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特許7139362眼圧起動シールを備えるエントリーカニューレ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】眼圧起動シールを備えるエントリーカニューレ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20220912BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A61F9/007 130J
A61B17/34
A61F9/007 130E
A61F9/007 130G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019566779
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 IB2018053917
(87)【国際公開番号】W WO2018229586
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/518,811
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ポール アール.ハレン
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-307384(JP,A)
【文献】特開2009-219879(JP,A)
【文献】米国特許第05779697(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0152775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼に挿入されるようなサイズ及び形状にされたカニューレであって、使用中、前記眼内に位置決めされるように構成された遠位端部と、使用中、前記眼の外部に位置決めされるように構成された近位端部とを含むカニューレ;並びに
エラストマー性膜であって:
前記エラストマー性膜の近位端部にある第1の面;
前記エラストマー性膜の遠位端部にある第2の面;
前記第1の面から前記第2の面まで延在する厚み部分;及び
前記エラストマー性膜を貫通して延在する少なくとも1つのスリット
を含み、
前記スリットは、前記スリットの傾斜が前記スリットの全部又は一部に沿って変化する蛇行形状を形成し、該傾斜は、前記エラストマー性膜の前記第1の面及び前記第2の面に対して斜めの角度を形成し、前記スリットは、前記エラストマー性膜の前記第1の面及び前記第2の面に沿って延在する長さを有し、及び手術用器械が前記エラストマー性膜を通って前記カニューレ内へと通過できるように配置され、前記エラストマー性膜は、前記カニューレの前記近位端部に配置されると共に、前記カニューレに接続され、かつ、前記カニューレ内から前記カニューレの前記近位端部の外部までの流体の自由流れを抑制する、
エラストマー性膜を含む、弁付きトロカールカニューレ。
【請求項2】
前記斜めの角度は約75度未満である、請求項1に記載の弁付きトロカールカニューレ。
【請求項3】
前記斜めの角度は約45度である、請求項1に記載の弁付きトロカールカニューレ。
【請求項4】
前記スリットの横断面形状は、連続的に、又はそれに沿った1つ以上の点で方向を変える、請求項1に記載の弁付きトロカールカニューレ。
【請求項5】
前記カニューレの近位端部に結合されたオーバーキャップであって、前記エラストマー性膜は、前記オーバーキャップの近位端部に取り付けられている、オーバーキャップをさらに含む、請求項1に記載の弁付きトロカールカニューレ。
【請求項6】
前記オーバーキャップは、その前記近位端部に形成された複数のアパーチャを含み、前記エラストマー性膜は前記複数のアパーチャに収容されている、請求項5に記載の弁付きトロカールカニューレ。
【請求項7】
前記オーバーキャップは、前記オーバーキャップの側面に形成された少なくとも1つのスロットを含み、及び前記カニューレは少なくとも1つのタブを含み、前記少なくとも1つのタブは、前記少なくとも1つのスロットに収容されて、前記オーバーキャップと前記カニューレとの間にインターロッキング接続を形成する、請求項5に記載の弁付きトロカールカニューレ。
【請求項8】
