1荷重印加アーム部16と第1支持部25との間に第1移行部30が形成されており、第2荷重印加アーム部17と第2支持部27との間に第2移行部31が形成されている。
【0035】
第2状態では、2つのストッパ部23、29が互いに当接しておらず、2つの荷重印加アーム部16、17の間の距離距離は、それら2つのストッパ部24、29の間において最大離隔距離となっている。また、換言するならば、第2状態では、2つのストッパ部24、29はそれらの間が先広がりとなるように延在しており、それに伴って2つの荷重印加アーム部16、17の間の離隔距離は、2つの移行部30、31の間において最小離隔距離となっている。
【0036】
結合具9の内周部32が2つの環状フランジ部7、8の外周部33に良好に適合できるようにするために、第1部材10及び第2部材11は、所定の横断面形状を有するプロファイル材から製作されており、このプロファイル材は帯状部34とその両側の側縁壁部35とを備えることで、概ね台形状の横断面形状を有するものとなっている。ただしその横断面形状はU字形状としてもよい。
【0037】
移行部30、31はプロファイル材に素材再成形を施すことで形成されており、この素材再成形を通して、装着時にそれら移行部30、31の内周部に発生する引張応力の大きさと、それら移行部30、31の外周部に発生する圧縮応力の大きさとが、2つのストッパ部24、29を互いに当接させるだけの移行部30、31の弾性変形を生じさせ得る大きさとなるようにしている。
【0038】
第1部材10及び第2部材11の両側の側縁壁部35の間に軸心方向の力を発生させるための第1及び第2移行部30、31の弾性力を、それら移行部30、31の横断面36を変化させることで得るようにしている。即ち、それら移行部の横断面36の変化のさせ方を、第1及び第2支持部25、27に周方向の応力を発生させる引張応力及び圧縮応力が同時に作用することで、それら第1及び第2移行部30、31の弾性変形が生じるような変化のさせ方としている。
【0039】
結合具9により結合された2つのハウジング部分2、3が相互にずれることなく完全に固定されるようにするために、それらハウジング部分2、3を囲繞するように結合具9を位置付けたならば、第1結合要素12によって予荷重を印加する。これによって2つのストッパ部24、29は互いに押付けられ、その過程において一度は平行になった2つの荷重印加アーム部16、17は再び互いの間に角度を成して延在するようになるが、ただしそうなった時点では、それら2つの荷重印加アーム部16、17の間の離隔距離は移行部30、31の近傍領域において最大離隔距離となっている(図5参照)。
【0040】
結合に必要とされる軸心方向の力Faxを好適に発生させるために、第3端部領域43では第1支持部25の第1端部38が、また第4端部領域44では第2支持部27の第2端部39が、夫々に第2連結要素13の中を通って延在するようにしてあり、より詳しくはそれら支持部25、27の端部の側縁壁部35及び帯状部34が共に第2連結要素13の中を通って延在している。また、第2連結要素13の幅寸法である第1幅寸法B1は、第1及び第2部材10、11の本体部分の幅寸法である第2幅寸法B2と略々同一寸法であるため、第2連結要素13の近傍領域では、第1及び第2部材10、11の横断面を先細りとして、それらの幅寸法を第3幅寸法B3にまで狭めてあり、そして、支持部25、27から更に離れる先端部分でもこの第3幅寸法B3を維持している。また、第2連結要素13の近傍領域では、以上のように横断面を先細りとしてはいるものの、プロファイル材のごとく所定の横断面形状を有することには変わりがなく、それによって大きな断面係数を実現している。
【0041】
2つの端部38、39はいずれもクレーンのフックの形状に形成されており、即ち、それら端部38、39は、結合具9の軸心40に沿った方向である実質的に軸心方向へのずれを生じさせず、且つ、外れることのない状態で、第2連結要素13に係合している。また、2つの端部38、39の夫々の先端には安全要素26、28が形成されており、それら安全要素26、28が係合することで、第2連結要素13との係合が外れないようにしている。安全要素26、28と端部38、39との間には、繋結くびれ部41が設けられている。特に、安全要素26、28を第1及び第2部材10、11に一体的に形成する場合には、安全要素26、28と端部38、39との間にブリッジ部41を設けることで、より小さな力を加えるだけで安全要素26、28を屈曲させることが可能となる。ただし、ブリッジ部41を設けずに、安全要素26、28が端部38、39に直結しているようにしてもよい。
【0042】
図5は装着状態にある結合具9に作用している力の流れ方向を示した図である。第1連結要素12によって大きな予荷重がかけられたことで、2つのストッパ部24、29が互いに押付けられており、また、2つのストッパ部24、29の近傍領域において2つの荷重印加アーム部16、17が互いに近接しており、そのためそれら2つの荷重印加アーム部16、17の間の離隔距離は、移行部30、31の近傍領域において最大離隔距離42となっている。
【0043】
第1連結要素12によって予荷重FVorがかけられることで、第1及び第2部材10、11に周方向の力Fが発生しており、それによって、従来の結合具と比べてより大きな軸心方向の力Faxをもたらす的確な締付け状態が得られている。また更に、その周方向の力Fのために、第2連結要素13に対しては、第1及び第2部材10、11の各々から引張力Fが作用している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6