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特許7139388良性前立腺肥大症を治療するための薬物を製造するのに用いられる牛蒡子抽出物の使用
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  • 特許-良性前立腺肥大症を治療するための薬物を製造するのに用いられる牛蒡子抽出物の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-09
(45)【発行日】2022-09-20
(54)【発明の名称】良性前立腺肥大症を治療するための薬物を製造するのに用いられる牛蒡子抽出物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/28 20060101AFI20220912BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A61K36/28
A61P13/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020101370
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2020200325
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】108120310
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520207734
【氏名又は名称】康品科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 福安
(72)【発明者】
【氏名】楊 雅嵐
(72)【発明者】
【氏名】宋 君哲
(72)【発明者】
【氏名】黄 羽シュエン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-070360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
良性前立腺肥大症を治療するための薬物を製造するのに用いられる牛蒡抽出物の使用であって、前記牛蒡抽出物はエタノール濃度が95%のエタノール水溶液である抽出剤により、沸騰の状態で牛蒡子試料を抽出して獲得するものであることを特徴とする牛蒡子抽出物の使用。
【請求項2】
前記牛蒡抽出物が需要個体に経口投与され、前記牛蒡抽出物の投与量は1日当たり、需要個体の体重1kgにつき900mgであり、28~60日間連続して投与することを特徴とする請求項1に記載の牛蒡子抽出物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛蒡抽出物の使用に関するもので、特に、良性前立腺肥大症を治療するための薬物を製造するのに用いられる牛蒡抽出物の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
良性前立腺肥大症(Benign Prostatic Hyperplasia、略称BPHである)又は、前立腺肥
大症と称され、中年の男性によくみられる疾患であり、頻尿(frequent urination)、排尿困難(trouble starting to urinate)、流量不足(weak stream)、尿路の中断(inability to urinate)又は、膀胱に対するコントロールの喪失(loss of bladder control
)といった症状が出ることがあり、更に尿路感染症(urinary tract infection)、膀胱
結石(bladder stones)及び慢性腎不全(chronic kidney problem)などの合併症(complication)が発症してしまうこともある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Investigation of antioxidant and anti-inflammatory properties of burdock thick extracts on the model of benign prostatic hyperplasia (BPHP) in rats. J Mol Pathophysiol. 2016;5(3):55-58