前記オーバーキャップと前記カニューレとの間の前記インターロッキング接続は、前記カニューレに対する前記オーバーキャップの回転を防止する、請求項7に記載の弁付きトロカールカニューレ。
【請求項9】
前記オーバーキャップは、開口部を規定するフランジを規定し、及び前記エラストマー性膜は、前記エラストマー性膜の第1の端部と第2の端部との間に前記フランジを挟む、請求項5に記載の弁付きトロカールカニューレ。
【請求項10】
前記スリットはレーザによって形成される、請求項1に記載の弁付きトロカールカニューレ。
【請求項11】
前記スリットはフェムト秒レーザによって形成される、請求項10に記載の弁付きトロカールカニューレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、眼科手術に関する。より詳細には、限定されるものではないが、本開示は、眼用トロカールカニューレに関する。
【背景技術】
【0002】
顕微外科器械は、例えば、眼の手術において、人体内の繊細且つ制限された腔から組織を除去するために、外科医によって使用され得る。眼科外科手術の状況では、顕微外科器械は、硝子体、血液、瘢痕組織、又は水晶体を除去するために、又は網膜剥離を修復し、且つ網膜疾患を治療するために、使用され得る。そのような器械は、外科医又は他の医療専門家などのユーザが、上述したようなもののいずれかなどの組織を切開して除去するために使用する外科用ハンドピースの形態にあるとし得る。外科用ハンドピースは制御コンソールに結合され得る。
【0003】
後区手術に関して、ハンドピースは、硝子体カッタープローブ、レーザプローブ、又は組織を切断若しくは破砕するための超音波破砕器(ultrasonic fragmenter)とし得、並びに注入流体を手術部位に供給し且つその部位から流体及び切断/破砕された組織を引き出す又は吸引するために、空気ライン及び/又は電力ケーブル、光ケーブル、又は可撓管によって、制御コンソールに接続され得る。ハンドピースの切断機能、注入機能、及び吸引機能は制御コンソールによって制御され得、制御コンソールは、1つ又は複数の外科用ハンドピースに電力を提供するだけでなく(例えば、往復動又は回転する切刃、又は超音波振動する針を動作させるために給電する)、注入流体の流れを制御し、且つ流体及び切断/破砕された組織を吸引するために、真空源(大気に対して)も提供し得る。コンソールの機能は、外科医によって手動で制御され得る(例えば足踏みペダル又は比例制御の使用によって)。
【0004】
後区手術の最中、外科医は、処置する間、いくつかのハンドピース又は器械を使用し得る。この処置では、これらの器械を切開部に挿入し、且つそこから除去する必要があり得る。この繰り返しの除去及び挿入によって、切開部位において眼に外傷を生じ得る。この懸念に対処するために、ハブカニューレを使用して眼内に器械を導入し得る。ハブカニューレは、ハブが取り付けられた細い管を含み得る。管は、眼の切開部に、停止部の機能を果たし得るハブまで挿入され、ハブカニューレの切開部への挿入量を制限し得る。ハブは、眼に縫い付けられて、偶発的に除去されるのを防止し得る。手術用器械は、管を通って眼に挿入され得、及び管は、切開部の側壁を、器械によって繰り返し接触されることから保護し得る。さらに、外科医は、ハブカニューレの管を通して眼に挿入されたときにハンドピースを操作することによって、ハンドピースを使用して、手術中に眼を位置決めするのを支援し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の閉鎖カニューレシステムのスリットは、エラストマー材料の面に対してほぼ垂直である。これらのスリットは、眼圧が上昇すると開く傾向を有する。これは、より多くの漏れを可能にし、及び外科的処置の最中、特に、器械が眼から除去されるときに、眼からカニューレを通っての流体ストリームの放出を可能にしてしまう。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態では、スリットの幾何学的配置は、眼圧を利用して、フラップの様に、一方のエラストマー性すなわち弾性エッジが他方のエラストマー性エッジに対して並置するように、設計される。この手法は、重なり部分を有するバルブシートを生じ、これは、より高い圧力での漏れの保護を高める。
【0007】
本明細書の一態様は、カニューレ及びエラストマー性膜を含む、弁付きトロカールカニューレに関する。カニューレは、眼に挿入されるようなサイズ及び形状にされ得、及び使用中、眼内に位置決めされるように構成された遠位端部と、使用中、眼の外部に位置決めされるように構成された近位端部とを含み得る。エラストマー性膜は、エラストマー性膜の近位端部にある第1の面、エラストマー性膜の遠位端部にある第2の面、第1の面から第2の面まで延在する厚み部分、及びエラストマー性膜を貫通して延在する少なくとも1つのスリットであって、スリットの少なくとも一部分は、エラストマー性膜の第1の面及び第2の面に対して斜めの角度を形成する、少なくとも1つのスリットを含み得る。スリットは、エラストマー性膜の第1の面及び第2の面に沿って延在する長さを有し、及び手術用器械がエラストマー性膜を通ってカニューレ内へと通過できるように配置され得る。エラストマー性膜は、カニューレの近位端部に配置され、且つカニューレに接続され、及びカニューレ内からカニューレの近位端部の外部までの流体の自由流れを抑制する。
【0008】
本開示の態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。スリットによって形成された斜めの角度は、スリットの長さの全体又は大部分に沿って、エラストマー性膜を貫通して延在し得る。斜めの角度は約75度未満とし得る。斜めの角度は約45度とし得る。スリットの横断面形状は、連続的に又は1つ以上の点で、方向を変え得る。カニューレの近位端部にオーバーキャップが結合され得、及びエラストマー性膜は、オーバーキャップの近位端部に取り付けられ得る。オーバーキャップは、その近位端部に形成された複数のアパーチャを含み得、及びエラストマー性膜は、複数のアパーチャに収容され得る。オーバーキャップは、オーバーキャップの側面に形成された少なくとも1つのスロットを含み得、及びカニューレは、少なくとも1つのタブを含み得る。少なくとも1つのタブは、少なくとも1つのスロットに収容されて、オーバーキャップとカニューレとの間にインターロッキング接続を形成し得る。オーバーキャップとカニューレとの間のインターロッキング接続は、カニューレに対するオーバーキャップの回転を防止し得る。オーバーキャップは、開口部を規定するフランジを規定し得、及びエラストマー性膜は、エラストマー性膜の第1の端部と第2の端部との間にフランジを挟み得る。
【0009】
上記のシステム及び/又は装置は、上記の方法と一緒に使用され得、及び逆も同様である。さらに、本明細書で説明するいずれのシステム又は装置も、本明細書で説明するいずれかの方法と一緒に使用され得、及び逆も同様である。上記の概要及び下記の詳細な説明は双方とも、本質的に例示及び説明にすぎず、及び本開示の範囲を限定することなく、本開示の理解をもたらすものとすることに理解されたい。その点について、本開示の追加的な態様、特徴、及び利点は、下記の詳細な説明から当業者に明らかである。
【0010】
本開示をより完全に理解するために、添付図面と併せて以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】例示的なトロカールカニューレ及びオーバーキャップを示す。
図2】弁付きトロカールカニューレを形成するために互いに付着された図1のトロカールカニューレ及びオーバーキャップを示す。
図3a】オーバーキャップのシールにあるスリットを示す図2の弁付きトロカールカニューレの上面図を示す。
図3b】いくつかの例示的な寸法と共に、図2の弁付きカニューレ及びオーバーキャップの側面図を示す。
図4a】例示的なオーバーキャップの上面図である。
図4b-4c】図4aのオーバーキャップ及びシールの断面図である。
図4d】シールのいくつかの実装例に含まれ得るシリコンウェハーの詳細図である。
図5】トロカール挿入器に配置される例示的な弁付きトロカールカニューレを示す。
図6a-6b】例示的なベントを示す。
図7】弁付きトロカールカニューレに挿入された例示的なベントを示す。
図8】例示的な弁付きトロカールカニューレの断面図である。
図9a-9b】カニューレシールに形成された垂直スリットの断面図を示す。
図10a-10b】カニューレシールに形成された非垂直スリットの断面図を示す。
図11】カニューレシールに形成された非垂直スリットの別の例を示す。
図12】眼に挿入された弁付きトロカールカニューレを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述の概要及び以下の詳細な説明の双方とも、例示及び説明にすぎず、特許請求されるような本開示のさらなる説明をもたらすものとすることを理解されたい。