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な治療法としては、ライフスタイルの変更、薬物治療または手術を行い、軽症の場合、ダイエット、運動及びカフェインの摂取減少などのライフスタイルを変更すれば症状を改善させることができ、重症の場合、アルフゾシン、ドキサゾシンなどのα1遮断薬(α blocker)を使用することにより、前立腺及び膀胱頚部の平滑筋をリラックスさせ、尿路の中断を減少し、又は、フィナステリド、デュタステリドなどの5α還元酵素阻害剤(5α reductase inhibitor)により、アンドロゲン(dihydrotestosterone、略称DHTである)の作用を抑制し、肥大した前立腺を縮減させるが、上記の薬物は性欲の減弱(decreased libido)、射精又は勃起障害などの副作用が引き出される恐れがあるという問題があった。
【0005】
また、ノコギリパルメット(Serenoa repens)及びプルヌスアフリカナ(Prunus africana)などの植物の抽出物が前立腺の疾患を治療するのに役に立っている。上記の植物の
抽出物は副作用を有しないが、ノコギリパルメット及びプルヌスアフリカナがアフリカ、大西洋及びカリブ海岸沿いにしか分布しないため、植物原料を手に入れることが難しく、コストも高まっている。これに鑑みて、依然として、良性前立腺肥大症を治療するための薬物を製造するのに用いられる牛蒡抽出物の使用を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、良性前立腺肥大症を治療するための薬物を製造するのに用いられる牛蒡抽出物の使用を提供する。
【0007】
また、手に入れ易い植物試料から抽出する牛蒡抽出物の使用を提供する。
【0008】
本発明の牛蒡抽出物の使用は、良性前立腺肥大症を治療するための薬物を製造するのに用いられ、また、前記牛蒡抽出物は水またはエタノール濃度が95%のエタノール水溶液である抽出剤により、牛蒡子試料を抽出して獲得するものである。
【0009】
よって、本発明の牛蒡抽出物の使用は、牛蒡抽出物が含有する活性成分により、良性前立腺肥大症を患った生物体の前立腺を縮減させるため、良性前立腺肥大症を治療するための薬物を製造するのに用いることができる。また、本発明の牛蒡抽出物は台湾で手に入れられる牛蒡子試料から抽出するものであるため、消費者が安い価格で優れた治療効果を有する牛蒡抽出物を購入することができるという効果を有する。さらに、牛蒡子を試料として使用することにより、獲得する牛蒡抽出物が良性前立腺肥大症を患った生物体の前立腺を縮減させるという優れた効果を有する。
【0010】
本発明の牛蒡抽出物の使用においては、前記牛蒡抽出物が、エタノール濃度が80~98%のエタノール水溶液を抽出剤とし、牛蒡子試料を抽出して獲得するものである。よって、獲得する牛蒡抽出物が良性前立腺肥大症を患った生物体の前立腺を縮減させるという優れた効果を有する。
【0011】
本発明の牛蒡抽出物の使用においては、前記牛蒡抽出物が需要個体に経口投与され、投与量は1日当たり、需要個体の体重1kgにつき900mgであり、28~60日間連続して投与する。よって、特定の投与手段及び投与量を選択することにより、抽出して獲得する牛蒡抽出物が良性前立腺肥大症を患った生物体の前立腺を縮減させるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】A0~A4組のラットの前立腺の重量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の一形態について、以下、図面を参照して説明する。本発明において「牛蒡(Arctium lappa)」とは菊科(Asteraceae)且つ牛蒡属(Arctium)の二年生植物であり、日本統治時代に日本から台湾の屏東県に導入された植物である。牛蒡の根に大量な食物繊維及びポリフェノールが含まれ、ダイエットや養生に役に立つ効果を有することがよく知られている。牛蒡の葉は豊富なカロテン及びビタミンCを含有し、免疫系の向上に役
に立つ効果を有する。牛蒡子は熟成した実であり、主な活性成分としてアルクチイン、及びアルクチデニンが含まれ、抗熱ショック、利尿の効果を有する。
【0014】
本発明の牛蒡抽出物は抽出剤により、牛蒡試料を抽出して獲得するものである。例を挙げると、操作者は100gの牛蒡試料と500~2000mlの抽出剤(即ち、水又はエタノール水溶液、好ましくは、エタノール濃度が80~98%のエタノール水溶液であってもよい)を混合し、沸騰の状態で0.5~6時間で還流抽出し、ろ過、減圧濃縮と冷凍乾燥を経た後、直ちに牛蒡抽出物を獲得することができる。
【0015】
詳しく述べると、牛蒡試料は牛蒡根試料、牛蒡葉試料或いは牛蒡子試料であってもよく、好ましくは、操作者は抽出剤により牛蒡試料の抽出を行う前に、予め牛蒡試料を乾燥させて牛蒡乾燥物を獲得することができ(牛蒡乾燥物の含水量が15%より低い)、また、牛蒡試料は予め薄切りにし(例えば、厚さが0.1~0.5cmである薄切りにする)又は粉砕する(例えば、粒径が2mm以下に粉砕する)ことができ、これにより、牛蒡試料が抽出剤と接触する表面積を増やすことで、効率的に抽出させることができる。