【0013】
下記は、米国特許第8,277,418B2号明細書(その内容全体を本願明細書に援用する)に図示及び説明されている設計に基づく、例示的な閉鎖トロカールカニューレの詳細な説明であり、本明細書で説明される機器及び技術の追加的な詳細及び内容を提供する。しかしながら、本明細書で説明する改良例、及び特に、下記で説明する改良型スリット設計は、本明細書で説明する改良例に直接関係しない場合もある方法で、本明細書で図示及び説明されるものとは異なる特徴を有する閉鎖カニューレに適用され得ることが理解される。
【0014】
図1は、トロカールカニューレ101及びオーバーキャップ103の例示的な実施形態を示す。トロカールカニューレ101は、手術中の器械の挿入及び除去を容易にするために、眼に挿入するように構成され得る。カニューレ101は、眼内へ(例えば、強膜、結膜などを通して)延在できるシャフト105を含むため、トロカールカニューレ101の遠位端部は、使用中、眼内に位置決めされる。いくつかの実施形態では、トロカールカニューレ101は、トロカールカニューレ101の近位端部においてオーバーキャップ103に取り付けられ得る。例えば、トロカールカニューレ101は、対応するスロット109に収容可能な1つ以上のタブ107をトロカールカニューレ101に含み得る。図1に示すトロカールカニューレ101は4個のタブ107を含み、オーバーキャップ103の4個の対応するスロット109に係合する。追加的な又はより少数のタブ107及び対応するスロット109も考慮される。他の取り付け構成も考慮される。例えば、トロカールカニューレ101は、スロット109と同様とし得るスロットを含み得、及びオーバーキャップは、タブ107と同様とし得るタブを含み得る。いくつかの実施形態では、トロカールカニューレ101は、他の方法でオーバーキャップ103に取り付けられ得る。例えば、場合によっては、トロカールカニューレ101は、接着剤、熱接合などによって、オーバーキャップ103に結合され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、オーバーキャップ103にシール111が結合され得る。場合によっては、シール111は、オーバーキャップ103にオーバーモールドされて、弁を形成し得る。例えば、シール111は、例えば図8に示す通り、少なくとも部分的にシャフト105とオーバーキャップ109との間に配置され得る。再度図1を参照して説明すると、シール111の面108は、オーバーキャップ109のところで露出され得る。スリット113がシール111内に形成されて、外科用器具がカニューレ101内へと通過できるようにする。器械又は他の機器がシール111を通して挿入されるとき、スリット113が開き、器械又は他の機器がシール111を通過できるようにする。いくつかの実装例では、2つ以上のスリットがシール111に形成され得る。器械がスリット113を通って挿入されない場合、スリット113は閉鎖構成に留まり、シール111を通る流体の流れを阻止する。
【0016】
図2は、例えば、それぞれのスロット109へのタブ107の係合後の、オーバーキャップ103に付着されたカニューレ101を示す。組み合わせられると、カニューレ101、オーバーキャップ103及びシール111は、弁付きトロカールカニューレ110を形成する。いくつかの実施形態では、タブ/スロット境界面が、例えば、カニューレ101の遠位端部を眼に挿入している間の、カニューレ101に対するオーバーキャップ103の回転を防止し得る。いくつかの実施形態では、タブ107は、オーバーキャップ103をカニューレ101に永久的に保持するように構成され得、すなわち、カニューレ101及び/又はオーバーキャップ103の一部を破壊せずに、オーバーキャップ103がカニューレ101から除去されないようにし得る。例えば、タブ107(及びカニューレ101)はステンレス鋼製とし得、及びオーバーキャップ103はプラスチック、例えば、ポリカーボネート製とし得る。他の材料も考慮される。例えばカニューレ101は、チタンなどの他の金属、プラスチック、又は他の適用可能な材料から形成され得る。場合によっては、オーバーキャップ103は、金属、例えば、ステンレス鋼又はチタン、又は他の適用可能な材料から形成され得る。オーバーキャップ103とカニューレ101との永久的な保持によって、手術(例えば、硝子体網膜手術)中の、カニューレ101からのオーバーキャップ103の偶発的な除去を防止し得る。
【0017】
図3aは、取り付け済みのカニューレ101とオーバーキャップ103の上面図を示し、及びオーバーキャップ103上のシール111にあるスリット113を示す。スリット113は、図示の通り、シール111を横切って延在する長さLを有する。図3bは、いくつかの例示的な寸法(インチで提供する)と共に、取り付け済みのカニューレ101とオーバーキャップ103の側面図を示す。他の寸法も考慮される。それゆえ、図示の寸法は例示にすぎず、本開示の範囲を限定するものではない。例えば、オーバーキャップ103の高さは、0.050インチを上回っても又は下回ってもよく、及びオーバーキャップ103の外径は、0.110インチを上回っても又は下回ってもよい。同様に、組み合わせられたカニューレ101とオーバーキャップ103の全長は、0.220インチを下回っても又は上回ってもよい。さらに、カニューレ101の外径は0.029インチと示され得るが(23ゲージのカニューレに対応する)、他の場合には、カニューレの外径は0.0243インチとし得る(25ゲージのカニューレでは)。他の外径も考慮される。例えば、カニューレ101の外径は、0.029インチを下回っても、0.029インチ~0.0243インチであっても、又は0.0243インチを上回ってもよい。
【0018】
図4aは、オーバーキャップ103及びシール111の上面図である。図4b及び図4cは、図4aに示す関連の線に沿って取った断面図である。シール111は、エラストマー(例えば、シリコーン)製とし得る。オーバーキャップ103がカニューレ101に付着されると、シール111は、オーバーキャップ103の遠位端部に形成された開口部にわたって延在する。いくつかの実施形態では、シール111はオーバーキャップ103に取り付けられて、オーバーキャップ103に対するシール111の回転を阻止し得る。例えば、シール111は、開口部403、及びオーバーキャップ103に形成された1つ以上のアパーチャ401内へオーバーモールド(overmolded)され得る。いくつかの実施形態では、シール111は、シリコンウェハー405を含み得、シリコンウェハーは、オーバーキャップ103とは別個に形成され、且つカニューレ101へオーバーキャップ103を組み立てる間に、オーバーキャップ103とカニューレ101との間に挿入される。そのような場合には、シール111は、摩擦嵌めによって、オーバーキャップ103及びカニューレ101に取り付けられ得る。他の取り付けも考慮される。例えば、場合によっては、シリコンウェハー405を有するシール111は、接着剤を用いて取り付けられ得る。
【0019】
図4a、図4b、及び図4cを参照して説明すると、スリット113は、シール111が閉鎖構成にあるとき(すなわち、器械がスリット113を通して挿入されていないとき)、エラストマー性膜の近位面112及び遠位面114に対して実質的に垂直な方向に、シール111のエラストマー性膜を貫通して延在する。下記では、このスリット113の改良型の設計について詳細に説明する。
【0020】
図4bを参照して説明すると、オーバーキャップ103は、近位端部118に凹状開口部116を形成する。開口部403を画成するフランジ120が、凹状開口部116に隣接して形成される。シール111は、オーバーキャップ103にオーバーモールドされるか、又はオーバーキャップ103に挿入されて、フランジ120をシール111の第1の端部122と第2の端部124との間に挟み得る。
【0021】
図5は、トロカール挿入器501上のカニューレ101の実施形態を示す。いくつかの実施形態では、トロカール挿入器501は、ハンドル505に取り付けられたトロカールブレード503を含み得る。いくつかの実施形態では、ハンドル505はプラスチック製とし得、及びブレード503はステンレス鋼製とし得る。他の材料も考慮される。トロカールブレード503は、シャフト105の遠位端部502を越えて延在し、及びカニューレ101を挿入するために、眼、例えば、図12に示す眼1401に突き刺すための1つ以上の鋭いエッジ508を含み得る。図12を参照して説明すると、トロカールブレード503は、強膜1403及び硝子体1405に突き刺す。再度図5を参照して説明すると、いくつかの実施形態では、ガイド507がガイドスロット115に収まって、カニューレ101を眼に挿入する間、ハンドル505に対するオーバーキャップ103及び/又はカニューレ101の回転を阻止し得る。いくつかの実施形態では、ガイド507は、ガイドスロット115に解放可能に係合して、トロカール挿入器501がオーバーキャップ103とカニューレ101のアセンブリから引き出されるときに、ガイド507が、オーバーキャップ103とカニューレ101のアセンブリを眼1401から引き出さないようにする。例えば、ガイド507は、カニューレ101が眼内にあるときに眼によってカニューレ101の外側に加えられる摩擦力を下回る摩擦力によって、ガイドスロット115に摩擦係合し得る。