【0016】
本発明の第一実施例では、100gの牛蒡根試料と1000mlの抽出剤(エタノール濃度が95%のエタノール水溶液)を混合し、沸騰の状態で3時間で還流抽出し、ろ過、減圧濃縮と冷凍乾燥を経た後、4~6gの牛蒡抽出物を獲得する。又、第二、三実施例では、第一実施例の牛蒡根試料を牛蒡葉試料及び牛蒡子試料に変更することにより、それぞれに7~13g及び10~12gの牛蒡抽出物を獲得する。説明の都合のため、第一実施
例、第二実施例及び第三実施例の牛蒡抽出物はそれぞれ“牛蒡根抽出物”、“牛蒡葉抽出物”及び“牛蒡子抽出物”と称する。
【0017】
本発明の牛蒡抽出物は良性前立腺肥大症を患ったラットの前立腺の重量を減少させることができるため、良性前立腺肥大症を治療するための薬物を製造するのに用いることができる。牛蒡抽出物は医薬的に許容可能なキャリアとさらに組み合わせて、医薬組成物として形成することができ、よって、牛蒡抽出物は例えば錠剤、カプセル剤、粉薬、粒剤または液剤など、いかなる投与に便利な形式として製造することができ、或いは牛蒡抽出物を他の食品または飲料と組み合わせて食用に適合な食品の様態で生物体に経口投与することができる。
【0018】
又、本発明の牛蒡抽出物が需要個体に投与され、例えば、投与量は1日当たり、需要個体の体重1kgにつき900mgであり、且つ28~60日間連続して投与される。よって、牛蒡抽出物が含有する活性成分が需要個体の体内に作用し、前立腺の重量を減少させることができる。
【0019】
本試験では6週齢、体重約150~200gであるSprague-Dawleyラット(略称SDラット、台湾楽斯特生物科学株式会社より購入)を採用し、飼育環境は室温が22±2℃である飼育室に飼育し(照射時間と暗黒時間それぞれ12時間である)、且つ食物及び水を自由に取れるようにした。
【0020】
表1を参照すると、テストステロン(testosterone)を経皮投与により去勢したラットに28日間連続して投与し(10mg/kg体重/日)、良性前立腺肥大症を誘導し、良性前立腺肥大症を患ったラットを獲得した(即ち、BPHラット)。
【0021】
【表1】
【0022】
そして、牛蒡根抽出物、牛蒡葉抽出物及び牛蒡子抽出物(900mg/kg体重/日、0.5%のカルボキシメチルセルロース水溶液に溶かせる)を経口投与により、それぞれBPHラットに28日間連続して投与した。それに対して、A0組のノーマルラットとA1組のBPHラットは0.5%のカルボキシメチルセルロース水溶液を経口投与した。
【0023】
図1を参照すると、28日後犠牲にした各組のラットの前立腺をそれぞれ秤量した。A0組のノーマルラットの前立腺が約0.84±0.34gであるが、A1組のBPHラットの前立腺が約1.80±0.24gであり、A0組の前立腺重量に対して明らかに異なった(P<0.001)。又、カルボキシメチルセルロース水溶液のみ経口投与したA1
組のBPHラットの前立腺重量に対して、牛蒡根抽出物、牛蒡葉抽出物及び牛蒡子抽出物をそれぞれ経口投与したA2組~A4組のBPHラットの前立腺重量が明らかに減少し、それぞれ1.34±0.31g(P<0.05)、1.30±0.32g(P<0.05)及び0.93±0.14g(P<0.001)であり、本発明の牛蒡抽出物が良性前立腺肥大症を患った生物体の前立腺の重量を確実に縮減させることができることを示した。
【0024】
また、注意すべきは、牛蒡根抽出物及び牛蒡葉抽出物をそれぞれ経口投与したA2組、A3組のBPHラットの前立腺重量に対して、牛蒡子抽出物を経口投与したA4組のBPHラットの前立腺重量も明らかに減少した(P<0.05、P<0.05)。又、牛蒡子抽出物を経口投与したA4組のBPHラットの前立腺重量は、A0組のノーマルラットの前立腺重量程度に回復することができ(P<0.05)、牛蒡子抽出物が牛蒡根抽出物及び牛蒡葉抽出物より優れる効果を有し、且つ良性前立腺肥大症を患った生物体の前立腺の重量をノーマルの生物体の前立腺の重量のように回復させることができることを示した。
【0025】
綜合すると、本発明の牛蒡抽出物の使用は、牛蒡抽出物が含有する活性成分により、良性前立腺肥大症を患った生物体の前立腺を縮減させるため、良性前立腺肥大症を治療するための薬物を製造するのに用いることができる効果を有する。
【0026】
また、本発明の牛蒡抽出物は台湾で手に入れられる牛蒡子試料から抽出するものであるため、消費者が安い価格で優れた治療効果を有する牛蒡抽出物を購入することができるという効果を有する。
【0027】
本発明は、その精神と必須の特徴事項から逸脱することなく他のやり方で実施することができる。従って、本明細書に記載した好ましい実施形態は例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
図1