【0022】
ガイド507を、ガイドスロット115内に収容されるタブとして示すが、他のインターロッキング特徴も考慮される。例えば、ガイド507及びガイドスロット115は、異なるインターロッキング特徴(リング及びロッドなど)を含み得るか、又は他のインターロッキング部品、例えばインターロッキング磁石(ハンドル505及びオーバーキャップ103のそれぞれに1つ)、係合式のoリング(ハンドル505及びオーバーキャップ103のそれぞれに1つ)などを含み得る。いくつかの実施形態では、ガイド507とガイドスロット115との間の係合は、カニューレ101とオーバーキャップ103との間の回転を防止し得るため、ハンドルの縦軸510の周りでのトロカールハンドル505のいずれの回転運動も、オーバーキャップ103へ、そのためカニューレ101へ、伝達され得る。それゆえ、ガイド507とガイドスロット115との間の係合は、強膜にカニューレ101を挿入する間、硝子体網膜の外科医に、トロカールハンドル505に対するカニューレ101の回転制御をもたらし得る。
【0023】
図6a及び図6bは、ベント601の実施形態を示す。例えば、手術用器械がカニューレを閉塞しているとき、又は器械がシール111を貫通して導入されていないとき(すなわち、スリット113が閉鎖構成にあるとき)、弁付きトロカールカニューレ110のシール111は、カニューレへの流体の流入又はそこからの流出に対してカニューレを封鎖し得るが、排出カニューレ603は、シール111のスリット113内に摺動して、流体が眼からカニューレ101を通って排出できるようにするように構成され得る(例えば、図7参照)。いくつかの実施形態では、ベント601は、シール111を開放構成に保持して、流体(例えば、気体又は液体)が、カニューレ101を通って眼の外部へ排出できるようにし得る。例えば、気体(又は他の流体)は、処置の最中、カニューレ101を通ってベント601から流出し得るため、流出する気体は、他の流体と置き換えられ得る。ベント601は、さらにリム609を含み、ベント601がシール111内に挿入される量を制限するための停止部を提供し得る。場合によっては、リム609の直径は、トロカールカニューレ101の内径よりも大きいとし得る。
【0024】
排出カニューレ603は、管部分607及び縮小径部分608を含む。リム609は、管部分607と縮小径部分608との間に配置される。いくつかの実装例では、管部分607、リム609、及び縮小径部分608は、単一のユニタリー部品から形成され得る。他の実装例では、管部分607、リム609、及び縮小径部分608は、別個の構成要素とし得る。管部分607は、縮小径部分608よりも大きい外径を有し得る。さらに、縮小径部分608は、トロカールカニューレ101の内径よりも小さい外径を有して、排出カニューレ603がシール111を越えてトロカールカニューレ101内へと摺動できるようにし得る。排出カニューレ603は、金属、例えばステンレス鋼やチタン、又は他の適用可能な材料から形成され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、ベント601は、弁付きトロカールカニューレ110とは別個の機器とし得、弁付きトロカールカニューレ110の複数の部分を追加又は除去することなく(例えば、カニューレ101からオーバーキャップ103を除去する必要なく)、ベント601を挿入及び除去できるようにし得る。ベント601のサイズはまた、ベント601の挿入及び除去の最中に、ユーザがベント601を指、又は、例えば鉗子で取り扱うことができるようにする。
【0026】
いくつかの実施形態では、ベント601は、排出カニューレ603の管部分607の外周に摩擦係合する可撓管605を含み得る。場合によっては、可撓管605は、シリコーン又は他のポリマー材料から形成され得る。管605は、排出プロセスの可視インジケータ(例えば、少なくとも部分的に透明である)を提供し得る。すなわち、管605が少なくとも部分的に透明な材料で形成される場合、眼からあふれ出る物質が管605内に流入すると、ユーザにすぐに分かり、且つ見えるようになり得る。いくつかの実施形態では、管605は、カニューレ101からベント601を除去するための把持面として使用され得る(例えば、指又は鉗子による把持を支援する)。図6bは、例示的な実施形態による、いくつかの例示的な寸法を示す(インチで提供される)。これらの寸法は単に例示にすぎない。従って、他の寸法も考慮される。いくつかの実施形態では、ベント601の寸法は、ベント601がシール111を通って延在するように位置決めされているときに、器械がベント601を通過できるようなものにし得る。
【0027】
図8は、ベント601が挿入された状態の、弁付きトロカールカニューレ110の断面を示す。
【0028】
図4b及び図4cに戻って説明すると、シール111内のスリット113は、シール111の面112及び114に対してほぼ垂直であることが分かる。一般に、そのようなスリット113は、単一のスリット、三スリット(tri-slit)、又は十字形スリットとし得る。しかしながら、垂直スリットの1つの問題は、眼圧が上昇するにつれて開く傾向がある場合があり、より多くの漏れを生じ、流体ストリームを、眼からカニューレを通って放出することを可能にさせてしてしまう。この漏れは、特に、器械が弁付きトロカールカニューレから除去されるときに発生し得る。漏れは、繊細な網膜組織に隣接する眼内で乱流及び流体渦(fluid swirling)を増加させる。ひとたび眼の外部に出ると、流体は、顕微鏡光学系、外科医、スタッフ、又は床に流れて、不快感及び安全性/汚染の問題の可能性を生じ得る。
【0029】
漏れの問題は、垂直スリットのエッジの並置が良くないために存在する。器械がスリットを通過し、その後、再び除去されるとき、スリットの側部は、それらの初期位置へ弾性的に戻って良好な封止を形成し、及びスリットを通した漏れを防止する必要がある。しかしながら、スリットの側部は、眼圧のために、及び/又は例えば、滅菌又は器械的な伸張に起因した元の平面的な形状の歪み、及び手術中の、弁付きトロカールカニューレに挿入された器械の操作に起因した歪みのために、それらの初期位置に戻り損なうことがある。
【0030】
図9aは、例えば、上述のようなシール111の全て又は一部を含み得る、例示的なエラストマー性膜911の断面図を示す。この例では、スリット913は、エラストマー性膜の第1の面916及び第2の面918に対して垂直である。図9aでは、例えば、器械がスリット913を通過する前に見られ得るように、スリット913の対向する側部920、922がよく位置合わせされている。
【0031】
図9bは、眼圧が第2の面918に加えられている間に、手術用器械などの機器を、スリット913を通して挿入し、それに続いて除去した後の、同じエラストマー性膜911の断面図を示す。この状況では、スリット913の対向する側部920、922は、互いの適切な位置合わせに戻り損なっている。スリット913の長さに沿ったこの位置合わせの欠如は、漏れのリスクを高めることが理解される。
【0032】
図10aは、本開示のいくつかの実施形態による例示的なエラストマー性膜1011を示す。図示の例では、スリット1013は、スリット1013の長さの少なくとも一部分に沿って、例えば、スリット1013の長さの全体又は大部分に沿って、第1の面1016及び第2の面1018に対して斜めの角度でエラストマー性膜を貫通して延在する。従って、図10a及び図10bに示す例では、スリットは、第1及び第2の面1016及び1018に対して垂直ではない。この例では、スリット1013は、第1の面1016及び第2の面1018に対して約60度の角度を形成している。ここで、スリットの幾何学的配置は、眼圧を使用して、フラップの様に、一方のエラストマー性エッジが他方の同様のエラストマー性エッジに対して並置するように、設計されている。その結果、側部1020及び1022のそれぞれのエッジ1024及び1026は、重なり部分を有する「バルブシート」を形成し、これが、図10bに示すように、スリット1013を通した器械の挿入及び除去後でも、ますます高くなる圧力での漏れを防止する。従って、スリット1013の設計は、特にスリット913の設計と比較して、漏れのリスクを低下させる。
【0033】
スリット1013のこの非垂直スリットの幾何学的配置は、斜めの角度(例えば、第1又は第2の面1020、1022に対して90度ではない角度)を有するスリット1013を含み、及びスリット1013は、機械的なブレード及び器具によって形成され得る。場合によっては、非垂直スリットの幾何学的配置は、例えば、約40~75度の角度を形成するスリットを含み得る。いくつかの実施形態では、スリットの幾何学的配置は、図11に示す例示的なスリット1113など、より複雑でもよい。スリット1113は、回り道(circuitous)又はヘビ状の形状を形成してもよく、及び機械的なブレードではなく、フェムト秒レーザなどのレーザを使用して形成されてもよい。エラストマー性膜を貫通するそのような回り道形状は、漏れ防止を向上させると考えられているが、同時に、スリットを通して挿入される又はそこから除去されるときの、器械への過度の機械的な力又は摩擦力を回避する。場合によっては、ヘビ状の形状を有するスリットの傾斜は、スリットの全て又は一部分に沿って変化する。場合によっては、ヘビ状の形状を有するスリットの一部分に沿った傾斜は、エラストマー性膜の第1の面及び/又は第2の面に対して斜めの角度を形成する。図11に示すように、スリット1113は、エラストマー性膜1111に形成される。
【0034】
上述したようなスリットの幾何学的配置は、図1~8に示すシステムのような閉鎖カニューレシステムにシールを提供するために使用されるエラストマー性膜に組み込まれ得、ここで、そのようなスリットは、外科的処置の最中に、眼内に位置決めされたカニューレ内への及びそれを通した外科用器具の挿入及び除去を可能にするために設けられている。そのようなスリットの幾何学的配置はまた、様々な他の閉鎖カニューレのいずれかに使用されるエラストマー性膜にも組み込まれ得る。上述の説明を考慮して、本明細書で説明した発明的な技術を組み込む眼科手術装置のいくつかの実施形態は、例えば、図12に示すように、眼に挿入するように構成されたカニューレを含み、ここで、弁付きトロカールカニューレ110は、眼1401内に、強膜1403に形成された創傷又は切開部を通って硝子体1405まで挿入され、及び弁付きトロカールカニューレ110の遠位端部1402が眼1401内に位置決めされ且つ弁付きトロカールカニューレ110の近位端部1404が眼1401の外部に位置決めされるように、配置されることが理解される。これらの実施形態では、例えば、図10~11に示すようなエラストマー性膜が、弁付きトロカールカニューレ110の近位端部1404に配置され、且つそれに取り付けられて、流体、例えば液体の、弁付きトロカールカニューレ110内から弁付きトロカールカニューレ110の近位端部1404の外部への自由流れを抑制する。エラストマー性膜は、エラストマー性膜を通って延在する少なくとも1つのスリット、例えば、スリット113、913、1013、又は1113を含み、且つ、外科用器具又は他の機器がそこを通って弁付きトロカールカニューレ110内へと通過できるように配置される。このスリットは長さLを有し、及びエラストマー性膜の第1及び第2の面の双方に沿って延在する。上記で詳細に説明したように、場合によっては、スリットは、スリットの長さの全体又は大部分に沿って、斜めの角度(エラストマー性膜の第1及び第2の面に対して測定されたような)でエラストマー性膜を貫通して延在する。この配置構成では、スリットの近傍でエラストマー性膜の第1又は第2の面にわたって加えられる圧力は、スリットを閉鎖位置に保つ傾向がある。
【0035】
いくつかの実施形態では、上述の通り、スリットは、エラストマー性膜の第1及び第2の面に対して約75度未満の角度でエラストマー性膜を貫通して延在する。いくつかの実施形態では、スリットは、エラストマー性膜の第1及び第2の面に対して約45度の角度でエラストマー性膜を貫通して延在する。いくつかの実施形態では、スリットは、エラストマー性膜を貫通して延在するときに、連続的に、又は1つ以上の点において、方向を変える。
【0036】
当業者は、本開示に含まれる実装例が、上述の特定の例示的な実装例に限定されないことを理解する。その点について、説明に役立つ実装例が図示及び説明されたが、広範囲の修正、変更、組み合わせ、及び置換が上述の開示において考慮される。そのような変形は、本開示の範囲から逸脱せずに、上記になされ得ることが理解される。それゆえ、添付の特許請求の範囲を広範に、及び本開示と一致するようにみなすことが適切である。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9a
図9b
図10a
図10b
図11
図12